表示装置および表示方法
【課題】バックライトユニットの適切な発光制御を通じて、クロストークの発生を抑えつつ、十分な輝度を確保する。
【解決手段】表示装置110は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネル158と、液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部156と、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニット162と、表示制御部による第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部164と、を備える。
【解決手段】表示装置110は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネル158と、液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部156と、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニット162と、表示制御部による第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部164と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの背面側に配置されたバックライトユニットの発光制御を行う表示装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルに、両眼視差のある左右2つの映像データ(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)を表示し、観察者に対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体映像技術が脚光を浴びている。このような立体的な映像表示を実現するための技術については、様々な提案がなされており、例えば、μpolやXpol(登録商標)といった偏光フィルタ方式(パッシブタイプ)や、電子シャッタ方式(アクティブタイプ)が提案されている。
【0003】
偏光フィルタ方式を用いた立体映像技術では、例えば、液晶パネルの表示面に、偏光特性が異なる2種類の偏光フィルタが隔行で(水平ライン毎に)交互に配置される。そして、一方の偏光フィルタが配置された液晶パネルの奇数ラインに右眼用映像データを、他方の偏光フィルタが配置された液晶パネルの偶数ラインに左眼用映像データを表示させると、観察者は、偏光眼鏡を通じて、隔行の水平ラインに示された右眼映像を右眼で、左眼映像を左眼で視認し、両眼視差による立体映像を知覚することが可能となる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した偏光フィルタ方式を用いた立体映像技術は、表示映像のちらつきであるフリッカが生じず、映像を知覚するタイミングが左右の眼で異ならないといった点で電子シャッタ方式より優れているが、液晶パネル上の偏光特性の異なる2つの領域(上述した例では奇数ラインと偶数ライン)それぞれに、右眼用映像データまたは左眼用映像データを固定的に表示するので、片眼で知覚できる映像の解像度は、液晶パネル全体の解像度と比較して約1/2となり、劣ってしまう。
【0006】
そこで、偏光特性の異なる2つの領域に右眼用映像データと左眼用映像データとをそれぞれ交互に切換表示し、それを観察する際に利用する偏光眼鏡の左右の偏光特性を映像データの切換表示に同期させて切り換えることで、解像度を劣化させることなく、観察者に立体映像を知覚させる技術が新たに検討されている。
【0007】
かかる新たな技術では、液晶パネルの表示切換のみならず、偏光眼鏡の偏光特性も切り換えなくてはならない。このような状況下で、液晶パネルの輝度の向上を図るべく、液晶パネルを照射するバックライトユニットの発光時間を単純に長くとると、任意のフィールドデータと内容が異なる前後のフィールドデータとのクロストークが生じてしまう。このような事態を回避すべく、バックライトユニットの発光時間を単純に短くすると、液晶パネル内で輝度にバラツキが生じたり、表示に必要な輝度を得ることができなくなったりしてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、バックライトユニットの適切な発光制御を通じて、クロストークの発生を抑えつつ、十分な輝度を確保することが可能な表示装置および表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネルと、液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部と、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットと、表示制御部による第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部と、を備える。
【0010】
バックライト制御部は、複数の光源のうちの液晶パネルの映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源の発光開始タイミングを、時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて決定し、液晶パネルの映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源の発光終了タイミングを、時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて決定してもよい。また、バックライト制御部は、各光源それぞれの発光時間を等しくしてもよい。
【0011】
液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得するデータ取得部と、取得された右眼用映像データと左眼用映像データとを保持するフレームメモリと、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成する表示データ生成部と、をさらに備えてもよい。
【0012】
第1表示領域および第2表示領域は、一方が液晶パネルの映像表示ラインにおける奇数ラインであり、他方が映像表示ラインにおける偶数ラインであってもよい。
【0013】
表示データ生成部は、第1フィールドデータおよび第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の表示方法は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネルに、入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させ、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットを、表示データの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるように制御する。
【0015】
液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得し、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示装置は、バックライトユニットの適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータ同士のクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニットにおける光源の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表示システムを構成する各装置の概略的な関係を示した説明図である。
【図2】表示装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】表示データ生成部の具体的な動作を説明するための機能ブロック図である。
【図4】表示データ生成部の動作基準となる各信号を示したタイミング図である。
【図5】液晶パネルの表示面の構成を説明するための説明図である。
【図6】液晶パネルに表示される表示データと偏光眼鏡を通じて知覚する映像との関係を示した説明図である。
【図7】バックライトユニットの構成例を示した説明図である。
【図8】表示制御部、偏光眼鏡およびバックライト制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】表示制御部、偏光眼鏡およびバックライト制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】表示データ生成部の他の動作を説明するためのタイミング図である。
【図11】表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図12】液晶パネルの他の例における表示面の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(表示システム100)
図1は、表示システム100を構成する各装置の概略的な関係を示した説明図である。表示システム100は、表示装置110と、偏光眼鏡120とを含んで構成される。表示装置110は、例えば、放送電波を通じて放送局112から、もしくは、インターネット、LAN(Local Area Network)、専用回線等の通信網114を通じてサーバ装置116から、または、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリといった記憶媒体118から、両眼視差による立体映像を知覚させるための立体映像データ(右眼用映像データと左眼用映像データ)を取得し、装置自体に搭載された液晶パネルに表示する。偏光眼鏡120には、偏光フィルタが設けられている。観察者は、偏光眼鏡120を装着することによって、表示装置110で表示される右眼用映像データと左眼用映像データとを、右眼および左眼でそれぞれ視認して、両眼視差による立体映像を知覚することができる。以下、表示装置110を構成する各機能部について説明し、その後、当該表示装置110を用いた表示方法を詳述する。
【0020】
(表示装置110)
図2は、表示装置110の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図2に示すように、表示装置110は、データ取得部150と、フレームメモリ152と、表示データ生成部154と、表示制御部156と、液晶パネル158と、赤外線通信部160と、バックライトユニット162と、バックライト制御部164と、操作部166とを含んで構成される。
【0021】
データ取得部150は、右眼用映像データと左眼用映像データとで構成される映像信号である立体映像データを、例えば、30Hzのフレーム周波数で取得する。ここで、フレームは映像を構成する1の画像をいい、インターレース方式においてそのフレームを奇数ラインと偶数ラインとに分けた画像をフィールドという。したがって、データ取得部150は、右眼用映像データおよび左眼用映像データによる画像を毎秒30枚取得することができる。また、データ取得部150は、右眼用映像データと左眼用映像データとを異なる経路(回線)から個々に取得してもよいし、1の経路から一体的なデータ(例えばサイドバイサイド方式によるデータ)として取得してもよい。
【0022】
フレームメモリ152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等を含んで構成され、データ取得部150で取得された右眼用映像データと左眼用映像データとを一時的に保持する。なお、HDDは正確には装置であるが、説明の便宜上本説明では他の記憶媒体と同義として扱う。
【0023】
表示データ生成部154は、フレームメモリ152から右眼用映像データおよび左眼用映像データを読み出し、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとを、フレーム周波数の2倍の周波数(例えば60Hz)で交互に配置して表示データを生成する。ここで、液晶パネル158は、先頭ラインから最終ラインまでの複数の映像表示ラインを有し、第1表示領域および第2表示領域は、一方が液晶パネル158の映像表示ラインのうちの奇数ライン(奇数番の水平ライン)であり、他方が映像表示ラインのうちの偶数ライン(偶数番の水平ライン)である。
【0024】
ただし、本実施形態において、表示データ生成部154は、第1フィールドデータと第2フィールドデータとをそれぞれ2回ずつ繰り返し生成するので、フレーム周期(1フレーム)の間に、2つの第1フィールドデータと2つの第2フィールドデータを生成する。したがって、フィールド周波数はフレーム周波数の4倍(フレーム周波数が30Hzの場合120Hz)となる。かかる構成により、液晶パネル158への表示データの走査時間(走査開始から走査終了までの時間)を短縮することができる。ここでは、第1フィールドデータと第2フィールドデータとが切り換わった際には、互いのフィールドデータを「内容が異なるフィールドデータ」と表現し、2回ずつ繰り返す同一のフィールドデータと区別している。
【0025】
図3は、表示データ生成部154の具体的な動作を説明するための機能ブロック図であり、図4は、表示データ生成部154の動作基準となる各信号を示したタイミング図である。まず、表示データ生成部154のカウンタ154aは、フィールド周波数(例えば120Hz)/2×水平ラインの総数(例えば1080)で表される水平同期信号(図4参照)のエッジ(立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ)毎にカウント値をインクリメントし、水平ラインの総数に至ったタイミングでそのカウント値をリセットする。また、カウンタ154aは、インクリメントされたカウント値をカウント信号を通じてフレームメモリ152に出力する。したがって、垂直同期信号(図4参照)の1周期(1クロック)の間に1から水平ラインの総数までを4回(フィールドデータ4つ分)繰り返してカウントすることとなる。
【0026】
フレームメモリ152は、カウンタ154aからカウント信号が入力されると、そのカウント信号が示すカウント値に相当する右眼用映像データおよび左眼用映像データの水平ラインをそれぞれ表示データ生成部154のスイッチ154bに出力する。したがって、垂直同期信号の1周期の間に水平ライン単位で同一の右眼用映像データおよび左眼用映像データがそれぞれ4回出力されることとなる。
【0027】
表示データ生成部154の排他的論理和回路154cは、水平同期信号と垂直同期信号との排他的論理和をとって、スイッチ154bがいずれの映像データを出力するかを判定するための映像データ切換信号(図4参照)を生成する。したがって、映像データ切換信号は、垂直同期信号が負論理の間、水平同期信号と同じ信号となり、垂直同期信号が正論理の間、水平同期信号を論理反転した信号になる。
【0028】
スイッチ154bは、フレームメモリ152から、カウント値に相当する右眼用映像データおよび左眼用映像データの水平ラインを並行して順次入力し、排他的論理和回路154cから入力した映像データ切換信号に応じて、いずれか一方の水平ラインを出力する。具体的に、映像データ切換信号が負論理のときには右眼用映像データの水平ラインを、映像データ切換信号が正論理のときには左眼用映像データの水平ラインを出力する。
【0029】
したがって、図4に示すように、垂直同期信号が負論理の間、第1フィールドデータ180が2回繰り返し生成され、垂直同期信号が正論理の間、第2フィールドデータ182が2回繰り返し生成される。このとき、第1フィールドデータ180の奇数ライン(第1表示領域)は、右眼用映像データの奇数ラインとなり、第1フィールドデータ180の偶数ライン(第2表示領域)は、左眼用映像データの偶数ラインとなっている。また、第2フィールドデータ182の奇数ラインは、左眼用映像データの奇数ラインとなり、第2フィールドデータ182の偶数ラインは、右眼用映像データの偶数ラインとなっている。
【0030】
また、ここでは、一旦フレームメモリ152に保持された右眼用映像データおよび左眼用映像データを順次取り出して、第1フィールドデータ180と第2フィールドデータ182とからなる表示データを生成しているが、表示データ生成部154は、データ取得部150が取得した右眼用映像データおよび左眼用映像データを直接加工し、表示データ生成部154の後段に再配置されたフレームメモリ152に保持する構成とすることもできる。この場合、フレームメモリ152には、第1フィールドデータ180と第2フィールドデータ182とが60Hzで交互に保持され、表示制御部156がフレームメモリ152から同一のフィールドデータを2回ずつ読み出すことでフィールド周期を120Hzに上げている。
【0031】
かかる構成では、フレームメモリ152が、右眼用映像データおよび左眼用映像データの両方を保持する代わりに、右眼用映像データと左眼用映像データとの総和の1/2のデータ容量である第1フィールドデータ180または第2フィールドデータ182のいずれか一方のみを保持すればよいので、フレームメモリ152の容量を著しく削減することが可能となる。
【0032】
表示制御部156は、表示データ生成部154で生成された表示データを液晶パネル158に走査方式で順次表示させる。ここで、走査方式(プログレッシブ方式、インターレース方式等)は、液晶パネル158に映像表示ライン(水平ライン)単位で左から右に表示し、それを上から下に順次繰り返して、表示データ全体を表示する方式をいう。本実施形態において、表示制御部156は、プログレッシブ方式を用いて表示データを液晶パネル158に表示させている。
【0033】
液晶パネル158は、液晶組成物を2枚のガラス板に封入して形成され、表示制御部156の制御信号を受けて、自己が有する複数の映像表示ラインに表示データを表示する。また、液晶パネル158の表示面には、偏光特性が異なる2つの偏光フィルタが、隔行で(1ライン毎に)並置されている。ここで、偏光特性が異なるとは、偏光フィルタとして直線偏光を利用する場合、一方の偏光フィルタと他方の偏光フィルタとの偏光が例えば直交しており、偏光フィルタとして円偏光を利用する場合、一方の偏光フィルタは右偏光であり他方の偏光フィルタが左偏光であることをいう。
【0034】
図5は、液晶パネル158の表示面の構成を説明するための説明図である。図5において液晶パネル158の第1表示領域としての映像表示ラインにおける奇数ライン(odd)184の表示面には、任意の偏光特性を有する第1フィルタが形成され、液晶パネル158の第2表示領域としての映像表示ラインにおける偶数ライン(even)186の表示面には、第1フィルタとは偏光特性が異なる第2フィルタが形成されている。
【0035】
具体的に映像表示ラインにおける奇数ライン184に形成された第1フィルタには、偏光軸が水平方向と垂直な方向にある直線偏光として画像光が入射し、この入射した画像光に対して+λ(波長)/4分の位相差を与えて右回りの円偏光として射出する。また、映像表示ラインにおける偶数ライン186に形成された第2フィルタは、入射した画像光に対して−λ/4分の位相差を与えて左回りの円偏光として射出する。したがって、奇数ライン184の第1フィルタを透過した右眼用映像データまたは左眼用映像データの画像光と、偶数ライン186の第2フィルタを透過した右眼用映像データまたは左眼用映像データの画像光とは、図5において矢印で模式的に示したように、その偏光の回転方向が互いに逆である円偏光となる。また、第1フィルタまたは第2フィルタのいずれか一方にλ/2分の位相差を与えて、入射した直線偏光に対して垂直な直線偏光で射出し、他方を実質的に位相差が無い単なるガラスや樹脂とすることによっても偏光特性を異ならせることができる。
【0036】
赤外線通信部160は、偏光眼鏡120との赤外線通信を確立し、偏光眼鏡120に、偏光特性の切り換えタイミングを伝達すべく図4に示した垂直同期信号を送信する。
【0037】
上述したように、表示データ生成部154は、垂直同期信号が負論理の間、第1フィールドデータ180を生成し、垂直同期信号が正論理の間、第2フィールドデータ182を生成する。第1フィールドデータ180では、奇数ラインが右眼用映像データ、偶数ラインが左眼用映像データとなっており、第2フィールドデータ182では、奇数ラインが左眼用映像データ、偶数ラインが右眼用映像データとなっている。したがって、垂直同期信号が負論理の間、右眼用映像データは液晶パネル158における奇数ライン184の第1フィルタを通じて、左眼用映像データは液晶パネル158における偶数ライン186の第2フィルタを通じて射出され、垂直同期信号が正論理の間、右眼用映像データは偶数ライン186の第2フィルタを通じて、左眼用映像データは奇数ライン184の第1フィルタを通じて射出される。
【0038】
このとき偏光眼鏡120は、右眼用映像データを観察者の右眼のみに、左眼用映像データを観察者の左眼のみに視認させなければならない。したがって、偏光眼鏡120は、赤外線通信部160から垂直同期信号を受信し、その垂直同期信号に応じて、観察者の右眼に対応する偏光眼鏡120の右眼窓の偏光フィルタおよび左眼に対応する左眼窓の偏光フィルタを制御する。具体的に、垂直同期信号が負論理の間、右眼窓の偏光フィルタは、液晶パネル158の映像表示ラインにおける奇数ライン184に設けられた第1フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる第1の直線偏光を透過し、第2フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる、第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光を遮断するように切り換える。同様に、左眼窓の偏光フィルタは、液晶パネル158の映像表示ラインにおける偶数ライン186に設けられた第2フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる第2の直線偏光を透過し、第1フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる、第2の直線偏光と直交する第1の直線偏光を遮断するように切り換える。そして、垂直同期信号が正論理の間、右眼窓と左眼窓との偏光フィルタを、それぞれ負論理の間とは逆の透過特性を有するように切り換える。こうして、観察者は、右眼用映像データを右眼のみで、左眼用映像データを左眼のみで視認することができ、立体映像が正しく知覚される。以下、液晶パネル158の表示切換と、偏光眼鏡120の偏光特性の切換により、どのようにして立体映像が提供されるのか、図6を用いて具体的に説明する。
【0039】
図6は、液晶パネル158に表示される表示データと偏光眼鏡120を通じて知覚する映像との関係を示した説明図である。垂直同期信号が負論理の間、液晶パネル158では、表示データ190aが表示される。かかる表示データ190aは、奇数ラインに右眼用映像データが配置され、偶数ラインに左眼用映像データが配されている。このとき、偏光眼鏡120の右眼窓では奇数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、右眼で表示データ190bを知覚する。また、偏光眼鏡120の左眼窓では偶数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、左眼で表示データ190cを知覚する。
【0040】
垂直同期信号が正論理に切り換わると、液晶パネル158では、表示データ190dが表示される。かかる表示データ190dは、奇数ラインに左眼用映像データが配置され、偶数ラインに右眼用映像データが配されている。このとき、偏光眼鏡120の右眼窓では偶数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、右眼で表示データ190eを知覚し、偏光眼鏡120の左眼窓では奇数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、左眼で表示データ190fを知覚する。したがって、垂直同期信号が負論理および正論理である間の表示データが脳内で合成されると、観察者は、右眼で表示データ190gを、左眼で表示データ190hを知覚することができる。
【0041】
このような表示データ190gおよび表示データ190hは、データ取得部150が取得した右眼用映像データおよび左眼用映像データと解像度が等しくなる。これは、観察者が、解像度の劣化のない立体映像を知覚することが可能となることを意味している。
【0042】
以上説明した各機能部によると、偏光フィルタ方式ではあるが、解像度が減じられることなく、さらに、電子シャッタ方式を採用した場合に問題となるフリッカや左右眼の映像知覚タイミング差を回避できる。したがって、観察者は、原画(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことができ、被写体が高速で移動している場合においても、左右の映像知覚タイミングのずれに伴う立体映像の違和感を覚えることなく、疲労感を軽減することが可能となる。
【0043】
バックライトユニット162は、液晶パネル158の背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネル158における複数の領域、例えば、水平ラインの総数を8等分した領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有する。光源は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)で構成される。ここで、走査方向は、走査が行われる方向であり、ここでは水平方向をいう。
【0044】
図7は、バックライトユニット162の構成例を示した説明図である。図7では、図面左側に側面視の断面図を、図面右側に正面視の断面図を示す。バックライトユニット162では、例えば、発光ダイオード200を複数(ここでは24個)並置して形成した光源202が、液晶パネル158の背面における反射シート204上に、走査方向に対応して間隔が均等になるように配置される。発光ダイオード200は、同一の光源202に関して発光開始タイミングと発光終了タイミングが等しく、各光源202は、後述するバックライト制御部164によりそれぞれ独立して発光制御される。
【0045】
また、液晶パネル158と光源202との間には、拡散シート206や光学シート208が積層され、光源202で発光された光が拡散される。各光源202の間には、断面が三角形状に形成された遮光壁210が設けられ、光源202の照射範囲をある程度制限している。ただし、本実施形態のバックライトユニット162では、複数の光源202から発せられた光が、区画された複数の領域のうち自己の領域以外の他の領域にも漏出することを許容する構造をとっている。これにより、自己の領域における光源202の発光輝度を抑えることができる。
【0046】
したがって、バックライトユニット162の任意の光源202が発光しているときに、自己の領域以外の他の領域において液晶パネル158に表示データが表示されていると、意図せず、その表示データが任意の光源202の漏れ光によって観察者に視認されてしまい、クロストークの原因となる。したがって、内容が異なる時間的に前後のフィールドデータの間で、前回のフィールドデータの表示が終了していないとき、または、次回のフィールドデータの表示が開始されているときには、自己のフィールドデータを表示する水平ライン(映像表示ライン)の背面側に対応するバックライトユニット162の光源202を発光させてはならない。
【0047】
バックライト制御部164は、表示制御部156による表示データの表示切換に応じて、上述した複数の光源202の発光タイミングを制御する。
【0048】
図8および図9は、表示制御部156、偏光眼鏡120およびバックライト制御部164の動作を説明するためのタイミングチャートである。バックライトユニット162の発光制御は様々な手段が考えられるが、ここでは、図8に示す発光制御例を前提に、図9に示す新たな手段を提案する。
【0049】
図8(a)は、表示制御部156が表示データを表示させるタイミングを表しており、縦軸は水平ラインの垂直位置(垂直方向の位置)、横軸は時間を示している。図8(a)に示すように、液晶パネル158には、表示制御部156によって、奇数ラインに右眼用映像データを偶数ラインに左眼用映像データを配置した第1フィールドデータが2つ分1/60秒表示され、引き続き、奇数ラインに左眼用映像データを偶数ラインに右眼用映像データを配置した第2フィールドデータが2つ分1/60秒表示され、以後、両フィールドデータが交互に繰り返し表示されている。
【0050】
ここでは、フィールドデータの周波数を2倍(120Hz)に上げ、同一のフィールドデータを2回連続して表示することで、フィールドデータの走査時間を1/2倍に短くすることができ、1画像を表示するために費やす時間を1/60secから1/120secに短縮することが可能となる。すなわち、図8(a)における表示データのプログレッシブ方式に基づく表示推移を示す傾斜部分220が、フィールド周波数が60Hzの場合に比べ起き上がり、垂直に近づくこととなる。こうすることで、表示データのホールド時間を確保するのみならず、クロストークを回避しつつ、バックライトユニット162の点灯時間を長時間確保することができる。
【0051】
また、表示データの表示タイミングにおいては、液晶パネル158における表示デバイスの材料の応答特性に応じて信号の更新に費やす遷移期間が設けられ(図8(a)中クロスハッチングで示す。)、その間は、黒色(液晶における遮光)を表示する。
【0052】
図8(b)は、偏光眼鏡120が電子シャッタを開閉するタイミングを表しており、横軸は時間を示している。偏光眼鏡120は、上述した偏光特性を切り換えるのみならず、内容の異なるフィールドデータを同時に視認するのを回避するため、電子シャッタの開閉制御も行っている。図8(b)では、電子シャッタが開いている状態を白抜きで、閉じている状態をハッチングで示し、白抜きに記載された文言は、電子シャッタが開いている状態での偏光特性を示している。偏光眼鏡120は、例えば、第1フィールドデータの表示が開始されてもすぐには電子シャッタを開かず、内容が異なる前回の第2フィールドデータの最終ライン(垂直位置が最下部のライン)の表示が終了した後に電子シャッタを開く。そして、偏光眼鏡120は、内容の異なる次回の第2フィールドデータの先頭ライン(垂直位置が最上部のライン)の表示が開始される前には電子シャッタを閉じる。また、偏光眼鏡120では、右眼窓および左眼窓における偏光特性の更新や電子シャッタの開閉に伴う遷移期間も考慮して電子シャッタの開閉タイミングが決められる。
【0053】
図8(c)は、バックライト制御部164がバックライトユニット162を発光させるタイミングを表しており、縦軸は液晶パネル158の垂直位置、横軸は時間を示している。ここでは、光源202の発光を白抜きで、光源202の消灯をハッチングで示している。
【0054】
上述したように、第1フィールドデータと第2フィールドデータとでは、観察者の左右眼に知覚すべき映像データが異なるので、第1フィールドデータの前段の第2フィールドデータの最終ラインがまだ表示終了していないときや後段の第2フィールドデータの先頭ラインが表示開始されたときに、第1フィールドデータを表示するためのバックライトユニット162の漏れ光が生じると、フィールドデータ間のクロストークが生じる。したがって、クロストークの発生を回避するため、第1フィールドデータと第2フィールドデータの遷移期間ではバックライトユニット162の発光を停止するのが望ましい。
【0055】
ここで、第1フィールドデータと第2フィールドデータの遷移期間での発光を回避しつつ、液晶パネル158に第1フィールドデータが表示され、かつ、偏光眼鏡120の電子シャッタが開いている期間のみバックライトユニット162の光源202を発光させると、図8(c)のような発光タイミングを得ることができる。
【0056】
しかし、図8(c)の発光タイミングに従ってバックライトユニット162の光源202を発光させると、第1フィールドデータを表示するための任意の光源222と内容の異なる前回の第2フィールドデータの最終ラインとの距離が近くなり、また、第1フィールドデータを表示するための任意の光源224と次回の第2フィールドデータの先頭ラインとの距離が近くなる。したがって、漏れ光によるクロストークを回避するためには、バックライトユニット162の全体的な発光時間を短縮しなければならなくなる。そうすると、液晶パネル158の先頭ラインや最終ラインに対応したそれぞれの光源202の発光時間も短縮され、全体的に輝度が劣化する。
【0057】
また、図8(c)の発光タイミングに従ってバックライトユニット162の光源202を発光させると、光源202の垂直方向の位置によってそれぞれの発光時間が異なり、液晶パネル158内で輝度にバラツキが生じることとなる。
【0058】
そこで、バックライト制御部164における光源202の発光を図9のように制御する。図9(a)および(b)のタイミングは実質的に図8(a)および(b)と等しい。図9(c)を参照すると、バックライト制御部164は、表示制御部156による表示データ(第1フィールドデータおよび第2フィールドデータ)の走査時間より短い遷移時間(すべての光源202が消灯状態から発光状態に遷移する時間または発光状態から消灯状態に遷移する時間)で、例えば液晶パネル158の先頭ラインに対応する光源202から最終ラインに対応する光源202へと順次発光を開始させる。すなわち、図9(c)の傾斜部分226が、図9(a)における表示データのプログレッシブ方式に基づく表示推移を示す傾斜部分220と比べてさらに起き上がり、より垂直に近づくこととなる。以下、具体的な発光制御タイミングを詳述する。
【0059】
まず、バックライト制御部164は、内容が異なる時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて、そのフィールドデータとのクロストークが許容される所定値(例えば7%)以内に収まるように複数の光源202のうちの液晶パネル158の映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源202の発光開始タイミング230を決定し、内容が異なる時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて、そのフィールドデータとのクロストークが許容される所定値以内に収まるように液晶パネル158の映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源202の発光終了タイミング232を決定する。ここで、フィールドデータ表示終了タイミングや表示開始タイミングは、最終ラインや先頭ラインの表示に限られず、すべての水平ラインの表示が考慮される。
【0060】
次に、バックライト制御部164は、液晶パネル158の最終ラインの表示開始タイミングと先頭ラインの表示終了タイミングに基づき、少なくともこの最終ラインの表示開始タイミングと先頭ラインの表示終了タイミングにおいて、光源202が発光しているように、最終ラインに対応した光源202の発光開始タイミング234と、先頭ラインに対応した光源202の発光終了タイミング236とを決定する。
【0061】
他の光源202に関しては、発光開始タイミング230と発光開始タイミング234とを結ぶ直線上の任意のタイミングから、発光終了タイミング232と発光終了タイミング236とを結ぶ直線上の任意のタイミングまで発光させる。こうして、発光タイミングは図9(c)のように略平行四辺形となり、液晶パネル158におけるそれぞれの光源202の発光時間は等しくなる。図9(c)においては、発光時間が1/120sec程度確保されているが、デバイスの特性や周囲温度の変化に対する裕度を設け、例えば1/240〜1/120secの間で調整することができる。
【0062】
また、上述したように、バックライトユニット162は、走査方向に対応して区画された複数の領域(ここでは8等分)に相当する8つの光源202で構成されている。したがって、バックライト制御部164も8つの光源202についてのみ独立して発光制御を行うこととなる。このように複数の領域に相当する光源202のみを発光制御すると図9(d)のようになる。ここでもそれぞれの光源202の発光時間は等しくなる。
【0063】
かかる構成により、バックライトユニット162の適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータとのクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニット162における各光源202の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。また、各光源202の発光時間が等しいので、液晶パネル158内で輝度を均一化でき、観察者は、原画と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことが可能となる。
【0064】
また、図8(c)と図9(c)とを比較すると、各光源202の発光時間を確保しつつ、発光の総量(面積)を抑えることができるので、画質を向上させつつ、消費電力を低減することが可能となる。
【0065】
さらに、バックライトユニット162の十分な発光時間を確保できるので、液晶パネル158や偏光眼鏡120に用いられる液晶素子の応答速度が遅い場合であっても、クロストークを発生させることなく、視認可能な輝度を確保できる。また、液晶素子の応答速度が速い場合は、従来に比べ格段に輝度の高い立体画像表示を得ることが可能となる。
【0066】
ここまで、第1フィールドデータと第2フィールドデータとを交互に表示する例を挙げて説明したが、表示データ生成部154は、プッシュスイッチ、十字キー等のスイッチから構成される操作部166への観察者の操作入力に応じて、第1フィールドデータおよび第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成してもよい。
【0067】
図10は、表示データ生成部154の他の動作を説明するためのタイミング図である。上述した例において、表示データ生成部154は、水平同期信号と垂直同期信号との排他的論理和によって映像データ切換信号を生成しているが、ここでは、水平同期信号をそのまま映像データ切換信号とする、もしくは、水平信号を反転して映像データ切換信号とすることで、表示データ生成部154から出力される表示データを第1フィールドデータ180または第2フィールドデータ182に固定することができる。
【0068】
上述したフィールドデータを切り換える表示装置110の構成では、偏光眼鏡120においても偏光特性の切換を伴うので、切換不要の偏光眼鏡と比較して、構造が複雑になり、コストが高くなる。ここでは、表示装置110の第1フィールドデータと第2フィールドデータとの切換を敢えて行わず、第1フィールドデータまたは第2フィールドデータのみを固定的に液晶パネル158に表示する。こうして、観察者は、偏光特性の切換機能を有していない偏光眼鏡しか準備されていない状況下であっても、その偏光特性の切換機能を有していない偏光眼鏡を通じて、立体映像を楽しむことができる。また、偏光眼鏡120に偏光特性の切換機能が付されている場合であっても、フィールドデータを固定すると共に、表示装置110から右眼窓および左眼窓の偏光フィルタを固定する信号を伝達することで、同様に、フィールドデータが固定された立体映像を楽しむことが可能となる。
【0069】
かかる構成では、液晶パネル158における表示データの遷移期間が不要となり、バックライトユニット162も消灯なしに発光し続けることができるので、高輝度の表示データを表示することができる。また、偏光眼鏡の偏光特性も左右固定となるため、安価なパッシブタイプの偏光眼鏡での視認が可能となり、例えば、複数人で表示データを視認する場合においても低費用で鑑賞することが可能となる。観察者は、高解像度の視認を試みる場合に、上述したフィールドデータを切り換える技術を用い、高輝度もしくは複数人の視認を試みる場合は、フィールドデータを固定する技術を用いるといった具合に、そのときの状況に応じて適切な視認を選択することができる。
【0070】
(表示方法)
次に、上述した表示装置110を用いて、表示データを表示する表示方法を説明する。
【0071】
図11は、表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。表示装置110のデータ取得部150は、立体映像データ(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)を取得し(S300)、表示データ生成部154は、右眼用映像データにおける奇数ライン(第1表示領域に対応する映像データ)および左眼用映像データにおける偶数ライン(第2表示領域に対応する映像データ)を組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける偶数ラインおよび左眼用映像データにおける奇数ラインを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成する(S302)。
【0072】
そして、表示制御部156は、表示データ生成部154で生成された表示データを液晶パネル158に走査方式で順次表示させ(S304)、バックライト制御部164は、表示データの走査時間より短い遷移時間で順次発光を開始させ、すべての光源202を消灯状態から発光状態に遷移させる(S306)。このとき、バックライト制御部164は、複数の光源202の発光開始タイミングを、内容が異なる時系列的に1つ前のフィールドにおける表示データの表示終了タイミングに基づいて決定し、複数の光源202の発光終了タイミングを、内容が異なる時系列的に次のフィールドにおける表示データの表示開始タイミングに基づいて決定する。また、バックライト制御部164は、各光源202それぞれの発光時間を等しくしている。
【0073】
かかる表示方法によっても、バックライトユニット162の適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータとのクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニット162における光源202の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。
【0074】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、液晶パネル158に偏光特性が異なる偏光フィルタを固定し、偏光眼鏡120の右眼窓と左眼窓とにおける偏光フィルタの偏光特性を動的に切り換えたが、偏光眼鏡120の偏光フィルタを固定し、液晶パネル158の奇数ライン(第1表示領域に対応する映像データ)と偶数ライン(第2表示領域に対応する映像データ)における偏光フィルタの偏光特性を動的に切り換えることもできる。
【0075】
図12は、液晶パネルの他の例における表示面の構成を説明するための説明図である。ここでは、液晶パネル158の表示面に設けられた光学シートの、奇数ラインに対応する領域および偶数ラインに対応する領域を、垂直同期信号を参照して、フィールドデータの切換タイミングに応じて交互に切り換えている。したがって、上述した偏光眼鏡120の偏光特性を切り換える技術と同様に、解像度が減じられることなく、さらに、フリッカや左右眼の映像知覚タイミング差を回避できる。したがって、観察者は、原画と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことができ、被写体が高速で移動している場合における左右の映像のずれに伴う立体映像に違和感を覚えることなく、眼の疲労感を軽減することが可能となる。
【0076】
また、上述した実施形態では、データ取得部150が、右眼用映像データと左眼用映像データを取得しているが、その代わりに、平面映像データと、その平面映像データの時間方向の補間データとを取得し、フィールドデータとして出力することもできる。かかる構成では、補間データにより被写体の動きが細かく表示されるので、被写体が高速に移動している場合においても、滑らかに推移し、画質を向上することができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
なお、本明細書の表示方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶パネルの背面側に配置されたバックライトユニットの発光制御を行う表示装置および表示方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
110 …表示装置
120 …偏光眼鏡
150 …データ取得部
152 …フレームメモリ
154 …表示データ生成部
156 …表示制御部
158 …液晶パネル
160 …赤外線通信部
162 …バックライトユニット
164 …バックライト制御部
166 …操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの背面側に配置されたバックライトユニットの発光制御を行う表示装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルに、両眼視差のある左右2つの映像データ(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)を表示し、観察者に対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体映像技術が脚光を浴びている。このような立体的な映像表示を実現するための技術については、様々な提案がなされており、例えば、μpolやXpol(登録商標)といった偏光フィルタ方式(パッシブタイプ)や、電子シャッタ方式(アクティブタイプ)が提案されている。
【0003】
偏光フィルタ方式を用いた立体映像技術では、例えば、液晶パネルの表示面に、偏光特性が異なる2種類の偏光フィルタが隔行で(水平ライン毎に)交互に配置される。そして、一方の偏光フィルタが配置された液晶パネルの奇数ラインに右眼用映像データを、他方の偏光フィルタが配置された液晶パネルの偶数ラインに左眼用映像データを表示させると、観察者は、偏光眼鏡を通じて、隔行の水平ラインに示された右眼映像を右眼で、左眼映像を左眼で視認し、両眼視差による立体映像を知覚することが可能となる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した偏光フィルタ方式を用いた立体映像技術は、表示映像のちらつきであるフリッカが生じず、映像を知覚するタイミングが左右の眼で異ならないといった点で電子シャッタ方式より優れているが、液晶パネル上の偏光特性の異なる2つの領域(上述した例では奇数ラインと偶数ライン)それぞれに、右眼用映像データまたは左眼用映像データを固定的に表示するので、片眼で知覚できる映像の解像度は、液晶パネル全体の解像度と比較して約1/2となり、劣ってしまう。
【0006】
そこで、偏光特性の異なる2つの領域に右眼用映像データと左眼用映像データとをそれぞれ交互に切換表示し、それを観察する際に利用する偏光眼鏡の左右の偏光特性を映像データの切換表示に同期させて切り換えることで、解像度を劣化させることなく、観察者に立体映像を知覚させる技術が新たに検討されている。
【0007】
かかる新たな技術では、液晶パネルの表示切換のみならず、偏光眼鏡の偏光特性も切り換えなくてはならない。このような状況下で、液晶パネルの輝度の向上を図るべく、液晶パネルを照射するバックライトユニットの発光時間を単純に長くとると、任意のフィールドデータと内容が異なる前後のフィールドデータとのクロストークが生じてしまう。このような事態を回避すべく、バックライトユニットの発光時間を単純に短くすると、液晶パネル内で輝度にバラツキが生じたり、表示に必要な輝度を得ることができなくなったりしてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、バックライトユニットの適切な発光制御を通じて、クロストークの発生を抑えつつ、十分な輝度を確保することが可能な表示装置および表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネルと、液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部と、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットと、表示制御部による第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部と、を備える。
【0010】
バックライト制御部は、複数の光源のうちの液晶パネルの映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源の発光開始タイミングを、時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて決定し、液晶パネルの映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源の発光終了タイミングを、時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて決定してもよい。また、バックライト制御部は、各光源それぞれの発光時間を等しくしてもよい。
【0011】
液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得するデータ取得部と、取得された右眼用映像データと左眼用映像データとを保持するフレームメモリと、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成する表示データ生成部と、をさらに備えてもよい。
【0012】
第1表示領域および第2表示領域は、一方が液晶パネルの映像表示ラインにおける奇数ラインであり、他方が映像表示ラインにおける偶数ラインであってもよい。
【0013】
表示データ生成部は、第1フィールドデータおよび第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の表示方法は、複数の映像表示ラインを有する液晶パネルに、入力映像信号の第1フィールドデータと、第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させ、液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットを、表示データの走査時間より短い遷移時間で複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるように制御する。
【0015】
液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得し、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示装置は、バックライトユニットの適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータ同士のクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニットにおける光源の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表示システムを構成する各装置の概略的な関係を示した説明図である。
【図2】表示装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】表示データ生成部の具体的な動作を説明するための機能ブロック図である。
【図4】表示データ生成部の動作基準となる各信号を示したタイミング図である。
【図5】液晶パネルの表示面の構成を説明するための説明図である。
【図6】液晶パネルに表示される表示データと偏光眼鏡を通じて知覚する映像との関係を示した説明図である。
【図7】バックライトユニットの構成例を示した説明図である。
【図8】表示制御部、偏光眼鏡およびバックライト制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】表示制御部、偏光眼鏡およびバックライト制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】表示データ生成部の他の動作を説明するためのタイミング図である。
【図11】表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図12】液晶パネルの他の例における表示面の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(表示システム100)
図1は、表示システム100を構成する各装置の概略的な関係を示した説明図である。表示システム100は、表示装置110と、偏光眼鏡120とを含んで構成される。表示装置110は、例えば、放送電波を通じて放送局112から、もしくは、インターネット、LAN(Local Area Network)、専用回線等の通信網114を通じてサーバ装置116から、または、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリといった記憶媒体118から、両眼視差による立体映像を知覚させるための立体映像データ(右眼用映像データと左眼用映像データ)を取得し、装置自体に搭載された液晶パネルに表示する。偏光眼鏡120には、偏光フィルタが設けられている。観察者は、偏光眼鏡120を装着することによって、表示装置110で表示される右眼用映像データと左眼用映像データとを、右眼および左眼でそれぞれ視認して、両眼視差による立体映像を知覚することができる。以下、表示装置110を構成する各機能部について説明し、その後、当該表示装置110を用いた表示方法を詳述する。
【0020】
(表示装置110)
図2は、表示装置110の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図2に示すように、表示装置110は、データ取得部150と、フレームメモリ152と、表示データ生成部154と、表示制御部156と、液晶パネル158と、赤外線通信部160と、バックライトユニット162と、バックライト制御部164と、操作部166とを含んで構成される。
【0021】
データ取得部150は、右眼用映像データと左眼用映像データとで構成される映像信号である立体映像データを、例えば、30Hzのフレーム周波数で取得する。ここで、フレームは映像を構成する1の画像をいい、インターレース方式においてそのフレームを奇数ラインと偶数ラインとに分けた画像をフィールドという。したがって、データ取得部150は、右眼用映像データおよび左眼用映像データによる画像を毎秒30枚取得することができる。また、データ取得部150は、右眼用映像データと左眼用映像データとを異なる経路(回線)から個々に取得してもよいし、1の経路から一体的なデータ(例えばサイドバイサイド方式によるデータ)として取得してもよい。
【0022】
フレームメモリ152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等を含んで構成され、データ取得部150で取得された右眼用映像データと左眼用映像データとを一時的に保持する。なお、HDDは正確には装置であるが、説明の便宜上本説明では他の記憶媒体と同義として扱う。
【0023】
表示データ生成部154は、フレームメモリ152から右眼用映像データおよび左眼用映像データを読み出し、右眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける第2表示領域に対応する映像データおよび左眼用映像データにおける第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとを、フレーム周波数の2倍の周波数(例えば60Hz)で交互に配置して表示データを生成する。ここで、液晶パネル158は、先頭ラインから最終ラインまでの複数の映像表示ラインを有し、第1表示領域および第2表示領域は、一方が液晶パネル158の映像表示ラインのうちの奇数ライン(奇数番の水平ライン)であり、他方が映像表示ラインのうちの偶数ライン(偶数番の水平ライン)である。
【0024】
ただし、本実施形態において、表示データ生成部154は、第1フィールドデータと第2フィールドデータとをそれぞれ2回ずつ繰り返し生成するので、フレーム周期(1フレーム)の間に、2つの第1フィールドデータと2つの第2フィールドデータを生成する。したがって、フィールド周波数はフレーム周波数の4倍(フレーム周波数が30Hzの場合120Hz)となる。かかる構成により、液晶パネル158への表示データの走査時間(走査開始から走査終了までの時間)を短縮することができる。ここでは、第1フィールドデータと第2フィールドデータとが切り換わった際には、互いのフィールドデータを「内容が異なるフィールドデータ」と表現し、2回ずつ繰り返す同一のフィールドデータと区別している。
【0025】
図3は、表示データ生成部154の具体的な動作を説明するための機能ブロック図であり、図4は、表示データ生成部154の動作基準となる各信号を示したタイミング図である。まず、表示データ生成部154のカウンタ154aは、フィールド周波数(例えば120Hz)/2×水平ラインの総数(例えば1080)で表される水平同期信号(図4参照)のエッジ(立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ)毎にカウント値をインクリメントし、水平ラインの総数に至ったタイミングでそのカウント値をリセットする。また、カウンタ154aは、インクリメントされたカウント値をカウント信号を通じてフレームメモリ152に出力する。したがって、垂直同期信号(図4参照)の1周期(1クロック)の間に1から水平ラインの総数までを4回(フィールドデータ4つ分)繰り返してカウントすることとなる。
【0026】
フレームメモリ152は、カウンタ154aからカウント信号が入力されると、そのカウント信号が示すカウント値に相当する右眼用映像データおよび左眼用映像データの水平ラインをそれぞれ表示データ生成部154のスイッチ154bに出力する。したがって、垂直同期信号の1周期の間に水平ライン単位で同一の右眼用映像データおよび左眼用映像データがそれぞれ4回出力されることとなる。
【0027】
表示データ生成部154の排他的論理和回路154cは、水平同期信号と垂直同期信号との排他的論理和をとって、スイッチ154bがいずれの映像データを出力するかを判定するための映像データ切換信号(図4参照)を生成する。したがって、映像データ切換信号は、垂直同期信号が負論理の間、水平同期信号と同じ信号となり、垂直同期信号が正論理の間、水平同期信号を論理反転した信号になる。
【0028】
スイッチ154bは、フレームメモリ152から、カウント値に相当する右眼用映像データおよび左眼用映像データの水平ラインを並行して順次入力し、排他的論理和回路154cから入力した映像データ切換信号に応じて、いずれか一方の水平ラインを出力する。具体的に、映像データ切換信号が負論理のときには右眼用映像データの水平ラインを、映像データ切換信号が正論理のときには左眼用映像データの水平ラインを出力する。
【0029】
したがって、図4に示すように、垂直同期信号が負論理の間、第1フィールドデータ180が2回繰り返し生成され、垂直同期信号が正論理の間、第2フィールドデータ182が2回繰り返し生成される。このとき、第1フィールドデータ180の奇数ライン(第1表示領域)は、右眼用映像データの奇数ラインとなり、第1フィールドデータ180の偶数ライン(第2表示領域)は、左眼用映像データの偶数ラインとなっている。また、第2フィールドデータ182の奇数ラインは、左眼用映像データの奇数ラインとなり、第2フィールドデータ182の偶数ラインは、右眼用映像データの偶数ラインとなっている。
【0030】
また、ここでは、一旦フレームメモリ152に保持された右眼用映像データおよび左眼用映像データを順次取り出して、第1フィールドデータ180と第2フィールドデータ182とからなる表示データを生成しているが、表示データ生成部154は、データ取得部150が取得した右眼用映像データおよび左眼用映像データを直接加工し、表示データ生成部154の後段に再配置されたフレームメモリ152に保持する構成とすることもできる。この場合、フレームメモリ152には、第1フィールドデータ180と第2フィールドデータ182とが60Hzで交互に保持され、表示制御部156がフレームメモリ152から同一のフィールドデータを2回ずつ読み出すことでフィールド周期を120Hzに上げている。
【0031】
かかる構成では、フレームメモリ152が、右眼用映像データおよび左眼用映像データの両方を保持する代わりに、右眼用映像データと左眼用映像データとの総和の1/2のデータ容量である第1フィールドデータ180または第2フィールドデータ182のいずれか一方のみを保持すればよいので、フレームメモリ152の容量を著しく削減することが可能となる。
【0032】
表示制御部156は、表示データ生成部154で生成された表示データを液晶パネル158に走査方式で順次表示させる。ここで、走査方式(プログレッシブ方式、インターレース方式等)は、液晶パネル158に映像表示ライン(水平ライン)単位で左から右に表示し、それを上から下に順次繰り返して、表示データ全体を表示する方式をいう。本実施形態において、表示制御部156は、プログレッシブ方式を用いて表示データを液晶パネル158に表示させている。
【0033】
液晶パネル158は、液晶組成物を2枚のガラス板に封入して形成され、表示制御部156の制御信号を受けて、自己が有する複数の映像表示ラインに表示データを表示する。また、液晶パネル158の表示面には、偏光特性が異なる2つの偏光フィルタが、隔行で(1ライン毎に)並置されている。ここで、偏光特性が異なるとは、偏光フィルタとして直線偏光を利用する場合、一方の偏光フィルタと他方の偏光フィルタとの偏光が例えば直交しており、偏光フィルタとして円偏光を利用する場合、一方の偏光フィルタは右偏光であり他方の偏光フィルタが左偏光であることをいう。
【0034】
図5は、液晶パネル158の表示面の構成を説明するための説明図である。図5において液晶パネル158の第1表示領域としての映像表示ラインにおける奇数ライン(odd)184の表示面には、任意の偏光特性を有する第1フィルタが形成され、液晶パネル158の第2表示領域としての映像表示ラインにおける偶数ライン(even)186の表示面には、第1フィルタとは偏光特性が異なる第2フィルタが形成されている。
【0035】
具体的に映像表示ラインにおける奇数ライン184に形成された第1フィルタには、偏光軸が水平方向と垂直な方向にある直線偏光として画像光が入射し、この入射した画像光に対して+λ(波長)/4分の位相差を与えて右回りの円偏光として射出する。また、映像表示ラインにおける偶数ライン186に形成された第2フィルタは、入射した画像光に対して−λ/4分の位相差を与えて左回りの円偏光として射出する。したがって、奇数ライン184の第1フィルタを透過した右眼用映像データまたは左眼用映像データの画像光と、偶数ライン186の第2フィルタを透過した右眼用映像データまたは左眼用映像データの画像光とは、図5において矢印で模式的に示したように、その偏光の回転方向が互いに逆である円偏光となる。また、第1フィルタまたは第2フィルタのいずれか一方にλ/2分の位相差を与えて、入射した直線偏光に対して垂直な直線偏光で射出し、他方を実質的に位相差が無い単なるガラスや樹脂とすることによっても偏光特性を異ならせることができる。
【0036】
赤外線通信部160は、偏光眼鏡120との赤外線通信を確立し、偏光眼鏡120に、偏光特性の切り換えタイミングを伝達すべく図4に示した垂直同期信号を送信する。
【0037】
上述したように、表示データ生成部154は、垂直同期信号が負論理の間、第1フィールドデータ180を生成し、垂直同期信号が正論理の間、第2フィールドデータ182を生成する。第1フィールドデータ180では、奇数ラインが右眼用映像データ、偶数ラインが左眼用映像データとなっており、第2フィールドデータ182では、奇数ラインが左眼用映像データ、偶数ラインが右眼用映像データとなっている。したがって、垂直同期信号が負論理の間、右眼用映像データは液晶パネル158における奇数ライン184の第1フィルタを通じて、左眼用映像データは液晶パネル158における偶数ライン186の第2フィルタを通じて射出され、垂直同期信号が正論理の間、右眼用映像データは偶数ライン186の第2フィルタを通じて、左眼用映像データは奇数ライン184の第1フィルタを通じて射出される。
【0038】
このとき偏光眼鏡120は、右眼用映像データを観察者の右眼のみに、左眼用映像データを観察者の左眼のみに視認させなければならない。したがって、偏光眼鏡120は、赤外線通信部160から垂直同期信号を受信し、その垂直同期信号に応じて、観察者の右眼に対応する偏光眼鏡120の右眼窓の偏光フィルタおよび左眼に対応する左眼窓の偏光フィルタを制御する。具体的に、垂直同期信号が負論理の間、右眼窓の偏光フィルタは、液晶パネル158の映像表示ラインにおける奇数ライン184に設けられた第1フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる第1の直線偏光を透過し、第2フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる、第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光を遮断するように切り換える。同様に、左眼窓の偏光フィルタは、液晶パネル158の映像表示ラインにおける偶数ライン186に設けられた第2フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる第2の直線偏光を透過し、第1フィルタから射出した円偏光に対して所定の位相差が与えられて得られる、第2の直線偏光と直交する第1の直線偏光を遮断するように切り換える。そして、垂直同期信号が正論理の間、右眼窓と左眼窓との偏光フィルタを、それぞれ負論理の間とは逆の透過特性を有するように切り換える。こうして、観察者は、右眼用映像データを右眼のみで、左眼用映像データを左眼のみで視認することができ、立体映像が正しく知覚される。以下、液晶パネル158の表示切換と、偏光眼鏡120の偏光特性の切換により、どのようにして立体映像が提供されるのか、図6を用いて具体的に説明する。
【0039】
図6は、液晶パネル158に表示される表示データと偏光眼鏡120を通じて知覚する映像との関係を示した説明図である。垂直同期信号が負論理の間、液晶パネル158では、表示データ190aが表示される。かかる表示データ190aは、奇数ラインに右眼用映像データが配置され、偶数ラインに左眼用映像データが配されている。このとき、偏光眼鏡120の右眼窓では奇数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、右眼で表示データ190bを知覚する。また、偏光眼鏡120の左眼窓では偶数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、左眼で表示データ190cを知覚する。
【0040】
垂直同期信号が正論理に切り換わると、液晶パネル158では、表示データ190dが表示される。かかる表示データ190dは、奇数ラインに左眼用映像データが配置され、偶数ラインに右眼用映像データが配されている。このとき、偏光眼鏡120の右眼窓では偶数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、右眼で表示データ190eを知覚し、偏光眼鏡120の左眼窓では奇数ラインの直線偏光を透過させるので、観察者は、左眼で表示データ190fを知覚する。したがって、垂直同期信号が負論理および正論理である間の表示データが脳内で合成されると、観察者は、右眼で表示データ190gを、左眼で表示データ190hを知覚することができる。
【0041】
このような表示データ190gおよび表示データ190hは、データ取得部150が取得した右眼用映像データおよび左眼用映像データと解像度が等しくなる。これは、観察者が、解像度の劣化のない立体映像を知覚することが可能となることを意味している。
【0042】
以上説明した各機能部によると、偏光フィルタ方式ではあるが、解像度が減じられることなく、さらに、電子シャッタ方式を採用した場合に問題となるフリッカや左右眼の映像知覚タイミング差を回避できる。したがって、観察者は、原画(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことができ、被写体が高速で移動している場合においても、左右の映像知覚タイミングのずれに伴う立体映像の違和感を覚えることなく、疲労感を軽減することが可能となる。
【0043】
バックライトユニット162は、液晶パネル158の背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、液晶パネル158における複数の領域、例えば、水平ラインの総数を8等分した領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有する。光源は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)で構成される。ここで、走査方向は、走査が行われる方向であり、ここでは水平方向をいう。
【0044】
図7は、バックライトユニット162の構成例を示した説明図である。図7では、図面左側に側面視の断面図を、図面右側に正面視の断面図を示す。バックライトユニット162では、例えば、発光ダイオード200を複数(ここでは24個)並置して形成した光源202が、液晶パネル158の背面における反射シート204上に、走査方向に対応して間隔が均等になるように配置される。発光ダイオード200は、同一の光源202に関して発光開始タイミングと発光終了タイミングが等しく、各光源202は、後述するバックライト制御部164によりそれぞれ独立して発光制御される。
【0045】
また、液晶パネル158と光源202との間には、拡散シート206や光学シート208が積層され、光源202で発光された光が拡散される。各光源202の間には、断面が三角形状に形成された遮光壁210が設けられ、光源202の照射範囲をある程度制限している。ただし、本実施形態のバックライトユニット162では、複数の光源202から発せられた光が、区画された複数の領域のうち自己の領域以外の他の領域にも漏出することを許容する構造をとっている。これにより、自己の領域における光源202の発光輝度を抑えることができる。
【0046】
したがって、バックライトユニット162の任意の光源202が発光しているときに、自己の領域以外の他の領域において液晶パネル158に表示データが表示されていると、意図せず、その表示データが任意の光源202の漏れ光によって観察者に視認されてしまい、クロストークの原因となる。したがって、内容が異なる時間的に前後のフィールドデータの間で、前回のフィールドデータの表示が終了していないとき、または、次回のフィールドデータの表示が開始されているときには、自己のフィールドデータを表示する水平ライン(映像表示ライン)の背面側に対応するバックライトユニット162の光源202を発光させてはならない。
【0047】
バックライト制御部164は、表示制御部156による表示データの表示切換に応じて、上述した複数の光源202の発光タイミングを制御する。
【0048】
図8および図9は、表示制御部156、偏光眼鏡120およびバックライト制御部164の動作を説明するためのタイミングチャートである。バックライトユニット162の発光制御は様々な手段が考えられるが、ここでは、図8に示す発光制御例を前提に、図9に示す新たな手段を提案する。
【0049】
図8(a)は、表示制御部156が表示データを表示させるタイミングを表しており、縦軸は水平ラインの垂直位置(垂直方向の位置)、横軸は時間を示している。図8(a)に示すように、液晶パネル158には、表示制御部156によって、奇数ラインに右眼用映像データを偶数ラインに左眼用映像データを配置した第1フィールドデータが2つ分1/60秒表示され、引き続き、奇数ラインに左眼用映像データを偶数ラインに右眼用映像データを配置した第2フィールドデータが2つ分1/60秒表示され、以後、両フィールドデータが交互に繰り返し表示されている。
【0050】
ここでは、フィールドデータの周波数を2倍(120Hz)に上げ、同一のフィールドデータを2回連続して表示することで、フィールドデータの走査時間を1/2倍に短くすることができ、1画像を表示するために費やす時間を1/60secから1/120secに短縮することが可能となる。すなわち、図8(a)における表示データのプログレッシブ方式に基づく表示推移を示す傾斜部分220が、フィールド周波数が60Hzの場合に比べ起き上がり、垂直に近づくこととなる。こうすることで、表示データのホールド時間を確保するのみならず、クロストークを回避しつつ、バックライトユニット162の点灯時間を長時間確保することができる。
【0051】
また、表示データの表示タイミングにおいては、液晶パネル158における表示デバイスの材料の応答特性に応じて信号の更新に費やす遷移期間が設けられ(図8(a)中クロスハッチングで示す。)、その間は、黒色(液晶における遮光)を表示する。
【0052】
図8(b)は、偏光眼鏡120が電子シャッタを開閉するタイミングを表しており、横軸は時間を示している。偏光眼鏡120は、上述した偏光特性を切り換えるのみならず、内容の異なるフィールドデータを同時に視認するのを回避するため、電子シャッタの開閉制御も行っている。図8(b)では、電子シャッタが開いている状態を白抜きで、閉じている状態をハッチングで示し、白抜きに記載された文言は、電子シャッタが開いている状態での偏光特性を示している。偏光眼鏡120は、例えば、第1フィールドデータの表示が開始されてもすぐには電子シャッタを開かず、内容が異なる前回の第2フィールドデータの最終ライン(垂直位置が最下部のライン)の表示が終了した後に電子シャッタを開く。そして、偏光眼鏡120は、内容の異なる次回の第2フィールドデータの先頭ライン(垂直位置が最上部のライン)の表示が開始される前には電子シャッタを閉じる。また、偏光眼鏡120では、右眼窓および左眼窓における偏光特性の更新や電子シャッタの開閉に伴う遷移期間も考慮して電子シャッタの開閉タイミングが決められる。
【0053】
図8(c)は、バックライト制御部164がバックライトユニット162を発光させるタイミングを表しており、縦軸は液晶パネル158の垂直位置、横軸は時間を示している。ここでは、光源202の発光を白抜きで、光源202の消灯をハッチングで示している。
【0054】
上述したように、第1フィールドデータと第2フィールドデータとでは、観察者の左右眼に知覚すべき映像データが異なるので、第1フィールドデータの前段の第2フィールドデータの最終ラインがまだ表示終了していないときや後段の第2フィールドデータの先頭ラインが表示開始されたときに、第1フィールドデータを表示するためのバックライトユニット162の漏れ光が生じると、フィールドデータ間のクロストークが生じる。したがって、クロストークの発生を回避するため、第1フィールドデータと第2フィールドデータの遷移期間ではバックライトユニット162の発光を停止するのが望ましい。
【0055】
ここで、第1フィールドデータと第2フィールドデータの遷移期間での発光を回避しつつ、液晶パネル158に第1フィールドデータが表示され、かつ、偏光眼鏡120の電子シャッタが開いている期間のみバックライトユニット162の光源202を発光させると、図8(c)のような発光タイミングを得ることができる。
【0056】
しかし、図8(c)の発光タイミングに従ってバックライトユニット162の光源202を発光させると、第1フィールドデータを表示するための任意の光源222と内容の異なる前回の第2フィールドデータの最終ラインとの距離が近くなり、また、第1フィールドデータを表示するための任意の光源224と次回の第2フィールドデータの先頭ラインとの距離が近くなる。したがって、漏れ光によるクロストークを回避するためには、バックライトユニット162の全体的な発光時間を短縮しなければならなくなる。そうすると、液晶パネル158の先頭ラインや最終ラインに対応したそれぞれの光源202の発光時間も短縮され、全体的に輝度が劣化する。
【0057】
また、図8(c)の発光タイミングに従ってバックライトユニット162の光源202を発光させると、光源202の垂直方向の位置によってそれぞれの発光時間が異なり、液晶パネル158内で輝度にバラツキが生じることとなる。
【0058】
そこで、バックライト制御部164における光源202の発光を図9のように制御する。図9(a)および(b)のタイミングは実質的に図8(a)および(b)と等しい。図9(c)を参照すると、バックライト制御部164は、表示制御部156による表示データ(第1フィールドデータおよび第2フィールドデータ)の走査時間より短い遷移時間(すべての光源202が消灯状態から発光状態に遷移する時間または発光状態から消灯状態に遷移する時間)で、例えば液晶パネル158の先頭ラインに対応する光源202から最終ラインに対応する光源202へと順次発光を開始させる。すなわち、図9(c)の傾斜部分226が、図9(a)における表示データのプログレッシブ方式に基づく表示推移を示す傾斜部分220と比べてさらに起き上がり、より垂直に近づくこととなる。以下、具体的な発光制御タイミングを詳述する。
【0059】
まず、バックライト制御部164は、内容が異なる時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて、そのフィールドデータとのクロストークが許容される所定値(例えば7%)以内に収まるように複数の光源202のうちの液晶パネル158の映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源202の発光開始タイミング230を決定し、内容が異なる時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて、そのフィールドデータとのクロストークが許容される所定値以内に収まるように液晶パネル158の映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源202の発光終了タイミング232を決定する。ここで、フィールドデータ表示終了タイミングや表示開始タイミングは、最終ラインや先頭ラインの表示に限られず、すべての水平ラインの表示が考慮される。
【0060】
次に、バックライト制御部164は、液晶パネル158の最終ラインの表示開始タイミングと先頭ラインの表示終了タイミングに基づき、少なくともこの最終ラインの表示開始タイミングと先頭ラインの表示終了タイミングにおいて、光源202が発光しているように、最終ラインに対応した光源202の発光開始タイミング234と、先頭ラインに対応した光源202の発光終了タイミング236とを決定する。
【0061】
他の光源202に関しては、発光開始タイミング230と発光開始タイミング234とを結ぶ直線上の任意のタイミングから、発光終了タイミング232と発光終了タイミング236とを結ぶ直線上の任意のタイミングまで発光させる。こうして、発光タイミングは図9(c)のように略平行四辺形となり、液晶パネル158におけるそれぞれの光源202の発光時間は等しくなる。図9(c)においては、発光時間が1/120sec程度確保されているが、デバイスの特性や周囲温度の変化に対する裕度を設け、例えば1/240〜1/120secの間で調整することができる。
【0062】
また、上述したように、バックライトユニット162は、走査方向に対応して区画された複数の領域(ここでは8等分)に相当する8つの光源202で構成されている。したがって、バックライト制御部164も8つの光源202についてのみ独立して発光制御を行うこととなる。このように複数の領域に相当する光源202のみを発光制御すると図9(d)のようになる。ここでもそれぞれの光源202の発光時間は等しくなる。
【0063】
かかる構成により、バックライトユニット162の適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータとのクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニット162における各光源202の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。また、各光源202の発光時間が等しいので、液晶パネル158内で輝度を均一化でき、観察者は、原画と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことが可能となる。
【0064】
また、図8(c)と図9(c)とを比較すると、各光源202の発光時間を確保しつつ、発光の総量(面積)を抑えることができるので、画質を向上させつつ、消費電力を低減することが可能となる。
【0065】
さらに、バックライトユニット162の十分な発光時間を確保できるので、液晶パネル158や偏光眼鏡120に用いられる液晶素子の応答速度が遅い場合であっても、クロストークを発生させることなく、視認可能な輝度を確保できる。また、液晶素子の応答速度が速い場合は、従来に比べ格段に輝度の高い立体画像表示を得ることが可能となる。
【0066】
ここまで、第1フィールドデータと第2フィールドデータとを交互に表示する例を挙げて説明したが、表示データ生成部154は、プッシュスイッチ、十字キー等のスイッチから構成される操作部166への観察者の操作入力に応じて、第1フィールドデータおよび第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成してもよい。
【0067】
図10は、表示データ生成部154の他の動作を説明するためのタイミング図である。上述した例において、表示データ生成部154は、水平同期信号と垂直同期信号との排他的論理和によって映像データ切換信号を生成しているが、ここでは、水平同期信号をそのまま映像データ切換信号とする、もしくは、水平信号を反転して映像データ切換信号とすることで、表示データ生成部154から出力される表示データを第1フィールドデータ180または第2フィールドデータ182に固定することができる。
【0068】
上述したフィールドデータを切り換える表示装置110の構成では、偏光眼鏡120においても偏光特性の切換を伴うので、切換不要の偏光眼鏡と比較して、構造が複雑になり、コストが高くなる。ここでは、表示装置110の第1フィールドデータと第2フィールドデータとの切換を敢えて行わず、第1フィールドデータまたは第2フィールドデータのみを固定的に液晶パネル158に表示する。こうして、観察者は、偏光特性の切換機能を有していない偏光眼鏡しか準備されていない状況下であっても、その偏光特性の切換機能を有していない偏光眼鏡を通じて、立体映像を楽しむことができる。また、偏光眼鏡120に偏光特性の切換機能が付されている場合であっても、フィールドデータを固定すると共に、表示装置110から右眼窓および左眼窓の偏光フィルタを固定する信号を伝達することで、同様に、フィールドデータが固定された立体映像を楽しむことが可能となる。
【0069】
かかる構成では、液晶パネル158における表示データの遷移期間が不要となり、バックライトユニット162も消灯なしに発光し続けることができるので、高輝度の表示データを表示することができる。また、偏光眼鏡の偏光特性も左右固定となるため、安価なパッシブタイプの偏光眼鏡での視認が可能となり、例えば、複数人で表示データを視認する場合においても低費用で鑑賞することが可能となる。観察者は、高解像度の視認を試みる場合に、上述したフィールドデータを切り換える技術を用い、高輝度もしくは複数人の視認を試みる場合は、フィールドデータを固定する技術を用いるといった具合に、そのときの状況に応じて適切な視認を選択することができる。
【0070】
(表示方法)
次に、上述した表示装置110を用いて、表示データを表示する表示方法を説明する。
【0071】
図11は、表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。表示装置110のデータ取得部150は、立体映像データ(右眼用映像データおよび左眼用映像データ)を取得し(S300)、表示データ生成部154は、右眼用映像データにおける奇数ライン(第1表示領域に対応する映像データ)および左眼用映像データにおける偶数ライン(第2表示領域に対応する映像データ)を組み合わせて得られる第1フィールドデータと、右眼用映像データにおける偶数ラインおよび左眼用映像データにおける奇数ラインを組み合わせて得られる第2フィールドデータとを交互に配置して表示データを生成する(S302)。
【0072】
そして、表示制御部156は、表示データ生成部154で生成された表示データを液晶パネル158に走査方式で順次表示させ(S304)、バックライト制御部164は、表示データの走査時間より短い遷移時間で順次発光を開始させ、すべての光源202を消灯状態から発光状態に遷移させる(S306)。このとき、バックライト制御部164は、複数の光源202の発光開始タイミングを、内容が異なる時系列的に1つ前のフィールドにおける表示データの表示終了タイミングに基づいて決定し、複数の光源202の発光終了タイミングを、内容が異なる時系列的に次のフィールドにおける表示データの表示開始タイミングに基づいて決定する。また、バックライト制御部164は、各光源202それぞれの発光時間を等しくしている。
【0073】
かかる表示方法によっても、バックライトユニット162の適切な発光制御を通じて、内容の異なる前後のフィールドデータとのクロストークの発生を抑えつつ、バックライトユニット162における光源202の発光時間を確保し、十分な輝度を得ることが可能となる。
【0074】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、液晶パネル158に偏光特性が異なる偏光フィルタを固定し、偏光眼鏡120の右眼窓と左眼窓とにおける偏光フィルタの偏光特性を動的に切り換えたが、偏光眼鏡120の偏光フィルタを固定し、液晶パネル158の奇数ライン(第1表示領域に対応する映像データ)と偶数ライン(第2表示領域に対応する映像データ)における偏光フィルタの偏光特性を動的に切り換えることもできる。
【0075】
図12は、液晶パネルの他の例における表示面の構成を説明するための説明図である。ここでは、液晶パネル158の表示面に設けられた光学シートの、奇数ラインに対応する領域および偶数ラインに対応する領域を、垂直同期信号を参照して、フィールドデータの切換タイミングに応じて交互に切り換えている。したがって、上述した偏光眼鏡120の偏光特性を切り換える技術と同様に、解像度が減じられることなく、さらに、フリッカや左右眼の映像知覚タイミング差を回避できる。したがって、観察者は、原画と解像度が等しい高画質の映像を楽しむことができ、被写体が高速で移動している場合における左右の映像のずれに伴う立体映像に違和感を覚えることなく、眼の疲労感を軽減することが可能となる。
【0076】
また、上述した実施形態では、データ取得部150が、右眼用映像データと左眼用映像データを取得しているが、その代わりに、平面映像データと、その平面映像データの時間方向の補間データとを取得し、フィールドデータとして出力することもできる。かかる構成では、補間データにより被写体の動きが細かく表示されるので、被写体が高速に移動している場合においても、滑らかに推移し、画質を向上することができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
なお、本明細書の表示方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶パネルの背面側に配置されたバックライトユニットの発光制御を行う表示装置および表示方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
110 …表示装置
120 …偏光眼鏡
150 …データ取得部
152 …フレームメモリ
154 …表示データ生成部
156 …表示制御部
158 …液晶パネル
160 …赤外線通信部
162 …バックライトユニット
164 …バックライト制御部
166 …操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像表示ラインを有する液晶パネルと、
前記液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、前記第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部と、
前記液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、前記液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットと、
前記表示制御部による前記第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で前記複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記バックライト制御部は、前記複数の光源のうちの前記液晶パネルの映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源の発光開始タイミングを、時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて決定し、前記液晶パネルの映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源の発光終了タイミングを、時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記バックライト制御部は、各光源それぞれの発光時間を等しくすることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、前記第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、
両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得するデータ取得部と、
取得された前記右眼用映像データと前記左眼用映像データとを保持するフレームメモリと、
前記右眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第1フィールドデータと、前記右眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第2フィールドデータとを交互に配置して前記表示データを生成する表示データ生成部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1表示領域および第2表示領域は、一方が前記液晶パネルの映像表示ラインにおける奇数ラインであり、他方が映像表示ラインにおける偶数ラインであることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示データ生成部は、前記第1フィールドデータおよび前記第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成することを特徴とする請求項4または5に記載の表示装置。
【請求項7】
複数の映像表示ラインを有する液晶パネルに、入力映像信号の第1フィールドデータと、前記第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる前記表示データを走査方式で表示させ、
前記液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、前記液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットを、前記表示データの走査時間より短い遷移時間で前記複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるように制御する
ことを特徴とする表示方法。
【請求項8】
前記液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、前記第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、
両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得し、
前記右眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第1フィールドデータと、前記右眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第2フィールドデータとを交互に配置して前記表示データを生成することを特徴とする請求項7に記載の表示方法。
【請求項1】
複数の映像表示ラインを有する液晶パネルと、
前記液晶パネルに入力映像信号の第1フィールドデータと、前記第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる表示データを走査方式で表示させる表示制御部と、
前記液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、前記液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットと、
前記表示制御部による前記第1フィールドデータの走査時間および第2フィールドデータの走査時間より短い遷移時間で前記複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるバックライト制御部と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記バックライト制御部は、前記複数の光源のうちの前記液晶パネルの映像表示ラインにおける先頭ラインに対応する光源の発光開始タイミングを、時系列的に1つ前のフィールドデータの表示終了タイミングに基づいて決定し、前記液晶パネルの映像表示ラインにおける最終ラインに対応する光源の発光終了タイミングを、時系列的に次のフィールドデータの表示開始タイミングに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記バックライト制御部は、各光源それぞれの発光時間を等しくすることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、前記第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、
両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得するデータ取得部と、
取得された前記右眼用映像データと前記左眼用映像データとを保持するフレームメモリと、
前記右眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第1フィールドデータと、前記右眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第2フィールドデータとを交互に配置して前記表示データを生成する表示データ生成部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1表示領域および第2表示領域は、一方が前記液晶パネルの映像表示ラインにおける奇数ラインであり、他方が映像表示ラインにおける偶数ラインであることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示データ生成部は、前記第1フィールドデータおよび前記第2フィールドデータのいずれか一方のみから表示データを生成することを特徴とする請求項4または5に記載の表示装置。
【請求項7】
複数の映像表示ラインを有する液晶パネルに、入力映像信号の第1フィールドデータと、前記第1フィールドデータとは内容が異なり、時系列的に次のフィールドデータである第2フィールドデータとからなる前記表示データを走査方式で表示させ、
前記液晶パネルの背面側に配置され、走査方向に対応して区画された、前記液晶パネルにおける複数の領域それぞれに照射する光を発光する複数の光源を有するバックライトユニットを、前記表示データの走査時間より短い遷移時間で前記複数の光源における消灯状態と発光状態とを遷移させるように制御する
ことを特徴とする表示方法。
【請求項8】
前記液晶パネルは、所定の偏光特性を有する第1表示領域と、前記第1表示領域と偏光特性の異なる第2表示領域とを有し、
両眼視差による立体映像を知覚させるための右眼用映像データと左眼用映像データとを取得し、
前記右眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第1フィールドデータと、前記右眼用映像データにおける前記第2表示領域に対応する映像データおよび前記左眼用映像データにおける前記第1表示領域に対応する映像データを組み合わせて得られる前記第2フィールドデータとを交互に配置して前記表示データを生成することを特徴とする請求項7に記載の表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−158668(P2011−158668A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19678(P2010−19678)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(308036402)JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社 (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(308036402)JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社 (1,152)
【Fターム(参考)】
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