説明

表示装置および表示素子の駆動制御方法

【課題】表示素子の実際の静電容量を検出して、検出結果に応じて最適な駆動条件を自動調整し、さらに全温度範囲の駆動条件を自動調整する表示装置の実現。
【解決手段】駆動された後駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子10と、表示素子が呈する静電容量を検出する静電容量検出回路14と、表示素子の温度を検出する温度センサ27と、表示素子の駆動を制御する制御部23と、を有し、制御部は、表示素子を所定の駆動条件で駆動した表示状態において検出した静電容量に基づいて駆動条件を調整する駆動条件調整回路23,24と、所定の温度範囲に渡り、最適な駆動条件の対応関係を示した1つ以上の温度補償モデルを記憶した温度補償記憶回路26と、を有し、表示素子の駆動条件を調整した時の温度と、温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における表示素子の駆動条件を変更する表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示素子の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コレステリック液晶などのメモリ性を有する材料を用いた表示素子が開発され、電子ペーパー等に応用されている。電子ペーパーは、フィルム基板を用いた難度の高い製造プロセスであることから、表示素子のコントラスト、明るさ、ガンマなどがロット間でバラつきやすい。製造後も、表示素子の長期間の使用により、このような特性の変化が懸念される。このようなバラツキや経年変化があると、同じ駆動条件で表示素子を駆動しても望ましい表示が行えないという問題が発生する。
【0003】
そこで、そのロット間のバラツキや経年変化を検出し、最適な駆動条件になるように自動調整することが提案されている。
【0004】
例えば、表示素子に輝度センサを搭載し、実際の表示の状態を検出して所望の表示状態が得られるように調整することが提案されている。しかし、表示素子に輝度センサを搭載するのは、コスト面や外観面から問題があり、特に電子ペーパーのように持ち運びのしやすさを特徴とする反射型表示素子に輝度センサを搭載することは好ましくない。
【0005】
また、表示中には常時通電を行う表示素子の累積通電時間を測定し、経年変化を予測して補正することも行われる。しかし、電子ペーパーは書き換え時のみ通電し、その通電も不定期に行われるため、累積通電時間を利用した補正は、電子ペーパーに適用できない。
【0006】
液晶表示素子における駆動は、静電容量を有する各画素を駆動することであり、その駆動条件は静電容量値に応じて決定される。そこで、ダミー画素を設け、ダミー画素の静電容量値を検出して駆動電圧を調整することが提案されている。しかし、ダミー画素の静電容量と実際の表示画素の静電容量は、駆動履歴の相違により適合せず、検出精度が十分でないという問題がある。また、提案の方法では、ダミー画素で構成されるCR発振回路の発振周波数を検出して静電容量値を検出している。この検出方法は、TFT液晶表示素子のような比抵抗が高く、容量特性が安定している場合には実用的であるが、電子ペーパーに使用されるメモリ性を有するコレステリック液晶のように、比抵抗が相対的に低く、容量特性が不安定な場合には、発振回路の安定性が不十分で、静電容量を高精度に検出することができない。
【0007】
また、温度に応じて液晶表示素子の静電容量が変化することが知られている。言い換えれば、温度により静電容量が変化し、それに応じて駆動条件も変化する。そこで、液晶表示素子の静電容量を検出して駆動条件を調整することにより、温度にかかわらず常時良好な表示が得られるようにすることが提案されている。しかしながら、これは温度に応じた調整のみで、バラツキや経年変化は考慮されていない。
【0008】
さらに、液晶表示素子の静電容量を検出して駆動条件を調整するには長時間を要する。液晶表示素子の静電容量のバラツキ、すなわち標準的な液晶表示素子の静電容量との差は、一度検出すれば判明する。また、液晶表示素子の静電容量は、短時間の間に変化するものではない。そのため、液晶表示素子の静電容量のバラツキや経年変化に起因する駆動条件の差を補正するための静電容量の検出および駆動条件調整動作は、頻繁に行なう必要はない。そのため、駆動条件調整動作にある程度時間を要しても問題はない。しかし、液晶表示素子の温度は短い時間で変化するため、温度が変化するたびに、長時間を要する静電容量の検出および駆動条件調整動作を行なうのは、表示素子の実質的な応答性を低下させるという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−065058号公報
【特許文献2】特開昭52−140295号公報
【特許文献3】特開2002−140047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実施形態によれば、これまでにない方法で、メモリ性を有する表示装置のロット間のバラツキや経年変化を検出し、最適な駆動条件になるように自動調整を行うと共に、1回の自動調整の結果で広い温度範囲の駆動条件を調整する表示装置が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の第1の観点によれば、駆動された後、駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子と、表示素子が呈する静電容量を検出する静電容量検出回路と、表示素子の温度を検出する温度センサと、表示素子の駆動を制御する制御部と、を有し、制御部は、表示素子を所定の駆動条件で駆動した表示状態において検出した静電容量に基づいて、表示素子の駆動条件を調整する駆動条件調整回路と、所定の温度範囲に渡り、表示素子が最適な表示特性となる駆動条件の対応関係を示した1つ以上の温度補償モデルを記憶した温度補償記憶回路と、を有し、表示素子の駆動条件を調整した時の温度と、温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における表示素子の駆動条件を変更する表示装置が提供される。
【0012】
実施形態の第2の観点によれば、駆動された後、駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子の駆動制御方法であって、表示素子を所定の駆動条件で駆動して表示状態を設定した後、設定した表示状態において、表示素子が呈する静電容量を検出し、検出した静電容量に基づいて、表示素子の駆動条件を自動調整し、表示素子の温度を検出し、検出した温度および温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における表示素子の駆動条件を変更する表示素子の駆動制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記の観点によれば、表示素子の実際の静電容量を、ダミー画素など余分な画素を設けること無しに検出でき、検出結果に応じて表示装置の最適な駆動条件を広い温度範囲に渡って設定できる。これにより、表示装置で、常時良好な表示を得ることができ、最適な駆動条件を設定するのに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態の表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態の表示装置で使用する表示素子の構成を示す図である。
【図3】図3は、1枚のパネルの構成を示す図である。
【図4】図4は、コレステリック液晶の状態を説明する図である。
【図5】図5は、一般的なコレステリック液晶の電圧−反射特性の一例を示している。
【図6】図6は、ダイナミック駆動方式(Dynamic Driving Scheme:DDS)における駆動波形を示す図である。
【図7】図7は、第1実施形態において、コモンドライバおよびセグメントドライバが出力する駆動波形を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態において、各画素に印加される電圧波形を示す図である。
【図9】図9は、表示素子の5個のサンプルについて、コレステリック液晶の明度(反射率)と静電容量の関係を測定した結果を示す図である。
【図10】図10は、表示素子の静電容量の周波数特性を示す図である。
【図11】図11は、電源部における静電容量検出信号を出力する回路部分、電流センスアンプおよび演算部の構成を示す図である。
【図12】図12は、静電容量検出信号の波形を示す図である。
【図13】図13は、コレステリック液晶のテストセルを用いて、静電容量の検出を実験した結果を示す図である。
【図14】図14は、DDS駆動方式で、Selectionパルスのデューティ比を所定の値にして駆動する場合で、Evolution電圧を変化させた時の表示素子の容量変化を示す図である。
【図15】図15は、第1実施形態の表示装置における駆動条件の調整方法を説明する図である。
【図16】図16は、第1実施形態の表示装置における駆動条件の自動調整処理を示すフローチャートである。
【図17】図17は、白表示状態および黒表示状態に設定する駆動波形の例を示す図である。
【図18】図18は、ニュートン法により、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにEvolution電圧を調整する方法を説明する図である。
【図19】図19は、10%点および90%点になる静電容量に対して、ニュートン法を行った場合のEvolution電圧の変化を示す図である。
【図20】図20は、二分法により、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにEvolution電圧を調整する方法を説明する図である。
【図21】図21は、第3ステップにおける調整を説明する図である。
【図22】図22は、第3ステップS3を、二分法を用いて行った場合の処理を説明する図である。
【図23】図23は、60%点の静電容量を得るデューティ比を決定するため、二分法を行った場合のデューティ比の変化を示す図である。
【図24】図24は、処理時間を短縮した駆動条件の自動調整処理を示すフローチャートである。
【図25】図25は、処理時間を短縮した駆動条件の自動調整処理において、二分法により、Evolution電圧またはデューティ比を調整する方法を説明する図である。
【図26】図26は、処理時間を短縮した駆動条件の自動調整処理において、二分法により、Evolution電圧またはデューティ比を調整する方法を説明する図である。
【図27】図27は、表示画面の複数の領域を異なる表示状態にして、各表示状態の静電容量を測定する方法を説明する図である。
【図28】図28は、多数の異なる表示状態の静電容量を、表示画面の複数の領域を異なる表示状態にして測定する方法を説明する図である。
【図29】図29は、双極性のドライバICを使用する場合のセグメントドライバおよびコモンドライバの出力電圧の対応関係を示す図である。
【図30】図30は、前回の表示書換え時の温度から温度が変化した場合に表示書換えを行う時の動作を示す図である。
【図31】図31は、第1実施形態における駆動条件調整処理と、温度が変化した場合の表示書換え動作を示す図である。
【図32】図32は、第1実施形態における駆動条件調整処理動作を示す図である。
【図33】図33は、温度変化に対する液晶材料の粘度変化の関係を示す図である。
【図34】図34は、液晶材料の粘度と、ダイナミック駆動法で液晶材料を駆動した場合にもっとも高いコントラストが得られるEvolution期間のエネルギーと、の対応関係を示す図である。
【図35】図35は、製造ロットが異なる2枚の液晶表示素子の、高いコントラストが得られる時のEvolution期間のエネルギーの相対値の温度変化を示す図である。
【図36】図36は、第1実施携帯において、Evolution期間の印加時間を一定とし、図35のEvolution期間のエネルギーの温度依存性を満たすようにEvolution期間の電圧を変化させる場合の、温度とEvolution期間の電圧との関係を示す図である。
【図37】図37は、緑色の16階調の中心階調(=8/15)が得られるSeleciton期間のDuty比の温度変化を示す図である。
【図38】図38は、温度補償で書き換え速度が変化する場合に、温度補償を離散的に行なう場合と連続的に行なう場合の書き換え速度の変化を模式的に示す図である。
【図39】図39は、第1実施形態の表示装置で表示を行う場合の動作を示すフローチャートである。
【図40】図40は、第1実施形態において、2枚の液晶表示素子について、温度補償モデルに基づいて全温度範囲の駆動条件を変更した例を示す図であり、(A)が温度に対するEvolution期間の電圧を、(B)が温度に対するSelection期間のDuty比を示す。
【図41】図41は、第1実施形態の表示装置における温度に対する表示特性の変化を示す図であり、(A)が温度変化に対する明るさ変化を、(B)が温度変化に対するコントラスト変化を示す。
【図42】図42は、第1実施形態の表示装置における温度に対するガンマ(階調特性)の変化を示す図である。
【図43】図43は、第2実施形態の表示装置における駆動条件の自動調整処理を示すフローチャートである。
【図44】図44は、第3実施形態の表示装置における表示状態の変化を示す図である。
【図45】図45は、第3実施形態におけるリセットパルスおよびパルス幅が変化する書込みパルスを示す図である。
【図46】図46は、第3実施形態において、印加数で書込みパルスの印加時間を変化させる場合の複数の書込みパルスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、第1実施形態の表示装置の概略構成を示す図である。第1実施形態の表示装置は、電子ペーパーである。表示素子10は、表示を書換える時のみ駆動信号が印加され、一旦書換えられた表示は、駆動信号を印加しなくても保持される。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態の表示装置は、コレステリック液晶を用いた表示素子10と、セグメントドライバ11と、コモンドライバ12と、電源部13と、電流センスアンプ14と、ホスト制御部21と、フレームメモリ22と、制御部23と、表示素子に近接して設けられた温度センサ27と、を有する。
【0018】
ホスト制御部21は、メインCPUなどを有し、外部記憶装置に記憶された画像データや、通信回路などを介して入手した画像データに、この表示装置に表示するのに適した画像にするための各種の処理を行う。例えば、中間調画像データを表示するには、この表示装置で表示可能な階調数に適合するように、誤差拡散法、組織的ディザ法、ブルーノイズマスク法などの公知の階調変換を適用して階調変換を行う。なお、この処理の一部を制御部23で行う場合もある。ホスト制御部21は、生成した画像データを、フレームメモリ22に記憶する。
【0019】
制御部23は、サブCPU、マイクロコントローラ、またはPLDなどを有し、ホスト制御部21を除く各部の制御を行う。制御部23は、フレームメモリ22から読み出した画像データに応じて駆動データを生成し、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12に供給する。制御部23は、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12への駆動データの供給タイミング調整を容易にするために、生成した駆動データを一時的に格納するバッファ25を有することが望ましい。さらに、制御部23は、電源部13、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12を制御して、表示素子10に印加する駆動信号の電圧およびパルス幅などを温度に応じて変更するため、温度ごとの駆動条件を記憶する駆動条件記憶部26を有する。駆動条件記憶部26に記憶する駆動条件は、後述するように随時更新される。
【0020】
表示素子10は、コレステリック液晶を用いた表示素子であり、RGBの3層のパネルを積層したカラー表示可能な表示素子である。表示素子10の詳細については後述する。セグメントドライバ11およびコモンドライバ12は、表示素子10を単純マトリクス方式で駆動し、汎用のドライバICで実現される。ここでは、セグメントドライバ11は3個のドライバを含み、各層のパネルを独立に駆動するが、コモンドライバ12は1個のドライバで3層のパネルを共通に駆動することも可能である。
【0021】
電源部13は、表示装置の図示していない共通電源から供給される3〜5Vの電圧から、DC−DCコンバータ等の昇圧レギュレータにより、単極性のドライバICの場合は+50V、双極性のドライバICの場合は負のDC−DCコンバータも併用し、約−25V〜+25Vに昇圧させる。この昇圧レギュレータは、当然ながら表示素子の特性に対して変換効率の高いものが望ましい。リセット電圧および書込み電圧のスイッチングは、アナログスイッチやデジタルポテンショメータなどを使用して行うことが望ましい。このスイッチング回路の後段には、表示素子10の駆動電圧の安定化のため、オペアンプやトランジスタからなるブースター回路、および平滑コンデンサが配置される。
【0022】
以上説明した構成は、一般的なコレステリック液晶を用いた表示装置と同じであり、これまで知られている各種構成が適用可能である。また、表示素子10は、コレステリック液晶を用いた表示装置に限定されず、メモリ性を有する表示素子であればよい。
【0023】
第1実施形態の表示装置では、電源部13は、制御部23からの制御信号に応じて、のこぎり波信号、三角波信号などの静電容量検出信号を発生し、セグメントドライバ11の電源端子に、静電容量検出信号を供給する。この電源端子は、書込みなどに使用しない部分を用いるのが好ましい。また、電源部13は、制御部23からの制御信号に応じて、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12に供給する電圧を調整できる。
【0024】
第1実施形態の表示装置では、さらに、電源部13からセグメントドライバ11に静電容量検出信号を供給する信号線の電流を検出するように電流センスアンプ14が配置される。静電容量検出信号を表示素子10に印加した時に検出される電流は、表示素子10の静電容量に関係しており、電流センスアンプ14は検出信号を制御部23内の演算部24に出力する。さらに、制御部23は、表示素子10に近接して設けられた温度センサ27の検出した表示素子10の温度を読み取る。
【0025】
制御部23は、表示装置の起動時やユーザの指示に応じて駆動条件調整モードを実行する。駆動条件調整モードは、製品の出荷時など、表示装置を初めて使用する時には必ず自動的に実行し、それ以後は定期的に、例えば、一ヶ月に一度ほどの頻度で自動的に実行するようにしてもよい。制御部23は、表示素子10を所定の表示状態に設定した上で、電源部13から静電容量検出信号を表示素子14に印加し、演算部24が電流センスアンプ14の検出信号をデジタル化して検出データとして取り込むように制御する。制御部23は、後述する駆動条件調整シーケンスに従って表示素子10の表示状態を変更しながら、検出データの取得を行い、所望の表示が行える駆動条件を決定する。制御部23は、駆動条件調整モード終了後、温度センサ27の検出する表示素子10の温度を読み取り、検出した温度および後述する温度補償モデルに基づいて、検出した温度以外の駆動条件を決定する。そして、制御部23は、駆動条件記憶部26に記憶している全温度に渡る駆動条件を、決定した駆動条件で更新する。以後、制御部23は、駆動条件記憶部26に記憶していた駆動条件にしたがって各部の制御を行う。
【0026】
次に、第1実施形態の表示装置で表示素子10として用いるコレステリック液晶を用いた表示装置について説明する。
【0027】
図2は、第1実施形態の表示装置で使用する表示素子10の構成を示す図である。図2に示すように、表示素子10は、見る側から順番に、青(ブルー)用パネル10B、緑(グリーン)用パネル10G、および赤(レッド)用パネル10Rの3枚のパネルが積層されており、レッド用パネル10Rの下側には光吸収層57が設けられている。パネル10B、10Gおよび10Rは、同じ構成を有するが、パネル10Bは反射の中心波長が青色(約480nm)、パネル10Gは反射の中心波長が緑色(約550nm)、パネル10Rは反射の中心波長が緑色(約630nm)になるように、液晶材料およびカイラル材が選択され、カイラル材の含有率が決定されている。パネル10B、10Gおよび10Rのスキャン電極およびデータ電極は、コモンドライバ12およびセグメントドライバ11により駆動される。
【0028】
パネル10B、10Gおよび10Rは、反射の中心波長が異なる以外同じ構成を有する。以下、パネル10B、10Gおよび10Rの代表例を、パネル10Aとして表し、その構成を説明する。
【0029】
図3は、1枚のパネル10Aの基本構成を示す図である。
【0030】
図3に示すように、表示素子10Aは、上側基板51と、上側基板51の表面に設けられた上側電極層54と、下側基板53の表面に設けられた下側電極層55と、シール材56と、を有する。上側基板51と下側基板53は、電極が対向するように配置され、間に液晶材料を封入した後シール材56で封止される。なお、液晶層52内にスペーサが配置されるが図示は省略している。上側電極層54と下側電極層55の電極には、電圧パルス信号が印加され、それにより液晶層52に電圧が印加される。液晶層52に電圧を印加して、液晶層52の液晶分子をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態にして表示を行う。複数のスキャン電極および複数のデータ電極は、上側電極層54と下側電極層55に形成される。
【0031】
上側基板51と下側基板53は、いずれも透光性を有しているが、パネル10Rの下側基板53は不透光性でもよい。透光性を有する基板としては、ガラス基板があるが、ガラス基板以外にも、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などのフィルム基板を使用してもよい。
【0032】
上側電極層54と下側電極層55の電極の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)が代表的であるが、その他インジウム亜鉛酸化物(IZO: Indium Zic Oxide)などの透明導電膜を使用することが可能である。
【0033】
上側電極層54の透明電極は、上側基板51上に互いに平行な複数の帯状の上側透明電極として形成され、下側電極層55の透明電極は、下側基板53上に互いに平行な複数の帯状の下側透明電極として形成されている。そして、上側基板51と下側基板53は、基板に垂直な方向から見た時に、上側電極と下側電極が交差するように配置され、交差部分に画素が形成される。電極上には絶縁性のある薄膜が形成される。この薄膜が厚いと駆動電圧を高くする必要がある。逆に、薄膜がないとリーク電流が流れ、本発明の自動調整の精度が低下する問題が生じる。ここでは、薄膜は比誘電率が約5であり、液晶よりもかなり低いため、薄膜の厚さは約0.3μm以下とするのが適している。
【0034】
なお、この絶縁性薄膜は、SiO2の薄膜、あるいは配向安定化膜として知られているポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機膜で実現できる。
【0035】
上記のように、液晶層52内にスペーサが配置され、上側基板51と下側基板53の間隔、すなわち液晶層52の厚さを一定にする。スペーサは、一般に樹脂製または無機酸化物製の球体であるが、基板表面に熱可塑性の樹脂をコーティングした固着スペーサを使用することも可能である。このスペーサによって形成されるセルギャップは4μm〜6μmの範囲が適正である。セルギャップがこの値より小さいと反射率が低下して暗い表示になり、高い閾値急峻性も期待できない。逆にこの値より大きいと、高い閾値急峻性は保持できるが、駆動電圧が上昇して汎用部品による駆動が困難になる。
【0036】
液晶層52を形成する液晶組成物は、ネマティック液晶混合物にカイラル材を10〜40重量%(wt%)添加したコレステリック液晶である。ここで、カイラル材の添加量は、ネマティック液晶成分とカイラル材の合計量を100wt%とした時の値である。
【0037】
ネマティック液晶としては、従来から公知の各種のものを使用可能であるが、誘電率異方性(Δε)が15〜35の範囲の液晶材料であることが望ましい。誘電率異方性が15以下であれば、駆動電圧が全体的に高くなり、駆動回路に汎用部品を使用することが困難になる。
【0038】
一方、誘電率異方性が25以上になると、閾値急峻性が低下し、更には液晶材料自体の信頼性が低下する懸念が出てきる。
【0039】
また、屈折率異方性(Δn)は、0.18〜0.24であることが望ましい。屈折率異方性が、この範囲より小さいと、プレーナ状態の反射率が低くなり、この範囲より大きいと、フォーカルコニック状態での散乱反射が大きくなるのに加えて、粘度も高くなり、応答速度が低下する。
【0040】
次に、コレステリック液晶材料を使用した表示装置における、明暗(白黒)表示について説明する。コレステリック液晶を用いた表示装置は、液晶分子の配向状態で表示の制御を行う。
【0041】
図4の(A)および(B)は、コレステリック液晶の状態を説明する図である。コレステリック液晶には、図4の(A)に示すように入射光を反射するプレーナ状態と、図4の(B)に示すように入射光を反射するフォーカルコニック状態と、があり、これらの状態は、無電界下でも安定してその状態が保持される。他に、強い電界を印加した時に、全ての液晶分子が電界の向きに従うホメオトロピック状態があるが、ホメオトロピック状態は、電界の印加を停止すると、プレーナ状態またはフォーカルコニック状態になる。
【0042】
プレーナ状態の時には、液晶分子のらせんピッチに応じた波長の光を反射する。反射が最大となる波長λは、液晶の平均屈折率n、らせんピッチpから次の式で表される。
【0043】
λ=n・p
一方、反射帯域Δλは、液晶の屈折率異方性Δnに伴って大きくなる。
【0044】
プレーナ状態の時には、入射光が反射するので「明」状態、すなわち白を表示することができる。一方、フォーカルコニック状態の時には、下側基板53の下に光吸収層を設けることにより、液晶層を透過した光が吸収されるので「暗」状態、すなわち黒を表示することができる。プレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在した状態では、「明」状態(白表示)と「暗」状態(黒表示)の間の中間調状態になり、プレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在比率で中間調レベルが決まる。
【0045】
次に、コレステリック液晶を利用した表示素子の駆動方法を説明する。
【0046】
図5は、一般的なコレステリック液晶の電圧−反射特性の一例を示している。横軸は、コレステリック液晶を挟む電極間に所定のパルス幅で印加されるパルス電圧の電圧値(V)を表し、縦軸はコレステリック液晶の反射率(%)を表している。図5に示す実線の曲線Pは、初期状態がプレーナ状態のコレステリック液晶の電圧−反射率特性を示し、破線の曲線FCは、初期状態がフォーカルコニック状態のコレステリック液晶の電圧−反射率特性を示す。
【0047】
コレステリック液晶に強い電界(VP100以上)を発生させると、電界印加中は、液晶分子のらせん構造は完全にほどけて、全ての分子が電界の方向に従うホメオトロピック状態になる。次に、液晶分子がホメオトロピック状態の時に、印加電圧をVP100から急激にほぼゼロにすると、液晶のらせん軸は電極に垂直になり、らせんピッチに応じた光を選択的に反射するプレーナ状態になる。
【0048】
一方、コレステリック液晶分子のらせん構造が解けない程度の弱い電界(VF100a〜VF100bの範囲)を印加した後の電界除去、あるいは強い電界を印加し、その状態から緩やかに電界を除去した場合は、コレステリック液晶分子のらせん軸は電極に平行になり、入射光を反射するフォーカルコニック状態になる。
【0049】
また、中間的な強さの電界(VF0〜VF100aまたはVF100b〜VP0)を印加し、急激に電界を除去すると、プレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在し、中間調画像の表示が可能となる。
【0050】
以上の現象を利用して、表示を行う。
【0051】
コレステリック液晶を用いた単純マトリクス型表示装置では、高速の書換えを行う場合には、ダイナミック駆動方式(Dynamic Driving Scheme:DDS)が使用される。第1実施形態の表示装置も、DDSで中間調画像表示を行う。なお、画像の書換えを行う前に、全画素を同時にプレーナ状態にするリセット動作を行うようにしてもよい。リセット動作は、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12の全出力を、それぞれ強制的に所定の電圧値にすることにより行い、出力値を設定するためのデータの転送が不要なので、短時間に実行可能である。ただし、リセット動作は、電力を消費するので、低消費電力の装置では行わなくてもよい。
【0052】
説明を容易にするため、まず白黒の2値画像を表示する場合を説明する。
【0053】
図6は、DDSにおける駆動波形を示す図である。
【0054】
前述のように、DDSは、3つのステージに大別され、先頭から、「準備(Preparation)」期間、選択(Selection)」期間および「展開(Evolution)」期間を含む。これらの期間の前後には、非選択(Non-Select)期間が設けられる。Preparation期間は、液晶をホメオトロピック状態に初期化する期間で、高電圧のパルス幅の大きなPreparationパルスが印加される。Selection期間は、プレーナ状態またはフォーカルコニック状態に分岐するきっかけを与える期間である。Selection期間では、プレーナ状態にスイッチングする時には低電圧のパルス幅の小さなSelectionパルスが印加され、フォーカルコニック状態にスイッチングする時にはパルスは印加されない。Evolution期間は、直前のSelection期間での過渡状態に応じてプレーナ状態かフォーカルコニック状態に確定させる期間であり、中間電圧のパルス幅の大きなEvolutionパルスが印加される。Preparationパルス、SelectionパルスおよびEvolutionパルスは、それぞれ1組の正負のパルスである。
【0055】
実際には、Preparation期間およびEvolution期間では、図6のようにパルス幅の長い1組の正負のパルスを印加するのではなく、複数個の正負のPreparationパルスおよびEvolutionパルスを印加する。
【0056】
図7は、第1実施形態において、コモンドライバ12が、Preparation期間、Selection期間、Evolution期間およびNon-Select 期間に出力する駆動波形、セグメントドライバ11が白表示および黒表示に対して出力する駆動波形、および液晶への印加波形を示す。
【0057】
第1実施形態でDDSを実行する場合、コモンドライバ12は、GNDを含め7値を出力し、セグメントドライバ11は、GNDを含めて5値を出力する。現在、単純マトリクス方式用の汎用ドライバICが実用化されており、モードを設定することにより、セグメントドライバ11またはコモンドライバ12として使用可能である。したがって、セグメントドライバ11として利用する汎用ドライバICは、出力する値に余りがある。第1実施形態では、セグメントドライバ11の余っている出力を利用して静電容量検出信号を表示素子10に印加する。
【0058】
コモンドライバ12およびセグメントドライバ11は、Selection期間を4等分した期間を単位として出力を変化させる。セグメントドライバ11は、白表示に対しては、42V、30V、0V、12Vに変化する電圧波形を、黒表示に対しては、30V、42V、12V、0Vに変化する電圧波形を出力する。コモンドライバ12は、Non-Select 期間には36V、36V、6V、6Vに変化する電圧波形を、Selection期間には30V、42V、12V、0Vに変化する電圧波形を、Evolution期間には12V、12V、30V、30Vに変化する電圧波形を、Preparation期間には0V、0V、42V、42Vに変化する電圧波形を出力する。
【0059】
これにより、Preparation期間では、白表示のデータ電極の液晶に対して、42V、30V、−42V、−30Vに変化する電圧波形が、黒表示のデータ電極の液晶に対して、30V、42V、−30V、−42Vに変化する電圧波形が印加される。Evolution期間では、白表示のデータ電極の液晶に対して、30V、18V、−30V、−18Vに変化する電圧波形が、黒表示のデータ電極の液晶に対して、18V、30V、−18V、−30Vに変化する電圧波形が印加される。Selection期間では、白表示のデータ電極の液晶に対して、12V、−12V、−12V、12Vに変化する電圧波形が、黒表示のデータ電極の液晶に対して、0Vの電圧波形が印加される。Non-Select 期間には、白表示のデータ電極の液晶に対して、6V、−6V、−6V、6Vに変化する電圧波形が、黒表示のデータ電極の液晶に対して、−6V、6V、6V、−6Vに変化する電圧波形が印加される。
【0060】
図8は、第1実施形態において、コモンドライバ12およびセグメントドライバ11が図7に示す駆動波形を出力することにより各画素液晶に印加される電圧波形を、より具体的に示す図である。1つのスキャンラインに図8の電圧波形が印加される。コモンドライバ12は、図8の信号を印加するスキャンラインを1ラインずつシフトする。
【0061】
図8に示すように、Preparation期間、Selection期間およびEvolution期間の順に配置され、前後に非選択(Non-Select)期間が配置される。Selection期間は、約0.5ms〜1ms程度の印加時間である。図8は、プレーナ状態にして白表示(明表示)を行う場合の±12VのSelectionパルスを示しており、フォーカルコニック状態にして黒表示(暗表示)を行う場合には、この期間中0Vが印加される。
【0062】
Preparation期間およびEvolution期間は、Selection期間の数倍から十数倍の長さであり、図7のPreparationパルスおよびEvolutionパルスが、複数個印加される。Non-Select期間は、描画に関与しない画素に常時印加されるパルスであり、低電圧であるため、画像を変化させない。
【0063】
図8のPreparationパルス、SelectionパルスおよびEvolutionパルスの組が、スキャンラインの位置を変えながら順次印加される。これにより、SelectionパルスがPreparationパルスとEvolutionパルスを伴い、1ライン当たりのSelectionパルスの印加時間で、パイプライン的にスキャン・書換えを行うことになる。そのため、XGA仕様の高精細サイズの表示素子であっても、1ms×768=0.77秒前後の速度で書換えを行うことができる。
【0064】
中間調画像を表示する場合には、Selection期間をさらに複数のサブ期間に分割し、各サブ期間において、図7に示す駆動波形を印加できるように構成する。複数のサブ期間のうち、白表示を行うサブ期間と黒表示を行うサブ期間の比率を変化させる。例えば、8個のサブ期間を設け、8個のサブ期間が全て白表示を行う場合がデューティ比100%で、8個のサブ期間が全て黒表示を行う場合がデューティ比0%で、2個のサブ期間が白表示を行う場合がデューティ比25%である。第1実施形態では、Selection期間は約700μsで、20〜30μsのサブ期間に分けられる。したがって、サブ期間は23〜35個も設けられる。Selection期間において、白表示のサブ期間を中央に配置すると、Selection期間における白表示のSelectionパルスの幅がデューティ比に応じて変化することになる。以下、説明を簡単にするため、図6に示すDDS駆動波形を用いて、Selection期間におけるSelectionパルスの幅がデューティ比に応じて変化するものとして説明する。
【0065】
前述のように、メモリ性を有する液晶を用いた表示装置は、表示素子のコントラスト、明るさ、ガンマなどがロット間でバラツキやすく、表示素子の長期間の使用により、このような特性の変化が懸念される。このような表示素子のバラツキや経年変化があると、同じ駆動条件で表示素子を駆動しても望ましい表示が行えない。特に、第1実施形態の表示装置で使用するDDSは、駆動条件の最適範囲が狭く、表示素子のバラツキおよび経年変化の影響を大きく受けて、固定の駆動条件では良好な表示が行えない。
【0066】
駆動条件を調整するには、表示(明度)と関係する表示素子の特性を検出して、検出した特性の表示(明度)との関係に基づいて調整する。前述のように、これまでも静電容量値に応じて駆動条件を決定することが提案されてきたが、第1実施形態の表示装置も、表示素子10の静電容量を検出して、望ましい駆動条件を実現するように駆動条件を調整する。ただし、第1実施形態の表示装置では、ダミーセルを使用せずに、表示素子10の静電容量を直接検出するとともに、表示素子10を所定の表示状態(白、黒または中間調レベル)に設定して静電容量の検出および駆動条件の調整を行う。
【0067】
図9は、表示素子10の5個のサンプルについて、明度(反射率)と静電容量の関係を測定した結果を示す図である。静電容量は、1kHzで測定し、完全なプレーナ状態の明度を1に、完全なフォーカルコニック状態の明度を0に規格化した相対値である。静電容量値が0と1の間は、プレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態で、中間調が表示される。
【0068】
図9から明らかなように、フォーカルコニック状態(明度0)の時が最大の静電容量を示し、プレーナ状態(明度1)に近づくにつれて静電容量が単調に小さくなっていく。このことから、ロット間のバラツキや経年変化で所望の表示が得られない場合は、静電容量の相対関係を元に、バラツキや経年変化による明度の変化を推定することができることが分かる。そこで、第1実施形態の表示装置では、図9に示すようなコレステリック液晶の明度と静電容量が極めて単調に変化する特性を利用して駆動条件を調整する。具体的には、表示素子10の静電容量を測定し、測定した静電容量に基づいて駆動条件を調整する。
【0069】
図10は、表示素子10の静電容量の周波数特性を示す図である。図10において、プレーナ状態よりもフォーカルコニック状態の静電容量のほうが大きい現象は、10kHz程度までに見られる。また、100Hz以下の低周波になると、静電容量の絶対値が大きくなる。これは、液晶材料に含まれる極性基やイオン成分による分極が生じ出すためで考えられる。プレーナ状態とフォーカルコニック状態の静電容量の比率や、検出する電流量を考慮すると、静電容量の検出には1kHz前後の周波数を使用するのが好適であると考えられる。
【0070】
図11は、電源部13における静電容量検出信号を出力する回路部分、電流センスアンプ14および演算部24の構成を示す図である。電流センスアンプ14は、入手の容易な汎用のものが使用できる。電源部13は、図示していないDA変換器などを使用して、のこぎり波や三角波を発生し、可変抵抗VRに一端に原検出信号を印加する。オペアンプAmp、抵抗R1、トランジスタTr1およびTr2を有するブースター回路および抵抗R2は、原検出信号を増幅して静電容量検出信号を出力する増幅回路を形成し、出力電圧の安定化を行う。増幅回路の増幅率は可変抵抗VRの抵抗値を調整することにより調整可能である。可変抵抗VRは、例えば、スイッチで接続する抵抗の個数を調整することにより抵抗値が調整可能で、制御部23からの制御信号などにより調整される。静電容量検出信号の波高を調整する必要がなければ、可変抵抗VRは固定抵抗でよい。ブースター回路の後段には、電流を制限するダンピング抵抗R3を配置する。図11では、このダンピング抵抗R3は、電流センスアンプ14のセンシング抵抗としても使用される。前述のように、ダンピング抵抗R3の一端は、セグメントドライバ11の不使用の電源端子に接続される。
【0071】
電流センスアンプ14は,検出した電流値を電圧値としてアナログ出力するものを使用する。電流センスアンプ14の出力する電圧信号の電圧は、演算部24内のAD変換器(ADC)によってデジタル化され、静電容量値の演算に使用される。電流センスアンプ14の出力とAD変換器の間に、適切なカットオフ周波数を有するローパスフィルタを設けると、検出精度はより向上する。
【0072】
なお、電源部13は、分圧回路により、セグメントドライバ11およびコモンドライバ12に供給する電圧を生成する。DDS駆動方式は、瞬時の消費電流が大きいため、電源部13の分圧回路により形成された各電圧は、図11に示したオペアンプAmp、およびトランジスタTr1とTr2を有するブースター回路を介して出力されるにようにすることが望ましい。
【0073】
さらに、電源部13のセグメントドライバ11およびコモンドライバ12に供給する電圧を出力する端子部では、ダンピング抵抗の後段に数μF程度の平滑コンデンサを用いる場合が多い。しかし、図11に示した静電容量検出信号を出力する端子では、このような平滑コンデンサを設けないことが望ましい。これは、平滑コンデンサを設けた場合、表示素子の静電容量と平滑コンデンサの容量の合成容量を検出してしまうことになり、白表示と黒表示と中間調表示の静電容量の検出値の差が小さくなり、S/N比が低下してしまい、検出精度が低下するためである。
【0074】
図12は、ブースター回路からダンピング抵抗R3を介して、セグメントドライバ11の不使用の電源端子に供給される静電容量検出信号の波形を示す図である。第1実施形態では、電圧が±5Vの間で変化するのこぎり波状の静電容量検出信号が使用される。表示素子に静電容量検出信号を印加する場合には、コモンドライバ12は全端子にGNDレベルを出力し、セグメントドライバ11は、全端子に、静電容量検出信号が印加される端子の電圧を出力するように設定される。この状態で、静電容量検出信号を図12に示すように変化すると、のこぎり波状に変化する電圧が表示素子10の全画素に印加される。のこぎり波状の静電容量検出信号は、DA変換器により生成されるのが一般的であるため、適切なカットオフ周波数を有するローパスフィルタを設け、それを滑らかにすることが望ましい。
【0075】
静電容量の検出は、表示素子10への静電容量検出信号の印加に伴う充電/放電時の電流値を電流センスアンプ14が検出することにより行う。
【0076】
TFT液晶よりも容量特性が劣るコレステリック液晶であっても、のこぎり波状の静電容量検出信号を用いることで、充電/放電時の電流を安定して検出できることが分かった。
【0077】
図13は、コレステリック液晶のテストセルを用いて、図11の回路構成で静電容量の検出を実験した結果を示す。図13の(A)は、全画素が白表示状態(プレーナ状態)である時の、のこぎり波状の静電容量検出信号Sと、それに伴う充電/放電時の電流Iを示す。また、図13の(B)は、全画素が黒表示状態(フォーカルコニック状態)である時の、のこぎり波状の静電容量検出信号Sと、それに伴う充電/放電時の電流Iを示す。図13において、電流Iは信号Sの増加に伴って急激に増加し、ほぼ一定になる。この一定になった時に、フォーカルコニック状態の電流値とプレーナ状態の電流値の比率は約1.4倍であり、図10に示した白/黒表示の静電容量の比率とほぼ一致したことを確認した。
【0078】
なお、テストセルをコンデンサとして置き換えたCR発振回路を試作し、その発振周波数を測定した。その結果、発振周波数は、プレーナ状態がフォーカルコニック状態の約1.4倍となったが、発振周波数が大きく変動して不安定な場合が頻繁に発生した。このことから、コレステリック液晶の場合には、のこぎり波状の静電容量検出信号印加による充電/放電時の電流による静電容量の検出の方が、発振周波数の検出による静電容量の検出より、安定的に検出が行えた。
【0079】
なお、上記の静電容量の検出では、白/黒表示時の表示素子10の静電容量を検出したが、表示素子10を中間調表示状態にすれば、中間調表示状態での静電容量検出が可能である。また、上記の静電容量の検出では、のこぎり波状の静電容量検出信号を用いたが、三角波状の静電容量検出信号を用いても同様の測定が可能であった。
【0080】
次に、第1実施形態の表示装置における駆動条件の調整方法を説明する。
【0081】
DDS駆動方式の駆動条件を調整する場合、調整可能な条件は、PreparationパルスおよびEvolutionパルスの電圧、Selectionパルスの白表示の電圧およびSelectionパルスのパルス幅(デューティ比)などである。第1実施形態では、Evolutionパルスの電圧(Evolution電圧)とSelectionパルスのデューティ比を調整する。Evolution電圧を調整する理由は、表示のコントラストを強く支配する要因であるためである。また、Selectionパルスのデューティ比は、階調変化を発生する要因のうちで、比較的容易に調整可能で、精密な調整が可能であるためである。
【0082】
図14は、DDS駆動方式で、図6から図8を参照して説明した駆動条件およびSelectionパルスのデューティ比を所定の値(例えば50%)にして駆動する場合で、Evolution電圧を変化させた時の表示素子の容量変化を示す図である。
【0083】
図14において、実線は、1つの表示素子における変化例を模式的に示す。ある値より低いEvolution電圧で駆動した場合には、駆動後の表示素子10の静電容量は高く、一定の値である。Evolution電圧を高くするにしたがって、駆動後の表示素子10の静電容量は低下し、ある値より高いEvolution電圧になると、駆動後の表示素子10の静電容量は低い一定の値になる。このような容量変化が、バラツキや経年変化により変動する。例えば、高い側および低い側で一定になる静電容量の値が上下に変動し、中間部分における変化がEvolution電圧に対して(図では横方向に)変化し、中間部分における変化の傾きも変化する。
【0084】
図15は、第1実施形態の表示装置における駆動条件の調整方法を説明する図であり、図15の(A)は第1段階および第2段階の調整を、図15の(B)は第3段階の調整を説明する。
【0085】
図15の(A)において、Rは、図14で説明したEvolution電圧を変化させた時の表示素子の容量変化の代表的な例を示し、基準例としてあらかじめ記憶されており、その場合の駆動条件も基準駆動条件として記憶されている。例えば、静電容量が高い側で一定になる値C100、静電容量が低い側で一定になる値C0などが記憶されている。また、静電容量が中間の値、例えば、C100とC0の間の25%、50%、90%などになる時のEvolution電圧なども記憶されている。
【0086】
Pは、駆動条件の調整の対象となる表示素子のEvolution電圧に対する容量変化を示す。容量変化Pは、基準例のRに対して、C100とC0が増加してC100’とC0’となり、中間部分の傾きが増加し、C100とC0の間の25%、50%、90%などになる静電容量値およびその時のEvolution電圧なども増加している。
【0087】
第1実施形態の駆動条件調整方法では、第1段階で、C100’およびC0’を検出する。
【0088】
第2段階では、C100’とC0’の間の所定の静電容量値(例えば、25%、50%、90%など)が、Selectionパルスのデューティ比を変化して得られるように、Evolution電圧を決定する。言い換えれば、最大に近いコントラスト・明るさが得られるように、Evolution電圧を決定する。
【0089】
上記のように、第1実施形態では、Evolution電圧を変化させるが、Evolution電圧を変化させるだけでは、C100’およびC0’を変化させることはできない。図14に示すように、Evolution電圧を大きくしすぎると、例えば、Selectionパルスのデューティ比が50%以下であっても静電容量がC0’になる場合もあり、これでは中間調表示は行えない。さらにEvolution電圧を大きくすると、Selectionパルスのデューティ比が0%近くであっても静電容量がC0’になる場合もあり、これでは表示自体が行えない。
【0090】
そこで、第1実施形態では、C100’およびC0’を表示の輝度0と100(相対値)に対応させ、中間調部分がSelectionパルスのデューティ比の変化に応じて変化するようにEvolution電圧を設定する。
【0091】
第3段階では、中間調部分における変化が線形になるように、Selectionパルスのデューティ比の変化を決定する。
【0092】
図16は、第1実施形態の表示装置における駆動条件の自動調整処理を示すフローチャートである。処理は、第1ステップS1と、第2ステップS2と、第3ステップS3と、最終ステップS4と、を含む。第1ステップS1では、上記のC0’およびC100’を検出し、輝度0と100(相対値)に対応させる。第2ステップS2では、C0’およびC100’から決定した中間調部分の所定の静電容量値が得られるようにEvolution電圧を設定する。第3ステップS3では、決定したEvolution電圧で、中間調部分の静電容量値とSelectionパルスのデューティ比の関係を設定する。最終ステップS4では、決定したEvolution電圧およびSelectionパルスのデューティ比にしたがって駆動条件を更新する。
【0093】
第1ステップS1のステップS11では、表示素子10の全画素を、DDS方式で白表示状態(プレーナ状態)にする描画を行う。ステップS11では、全画素を確実に白表示状態にするため、図17の(A)に示すように、Selectionパルスのデューティ比を100%とし、さらにEvolution電圧を通常より高めに設定する。
【0094】
ステップS12では、ステップS11で設定した白表示状態の表示素子10の静電容量を測定し、その値を0%点として設定する。したがって、C0’が0%点になる。
【0095】
ステップS13では、表示素子10の全画素を、DDS方式で黒表示状態(フォーカルコニック状態)にする描画を行う。ステップS13では、全画素を確実に黒表示状態にするため、図17の(B)に示すように、Selectionパルスのデューティ比を0%(Selectionパルス無し)とし、さらにEvolution電圧を通常より低めに設定する。
【0096】
ステップS14では、ステップS13で設定した黒表示状態の表示素子10の静電容量を測定し、その値を100%点として設定する。したがって、C100’が100%点になる。
【0097】
第2ステップS2は、ステップS21からS23を含み、ステップ2Rに示すように、これらのステップS21からS23を3〜5回繰り返す。
【0098】
ステップS21では、表示素子10の全画素を、中間調表示状態(プレーナ状態+フォーカルコニック状態)にする描画を行う。設定する中間調は、90%、50%、25%など、任意の階調でよい。例えば、25%に設定する場合には、あらかじめ記憶されている駆動条件で、あらかじめ記憶されている駆動条件で、Selectionパルスのデューティ比を25%として、表示素子10の全画素をDDS方式で中間調表示状態にする。なお、設定する中間調が90%の場合、最大に近い表示コントラストが得られるようにEvolution電圧を設定することになるので、表示コントラストの観点からは好ましい。
【0099】
ステップS22では、ステップS21で設定した中間調表示状態の表示素子10の静電容量を測定する。
【0100】
ステップS23では、ステップS12およびS14で決定した0%点と100%点に対応する静電容量C0’およびC100’から、設定する中間調に対応する目標静電容量値を算出し、ステップS22での測定静電容量値を目標静電容量値と比較する。そして、比較結果に基づいて、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにEvolution電圧を調整する。
【0101】
ステップS21からS23を繰り返して、ステップS22で得られる測定静電容量値が目標静電容量値に近づいたらステップS2を終了してステップS3に進む。
【0102】
Evolution電圧を調整する方法は、測定静電容量値が目標静電容量値になるように調整する方法であれば、どのような方法でもよい。このような方法は、求根アルゴリズムとして知られており、代表的な方法として、ニュートン法や二分法が知られている。これらを適用した例を説明する。
【0103】
図18は、ニュートン法により、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにEvolution電圧を調整する方法を説明する図であり、設定する中間調が25%の場合の例である。
【0104】
ニュートン法では、図14および図15の(A)に示すようなEvolution電圧に対する標準容量変化特性があらかじめ記憶されている。この特性は、簡易的に一次関数の傾きと切片を記憶していればよい。図18では、R’が標準容量変化特性を表し、P’が調整対象の容量変化特性を示す。
【0105】
図18の(A)に示すように、標準容量変化特性R’で、静電容量値が、C0’から25%(C0’とC100’間を100%とする)になる標準25%Evolution電圧を記憶した特性から求め、その標準25%Evolution電圧で、デューティ比を25%として、表示素子10の全画素をDDS方式で中間調表示状態にする。この状態の静電容量を測定結果がC0’から50%であったとする。
【0106】
図18の(B)に示すように、記憶されている傾きから、静電容量を50%から25%にするEvolution電圧の変化量を求め、標準25%Evolution電圧を変化量分だけ変化させる。そして、変化させたEvolution電圧で、再度同様の処理を行うと、測定された静電容量はよりC0’から25%の値に近づく。このような処理を数回繰り返せば、静電容量がC0’から25%の値に近似した状態になるEvolution電圧を決定することができる。なお、ここではC0’から25%になる静電容量を例として説明したが、前述のように、50%でも、90%でもよい。
【0107】
図19は、C0’から10%および90%になる静電容量に対して、ニュートン法を行った場合のEvolution電圧の変化を示す。2〜3回以上繰り返せば、ほぼ一定値に収束することが分かる。
【0108】
ニュートン法は、解を求める対象があまりに急峻に変化する特性を有したり、凹凸に変化する特性を有したりする場合、収束せず発散するという問題があることが知られている。しかし、Evolution電圧を調整する場合のEvolution電圧-静電容量特性は、Evolution電圧に対して非常に単調に変化する特性であるため、ニュートン法を適用してほぼ確実に収束させることができる。
【0109】
図20は、二分法により、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにEvolution電圧を調整する方法を説明する図であり、設定する中間調が25%の場合の例である。
【0110】
二分法では、Evolution電圧に対する標準容量変化特性を記憶しておく必要はない。
【0111】
図20の(A)に示すように、Evolution電圧の可変範囲の電圧上限と電圧下限の中間に第1電圧中央を設定する。そして、Evolution電圧を第1電圧中央とし、デューティ比を25%として、表示素子10の全画素をDDS方式で中間調表示状態にする。この状態で測定した静電容量がC0’から25%より大きい静電容量値であったとする。したがって、第1電圧中央は小さく、増加させる必要があると判定される。
【0112】
図20の(B)に示すように、第1電圧中央と電圧上限の中間に第2電圧中央を設定する。そして、Evolution電圧を第2電圧中央とし、デューティ比を25%として、表示素子10の全画素をDDS方式で中間調表示状態にする。この状態で測定した静電容量がC0’から25%より依然大きい静電容量値であったとする。したがって、第2電圧中央は小さく、増加させる必要があると判定される。
【0113】
図20の(C)に示すように、第2電圧中央と電圧上限の中間に第3電圧中央を設定する。そして、Evolution電圧を第3電圧中央とし、デューティ比を25%として、表示素子10の全画素をDDS方式で中間調表示状態にする。この状態で測定した静電容量がC0’から25%の静電容量値であったとすると、第3電圧中央が適切なEvolution電圧であることになる。
【0114】
一般的に、二分法はニュートン法に比べて、発散しにくいが収束に時間がかかるという特徴がある。しかし、上記のように、Evolution電圧-静電容量特性は、Evolution電圧に対して非常に単調に変化する特性であるため、5回のステップを繰り返すことにより、概ね一定値に収束した。
【0115】
図16に戻り、第3ステップS3では、ステップS2で決定したEvolution電圧を使用して、中間調部分の静電容量値とSelectionパルスのデューティ比の関係を設定する。
【0116】
ステップS31では、表示素子10の全画素を、表示する中間調のいずれかを表示する目標中間調表示状態にする。この処理は、ステップS21と同じである。
【0117】
ステップS32では、ステップS31で設定した目標中間調表示状態の表示素子10の静電容量を測定する。
【0118】
ステップS33では、目標中間調表示状態に対応する目標静電容量値を算出し、ステップS32での測定静電容量値を目標静電容量値と比較する。そして、比較結果に基づいて、測定静電容量値が目標静電容量値になるようにSelectionパルスのデューティ比を決定する。
【0119】
ステップS31からS33を繰り返して、ステップS32で得られる測定静電容量値が目標静電容量値に近づいたらステップS3を終了する。
【0120】
DDS駆動方式の場合、液晶の応答がかなり急峻なため、中間調は元々形成しにくい。そのため、表示できる中間調は、3〜7階調程度である。これらの各中間調について第3ステップを繰り返し、表示する中間調の全てについてSelectionパルスのデューティ比を決定したら、ステップS4に進む。
【0121】
図21は、第3ステップS3における調整を説明する図であり、Selectionパルスのデューティ比に対する静電容量の変化を示す。図21で、R’’が標準的なデューティ比容量変化特性を表し、P’’が調整対象のデューティ比容量変化特性を示す。この例は、第2ステップS2で、25%の中間調に設定した上でEvolution電圧を決定した場合である。この場合、Selectionパルスのデューティ比を25%にして、ステップS2で決定したEvolution電圧で、DDS方式で駆動すれば所望の静電容量値、すなわち中間調になる。しかし、図21では、想定した特性R’’に対して調整対象の表示素子の特性は傾きが急峻になっているため、想定したSelectionパルスのデューティ比で駆動しても想定した静電容量値(中間調)にはならない。例えば、想定した特性R’’によれば、60%点の静電容量値(中間調)は、デューティ比を40%に設定すれば得られるが、調整対象の表示素子の特性P’’では、デューティ比を50%に設定する必要がある。
【0122】
中間調部分の静電容量に対して、そのような静電容量(中間調)が得られるSelectionパルスのデューティ比を決定し、駆動条件をそのように決定したSelectionパルスのデューティ比に更新する。中間調部分の静電容量のそれぞれについて、ニュートン法または二分法などを適用して、Selectionパルスのデューティ比を決定する。DDS駆動方式の場合、液晶の応答がかなり急峻なため、中間調は元々形成しにくい。そのため、Selectionパルスのデューティ比の決定においては、ニュートン法を使うこともできるが、発散するリスクが低い二分法のほうがより好適に最適値を突き止めることができる。
【0123】
図22は、第3ステップS3を、二分法を用いて行った場合の処理を説明する図である。二分法では、探索範囲のPWM-Duty比の上限Pmaxと下限Pminを設定する。1回目探索処理では、PWM-Duty比を、PmaxとPminの中間値Pmid=(Pmax+Pmin)/2に設定して中間調表示を行い、その時の静電容量値を測定する。測定した静電容量値と目標静電容量値の差が閾値より大きいと判定された場合には、2回目の探索処理が行われる。図示のように、測定した静電容量値が、目標静電容量値より小さい場合には、PmidをPmaxとして、PWM-Duty比をPminとPmaxの中間値Pmid=(Pmax+3Pmin)/4に設定して中間調表示を行い、その時の静電容量値を測定する。測定した静電容量値と目標静電容量値の差が閾値より大きいと判定された場合には、3回目の探索処理が行われる。図示のように、測定した静電容量値が、目標静電容量値より大きい場合には、Pmidを新たなPminとして、PWM-Duty比をPminとPmaxの中間値Pmid=(3Pmax+5Pmin)/8に設定して中間調表示を行い、その時の静電容量値を測定する。測定した静電容量値と目標静電容量値の差が閾値より大きいと判定された場合には、4回目の探索処理が行われる。図示のように、測定した静電容量値が、目標静電容量値より小さい場合には、Pmidを新たなPmaxとして、PWM-Duty比をPminとPmaxの中間値Pmid=(5Pmax+11Pmin)/8に設定して中間調表示を行い、その時の静電容量値を測定する。測定した静電容量値と目標静電容量値の差が閾値以下になれば、探索処理を停止して、PWM-Duty比をPmid=(5Pmax+11Pmin)/8とする。
【0124】
図23は、60%点の静電容量を得るデューティ比を決定するため、二分法を行った場合のデューティ比の変化を示す。5回以上繰り返せば、ほぼ一定値に収束することが分かる。
【0125】
以上のようにして、第1実施形態の表示装置では、表示素子10の特性が、ロット間のバラツキや経年変化により変動した場合でも、駆動条件を自動的に最適化して、常時良好な表示を行うことができる。
【0126】
このように、上記の駆動条件自動調整処理を行うことにより、表示が最適化されるが、この処理は、長い処理時間が必要で、調整終了までに数分を要する場合がある。特に、二分法はニュートン法に比べて、より好適に最適値を突き止めることができるが、収束に時間がかかる。そこで、駆動条件自動調整処理の時間短縮が求められる。
【0127】
図16から図23で説明した最適な駆動条件の探索アルゴリズムは、探索範囲やループ回数が固定であったため、駆動条件のズレが大きさにかかわらず、自動調整の開始コマンドを与えてから、一定の調整時間を要した。
そこで、第1実施形態では、最適な駆動条件の探索アルゴリズムに柔軟性を持たせ、高い調整精度を保持しつつ、調整時間をさらに短縮する以下の探索アルゴリズムを使用する。この探索アルゴリズムでは、最初の駆動条件自動調整処理は、上記の通り行うが、2回目以降の駆動条件自動調整処理は、駆動条件のズレの度合いを検出して、ズレ度合いに応じてアルゴリズムの簡略化を行うことにより、処理時間を短縮する。
【0128】
図24は、この探索アルゴリズムを利用した駆動条件自動調整処理を示すフローチャートである。
上記のように、図16に示した駆動条件自動調整処理が、あらかじめ一度は行われ、白表示および黒表示に対応する静電容量が測定され、Evolution電圧および目標静電容量値になるSelectionパルスのデューティ比が決定されている。
【0129】
ステップS5では、制御部23が、前回の駆動条件自動調整処理で測定された静電容量(C0’およびC100’)、および設定されたEvolution電圧およびSelectionパルスのデューティ比を、図示していないメモリに記憶する。
【0130】
ステップS5の後、メンテナンスなどのために、駆動条件自動調整処理が再び開始される。
まず、ステップS6を行う。ステップ6では、図16のS11からS14を含む第1ステップS1と同じ処理を行う。これにより、0%点および100%点に対応する静電容量値C0’およびC100’が測定される。
【0131】
ステップS61では、S6で測定した静電容量値C0’およびC100’と、S0で記憶した前回の静電容量値の差D0およびD100をそれぞれ算出する。D0は、S6で測定した静電容量値C0’とS5で記憶したC0’の差の絶対値であり、D100は、S6で測定した静電容量値C100’とS5で記憶したC100’の差の絶対値である。
【0132】
ステップS62では、差が第1閾値より大きいかを判定し、大きければステップS7に進み、小さければステップS72に進む。上記のように、差はD0とD100の2つあるので、第1閾値もそれぞれに応じて2つ設定されている。ここでは、差D0とD100の一方でも第1閾値より大きければS7に進むものとするが、両方とも第1閾値より大きい場合のみS7に進むようにしてもよい。S72に進んだ場合には、Evolution電圧の調整を行わずにスキップすることになる。
【0133】
後述するように、ステップS7で行う処理は、表示のコントラストを決めるEvolution期間の電圧調整である。Evolution電圧は比較的マージンがあり、一定のコントラストを得る電圧範囲は、パネルを構成する材料や構造によるが、2〜3Vの範囲がある。そのため、第1閾値は比較的大きく、すなわちスキップする条件を比較的緩くすることができる。例えば、差D0とD100についての第1閾値を、C0’およびC100’のそれぞれ5%とすればよい。したがって、S6で測定したC0’またはC100’が、S5で記憶したC0’またはC100’から5%以下の変化であれば、ステップS72に進み、Evolution電圧の調整処理をスキップする。逆に、S6で測定したC0’またはC100’が、S5で記憶したC0’またはC100’から5%より変化していれば、ステップS7に進む。
【0134】
ステップS7では、図16のS21からS2Rを含む第2ステップS2と同じ処理を行う。これにより、Evolution電圧が決定される。
ステップS71では、S7で決定したEvolution電圧を設定条件とする。
ステップS72では、S5で記憶したEvolution電圧を設定条件とする。
【0135】
ステップS81では、設定したEvolution電圧で、図16のステップS31およびS32の処理を行い、所定の中間調表示を行った場合の静電容量値を測定する。所定の中間調表示は、設定したEvolution電圧を使用して、S5で記憶した前の処理時のPWM-Duty比で行なわれる。
【0136】
ステップS82では、S81で測定した静電容量値と、S5で記憶した中間調の静電容量値の差を算出する。
ステップS83では、S82で算出した差が、第2閾値より大きいかを判定し、大きければステップS9に進み、大きくなければステップS92に進む。
【0137】
ステップS9では、PWM-Duty比の調整を行う。この調整処理は、図16のS31からS3Rを含むステップS3に類似の処理であるが、測定した静電容量値と目標静電容量値との差が第2閾値以下になった時に処理を終了すること、および中間値の算出方法が異なる。この処理については後述する。
【0138】
ステップS91では、S9で決定したPWM-Duty比を設定条件とする。
ステップS92では、S5で記憶したPWM-Duty比を設定条件とする。
【0139】
ステップS93では、静電容量値および駆動条件を記憶する。具体的には、S6で測定した静電容量値C0’およびC100’、S71またはS72で設定したEvolution電圧、およびS91またはS92で設定したPWM-Duty比を記憶する。例えば、S71でEvolution電圧を設定した場合には、S7で決定したEvolution電圧が記憶され、S72でEvolution電圧を設定した場合には、S5で記憶された前の調整処理で決定したEvolution電圧が記憶される。また、S91でPWM-Duty比を設定した場合には、S9で決定したPWM-Duty比が記憶され、S92でPWM-Duty比を設定した場合には、S5で記憶された前の調整処理で決定したPWM-Duty比が記憶される。
【0140】
次に、S83からS92における処理を、二分法を用いて行った場合を、図25および図26を参照して詳細に説明する。ここでは、パネル10のRGB3層は、それぞれ16階調を表示するものとする。
【0141】
図25は、ステップS83で、S82で算出した差が、第2閾値以下であると判定された場合の処理を示す。前述のように、ステップS81では、設定したEvolution電圧を使用して、S5で記憶した前の処理時のPWM-Duty比で、中間調表示を行って静電容量値を測定する。図25では、Pmaxを100%、Pminを0%とし、記憶されているPWM-Duty比が35%で中間調表示を行った場合に、測定された静電容量値が35.5%であった。目標容量は33.5%であるから、差は2%であり、第2閾値以下であるから、ステップS83からステップS92に進み、ステップS9は行わない。言い換えれば、二分法によるPWM-Duty比の探索を行わない。
【0142】
第2閾値、すなわち二分法によるPWM-Duty比の探索をスキップするか否かの判定は,所定の16階調を形成できるかを前提として決められる。例えば、静電容量0〜100%の範囲で16階調に分ける場合、各階調の静電容量の幅は100/(16−1)=6.7%となり、6.7%のステップで16階調に分けることが理想となる。そのため、第2閾値は、3.3%以下であることが望ましい。これをN階調表示とする場合、測定した静電容量と目標静電容量の差が、±100/2(N−1)以下とすることが望ましいことになる。
【0143】
図26は、ステップS9での処理の例を示す。ステップS81で、設定したEvolution電圧を使用して、S5で記憶した前の処理時のPWM-Duty比で中間調表示を行って測定した測定静電容量値が45%であるとする。この場合も目標静電容量値は33.5%であり、差が11.5%になるため、ステップS83で、第2閾値以上であると判定されて、ステップS9が行われる。
【0144】
ステップS9では、図16の第3ステップS3と異なり、中間調表示を行って測定した測定静電容量値とPmaxまたはPminとの中間値を設定することにより、探索範囲を最初から絞り、探索時間の短縮を図る。図26に示すように、ステップS81で測定した測定静電容量値45%は、目標静電容量値33.5%より小さいので、1回目の探索は、Pmaxを測定静電容量値45%として、PWM-Duty比をPmin(0%)とPmax(45%)の中間値Pmid(22.5%)にして行なわれる。探索範囲PmaxおよびPminを45%と0%にして二分法を開始するため、図26に示すように、ループ回数が2回のみで、静電容量値の誤差の規定値を満たし、探索を終了させることが可能になる。
【0145】
なお、時間短縮の可能な探索アルゴリズムは、上記の例に限定されず、各種の変形例が可能である。また、測定した測定静電容量値を利用して探索範囲を最初から絞る探索アルゴリズムおよび他の変形例は、Evolution電圧の探索にも適用可能である。
【0146】
第1実施形態の表示装置では、表示素子10の静電容量を検出する場合、表示素子10をDDS駆動方式で駆動して全画素を同じ表示状態にした。表示素子10をDDS駆動方式で駆動する場合、印加位置をシフトしながら全スキャンラインに図8に示すような駆動波形を印加する必要があり、ある程度の時間を要する。そのため、図16のステップS31は、表示する中間調の全てについて行うことが望ましく、8階調表示の場合には7種の中間調について5回程度表示状態を設定する必要があり、表示画面の設定に長時間を要する。
【0147】
そこで、図27の(A)に示すように、表示素子10の表示画面を、セグメントドライバ11の端子に対応させて複数の領域(図27の(A)では8領域)に分割し、異なる階調レベルの領域を同時に表示画面に表示する。なお、図27の(A)では、2領域を同じ階調を表示する状態にしており、G0からG3の4種の階調を表示する。そして、図27の(B)に示すように、階調G0を表示する状態の静電容量を測定する時には、セグメントドライバ11は、階調G0を表示する領域にのみ静電容量検出信号を印加するように制御する。以下、階調G1〜G3について、同様の方法で、静電容量の測定を行う。これにより、表示素子10の表示状態を変更するのに要する時間を、第1実施形態の1/4程度に短縮できる。
【0148】
図28の(A)から(D)は、G0からG15の16種の階調の静電容量を測定する場合の表示画面の例を示す図である。1回目には、G0からG3の4種の階調を表示し、図16の第3ステップS3を5回繰り返す。2回目には、G4からG7の4種の階調を表示し、図16の第3ステップS3を5回繰り返す。以下、G8からG11およびG12からG15の階調について同様の動作を行う。
【0149】
図27および図28で、画面内に同じ階調を表示する領域を2箇所設けるのは、画面ムラの影響を除去するためである。
そのほか、多階調のキャリブレーションを時間短縮する有効な方法として、1つか2つの中間調のデューティ比のみ探索アルゴリズムで決定し、その他の中間調のデューティ比は、探索アルゴリズムで決定したデューティ比を元に、外挿や内挿など補間処理を用いて決定する方法もある。
【0150】
第1実施形態の表示装置では、第1ステップS1で、輝度0と100(相対値)に対応させる静電容量を決定し、第2ステップS2で、第1ステップS1で決定した静電容量から所定の中間調部分の所定の静電容量値が得られるようにEvolution電圧を設定した。そして、第3ステップS3で、第2ステップS2で決定したEvolution電圧を使用して、中間調部分の静電容量値とSelectionパルスのデューティ比の関係を設定した。もし、表示素子の特性上、輝度0と100(相対値)およびそれに対応させる静電容量のバラツキが小さい場合には、第1ステップS1を省略できる。この場合でも、図14のEvolution電圧に対する静電容量変化特性が横方向にシフトするバラツキがある場合には、ステップS2およびS3を行う必要がある。もし、図14のEvolution電圧に対する静電容量変化特性が横方向にシフトするバラツキが小さければ、さらにステップS2を省略してステップS3のみを行えばよい。
【0151】
逆に、図21に示したSelectionパルスのデューティ比に対する静電容量値(中間調)の変化のバラツキが小さい場合には、第3ステップS3を省略することができる。
【0152】
また、第1実施形態の表示装置では、Evolution電圧およびSelectionパルスのデューティ比を調整して所望の表示特性が得られるようにした。しかし、前述のように表示特性を変化させる駆動条件の要因は他にもあり、それらを調整する場合にも、表示素子の静電容量を異なる表示状態で検出して、検出した静電容量に基づいて駆動条件を調整する上記の手法を適用できる。
【0153】
さらに、第1実施形態の表示装置では、単極性のドライバICを使用したが、双極性のドライバICを使用することも可能である。
【0154】
図29は、双極性のドライバICを使用する場合のセグメントドライバ11およびコモンドライバ12の出力電圧の対応関係を示す図である。
【0155】
ここで,+側から−側に向けて、電圧が高い順にVP3,VP2,VP1,0,VN1,VN2,VN3と定義する。正極フェーズの時、白表示の描画では、SEG-VP3とCOM-VP1の電圧差分がSelection期間に印加され、黒表示の描画では、SEG-VP1とCOM-VP1の電圧差分がSelection期間に印加される。Preparation期間とEvolution期間は,平均電圧がそれぞれ図29の関係で印加される。負極フェーズの時は、上記のVPとVNの対応関係が反転する。
【0156】
ここで,Evolution電圧から,SEG側とCOM側の各VP3,VP2,VP1,0,VN1,VN2,VN3へ展開するための計算式を以下に記す。非選択電圧は,Preparation/Selection/Evolution期間のいずれでもなく、描画済みあるいは未描画の全ての画素に印加される電圧である。
【0157】
SEG_VP3 =((Evolution電圧)+ 3 * 非選択電圧)/ 2
SEG_VP2 =(((Evolution電圧)+ 3 * 非選択電圧)- 非選択電圧)- SEG_VP3
SEG_VP1 = SEG_VP3 -非選択電圧 * 2
SEG_VN3 = -(SEG_VP3)
SEG_VN2 = -(SEG_VP2)
SEG_VN1 = -(SEG_VP1)
COM_VP3 = SEG_VP3
COM_VP2 = SEG_VP2
COM_VP1 = SEG_VP1
COM_VN3 = -(COM_VP3)
COM_VN2 = -(COM_VP2)
COM_VN1 = -(COM_VP1)
【0158】
上記のようにして、表示素子10の静電容量を実測し、検出した静電容量に応じた駆動条件に調整して適切な表示が行えるようになる。しかし、このような駆動条件が使用できるのは、静電容量の実測および駆動条件の調整を行なった温度のみであり、温度が変化すれば駆動条件が変化するので、静電容量の実測および駆動条件の調整を再度実行する必要がある。
【0159】
図30は、前回の表示書換え時の温度から温度が変化した場合に表示書換えを行う時の動作を示す図である。温度がAの時に静電容量の実測および駆動条件の調整動作SMAを行なった上、表示SDAを実行する。温度がAからBに変化した時に表示を行なう場合には、再度静電容量の実測および駆動条件の調整動作SMBを行なった上、表示SDBを実行する。さらに温度がAからBに変化した時に表示を行なう場合には、再度静電容量の実測および駆動条件の調整動作SMCを行なった上、表示SDCを実行する。なお、動画表示を行う液晶表示装置などで、ダミー容量などで表示素子の静電容量を常時測定して駆動条件を調整する場合の動作も、表示ごとに測定した静電容量に応じて駆動条件を調整するので、図30と同様である。
【0160】
前述のように、静電容量の実測および駆動条件の調整動作は長時間を要するため、温度が変化するたびに行なっていたのでは、表示素子の実質的な応答性を低下させるという問題を生じる。そこで、第1実施形態では、上記の静電容量の実測および駆動条件の調整動作を行った後または行なう前に表示素子10の温度を測定し、測定した温度での駆動条件を新たな最適化した条件にすると共に、他の温度の駆動条件は測定した温度と温度補償モデルを用いて更新する。すなわち、1回の駆動条件調整処理で、駆動条件記憶部26に記憶されている全ての温度範囲での駆動条件を同時に調整する。
【0161】
図31は、第1実施形態における駆動条件調整処理と、温度が変化した場合の表示書換え動作を示す図である。温度がAの時に静電容量の実測および駆動条件の調整動作SMAおよび温度測定STを行い、温度がAの時の駆動条件を更新し、さらに他の温度における駆動条件を、温度Aおよび温度補償モデルを用いて更新する。言い換えれば、温度Bの駆動条件を調整する動作SCBおよび温度Cの駆動条件を調整する動作SCCを、温度Aの調整した駆動条件を利用して、温度Aおよび温度補償モデルを用いて行なう。温度Aでの表示SDAは、更新した駆動条件に基づいて実行される。なお、表示SDAを実行した後、他の温度における駆動条件を更新するようにしてもよい。
【0162】
次に表示を書換える時には、表示素子10の温度を測定し、測定した温度に対応する駆動条件を駆動条件記憶部26から読み出して表示書換え動作を行う。例えば、温度Bで表示を書換える動作SDBを行う時には、駆動条件記憶部26から温度Bに対応する駆動条件を読み出し、読み出した駆動条件にしたがって表示書き換え動作を行なう。同様に、温度Cで表示を書換える動作SDCを行う時には、駆動条件記憶部26から温度Cに対応する駆動条件を読み出し、読み出した駆動条件にしたがって表示書き換え動作を行なう。
【0163】
図32は、第1実施形態における駆動条件調整処理動作を示す図である。
表示素子10の静電容量の測定および駆動条件に関する特性を測定する自動キャリブレーションSMを実行する。自動キャリブレーションSMの前または後に、表示素子10の温度測定STを実行する。ここでは、例えば25℃で自動キャリブレーションSMが行なわれたとする。自動キャリブレーションSM後に、25℃の駆動条件を最適化する処理SAを行う。さらに、全温度範囲における温度ごとの駆動条件を、調整した25℃の駆動条件を利用して、温度補償モデルを用いて最適化する温度補償モデル展開SCを行なう。その後、駆動条件記憶部26に記憶された全温度範囲に渡って温度ごとに駆動条件を記憶した駆動条件テーブル28を、最適化した25℃を含む全温度範囲の駆動条件で更新する。
【0164】
次に温度補償モデルについて説明する。
温度変化に応じて表示素子の特性が変化し、それに応じて駆動条件が変化するが、温度補償モデルは、温度変化に応じた駆動条件の変化に的確に対応して、全温度範囲で好適な表示が行える調整が実現できることが要求される。温度補償モデルは、温度によって最も大きく変化する物性である液晶材料の粘度と、高く相関を持たせるのが好適であることが判明した。
【0165】
図33は、温度変化に対する液晶材料の粘度変化の関係を示す図である。図示のように、温度が低いと粘度が高く、温度の上昇にしたがって粘度が低下することが分かる。
【0166】
図34は、液晶材料の粘度と、ダイナミック駆動法で液晶材料を駆動した場合にもっとも高いコントラストが得られるEvolution期間のエネルギーと、の対応関係を示す図である。Evolution期間のエネルギーは、Evolution期間の電圧の2乗に印加時間を乗じた値である。図34に示した液晶材料の粘度の範囲は、図33の3℃〜37℃で粘度の変化範囲である。
【0167】
図34から、各温度でもっとも高いコントラストが得られる時のEvolution期間のエネルギーは、液晶材料の粘度と高い相関、ほぼ線形の関係を有することが分かる。すなわち、ある温度での最適化処理によって得られたEvolution期間の電圧・印加時間が決定されると、それ以外の温度でのEvolution期間の電圧・印加時間は、図33および図34の相関関係を用いて算出すればよいことが分かる。
【0168】
図35は、製造ロットが異なる2枚の液晶表示素子AおよびBの、高いコントラストが得られる時のEvolution期間のエネルギーの相対値の温度変化を示す図である。2枚の液晶表示素子AおよびBは、製造時期が大きく異なり、駆動条件の最適値も異なっていたが、高いコントラストが得られる時のEvolution期間のエネルギーの相対値は、温度変化に対して同じように変化することが分かる。このように、パネル毎に駆動条件がバラついても、Evolution期間の最適エネルギーの相対値は、バラツキにかかわらず、類似の温度変化をすることが分かる。したがって、たとえ異なる液晶表示素子であっても、相対的な補正を行えば、類似のEvolution期間のエネルギーの温度変化特性を利用して、温度補正が行えることになる。
【0169】
具体的な例で説明すると、図16の第2ステップS2を25℃で行った最適化処理で得られたパネルAのEvolution期間の電圧が±25V、印加時間が15ms、パネルBのEvolution期間の電圧が±24V、印加時間が15msであり、最適電圧がやや異なった場合を考える。この場合、Evolution期間のエネルギー比はパネルAとパネルBで1:0.92となるので、その他の温度での駆動条件は、それぞれこの比率を保ちつつ、液晶材料の粘度と高い相関を保持するように設定すればよいことになる。
【0170】
以上のように、ある温度で得られた駆動条件の全温度範囲への展開では、Evolution期間のエネルギー(電圧の2乗×印加時間)の温度依存性をあらかじめ定め、ある温度で実行された最適化処理の結果に基づいてその他の温度のEvolution期間の電圧・印加時間を決めればよい。しかし、電圧と印加時間のいずれかは温度によらず固定にしたほうが処理を簡素化できるので、第1実施形態では、印加時間は温度および製造ロットによらず固定とし、各温度での電圧を変化させる。
【0171】
図36は、第1実施携帯において、Evolution期間の印加時間を一定とし、図35のEvolution期間のエネルギーの温度依存性を満たすようにEvolution期間の電圧を変化させる場合の、温度とEvolution期間の電圧との関係を示す図である。
【0172】
図16の第3ステップS3で行うガンマ(階調特性)の最適化についても同様に、Selection期間のエネルギーを利用すればよい。例えば、RGBで各16階調とした4096色表示の場合、RGBで各16階調の再現に必要なSelection期間の電圧・印加時間から得たエネルギー(電圧の2乗×印加時間)の相対比を用いる。この場合、白表示では最大のDuty比(100%)、黒表示では最小のDuty比(0%)で、中間調はその間のDuty比となる。
【0173】
しかし、コントラストの最適化に関しては、液晶材料の粘度と高い相関を有していたため、各温度の駆動条件に対しても容易に拡張できる。しかし、後述するように、ガンマの最適化に関しては、液晶材料の粘度との相関を把握するのが若干難しい。そのため、第1実施形態では、このSelection期間のエネルギーに関しては、液晶材料の粘度で簡易に傾向を掴むよりも、実験的に傾向を捉えてモデルを作成した。
【0174】
ここで、RGB各色の中の緑(Green)についての一例を説明する。
緑色の16階調の中心階調(=8/15)が得られるSelection期間のDuty比は、図37のような温度依存性を有することが明らかになった。この図から、10℃以下の低温側や25℃以上の高温側で、中心階調を得るために必要なDuty比が高くなることが分かる。言い換えれば、低温側や高温側は暗くなりやすい表示特性となるため、より大きなDuty比が必要になると言える。このDuty比はSelection期間の印加パルスの印加時間を表す。そのため、Selection期間の印加パルスの電圧と印加時間からエネルギーを算出し、そのエネルギー比を用いることで、ある温度での最適化処理の結果を全ての温度範囲に拡張する。なお、Preparation期間の電圧やライン数、非選択電圧は温度によらず固定としても問題ない。
【0175】
温度補償は、温度範囲を区切り、範囲内の駆動条件を温度によって離散的に変更してもよいが、そのような離散的な駆動条件の変更では、温度がその区切り前後だった場合、表示品位が急に変わるという不具合が発生する。そこで、第1実施形態では、線形補間を使い、駆動条件を連続的に変化させる。
【0176】
図38は、温度補償で書き換え速度が変化する場合に、温度補償を離散的に行なう場合と連続的に行なう場合の書き換え速度の変化を模式的に示す図であり、Pが離散的に変更する場合を、Qが連続的に変更する場合を示す。図38は書き換え速度の変化を示したが、電圧変化等の場合も同様である。離散的に変更するPの場合、速度が変化する前後で差が大きくなり、表示品位が急に変化することになる。
【0177】
図39は、第1実施形態の表示装置で表示を行う場合の動作を示すフローチャートである。駆動条件記憶部26には、全温度範囲に渡って駆動条件が記憶されている。
ステップS95で、表示書き換えの指示を受信すると、画像データの受信、階調変換等の所定の処理を行い、バッファ25に表示するデータを展開して記憶する。
【0178】
ステップS96では、温度センサ27の検出する表示素子10の温度を読み取る。
ステップ97では、駆動条件記憶部26から測定した温度に対応する駆動条件を読み出す。
ステップS98では、読み出した駆動条件で表示動作を行う。
【0179】
図40は、第1実施形態において、2枚の液晶表示素子AおよびBについて、温度補償モデルに基づいて全温度範囲の駆動条件を変更した例を示す図であり、(A)が温度に対するEvolution期間の電圧を、(B)が温度に対するSelection期間のDuty比を示す。
液晶表示素子AおよびBでは最適値が異なるが、前述のように最適値は温度に対して一定の傾向を示すため、それぞれ図40に示したような最適値となった。
【0180】
図41は、第1実施形態の表示装置における温度に対する表示特性の変化を示す図であり、(A)が温度変化に対する明るさ変化を、(B)が温度変化に対するコントラスト変化を示す。図示のように、明るさ・コントラストともに広い温度範囲に渡って高い値が得られ、表示素子の最大限の能力を引き出せた。図41は、1枚の表示素子についてのデータであるが、他の表示そしを使用した場合も同様のデータが得られ、同様に最大限の表示特性を引き出すことができた。
【0181】
図42は、第1実施形態の表示装置における温度に対するガンマ(階調特性)の変化を示す図である。
最低温度(5℃)と最高温度(35℃)でややズレがあるが、各温度で階調反転もないことが分かる。さらに、目視でも安定した表示品位が得られることが確認された。
【0182】
図40から図42に示した例は、駆動条件の自動調整を25℃で行い、それ以外の温度での駆動条件は、25℃での駆動条件に基づいて、上記の手法を使って決定したものである。
【0183】
以上のように、第1実施形態の表示装置では、駆動条件の自動調整は動作温度範囲であれば何度で行っても同様な効果が得られ、頻繁に駆動条件の自動調整を行なう必要が無いので、使い勝手が大きく向上する。
【0184】
なお、最適な駆動条件は、RGB各素子で異なる場合があるので、上述の自動調整はRGB各素子で個別に行うようにしてもよい。
【0185】
前述のように、駆動条件の自動調整は、製品を初めて起動する時や、定期的(例えば1ヶ月に一度)に自動実行してもよいし、ユーザーの指示に応じて行うようにしてもよい。
【0186】
第1実施形態では、静電容量値(C0‘およびC100’)を測定し、測定した静電容量値と記憶してある前回の駆動条件自動調整処理で測定された静電容量との差が大きい場合には、再度駆動条件自動調整処理を行い、小さい場合には駆動条件自動調整処理の一部、例えばEvolution電圧の設定処理を省略した。しかし、測定した静電容量値と記憶してある前回の駆動条件自動調整処理で測定された静電容量との差が十分に小さい場合には、パネル特性の変化が小さく、Evolution電圧およびPWM-Duty比を変更する必要がない場合が多い。このような場合には、Evolution電圧およびPWM-Duty比を変更する必要がない、言い換えれば、駆動条件自動調整処理を行う必要がない。
【0187】
次に説明する第2実施形態の表示装置は、第1実施形態の表示装置と同じハードウエア構成を有し、2回目以降の駆動条件自動調整処理の開始を判定するようにしたことのみが異なる。
図43は、第2実施形態の表示装置の駆動条件自動調整処理を示すフローチャートである。
【0188】
ステップS100では、図16に示した駆動条件自動調整処理が、あらかじめ一度は行われ、白表示および黒表示に対応する静電容量が測定され、Evolution電圧および目標静電容量値になるSelectionパルスのデューティ比が決定される。
【0189】
ステップS101では、制御部23が、駆動条件自動調整処理で測定された静電容量(C0’およびC100’)、および設定されたEvolution電圧およびSelectionパルスのデューティ比を、駆動条件記憶部26に記憶する。
【0190】
第2実施形態では、経時変化および環境変化に応じて駆動条件を変化させるため、定期的に駆動条件自動調整処理を起動する。
【0191】
そのため、ステップS102では、タイマー処理を行い、所定時間が経過したことを検出する。なお、タイマー処理に限定されず、温度変化など他の要因や、それらの組合せに応じて駆動条件自動調整処理を起動することも可能であり、外部から駆動条件自動調整処理の起動信号を受けることも可能である。
【0192】
ステップS103では、図24のS6と同じ処理を行う。これにより、0%点および100%点に対応する静電容量値C0’およびC100’が測定される。
【0193】
ステップS104では、S103で測定した静電容量値C0’およびC100’と、S101で記憶した前回の静電容量値の差D0およびD100をそれぞれ算出する。D0は、S103で測定した静電容量値C0’とS101で記憶したC0’の差の絶対値であり、D100は、S103で測定した静電容量値C100’とS101で記憶したC100’の差の絶対値である。
【0194】
ステップS105では、差が第1閾値より大きいかを判定し、大きければステップS106に進み、小さければステップS102に戻る。ステップS102に戻った場合には、次に起動信号が発生するまで、それまでの状態を維持する。言い換えれば、駆動条件自動調整処理を行わない。上記のように、静電容量値C0’およびC100’の変化が十分に小さい場合には、パネル特性の変化が小さく、Evolution電圧およびPWM-Duty比を変更する必要もないので、駆動条件自動調整処理を行わなくても問題はない。
【0195】
ステップS106では、図16の第2ステップS2および第3ステップS3を行って、Evolution電圧およびPWM-Duty比を設定する。この際、第1実施形態で説明した処理時間を短縮するための処理を行うことが可能である。
【0196】
ステップS107では、表示素子10の温度を測定して、温度および温度補償モデルに基づいて、全温度範囲の駆動条件を更新する。
【0197】
ステップS108では、S103で測定した静電容量値C0’およびC100’、および更新したEvolution電圧およびPWM-Duty比などの全温度範囲の駆動条件を駆動条件記憶部26に記憶し、ステップS102に戻る。
【0198】
第1実施形態の表示装置では、DDS駆動方式を使用したが、前述のコンベンショナル駆動方式を使用する場合にも、表示素子の静電容量を異なる表示状態で検出して、検出した静電容量に基づいて駆動条件を調整する上記の手法を適用できる。以下、コンベンショナル駆動方式を使用する第3実施形態の表示装置を説明する。
【0199】
図44は、第3実施形態の表示装置における表示状態の変化を示す図である。
コレステリック液晶は、強い電界(リセット電圧)を印加した時に、全ての液晶分子が電界の向きに従うホメオトロピック状態になり、ホメオトロピック状態で電界の印加を急激に解除すると、プレーナ状態になる。プレーナ状態において中間の電界(書込み電圧)を印加すると、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に変化するが、印加時間によりフォーカルコニック状態に変化する液晶分子の割合が異なる。具体的には、印加時間が短いとフォーカルコニック状態の割合が小さく、印加時間が長いとフォーカルコニック状態の割合が大きい。
【0200】
コンベンショナル駆動方式は、DDS駆動方式では難しい中間調の高い均一性で表示することが可能であり、フルカラーに近い表示を行いたい場合に有用である。
【0201】
第3実施形態の表示装置は、図1に示したのと同様の構成を有し、単純マトリクス方式用のセグメントドライバ11およびコモンドライバ12を使用し、駆動方式がコンベンショナル方式であることが第1実施形態と異なる。コンベンショナル駆動方式のコレステリック液晶を用いた表示装置は、広く知られているので、詳しい説明は省略するが、関連する事項について簡単に説明する。
【0202】
コンベンショナル駆動方式では、書換え対象の全画素にリセット電圧を印加してホメオトロピック状態にした後、リセット電圧の印加を解除してプレーナ状態にするリセット処理と、各画素に書込みパルスを印加し、その印加時間を調整して画像を表示する書込み処理と、を行う。
【0203】
図45の(A)は、リセット処理時に全画素に印加されるリセットパルスを示し、例えば±36Vの数十ms幅のパルスである。
【0204】
上記のように、書込み電圧の印加時間に応じてフォーカルコニック状態の混在率が変化する。書込み電圧の印加時間を変化させる方法は、大きく二通りに大別できる。第1の方法は、パルスの幅によって印加時間を変化させる方法であり、第2の方法は、短いパルスを累積させ、その累積数によって印加時間を変化させる方法である。
【0205】
図45の(B)は、第1の方法を実行する場合の書込みパルスを示す。書込みパルスは、±20Vのパルスでパルス幅が異なる。具体的には、コモンドライバ12が各スキャンラインにスキャンパルスを印加し、スキャンパルスを印加するスキャンラインの位置を1ラインずつシフトする。1ラインに印加されるスキャンパルスの期間が、書込みパルスの最大パルス幅である。セグメントドライバ12は、スキャンパルスの印加に同期して、書込みパルスのオン・オフを制御する信号を出力する。これにより、スキャンパルスの印加される1スキャンライン中の全画素の書込みが行われる。プレーナ状態(白表示)を維持する画素にはスキャンパルスは印加されず、フォーカルコニック状態(黒表示)にする画素にはスキャンパルスの期間に対応する幅のスキャンパルスが印加され、中間調表示する画素には階調に応じたパルス幅のスキャンパルスが印加される。
【0206】
図46は、第1の方法を実行する場合の書込みパルスを示し、4個のフレームで、(A)から(D)のパルスが印加される。図46の(A)から(D)の書込みパルスの幅は、順に1/2に減少する。第1フレームでは、コモンドライバ12が各スキャンラインに図45の(A)の書込みパルスに対応するスキャンパルスを印加し、スキャンパルスを印加するスキャンラインの位置を1ラインずつシフトする。セグメントドライバ12は、スキャンパルスの印加に同期して、書込みパルスのオン・オフを制御する信号を出力する。以下同様に、図46の(B)から(D)の書込みパルスの印加が行われる。図46の(A)の書込みパルスのみがオンの画素には幅8の書込みパルスが印加され、図46の(B)の書込みパルスのみがオンの画素には幅4の書込みパルスが印加され、以下同様である。したがって、図46の(A)から(D)の書込みパルスが全てオンの画素には最大の幅15の書込みパルスが印加され、いずれもオフの画素には書込みパルスが印加されない。
【0207】
第3実施形態の表示装置では、駆動条件で調整するパラメータは、例えば、書込み処理における書込みパルスの電圧、書込みパルスの最大累積時間、パルス幅などである。これらのパラメータを、表示状態を設定した表示素子の静電容量を測定しながら、ニュートン法あるいは二分法などを適用して、最適化する。さらに、各パルスのエネルギが温度に応じて図36に示したのと類似の曲線で変化するようにパルスの電圧および/またはパルス幅を変化させて全温度範囲の駆動条件を求めて記憶する。
【0208】
以上説明したように、第1から第3実施形態では、駆動条件の自動調整が行われ、全温度範囲の駆動条件を一括して最適化できるようになるので、実質的な応答時間を短縮することができる。
【0209】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載した全ての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【0210】
以下、実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
駆動された後、前記駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子と、
前記表示素子が呈する静電容量を検出する静電容量検出回路と、
前記表示素子の温度を検出する温度センサと、
前記表示素子の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記表示素子を所定の駆動条件で駆動した表示状態において検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を調整する駆動条件調整回路と、
所定の温度範囲に渡り,前記表示素子が最適な表示特性となる駆動条件の対応関係を示した1つ以上の温度補償モデルを記憶した温度補償記憶回路と、を備え、
前記表示素子の駆動条件を調整した時の温度と、
前記温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における前記表示素子の駆動条件を変更することを特徴とする表示装置。
(付記2)
前記温度補償記憶回路は、前記温度補償モデルの対応関係の値を記憶したルックアップテーブルを備える付記1記載の表示装置。
(付記3)
前記表示素子は、コレステリック液晶を用いている付記1または2記載の表示装置。
(付記4)
前記表示素子は、ダイナミック駆動方式(Dynamic Driving Scheme:DDS)で駆動される付記3記載の表示装置。
(付記5)
前記駆動条件調整回路は、Evolution期間の電圧値をパラメータとして駆動条件を自動調整した後、調整した電圧値を使用する条件でSelection期間のデューティ比をパラメータとして駆動条件を自動調整する付記4記載の表示装置。
(付記6)
前記駆動条件調整回路は、二分法を適用して前記Evolution期間の電圧値と前記Selection期間のデューティ比を、それぞれ調整する付記5記載の表示装置。
(付記7)
前記駆動条件調整回路は、前記Selection期間のデューティ比を変化させて測定した時の前記静電容量が、目標静電容量に近づくように調整を行い、N階調表示を行う場合に、測定した前記静電容量と前記目標静電容量の差が、±100/2(N−1)以下になった時に調整を終了する付記6記載の表示装置。
(付記8)
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルである付記4から7のいずれか記載の表示装置。
(付記9)
前記Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルは、前記コレステリック液晶の粘度と高い相関を有する付記8記載の表示装置。
(付記10)
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのエネルギーおよびデューティ比を変調させるモデルである付記4から9のいずれか記載の表示装置。
(付記11)
前記温度補償モデルでは、前記Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのデューティ比は、室温に対して低温および高温になるほど大きくなる付記10記載の表示装置。
(付記12)
前記駆動条件調整回路は、少なくとも2つ以上の異なる表示状態において検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を自動調整する付記1から11のいずれか記載の表示装置。
(付記13)
前記静電容量検出回路は、電流検出波形を有する信号を生成して前記表示素子に印加する電流検出波形印加回路と、
前記電流検出波形を有する信号を印加した時の前記表示素子への電流値を検出する電流検出回路と、を備える付記1から12のいずれか記載の表示装置。
(付記14)
前記電流検出波形は、のこぎり波あるいは三角波である付記13記載の表示装置。
(付記15)
前記電流検出回路は、前記表示素子を単純マトリクス方式で駆動するセグメントドライバへの供給電流を測定するように配置される付記13または14記載の表示装置。
(付記16)
前記静電容量検出回路による静電容量の検出は、
前記表示素子の全面を所定の表示状態に設定した上で、電流検出波形を有する信号を前記表示素子に印加して行う、付記1から15のいずれか記載の表示装置。
(付記17)
前記静電容量検出回路による静電容量の検出は、
前記表示素子の表示面を、前記セグメントドライバの出力端子に対応して領域に分け、前記表示素子の表示面を前記領域ごとに所定の表示状態に設定した上で、電流検出波形を有する信号を前記領域ごとに印加して行う、付記1から15のいずれか記載の表示装置。
(付記18)
前記駆動条件調整回路は、
前記電流検出回路の検出した電流値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器の出力するデジタル値に基づいて駆動条件を演算する演算回路と、を備える付記1から17のいずれか記載の表示装置。
(付記19)
前記表示素子は、異なる反射光を呈する複数の液晶層の積層構造を備え、
前記駆動条件調整回路は、各層別に駆動条件を自動調整する付記1から18のいずれか記載の表示装置。
(付記20)
前記駆動条件調整回路は、前回調整時の前記表示素子の静電容量を記憶する静電容量記憶回路を備え、
前記駆動条件調整回路は、前記静電容量検出回路が検出した前記静電容量と、前記静電容量記憶回路に記憶された前記静電容量の差が所定以上の時に、前記駆動条件調整回路による調整処理を実行し、
前記制御部は、前記駆動条件テーブルの駆動条件を変更する付記1から19のいずれか記載の表示装置。
(付記21)
前記静電容量検出回路による前記静電容量の検出を定期的に行う付記1から20のいずれか記載の表示装置。
(付記22)
駆動された後、前記駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子の駆動制御方法であって、
前記表示素子を所定の駆動条件で駆動して表示状態を設定した後、設定した表示状態において、前記表示素子が呈する静電容量を検出し、
検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を自動調整し、
前記表示素子の温度を検出し、
検出した温度および温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における前記表示素子の駆動条件を変更することを特徴とする表示素子の駆動制御方法。
(付記23)
前記表示素子の駆動条件は、所定の温度範囲に渡って温度ごとにルックアップテーブルに記憶されている付記22記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記24)
前記表示素子は、コレステリック液晶を用いている付記22または23記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記25)
前記表示素子は、ダイナミック駆動方式(Dynamic Driving Scheme:DDS)で駆動される付記24記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記26)
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルである付記25記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記27)
前記Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルは、前記コレステリック液晶の粘度と高い相関を有する付記26記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記28)
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのエネルギーおよびデューティ比を変調させるモデルである付記25から27のいずれか記載の表示素子の駆動制御方法。
(付記29)
前記温度補償モデルでは、前記Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのデューティ比は、室温に対して低温および高温になるほど大きくなる付記28記載の表示素子の駆動制御方法。
【符号の説明】
【0211】
10 表示素子
11 コモンドライバ
12 セグメントドライバ
13 電源部
14 電流センスアンプ
21 ホスト制御部
22 フレームメモリ
23 制御部
24 演算部
25 バッファ
26 駆動条件記憶部
27 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動された後、前記駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子と、
前記表示素子が呈する静電容量を検出する静電容量検出回路と、
前記表示素子の温度を検出する温度センサと、
前記表示素子の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記表示素子を所定の駆動条件で駆動した表示状態において検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を調整する駆動条件調整回路と、
所定の温度範囲に渡り、前記表示素子が最適な表示特性となる駆動条件の対応関係を示した1つ以上の温度補償モデルを記憶した温度補償記憶回路と、を備え、
前記表示素子の駆動条件を調整した時の温度と、
前記温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における前記表示素子の駆動条件を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記温度補償記憶回路は、前記温度補償モデルの対応関係の値を記憶したルックアップテーブルを備える請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示素子は、コレステリック液晶を用いている請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示素子は、ダイナミック駆動方式(Dynamic Driving Scheme:DDS)で駆動される請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルである請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記Evolution期間に印加されるパルスのエネルギーを変調させるモデルは、前記コレステリック液晶の粘度と高い相関を有する請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記温度補償モデルは、温度に応じて、Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのエネルギーおよびデューティ比を変調させるモデルである請求項4から6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記温度補償モデルでは、前記Selection期間に印加される中間調を選択するパルスのデューティ比は、室温に対して低温および高温になるほど大きくなる請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記駆動条件調整回路は、少なくとも2つ以上の異なる表示状態において検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を自動調整する請求項1から8のいずれ1項に記載の表示装置。
【請求項10】
駆動された後、前記駆動が解除された後も表示状態を維持するメモリ性を有する表示素子の駆動制御方法であって、
前記表示素子を所定の駆動条件で駆動して表示状態を設定した後、設定した表示状態において、前記表示素子が呈する静電容量を検出し、
検出した前記静電容量に基づいて、前記表示素子の駆動条件を自動調整し、
前記表示素子の温度を検出し、
検出した温度および温度補償モデルに基づいて、調整を行った時の温度以外の温度における前記表示素子の駆動条件を変更することを特徴とする表示素子の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2013−76745(P2013−76745A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215155(P2011−215155)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】