説明

表示装置

【課題】 製造容易な構成により、白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 発光色の異なる複数の画素1からなる画素ユニットには、画素1の発光色ごとの有機EL素子における輝度の角度依存性の差が小さくなるようにレンズ30R,30G,30Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機EL素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を備えた表示装置に関して盛んに研究開発されている。有機EL素子は陽極と発光層を含む有機化合物層と陰極とで構成され、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子が発光層に注入され、正孔と電子の再結合エネルギーを利用して発光層から光が出射される。
【0003】
カラー表示を可能にするために、例えば赤色、緑色、及び青色のような、互いに異なる色を発する複数の有機EL素子を備えた表示装置では、各色の有機EL素子を発光させて白色を表示する。しかし、各色(赤色、緑色、青色)の有機EL素子の輝度の角度依存性が異なるため、正面から表示装置を観察する場合と、正面から傾いた角度から表示装置を観察する場合とで白色の色度が異なってしまう問題(白色の色度ずれ)があった。
【0004】
具体的に図9を用いて説明する。図9は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の有機EL素子の放射角度に対する相対輝度の変化を示す図である。相対輝度は正面(角度0度)の輝度を1として表されている。図9において、放射角度が50度の場合、赤色は相対輝度が約0.55であるのに対し、緑色、青色では相対輝度がそれぞれ約0.42、約0.30である。このため、正面から表示装置を観察した場合に白色として観察されても、正面から傾いた角度から表示装置を観察した場合には赤色の相対輝度が他の色よりも大きいので、赤みがかかった白色として観察されてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1では、陽極と陰極にある反射面の間で、発光層の発する光を多重干渉させる有機EL素子において、青色の有機EL素子の干渉次数をゼロとし、発光層以外の機能層を各色の有機EL素子で共通にして、各色の輝度の角度依存性の差を抑えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−123404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、有機EL素子を構成する有機化合物層の膜厚制御は難しく、薄膜である機能層の面内ばらつきを抑え、さらに干渉を考慮した設計どおりに有機EL素子を形成することは困難である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて、製造容易な構成により、白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発光色の異なる複数の画素からなる画素ユニットが複数配列された表示装置であって、前記画素は、有機EL素子を備え、前記画素ユニットには、前記画素の発光色ごとの有機EL素子における輝度の角度依存性の差が小さくなるようにレンズが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、形状や屈折率等を制御しやすいレンズを用いることにより、白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る表示装置の一例を示す斜視模式図および部分断面模式図
【図2】従来の表示装置の部分断面模式図
【図3】放射角と相対輝度との相関を示す図
【図4】本発明の実施形態1に係る表示装置の製造工程を示す図
【図5】本発明の実施形態2に係る表示装置の一例を示す部分断面模式図
【図6】本発明の実施形態3に係る表示装置の部分断面模式図
【図7】本発明の実施例に係る表示装置の放射角と相対輝度との相関を示す図
【図8】本発明の実施形態3に係る表示装置の製造工程を示す図
【図9】本発明の課題を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明において、輝度の角度依存性とは、表示装置を正面から観察した場合の輝度に対して正面から傾いた角度で観察した場合に、輝度(相対輝度)が変化する性質のことをいう。また、輝度の角度依存性の差を小さくするとは、観察角度に応じた相対輝度の変化の様子を互いに近づけることである。
【0014】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る表示装置を示す斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素1を複数有している。そして、複数の画素1はマトリックス状に配置され、表示領域2を形成している。なお、画素とは、1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は、有機EL素子であり、画素1のそれぞれに1つの色の有機EL素子が配置された表示装置である。有機EL素子の発光色としては、赤色、緑色、青色が考えられ、そのほかに黄色、シアン、白色でもよく、少なくとも2色以上であれば特に制限はない。また、本実施形態の表示装置には、発光色の異なる複数の画素(例えば赤色を発する画素、緑色を発する画素、及び青色を発する画素)からなる画素ユニットが複数配列されている。画素ユニットとは、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を示す。
【0015】
図1(b)は、図1(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素1は、基板10上に、第1電極(陽極)11と、正孔輸送層12と、発光層13R,13G,13Bと、電子輸送層14と、第2電極(陰極)15と、を備える有機EL素子3を有している。また、本実施形態では、発光層13Rは赤色を発する発光層、発光層13Gは緑色を発する発光層、発光層13Bは青色を発する発光層である。発光層13R,13G,13Bはそれぞれ、赤色、緑色、青色を発する画素(有機EL素子3)に対応してパターン化されて形成されている。また、第1電極11も、隣の画素(有機EL素子3)の第1電極11と分離されて形成されている。そして、正孔輸送層12と電子輸送層14と第2電極15は、隣の画素と共通で形成されていてもよいし、画素毎にパターン化されて形成されていてもよい。なお、第1電極11と第2電極15とが異物によってショートするのを防ぐために、画素(より具体的には、第1電極11)間に絶縁層20が設けられている。
【0016】
さらに、本実施形態の表示装置では、レンズ部材30が設けられている。なお、レンズ部材30と各有機EL素子3の間には、水分や酸素から有機EL素子3を保護する保護層40が配置されている。レンズ部材30には、表面に凹部を有する構成であり、各画素に対応する位置に凹レンズ30R,30G,30Bが配置されている。そして、各凹レンズ30R,30G,30Bは、その曲率半径が異なるように調整されている。この構成により、レンズの発散特性を画素毎に変えることが可能となる。本発明では、レンズの発散特性を色毎に調整することにより、輝度の角度依存性が互いに異なる有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくしている。以下で具体的に説明する。なお、「発散特性」とは、界面に入射する光の入射角度よりも出射される光の出射角度の方が大きくなる特性である。また、発散特性は、画素の領域のうちレンズが占める領域、レンズの曲率半径(もしくは曲率)、発光層(有機EL素子)からレンズまでの距離、レンズの材料の屈折率によっても制御することが可能である。
【0017】
まず、図2に示すように、画素にレンズが形成されていない場合を考える。有機EL素子から斜めに出射された光50は、保護層40から出射する際に、さらに斜めの光51となって出射される。これに対して、図1(b)のように、画素に凹レンズ(例えば凹レンズ30G)が形成されている場合には、凹レンズ30Gを透過して出射された光50は、レンズが無い場合(破線)に比べて、基板10の面内方向にさらに斜めに傾いた光52となって出射される。したがって、レンズが無い場合に比較して、凹レンズがあった場合の方が斜めの方向へ光を分散する機能がある。すなわち、表示装置としては、斜めの方向から観察したときの輝度の低下が抑制される。なお、「斜め」とは、表示装置の正面方向から基板の面内方向に傾いた角度の方向のことをいう。
【0018】
次に、凹レンズの曲率と輝度の角度依存性について述べる。図3は、凹レンズの曲率半径Rが異なる場合の、放射角と相対輝度の相関関係を示す図である。図3において、「平坦」とは、レンズが形成されていない場合を示す。なお、測定に用いた凹レンズは、曲率半径Rが、20μm,30μm,60μm,100μmの4種類のものを用意した。それぞれの曲率半径の構成において、画素のピッチを31.5μm、凹レンズの最大幅を31.5μm、画素の幅を16.5μmであった。また、第2電極15は、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物で構成し、屈折率1.9、膜厚0.05μmであった。保護層40は、窒化シリコンで構成し、屈折率1.83、膜厚0.18μmであった。レンズ部材30は、エポキシ樹脂で構成し、屈折率1.54、最小膜厚を10μmであった。なお、相対輝度とは、それぞれの構成における放射角0度(正面方向)の輝度を1とした場合の相対的な輝度を意味する。
【0019】
図3で示すように、レンズが形成されている場合(実線)が、レンズが形成されていない場合(破線)よりも相対輝度が低下しにくくなっている。さらに、凹レンズが形成されている場合においても、凹レンズの曲率半径が小さいほど、相対輝度が低下しにくくなっていることがわかる。これは、曲率半径が小さい凹レンズの方が、曲率半径が大きいレンズよりも、凹レンズによる発散特性が大きいことを示している。つまり、発散特性は、レンズを設けない構成、曲率半径が大きい凹レンズを設ける構成、曲率半径が小さい凹レンズを設ける構成、の順に大きくなる。このため、発散特性が大きいレンズを備えた画素ほど、斜めからみた場合でも相対輝度が低下しにくくなる。
【0020】
一方、有機EL素子の輝度の角度依存性は発光色により異なるのが一般的である。この原因は、有機EL素子の発光層や正孔輸送層などの有機化合物層、電極などの材料あるいは膜厚によって、光吸収率や光透過率が波長分散を有していることが考えられる。また、各色の有機EL素子の各発光層の発光材料が発光するスペクトルの形状が互いに異なっていることなども考えられる。
【0021】
そこで、本実施形態の表示装置では、異なる色を発する有機EL素子どうしの輝度の角度依存性の差を小さくするように、発散特性が調整されたレンズを、各画素に、各画素が発する色に応じて設けている。より具体的には、輝度の角度依存性が大きい(相対輝度の低下が大きい)有機EL素子を有する画素には発散特性が大きいレンズを設け、輝度の角度依存性が小さい(相対輝度の低下が小さい)有機EL素子を有する画素には発散特性の小さいレンズを設けている。凹レンズの曲率半径で発散特性を制御する場合には、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には曲率半径の小さい凹レンズを設け、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には曲率半径の大きい凹レンズを設ける。
【0022】
例えば、画素ユニットを構成する各画素に、赤色を発する有機EL素子(以下では、R素子という)又は緑色を発する有機EL素子(以下では、G素子という)又は青色を発する有機EL素子(以下では、B素子という)を備える表示装置について、各色の有機EL素子で輝度の角度依存性が異なる場合を考える。より具体的には、R素子、G素子、B素子の順に輝度の角度依存性が大きくなる場合を考える(R素子の角度依存性<G素子の角度依存性<B素子の角度依存性)。この場合、R素子、G素子、B素子の順に、設けるレンズの発散特性を大きくすればよい(R素子のレンズの発散特性<G素子のレンズの発散特性<B素子のレンズの発散特性)。この構成により、発散特性の大きいレンズが設けられたB素子を有する画素は、相対輝度の低下が抑えられ、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。同様に、G素子を有する画素も、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。つまり、B素子、G素子の輝度の角度依存性は、R素子の輝度の角度依存性に近くなるので、赤色、緑色、青色の混色である白色を、表示装置の斜めの角度から観察した場合でも、白色の色度ずれが抑制される。より具体的には以下のとおりである。
【0023】
各色の正面での色度座標がCIExyで、赤(0.67,0.33)、緑(0.21,0.71)、青(0.14,0.08)である。色度座標(0.31,0.33)の白色を表示する際に、赤、緑、青の輝度比は3:6:1である。その場合、表示装置を斜め、例えば正面から50度傾いた角度から観察すると、各色の色度座標は、赤(0.65,0.35)、緑(0.18,0.66)、青(0.15,0.05)となる。その角度での赤、緑、青の輝度比は1.26:2.04:0.23である。なお、それぞれの色の正面の輝度に対する相対輝度比では、0.42:0.34:0.23である。つまり、正面から50度傾いた角度で観察した場合は、正面での白色表示の輝度比と比べて大きく変化するので色度が大きく変化する。このため、正面から50度傾いた角度の場合で、正面での輝度比が保てないため、白色の色度ずれが生じる。
【0024】
そこで、斜めの角度から観察しても、赤、緑、青の輝度比が3:6:1に保たれ、色度座標(0.31,0.33)に近い白色を得られるようにするため、各色の輝度の角度依存性を揃えるようにする。各色の正面から50度傾いた角度での相対輝度の低下割合は、赤、緑、青で58%、66%、77%である。赤の相対輝度の低下割合に、緑と青の相対輝度の低下割合を揃えようとすると、緑、青はそれぞれ11%、19%の輝度低下を抑制するようにすれば、相対輝度の低下割合がそろい、輝度の角度依存性の差が小さくなる。このため、正面から50度傾いた角度の場合で、正面での輝度比が保つことができ、白色の色度ずれを低減できる。なお、白色の色度ずれは、CIE 1976 UCS色度座標(以下、u’v’色度座標という)(u’,v’)を用いることが一般的であり、CIExy色度座標(x,y)との関係は、以下のとおりである。
【0025】
【数1】

【0026】
具体的には、白色のCIExy色度座標(0.31,0.33)は、u’v’色度座標では、(0.20,0.47)である。
【0027】
白色の色度ずれは、u’v’色度座標における正面で観察した色度(u’,v’)と、正面から傾いた角度θで観察した色度(u’θ,v’θ)との関係式(数2)で表される色度差δu’v’が、角度θが50度のときに0.015以下になれば、十分に抑制されているといえる。
【0028】
【数2】

【0029】
なお、レンズの発散特性は、各色毎に必ずしも変更する必要はなく、必要に応じて適宜調整すればよい。例えば、R素子、G素子、B素子の輝度の角度依存性がそれぞれ異なっていても、例えば、B素子とG素子のレンズの発散特性を同じにし、R素子に設けるレンズの発散特性だけを変えるようにしてもよい。
【0030】
また、一般的に、短波長の光を発する有機EL素子は、長波長の光を発する有機EL素子より、輝度の角度依存性が大きくなる(R素子の角度依存性<G素子の角度依存性<B素子の角度依存性)。このため、R素子、G素子、B素子では、この順で、輝度の角度依存性が大きくなっていく。このため、R素子、G素子、B素子の順で、それぞれに設けるレンズの発散特性を大きくするのが望ましい(R素子のレンズの発散特性<G素子のレンズの発散特性<B素子のレンズの発散特性)。また、R素子はレンズを設けない構成としてもよい。
【0031】
また、発散特性は、凹レンズを設ける構成と、凹レンズを設けない構成とで調整することもできる。すなわち、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には凹レンズを設け、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には凹レンズを設けないようにしてもよい。
【0032】
基板10は、TFTやMIM等のスイッチング素子(不図示)が形成された絶縁性の基板であり、ガラス、プラスチック等であってもいし、トランジスタが形成されたシリコン基板であってもよい。また、基板10は、スイッチング素子と第1電極11とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された層間絶縁膜を有していてもよい。さらに、基板10には、スイッチング素子の凹凸を平坦化するための平坦化膜を有していてもよい。
【0033】
第1電極11は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属層を用いることができる。さらに、酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層を金属層の上に積層する構成を採ることもできる。第1電極11の膜厚は、50nm以上200nm以下が好ましい。なお、透明とは、可視光域(波長400nm乃至780nm)において40%以上の光透過率を有することをいう。
【0034】
正孔輸送層12は、正孔注入性、正孔輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。一方、電子輸送層14は、電子注入性、電子輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。また、必要に応じて、正孔輸送層12として、発光層から陽極側に電子が移動するのを抑制するために、電子ブロッキング層を設けることもできる。また、電子輸送層14として、正孔ブロッキング層を設けることもできる。また、正孔輸送層12、電子輸送層14として、発光層で発生した励起子の拡散を抑制するための励起子ブロッキング層を設けることもできる。
【0035】
赤色を発する発光層13R、緑色を発する発光層13G、青色を発する発光層13Bとしては、特に制限はなく公知の材料を適用することが可能である。例えば、発光性とキャリア輸送性を兼ね備える材料の単一層や、蛍光材料、燐光材料等の発光性材料とキャリア輸送性のホスト材料との混合層を適用することができる。
【0036】
各発光層13R,13G,13B、正孔輸送層12、電子輸送層14には、公知の材料が使用することができ、成膜手法も蒸着や転写等公知の成膜手法を用いることができる。また、各層の膜厚は、各色の有機EL素子の発光効率を上げるために最適な膜厚にすることが望ましく、それぞれ5nm以上100nm以下の膜厚であることが望ましい。
【0037】
第2電極15は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属薄膜を使用することができる。特にAgを含む金属薄膜は吸収率が低く、比抵抗も低いため、第2電極15として好ましい。第2電極15の膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。また、第2電極15は上述した金属薄膜と酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層とが積層され構成であってもよいし、透明酸化物導電層のみで構成されていてもよい。
【0038】
保護層40は、材料や成膜手法は公知のものを使用することができる。一例としては、窒化シリコンや酸化窒化シリコンをCVD装置で成膜する方法が挙げられる。保護層40の膜厚は、保護性能を有するために0.5μm乃至10μmであることが好ましい。
【0039】
レンズ部材30は、水分含有が少ない熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができる。レンズ部材30の膜厚は、10μm乃至100μmが好ましい。熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂を用いた場合、成膜方法としては、スピンコート法、ディスペンス法などを用いることが可能である。また、保護層40上に、膜厚10μm乃至100μm程度の熱可塑性樹脂のフィルムを真空下にて貼りつける方法も用いることができる。具体的な樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0040】
凹レンズ30R,30G,30Bの製造方法は、以下の方法が挙げられる。
(1)レンズの型を用意し、その型を樹脂層に対して押圧してレンズ形状に形成する方法。
(2)フォトリソなどによってパターニングされた樹脂層を熱処理し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させる方法。
(3)均一の厚さに形成された光硬化型樹脂層を、面内方向に分布を持った光で露光し、この樹脂層を現像することによってレンズを形成する方法。
(4)イオンビームあるいは電子ビーム、レーザー等を用いて、均一の厚さに形成された樹脂材料の表面をレンズ形状に加工する方法。
(5)各画素に適量の樹脂を滴下して自己整合的にレンズを形成する方法。
(6)有機EL素子が形成された基板とは別個に、レンズが予め形成された樹脂シートを用意し、両者をアライメントした後、貼り合せることによりレンズを形成する方法。
【0041】
本実施形態の表示装置の製造について、上記(1)の方法を用いる場合を図4を用いて説明する。なお、基板10の上に第1電極11から第2電極15までを形成する方法は周知の方法を用いるため省略する。
【0042】
まず、図4(a)のように、基板10上にトップエミッション型の有機EL素子を複数形成する。次に、図4(b)のように、有機EL素子を覆うように保護層40を表示領域の全域に形成する。保護層40は、空気中の水分や酸素、または後に形成される樹脂材料30aに内在する水分から有機EL素子を保護するためのものであり、またこの上にレンズを精度よく形成するための平坦化する機能を併せ持つ。
【0043】
次に、図4(c)のように保護層40の上にレンズ部材30の元になる樹脂材料30aを形成する。そして、図4(d)で示すように、凹レンズ30R,30G,30Bを成形するための型31を用意し、樹脂材料30aに気泡が混入しないように、型31を樹脂材料30aに対して押圧する。型31の樹脂材料30aに接触する表面は、各画素に対応して凸部が形成されており、各凸部の曲率半径は各画素に設ける凹レンズの発散特性に応じて調整されている。
【0044】
なお、型31は、一般的な金属で形成することができるが、樹脂材料30aに光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過させる必要があるため石英基板から形成されることが好ましい。また、型31のレンズ部材30に対する剥離性を高めるために、型31の表面に、フッ素樹脂などの膜を形成してもよい。
【0045】
樹脂材料30aに熱硬化型樹脂を用いる場合は、型31における凸部の頂点が、対応する画素の中心とほぼ一致した状態で、樹脂材料30aを80℃に加熱することにより硬化させる。硬化温度については、一般的な有機EL素子を構成する有機化合物の耐熱温度が100℃程度であるため、それよりも低い80℃程度の硬化温度が好ましい。
【0046】
次に、図4(e)に示すように、型31を、硬化したレンズ部材30から剥がす。これにより、レンズ部材30の表面に、各画素に対応して凹レンズ30R,30G,30Bが形成される。
【0047】
なお、凹レンズ30R,30G,30Bが樹脂で形成される場合には、レンズの形状が損傷しないように、無機からなる第2保護層(不図示)をレンズの上に有することが望ましい。この第2保護層は、保護層40と同様の材料、方法で形成することができる。
【0048】
(実施形態2)
図5は、本実施形態の表示装置の部分断面模式図である。実施形態1は、レンズの曲率半径を各色の有機EL素子で異ならせて、発散特性を制御し、各色の有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする表示装置に関するものである。これに対して、本実施形態では、レンズと各有機EL素子の発光層との距離を各色の有機EL素子で異ならせて、発散特性を制御し、各色の有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする表示装置に関する。
【0049】
一般的に、凹レンズと発光点(あるいは発光面)の距離が大きくなるに従い、レンズの発散特性は小さくなる。このために、輝度の角度依存性が大きい(相対輝度の低下が大きい)有機EL素子を有する画素には、発散特性が大きくなるようにレンズを発光層に近い位置に配置し、輝度の角度依存性が小さい(相対輝度の低下が小さい)有機EL素子を有する画素には、発散特性が小さくなるようにレンズを発光層から離れた位置に配置されている。凹レンズと発光層の距離は、図5で示す破線と発光層との間の距離(矢印の長さ)である。つまり、凹レンズと発光層の距離は、発光領域(画素)に対応するレンズ部の表面において発光層から最も離れたレンズ部の表面と発光層との間の距離のことである。
【0050】
具体的にR素子、G素子、B素子の順に輝度の角度依存性が大きくなる場合を考える(R素子の角度依存性<G素子の角度依存性<B素子の角度依存性)。図5に示すように、R素子、G素子、B素子の順に、凹レンズ30R,30G,30Bと各発光層13R,13G,13Bの距離を小さくしている(R素子のレンズと発光層の距離>G素子のレンズと発光層の距離>B素子のレンズと発光層の距離)。この構成により、発散特性の大きいレンズが設けられたB素子を有する画素は、相対輝度の低下が抑えられ、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。同様に、G素子を有する画素も、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。つまり、B素子、G素子の輝度の角度依存性は、R素子の輝度の角度依存性に近くなるので、赤色、緑色、青色の混色である白色を、表示装置の斜めの角度から観察した場合でも、白色の色度ずれが抑制される。
【0051】
なお、本実施形態の表示装置も、実施形態1と同様の製造方法で作成することが可能である。また、本実施形態では、凹レンズの曲率半径は各画素で同じであってもよいが、各画素で異なっていてもよい。特に、実施形態1のように、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の小さい凹レンズを設け、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の大きい凹レンズを設ける構成にすることが望ましい。
【0052】
(実施形態3)
図6は、本実施形態の表示装置の部分断面模式図である。本実施形態では、レンズの屈折率を各色の有機EL素子で異ならせて発散特性を制御し、各色の有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする表示装置に関する。
【0053】
一般的に、凹レンズの屈折率が大きくなるに従い、レンズの発散特性は大きくなる。このために、輝度の角度依存性が大きい(相対輝度の低下が大きい)有機EL素子を有する画素には、発散特性が大きくなるように屈折率の大きな凹レンズを設け、輝度の角度依存性が小さい(相対輝度の低下が小さい)有機EL素子を有する画素には、屈折率の小さな凹レンズを設ける構成とする。
【0054】
具体的にR素子、G素子、B素子の順に輝度の角度依存性が大きくなる場合を考える(R素子の角度依存性<G素子の角度依存性<B素子の角度依存性)。この場合、図6に示すように、R素子、G素子、B素子の順に凹レンズの屈折率を大きくしている(R素子のレンズの屈折率<G素子のレンズの屈折率<B素子のレンズの屈折率)。この構成により、屈折率が大きく発散特性の大きいレンズが設けられたB素子を有する画素は、相対輝度の低下が抑えられ、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。同様に、G素子を有する画素も、R素子の輝度の角度依存性に近づけることができる。つまり、B素子、G素子の輝度の角度依存性は、R素子の輝度の角度依存性に近くなるので、赤色、緑色、青色の混色である白色を、表示装置の斜めの角度から観察した場合でも、白色の色度ずれが抑制される。
【0055】
なお、本実施形態の表示装置も、実施形態1と同様の製造方法で作成することが可能である。また、本実施形態では、凹レンズの曲率半径は各画素で同じであってもよいが、各画素で異なっていてもよい。特に、実施形態1のように、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の小さい凹レンズを設け、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の大きい凹レンズを設ける構成にすることが望ましい。また、実施形態3は、実施形態2の構成と組み合わされてもよいし、実施形態1と2を組み合せた構成にさらに組み合わされてもよい。
【0056】
また、屈折率を制御する方法としては、レンズを形成する樹脂の屈折率で調整する方法がある。更には、レンズを形成する樹脂の中に無機材料を含有させて、その無機材料の屈折率や樹脂中の含有量を調整する方法がある。無機材料としては例えば、酸化チタン(2.90)、ITO(2.12)、硫化水銀(2.81)、コバルト緑(1.97)、コバルト青(1.74)などが挙げられる。
【0057】
(その他の実施形態)
上述したように、実施形態1乃至3とは異なる方法で発散特性を制御することが可能である。例えば、画素の領域のうちレンズが占める領域によって発散特性を制御する場合は、以下の構成であれば本発明の効果を有する。つまり、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には、レンズが占める領域を大きくし、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には、レンズが占める領域を小さくする構成であればよい。この構成により、発光領域(画素)から出射する光のうちレンズを透過する割合を調整することが可能になり、画素全体の発散特性が制御される。
【0058】
また、上述した構成では、輝度の低下が小さい色の輝度の角度依存性に合わせるように、レンズを設ける構成であったが、輝度の低下が大きい色の輝度の角度依存性に合わせるようにレンズを設ける構成であっても、白色の色度ずれを低減することができる。具体的には、以下の構成が挙げられる。
【0059】
すなわち、凹レンズを設ける構成と、凸レンズを設ける構成とを混在させて、発散特性を調整することもできる。凸レンズは、凹レンズを設ける構成よりも、さらに、レンズを設けない構成よりも発散特性が小さく、集光特性が大きい。この特性を利用して、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には凸レンズを設け、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には凹レンズを設けるようにしてもよい。
【0060】
また、凸レンズでは、曲率半径が小さいほど発散特性が小さくなる(集光特性が大きくなる)ことを利用して、凸レンズのみで画素の発散特性(集光特性)を制御することも可能である。つまり、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の小さい凸レンズを設け、輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の大きい凸レンズを設ける構成であればよい。この構成であっても、各色の有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくすることができる。
【0061】
本発明の表示装置としては、テレビ受像機、パーソナルコンピュータ、撮像装置、携帯電話の表示部、携帯ゲーム機が挙げられる。その他、携帯音楽再生装置、携帯情報端末(PDA)、カーナビゲーションシステム等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
本実施例では、曲率半径の異なるレンズを用いて、各有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする例について、図4を用いて説明する。
【0063】
まず、ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTを形成し、その上に窒化シリコンらなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜を、この順番で形成して、図4(a)に示す基板10を作成した。この基板10上にITO膜/AlNd膜をスパッタリング法にて38nm/100nmの厚さで形成した。続いて、ITO膜/AlNd膜を画素毎にパターニングし、第1電極11を形成した。
【0064】
第1電極11の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極11が形成された部分に開口(この開口部が画素に相当)が形成されるようにパターニングし絶縁層20を形成した。各画素のピッチを30μm、開口による第1電極11の露出部の大きさを10μmとした。そして、この製造物をイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、煮沸洗浄後、乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄し、以下の有機化合物層を真空蒸着により成膜した。なお、各有機化合物層の成膜時の真空度、蒸着レートは、1×10−4〜3.0×10−4Pa、0.2〜0.5nm/secであった
まず、正孔輸送層12として下記構造式の化合物1を、表示領域全体に、第1電極11の上に共通に87nmの厚さで成膜した。
【0065】
【化1】

【0066】
次に、蒸着マスクを用いて、赤色を発する画素となる部分に、赤色の発光層13RとしてCBPとIr(piq)を、重量比91:9、厚さ30nmになるよう共蒸着で成膜した。そして、蒸着マスクを用いて、緑色を発する画素となる部分に、緑色の発光層13GとしてAlqとクマリン6を、重量比99:1で厚さ40nmになるよう共蒸着で成膜した。そして、蒸着マスクを用いて、青色を発する画素となる部分に、青色の発光層13BとしてBAlqとペリレンを、重量比97:3、厚さ25nmになるよう共蒸着で成膜した。
【0067】
次に、表示領域全体に、共通の電子輸送層14としてBphenを、10nmの厚さで成膜した。さらに、その上に、共通の電子注入層(電子輸送層14の一部)として、BphenとCsCOを共蒸着(重量比90:10)して40nmの厚さで成膜した。
【0068】
次に、上述した製造物を、真空を破ることなくスパッタリング装置に移動し、第2電極15としてAgおよびITOをそれぞれ10nm及び50nmの厚さで順に成膜した。
【0069】
次に、図4(b)に示すように、窒化シリコンからなる保護層40を、SiHガス、Nガス、Hガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。
【0070】
そして、図4(c)に示すように、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、樹脂材料30aとして粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂材料を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名SHOT MINI SL)を用いて塗布した。
【0071】
樹脂材料30aを熱硬化する前に、図4(d)のように、別途用意した凹レンズ30R,30G,30Bを成形するための型31を、樹脂材料30aの表面に押し当てた。押し当てる際、型31に形成してあるアライメントマークと基板10に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置決めを行なった。その結果、画素に合わせて凹レンズ30R,30G,30Bが形成された。型31は、画素ピッチと同じピッチで凸部が形成されており、型31の表面に離型剤としてフッ素系の樹脂をコートした。型31の、赤、緑、青の画素に対応する凸部の曲率半径は、それぞれ100μm、45μm、25μmであった。レンズ部材30の膜厚は20μmであった。
【0072】
ここで、クリーンルームおよびプロセス装置の環境を考慮して、異物等があっても樹脂材料30aで平坦化する目的を備えるため、レンズ部材30の最小膜厚(最薄部における膜厚)は10μmとした。
【0073】
次に、型31を樹脂材料30aに押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料30aを硬化させて、レンズ部材30を形成した。その後、レンズ部材30から型31を離して、図4(e)のように凹レンズ30R,30G,30Bを形成した。凹レンズ30R,30G,30Bの曲率半径は、それぞれ100μm、45μm、25μmであった。
【0074】
さらに、窒化シリコンからなる無機材料の保護層(不図示)を、SiHガス、Nガス、Hガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。この保護層の膜厚は1μmであり、表示領域の全面を覆うように形成した。
【0075】
このようにして製造した本発明の表示装置の特性を評価し、その結果を表1にまとめて示す。ここでは正面から傾いた角度50度での特性の比較を行なった。また、図7には、本実施例の表示装置における各色の輝度の角度依存性が示されている。
【0076】
表中の相対輝度(正面輝度を1)は、正面において白色(0.31,0.33)を得るために必要な各色の輝度をそれぞれ1として、50度傾いた場合の各色の輝度をそれぞれ規格化した値である。
【0077】
また、δu’v’は、表示装置を正面から見た白色と50度から見た場合の白色との色差を示している。なお、比較例として、各画素にレンズを設けない構成での表示装置の評価も表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1、図7より、本実施例の表示装置は、比較例よりも各色の輝度の角度依存性の差を小さくして、白色の色度ずれを低減していることがわかる。より具体的には、本実施例1では、傾き50度の方向から観察した場合に、相対輝度が各色の有機EL素子で同程度、つまり、輝度の低下割合が各色で同程度であるため、白色表示のバランスがこの方向でも維持されるため、白色の色度ずれが抑制される。
【0080】
(実施例2)
本実施例は、発光層から凹レンズまでの距離を調整することで、各有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする例である。
【0081】
本実施例は、実施例1とは、レンズの型31の表面形状が異なる以外は同じ工程で製造される。本実施例では、画素ピッチと同じピッチで凸部が形成され、その凸部の高さが異なっている。その高さは、赤色、緑色、青色を発する画素において、凹レンズと発光層までの距離が、それぞれ60μm、48μm、25μmとなるように設定した。
【0082】
このようにして作製した表示装置の特性を評価し、その結果を表2にまとめて示す。比較例は実施例1と同様である。
【0083】
【表2】

【0084】
表2より、本実施例の表示装置は、比較例よりも各色の輝度の角度依存性の差を小さくして、白色の色度ずれを低減していることがわかる。
【0085】
(実施例3)
本実施例は、凹レンズの屈折率を調整することで、各有機EL素子の輝度の角度依存性の差を小さくする例である。
【0086】
本実施例は、実施例1とはレンズ部材の塗布工程とレンズの型31の表面形状が異なる以外は同じ工程で製造される。実施例1と同様に保護層40を形成した後、図8(c)に示すように、ノズルディスペンサーを用いてエポキシ樹脂30aR、30aG、30aBをそれぞれの画素の位置に塗布した。なお、赤色の画素に対応した位置のノズルはエポキシ樹脂を充填し、緑色、青色の画素に対応した位置のノズルに酸化チタン微粒子の混合比率の異なるエポキシ樹脂をそれぞれ充填して塗布した。緑色、青色の画素に対応した位置のノズルに充填されたエポキシ樹脂中の酸化チタンの割合は、それぞれエポキシ樹脂に対して22重量%、40重量%であった。
【0087】
次に、図8(d)に示すように、別途用意した型31を、樹脂部材30aの表面に押し当てることで凹レンズを形成した。本実施例の型31は、画素ピッチと同じピッチで凸部が形成されていた。
【0088】
次に、型31を樹脂材料30aR、30aG、30aBに押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料30aR、30aG、30aBを硬化させて、レンズ部材30を形成した。その後、レンズ部材30から型31を離して、図8(e)のように凹レンズ30R,30G,30Bを形成した。凹レンズ30R,30G,30Bの曲率半径は、すべて同じ50μmであった。
【0089】
凹レンズ30R、30G、30Bは、屈折率1.54のエポキシ樹脂中に屈折率2.90の酸化チタンの微粒子が混合されてなり、混合比率をR素子、G素子、B素子の順に増やすことで、レンズの屈折率をR素子、G素子、B素子の順に大きくした(R素子の凹レンズの屈折率<G素子の凹レンズの屈折率<B素子の凹レンズの屈折率)。
【0090】
このようにして作製した表示装置の特性を評価し、その結果を表3にまとめて示す。比較例は実施例1と同様である。
【0091】
【表3】

【0092】
表3より、本実施例の表示装置は、比較例よりも各色の輝度の角度依存性の差を小さくして、白色の色度ずれを低減していることがわかる。
【符号の説明】
【0093】
1 画素
11 第1電極
13R,13G,13B 発光層
15 第2電極
30R,30G,30B レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色の異なる複数の画素からなる画素ユニットが複数配列された表示装置であって、
前記画素は、有機EL素子を備え、
前記画素ユニットには、前記画素の発光色ごとの有機EL素子における輝度の角度依存性の差が小さくなるようにレンズが設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を備える画素には、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を備える画素よりも発散特性が大きいレンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を備える画素には、発散特性のあるレンズが設けられ、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を備える画素には、レンズが設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発散特性は、凹レンズの曲率半径、又は凹レンズと発光層との間の距離、又は凹レンズの屈折率によって制御されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を備える画素には、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を備える画素よりも曲率半径が小さい凹レンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を備える画素には、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を備える画素よりも発光層から離れた位置に凹レンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子を備える画素には、輝度の角度依存性が小さい有機EL素子を備える画素よりも屈折率が大きい凹レンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の画素は、赤色又は緑色又は青色を発する画素を有し、
輝度の角度依存性が大きい有機EL素子は、青色を発する有機EL素子であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−89474(P2012−89474A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164381(P2011−164381)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】