説明

表示装置

【課題】小型化で広い視域を有した表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置10は、再生光源41と、再生光源からの再生照明光45を回折して像81を再生する第1パターン48が記録される有機フォトリフラクティブ素子47と、有機フォトリフラクティブ素子を露光して有機フォトリフラクティブ素子に第1パターンを記録する露光機構35と、を有する。露光機構は、第1パターンに対応した第2パターン28を表示する空間光変調器27と、空間光変調器と有機フォトリフラクティブ素子との間に配置されたリレー光学系30と、を有する。リレー光学系は、空間光変調器で表示される第2パターンを有機フォトリフラクティブ素子に縮小投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計算機での演算によって得られた干渉縞パターンを画像として表示する空間光変調器と、この干渉縞パターンで回折され得る再生照明光を空間光変調器に投射する再生光源と、を有する表示装置が知られている。この表示装置によれば、空間光変調器が立体像を再生し得る干渉縞パターンを表示することにより、裸眼で立体的に視認され得る立体像を再生することができる。また、空間光変調器が異なる干渉縞パターンを表示することにより、異なる像が再生されるようになる。ただし、この表示装置での視域は、画素ピッチをdとし、再生照明光の波長をλとすると、2arcsin(λ/2d)°の角度範囲となる。そして、画素ピッチの制約から、一般的な表示装置として十分な視域を確保し得ない。
【0003】
また、特許文献1では、裸眼で観察可能な立体像を表示し得る他の表示装置として、像を再生し得る干渉縞パターンが記録されるフォトリフラクティブ結晶と、この干渉縞パターンで回折され得る再生照明光を空間光変調器に投射する再生光源と、を有する表示装置が開示されている。特許文献1に開示された表示装置では、フォトリフラクティブ結晶に干渉縞を記録する際に、参照光と空間光変調器からの物体光とをフォトリフラクティブ結晶に露光することにより、物体光と参照光との干渉によって生じる明暗縞が干渉縞パターンとして、フォトリフラクティブ結晶に記録される。次に、物体光および参照光の照射を停止して、フォトリフラクティブ結晶に再生照明光を照射することにより、干渉縞パターンが消えてしまうまでの間、像が再生される。しかしながら、特許文献1で開示された表示装置では、フォトリフラクティブ結晶からなる記録媒体への干渉縞パターンの記録を、物体光および参照光をなす2光束を用いて行う必要がある。したがって、表示装置が必然的に大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−34148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点を考慮して成されたものであり、像を表示し得る表示装置を小型化するとともに、当該装置によって表示される像の視域を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による表示装置は、
像を表示する表示装置であって、
再生光源と、
再生光源からの再生照明光を回折して像を再生する第1パターンが記録される有機フォトリフラクティブ素子と、
前記有機フォトリフラクティブ素子を露光して前記有機フォトリフラクティブ素子に前記第1パターンを記録する露光機構と、を備え、
前記露光機構は、
前記第1パターンに対応した第2パターンを表示する空間光変調器と、
前記空間光変調器と前記有機フォトリフラクティブ素子との間に配置されたリレー光学系であって、前記空間光変調器で表示される前記第2パターンを前記有機フォトリフラクティブ素子に縮小投影するリレー光学系と、を有する。
【0007】
本発明による表示装置において、前記リレー光学系は、前記空間光変調器と前記有機フォトリフラクティブ素子とを結ぶ直線上に配置された第1レンズおよび第2レンズを有し、前記空間光変調器、前記有機フォトリフラクティブ素子、前記第1レンズおよび前記第2レンズは、4f光学系を構成するように、配置されていてもよい。
【0008】
本発明による表示装置において、前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光の光軸と、前記再生光源から前記有機フォトリフラクティブ素子に投射される光の光軸と、は非平行であってもよい。
【0009】
本発明による表示装置において、前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光の波長域の中心波長は、前記再生光源から前記有機フォトリフラクティブ素子に投射される光の波長域の中心波長とは異なるようにしてもよい。
【0010】
本発明による表示装置において、前記空間光変調器が複数設けられており、各空間光変調器で表示された第2パターンは、前記有機フォトリフラクティブ素子の互いに異なる領域に縮小投影されるようにしてもよい。
【0011】
本発明による表示装置が、前記有機フォトリフラクティブ素子と前記リレー光学系および前記空間光変調器とを相対移動させる駆動機構を、さらに備え、前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光と、前記再生光源からの前記再生照明光とが、前記有機フォトリフラクティブ素子に異なるタイミングで投射されるようにしてもよい。
【0012】
本発明による表示装置において、前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光と、前記再生光源からの前記再生照明光とが、前記有機フォトリフラクティブ素子に同時に投射されるようにしてもよい。
【0013】
本発明による表示装置において、前記第1パターンに対する前記第2パターンの縮小比率が、リレー光学系の光軸と直交する面上にある互いに交差する第1方向と第2方向とにおいて、異なるようにしてもよい。すなわち、第1パターンを有機フォトリフラクティブ素子へ投影する際の縮小比率が、リレー光学系の光軸と直交する面上に共に位置する互いに交差する第1方向と第2方向とにおいて、異なっていてもよい。
【0014】
本発明による表示装置が、前記露光機構から前記有機フォトリフラクティブ素子に投射された光の、有機フォトリフラクティブ素子を透過した後の光路上に設けられたフィルタ素子を、さらに備え、前記フィルタ素子は、前記露光機構からの光と同一波長域の光を遮光するようにしてもよい。また、本発明による表示装置において、前記フィルタ素子が、前記再生光源からの光と同一波長域の光を透過させるようにしてもよい。
【0015】
本発明による表示装置が、前記有機フォトリフラクティブ素子に投射された前記再生照明光のうちの0次光の光路上に設けられ当該0次光を吸収するビームストッパをさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、像を表示し得る表示装置を小型化することができるとともに、当該装置によって表示される像の視域を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態における表示装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図2は、図1の空間光変調器に表示される第2パターンの一例を示す図。
【図3】図3は、図1の有機フォトリフラクティブ素子に記録される第1パターンの一例を示す図。
【図4】図4は、立体像が再生される様子を示す図。
【図5】図5は、表示装置の一変形例を説明するための模式図。
【図6】図6は、表示装置の他の変形例を説明するための模式図。
【図7】図7は、図6のVII−VII線に沿った表示装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1〜図7は、本発明の一実施の形態並びにその変形例を説明するための図である。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0019】
図1〜図4は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は表示装置の概略構成を示す模式図であり、図4は、図1の部分拡大図である。図2は、空間光変調器によって表示される第2パターンの一例を示す平面図であり、図3は、露光機構を用いて有機フォトリフラクティブ素子を露光する際の第1パターンの一例を示す平面図である。
【0020】
表示装置10は、デジタルデータとしてデータベース29a内に保管されている像データに対応する像81を表示するよう構成されている。この表示装置10は、図1に示すように、再生照明光45を射出する再生光源41を有した再生光源機構40と、再生光源41からの再生照明光45を回折する第1パターン48が記録される有機フォトリフラクティブ素子47と、を備えている。ここで、有機フォトリフラクティブ素子47の第1パターン48は、再生光源41からの再生照明光45を回折し、これによって、像81を再生する再生光45aを生成するよう構成されている。すなわち第1パターン48は、再生されるべき像に対応したホログラム干渉縞パターンとなっており、有機フォトリフラクティブ素子47は、ホログラムとして機能する。このような第1パターン48は、図1に示す露光機構35を用いた露光によって、より具体的には、露光装置35のフォトリフラクティブ素子47が表示する第2パターン28をフォトリフラクティブ素子47に縮小投影することによって、有機フォトリフラクティブ素子47に記録される。とりわけ、以下の説明では、図示されているように、奥行き感のある立体像を像81として再生する例について説明する。以下、表示装置10を構成する露光機構35、有機フォトリフラクティブ素子47および再生光源機構40について、この順番で説明していく。
【0021】
はじめに露光機構35について説明する。露光機構35は、図1に示すように、照明光25を出射する記録光源21を含む記録光源機構20と、記録光源21からの照明光25が投射される空間光変調器27と、空間光変調器27と有機フォトリフラクティブ素子47との間に配置されたリレー光学系30と、を有している。
【0022】
このうち記録光源機構20は、記録光源21と、記録光源21から射出される照明光25の光軸に沿って次の順で配置されたコンデンサーレンズ22、コリメートレンズ23およびビープスプリッタ24と、を有している。コンデンサーレンズ22、コリメートレンズ23およびビームスプリッタ24は、空間光変調器27を照明するための照明光25のプロファイル整形および照明方向調節を行うための光学系である。図示された例では、この光学系を経た照明光25は、空間光変調器27の像形成面27aへの法線方向に進む平行光束として当該空間光変調器27に投射される。ただし、光学系は、図示したものに限られず、適宜変更することができる。照明光25は、例えば、狭いスペクトルを有するレーザー光からなっている。照明光25の波長は、有機フォトリフラクティブ素子47を構成する有機フォトリフラクティブ材料が当該波長に対する感度を有する限りにおいて特に限定されない。なお照明光25の波長とは、照明光25の波長域の中心波長λを意味している。
【0023】
空間光変調器27は、フォトリフラクティブ素子47の第1パターン48に対応した第2パターン28を表示するよう構成された部材である。ここで「対応する」とは、後述するようにリレー光学系30を用いて空間光変調器27の第2パターン28をフォトリフラクティブ素子47に縮小投影することにより、像81を再生するための上述の第1パターン48が有機フォトリフラクティブ素子47に記録されるよう、第2パターン28が構成されていることを意味している。具体的には、第2パターン28は、そのピッチPが第1パターン48のピッチPよりも大きくなっている点において異なっている。
【0024】
空間光変調器27に表示される第2パターン28の一例について説明する。なお図1に示すように、空間光変調器27には、空間光変調器27に電気的信号を入力する制御手段29bが接続されており、制御手段29bにはデータベース29aが接続されている。制御手段29bは、データベース29aに保管された像データに対応する第2パターン28が空間光変調器27に表示されるよう、空間光変調器27に入力される電気的信号を生成する。
【0025】
なお、制御手段29bは、計算機から構成されており、再生光源機構40からの再生照明光45を回折することによって所望の像81を再生する干渉縞パターンとしての第1パターン48を演算する。さらに、制御手段29bは、演算された第1パターン48を有機フォトリフラクティブ素子47に記録し得るよう、リレー光学系30の光学機能を考慮して、第1パターン48に対応した第2パターン28を演算する。そして、制御手段29bは空間光変調器27に電気的信号を送り、演算された第2パターン28を空間光変調器27に表示させる。
【0026】
図2は、空間光変調器27に表示される第2パターン28の一例を示す図である。図2に示すように、空間光変調器27は、複数の単位画素28eを含んでいる。各単位画素28eは、制御手段29bからの電気的入力に基づいて、第1の変調量で照明光25を変調する第1変調領域28a、または、第2の変調量で照明光25を変調する第2変調領域28bのいずれかになり得るものである。ここで、第1の変調量および第2の変調量は各々、所定の振幅変調量であってもよく、若しくは所定の位相変調量であってもよく、またはその両方が組み合わされたものであってもよい。このような空間光変調器27によれば、制御手段29bからの電気的入力に基づいて第1変調領域28aの分布および第2変調領域28bの分布を適宜変更することにより、第2パターン28を構成する任意の変調パターンを空間光変調器27上に表示させることができる。空間光変調器27としては、例えば、反射型液晶表示装置(LCoS)やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のような反射型の空間光変調器と、透過型液晶表示装置等の透過型の空間光変調器とのいずれも使用することができる。
【0027】
ところで空間光変調器27においては、上述のように、各単位画素28eに割り当てられる変調量の分布に基づいて第2パターン28が構成される。この場合、単位画素28eの単位画素の寸法をdとし、第1変調領域28aおよび第2変調領域28bによって表現される第2パターン28の最小のパターン間ピッチをpとすると、p=2×dの関係が成立する。ここで、一般的な空間光変調器27において、実現され得る単位画素の寸法dは最小でも7μm程度であり、従って、最小のパターン間ピッチpは14μm程度になる。
【0028】
図1に示すように、空間光変調器27に投射される照明光25は、空間光変調器27に表示される第2パターン28によって変調され、これによって変調光25aが生成されて空間光変調器27から射出される。変調光変調器27から射出された変調光25aは、ビームスプリッタ24を透過して、リレー光学系30へ進む。図1において、照明光25が一点鎖線で表されており、第1再生光25aが実線で表されている。また、図1において、後述する再生光45も一点鎖線で示されている。
【0029】
なお、ビームスプリッタ24は、一例として、偏光ビームスプリッタから構成され得る。また、レーザー光源21が、ビームスプリッタ24で反射される偏光成分の照明光25を生成し、空間光変調器27が、反射型液晶表示装置(LCoS)からなるようにしてもよい。この例によれば、空間光変調器27が、照明光25を反射して変調光25aを生成する際に当該光の振動方向を90°変化させ、これにより、生成された変調光25aは、ビームスプリッタ24で反射されることなく、リレー光学系25へ向けて透過することができるようになる。
【0030】
リレー光学系30は、第2パターン28に変調された変調光25aを有機フォトリフラクティブ素子47に縮小投影する。この結果、有機フォトリフラクティブ素子47は、像81を再生するための上述の第1パターン48にて露光されるようになる。
【0031】
図示された例において、リレー光学系30は、空間光変調器27と有機フォトリフラクティブ素子47とを結ぶ直線上に配置された第1レンズ31および第2レンズ33を有している。そして、空間光変調器27、有機フォトリフラクティブ素子47、第1レンズ31および第2レンズ33は、4f光学系を構成するように、配置されている。より具体的には、次のように、空間光変調器27、有機フォトリフラクティブ素子47、第1レンズ31および第2レンズ33が配置されている。
【0032】
第1レンズ31は、その光軸が空間光変調器27と有機フォトリフラクティブ素子47とを結ぶ仮想直線Laと平行となるように配置されている。そして、第1レンズ31は、仮想直線Laが直交して横切る仮想面としてのフーリエ変換面32と、空間光変調器27との間に配置されている。第1レンズ31は、フーリエ変換面32および空間光変調器27の第2パターン28が形成される面27aのそれぞれから、仮想直線Laに沿ってその焦点距離fだけ離間した位置に、配置されている。同様に、第2レンズ33は、その光軸が仮想直線Laと平行となるようにして、フーリエ変換面32と有機フォトリフラクティブ素子47との間に配置されている。第2レンズ33は、フーリエ変換面32および有機フォトリフラクティブ素子47の露光機構35によって露光される面47aのそれぞれから、仮想直線Laに沿ってその焦点距離fだけ離間した位置に、配置されている。
【0033】
このような、4f光学系によれば、空間光変調器27の第2パターン28が形成される面27aにおける光の波面情報を、有機フォトリフラクティブ素子47の露光機構35によって露光される面47aへ伝達することができる。これにより、有機フォトリフラクティブ素子47を予定したパターン光で露光して、有機フォトリフラクティブ素子47に所望のパターンを精度良く記録することが可能となる。
【0034】
次に、有機フォトリフラクティブ素子47について説明する。有機フォトリフラクティブ素子47は、フォトリフラクティブ効果を発現する有機フォトリフラクティブ材料を用いて形成された素子である。ここで、フォトリフラクティブ効果とは、入射した光の空間的強度分布に応じて屈折率変化が誘起される現象のことである。したがって、有機フォトリフラクティブ素子47は、この有機フォトリフラクティブ材料のフォトリフラクティブ効果に起因して、所定のパターンで露光されると、露光されたパターンに対応したパターンで屈折率変調を来す。すなわち、有機フォトリフラクティブ素子47は、露光機構35によって露光されることにより、第1パターン48を屈折率分布として記録する。
【0035】
図3は、有機フォトリフラクティブ素子47に記録される第1パターン48の一例を示す図である。有機フォトリフラクティブ素子47は、互いに異なる屈折率を有した第1屈折率領域48aおよび第2屈折率領域48bを有しており、この第1屈折率領域48aおよび第2屈折率領域48bによって第1パターン48が画成されている。第1パターン48は、第2パターン28を縮小したパターンとなっており、第1パターン48の第1屈折率領域48aが第2パターン28の第1変調領域28aに対応し、第1パターン48の第2屈折率領域48bが第2パターン28の第2変調領域28bに対応している。そして、第1パターン48のピッチPが第2パターン28のピッチPよりも小さくなっている。とりわけ、ここで説明する例においては、第1パターン48は第2パターン28と相似なパターンとなっており、図2および図3におけるX軸方向に沿った第1パターン48の第2パターン28に対する比率は、図2および図3におけるY軸方向に沿った第1パターン48の第2パターン28に対する比率と同一になっている。
【0036】
有機フォトリフラクティブ素子47に用いられる有機フォトリフラクティブ材料は、露光機構35から照射される変調光25aの波長域に対して、すなわち、記録光源21で生成される照明光25の波長域に対して感度を有する限りにおいて、特に限定されない。したがって、屈折率変調に電界印加が必要となる電界型の有機フォトリフラクティブ材料および屈折率変調に電界印加が不必要な非電界型の有機フォトリフラクティブ材料のいずれをも、有機フォトリフラクティブ素子47に用いることができる。また、露光を停止した際に露光パターンに対応した屈折率分布が消去される非メモリ型(非保持型)の有機フォトリフラクティブ材料、および、露光を停止した後の一定の期間の間または露光を停止して後から次の露光が開始されるまでの間、露光パターンに対応した屈折率分布が維持される性質を有したメモリ型(保持型)の有機フォトリフラクティブ材料のいずれをも、有機フォトリフラクティブ素子47に用いることができる。
【0037】
次に、再生光源機構40について説明する。再生光源機構40は、再生光源41と、再生光源41から射出される再生照明光45の光軸に沿って順に配置されたコンデンサーレンズ42およびコリメートレンズ43と、を有している。コンデンサーレンズ42およびコリメートレンズ43は、有機フォトリフラクティブ素子47を照明するための再生照明光45のプロファイルを整形するための光学系であり、適宜変更可能である。図示された例では、再生光源機構40からの再生照明光45は、有機フォトリフラクティブ素子47の露光される面47aへの法線方向に対して傾斜して進む平行光束として、当該有機フォトリフラクティブ素子47に投射される。すなわち、露光機構35から投射されて有機フォトリフラクティブ素子47の露光面47aへの法線方向に沿って進む変調光25aの光軸と、再生光源機構40から有機フォトリフラクティブ素子47に投射される再生照明光45の光軸と、は非平行となっている。なおここで、再生照明光45の光軸とは、再生照明光45が平行光束の場合には、その進行方向と平行な方向のことであり、再生照明光45が発散光束の場合には、発散点と有機フォトリフラクティブ素子47の中心とを結ぶ方向のことであり、再生照明光45が収束光束の場合には、収束点と有機フォトリフラクティブ素子47の中心とを結ぶ方向のことである。
【0038】
再生光源41は、狭いスペクトルを有する光を射出するレーザー光源やLED光源として構成されている。再生照明光45の波長は、特に限定されるものではないが、有機フォトリフラクティブ素子47を構成する有機フォトリフラクティブ材料が当該波長に対して感度を有していないことが好ましい。この場合、後に言及する図4に示された例のように、変調光(露光光)25aを有機フォトリフラクティブ素子47に投射することによる有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の記録と、再生照明光45を有機フォトリフラクティブ素子47に投射することによる像81の再生とを、同時に行うことが可能となる。なお再生照明光45の波長とは、再生照明光45の波長域の中心波長λを意味している。すなわち、ここでは、リレー光学系30を介して有機フォトリフラクティブ素子47に投射される光25aの波長域の中心波長λが、再生光源41から有機フォトリフラクティブ素子47に投射される光45の波長域λの中心波長と異なっている例について説明した。
【0039】
次に、以上のような構成からなる表示装置10を用いて像を再生する方法について説明する。
【0040】
まず、制御手段29bが、データベース29aに保存された像データに基づき、すなわち、表示装置10によって表示されるべき像81の像データに基づき、当該像81を再生し得る第1パターン48を演算する。具体的には、制御手段29bは、再生されるべき像81からの物体光と参照光との干渉によって生じる干渉縞のパターンを第1パターン48としてシミュレーションする。
【0041】
このシミュレーションにおいて、物体光は、像が再生されるべき位置から有機フォトリフラクティブ素子47の各位置に向かう光、言い換えると、第1パターン48で回折された再生照明光45の回折光(すなわち、再生光45a)と逆向きに進んで有機フォトリフラクティブ素子47の各位置に向かう光とし、参照光は、有機フォトリフラクティブ素子47を基準として再生照明光45と共役な光とする。第1パターン48は、このシミュレーションにおいて、有機フォトリフラクティブ素子47の位置に生じる物体光と参照光との干渉パターンとして、計算されることになる。このような第1パターン48の演算は、例えばJP2011−35899Aに開示されているように、いわゆる計算機合成ホログラム(CGH)技術として知られており、ここでの更に詳細な説明は省略する。
【0042】
制御手段29bは、さらに、演算された第1パターン48を有機フォトリフラクティブ素子47に記録し得るよう、空間光変調器27によって表示されるべき第2パターン28を計算する。具体的には、空間光変調器27と有機フォトリフラクティブ素子47との間に配置され、空間光変調器27からの変調光25aを有機フォトリフラクティブ素子47に縮小投影するリレー光学系30の光学的機能を考慮して、第2パターン28を計算する。例えばここで説明したリレー光学系30は、第2パターン28を相似的に縮小した第1パターン48に変換して、有機フォトリフラクティブ素子47に投影する。したがって、この例では、制御手段29bによって計算される第2パターン28は、第1パターン48を平面的に拡大したパターンとして算出されるようになる。
【0043】
以上のようにして、制御手段29bは、データベース29aに保存された像データに基づいて第1パターン48および第2パターン28を演算し、算出された第2パターン28が空間光変調器27に表示されるよう、空間光変調器27に電気信号を送信する。なお、計算機合成ホログラム技術において広く行われているように、計算機からなる制御手段29bは、平面像(二次元像)だけでなく、図1や図4に示された立体像(三次元像)を再生するための干渉縞パターンとしての第2パターン48を演算することもできる。
【0044】
空間光変調器27は、第2パターン28を表示するように制御手段29bに駆動された状態で、記録光源機構20から照明光25を照射される。空間光変調器27は、照明光25を第2パターン28のパターン光に変調し、パターン光としての変調光25aを、リレー光学系30へ向けて射出する。リレー光学系30は、変調光25aを有機フォトリフラクティブ素子47に縮小投影する。
【0045】
この結果、有機フォトリフラクティブ素子47は、露光機構35によって、第2パターン28を縮小した第1パターン48で露光されることになる。有機フォトリフラクティブ素子47は、露光機構35からの露光光である変調光25aの波長λ、言い換えると、記録光源21で生成される照明光25の波長λに感度を有している。このため、変調光25aによって、有機フォトリフラクティブ素子47をなす有機フォトリフラクティブ材料のフォトリフラクティブ効果が誘起され、有機フォトリフラクティブ素子47の内部で、第1パターン48で屈折率の変調が生じる。すなわち、第1パターン48が、屈折率変調パターンとして、有機フォトリフラクティブ素子47に記録される。
【0046】
なお、上述したように、空間光変調器27、有機フォトリフラクティブ素子47、リレー光学系30をなす第1レンズ31および第2レンズ33は、4f光学系を構成するように、配置されている。したがって、空間光変調器27の第2パターン28が形成される面27aにおける光の波面情報を、そのまま、有機フォトリフラクティブ素子47の露光機構35によって露光される面47aへ伝達することができる。これにより、有機フォトリフラクティブ素子47を予定したパターン光で露光して、有機フォトリフラクティブ素子47に所望の第1パターン48を精度良く記録することが可能となる。加えて、有機フォトリフラクティブ素子47に対する露光機構35の配置が簡略化され、表示装置10を小型化することも可能となる。
【0047】
図4に示された例では、このような露光機構35を用いた有機フォトリフラクティブ素子47の露光と並行して、再生光源機構40からの再生照明光45が投射される。すなわち、この表示装置10では、有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の記録と並行して、記録された第1パターン48で回折されて像81を再生する再生照明光45が、有機フォトリフラクティブ素子47に投射される。以上のようにして、表示装置10によって像81が表示され、当該像81が観察者によって観察されるようになる。
【0048】
計算機合成ホログラム技術において広く行われているように、制御手段29bは、平面像(二次元像)だけでなく立体像(三次元像)を再生するための干渉縞パターンを第2パターン48として演算することができる。したがって、図1および図4に示すように、表示装置10は、三次元像81を再生することができる。また、有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の書き換えが可能であることから、表示装置10によって表示される像81を変化させることができる。したがって、このような表示装置10は、種々の用途、例えばデジタルサイネージに好適に用いられ得る。
【0049】
とりわけ、ここで説明した表示装置10は、変調光25aと再生照明光45が同時期に有機フォトリフラクティブ素子47に照射され、有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の記録と像81の再生が並行して行われている。このため、制御手段49bの計算速度や有機フォトリフラクティブ素子47の記録速度等にも依存するが、表示される像81の切り換えを高速で行うことができる点において好ましい。この使用態様においては、有機フォトリフラクティブ素子47をなす有機フォトリフラクティブ材料として、非露光時に屈折率変調パターンを保持しない非メモリ型の有機フォトリフラクティブ材料が好適に用いられる。また、有機フォトリフラクティブ素子47をなす有機フォトリフラクティブ材料が、変調光25aに対して感度を有するものの再生照明光45に対して感度を有さない場合には、第1パターン48の記録と並行した再生照明光45の投射によって、第1パターン48の記録精度の低下を引き起こすことはない。
【0050】
ところで、再生照明光が干渉縞パターンで回折される際の回折角度は、干渉縞パターンの縞のピッチと回折される再生照明光の波長とに依存して決まる。具体的には、再生照明光を回折可能な範囲は、干渉縞パターンの縞のピッチpと光の波長λとを用いて表すと、再生照明光の0次光の進行方向に対して2arcsin(λ/p)°の角度範囲となる。このため、従来技術の欄でも言及したように、空間光変調器に表示される干渉縞パターンによって再生照明光を回折して像を再生しようとすると、空間光変調器の画素ピッチの製造限界から、十分な回折角度範囲を確保することができなかった。このため、従来の表示装置では、観察者が像を確認することができる角度範囲、すなわち視域が狭くなるという不具合が生じていた。
【0051】
一方、ここで説明した表示装置10によれば、リレー光学系30を用いて、空間光変調器27に表示された第2パターン28を有機フォトリフラクティブ素子47に縮小投影している。すなわち、第2パターン28よりも短ピッチの縞で構成された第1パターン48、言い換えると、空間光変調器27の画素ピッチよりも短ピッチの縞で構成された第1パターン48で、有機フォトリフラクティブ素子47を露光することができる。このため、第1パターン48の縞のピッチPと再生照明光の波長λとを用いて「2arcsin(λ/P)°」の角度範囲と表される視域を効果的に拡大することができる。またこれにともなって、この表示装置10によって、一つの像81内で観察角度が実質的に変化するようになる比較的に大きな像81を、縁部まで明瞭に観察され得るように、再生することも可能となる。
【0052】
なお、図4に示すように、本実施の形態では、有機フォトリフラクティブ素子47に投射された再生照明光45のうちの0次光45bの光路
上に、すなわち、有機フォトリフラクティブ素子47に投射された再生照明光45のうちの有機フォトリフラクティブ素子47に記録された第1パターン48で回折することなく当該有機フォトリフラクティブ素子47を透過した光45bの光路上に、ビームストッパ51が設けられている。このビームストッパ51は、0次光45bを吸収するように構成されている。このようなビームストッパとしては、0次光45bを吸収し得る機能を有した部材、例えば、黒色の光吸収性ゴム材料や無機酸化物、一例として、黒アルマイト処理したアルミニウム等を用いることができる。また、ビームストッパ51が、図4に示すように表示装置10のケーシング11の一部を構成するようにしてもよいし、あるいは、ケーシング11に固定されるようにしてもよい。図4に示された例では、観察者は、ケーシング11に形成された窓11aから像81を観察するようになっており、この窓11aは、有機フォトリフラクティブ素子47に投射された再生照明光45のうちの0次光45bの光路からずれた位置に配置され、観察者が0次光45bを観察してしまうことが防止されるようになっている。
【0053】
また、図4に示すように、本実施の形態では、露光機構35から有機フォトリフラクティブ素子47に投射された光25aの、有機フォトリフラクティブ素子47を透過した後の光路上に、フィルタ素子49が設けられている。このフィルタ素子49は、露光機構35からの光25aと同一波長域の光を吸収または反射すること等によって、当該光の透過を規制し得るように構成されている。その一方で、このフィルタ素子49は、再生光源41からの再生照明光45と同一波長域の光を透過させるようになっている。すなわち、フィルタ素子49は、像81を再生する再生光45aの透過を可能にしながら、第1パターン48の記録に用いられた変調光25aの自由な透過を防止するようになっている。このようなフィルタ素子49として、バンドパスフィルタやダイクロイックミラーを用いることができる。
【0054】
以上のような本実施の形態によれば、再生照明光45を回折して像81を再生し得るホログラム干渉縞パターンとしての第1パターン48が記録される記録媒体として、有機フォトリフラクティブ素子47が用いられている。このため、物体光および参照光の2光束を用いて干渉縞パターンを記録する必要のあるフォトリフラクティブ結晶を用いた場合とは異なり、一光束のみを用いた露光によって、すなわち、空間光変調器27で表示された第2パターン28を有機フォトリフラクティブ素子47に投影することによって、有機フォトリフラクティブ素子47に第1パターン48を記録することが可能となる。これにより、表示装置10内における光路設計を大幅に簡略化することができ、結果として、表示装置10を大幅に小型化することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、一光束での露光が可能となることから、簡便な構成からなるリレー光学系30を用いて、空間光変調器27に表示された第2パターン28を有機フォトリフラクティブ素子47に縮小投影することができる。これにより、第2パターン28よりも短ピッチの縞で構成された第1パターン48、言い換えると、空間光変調器27の画素ピッチよりも短ピッチの縞で構成された第1パターン48で、有機フォトリフラクティブ素子47を露光することができる。すなわち、本実施の形態によれば、簡便な構成からなるリレー光学系30を用いることによって表示装置10が全体として大型化されることを効果的に防止しながら、空間光変調器27の画素ピッチの制約を受けることなく、表示装置によって表示される像10が観察され得る視域、すなわち、干渉縞パターンの縞のピッチpと再生照明光の波長λとを用いて表される「2arcsin(λ/p)°」の角度範囲を効果的に拡大することができる。
【0056】
加えて、本実施の形態で採用された有機フォトリフラクティブ素子47は、フォトリフラクティブ結晶と比較して、フレキシブル性を有し且つ大面積化が可能である。このため、表示装置10の設計の自由度を大幅に拡大させることができ、例えば後述する変形例のように、有機フォトリフラクティブ素子47を円筒状に構成することも可能となる。
【0057】
さらに、本実施の形態で採用された有機フォトリフラクティブ素子47は、ホログラム素子用の材料として最も一般的な部類に属するフォトポリマーと比較して、干渉縞パターンの書き換え、言い換えると記録し直しが可能である点で優れるだけでなく、感度調節によって明るい環境下での第1パターン48の記録が可能となる。したがって、表示装置10のケーシング11の構成を簡略化することや、表示装置10の配置場所の制約が緩和されて、種々の用途への表示装置10の適用が可能となる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、リレー光学系30を介して有機フォトリフラクティブ素子47に投影される光の光軸と、再生光源41から有機フォトリフラクティブ素子47に投射される光の光軸とが、非平行となっている。このような形態によれば、露光機構35からの変調光25aの進行方向及び/又は再生照明光45の0次光45bの進行方向とは異なる方向から観察される像81を再生しやすくすることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態によれば、リレー光学系30を介して有機フォトリフラクティブ素子47に投影される変調光25aの波長域の中心波長長λが、再生光源41から有機フォトリフラクティブ素子47に投射される再生照明光45の波長域の中心波長λとは異なっている。このような形態によれば、有機フォトリフラクティブ素子47が再生照明光45の波長λに感度を持たないように設定することができ、この場合、再生照明光45が有機フォトリフラクティブ素子47に記録される第1パターン48に影響を及ぼすことが回避され得る。これにより、有機フォトリフラクティブ素子47へ高精度に第1パターン48を記録し、所望の像81を再生することが可能となる。
【0060】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0061】
例えば、上述した実施の形態において、有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の記録と、像81の再生とが、同時に実施される例を示したが、これに限られない。図5に示された例や、図6および図7に示された例のように、リレー光学系30を介して有機フォトリフラクティブ素子47に投射される光25aと、再生光源41からの再生照明光45とが、有機フォトリフラクティブ素子47に異なるタイミングで投射されるようにしてもよい。このような変形例では、有機フォトリフラクティブ素子47をなす有機フォトリフラクティブ材料として、露光を停止した後、すなわち、変調光25aの投射を停止した後においても、一定の期間の間または次の露光が開始されるまでの間、直前の露光パターンに対応した屈折率分布が維持される性質を有したメモリ型(保持型)の有機フォトリフラクティブ材料が用いられる。
【0062】
また、上述した実施の形態では、有機フォトリフラクティブ素子47が、平板状に構成されて一定の位置に固定して保持される例を示したが、有機フォトリフラクティブ素子47は、図6および図7に示された例のように曲面状に形成されていてもよいし、図5に示された例のように、帯状に形成されて可撓性を有するようにしてもよい。フォトリフラクティブ結晶を用いた記録媒体とは異なり、有機フォトリフラクティブ材料を用いた有機フォトリフラクティブ素子47は、加工の自由度が高く、円筒状に形成することや、可撓性を付与すること等が可能となる。
【0063】
さらに、上述した実施の形態では、空間光変調器27が一つだけ設けられている例を示したが、図6および図7に示す例のように、複数の空間光変調器27が一つの表示装置10に設けられるようにしてもよい。このような例によれば、各空間光変調器27で表示された第2パターン28が、有機フォトリフラクティブ素子47の互いに異なる領域に縮小投影されるようにすることができる。この例によれば、空間光変調器27の画素数の制約およびピッチの制約によらず、有機フォトリフラクティブ素子47に大面積の第1パターン48を記録することができる。なお、有機フォトリフラクティブ材料を用いた有機フォトリフラクティブ素子47は、フォトリフラクティブ結晶を用いた記録媒体と比較して加工性が良いことから、大面積化することが可能であり、複数の空間光変調器27を用いることによる第1パターン48の大面積化にも十分に対応可能である。
【0064】
ここで、図5に示された変形例、並びに、図6および図7に示された変形例について、説明する。まず、図5に示された変形例では、表示装置10が、露光機構35と、有機フォトリフラクティブ素子47と、再生光源機構40と、露光機構35と有機フォトリフラクティブ素子47とを相対移動させる駆動機構53と、を有している。図5に示された例において、有機フォトリフラクティブ素子47は、無端ベルトとして構成された透明な基材147aと、基材147a上に設けられた有機フォトリフラクティブ材料からなる複数の記録材147b1,147b2と、を有している。駆動機構53は、基材147aを架け渡された一対のローラー53a,53bを有している。一対のローラー53a,53bが回転することにより、ベルト状の有機フォトリフラクティブ素子47が、固定配置された露光機構35および再生光源機構40に対して相対移動する。図5に示された例では、露光機構35によって第1パターン48を記録された各記録材147b1,147b2を、駆動機構53を用いて再生光源機構40に対面する位置まで移動させて、像81を再生することができる。
【0065】
とりわけ、図5に示された例では、有機フォトリフラクティブ素子47の第1記録材147b1が、露光機構35によって露光され得る位置に配置された際に、第2記録材147b2は、再生光源機構40によって再生光を所定の方向から投射される位置に配置される。したがって、有機フォトリフラクティブ素子47の第2記録材147b2に記録された第1パターン48によって再生照明光45を回折し、当該回折によって得られた再生光45aで像81を表示している間に、有機フォトリフラクティブ素子47の第1記録材147b1に第1パターン48を記録することができる。第2記録材147b2を用いた像81の再生が停止した際に、駆動機構53によって有機フォトリフラクティブ素子47を移動させ、次に、第1記録材147b1を用いた像81の再生を行うことができる。第1記録材147b1および第2記録材147b2に記録される第1パターン48は、同一でもよいし互いに異なっていても良い。
【0066】
なお、図5に示された例において、有機フォトリフラクティブ素子47を挟んで露光機構に対面する位置に、フィルタ素子49が配置されている。この例で用いられるフィルタ素子49は、再生光45aの透過経路上に位置していないので、再生光45aを透過させる機能は必須ではなく、露光機構35からの変調光25aを遮光することができれば十分である。
【0067】
また、図5に示された例において、駆動機構53は一例に過ぎず、有機フォトリフラクティブ素子47の形態に応じて種々の変更が可能である。例えば、枚葉状の複数の有機フォトリフラクティブ素子47が設けられる場合には、ロボットアームからなる駆動機構によって、枚葉状の各有機フォトリフラクティブ素子47を露光機構35や再生光源機構40に対して移動させるようにしてもよい。また、駆動機構が、固定配置された有機フォトリフラクティブ素子47に対して、露光機構35および再生光源機構40を移動させるようにしてもよい。
【0068】
さらに、図5に示された例において、有機フォトリフラクティブ素子47の記録材147b1,147b2の数量や構成は、特に限定されるものではない。例えば、基材147aと同様に無端ベルト状に形成され、記録材の各領域が別途に露光されるようにしてもよい。
【0069】
次に、図6および図7に示された変形例について、説明する。まず、図6および図7に示された変形例では、表示装置10が、露光機構35と、円筒状の有機フォトリフラクティブ素子47と、再生光源機構40と、露光機構35と有機フォトリフラクティブ素子47とを相対移動させる駆動機構55と、を有している。駆動機構55は、円筒状の有機フォトリフラクティブ素子47を、円筒状の中心軸線を中心として回転させる。
【0070】
露光機構35は、複数の空間光変調器27と、各空間光変調器27に対応して設けられたリレー光学系30と、を有している。図6によく示されているように、各空間光変調器27で表示された第2パターン28は、有機フォトリフラクティブ素子47の互いに異なる領域に縮小投影されることになる。図6に示された例では、有機フォトリフラクティブ素子47の円筒状の軸線方向に三つの空間光変調器27を配列してなる空間光変調器27の列が、有機フォトリフラクティブ素子47の円周方向に二列配置されている。有機フォトリフラクティブ素子47の円筒状の軸線方向に沿った空間光変調器27の二つの列は、一つの空間光変調器27の当該軸線方向に沿った長さ半の分だけ、当該軸線方向にずれて配置されている。
【0071】
この例において、各空間光変調器27の第2パターン28が、図3および図4におけるY軸方向に沿った縦寸法およびX軸方向に沿った横寸法を50%に縮小されるようにして、有機フォトリフラクティブ素子47に投影されるとすると、図6に示すように、有機フォトリフラクティブ素子47上の千鳥状に配列された六つの領域247aが露光されるようになる。千鳥状に配列された六つの領域247aへの第1パターン48の記録が終了すると、駆動機構55によって有機フォトリフラクティブ素子47を回転させ、より具体的には、一つの領域247aがその円周方向に沿った長さ分だけ円周方向にずれるように有機フォトリフラクティブ素子47を回転させ、再び、露光機構35を用いた有機フォトリフラクティブ素子47への第1パターン48の記録を行う。この再度の露光によって第1パターン48を記録される領域は、前の露光で第1パターン48を記録された千鳥状に配列された六つの領域247aに円周方向に隣接する、千鳥状に配列された六つの別の領域247bとなる。すなわち、この例によれば、二回以上の露光を行うことによって、有機フォトリフラクティブ素子47の面状の領域に大面積の第1パターン48を記録することができる。
【0072】
一方、再生光源機構40は、再生照明光45を射出する再生光源41と、円筒状の有機フォトリフラクティブ素子47内に配置された反射部材57と、を有している。反射部材57は円錐状に形成され、円筒状からなる有機フォトリフラクティブ素子47の内部に向けて射出される再生照明光45の進行方向を変化させて、当該再生照明光45を有機フォトリフラクティブ素子47へ投射するようになっている。このような構成によれば、有機フォトリフラクティブ素子47の概ね半周分の内面に向けて、再生照明光を照射することができ、これにより、円筒状からなる有機フォトリフラクティブ素子47の外部に大きな像81を再生することができる。
【0073】
なお、図6および図7に示された例に対しても種々のさらなる変更が可能である。例えば、第2パターン28から第1パターン48への縮小率は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。同様に、空間光変調器27の数量や配列も一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、図5に示された変形例と同様に、有機フォトリフラクティブ素子47を挟んで露光機構35と対面する位置に、変調光45aを吸収可能なフィルタ素子49を設けるようにしてもよい。
【0074】
再び、上述した実施の形態に対する別の変形例について説明する。上述した実施の形態において、第1パターン48が、第2パターン28を相似的に縮小したパターンとなっている例を示したが、これに限られない。すなわち、第1パターン48に対する第2パターン28の比率が、リレー光学系30の光軸、すなわち、図1における直線方向Laと直交する面上に画成される互いに交差する第1方向および第2方向の間で、異なるようにしてもよい。すなわち、図2および図3に示すように、空間光変調器27の像形成面27aおよび有機フォトリフラクティブ素子47の記録面47a上に、互いに直交する第1方向としてのX軸方向と第2方向としてのY軸方向とを定義した場合、第1パターン48の第2パターン28に対するX軸方向への比率と、第1パターン48の第2パターン28に対するY軸方向への比率と、が異なるようにしてもよい。このような変形例を実現するためのリレー光学系30として、柱状のレンズを用いることができる。
【0075】
人間の目の視域は、縦方向よりも横方向(両目の並ぶ方向)に広くなる。したがって、通常の観察において人間の両面を結ぶ方向と平行な方向(一般的には横方向)における視域を大きく確保すべく、この方向において第1パターン48に対して第2パターン28を積極的に縮小することが有効である。一方、通常の観察において人間の両面を結ぶ方向と直交する方向(一般的には縦方向)については、両目を結ぶ方向と同様のレベルにて、第1パターン48に対して第2パターン28を積極的に縮小しなくともよい。このような変形例を、例えば上述した図6および図7に示された変形例に適用したとすると、空間光変調器27の配列が簡略され、表示装置10の小型化を図ることができる。
【0076】
さらに、上述した実施の形態においては、再生光源機構40が、単色の再生照明光45を有機フォトリフラクティブ素子47に投射するように構成された例を示したが、これに限られない。再生光源機構40が、互いに異なる波長域の光を生成する複数の再生光源41を含むように構成されてもよい。このような変形例によれば、単一の再生光源41を用いた場合には再現することのできない色を加法混色によって再現し、当該色にて像81を再生することが可能となる。また、像81を複数色にて再生すること、さらには、像81をフルカラーで再生することも可能となる。
【0077】
ここで、像81をフルカラーで再生するための複数の例について説明しておく。まず、第1の方法として、有機フォトリフラクティブ素子47を平面的に領域分割し、分割された各領域に、第1波長域の光(例えば赤色を担う光)、第2波長域の光(例えば緑色を担う光)および第3波長域の光(例えば青色を担う光)のいずれかを回折するための第1パターン48をそれぞれ記録する。各領域に対応する第1パターンを記録する際には、有機フォトリフラクティブ素子47の領域分割に対応して、空間光変調器27も同様に領域分割し、空間光変調器27の各領域が、第1波長域の光、第2波長域の光および第3波長域の光のいずれかを回折するための第1パターン48に対応した第2パターン28を表示する。各波長域の光を回折するための第1パターン48は、同一波長の照明光25および変調光25を用いて、有機フォトリフラクティブ素子47に同時に記録され得る。再生光源機構40からは、第1波長域の光、第2波長域の光および第3波長域の光、あるいは、これらの光をすべて含む白色光を有機フォトリフラクティブ素子47に投射するようにするとともに、透過型ホログラムとして機能する有機フォトリフラクティブ素子47に、カラーフィルタを重ねて配置しておく。これにより、有機フォトリフラクティブ素子47の各領域を回折して透過した光のうち、当該領域に対応した波長域の光のみがカラーフィルタを透過し得るようにする。カラーフィルタを透過して各波長域の光によって再生される像が重なり合い、一つの像81がカラーで表示されるようになる。
【0078】
第2の方法としては、有機フォトリフラクティブ素子47の一つの有機フォトリフラクティブ材料からなる記録材に、第1波長域の光を回折するための第1パターンと、第2波長域の光を回折するための第1パターンと、第3波長域の光を回折するための第1パターンと、の三つのパターンを重ねて記録する方法である。この第2の方法では、記録材をなす有機フォトリフラクティブ材料への三種類の第1パターンの記録は、互いに異なる波長域の変調光25aを用いて行うことができる。
【0079】
また、第3の方法としては、有機フォトリフラクティブ素子47が、有機フォトリフラクティブ材料からなる記録材を三層重ねて含むようにし、各記録材に、第1波長域の光、第2波長域の光および第3波長域の光のいずれかを回折するための第1パターンをそれぞれ記録する。この第3の方法では、三つの記録材の波長感度域を変化させておき、各記録材の感度に対応した互いに異なる波長域の変調光を用いて、三つの記録材のそれぞれへ第1パターンを記録することができる。
【0080】
さらに、上述した実施の形態では、空間光変調器27の第2パターン28が、第1変調領域28aおよび第2変調領域28bから構成される例を示した。すなわち、空間光変調器27によって実現される変調が二値変調である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、空間光変調器27によって多値変調が実現されるよう第2パターン28が構成されていてもよい。
【0081】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 表示装置
20 記録光源機構
21 記録光源
25 照明光
25a 変調光
27 空間光変調器
27a 画像形成面、入射面
28 第2パターン
29b 制御手段
30 リレー光学系
31 第1レンズ
33 第2レンズ
35 露光機構
40 再生光源機構
41 再生光源
45 再生照明光
45a 再生光
45b 0次透過光
47 有機フォトリフラクティブ素子
47a 記録面
48 第1パターン
53,55 駆動機構
81 像
147a 基材
147b1,147b2 記録材
247a,247b 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を表示する表示装置であって、
再生光源と、
再生光源からの再生照明光を回折して像を再生する第1パターンが記録される有機フォトリフラクティブ素子と、
前記有機フォトリフラクティブ素子を露光して前記有機フォトリフラクティブ素子に前記第1パターンを記録する露光機構と、を備え、
前記露光機構は、
前記第1パターンに対応した第2パターンを表示する空間光変調器と、
前記空間光変調器と前記有機フォトリフラクティブ素子との間に配置されたリレー光学系であって、前記空間光変調器で表示される前記第2パターンを前記有機フォトリフラクティブ素子に縮小投影するリレー光学系と、を有する、表示装置。
【請求項2】
前記リレー光学系は、前記空間光変調器と前記有機フォトリフラクティブ素子とを結ぶ直線上に配置された第1レンズおよび第2レンズを有し、
前記空間光変調器、前記有機フォトリフラクティブ素子、前記第1レンズおよび前記第2レンズは、4f光学系を構成するように、配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光の光軸と、前記再生光源から前記有機フォトリフラクティブ素子に投射される光の光軸と、は非平行である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光の波長域の中心波長は、前記再生光源から前記有機フォトリフラクティブ素子に投射される光の波長域の中心波長とは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記空間光変調器が複数設けられており、
各空間光変調器で表示された第2パターンは、前記有機フォトリフラクティブ素子の互いに異なる領域に縮小投影される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記有機フォトリフラクティブ素子と前記リレー光学系および前記空間光変調器とを相対移動させる駆動機構を、さらに備え、
前記リレー光学系を介して前記有機フォトリフラクティブ素子に投影される光と、前記再生光源からの前記再生照明光とが、前記有機フォトリフラクティブ素子に異なるタイミングで投射される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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