説明

表示装置

【課題】表示パネルの折り畳み状態から展開状態への移行および展開状態から折り畳み状態への移行の際、簡単な構成で、筐体に対する表示パネルのズレが殆ど生じないようにする。
【解決手段】表示装置は、フレキシブル表示パネル4を敷設した筐体1、2と、両筐体を回動可能に結合するヒンジ部3bを備える。ユーザは筐体1、2を回動させ、表示パネル4が平坦となる展開状態にして使用する。ヒンジ部3bの中心軸に沿う方向から見た場合、該中心軸を中心とする円と筐体1における表示パネル4の敷設面との交点を第1交点1aとし、この円と筐体2における表示パネル4の敷設面との交点を第2交点2aとする。筐体間にて第1交点と第2交点とを繋ぐ表示パネル4の部分は、各筐体の敷設面に固定されておらず、当該部分の長さは前記円の直径にほぼ等しく設定されており、展開状態では交点間の直線距離よりも僅かに長くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に可とう性を有する表示デバイスを用いて開閉可能に構成した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルな表示パネルの開発が盛んに行われており、表示パネルを屈曲させることが可能になっている。従来の表示装置では、特許文献1に記載されるように、筐体同士を繋ぐ結合部(ヒンジ部)を蛇腹構造にして弾性を持たせ、フレキシブル表示パネルの折り畳みおよび展開時に合わせて伸縮させる。これにより、筐体に対する表示パネルのズレを吸収できる。特許文献2に記載されている表示装置は、フレキシブル表示パネルを折り畳む時に表示パネルが筐体に対してずれるので、弾性部材でズレを吸収させる構造を有する。
図5は、従来の表示装置の筐体と表示パネルの関係を示す。図5(A)は表示装置を折り畳んだ状態での側面図であり、図5(B)は展開状態での正面図、図5(C)は展開状態での側面図である。なお、図5は、筐体と表示パネルの位置関係を理解し易いように、筐体内部の表示パネルを透視図で示す。
【0003】
筐体101、102は剛性の高い部材で形成されており、ヒンジ部103a、103bを中心に回動する構造となっている。表示パネル104は有機EL(エレクトロルミネッセンス)デバイス等のフレキシブルなデバイスが使用され、筐体101と筐体102に亘って平面上に敷設されている。表示パネル104は筐体101、102に対して図の左右方向にスライド可能に支持されており、図中の左右両端よりバネ等の弾性部材(不図示)で引っ張り方向に付勢された状態になっている。弾性部材によるバネ力は左右でほぼ均等になるように設定されているため、表示パネル104の中心付近でズレが少ない構造となっている。図5(A)では、表示パネル104の折り曲げ部104aの表示回路部が損傷しない程度の曲げ半径(図の直径Dm参照)で折り曲げられた状態にある。この時の筐体101と筐体102を繋ぐ部分の直線距離をLmとする。また図5(C)に示す展開状態にて、筐体101と筐体102を繋ぐ部分の直線距離をLnとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−287982号公報
【特許文献2】特開2005−114759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の装置構成では以下の問題がある。
前記特許文献1では、折り畳み時および展開時の筐体と表示パネルとのズレを蛇腹構造で吸収する構成であるため、蛇腹構造の伸縮機構が複雑になり、装置が大型化するという問題があった。
また、前記特許文献2に開示された構成では、折り畳み時および展開時の筐体と表示パネルとのズレを筐体内部に設けられた弾性部材で吸収する構成であるため、ズレの吸収機構が複雑になるという問題がある。また、折り畳み状態から展開状態に至る過程(またはその逆)で、表示部が外観上ずれていく様子がユーザに視認される。つまり、表示パネル上の文字や絵柄などをユーザが見ている位置がずれて見難くなるという問題がある。
図5に示す表示装置の構成では、図5(B)および(C)に付した矢印で誇張して示すように、折り畳み状態での表示パネル104の位置(図中2点鎖線参照)と、展開状態での当該表示パネルの位置との間に、ズレが生じることになる。これは、図5(A)に示す距離Lmと、図5(C)に示す距離Lnとの関係が、「Ln>Lm」となることによる。この場合もズレの吸収機構が複雑になるだけでなく、折り畳み状態から展開状態に至る過程(またはその逆)で、表示パネルの左右周辺部が外観上ずれていく様子がユーザに視認されることになる。
本発明の目的は、表示パネルの折り畳み状態から展開状態への移行および展開状態から折り畳み状態への移行の際、簡単な構成で、筐体に対する表示パネルのズレが殆ど生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、可とう性を有する表示パネルと、該表示パネルが敷設された複数の筐体と、隣り合う前記複数の筐体を回動可能に結合する結合部を備え、該結合部の中心軸を回動軸として前記筐体を回動させることにより、折り畳み状態から前記表示パネルが平坦となる展開状態にして使用する表示装置であって、前記結合部の中心軸に沿う方向から見た場合に、当該中心軸を中心とした円と前記複数の筐体のうちの第1筐体における前記表示パネルの敷設面との交点を第1交点とし、前記円と第2筐体における前記表示パネルの敷設面との交点を第2交点とするとき、前記第1筐体と前記第2筐体の間で前記第1交点と前記第2交点とを繋ぐ前記表示パネルの部分は、前記第1筐体および第2筐体の敷設面に固定されておらず、かつ当該部分の長さが前記展開状態の直前で前記円の直径に等しくなるように設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示パネルの折り畳み状態から展開状態への移行および展開状態から折り畳み状態への移行の際、簡単な構成で、筐体に対する表示パネルのズレが殆ど生じないように防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2乃至4と併せて本発明の実施形態を説明するために、表示装置の外観例を展開状態で示す斜視図である。
【図2】表示装置の筐体と表示パネルとの関係を説明するために、折り畳み状態の図(A)、展開途中状態の図および要部を示す拡大図(B)、並びに展開状態の図および要部を示す拡大図(C)である。
【図3】表示装置の筐体と表示パネルとの関係を示す詳細図である。
【図4】表示装置の展開角度と点間距離との関係を示すグラフである。
【図5】従来の表示装置の折り畳み状態と展開状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は表示装置の外観例を示す斜視図であり、展開状態を示す。
筐体1、2は剛性の高い材料で矩形の平板状に形成されている。複数の筐体のうち、正面から見て右側に第1筐体1が位置し、左側に第2筐体2が位置する。筐体1、2の結合部としてヒンジ部3a、3bが設けられており、筐体1と筐体2はヒンジ部3a、3bを中心として回動する。すなわち、ユーザは表示装置を折り畳んで筐体1と筐体2とが対向した状態(折り畳み状態)で携帯し、また表示装置を開いて筐体1と筐体2が一平面上に展開した状態(展開状態)で使用する。ヒンジ部3a、3bは筐体1および筐体2のどちらの回動にも追従しない独立した構造になっており、各ヒンジ部には突出軸部3a−1、3b−1がそれぞれ設けられている。これらの突出軸部3a−1、3b−1はヒンジ部3a、3bの内側面に対向した状態で形成された円柱状の突出部であり、筐体1および2の回動によらず、所定の位置を維持する。
【0010】
フレキシブル表示パネル(以下、単に表示パネルという)4は、有機ELデバイス等を用いた可とう性を有する表示パネルであり、展開状態にて筐体1と筐体2の平面上に敷設された状態となる。なお、突出軸部3a−1、3b−1は、装置の内側、つまり表示パネル4の配置された側に突出している。よって、展開状態において表示パネル4の表示面に垂直な方向から見た場合、突出軸部3a−1、3b−1は表示パネル4の長手方向の側縁に重なり合う位置まで突出している。また折り畳み状態では、図2(A)や図3(A)に示すように、長手方向における表示パネル4の中央付近の部分(折り曲げ部4a参照)が屈曲した状態となる。
【0011】
次に、本実施形態に係る表示装置における表示パネル4と筐体1および筐体2との関係について、図2乃至4を用いて説明する。なお、これらの図では、筐体1、2と表示パネル4の位置関係を分かり易くするため、表示パネル4を透視図で示している(斜線部参照)。
図2は、表示装置の折り畳み状態での側面図を(A)図に示し、展開状態での側面図を(C)図に示し、途中状態での側面図を(B)図に示す。図3(A)は図2(A)の要部の拡大図を示し、図3(B)は展開途中状態での要部の拡大図を示す。
筐体1、2はそれぞれ、ヒンジ部3a、3bにより回動可能であり、図2(A)および図3(A)に示す折り畳み状態にて、ヒンジ部3b側の回動中心を点Cとする。なお、ヒンジ部3a側の回動中心も同様の位置にあるが、両者は同様の構造を有するので、以下では一方のみを説明する。筐体1、2にそれぞれ敷設された表示パネル4は、折り畳み状態にて表示面同士が対向しており、2つ折り状態の各表示面の間に若干のクリアランスを設けた状態で配置されている。これは、表示面同士が当接しないようにし、表示面や表示回路の損傷を防止するためである。
【0012】
図3(A)に示すように、折り畳み状態では突出軸部3b−1の外周面に表示パネル4が部分的に巻き付いている。この状態で突出軸部3b−1の直径(折り曲げ部の直径)については、表示パネル4の表示回路が損傷しない程度の値になっており、突出軸部3b−1はそのために規制部の機能を有している。この構成により、筐体1、2にそれぞれ敷設された表示パネル4を2つに折り畳んだ状態で接近させることができる。すなわち、図5に示した従来技術のように、表示パネルの対向面同士を離す必要がなく、スペース効率の改善および筐体の薄型化に寄与する。
突出軸部3b−1は、図3(A)に示すように筐体1および2の回動中心(点C参照)に対して上方(正面側)、つまり、筐体1および2の回動軸方向から見てその回動軸よりも正面側(ユーザ側)に配置されている。点1aは筐体1および2の回動軸(ヒンジ部の中心軸)を中心とした円と、筐体1における表示パネル4の敷設面との交点(第1交点)を示す。また点2aは筐体1および2の回動軸を中心とした円と、筐体2における表示パネル4の敷設面との交点(第2交点)を示す。本例にて、この円はヒンジ部3bの外周形状に一致するものとし、突出軸部3b−1は、折り畳み状態にて点1aおよび点2aよりも下方(円の中心側)に配置されている。本構成によって、展開状態から折り畳み状態への移行時に、表示パネル4は常に折り曲げ位置が図の下方へ導かれるように誘導される。よって、逆方向(図中の上方)に折り曲げられることによる表示パネル4の損傷を回避でき、突出軸部3b−1は誘導部の機能も有する。また、展開状態では突出軸部3b−1が表示パネル4に接触しないため、表示パネル4の平面性に影響を及ぼすことはない。
【0013】
図3(A)にて、点1a、2aと筐体1、2の回動中心(点C参照)をそれぞれに結ぶ線分と、表示装置の中心線(点Cを覆って図の上下方向に延びる線)を含む面との間になす角度を「θ0」と記す。そして、筐体1および2の回動軸を中心とした前記円の直径をDと記す。この状態での点1aと点2aとの直線距離を「L1a-2a」と記すと、下式のようになる。
【数1】

sinXは、変数Xの正弦関数を表す。なお、表示パネル4のうち、少なくとも点1aと点2aを結ぶ範囲内にある部分は、筐体1および筐体2に固定されていない。また、図面上での直径Dは円柱状をしたヒンジ部3bの直径(外径)と同一としているが、これに限らず、任意に設定した仮想円の直径であってもよい。
【0014】
図3(B)は表示装置の展開途中状態での要部を示しており、図3(A)に示す折り畳み状態を基準とした展開角度を「θ」と記す。この場合、点1aと点2aとの直線距離L1a-2aは下式のようになる。
【数2】

【0015】
図2(B)は、展開途中にて、点1aと点2aとの直線距離L1a-2aがちょうど円の直径Dと等しくなっている状態を示す。このとき、下式の関係となる。
【数3】

この状態ではθ0+θ=90°であり、点1aと点2aとの直線距離L1a-2aが最大となる。筐体1と筐体2を繋ぐ部分(図1の点線部参照)を除いた表示パネル4の大部分は、筐体1と筐体2の敷設面にそれぞれ固定されていて、これらの筐体に対して表示パネル4が移動できるようにするための機構は設けられていない。このため、筐体1と筐体2を繋ぐ境界部に位置する部分の表示パネル4の長さについては、少なくとも直径Dの長さが必要になる。仮に、筐体1と筐体2を繋ぐ境界部に位置する部分の表示パネル4の長さが直径Dよりも短くなってしまうと、表示パネル4の長さが足りない状態となる。この場合、表示パネル4を完全に展開できなくなるだけでなく、表示パネル4に過大な応力が発生した際、表示回路が破損するおそれがある。
【0016】
表示装置の展開状態にて、図2(C)に示す要部の拡大図のように、展開角度を「θ」と記すとき、点1aと点2aとの直線距離L1a-2aは下式のようになる。
【数4】

この状態では、「L1a-2a <D」であり、点1aと点2aとの直線距離が円の直径Dよりも僅かに小さくなっている。つまり、筐体1と筐体2を繋ぐ部分での表示パネル4の長さが、僅かに長くなっているということである。しかし、この量は非常に微小な量であるため、展開状態での表示パネル4は殆ど平坦な面となる。したがって、表示面が変形して表示が見難くなり、表示品質が低下することはない。
【0017】
図4は展開角度θに対する点間距離L1a-2aを示すグラフである。横軸に示す展開角度θがゼロのときに初期角度がθ0であり、展開範囲0乃至90°を示す。展開角度を0°から徐々に大きくしていくと、点間距離L1a-2aは正弦関数に従って増加していくが、その増加率は徐々に低下していき、図2(B)に示す展開角度で点間距離L1a-2aが最大値Dとなる。そしてさらに展開角度を大きくしていくと、点間距離L1a-2aはやや短くなり、最大展開角度θ=90°となる。この状態が図2(C)の状態であり、点間距離L1a-2aはD×sin(θ0+θ)となる。ここで、グラフ上のD×sin(θ0+θ)とDとの差が、筐体1と筐体2を繋ぐ部分で表示パネル4が長くなる分に相当する。正弦関数波形のピーク位置の付近であるため、その量は非常に僅かであることがグラフからも分かる。つまり展開状態の直前で点間距離L1a-2aが直径Dに等しくなり、展開角度が90°になったときには点間距離L1a-2aが可能な限り最大値(直径D)の近傍になるように設定されている。これにより、筐体1および2に対して表示パネル4が殆どずれないので、表示画質の低下を伴わずに見易い表示を実現できる。
【0018】
以上のように本実施形態では、表示パネル4の折り畳み構造において、第1筐体1と第2筐体2との間を繋ぐ部分の表示パネルの長さを、点1aと点2aとの直線距離が最大となる時の値(前記円の直径D)とほぼ等しくなるように設定している。これにより、折り畳み状態と展開状態とで筐体に対する表示パネル4のズレが殆ど生じないので、表示品質の優れた表示装置を提供できる。しかも表示パネル4のズレに対する吸収機構を設ける必要がなくなるので、単純な構造となり、小型の表示装置を実現できる。また、折り畳み時には、表示パネル4の折り曲げ部の半径が小さくなり過ぎないように制限することにより、屈曲耐久性の高い長寿命の表示装置を実現できる。
【符号の説明】
【0019】
1,2 筐体
3a,3b ヒンジ部(結合部)
3a−1,3b−1 突出軸部(規制部)
4 フレキシブル表示パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性を有する表示パネルと、該表示パネルが敷設された複数の筐体と、隣り合う前記複数の筐体を回動可能に結合する結合部を備え、該結合部の中心軸を回動軸として前記筐体を回動させることにより、折り畳み状態から前記表示パネルが平坦となる展開状態にして使用する表示装置であって、
前記結合部の中心軸に沿う方向から見た場合に、当該中心軸を中心とした円と前記複数の筐体のうちの第1筐体における前記表示パネルの敷設面との交点を第1交点とし、前記円と第2筐体における前記表示パネルの敷設面との交点を第2交点とするとき、前記第1筐体と前記第2筐体の間で前記第1交点と前記第2交点とを繋ぐ前記表示パネルの部分は、前記第1筐体および第2筐体の敷設面に固定されておらず、かつ当該部分の長さが前記展開状態の直前で前記円の直径に等しくなるように設定されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記結合部には、前記表示パネルの折り畳み状態にて当該表示パネルが巻き付けられることで、その折り曲げ部の直径を規制する規制部が設けられており、前記展開状態にて前記表示パネルが前記規制部から離れていることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記結合部の中心軸に沿う方向から見た場合に、前記表示パネルの折り畳み状態にて前記円の中心と前記第1交点および第2交点との間に位置し、前記展開状態から前記折り畳み状態への移行時に、前記表示パネルの折り曲げ位置を前記円の中心側に誘導することを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記表示パネルの表示面に垂直な方向から見た場合に、前記結合部から前記表示パネルの側に突出して前記表示パネルと重なり合っていることを特徴とする請求項2または3記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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