説明

表面に対する改善された長期効果を有する殺虫剤製剤

本発明は、有害生物防除において使用するための組成物、特に、殺虫性懸濁製剤及びそれに基づいて調製された散布液、それら組成物を調製する方法、並びに、様々な表面上における動物有害生物(節足動物)を長期間にわたって防除するための該製剤の使用に関する。本発明は、さらに、有害生物防除剤における特定のポリマー分散液の使用、特に、該有害生物防除剤を表面に施用したときにその有害生物防除剤の長期効果を延長するための特定のポリマー分散液の使用にも関する。本発明は、さらに、動物における寄生生物、特に、外部寄生生物を防除するための本発明による組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物を防除するための組成物、特に、殺虫性懸濁製剤、及びそれらから作られた散布液、それらを調製する方法、並びに、さまざまな表面上の動物有害生物(animal pest)(節足動物)を持続的に防除するためのそのような製剤の使用に関する。本発明は、さらに、殺有害生物剤(pesticide)中の特定のポリマー分散液の使用、特に、表面に施用されたときに上記組成物の長期活性を延長するためのそれらの使用にも関する。本発明は、さらに、動物における寄生虫〔特に、外部寄生虫〕を防除するための本発明の組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
建造物及び家屋の内部及び外部の節足動物を防除することは、さまざまな理由で必要である。病害〔例えば、マラリア〕が昆虫類又はクモ形類動物などの節足動物によって動物及びヒトに伝染する国においては、効果的で且つ長期間持続する方法で住民を保護することが非常に求められている。さらに、衛生学的な理由及び構造工学的な理由により、動物有害生物が建造物の中に入り込むこと、動物有害生物が建造物内に蔓延って住みつくこと、及び、動物有害生物が材木又は別の材料物質に侵襲することを防止することが必要である。このような理由により、多くの防除用製品及び防除方法が既に開発されている。最も頻繁に使用される防除方法は、殺虫活性物質を水性の散布液又は噴霧液に含ませて施用することである。使用する活性物質とは無関係に、噴霧被膜(spray coating)の活性は、噴霧された表面の物理化学的特性にも大きく左右される。噴霧被膜の活性の持続時間は、特に、多孔性表面、特に、アルカリ性の多孔性表面、例えば、コンクリート表面、下塗り(render)の表面、切石/煉瓦の表面、材木(処理済み及び未処理)の表面、セラミックの表面、藁又は草葺の表面、白亜質表面、石灰質表面、石膏含有表面、セメント含有表面及びローム質表面などにおいては、悪影響を受け、著しく短縮される。例えば建造物の中のマラリア蚊の防除においては、上記のことの結果として、効果の持続期間が6ヶ月以内という短いものとなる。
【0003】
家屋の外の有害生物を防除する場合、それは、処理対象の家壁、土壌、植物及び芝生の領域である。ここで、使用する活性物質の活性を急速に消失させることとなるのは、その表面特性(多孔度、pH)のみではなく、さらに、温度、UV及び降雨の影響である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような条件下における製品の効力を改善することが絶えず求められている。保護がより長期にわたれば、必要とされる活性物質の施用頻度が少なくなるので、使用者、住人、家畜及び環境の曝露が最低限度まで低減され得る。
【0005】
従って、本発明の基礎を成す目的は、表面に施用されたときに昆虫からの長期にわたる保護を与える、改善された新規殺虫剤組成物を提供することであった。該殺虫剤組成物は、多孔性の及び/又はアルカリ性の表面に対して特に適していることが意図されており、また、該殺虫剤組成物は、高温/低温/変動する温度、紫外線及び降雨などの環境要因に対して耐性を示すことが意図されている。さらなる態様によれば、上記目的は、動物における寄生生物を防除するための改善された調製物を提供することも含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明の組成物によって達成される。本発明による組成物の例は、水性懸濁製剤、又は、それらから調製される散布混合物であり、それらは、一般に、一連の有利な特性を有している。かくして、本発明による組成物は、溶媒を含有していない。さらに、本発明による組成物は、取扱い及び調製が容易である。それらは、使用濃度まで希釈すると、水中で、及び、散布混合物中で、容易に再分散可能であり、散布混合物の沈澱は殆ど起こらない。本発明に従って使用可能な散布混合物は、濃厚物を水中で希釈することによって調製することができるか、又は、予め存在している種々の溶液を散布直前に混合させることによって調製することができる(タンクミックス施用)。本発明による組成物は、即時使用可能な(RTU)製剤であることもできる。
【0007】
本発明による組成物は、
・ 少なくとも1種類の殺虫剤;
・ 非イオン性分散剤及び/又はイオン性分散剤;
・ 水性ポリマー分散液;
を含んでおり、ここで、該ポリマー分散液は、主鎖としての親水コロイドの存在下において重合させることによって調製する。
【0008】
本発明は、さらに、
・ 少なくとも1種類の殺虫剤;
・ 非イオン性分散剤及び/又はイオン性分散剤;
・ 水性ポリマー分散液;
を含んでいる組成物にも関し、ここで、該水性ポリマー分散液はカチオン性ポリマー分散液であり、ここで、該カチオン性ポリマー分散液は乳化剤を含んでおり、ここで、該乳化剤は構造成分として少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドを有しており、ここで、該少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドは第3級アミノ基を含んでいる。
【0009】
驚くべきことに、本発明の組成物が、表面に施用された後、従来技術と比較して改善された生物学的長期活性を示すということが分かった。このことは、特に、多孔性表面、特に、アルカリ性の多孔性表面、例えば、コンクリートの表面、下塗り(render)の表面、切石/煉瓦の表面、材木(処理済み及び未処理)の表面、セラミックの表面、藁又は草葺の表面、白亜質表面、石灰質表面、石膏含有表面、セメント含有表面及びローム質表面などの処理に当てはまる。ここで、非多孔性表面に施用された場合、当該活性は、概して影響を受けないままでいる。このことは驚くべきことである。それは、多孔性表面に適したポリマー含有製剤が非多孔性表面に施用された場合、通常、その場で当該活性物質がカプセル化され、それによって生物学的活性が大幅に低減されるからである。
【0010】
さらにまた、驚くべきことに、本発明による水性懸濁製剤を用いて得られた噴霧被膜の耐久性が、高温/低温/変動する温度、降雨及び紫外線の影響下においてさえ、既に知られている被膜の耐久性と比較して著しく優れているということも分かった。
【0011】
さらにまた、驚くべきことに、本発明による組成物が、使用に際して有利性を示すということも分かった。かくして、本発明による組成物では、従来技術の製剤と比較して、散布に使用する装置内のノズルの目詰まりがまれにしか起こらない。本発明による組成物は水に溶解するので、該組成物を施用するのに使用する装置は、製品の残渣が残って乾燥していても、極めて容易に洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による組成物は、好ましくは、
・ ピレスロイド系、ピラゾール系、ネオニコチノイド系、ジアミド系(アントラニルアミド系、ベンゼンジカルボキサミド系)、カーバメート系、METI系(ミトコンドリアエネルギー移動阻害薬)(呼吸鎖複合体I−III)、植物性殺虫剤及び無機殺虫剤の中で選択される少なくとも1種類の殺虫剤;
を含んでいる。
【0013】
本発明による組成物は、特に好ましくは、
・ ベータ−シフルトリン、シフルトリン、シペルメトリン、アルファ−シペルメトリン、デルタメトリン、ビフェントリン、フルメトリン、ペルメトリン、ラムダ−シハロトリン、ガンマ−シハロトリン、メトフルトリン、エトフェンプロックス、トランスフルトリン、除虫菊、インドキサカルブ、カルバリル、フィプロニル、メタフルミゾン、アザジラクチン、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、ホウ酸、ホウ砂、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、アセタミプリド、フェンピロキシメート、トルフェンピラド、スピノサドから選択される少なくとも1種類の殺虫剤;
を含んでいる。
【0014】
本発明による組成物は、上記殺虫剤に加えて、さらなる殺虫活性物質、例えば、以下のものから選択されるさらなる殺虫活性物質も含有することができる:
アラニカルブ、アルジカルブ、アルドキシカルブ、アリキシカルブ、アミノカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、ブフェンカルブ、ブタカルブ、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、ジメチラン、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、ホルメタネート、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メタム−ナトリウム、メチオカルブ、メソミル、メトルカルブ、オキサミル、ピリミカーブ、プロメカルブ、プロポクスル、チオジカルブ、チオファノックス、トリメタカルブ、XMC、キシリルカルブ、トリアザメート、アセフェート、アザメチホス、アジンホス(−メチル,−エチル)、ブロモホス−エチル、ブロムフェンビンホス(−メチル)、ブタチオホス、カズサホス、カルボフェノチオン、クロルエトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルメホス、クロルピリホス(−メチル/−エチル)、クマホス、シアノフェンホス、シアノホス、クロルフェンビンホス、ジメトン−S−メチル、ジメトン−S−メチルスルホン、ジアリホス、ダイアジノン、ジクロフェンチオン、ジクロルボス/DDVP、ジクロトホス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジオキサベンゾホス、ダイスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、エトリムホス、ファムフール、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンスルホチオン、フェンチオン、フルピラゾホス、ホノホス、ホルモチオン、ホスメチラン、ホスチアゼート、ヘプテノホス、ヨードフェンホス、イプロベンホス、イサゾホス、イソフェンホス、o−サリチル酸イソプロピル、イソキサチオン、マラチオン、メカルバム、メタクリホス、メタミドホス、メチダチオン、メビンホス、モノクロトホス、ナレド、オメトエート、オキシジメトン−メチル、パラチオン(−メチル/−エチル)、フェントエート、ホレート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホスホカルブ、ホキシム、ピリミホス(−メチル/−エチル)、プロフェノホス、プロパホス、プロペタムホス、プロチオホス、プロトエート、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、ピリダチオン(pyridathion)、キナルホス、セブホス(sebufos)、スルホテップ、スルプロホス、テブピリムホス、テメホス、テルブホス、テトラクロルビンホス、チオメトン、トリアゾホス、トリクロルホン、バミドチオン、DDT、ニテンピラム、ニチアジン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニコチン、ベンスルタップ、カルタップ、スピノサド、カンフェクロル、クロルダン、エンドスルファン、ガンマ−HCH、HCH、ヘプタクロル、リンダン、メトキシクロル、アセトプロール、エチプロール、ピラフルプロール、ピリプロール、バニリプロール、アベルメクチン、エマメクチン、エマメクチン安息香酸塩、イベルメクチン、ミルベマイシン、ジオフェノラン、エポフェノナン、フェノキシカルブ、ハイドロプレン、キノプレン、メトプレン、ピリプロキシフェン、トリプレン、クロマフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、ビストリフルロン、クロルフルアズロン(chlofluazuron)、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、ペンフルロン(penfluron)、テフルベンズロン、トリフルムロン、ブプロフェジン、シロマジン、ジアフェンチウロン、アゾシクロチン、シヘキサチン、酸化フェンブタスズ、クロルフェナピル、ビナパクリル、ジノブトン、ジノカップ、DNOC、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリミジフェン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド、ヒドラメチルノン、ジコホル、ロテノン、アセキノシル、フルアクリピリム、バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)株、スピロジクロフェン、スピロメシフェン、スピロテトラマト、3−(2,5−ジメチルフェニル)−8−メトキシ−2−オキソ−1−アザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イルエチルカルボネート〔「炭酸,3−(2,5−ジメチルフェニル)−8−メトキシ−2−オキソ−1−アザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イルエチルエステル」としても知られている;CAS reg. no.:382608−10−8〕、フロニカミド、アミトラズ、プロパルギット、チオシクラムシュウ酸水素塩(thiocyclam hydrogen oxalate)、チオスルタップ−ナトリウム(thiosultap−sodium)、アザジラクチン、バシルス属各種(Bacillus spec.)、ベアウベリア属各種(Beauveria spec.)、コドレモン(codlemone)、メタリジウム属各種(Metarrhizium spec.)、パエシロマイセス属各種(Paecilomyces spec.)、チューリンギエンシン(thuringiensin)、ベルチシリウム属各種(Verticillium spec.)、リン化アルミニウム、臭化メチル、フッ化スルフリル、氷晶石(cryolite)、フロニカミド、ピメトロジン、クロフェンテジン、エトキサゾール、ヘキシチアゾクス、アミドフルメト、ベンクロチアズ、ベンゾキシメート、ビフェナゼート、ブロモプロピレート、ブプロフェジン、キノメチオネート、クロルジメホルム、クロロベンジレート、クロロピクリン、クロチアゾベン(clothiazoben)、シクロプレン(cycloprene)、シフルメトフェン、ジシクラニル、フェノキサクリム、フェントリファニル、フルベンジミン、フルフェネリム、フルテンジン(flutenzin)、ゴシプルレ(gossyplure)、ヒドラメチルノン、ジャポニルレ(japonilure)、メトキサジアゾン、石油、ピペロニルブトキシド、オレイン酸カリウム、ピリダリル、スルフルラミド、テトラジホン、テトラスル、トリアラセン及びベルブチン(verbutin)。
【0015】
2種類以上の殺虫活性物質
・ ベータ−シフルトリン及びイミダクロプリド;
を含んでいる本発明の組成物が好ましい。
【0016】
本発明による組成物は、水性アニオン性ポリマー分散液、水性カチオン性ポリマー分散液又は水性両性ポリマー分散液を含んでいる。
【0017】
適切なポリマー分散液は、好ましくは、脱塩水中の固体含有量に基づき0.025重量%の濃度において、1cmのセル中で535nmで測定して、2.0未満、好ましくは、1.0未満、特に好ましくは、0.1未満の吸光度を有する微粒子ポリマー分散液である。
【0018】
好ましいポリマー分散液は、乾燥後、0℃から120℃、好ましくは、25℃から90℃、特に好ましくは、40℃から80℃のガラス転移温度を有するポリマー分散液である。
【0019】
ポリマーのガラス転移温度は、以下のようにして測定した。DSCパン(室温、相対湿度0%で24時間乾燥)の中に置いて乾燥させたポリマー分散液を、内部冷却器(intracooler)を備えたPerkin−Elmer DSC−7示差走査熱量計を用いて、3回の加熱/冷却サイクル〔−100℃から+150℃まで;加熱速度 20K/分、冷却速度 320K/分;窒素フラッシング(ガス流量 30mL/分)〕で測定した。ガラス転移温度は、ガラス転移のレベルが半分のところで評価した。
【0020】
最低フィルム形成温度(MFT)は、DIN ISO 2115において指定されているThermostair(登録商標)温度勾配試験装置(Coesfeld Messtechnik GmbH)を用いて測定した。
【0021】
電解質に対するポリマー分散液の安定性を測定するために、水での希釈及びCaCl分散液(50mM)での希釈を行った後、吸収測定を同時に上記のように実施した。その測定は、希釈液を調製してから24時間後に行った。2つの吸収値の相対差(relative difference)(水対CaCl溶液)は、電解質に対する安定性の尺度である。電解質に対して優れた安定性を示すポリマー分散液は、20%未満、好ましくは、5%未満、特に好ましくは、3%未満の相対吸収差(relative absorption difference)を有する。
【0022】
好ましいポリマー分散液は、スチレン、置換されているスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドから選択される1種類以上の化合物を含んでいるモノマー混合物を重合させることによって得られるポリマー分散液である。
【0023】
使用可能なアクリル酸エステルの例は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル及びメタクリル酸ステアリルである。異性体アクリル酸ブチルの混合物が好ましい。
【0024】
任意に置換されていてもよいスチレンとC−C−アルキル(メタ)アクリル酸エステルを含んでいるモノマー混合物を重合させることによって得られるポリマー分散液が特に好ましい。
【0025】
使用するのが好ましい置換されているスチレンは、α−メチルスチレン、ビニルトルエン又はそれらの混合物である。
【0026】
好ましいカチオン性水性ポリマー分散液は、例えば、
(a) 20〜60重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン;
(b) 40〜80重量%の少なくとも1種類のC−C18−(メタ)アクリル酸エステル;
及び
(c) 0〜20重量%の(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種類の非イオン性エチレン性不飽和モノマー;
からなるモノマー混合物〔ここで、(a)+(b)+(c)の合計は100重量%である。〕を、
(d) 15〜35重量%の少なくとも1種類の第3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミド;
(e) 65〜85重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン;
及び、
(f) 0〜20重量%の(d)及び(e)とは異なる非イオン性又はカチオン性のエチレン性不飽和モノマー;
からなるモノマー混合物〔ここで、(d)+(e)+(f)の合計は100重量%である。〕を飽和C−C−カルボン酸の中で溶液重合させることによって得られる水性ポリマー分散液の存在下で、重合させることによって得られる。
【0027】
該カチオン性ポリマー分散液は、乳化剤として作用する水性ポリマー分散液の存在下でモノマー混合物(a)から(c)を乳化重合させることによって調製する。次に、該乳化剤は、モノマー混合物(d)から(f)の溶液重合〔ここで、該溶液重合は、飽和C−C−カルボン酸の中で実施し、適切な場合には、中間体を単離した後で、及び/又は、後処理をした後で、水で処理する。〕によって調製する。
【0028】
該乳化剤を調製するためには、群(d)のモノマーとして、式(I)
【0029】
【化1】

〔式中、
は、H又はメチルを表し;
は、直鎖C−C−アルキレンラジカルを表し;
及びRは、同一であるか又は異なっていて、C−C−アルキルを表し;
Xは、O又はNHを表す。〕
の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドを使用するのが好ましい。
【0030】
使用する群(d)のモノマーは、特に、式(I)〔式中、R及びRは、同一であるか又は異なっていて、メチル又はエチルを表す。〕に相当する化合物である。特に好ましい群(d)のモノマーは、式(I)〔式中、XはNHを表し、R及びRは、同一であるか又は異なっていて、メチル又はエチルを表す。〕の化合物である。使用するのが極めて特に好ましい群(d)のモノマーは、式(I)〔式中、RはH又はメチルを表し、Rはn−プロピルを表し、R及びRは、同一であるか又は異なっていて、メチルを表し、XはNHを表す。〕に相当するモノマーである。
【0031】
該乳化剤を調製するためには、群(e)のモノマーとして、任意に置換されていてもよい少なくとも1種類のスチレンを使用する。一連の置換されているスチレンから、α−メチルスチレン又はビニルトルエンを使用するのが好ましい。置換されていないスチレンを使用するのが特に好ましい。
【0032】
該乳化剤を調製するために、使用する群(f)のモノマーは、(d)及び(e)とは異なっている非イオン性又はカチオン性のエチレン性不飽和モノマーである。以下のものを使用するのが好ましい:ニトリル類、例えば、アクリロニトリル若しくはメタクリロニトリル、アミド類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド若しくはN−メチロールアクリルアミド、ビニル化合物、例えば、酢酸ビニル若しくはプロピオン酸ビニル、1〜18個のC原子を有するアルコールのアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル及びメタクリル酸ステアリル、又は、少なくとも1のエチレンオキシド単位と反応させることによって調製したアクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル若しくはジエチレングリコールモノメタクリレート。群(f)のカチオン性モノマーとして、ビニルピリジンを使用するのが特に好ましいか、又は、式(I)から誘導された4級化アンモニウム塩〔ここで、該式(I)から誘導された4級化アンモニウム塩は、例えば、式(I)の化合物を、例えば、塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸ジメチル又はエピクロロヒドリンなどの、慣習的な4級化試薬と反応させることによって得ることができる。〕、例えば、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、3−(アクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド又は3−(メチルアクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどを使用するのが特に好ましい。
【0033】
(d)から(f)で言及されているモノマーの重量部は、該乳化剤を調製するために使用されるモノマーの総量を示しており、その際、(d)+(e)+(f)の合計は100重量%となる。20から30重量%の(d)、70から80重量%の(e)及び0から10重量%の(f)を使用するのが好ましい。
【0034】
該乳化剤を調製するために実施される溶液重合は、溶媒としての飽和C−C−カルボン酸の中でのフリーラジカル重合として実施する。これに関連して、飽和C−C−モノカルボン酸のみではなく、飽和C−C−ジカルボン酸を使用することも可能であるが、飽和C−C−モノカルボン酸を使用するのが好ましい。使用する飽和C−C−カルボン酸は、それらカルボン酸に結合した
さらなる置換基(例えば、ヒドロキシル基)を任意に有していてもよい。該溶液重合は、好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、ヒドロキシプロピオン酸又はヒドロキシ酪酸の中で実施する。さまざまな飽和C−C−カルボン酸の混合物を使用することもできる。該溶液重合は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸又はヒドロキシプロピオン酸の中で実施するのが好ましく、特に好ましくは、酢酸の中で実施する。これに関連して、使用する飽和C−C−カルボン酸は、溶媒の総量に基づいて、好ましくは、20重量%未満の水しか含有せず、特に好ましくは、10重量%未満の水しか含有せず、極めて特に好ましくは、1重量%未満の水しか含有しない。該溶液重合は、別のカルボン酸を混合させることなく少なくとも99%強度の酢酸の中で実施するのが極めて特に好ましい。溶媒の量は、得られた乳化剤溶液の濃度が使用するモノマーの量から計算して20から70重量%となるように選択する。
【0035】
該溶液重合は、好ましくは、重合調節剤の存在下で実施する。
【0036】
適切な重合調節剤は、主として、硫黄化合物、例えば、チオグリコール酸又はメルカプタン、例えば、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン又はtert−ドデシルメルカプタンである。メルカプタンを使用するのが好ましく、特に好ましくは、C−C14−アルキルメルカプタンを使用する。
【0037】
該溶液重合は、フリーラジカル開始剤によって開始させる。使用するのが好ましい該溶液重合のためのフリーラジカル開始剤は、ペルオキソ化合物又はアゾ化合物、例えば、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム及びペルオキソ二硫酸アンモニウム、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)又は2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドなどである。アゾ化合物を使用するのが好ましく、特に好ましくは、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)又は2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのニトリルを使用する。
【0038】
該溶液重合を実施する場合、フリーラジカル開始剤及び重合調節剤の量は、重量平均分子量が5000〜100000g/molの乳化剤が得られるように選択する。分子量分布及び重量平均分子量の測定は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー、光散乱又は超遠心分離法などの、当業者には既知の方法によって実施することができる。
【0039】
溶液重合が完了した後、得られた乳化剤は、中間段階における単離によって単離するか、又は、直接に水で処理する。得られた乳化剤を直接に水で処理し、撹拌することによって、該乳化剤がその中で部分的に溶解し且つ部分的に分散している形態で存在している均質な液相を調製するのが好ましい。水の添加後における当該液相中の乳化剤の濃度は、好ましくは、2から20重量%、特に好ましくは、5から15重量%である。この液相は、カチオン性微粉化水性ポリマー分散液を調製するための乳化重合を実施するために直接に使用することができる。
【0040】
該カチオン性水性ポリマー分散液は、(a)から(c)からなるモノマー混合物を乳化重合させることによって調製し、ここで、第1段階で調製した水性ポリマー分散液は乳化剤として作用する。
【0041】
該カチオン性水性ポリマー分散液を調製するために、使用する群(a)のモノマーは、スチレン及び/又は置換されているスチレン、例えば、α−メチルスチレン又はビニルトルエンである。置換されていないスチレンを使用するのが特に好ましい。
【0042】
該カチオン性水性ポリマー分散液を調製するために、使用する群(b)のモノマーは、少なくとも1種類のC−C18−(メタ)アクリル酸エステルである。メタクリレート、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル及びメタクリル酸ステアリルを使用するのが好ましい。アクリル酸n−ブチルを使用するか又は10から90重量%のアクリル酸n−ブチルを含んでいる二成分混合物を使用するのが特に好ましい。アクリル酸n−ブチルとアクリル酸tert−ブチルの混合物を使用するのが極めて特に好ましい。
【0043】
該カチオン性水性ポリマー分散液を調製するために、使用する群(c)のモノマーは、(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種類の非イオン性エチレン性不飽和モノマーである。以下のものを使用するのが好ましい:ニトリル類、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル、アミド類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド又はN−メチロールアクリルアミド、ビニル化合物、例えば、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル、ジエン類、例えば、ブタジエン又はイソプレン、及び、アクリル酸又はメタクリル酸と少なくとも1のエチレンオキシド単位のエステル、例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はジエチレングリコールモノメタクリレート。
【0044】
該カチオン性水性ポリマー分散液の濃度は、好ましくは、10から40重量%、特に好ましくは、15から35重量%である。20%分散液の粘度は、23℃で測定して、一般に、3から30mPasである。20%分散液の平均粒径は、好ましくは、100nm未満であり、特に好ましくは、5から50nmである。その平均粒径は、例えば、レーザー相関分光法、超遠心分離法又は比濁法などの、当業者には既知の方法で測定することができる。
【0045】
本発明の特に好ましい実施形態では、主鎖としての親水コロイドの存在下でモノマー混合物を重合させることによって得られた水性ポリマー分散液を使用する。
【0046】
親水コロイドは、水中で溶解するか又は分散して膨潤することができ、それによって粘性の溶液、ゲル又は安定化系を生じさせる親水性巨大分子物質、例えば、寒天、カラギーナン、キサンタン、ゲラン、ガラクトマンナン、アラビアゴム、トラガカントゴム、カラヤゴム、カードラン、ベータ−グルカン、アルギネート、マンナン、キトサン、セルロース、タンパク質、ゼラチン、ペクチン、澱粉並びにそれらの変性された及び/又は分解された(例えば、加水分解された及び/又は酸化された)形態、並びに、合成水溶性ポリマーなどである。好ましい親水コロイドは、分解された澱粉である。
【0047】
そのようなグラフト化水性ポリマー分散液は、例えば、澱粉の存在下におけるエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始(radical−initiated)乳化共重合によって得ることが可能であり、ここで、該ラジカル開始乳化共重合は、
使用するエチレン性不飽和モノマーが
(a)30から60重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン
(b)60から30重量%の少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸C−C−アルキル
(c)0から10重量%の共重合可能な別のエチレン性不飽和モノマー
であり;
使用する澱粉(d)が、10から40重量%の分解された澱粉(分子量Mn=500から10000)であり〔ここで、(a)+(b)+(c)+(d)の合計は100%である。〕;
及び、
該ラジカル開始乳化重合に使用されるフリーラジカル開始剤が、グラフト活性を有する(graft−active)水溶性レドックス系である;
ことを特徴とする。
【0048】
適切なモノマー(a)から(c)は、該カチオン性ポリマー分散液について既に開示した化合物である。
【0049】
該グラフト化ポリマー分散液は、100nm未満の粒径、好ましくは、50から90nmの粒径を有する。
【0050】
本発明は、さらにまた、殺有害生物剤における本発明の水性ポリマー分散液の使用にも関する。これに関連して、本発明の水性ポリマー分散液は、本出願に記載されているようにして、及び、実施例によって実証されているようにして、使用する。
【0051】
本発明による組成物は、非イオン性及び/又はイオン性の分散剤を含んでいる。
【0052】
適切な非イオン性界面活性剤の例は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、直鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸とエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの反応生成物、さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの混合ポリマー、並びに、(メタ)アクリル酸のコポリマー、(メタ)アクリル酸エステル、さらに、任意にリン酸化されていてもよく且つ任意に塩基で中和されていてもよいアルキルエトキシレート及びアルキルアリールエトキシレート〔挙げることができる例は、ソルビトールエトキシレートである。〕である。
【0053】
使用するのが好ましいイオン性分散剤は、アニオン性分散剤、例えば、変性されたリグノスルホン酸ナトリウム、クラフトリグノスルホン酸ナトリウム(Kraft sodium lignosulphonate)、ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエチレンスルホネート、加工澱粉、ゼラチン、ゼラチン誘導体又はアニオン性界面活性剤(例えば、芳香族若しくは脂肪族のスルフェート及びスルホネート、又は、硫酸化された若しくはスルホン酸化された芳香族若しくは脂肪族のエトキシレート)などである。
【0054】
微細に分配されている活性物質粒子又は活性物質含有担体粒子の場合、アニオン性分散剤及び/又は非イオン性分散剤を使用するのが特に好ましい。
【0055】
本発明による組成物は、上記成分に加えて、
・ 増粘剤〔任意に、増粘活性化剤(thickening activator)を含んでいてもよい。〕;
・ 防腐剤;
・ 消泡剤;
・ 当該混合物のpHを標的化様式(targeted manner)で調節する量又は増粘剤を活性化する量の1種類以上の酸又は塩基;
及び、
・ 当該製剤の使用特性を最適化するためのさらなる成分;
を任意に含んでいてもよい。
【0056】
適切な増粘剤は、増粘剤として作用し且つ農薬組成物において該目的のために慣習的に使用可能な全ての物質である。好ましい物質は、カルボネート類、シリケート類及び酸化物などの無機粒子、並びに、さらに、尿素/ホルムアルデヒド縮合物などの有機物質である。挙げることができる例は、カオリン、ルチル、二酸化ケイ素、高分散シリカとして知られているもの、シリカゲル、さらに、天然シリケート及び合成シリケート、さらに、タルクである。さらに、使用可能な増粘剤は、合成増粘剤、例えば、ポリアクリレート増粘剤〔例えば、Lubrizol社(Cleveland,USA)製のCarbopol(登録商標)増粘剤及びPemulen(登録商標)増粘剤〕、生物学的増粘剤〔例えば、CP Kelco社(Atlanta,USA)製のKelzan(登録商標)S、キサンタンガム又はさらなる親水コロイド形態〕及び無機増粘剤〔例えば、層状シリケート、例えば、カオリン、モンモリロナイト及びラポナイト(laoponite)〕である。
【0057】
適している防腐剤は、このタイプの農薬組成物において該目的のために使用可能な全ての物質である。挙げることができる例は、Preventol(登録商標)(Lanxess AG)及びProxel(登録商標)(Arch Chemival,Inc.)である。
【0058】
適している消泡剤は、農薬組成物において該目的のために使用可能な全ての物質である。シリコーン油及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0059】
本発明による組成物の中の活性物質の量は、広い範囲内で変えることができる。濃厚化製剤(例えば、水性懸濁製剤)の場合、活性物質の量は、一般に、0.01から40重量%、好ましくは、0.1から20重量%、好ましくは、1から20重量%、特に好ましくは、1から10重量%である。
【0060】
ポリマーの量も広い範囲内で変えることができる。濃厚化製剤の場合、ポリマーの量は、一般に、1から50重量%、好ましくは、2から40重量%、特に好ましくは、6から20重量%である。これに関連して、特定されている量は、固体含有量に基づく含有量を示している。多くの場合、該ポリマーの、合成又は販売、及び、本発明による組成物を調製するための使用は、水性分散液の形態で成される。
【0061】
本発明による即時使用可能な組成物の中の活性物質の量は、広い範囲内で変えることができる。即時使用可能な製剤の場合、活性物質の量は、一般に、0.001から0.5重量%、好ましくは、0.01から0.1重量%である。
【0062】
本発明による即時使用可能な組成物の中のポリマーの量も、広い範囲内で変えることができる。即時使用可能な製剤の場合、ポリマーの量は、一般に、0.002から1重量%、好ましくは、0.004から0.8重量%、特に好ましくは、0.01から0.4重量%である。これに関連して、特定されている量は、固体含有量に基づく含有量を示している。多くの場合、該ポリマーの、販売及び本発明による組成物を調製するための使用は、水性分散液の形態で成される。
【0063】
本発明による懸濁製剤は、何れの場合にもその成分が互いに所望の比で混合されるような方法で調製する。成分を互いに混合させる順番は重要ではない。しかしながら、増粘剤を全ての最後に添加するのが一般的である。固体成分は、便宜上、微粉砕された状態で使用する。しかしながら、当該成分を混合させた後で得られた懸濁液を、まず粗粉砕に付し、次いで、微粉砕に付して、主要な粒径を例えば5μm未満とすることも可能である。
【0064】
本発明による調製方法を実施する場合、その温度は特定の範囲内で変えることができる。適切な温度は、10℃から60℃、好ましくは、15℃から40℃である。農薬製剤を調製するのに用いられる慣習的な混合装置及び粉砕装置は、本発明の調製方法を実施するのに適している。
【0065】
活性物質粒子を使用することも可能であるか、又は、例えば、噴霧乾燥プロセス、噴霧固化プロセス若しくは流動床プロセス(例えば、EP 1324661に記載されている)を介して得られた、活性物質を含んでいる粒子及び/若しくは顆粒を使用することも可能である。これらは、通常、粗粒子、即ち、例えば、平均粒径d50が5μm(水相中に分散させた後で、レーザー回折を用いて測定)より大きな粗粒子である。
【0066】
本発明による製剤は、有害な節足動物又は迷惑な節足動物、特に、クモ形類動物及び昆虫を駆除するために使用して、良好な結果を得ることができる。
【0067】
そのようなクモ形類動物としては、ダニ類〔例えば、ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ワクモ(Dermanyssus gallinae)、アシブトコナダニ(Acarus siro)〕及びマダニ類〔例えば、イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)、イクソデス・スカプラリス(Ixodes scapularis)、アルガス・レフレキスス(Argas reflexus)、オルニトドルス・モウバタ(Ornithodorus moubata)、リピセファルス(ボオフィルス)・ミクロプルス(Rhipicephalus(Boophilus)microplus)、アンブリオンマ・ヘブラエウム(Amblyomma hebraeum)、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)〕などを挙げることができる。
【0068】
吸血性昆虫としては、本質的に、蚊類〔例えば、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、キンイロヤブカ(Aedes vexans)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)、クレクス・タルサリス(Culex tarsalis)、アノフェレス・アルビマヌス(Anopheles albimanus)、ハマダラカ(Anopheles stephensi)、マンソニア・チチランス(Mansonia titillans)〕、チョウバエ類(moth gnats)〔例えば、フレボトムス・パパタシイ(Phlebotomus papatasii)〕、ヌカカ類(gnats)〔例えば、クリコイデス・フレンス(Culicoides furens)〕、ブユ類(buffalo gnats)〔例えば、シムリウム・ダムノスム(Simulium damnosum)〕、サシバエ類(stinging flies)〔例えば、サシバエ(Stomoxys calcitrans)〕、ツェツェバエ類〔例えば、ツェツェバエ(Glossina morsitans morsitans)〕、アブ類〔例えば、タバヌス・ニグロビタツス(Tabanus nigrovittatus)、ゴマフアブ(Haematopota pluvialis)、クリソプス・カエクチエンス(Chrysops caecutiens)〕、ハエ類〔例えば、イエバエ(Musca domestica)、ムスカ・アウツムナリス(Musca autumnalis)、ムスカ・ベツスチシマ(Musca vetustissima)、ヒメイエバエ(Fannia canicularis)〕、ニクバエ類〔例えば、サルコファガ・カルナリア(Sarcophaga carnaria)〕、蝿蛆症を引き起こすハエ〔例えば、ヒツジキンバエ(Lucilia cuprina)、クリソミイア・クロロピガ(Chrysomyia chloropyga)、ウシバエ(Hypoderma bovis)、キスジウシバエ(Hypoderma lineatum)、ヒトヒフバエ(Dermatobia hominis)、ヒツジバエ(Oestrus ovis)、ウマバエ(Gasterophilus intestinalis)、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)〕、半翅類〔例えば、トコジラミ(Cimex lectularius)、ベネズエラサシガメ(Rhodnius prolixus)、ブラジルサシガメ(Triatoma infestans)〕、シラミ類〔例えば、ペジクルス・フマニス(Pediculus humanis)、ブタジラミ(Haematopinus suis)、ダマリナ・オビス(Damalina ovis)〕、ノミ類〔例えば、ヒトノミ(Pulex irritans)、ケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis)、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ネコノミ(Ctenocephalides felis)〕及びスナノミ類〔スナノミ(Tunga penetrans)〕などを挙げることができる。
【0069】
刺咬昆虫(biting insect)としては、本質的に、ゴキブリ類〔例えば、チャバネゴキブリ(Blatella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、ブラッタ・オリエンタリス(Blatta orientalis)、チャオビゴキブリ(Supella longipalpa)〕、コウチュウ類〔例えば、グラナリアコクゾウムシ(Sitiophilus granarius)、チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、オビカツオブシムシ(Dermestes lardarius)、ジンサンシバンムシ(Stegobium paniceum)、アノビウム・プンクタツム(Anobium punctatum)、ヒロトルペス・バジュルス(Hylotrupes bajulus)〕、シロアリ類〔例えば、レチクリテルメス・ルシフグス(Reticulitermes lucifugus)〕、アリ類〔例えば、トビイロケアリ(Lasius niger)、イエヒメアリ(Monomorium pharaonis)〕、スズメバチ類〔例えば、セイヨウクロスズメバチ(Vespula germanica)〕及び蛾の幼虫〔例えば、チャマダラメイガ(Ephestia elutella)、スジマダラメイガ(Ephestia cautella)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)、ホフマノフィラ・プセウドスプレテラ(Hofmannophila pseudospretella)、コイガ(Tineola bisselliella)、イガ(Tinea pellionella)、ジュータンガ(Trichophaga tapetzella)〕などを挙げることができる。
【0070】
本発明による物質は、好ましくは、昆虫類、主に、ハエ目(Diptera)及び網翅目(Dictyoptera)の昆虫に対して使用する。
【0071】
本発明による組成物は、即時使用可能な形態で存在していない限り(例えば、水性懸濁製剤)、意図される用途のために、最初に水で希釈する。これに関連して、該組成物は、意図された施用量における活性物質含有量が充分な殺虫活性を保証するような程度まで希釈する。ここで、このような希釈によって、上記において示されている即時使用可能な組成物に相当する組成物が得られる。
【0072】
該希釈された散布液は、慣習的な任意の方法で、例えば、手動式噴霧器又は電気式噴霧器などによって、散布することができる。
【0073】
これに関連して、該活性物質は、一般に、1から1000mg/mの施用量で、好ましくは、1から500mg/mの施用量で、特に好ましくは、5から250mg/mの施用量で、及び、極めて特に好ましくは、10から250mg/mの濃度で、施用する。
【0074】
本発明による組成物は、好ましくは、当該ポリマーが、1.0mg/mから2000mg/m、好ましくは、5.0mg/mから500mg/m、特に好ましくは、5mg/mから200mg/m、特に好ましくは、10mg/mから200mg/mの堆積率(deposition rate)(固体基準)で適用されるような、希釈率及び施用量で、表面に施用する。
【0075】
本発明による組成物は、建造物の内部又は屋外の任意の表面、例えば、壁紙の表面、コンクリートの表面、下塗りの表面、切石の表面、材木(処理済み及び未処理)の表面、セラミック(釉が施されているもの及び施されていないもの)の表面、藁又は草葺の表面、煉瓦(未処理、石灰塗装されているもの、塗装されているもの)の表面、粘土鉱物(例えば、テラコッタ)の表面、白亜質表面、石灰質表面、石膏含有表面、セメント含有表面及びローム質表面などに施用することができる。
【0076】
本発明による調製物は、動物衛生の分野において、即ち、獣医学の分野において、主に、動物における寄生生物(特に、外部寄生生物)を防除するために、使用することもできる。外部寄生生物は、典型的には、及び、好ましくは、節足動物、特に、昆虫類、例えば、ハエ類〔刺咬性(stinging)及び舐性(licking)〕、寄生性のハエ幼虫、シラミ類、ハジラミ類(chewing lice)、ハジラミ類(bird lice)及びノミ類など、あるいは、ダニ類(acarids)、例えば、マダニ類(ticks)、例えば、マダニ類(hard ticks)若しくはヒメダニ類(soft ticks)、又は、ダニ類(mites)、例えば、疥癬ダニ類(scab mites)、ツツガムシ類(harvest mites)及びトリダニ(bird mites)などである。
【0077】
これらの寄生生物としては、以下のものを挙げることができる:
アノプルリダ目(Anoplurida)の、例えば、ハエマトピヌス属種(Haematopinus spp.)、リノグナツス属種(Linognathus spp.)、ペジクルス属種(Pediculus spp.)、フチルス属種(Phtirus spp.)、ソレノポテス属種(Solenopotes spp.); マロファギダ目(Mallophagida)並びにアンブリセリナ亜目(Amblycerina)及びイスクノセリナ亜目(Ischnocerina)の、例えば、トリメノポン属種(Trimenopon spp.)、メノポン属種(Menopon spp.)、トリノトン属種(Trinoton spp.)、ボビコラ属種(Bovicola spp.)、ウェルネキエラ属種(Werneckiella spp.)、レピケントロン属種(Lepikentron spp.)、ダマリナ属種(Damalina spp.)、トリコデクテス属種(Trichodectes spp.)、フェリコラ属種(Felicola spp.); ハエ目(Diptera)並びにネマトセリナ亜目(Nematocerina)及びブラキセリナ亜目(Brachycerina)の、例えば、アエデス属種(Aedes spp.)、アノフェレス属種(Anopheles spp.)、クレキス属種(Culex spp.)、シムリウム属種(Simulium spp.)、エウシムリウム属種(Eusimulium spp.)、フレボトムス属種(Phlebotomus spp.)、ルトゾミイヤ属種(Lutzomyia spp.)、クリコイデス属種(Culicoides spp.)、クリソプス属種(Chrysops spp.)、オダグミア属種(Odagmia spp.)、ウィルヘルミア属種(Wilhelmia spp.)、ヒボミトラ属種(Hybomitra spp.)、アチロツス属種(Atylotus spp.)、タバヌス属種(Tabanus spp.)、ハエマトポタ属種(Haematopota spp.)、フィリポミイア属種(Philipomyia spp.)、ブラウラ属種(Braula spp.)、ムスカ属種(Musca spp.)、ヒドロタエア属種(Hydrotaea spp.)、ストモキシス属種(Stomoxys spp.)、ハエマトビア属種(Haematobia spp.)、モレリア属種(Morellia spp.)、ファンニア属種(Fannia spp.)、グロシナ属種(Glossina spp.)、カリフォラ属種(Calliphora spp.)、ルシリア属種(Lucilia spp.)、クリソミイア属種(Chrysomyia spp.)、ウォルファールチア属種(Wohlfahrtia spp.)、サルコファガ属種(Sarcophaga spp.)、オエストルス属種(Oestrus spp.)、ヒポデルマ属種(Hypoderma spp.)、ガステロフィルス属種(Gasterophilus spp.)、ヒポボスカ属種(Hippobosca spp.)、リポプテナ属種(Lipoptena spp.)、メロファグス属種(Melophagus spp.)、リノエストルス属種(Rhinoestrus spp.)、チプラ属種(Tipula spp.); シフォナプテリダ目(Siphonapterida)の、例えば、プレキス属種(Pulex spp.)、クテノセファリデス属種(Ctenocephalides spp.)、ツンガ属種(Tunga spp.)、キセノプシラ属種(Xenopsylla spp.)、セラトフィルス属種(Ceratophyllus spp.); アカリ亜綱(Acari(Acarina))並びにメタスチグマタ目(Metastigmata)及びメソスチグマタ目(Mesostigmata)の、例えば、アルガス属種(Argas spp.)、オルニトドルス属種(Ornithodorus spp.)、オトビウス属種(Otobius spp.)、イクソデス属種(Ixodes spp.)、アンブリオンマ属種(Amblyomma spp.)、リピセファルス(ボオフィルス)属種(Rhipicephalus(Boophilus)spp.)、デルマセントル属種(Dermacentor spp.)、ハエモフィサリス属種(Haemophysalis spp.)、ヒアロンマ属種(Hyalomma spp.)、デルマニスス属種(Dermanyssus spp.)、リピセファルス属種(Rhipicephalus spp.)(マルチ宿主マダニ類の元の属)、オルニトニスス属種(Ornithonyssus spp.)、プネウモニスス属種(Pneumonyssus spp.)、ライリエチア属種(Raillietia spp.)、ステルノストマ属種(Sternostoma spp.)、バロア属種(Varroa spp.)、アカラピス属種(Acarapis spp.); アクチネジダ(プロスチグマタ)目(Actinedida(Prostigmata))及びアカリジダ(アスチグマタ)目(Acaridida(Astigmata))の、例えば、アカラピス属種(Acarapis spp.)、ケイレチエラ属種(Cheyletiella spp.)、オルニトケイレチア属種(Ornithocheyletia spp.)、ミオビア属種(Myobia spp.)、プソレルガテス属種(Psorergates spp.)、デモデキス属種(Demodex spp.)、トロムビクラ属種(Trombicula spp.)、リストロホルス属種(Listrophorus spp.)、アカルス属種(Acarus spp.)、チロファグス属種(Tyrophagus spp.)、カログリフス属種(Caloglyphus spp.)、ヒポデクテス属種(Hypodectes spp.)、プテロリクス属種(Pterolichus spp.)、プソロプテス属種(Psoroptes spp.)、コリオプテス属種(Chorioptes spp.)、オトデクテス属種(Otodectes spp.)、サルコプテス属種(Sarcoptes spp.)、ノトエドレス属種(Notoedres spp.)、クネミドコプテス属種(Knemidocoptes spp.)、シトジテス属種(Cytodites spp.)、ラミノシオプテス属種(Laminosioptes spp.)。
【0078】
本発明による調製物は、好ましくは、以下の寄生生物を防除するための獣医学において使用する:
ハエ類〔ハエ目(Diptera)〕、特に、ノサシバエ類〔例えば、ノサシバエ(Haematobia irritans)〕、サシバエ類(例えば、サシバエ(Stomoxys calcitrans)、家畜の顔にたかるハエ〔例えば、ムスカ・アウツムナリス(Musca autumnalis)〕、イエバエ類〔例えば、イエバエ(Musca domestica)〕、クロバエ類〔蝿蛆症を引き起こすハエ;クロバエ科(Calliphoridae)〕、蚊〔カ科(Culicidae)〕、ブユ類〔ブユ科(Simuliidae)〕、ヌカカ類〔ヌカカ属種(Culicoides spp.)〕、チョウバエ類〔サシチョウバエ属(Phlebotomus spp.);
シラミ類、特に、ハジラミ類〔ハジラミ(chewing lice);ハジラミ目(Mallophaga)〕、シラミ類(sucking lice)〔シラミ目(Anoplura)〕;
マダニ類(ticks)、特に、マダニ類(hard ticks)〔マダニ科(Ixodidae)〕、例えば、タネガタマダニ(Ixodes ricinus)、クロアシマダニ(Ixodes scapularis)、アンブリオンマ・アメリカヌム(Amblyomma americanum)、アンブリオンマ・ヘブラエウム(Amblyomma hebraeum)、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)、オウシマダニ(Rhipicephalus(Boophilus)microplus)、リピセファルス(ボオフィルス)・デコロラツス(Rhipicephalus(Boophilus)decoloratus)、デルマセントル・バリアビリス(Dermacentor variabilis)、デルマセントル・レチクラテス(Dermacentor reticulates)、ハエモフィサリス・レアチ(Haemophysalis leachi)、ヒアロンマ・アナトリクム(Hyalomma anatolicum); ヒメダニ類〔ヒメダニ科(Argasidae)〕、例えば、アルガス・レフレキスス(Argas reflexus)、オルニトドルス・モウバタ(Ornithodorus moubata);
ダニ類、特に、メソスチグマタ目のダニ類(mesostigmatous mites)、例えば、ワクモ(Dermanyssus gallinae)、トリサシダニ(Ornithonyssus sylviarum); プロスチグマタ目及びアスチグマタ目のダニ類(pro−and astigmatous mites)、例えば、イヌニキビダニ(Demodex canis)、ヨーロッパアキダニ(Neotrombicula autumnalis)、ミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)、ネコショウセンコウヒゼンダニ(Notoedres cati)、サルコプチス・カニス(Sarcoptes canis)、サルコプテス・ボビス(Sarcoptes bovis)、サルコプテス・オビス(Sarcoptes ovis)、サルコプテス・スイス(Sarcoptes suis)、ヒツジキュウセンヒゼンダニ(Psoroptes ovis)。
【0079】
もちろん、本発明による調製物の正確な作用範囲は、使用する活性物質に依存する。
【0080】
獣医学で使用するための調製物において、とりわけ、以下の活性物質が特に好ましい:
ネオニコチノイド系、例えば、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド;
ピレスロイド系、例えば、シフルトリン、ベータ−シフルトリン;
有機(チオ)リン酸エステル系、例えば、クマホス;
ピラゾール系、例えば、フェンピロキシメート又はトルフェンピラド;
ピロール系、例えば、クロルフェナピル(chlorofenapyr);及び、
カーバメート系殺虫剤、例えば、インドキサカルブ。
【0081】
本発明による調製物は、好ましくは、動物を攻撃する外部寄生性節足動物を防除するのに適している。そのような動物としては、農業用家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ロバ、ラクダ、スイギュウ、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、養殖魚などを挙げることができる。そのような動物としては、さらに、家庭内家畜(domestic animal)(ペットとも称される)、例えば、イヌ、ネコ、籠のトリ、水槽のサカナ及び実験動物として知られているもの(例えば、ハムスター、モルモット、ラット及びマウスなど)なども挙げることができる。好ましい家庭内家畜は、ネコ又はイヌである。
【0082】
さらにまた、好ましいのは、ウマおける使用である。
【0083】
特に好ましいのは、ヒツジ若しくはヤギにおける使用、又は、特に、ウシ若しくはブタにおける使用である。
【0084】
これらの寄生生物を防除することにより、上記動物の死亡を低減させること、並びに、生産力(肉、ミルク、羊毛、皮革、卵、蜂蜜などに関する生産力)を増大させること及び宿主動物の健康を強化することが意図されており、その結果、本発明の活性物質を使用することによって、より経済的で、より容易で且つより優れた動物飼育が可能となる。
【0085】
かくして、例えば、上記寄生生物による宿主の血液の摂取を防止するか又はできる限り少なくすることが望ましい(このことが当該寄生生物に当てはまる限りにおいて)。さらに、上記寄生生物を防除することは、感染性病原体の伝染を防止することにも寄与し得る。
【0086】
用語「防除する」は、動物衛生の分野に関して本明細書中で使用されている限りにおいて、本発明の調製物が、有害なレベルになるまで寄生生物が群がっている動物における当該寄生生物の存在を低減させることによって作用することを意味する。さらに正確に言えば、本明細書中で使用されている「防除する」は、本発明の調製物が、当該寄生生物を殺す(destroy)か、又は、その成長若しくは増殖を阻害することを意味する。
【0087】
一般に、本発明による調製物は、動物を処理するために使用する場合、直接的に使用することができる。それらは、好ましくは、当技術分野において既知の製薬上許容されるさらなる賦形剤及び/又は補助剤を含んでいてもよい医薬調製物として使用する。
【0088】
動物衛生の分野及び動物の飼育における本発明調製物の使用(=投与)は、自体公知の方法で、好ましくは、例えば、浸漬(dipping)又は薬浴(bathing)、スプレー、ポアオン及びスポットオン並びに洗浄などの形態での外用によって、実施する。この目的のために、該調製物は、例えば、ポアオン製剤として、スポットオン製剤として、シャンプーとして、又は、エーロゾル若しくは非加圧スプレー(例えば、ポンプ式スプレー及びアトマイザースプレー)などのスプレーとして、製剤することができる。
【0089】
動物衛生の分野で使用する場合、本発明による調製物は、適切な協力剤又はさらなる活性物質(例えば、殺ダニ剤又は殺虫剤)との活性物質組合せを含むことができる。
【実施例】
【0090】
調製実施例
実施例1
撹拌機、還流冷却器及び加熱ジャケットを備えたフラスコの中で、窒素下に、酸化的に変性されたジャガイモ澱粉124.5gを脱イオン水985gに分散させ、加温することにより溶解させる。1%強度の硫酸鉄(II)溶液42.7g及び3%強度の過酸化水素溶液116gを連続して添加し、得られた混合物を86℃で15分間撹拌する。15分間経過した後、以下の2種類の溶液(metering solution)を、86℃で、同時に、しかし、別々に、一定の注入速度で90分間以内で計量供給する:
(1)スチレン、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸tert−ブチルの混合物321g;
(2)3%強度の過酸化水素溶液93.7g。
【0091】
上記溶液を全て計量供給した後、86℃で撹拌を15分間継続し、次いで、t−ブチルヒドロペルオキシド2gを添加して、当該混合物を後反応(afterreact)させる。86℃でさらに60分間経過した後、その混合物を室温まで冷却し、四ナトリウム塩の形態にあるEDTAの10%強度溶液10gを添加し、10%強度の水酸化ナトリウム溶液13gを用いてpHを6.5に調節する。その混合物を100μmの濾布に通し、それによって、固体含有量24.0重量%の微粉化ディスパージョンが得られる。
【0092】
所望されるポリマーの特性(ガラス転移温度、最低フィルム形成温度)に応じて、スチレンとアクリル酸n−ブチルとアクリル酸tert−ブチルの間の比率を変えることができる。その適切な比率は、上記手順に従って、実験的に決定することができる。
【0093】
生物学的実施例
実施例A
上記調製実施例1に従って、ポリマー分散液(以下では、「PD−SACP」と称する)を調製した。モノマーの組成は、ポリマーが50℃のガラス転移温度及び44℃の最低フィルム形成温度を有するように調節した。希釈して0.025重量%とした分散液の濁度値は、E=0.02(535nm、1cmセル)であった。使用した希釈媒体は、脱塩水であった。しかしながら、CaClの50mM溶液を用いた比較例の測定でも、同じ吸光度値を示した。
【0094】
2種類の散布液(FL1及びFL2)を、以下のように調製した。
【0095】
【表1】

【0096】
これらの溶液を、1m当たり25mgのデルタメトリンの施用量で、コンクリートの表面上にファンノズル(型 SS 8003 E)を用いて噴霧した。従って、散布液の施用量は、35mL/mであった。コンクリートの表面を作るために、ドライモルタルWeber.mix 604(Saint−Gobain Weber GmbH)を製造業者の取扱説明書に従って水と混合させ、撹拌し、ペトリ皿(直径13.5cm、高さ2cm)に注ぎ込んで硬化させ、その後、少なくとも3週間の間貯蔵した。
【0097】
次いで、処理された表面を、35℃、相対大気湿度80%で貯蔵し、2週間の貯蔵後、試験した。
【0098】
当該目的のために、二酸化炭素で気絶させた蚊〔クレキス・クインクエファシアツス(Culex quinquefasciatus)〕を処理された表面上の中心に置き、ガーゼが付いているアルミニウム製のリングで覆った(蚊)。曝露時間は24時間であった。曝露中、温度は24−26℃とし、大気湿度は制御しなかった。0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後及び6時間後、ノックダウン効果を記録し、そして、24時間後に、死虫率を記録した。各試験は、3反復で構成され、その平均を計算した。結果は、表2に示してある。
【0099】
【表2】

【0100】
PD−SACPを含んでいる活性物質分散液がポリマー分散液を含んでいない活性物質分散液と比較して優れた結果を示しているということは驚くべきことである。
【0101】
実施例B
Responsar(登録商標)SC 025(Bayer CropScience AG; 25g/Lのベータ−シフルトリン含有)に基づいた一連の散布液FL3からFL8を以下のように調製した。
【0102】
【表3】

【0103】
これら製剤の生物学的効果について、実施例Aと同様にして、コンクリートスラブの表面上で試験した。ベータ−シフルトリンの施用量は、1m当たり25mgであった。
【0104】
結果は、表4に示してある。
【0105】
【表4】

【0106】
PD−SACPを添加することによってベータ−シフルトリンの生物学的効果が著しく増大されていることは、驚くべきことである。
【0107】
実施例C
以下のように、PD−SACPを含んでいるデルタメトリン懸濁製剤及びPD−SACPを含んでいないデルタメトリン懸濁製剤を、ビーズミル内で微粉砕することにより調製した。
【0108】
【表5】

【0109】
何れの製剤も(0.07重量%デルタメトリンになるまで)水で希釈し、実施例Aと同様にして(施用量 1m当たり25mgのデルタメトリン)、コンクリートスラブ(Weber.mix 604)の表面上に噴霧し、生物学的試験(35℃、相対大気湿度80%での1週間の貯蔵後)に付した。結果は、表6に示してある。
【0110】
【表6】

【0111】
本発明による製剤がPD−SACPを含んでいない懸濁製剤と比較して優れた結果を示していることが分かる。
【0112】
実施例D
以下のように、PD−SACPを含んでいるデルタメトリン懸濁製剤及びPD−SACPを含んでいないデルタメトリン懸濁製剤を、ビーズミル内で微粉砕することにより調製した。
【0113】
【表7】

【0114】
製剤(FL11)及び市販されている粒剤K−Othrine(登録商標) WG 250(Bayer CropScience AG; 25重量%のデルタメトリン含有)を用いて水中のデルタメトリン分散液(0.07重量%デルタメトリン)を調製し、実施例Aと同様にして(施用量 1m当たり25mgのデルタメトリン)、種々のコンクリートスラブ(Weber.mix 601又は604)の表面上に噴霧し、生物学的試験(35℃、相対大気湿度80%での2週間の貯蔵後)に付した。結果は、表8に示してある。
【0115】
【表8】

【0116】
K−Othrine(登録商標) WG 250はデルタメトリンが表面に長期間にわたって含浸されているように特に意図されているにもかかわらず、本発明による製剤がK−Othrine(登録商標) WG 250と比較して優れた結果を示していることが分かる。
【0117】
実施例E
種々のモノマー組成を使用し、調製実施例1と同様にして、ラジカル開始乳化重合でスチレン/(メタ)アクリレートコポリマーに基づく水性ポリマー分散液を調製した。このようにして、固体含有量24重量%で種々のガラス転移温度及び種々の最低フィルム形成温度を有するポリマー分散液PD1からPD6が得られた(表9を参照)。
【0118】
該ポリマー分散液の濁度は、固体含有量0.025重量%の水性分散液中で吸光度を測定することによって特徴付けた(1cmセル、535nm)。使用した希釈媒体は、脱塩水であった。しかしながら、CaClの50mM溶液を用いた比較例の測定でも、同じ吸光度値を示した。
【0119】
【表9】

【0120】
実施例Dの製剤FL11と同様にして、デルタメトリンと何れの場合にもポリマー分散液PD1からPD6のうちの1種類(PD−SACPの代替として)を含んでいる懸濁製剤を調製し、コンクリートスラブ(Weber.mix 604)の表面上における生物学的試験(該コンクリートスラブを、35℃、相対大気湿度80%で最大で2週間まで貯蔵; 24時間後に死虫率を評価)に付した。対照として、実施例Dの製剤(FL11)を含水量を調節することによりポリマー分散液なしで調製し、生物学的試験に付した。結果は、表10に示してある。
【0121】
【表10】

【0122】
本発明による製剤を用いて生物学的効果が改善されるということは、驚くべきことである。
【0123】
実施例F
商業用の製品Tempo(登録商標) Ultra SC(活性物質 ベータ−シフルトリン)を取扱説明書に記載されているように水で希釈した。その完成された散布液を、最大で0.5重量%までのPD−SACPで処理した。それらの完成された散布液を、1m当たり40mLの施用量で、木材厚板に施用した。このように処理された厚板に昆虫(Acheta)を群がらせ、その死虫率を求めた。測定の間、処理された厚板は屋外で貯蔵し、日光及び降雨にさらした。
【0124】
【表11】

【0125】
爬行昆虫(crawling insect)に対する生物学的効果は、降雨及び日光の影響下においてさえ、本発明の製剤によって改善される。
【0126】
実施例G
商業用の製品Temprid(登録商標)(活性物質 ベータ−シフルトリンとイミダクロプリドの混合物)を取扱説明書に記載されているように水で希釈した。その完成された散布液を、最大で0.5重量%までのPD−SACPで処理した。それらの完成された散布液を、1m当たり40mLの施用量で、施釉タイルに施用した。このように処理されたタイルに昆虫(Blattella)を群がらせ、その死虫率を求めた。測定の間、処理されたタイルは屋外で貯蔵し、日光及び降雨にさらした。
【0127】
【表12】

【0128】
活性物質混合物の生物学的活性は、本発明の製剤によって改善される。
【0129】
実施例H
ポリマーを添加した調製物のウシにおけるハエマトビア・イリタンス(Haematobia irritans)〔ノサシバエ(horn fly)〕に対する効果について、ポリマーを添加していない調製物との比較で、圃場試験で試験した。
【0130】
比較調製物「A」では、商業用の製品Poncho 600(登録商標)(種子処理用の製品; 48%のクロチアニジンを含有するSC)を水で希釈して活性物質含有量6%とした。この混合物を、体重1kg当たり10mgの活性物質(動物1匹当たり100mL)の薬量で、ウシの背中に外面的に施用した。
【0131】
調製物「B」では、商業用の製品Poncho 600(登録商標)を水で希釈して活性物質含有量6%とし、次いで、29.5mL/LのS.A.C.P.を添加した。この混合物を、体重1kg当たり10mgの活性物質(動物1匹当たり100mL)の薬量で、ウシの背中に外面的に施用した。ウシを3種の処理群に分けた:対照群:未処理(10匹の動物);群A :調製物Aによる処理(5匹の動物)、群B :調製物Bによる処理(5匹の動物)。
【0132】
投薬計画:第0日(午前10時から午後12時)、全ての動物の表面上に存在しているハエの数を数え、次いで、群A及び群Bは、即座に、上記のように処理した。同日中(午後3時から午後4時)及びその後の数日(表を参照されたい)に、ハエの数を再度数えた。
【0133】
試験期間中、第5日(ハエの数を数えた後)、第13日から第15日、第16日(ハエの数を数えた後)、第20日及び第21日に降雨があった。調製物Bの効果が、調製物Aと比較して、降雨の影響を受けにくいということが分かった。
【0134】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1種類の殺虫剤、
− 非イオン性分散剤及び/又はイオン性分散剤、
− 水性ポリマー分散液、
を含んでいる組成物であって、該ポリマー分散液が、主鎖としての親水コロイドの存在下において重合させることによって調製されることを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
− 少なくとも1種類の殺虫剤、
− 非イオン性分散剤及び/又はイオン性分散剤、
− 水性ポリマー分散液、
を含んでいる組成物であって、該水性ポリマー分散液が、第3級アミノ基を含んでいる少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドを構造成分として有している乳化剤を含んでいるカチオン性ポリマー分散液であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項3】
ポリマー分散液が、スチレン、置換されているスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドから選択される1種類以上の化合物を含んでいるモノマー混合物を重合させることによって得られる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマー分散液が、澱粉の存在下におけるエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始乳化共重合によって得ることが可能であることを特徴とし、
使用するエチレン性不飽和モノマーが
(a)30から60重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン
(b)60から30重量%の少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸C−C−アルキル
(c)0から10重量%の共重合可能な別のエチレン性不飽和モノマー
であり、
使用する澱粉(d)が、10から40重量%の分子量Mn=500から10000を有する分解された澱粉であり、(a)+(b)+(c)+(d)の合計は100%であり、
及び、該ラジカル開始乳化重合に使用されるフリーラジカル開始剤が、グラフト活性を有する水溶性レドックス系である
ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
水性ポリマー分散液が、
(a) 20〜60重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン、
(b) 40〜80重量%の少なくとも1種類のC−C18−(メタ)アクリル酸エステル及び
(c) 0〜20重量%の(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種類の非イオン性エチレン性不飽和モノマー;
からなり、(a)+(b)+(c)の合計は100重量%であるモノマー混合物の、
(d) 15〜35重量%の少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は第3級アミノ基含有する(メタ)アクリルアミド;
(e) 65〜85重量%の少なくとも1種類の任意に置換されていてもよいスチレン及び
(f) 0〜20重量%の(d)及び(e)とは異なる非イオン性又はカチオン性のエチレン性不飽和モノマー;
からなり、(d)+(e)+(f)の合計は100重量%であるモノマー混合物を飽和C−C−カルボン酸の中で溶液重合させることによって得られる水性ポリマー分散液の存在下における、
重合によって得られるカチオン性水性ポリマー分散液であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー分散液が、脱塩水中の0.025重量%の濃度において、波長535nm及び経路長1cmで、2.0未満の吸光度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー分散液が、乾燥後、0℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
有害生物を防除するための、請求項1から7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項9】
固体含有量に基づいて1.0mg/mから2000mg/mのポリマーの堆積率で表面を処理することによる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
殺有害生物剤中における
− 脱塩水中で固体含有量に基づき0.025重量%の濃度において、1cmのセル中で535nmで測定して、2.0未満の吸光度を有し且つ
− 乾燥後、0℃より高いガラス転移温度を有する
水性ポリマー分散液の使用。
【請求項11】
ポリマー分散液が、スチレン、置換されているスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドから選択される1種類以上の化合物を含んでいるモノマー混合物を重合させることによって得られる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
動物における外部寄生生物を防除するための薬物を調製するための、請求項1から7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項13】
殺有害生物剤の効力を延長する方法であって、施用する前に、該組成物にポリマー分散液が添加され、該ポリマー分散液は、脱塩水中の0.025重量%の濃度において、波長535nm及び経路長1cmで、2.0未満の吸光度を有することを特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2011−523944(P2011−523944A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509886(P2011−509886)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003546
【国際公開番号】WO2009/141109
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】