表面に微粒子膜を形成したセンサーチップ、その製造方法、および、アッセイ方法
【課題】多様な材料で分子間相互作用測定用のセンサーチップの表面を容易に修飾することを可能とする手段を提供する。
【解決手段】センサー基材(1)が備えている正または負に荷電した層(荷電層)(2)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)(3)を形成する。前記荷電層としては、イオン性ポリマーからなる層が好適である。前記荷電微粒子としては、イオン性ポリマー、顔料、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適である。
【解決手段】センサー基材(1)が備えている正または負に荷電した層(荷電層)(2)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)(3)を形成する。前記荷電層としては、イオン性ポリマーからなる層が好適である。前記荷電微粒子としては、イオン性ポリマー、顔料、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子等を基板上に捕捉し、それにより発せられるシグナルを検出するための、センサーチップ、その製造方法、および、アッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体分子や有機高分子などの被検出物質(アナライト)を、たとえば当該アナライトとの間に特異的な分子間相互作用が働く捕捉物質(リガンド)を用いて、チップ状などに作製されている測定部材(センサーチップ)の表面に捕捉し、それにより発せられる特有のシグナルを観測することにより、アナライトを直接的かつ定量的に検出する方法の研究開発が進められている。
【0003】
たとえば、RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)、SPR(Surface Plasmon Resonance:表面プラズモン共鳴)、SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光)、エバネッセント(全反射)、エバネッセント蛍光(全反射蛍光)、やQCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶発振子マイクロバランス)などを利用する方法も知られている。
【0004】
上記のような方法に用いられるセンサーは、一般的に、用途に応じた所定の状態の表面をあらかじめ形成しておき、その上にリガンドを固定化するようにする。たとえば、リガンドを固定化しやすくしたり、目的とする分子間相互作用を起こしやすくするために、センサーの表面が親水性または疎水性となるようあらかじめ修飾しておき、そのように修飾された表面にリガンドを固定化することが挙げられる。
【0005】
一方、荷電した高分子微粒子が、静電相互作用によって反対の電荷をもつ荷電固体表面で単粒子膜を形成することは公知である。たとえば、非特許文献1には、スチレン(ST)と水溶性のメタクリル酸エステルとのソープフリー乳化共重合によって効率よく合成することができ、その表面に比較的高濃度のスルホニウム基に由来するカチオン電荷を持っている、P(ST-co-MAPDS)微粒子のラテックスに、水中で負の表面電荷を示すガラス基板を浸漬すると、静電相互作用による吸着が起こり、超音波照射しても脱離しない比較的安定な単粒子膜が得られることが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記文献に記載の方法は、ガラス表面への静電気帯電に由来するものであり、経時の安定性を保持することはできない。上記文献、およびその他の文献で知られている該静電相互作用に用いる荷電は静電気、あるいは電場を用いているため経時で劣化し単粒子層の安定性は確保できないのでセンサーへの展開は難しい。上記文献に記載の微粒子は230nm前後の比較的粗大粒子のため移流集積原理や、沈降を利用しており、純粋な静電相互作用とは考えにくい。また、静電相互作用を用いてセンサー表面のハイブリッド化や表面改質、反応性の付与、リガンド固定化量の増大等が行えることに言及した公知文献はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】長井 勝利, 山口 敬三 "高分子コロイドの固体基板上での単粒子膜形成" 繊維学会誌, Vol. 60, No. 4, pp.P-90-P-95 (2004) .
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、センサーの表面を所望の状態に修飾するためには、たとえば、蒸着、スパッタリング等により所望の材質からなる層を形成したり、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等により所望の材質からなる被膜を形成したりしていた。
しかしながら、基板の材質と修飾材料の材質との関係によっては、例えば、厚みがセンサーの性能を劣化させたり、異種材料間の結合力の欠如が発生したりして基板を所望の材料で修飾することが不可能または困難であり、センサーの作製が制約を受ける場合があった。
【0009】
本発明は、多様な材料でセンサーチップの表面を容易に修飾することを可能とする手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、まず、センサーチップの表面に、イオン性ポリマーを塗布することなどによって、正または負の電荷を有するイオン性官能基を高密度で導入することができることを見いだした。その上で、上記イオン性官能基とは逆の電荷を有するイオン性微粒子(荷電微粒子)を静電相互作用により前記イオン性官能基と結合させることによって、当該イオン性微粒子でセンサーチップ表面を安定的に修飾することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
【0011】
[1] 正または負に荷電した層(荷電層)と、当該荷電層上に静電相互作用により固定化されている、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)で形成されている層(荷電微粒子層)とを備えていることを特徴とするセンサーチップ。
【0012】
[2] 前記荷電層がイオン性ポリマーからなる層である、[1]に記載のセンサーチップ。
【0013】
[3] 前記イオン性ポリマーがカチオン性官能基を側鎖に有するポリマーである、[2]に記載のセンサーチップ。
【0014】
[4] 前記荷電層の表面電荷密度が50〜200mC/m2の範囲にある、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0015】
[5] 前記荷電微粒子の体積平均粒径が1〜200nmの範囲である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0016】
[6] 前記荷電微粒子が、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0017】
[7] 前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、更に逆荷電の低分子または荷電微粒子が交互に積層した積層構造が形成されている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0018】
[8] 前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備える、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0019】
[9] さらに、前記金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備える、[8]に記載のセンサーチップ。
【0020】
[10] 前記生体関連物質がタンパク質または膜タンパク質を含む膜画分である、[9]に記載のセンサーチップ。
【0021】
[11] 前記センサーチップがRIfS用、SPR用、SPFS用、全反射用、全反射蛍光用、QCM用またはQCM−D用である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0022】
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載のセンサーチップの製造方法であって、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている正または負に荷電した層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【0023】
[13] [9]または[10]に記載のセンサーチップの製造方法であって、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【0024】
[14] [9]または[10]に記載のセンサーチップを使用するアッセイ方法であって、前記生体関連物質で形成されている層に、前記生体関連物質と相互作用する物質を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むことを特徴とする、アッセイ方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、センサーチップ表面が従来の方法では修飾しにくい材料で形成されている場合であっても、様々な材料で作製することのできる荷電微粒子により、比較的容易に修飾を行うことができるようになる。特に、本発明の方法では、荷電微粒子を均質かつ高密度で配列させることができるので、センサー表面の修飾状態を良好なものとし、性能を高めることができるようになる。このような本発明により、従来は作製することのできなかったセンサーを開発したり、あるいは従来よりもセンサーの生産性を向上させたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサーチップの模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るセンサーチップの模式図である。
【図3】センサーチップの製造方法の一例を示す模式図である。(a)イオン性ポリマー材料の塗布、(b)荷電層の形成、(c)荷電微粒子の接触、(d)荷電微粒子層の形成。
【図4】図4は、作製例1により作製したカチオン性修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図5】図5は、カチオン性修飾センサーチップ表面にSiO2微粒子からなる層を形成した実施例1の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図6】図6は、カチオン性修飾センサーチップ表面にSiO2微粒子からなる層が形成された実施例1の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図7】図7は、カチオン性修飾センサーチップ表面にアニオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した実施例2の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図8】図8は、カチオン性修飾センサーチップ表面にアニオン性ポリマー微粒子からなる層が形成された実施例2の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図9】図9は、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層を形成した実施例3の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図10】図10は、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層が形成された実施例3の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図11】図11は、アニオン性修飾センサーチップ表面にリポソームからなる層を形成した実施例4の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図12】図12は、アニオン性修飾センサーチップ表面に銅フタロシアニンからなる層を形成した実施例5の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図13】図13は、カチオン性修飾センサーチップ表面に銅フタロシアニンからなる層が形成された実施例5の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図14】図14は、アニオン性修飾センサーチップ表面にカチオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した実施例6の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図15】図15は、アニオン性修飾センサーチップ表面にカチオンポリマー微粒子からなる層が形成された実施例6の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図16】図16は、実施例7における、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層が形成される工程を通じてのRIfSの測定データである。
【図17】図17は、実施例7Aにおける、膜タンパク質を含む膜画分からなる層が表面に形成されたセンサーチップに、その膜タンパク質と相互作用する化合物を接触させた工程を通じてのRIfSの測定データである。
【図18】図18は、比較例7Bにおける、膜タンパク質を含まない膜画分からなる層が表面に形成されたセンサーチップに、その膜タンパク質と相互作用する化合物を接触させた工程を通じてのRIfSの測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において「センサーチップ」とは、その表面に固定化された所定の分子(リガンド)と、検出対象となる分子(アナライト)との間で分子間相互作用(静電相互作用、疎水相互作用など)が働いたときに現れるシグナルを観測することにより、その分子間相互作用をもたらしたアナライトを検出するないし定量的に測定する方法(以下「アナライト測定方法」と称する。)のみならず、センサーチップ表面に固定された所定の分子の環境変動(水和構造変化、溶質濃度の局部的変動、熱変動)による形状や性質の変化、あるいはセンサーチップ表面に吸着、反応等で固定された所定の分子の形状や性質の計測等様々な用途に用いられる、測定用の部材の総称である。
【0028】
(アナライト測定方法)
センサーチップが用いられるアナライト測定方法は、蛍光色素生成用の酵素、蛍光体、放射性同位体等のラベルによって発生する蛍光や放射線に基づくシグナルを観測する方法か、そのようなラベルを用いずにシグナルを観測する方法かは問われない。
【0029】
代表的なアナライト測定方法としては、RIfS、SPR、SPFS、全反射測定、全反射蛍光、QCM、QCM−Dなどが挙げられる。これらのアナライト測定方法はいずれも公知のものであるが、その概略は次の通りである。
【0030】
RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)は、センサー表面に捕捉された媒質の屈折率と存在量に応じて、光干渉の反射光強度が極小となる波長(ボトムピーク)のシフト量を観測することで、アナライトを分析することのできる方法である。
【0031】
SPR(Surface Plasmon Resonance:表面プラズモン共鳴法)は次のような方法である。誘電体部材上に形成された金属薄膜に測定光を角度スキャンしながら照射すると、金属薄膜での表面プラズモン共鳴により反射光の強度が減衰し(全反射減衰:ATR)、ある入射角度で反射光の強度は極小となる。ここで、アナライトがセンサー(金属薄膜)上に捕捉されると誘電率が変化し、それにより反射光の強度が極小となる入射角度が変化する。SPRでは、当該入射角度をシグナルとして測定することにより、アナライトを検出することができる。
【0032】
SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)は、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射し、金属薄膜を透過したエバネッセント波(局在場光)が金属薄膜の表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用して、 金属薄膜近傍に捕捉されたアナライトを標識している蛍光体を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。
【0033】
エバネッセント(全反射)は、可視光から赤外領域に透明な高屈折率媒質(プリズム)に試料を密着させ、全反射減衰(ATR)測定によりSPR同様に極小値を求め、アナライト捕捉による変化量で計測できる。SPRと違い、金属を用いないため電場増強度は大きくないが、センサー性能の安定性が高いという特徴がある。
【0034】
エバネッセント蛍光(全反射蛍光)は、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射し、金属薄膜を透過したエバネッセント波(局在場光)が数倍〜十倍程度に増強されることを利用して、金属薄膜近傍に捕捉されたアナライトを標識している蛍光体を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。
【0035】
QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶発振子マイクロバランス)は、水晶振動子の電極表面に物質(アナライト)が付着するとその質量に応じて共振周波数が変動する(下がる)性質を利用し、極めて微量な質量変化を計測することのできる方法である。
【0036】
QCM−Dは、上記QCMの機能に加えて、振幅の減衰(dissipation)からセンサーと溶液の間の粘弾性を測定することができる方法である。
ただし、アナライト作用測定方法は上に例示した方法に限定されるものではない。当業者であれば、本明細書の記載に基づき、本発明をその他のアナライト測定方法において展開することが可能である。
【0037】
−イオン性官能基修飾センサーチップ−
本発明の好適な実施形態においては、図1に示すように、各アナライト測定方法に応じたセンサーチップを構築するために用いられる基礎的な部材(以下、「センサー基材」と称する。)の上面に、正または負に荷電した層(以下、「荷電層」と称する。)が形成されている、つまり表面がイオン性官能基によって修飾されている、イオン性官能基修飾センサーチップを使用する。このイオン性官能基修飾センサーチップの上面にさらに、荷電微粒子からなる層を形成し、その後さらにアナライト測定方法に応じた必要な処理を行うことによって、最終的なセンサーチップを作製する。センサーチップの典型的な製造方法の一例を図3に示す。
【0038】
(イオン性官能基)
荷電層が有するイオン性官能基には、カチオン性官能基およびアニオン性官能基が包含される。センサーチップが、アニオン性の荷電微粒子と組み合わせて使用される場合は、上記イオン性官能基としてカチオン性官能基が選択され、逆にカチオン性の荷電微粒子と組み合わせて使用される場合は、上記イオン性官能基としてアニオン性官能基が選択される。カチオン性官能基およびアニオン性官能基は、それぞれ、いずれか1種単独であっても、2種以上が混合していてもよい。なお、荷電層中には、通常はカチオン性官能基またはアニオン性官能基のいずれか一方のみを存在させるようにするが、荷電微粒子を捕捉する上で支障がない荷電状態を生み出すことができる場合は、これら両方が存在していてもよい。また、荷電層(イオン性官能基)の荷電状態およびそれと組み合わせて使用される荷電微粒子の荷電状態は、それらが置かれている周囲のpHによっても変化する場合があるので、使用時にはそのpHを適切な範囲に調節してことが好ましい。
【0039】
・カチオン性官能基
カチオン性官能基としては、たとえば、グアニジノ基、−NH3+(アミノ基)、−NH2R+(モノアルキルアミノ基。Rはアルキル基、たとえばメチル基を表す。以下同様。)、−NHR2+(ジアルキルアミノ基)、−NR3+(第4級アンモニウム基)、イミノ基などが挙げられる。アミノ基、モノアルキルアミノ基、イミノ基等はpH依存性のカチオン性官能基である。表面電荷密度の観点からは、溶液のpHに依存せず常に正に帯電している、第4級アンモニウム基(カチオン)が好ましい。このようなカチオン性官能基は、分子内塩を形成していてもよいし、塩素、臭素などのハロゲン陰イオン、硫酸陰イオン、スルホン酸陰イオン、燐酸陰イオン、カルボン酸陰イオンなどと結合して対塩を形成していてもよい。
【0040】
・アニオン性官能基
アニオン性官能基としては、たとえば、−CO2-(カルボン酸基)、−SO3-(スルホン酸基)、−OSO3-(硫酸基)、−OPO4-(リン酸基)、−B(OH)2(ボロン酸)などが挙げられる。このようなアニオン性官能基は、分子内塩を形成していてもよいし、金属陽イオンまたは有機陽イオンと結合していてもよい。その金属陽イオンとしては、たとえば、Na+(ナトリウム陽イオン)、K+(カリウム陽イオン)、Ca2+(カルシウム陽イオン)などのアルカリ金属が挙げられ、有機陽イオンとしては、Me3N+H(トリメチルアンモニウム陽イオン)、Et3N+H(トリエチルアンモニウム陽イオン)、Me2N+H2(ジメチルアンモニウム陽イオン)などが挙げられる。
【0041】
なお、上記のイオン性官能基(A)は、主鎖となるポリマーに直接結合していてもよいし、他の結合基Rを介してポリマー主鎖に結合していてもよい(A−R−ポリマー主鎖)。結合基−R−としては、たとえば、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((C2H4O)n)などが挙げられる。
【0042】
(荷電層の形成)
最表面に荷電層を備えたセンサーチップは、たとえばアナライトを捕捉するためのリガンドを固定化する処理などが行われてない、無修飾のセンサーチップ(センサー基材)の表面に、以下に述べるような方法により荷電層を形成する工程(荷電層形成工程)を経ることで、作製することができる。
【0043】
「センサー基材」は、各種のアナライト測定方法に応じたものを用意すればよい。センサー基材がどのような構成を有するか、特に荷電層を形成する直前の状態がどのようなものかは公知であり、当業者であれば適宜選択することができるが、一般的には次の通りである。
【0044】
RIfS用のセンサー基材は、一般的には、基板(たとえばSi)と、その表層側に形成された光学薄膜(たとえばSiN)とにより構成される。
SPR用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)と、その表層側に形成された金属薄膜(たとえばAu)とにより構成される。
【0045】
SPFS用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)と、その表層側に形成された金属薄膜(たとえばAu)とにより構成され、必要に応じてその表層側にさらに、金属消光を防止するためのスペーサー層(誘電体層、たとえばSiO2)とを備えていてもよい。
【0046】
全反射用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)により構成される。
全反射蛍光用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)により構成される。
【0047】
QCM用およびQCM−D用のセンサー基材は、一般的には、ATカット水晶振動子と、その表層側に形成された電極(たとえばAu)とにより構成される。
荷電層の形成方法は特に限定されるものではないが、たとえば、表面電荷の強さ、耐久性の観点から、上述したようなイオン性官能基を側鎖に有するポリマー(イオン性ポリマー)からなる被膜をセンサーチップ表面に形成する方法が好適である。
【0048】
・イオン性ポリマー
イオン性官能基でセンサーチップを修飾する方法は特に限定されるものではないが、表面電荷の強さ、耐久性の観点からは、本質的にイオン性官能基を側鎖に有するポリマー(イオン性ポリマー)からなる被膜でセンサーチップ表面を被覆する、つまり荷電層として本質的にイオン性ポリマーからなる層を形成する方法が好適である。なお、「本質的にイオン性ポリマーからなる層」は、イオン性ポリマーのみからなる層であってもよいし(表面電荷密度を極力高める観点などからはそのようにすることが好ましい)、表面電荷密度に悪影響を及ぼさないなど発明の作用効果を阻害しない範囲において、イオン性ポリマー以外の物質を含有する層であってもよい。
【0049】
イオン性ポリマーは、あらかじめイオン性官能基を有するモノマーを重合して得られたものでもよいし、イオン性官能基を誘導または導入しうる他の官能基を有するモノマーを重合した後、当該官能基にイオン性官能基を誘導または導入することによって得られたものでもよい。たとえば、イオン性官能基を有さないポリマー(ポリメタクリル酸メチル等)からなる層を形成した後、プラズマ処理やUVおよびオゾン処理などの表面電荷を与える処理を施すことによって荷電させ(上記の場合はアニオン性になる)、荷電層に変換することもできる。
【0050】
センサー性能の観点からは、イオン性ポリマーは、成膜性が良く、水溶性でないものが適している。そのようなイオン性ポリマーの一つとして、炭化水素骨格を主鎖とする樹脂(炭化水素系樹脂)が挙げられる。炭化水素系樹脂は、ビニル基、アリル基、ジエンなどを有する、公知の各種のモノマーを用いて合成することができる。より具体的には、たとえば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;(メタ)アクリル酸、または蟻酸ビニル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、ビニルマレイン酸などのカルボン酸またはそのエステル類;スチレンスルホン酸、またはスチレンスルホン酸エステルなどのスルホン酸またはそのエステル類;この他、硫酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステルなども挙げられる。
【0051】
また、イオン性官能基が導入されたウレタン系樹脂、たとえばカチオン性水性ポリウレタン樹脂(たとえば「ハイドラン(登録商標)CP」シリーズ、DIC株式会社)などとして公知の物質も、用いることのできるイオン性ポリマーとして挙げられる。
【0052】
さらに、ポリアミノ酸由来の骨格を主鎖とするイオン性ポリマーも挙げられる。そのようなイオン性ポリマーとしては、たとえば、側鎖にカルボキシル基を有するポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸、ならびに側鎖にアミノ基を有するポリリジンが挙げられる。
【0053】
上記の各種のイオン性ポリマーは、公知の方法によって合成することができ、市販品として入手することもできる。イオン性ポリマーの化学的構造や性状(数平均分子量など)は、所望の荷電層を形成する上で適切なものを選択すればよい。
【0054】
(荷電層の形成方法)
最表面に荷電層を備えたセンサーチップは、無修飾または必要に応じて前処理が施されたセンサーチップの表面に、以下に述べるような方法により荷電層を形成する工程(荷電層形成工程)により作製することができる。
【0055】
「無修飾のセンサーチップ」は、分子間相互作用測定装置に応じたものを用意すればよい。RIfS用の無修飾のセンサーチップは、一般的には、基板(たとえばSi)と、その表層側に形成された光学薄膜(たとえばSiN)とにより構成される。
【0056】
たとえば、荷電層としてイオン性ポリマーからなる層を形成する場合、そのイオン性ポリマーがセンサーチップの表面に対して十分な付着性を有するものであれば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等、公知の手法を用いてセンサーチップの表面に塗布することができる。図3には、模式的な例として、ノズルからイオン性ポリマー材料をセンサー基材上に供給して塗布する様子を示した。ここで、センサー基材を支持する支持台を回転させることにより、いわゆるスピンコート法により塗布を行ってもよい。このようなコーティング方法を用いる場合は、イオン性ポリマーの種類に応じて、適切な溶媒に、適切な濃度(たとえば0.1〜10重量%)となるよう溶解させて塗布液を調製し、これを塗布するようにすればよい。一般的には、塗布液中のイオン性ポリマーの濃度は0.5〜10重量%、塗布膜厚としてRIfS用センサーチップでは5nm〜500nm、その他では5nm〜100nmの範囲で調整することにより、イオン性ポリマーからなる荷電層を形成することができる。
【0057】
また、必要であれば、センサーチップの表面にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)またはシランカップリング剤からなる膜を予め形成しておき、必要に応じた処理(たとえばシランカップリング剤が有するカルボキシル基を活性エステル化する処理)を行った上で、イオン性ポリマーを塗布ないし接触させて、それらの官能基間に結合を生じさせ、固定化する態様であってもよい。
【0058】
あるいは、重合の起点となる化合物を基板に直接、またはSAMやシランカップリング剤を介して固定化し、逐次反応で分子長を制御可能なラジカルリビング重合法を用いてin situでイオン性ポリマー膜を形成する(グラフト重合する)ようにしてもよい。
【0059】
なお、上記の態様において、あらかじめセンサーチップ上に固定化されるSAM、シランカップリング剤、重合の起点となる化合物などがイオン性官能基を有することがあったとしても、それらの物質の集合(膜ないし層)は本発明における「荷電層」の概念に該当するものではない。
【0060】
また、上述したような方法は、あらかじめイオン性官能基を有するイオン性ポリマーからなる層を形成する場合のみならず、事後的にイオン性官能基を導入するために、イオン性官能基を有さないポリマーからなる層を形成する場合にも適用可能である。
【0061】
・表面電荷密度
本実施形態のセンサーチップは、高い密度で(好ましくは最密充填で)荷電微粒子を吸着させるために、荷電層の表面電荷密度が少なくとも一定の水準を満たす程度に高いことが好ましい。センサーチップと荷電微粒子とを接触させる工程における条件下、より具体的には当該工程に用いられる荷電微粒子を含む媒質(水溶液)のpH条件下において、荷電層の表面電荷密度は、通常10〜500mC/m2、好ましくは50〜200mC/m2で調整することができる。このような表面荷電密度は、ゼータポテンシャル測定装置(例えば、ゼータ電位測定システム「ELSZ−2」(大塚電子株式会社製)で平板試料用セルを用いて測定できる。)など、公知の手段を用いて測定することができる。また、荷電微粒子の投影断面積あたりのイオン性官能基の数が少なくとも1となるような表面電荷密度であることが好ましい。荷電層を形成するために用いるイオン性ポリマーの一分子あたりに導入するイオン性官能基の数や、センサーチップ表面の単位体積あたりに塗布するイオン性ポリマーの量などの条件を調節することにより、表面電荷密度が所望の範囲に収まるようにすることができる。
【0062】
・表面粗さ
平滑な荷電微粒子層を形成するために、基礎となる荷電層の表面も平滑であることが理想的である。このような平滑さは、代表的には、表面粗さを指標とすることができる。荷電層(たとえばイオン性ポリマーからなる層)の表面の算術平均粗さ(Rz)は、1〜50nmであることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、1〜10nmであることが特に好ましい。このような表面粗さは、表面粗さ測定装置や原子間力顕微鏡(AFM)など、公知の手段を用いて測定することができる。
【0063】
−荷電微粒子修飾センサーチップ−
本明細書では、前記イオン性官能基修飾センサーチップおよび荷電微粒子を用いて、荷電層のさらに表層側に荷電微粒子からなる層(以下、「荷電微粒子層」と称する。)を備えるセンサーチップ(以下、「荷電微粒子修飾センサーチップ」と称する。)を使用する。
【0064】
・荷電微粒子
荷電微粒子としては、正または負に荷電した、通常1〜200nm、好ましくは1〜150nm程度のサイズを有する微粒子(ナノ粒子)を用いることが、静電相互作用を利用した強固な固定化のために重要である。なお、このような荷電微粒子のサイズは、動的光散乱法により測定される体積平均粒子径、または商品の粒径等の公称値(カタログ値)によって表すことができる。
【0065】
荷電微粒子の分散形態としては、結合力が強い自己乳化型の方が好ましいが、自己乳化型でなくても利用可能である。
用いることのできる荷電微粒子としては種々のものが知られており、後述するような適切な手段により表面改質、異種の材料被覆、あるいはリガンドを担持することができるものであれば特に限定されるものではないが、代表的には、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなるものを挙げることができる。
【0066】
荷電微粒子を形成するためのイオン性ポリマーとしては、荷電層を形成するための前述したようなイオン性ポリマーと同様のもの、すなわち、前述したようなカチオン性官能基またはアニオン性官能基を側鎖に有し、粒子状に凝集するものを用いることができる。イオン性のラテックス微粒子が好ましい。
【0067】
顔料としては、カラーインデックス等に記載されている、従来公知の顔料を用いることができる。
生体関連物質としては、脂質、リン脂質(たとえばリン脂質等からなる脂質膜を有するリポソーム)、タンパク質、コレステロール、細胞等の微粒子分散ができる物質およびそれらの混合物(たとえば膜タンパク質を含む膜画分)を用いることができる。
【0068】
SiO2またはTiO2からなる荷電微粒子としては、いわゆるコロイダルシリカ(たとえば「スノーテック(登録商標)」シリーズ、日産化学工業株式会社)や超微粒子酸化チタン(たとえば「STT−65C−S」、チタン工業株式会社)などとして知られている物質を用いることができる。これらの物質は、酸性では正電荷を、アルカリ性では負電荷を帯びる。TiO2は、アナターゼ型であっても、ルチル型であってもよい。
【0069】
金属からなる荷電微粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、あるいはこれらの金属の酸化物を含有する複合物等のナノ粒子を用いることができる。これらの金属からなる微粒子(典型的にはコロイド粒子)は、通常正または負に荷電している。たとえば、金、銀等のコロイド粒子は通常負に荷電している。
【0070】
半導体ナノ粒子としては、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、CdTe、ZnTeなどを用いることができる。
カーボンナノチューブ、フラーレンとしては、公知の分散方法によって分散させたものを用いることができる。そのような分散物も市販されているので利用可能である。
【0071】
以上の荷電微粒子は、いずれかの種類を単独で用いても、必要に応じて複数の種類を混合して用いてもよい。
更に、図2に示すように、前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、交互に正電荷と負電荷の微粒子または低分子からなる層を交互に組み合わせて、所望の厚みを有する交互積層構造を形成することもできる。
【0072】
たとえば、チップ基板の直上に設けられる荷電層がカチオン性である場合、その上にアニオン性微粒子からなる第一の荷電微粒子層を形成し、さらにその上にカチオン性微粒子からなる第二の荷電微粒子層を形成し、以下必要に応じて第三の荷電微粒子層(アニオン性)、第四の荷電微粒子層(カチオン性)・・・を形成させることができる。
【0073】
また、上記交互積層構造において、荷電微粒子に代えて正または負の電荷を有する低分子を使用する場合、2官能以上の多官能を有する分子であることが必要である。例えば、アニオン性低分子としては、トリメリット酸、クエン酸、コハク酸、テレフタル酸等が挙げられ、カチオン性低分子としては、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、ジアミノブタン、1,8-ジ(N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)オクタン等が挙げられ、ベタイン構造を有する低分子としてはアミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ安息香酸、各種アミノ酸を挙げることができる。
【0074】
(荷電微粒子層の形成方法)
荷電微粒子層を備えたセンサーチップ(荷電微粒子センサーチップ)は、前述したような方法、たとえばイオン性ポリマーを塗布することにより、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層を形成する工程(荷電微粒子層形成工程)を経ることで、作製することができる。
【0075】
荷電微粒子層を形成するためにアニオン性の荷電微粒子を用いる場合は、カチオン性の荷電層があらかじめ表面に形成されているセンサーチップを作製しておけばよく、逆にカチオン性の荷電微粒子を用いる場合は、アニオン性の荷電層があらかじめ表面に形成されているセンサーチップを作製しておけばよい。
【0076】
荷電層への荷電微粒子の接触は、荷電微粒子を含む媒質を荷電層に接触させることによって行うことが好適である。媒質としては、たとえばアナライト測定方法において汎用されている水を用いること、つまり荷電微粒子の水溶液を用いることが好適である。この場合の水は、純水の他、緩衝液(たとえばリン酸緩衝液生理食塩水)や、その他の必要な試薬等の水溶液であってもよい。荷電層に荷電微粒子を静電相互作用により固定化することが可能であれば、水以外の媒質を用いることも可能である。
【0077】
また、荷電微粒子を含む媒質の荷電層への接触のさせ方は特に限定されるものではなく、当該媒質が移動(流下)している状態において接触させてもよいし、静止した状態で接触させてもよい。図3には、ノズルからセンサー基材の荷電層上に荷電微粒子を含む媒質を供給し、荷電微粒子を荷電層との静電相互作用により固定化することで、荷電層上に荷電粒子層を形成する様子を示してある。前者の接触の態様としては、流路型の測定部材を構築し、あらかじめ荷電層が形成されているセンサーチップに対して、荷電微粒子を含む媒質をフローセルにより形成される密閉流路から導入することにより、上記センサーチップの表面に接触させることが好適である。このような態様は、次に述べる後者の態様に比べて、荷電微粒子による被覆を十分な水準に到達させるまでの時間が短くて済む。また、後者の接触の態様として、あらかじめ荷電層が形成されているセンサーチップを、容器内に収められた荷電微粒子を含む媒質に単に浸漬するようにしてもよいし、荷電層が形成されているセンサーチップが底面をなすウェル型の測定部材を構築し、そのウェルにリガンド担持荷電微粒子を含む媒質を注入するようにしてもよい。いずれの態様の場合も、荷電微粒子を含む媒質を接触させた後、必要に応じてセンサーチップを洗浄してもよい。また、ウェル型の構造において接触させる場合は、必要に応じて振盪、撹拌等を行ってもよい。
【0078】
前記媒質中のリガンド担持荷電微粒子の濃度、荷電層と前記媒質との接触時間(前記媒質の送液速度や送液時間)などの各種条件は特に限定されるものではなく、目的とする状態の荷電微粒子層が形成されるような条件を採用すればよい。たとえば、センサーチップの表面が荷電微粒子で十分に(最密充填で)被覆されるようにするためには、前記媒質中の荷電微粒子の濃度を十分に高くする、および/または荷電層と前記媒質との接触時間を十分に長くすることが好ましい。一方、前記媒質中の荷電微粒子の濃度を調整することにより、センサーチップの固定化させる荷電微粒子の密度を調整することも可能である。前記媒質中の荷電微粒子の濃度は、たとえば0.01〜1wt%の範囲で調整することが可能である。
【0079】
荷電微粒子層形成工程が、前述したように、密閉流路に荷電微粒子を含む媒質を送液することでセンサーチップと接触させるような態様で行われる場合、適切な処理時間を判断するために、当該処理工程の開始前からシグナルの測定を始め、以後連続的にリアルタイムで測定し続けてもよい。処理時間の経過と共に測定値が変化する(RIfSにおいては通常ボトムピーク波長が長波長側に移る)様子の観測を通じて、荷電層に荷電微粒子が結合し、荷電微粒子層が形成されていく状態を随時確認することができる。たとえば、測定値が変化しなくなる、ないし変動が十分に小さくなることにより、荷電微粒子の結合、すなわち荷電微粒子層の形成が飽和(最密充填)に達したものと判断し、荷電微粒子層形成工程を終了させることができる。また、測定値の変化が所定の水準に達した段階で、荷電微粒子層の形成が所望の水準に達したと判断して、その段階で荷電微粒子層形成工程を終了させることも可能である。
【0080】
なお、荷電層上に固定化された荷電微粒子層上にさらなる荷電微粒子または低分子からなる層を積層させるときは、上述した荷電微粒子層形成工程と同様の工程を所定の回数繰り返せばよい。すなわち、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子または低分子からなる層に、新たに積層させるための荷電微粒子または低分子を接触させて、静電相互作用によりそれらの物質からなる層を形成することができる。
【0081】
また、後述するような本発明の好ましい実施形態において、金コロイドからなる層の上面に生体関連物質からなる層を形成する場合も、上述した荷電微粒子層形成工程と同様の工程を行えばよい。すなわち、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成することができる。なお、この工程において、生体関連物質は金コロイドからなる層に必ずしも静電相互作用のみによって結合しているとは限らず、その他の相互作用の働きにより結合していることも排除されるものではない。
【0082】
−用途−
作製された荷電微粒子修飾センサーチップの用途は、特に限定されるものではない。換言すれば、荷電微粒子の選択によりセンサーチップの表面を様々な状態に修飾することができ、それにより荷電微粒子修飾センサーチップの多様な用途が生み出される。
【0083】
たとえば、あらかじめ荷電微粒子の表面に撥水性(疎水性)または撥油性(親水性)を賦与しうる官能基を導入しておき、その荷電微粒子を用いてセンサーチップの表面を修飾することにより、センサーチップ表面の撥水性または撥油性を向上させることが可能となる。
【0084】
また、イオン性ポリマー、SiO2、TiO2などからなる荷電微粒子層を形成した場合、その表面にあらかじめ反応性の官能基(たとえば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、水酸基(シラノール構造、チタノール構造))を導入しておくことにより、その官能基と反応して化学的に結合しうる反応基を有する化合物を当該荷電微粒子に結合させることができる。したがって、そのような荷電微粒子層を備えたセンサーチップは、前記反応を利用して形成される、特定の物質からなる層をさらに備えたセンサーチップの作製用部材として利用したり、前記反応を起こす特定の物質を計測するために利用することができる。
【0085】
センサーチップの基本的な使用の態様として、荷電微粒子層を形成する物質と相互作用により吸着する物質を検出することができる。たとえば、荷電微粒子層として顔料からなる層をセンサーチップの表面に形成することにより、その顔料への活性剤やタンパク質等の吸着を計測することができる。同様に、荷電微粒子層としてカーボンナノチューブやフラーレンなどの炭素材料からなる層を形成することにより、それらの炭素材料に吸着する物質を検出することができる。
【0086】
一方、荷電微粒子として金属からなる粒子を用いることにより、表面が金属で被覆されたセンサーチップを作製することができる。その金属は測定系に応じたものを選択することができ、たとえば局在プラズモンを利用する測定系(SPFS等)用のセンサーチップとする場合は、金ナノ粒子を用いることにより金薄膜を形成してもよい。また、荷電微粒子として触媒活性を有する金属イオンを用いた場合は、センサーチップの表面において所定の反応を促進することができるようになる。
【0087】
荷電微粒子として半導体ナノ粒子を用いることにより、表面が半導体ナノ粒子で被覆されたセンサーチップを作製することができる。半導体ナノ粒子は、所定の波長の励起光を照射することにより所定の波長の蛍光を発するので、そのような蛍光を利用する測定系用のセンサーチップとすることができる。
【0088】
さらに、センサーチップの表面に形成された荷電微粒子層の形態の変化を分析することも可能となる。
たとえば、荷電微粒子層として生体関連物質の一種であるリポソームからなる層をセンサーチップの表面に形成することにより、そのリポソームからの薬剤が放出されることに伴う形状の変化(リポソームからなる層の厚さの変化)を測定することができる。あわせて、そのリポソームとタンパク質や細胞膜との相互作用(吸着を)計測することもできる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態の一つとして、荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備えるセンサーチップが挙げられる。この金コロイドからなる層は、各種の生体関連物質を接触させると、それを吸着して固定化することができる。したがって、本発明のさらなる実施形態として、前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備え、さらに、その金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備えるセンサーチップが挙げられる。この実施形態における生体関連物質としては、たとえば、タンパク質または膜タンパク質を含む膜画分が挙げられる。
【0090】
このような生体関連物質で形成されている層を表面に備えたセンサーチップは、その生体関連物質と相互作用する物質を用いた分析に利用することができる。すなわち、本発明の好ましい実施形態の一つとして、生体関連物質(たとえばタンパク質)で形成されている層に、その生体関連物質と相互作用する物質(たとえば前記タンパク質を抗原として認識する抗体、あるいは前記タンパク質を受容体とする化合物)を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むアッセイ方法が挙げられる。このようなアッセイ方法により、前記物質の存在、あるいは膜画分中の膜タンパク質の存在を定量的または定性的に検出することができる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例において、RIfS方式の分子間相互作用測定装置としては「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタオプト株式会社)を使用し、無修飾のセンサーチップおよびフローセルとしては、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(基板:シリコンウェハ、光学薄膜:窒化シリコン、無修飾)およびフローセル(PDMS製、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mmの溝及びこの溝の両末端にそれぞれ直径1mmの貫通口を有する。)を使用し、シリンジポンプとしては「Econoflo Syringe Pump 70−2205」(Harvard Apparatus製)を使用した。
【0092】
[作製例1]カチオン性修飾センサーチップ
カチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」(DIC株式会社製、体積平均粒径30nm)を水で希釈し、濃度1wt%の塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコーター(回転数:3000rpm)を用いて、上記RIfS用センサー基板の表面に塗布した。塗布後140℃で1分間乾燥して、上記カチオン性ポリウレタンからなる被膜が形成された、カチオン性修飾センサーチップを作製した。このカチオン性修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図4に示す。表面の起伏は最大で約4nmであった。
【0093】
[実施例1]SiO2微粒子修飾センサーチップ
作製例1で作製したカチオン性修飾センサーチップをRIfS測定装置MI−Affinity(コニカミノルタオプト社製)にセットし、RIfS用フローセルを積載して密閉流路を形成し、シリンジポンプにより、液体を測定装置外部から密閉流路に送液してセンサーチップ表面に接触させることが可能な状態にした。
【0094】
SiO2微粒子「スノーテックスXS」(日産化学社工業社製、体積平均粒径5nm)を0.5重量%の濃度で含有する水溶液を、前記シリンジポンプにより20μL/minの送液速度で75分間(計1500μL)、測定部材の密閉流路に導入し、イオン性(カチオン)被膜センサーチップの表面に接触させて、当該SiO2微粒子からなる層を形成した。
【0095】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図5に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図6に示す。図5のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図6のAFMからRIfSセンサーチップの表面がSiO2の単粒子層で被覆されていることが分かる。
【0096】
本被膜は乾燥させても安定で、再度流路中水を流しても安定であることが確認できた。 RIfS表面のSiNでは反応基であるSiO2の存在量は限られているが、このチップは全域に渡ってSiO2が存在し、シランカップリングを介した反応性に優れたチップであることが分かる。
【0097】
[実施例2]アニオン性ポリマー微粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、アニオン性ポリマー微粒子「ハイドランAP 2010」(DIC株式会社製)を0.5重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該アニオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した。
【0098】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図7に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図8に示す。図7のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図8から最密充填に近い状態で微粒子が固着されている様が確認できた。成膜温度の低い、AP2010ポリマー微粒子が静電相互作用で基板に衝突してできたクレーターのような模様も確認できた。表面にはカルボキシル基も多く存在するため反応基を多く有するセンサーチップとして利用できる。
【0099】
[実施例3]金ナノ粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、金ナノ粒子「Auコロイド溶液−SC 10nm」(田中貴金属製)を0.01重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該金ナノ粒子からなる層を形成した。
【0100】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図9に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図10に示す。図9のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図10から最密充填に近い状態で微粒子が固着されている様が確認できた。従来RIfSセンサーチップ上への金被膜形成はセンサー性能を劣化させるため実用化されていないが、単粒子層で形成することで吸収が少なくRIfS測定にも問題ないことが確認された。金被覆を行うことでRIfSにおいて局在プラズモンの効果が加わったハイブリッド計測の可能性が開かれ、安定な金−チオール系の反応をRIfSでも利用可能になった。
【0101】
[実施例4]リポソーム修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、リポソーム(体積平均粒径150nm)を0.5重量%の濃度で含有する分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該リポソームからなる層を形成した。上記工程を通してのRIfSの測定データを図11に示す。このようなリポソームからなる層を有するセンサーチップは、リポソームの薬剤放出に伴う形状変化、タンパク質等の細胞膜への吸着などの計測のために利用可能である。
【0102】
[実施例5]顔料修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、銅フタロシアニン(体積平均粒径140nm)を0.5重量%の濃度で含有する分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該銅フタロシアニンからなる層を形成した。上記工程を通してのRIfSの測定データを図12に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図13に示す。このような銅フタロシアニン(顔料)からなる層を有するセンサーチップは、顔料表面への活性剤、タンパク質等の吸着などの計測のために利用可能である。
【0103】
[作製例2]アニオン性修飾センサーチップ
カチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」(DIC株式会社製、体積平均粒径30nm)に代えてアニオン性ポリマー微粒子「ハイドランAP 2010」(DIC株式会社製)を用いたこと以外は、作製例1と同様の操作を行い、当該アニオン性ポリマーからなる被膜が形成された、アニオン性修飾センサーチップを作製した。
【0104】
[実施例6]カチオン性ポリマー微粒子修飾センサーチップ
作製例1で作製したカチオン性修飾センサーチップに代えて作製例2で作製したアニオン性修飾センサーチップを用い、また、SiO2に代えてカチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」を水で希釈し、濃度0.5wt%の濃度で含有する水溶液を用い5回注入を行った以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該カチオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した。
【0105】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図14に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図15に示す。 「CP−7610」の成膜温度は0℃であるため粒子の存在は見えず、一部溶けている構造が確認できた。
【0106】
[実施例7]金ナノ粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、金ナノ粒子「Auコロイド溶液−SC 15nm」(田中貴金属製)を0.0070重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該金ナノ粒子からなる層を形成した。この工程を通してのRIfSの測定データを図16に示す。
【0107】
[実施例7A]
(目的タンパク質を発現させた膜画分を固定化した基板の作製)
実施例7で作製した金ナノ粒子修飾センサーチップに、PDMS製のウェル型セルを密着させて固定化槽を形成し、そこに目的タンパク質を発現させた細胞の膜画分を100μg/mLの濃度で含む溶液を入れて前記センサーチップの表面に接触させ、室温で1時間反応させた。反応後、センサーチップをPBS(10×PBS(−)バッファ(pH7.4;和光純薬工業(株):コードNo.314−90185)を、超純水を用いて10倍希釈して調製したバッファ)にて洗浄した。
【0108】
(相互作用の測定)
前記工程で得られたセンサーチップをRIfS測定装置MI−Affinity(コニカミノルタオプト社製)に設置し、RIfS用フローセルを積載して密閉流路を形成し、シリンジポンプにより、液体を測定装置外部から密閉流路に送液してセンサーチップ表面に接触させることが可能な状態にした。
【0109】
PBSを20μL/minの流量で送液し、そこに前記膜タンパク質と相互作用する化合物をインジェクトして、相互作用に伴う、分光反射率が最小になる波長の変化(Δλ)を追跡した。この工程を通してのRIfSの測定データを図17に示す。この図に示すように、前記化合物をインジェクトした後にΔλが増加しており、基板上に固定化した膜タンパク質と前記化合物との相互作用が確認できた。
【0110】
[比較例7B]
(目的タンパク質を発現させていない膜画分を固定化した基板の作製)
固定化に用いた膜画分を、目的タンパク質を発現させていない細胞の膜画分に代えた以外は、実施例7Aと同様にしてセンサーチップを作製した。
【0111】
(相互作用の測定)
実施例7Aと同様の準備をした後、PBSを20μL/minの流量で送液し、そこに膜タンパク質と相互作用する化合物をインジェクトして、相互作用に伴う、分光反射率が最小になる波長の変化(Δλ)を追跡した。この工程を通してのRIfSの測定データを図18に示す。この図に示すように、前記化合物をインジェクトした後、Δλは増加しておらず、目的タンパク質が存在していない場合は前記化合物との相互作用が見られないことが確認された。
【符号の説明】
【0112】
1:センサー基材
2:荷電層
3:荷電微粒子層
4:交互積層構造
10:支持台
11:ノズル
21:イオン性ポリマー材料
31:荷電微粒子
100:センサーチップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子等を基板上に捕捉し、それにより発せられるシグナルを検出するための、センサーチップ、その製造方法、および、アッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体分子や有機高分子などの被検出物質(アナライト)を、たとえば当該アナライトとの間に特異的な分子間相互作用が働く捕捉物質(リガンド)を用いて、チップ状などに作製されている測定部材(センサーチップ)の表面に捕捉し、それにより発せられる特有のシグナルを観測することにより、アナライトを直接的かつ定量的に検出する方法の研究開発が進められている。
【0003】
たとえば、RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)、SPR(Surface Plasmon Resonance:表面プラズモン共鳴)、SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光)、エバネッセント(全反射)、エバネッセント蛍光(全反射蛍光)、やQCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶発振子マイクロバランス)などを利用する方法も知られている。
【0004】
上記のような方法に用いられるセンサーは、一般的に、用途に応じた所定の状態の表面をあらかじめ形成しておき、その上にリガンドを固定化するようにする。たとえば、リガンドを固定化しやすくしたり、目的とする分子間相互作用を起こしやすくするために、センサーの表面が親水性または疎水性となるようあらかじめ修飾しておき、そのように修飾された表面にリガンドを固定化することが挙げられる。
【0005】
一方、荷電した高分子微粒子が、静電相互作用によって反対の電荷をもつ荷電固体表面で単粒子膜を形成することは公知である。たとえば、非特許文献1には、スチレン(ST)と水溶性のメタクリル酸エステルとのソープフリー乳化共重合によって効率よく合成することができ、その表面に比較的高濃度のスルホニウム基に由来するカチオン電荷を持っている、P(ST-co-MAPDS)微粒子のラテックスに、水中で負の表面電荷を示すガラス基板を浸漬すると、静電相互作用による吸着が起こり、超音波照射しても脱離しない比較的安定な単粒子膜が得られることが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記文献に記載の方法は、ガラス表面への静電気帯電に由来するものであり、経時の安定性を保持することはできない。上記文献、およびその他の文献で知られている該静電相互作用に用いる荷電は静電気、あるいは電場を用いているため経時で劣化し単粒子層の安定性は確保できないのでセンサーへの展開は難しい。上記文献に記載の微粒子は230nm前後の比較的粗大粒子のため移流集積原理や、沈降を利用しており、純粋な静電相互作用とは考えにくい。また、静電相互作用を用いてセンサー表面のハイブリッド化や表面改質、反応性の付与、リガンド固定化量の増大等が行えることに言及した公知文献はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】長井 勝利, 山口 敬三 "高分子コロイドの固体基板上での単粒子膜形成" 繊維学会誌, Vol. 60, No. 4, pp.P-90-P-95 (2004) .
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、センサーの表面を所望の状態に修飾するためには、たとえば、蒸着、スパッタリング等により所望の材質からなる層を形成したり、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等により所望の材質からなる被膜を形成したりしていた。
しかしながら、基板の材質と修飾材料の材質との関係によっては、例えば、厚みがセンサーの性能を劣化させたり、異種材料間の結合力の欠如が発生したりして基板を所望の材料で修飾することが不可能または困難であり、センサーの作製が制約を受ける場合があった。
【0009】
本発明は、多様な材料でセンサーチップの表面を容易に修飾することを可能とする手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、まず、センサーチップの表面に、イオン性ポリマーを塗布することなどによって、正または負の電荷を有するイオン性官能基を高密度で導入することができることを見いだした。その上で、上記イオン性官能基とは逆の電荷を有するイオン性微粒子(荷電微粒子)を静電相互作用により前記イオン性官能基と結合させることによって、当該イオン性微粒子でセンサーチップ表面を安定的に修飾することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
【0011】
[1] 正または負に荷電した層(荷電層)と、当該荷電層上に静電相互作用により固定化されている、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)で形成されている層(荷電微粒子層)とを備えていることを特徴とするセンサーチップ。
【0012】
[2] 前記荷電層がイオン性ポリマーからなる層である、[1]に記載のセンサーチップ。
【0013】
[3] 前記イオン性ポリマーがカチオン性官能基を側鎖に有するポリマーである、[2]に記載のセンサーチップ。
【0014】
[4] 前記荷電層の表面電荷密度が50〜200mC/m2の範囲にある、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0015】
[5] 前記荷電微粒子の体積平均粒径が1〜200nmの範囲である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0016】
[6] 前記荷電微粒子が、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0017】
[7] 前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、更に逆荷電の低分子または荷電微粒子が交互に積層した積層構造が形成されている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0018】
[8] 前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備える、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0019】
[9] さらに、前記金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備える、[8]に記載のセンサーチップ。
【0020】
[10] 前記生体関連物質がタンパク質または膜タンパク質を含む膜画分である、[9]に記載のセンサーチップ。
【0021】
[11] 前記センサーチップがRIfS用、SPR用、SPFS用、全反射用、全反射蛍光用、QCM用またはQCM−D用である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【0022】
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載のセンサーチップの製造方法であって、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている正または負に荷電した層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【0023】
[13] [9]または[10]に記載のセンサーチップの製造方法であって、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【0024】
[14] [9]または[10]に記載のセンサーチップを使用するアッセイ方法であって、前記生体関連物質で形成されている層に、前記生体関連物質と相互作用する物質を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むことを特徴とする、アッセイ方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、センサーチップ表面が従来の方法では修飾しにくい材料で形成されている場合であっても、様々な材料で作製することのできる荷電微粒子により、比較的容易に修飾を行うことができるようになる。特に、本発明の方法では、荷電微粒子を均質かつ高密度で配列させることができるので、センサー表面の修飾状態を良好なものとし、性能を高めることができるようになる。このような本発明により、従来は作製することのできなかったセンサーを開発したり、あるいは従来よりもセンサーの生産性を向上させたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサーチップの模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るセンサーチップの模式図である。
【図3】センサーチップの製造方法の一例を示す模式図である。(a)イオン性ポリマー材料の塗布、(b)荷電層の形成、(c)荷電微粒子の接触、(d)荷電微粒子層の形成。
【図4】図4は、作製例1により作製したカチオン性修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図5】図5は、カチオン性修飾センサーチップ表面にSiO2微粒子からなる層を形成した実施例1の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図6】図6は、カチオン性修飾センサーチップ表面にSiO2微粒子からなる層が形成された実施例1の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図7】図7は、カチオン性修飾センサーチップ表面にアニオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した実施例2の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図8】図8は、カチオン性修飾センサーチップ表面にアニオン性ポリマー微粒子からなる層が形成された実施例2の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図9】図9は、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層を形成した実施例3の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図10】図10は、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層が形成された実施例3の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図11】図11は、アニオン性修飾センサーチップ表面にリポソームからなる層を形成した実施例4の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図12】図12は、アニオン性修飾センサーチップ表面に銅フタロシアニンからなる層を形成した実施例5の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図13】図13は、カチオン性修飾センサーチップ表面に銅フタロシアニンからなる層が形成された実施例5の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図14】図14は、アニオン性修飾センサーチップ表面にカチオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した実施例6の工程を通してのRIfSの測定データである。
【図15】図15は、アニオン性修飾センサーチップ表面にカチオンポリマー微粒子からなる層が形成された実施例6の荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図16】図16は、実施例7における、カチオン性修飾センサーチップ表面に金ナノ粒子からなる層が形成される工程を通じてのRIfSの測定データである。
【図17】図17は、実施例7Aにおける、膜タンパク質を含む膜画分からなる層が表面に形成されたセンサーチップに、その膜タンパク質と相互作用する化合物を接触させた工程を通じてのRIfSの測定データである。
【図18】図18は、比較例7Bにおける、膜タンパク質を含まない膜画分からなる層が表面に形成されたセンサーチップに、その膜タンパク質と相互作用する化合物を接触させた工程を通じてのRIfSの測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において「センサーチップ」とは、その表面に固定化された所定の分子(リガンド)と、検出対象となる分子(アナライト)との間で分子間相互作用(静電相互作用、疎水相互作用など)が働いたときに現れるシグナルを観測することにより、その分子間相互作用をもたらしたアナライトを検出するないし定量的に測定する方法(以下「アナライト測定方法」と称する。)のみならず、センサーチップ表面に固定された所定の分子の環境変動(水和構造変化、溶質濃度の局部的変動、熱変動)による形状や性質の変化、あるいはセンサーチップ表面に吸着、反応等で固定された所定の分子の形状や性質の計測等様々な用途に用いられる、測定用の部材の総称である。
【0028】
(アナライト測定方法)
センサーチップが用いられるアナライト測定方法は、蛍光色素生成用の酵素、蛍光体、放射性同位体等のラベルによって発生する蛍光や放射線に基づくシグナルを観測する方法か、そのようなラベルを用いずにシグナルを観測する方法かは問われない。
【0029】
代表的なアナライト測定方法としては、RIfS、SPR、SPFS、全反射測定、全反射蛍光、QCM、QCM−Dなどが挙げられる。これらのアナライト測定方法はいずれも公知のものであるが、その概略は次の通りである。
【0030】
RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)は、センサー表面に捕捉された媒質の屈折率と存在量に応じて、光干渉の反射光強度が極小となる波長(ボトムピーク)のシフト量を観測することで、アナライトを分析することのできる方法である。
【0031】
SPR(Surface Plasmon Resonance:表面プラズモン共鳴法)は次のような方法である。誘電体部材上に形成された金属薄膜に測定光を角度スキャンしながら照射すると、金属薄膜での表面プラズモン共鳴により反射光の強度が減衰し(全反射減衰:ATR)、ある入射角度で反射光の強度は極小となる。ここで、アナライトがセンサー(金属薄膜)上に捕捉されると誘電率が変化し、それにより反射光の強度が極小となる入射角度が変化する。SPRでは、当該入射角度をシグナルとして測定することにより、アナライトを検出することができる。
【0032】
SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)は、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射し、金属薄膜を透過したエバネッセント波(局在場光)が金属薄膜の表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用して、 金属薄膜近傍に捕捉されたアナライトを標識している蛍光体を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。
【0033】
エバネッセント(全反射)は、可視光から赤外領域に透明な高屈折率媒質(プリズム)に試料を密着させ、全反射減衰(ATR)測定によりSPR同様に極小値を求め、アナライト捕捉による変化量で計測できる。SPRと違い、金属を用いないため電場増強度は大きくないが、センサー性能の安定性が高いという特徴がある。
【0034】
エバネッセント蛍光(全反射蛍光)は、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射し、金属薄膜を透過したエバネッセント波(局在場光)が数倍〜十倍程度に増強されることを利用して、金属薄膜近傍に捕捉されたアナライトを標識している蛍光体を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。
【0035】
QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶発振子マイクロバランス)は、水晶振動子の電極表面に物質(アナライト)が付着するとその質量に応じて共振周波数が変動する(下がる)性質を利用し、極めて微量な質量変化を計測することのできる方法である。
【0036】
QCM−Dは、上記QCMの機能に加えて、振幅の減衰(dissipation)からセンサーと溶液の間の粘弾性を測定することができる方法である。
ただし、アナライト作用測定方法は上に例示した方法に限定されるものではない。当業者であれば、本明細書の記載に基づき、本発明をその他のアナライト測定方法において展開することが可能である。
【0037】
−イオン性官能基修飾センサーチップ−
本発明の好適な実施形態においては、図1に示すように、各アナライト測定方法に応じたセンサーチップを構築するために用いられる基礎的な部材(以下、「センサー基材」と称する。)の上面に、正または負に荷電した層(以下、「荷電層」と称する。)が形成されている、つまり表面がイオン性官能基によって修飾されている、イオン性官能基修飾センサーチップを使用する。このイオン性官能基修飾センサーチップの上面にさらに、荷電微粒子からなる層を形成し、その後さらにアナライト測定方法に応じた必要な処理を行うことによって、最終的なセンサーチップを作製する。センサーチップの典型的な製造方法の一例を図3に示す。
【0038】
(イオン性官能基)
荷電層が有するイオン性官能基には、カチオン性官能基およびアニオン性官能基が包含される。センサーチップが、アニオン性の荷電微粒子と組み合わせて使用される場合は、上記イオン性官能基としてカチオン性官能基が選択され、逆にカチオン性の荷電微粒子と組み合わせて使用される場合は、上記イオン性官能基としてアニオン性官能基が選択される。カチオン性官能基およびアニオン性官能基は、それぞれ、いずれか1種単独であっても、2種以上が混合していてもよい。なお、荷電層中には、通常はカチオン性官能基またはアニオン性官能基のいずれか一方のみを存在させるようにするが、荷電微粒子を捕捉する上で支障がない荷電状態を生み出すことができる場合は、これら両方が存在していてもよい。また、荷電層(イオン性官能基)の荷電状態およびそれと組み合わせて使用される荷電微粒子の荷電状態は、それらが置かれている周囲のpHによっても変化する場合があるので、使用時にはそのpHを適切な範囲に調節してことが好ましい。
【0039】
・カチオン性官能基
カチオン性官能基としては、たとえば、グアニジノ基、−NH3+(アミノ基)、−NH2R+(モノアルキルアミノ基。Rはアルキル基、たとえばメチル基を表す。以下同様。)、−NHR2+(ジアルキルアミノ基)、−NR3+(第4級アンモニウム基)、イミノ基などが挙げられる。アミノ基、モノアルキルアミノ基、イミノ基等はpH依存性のカチオン性官能基である。表面電荷密度の観点からは、溶液のpHに依存せず常に正に帯電している、第4級アンモニウム基(カチオン)が好ましい。このようなカチオン性官能基は、分子内塩を形成していてもよいし、塩素、臭素などのハロゲン陰イオン、硫酸陰イオン、スルホン酸陰イオン、燐酸陰イオン、カルボン酸陰イオンなどと結合して対塩を形成していてもよい。
【0040】
・アニオン性官能基
アニオン性官能基としては、たとえば、−CO2-(カルボン酸基)、−SO3-(スルホン酸基)、−OSO3-(硫酸基)、−OPO4-(リン酸基)、−B(OH)2(ボロン酸)などが挙げられる。このようなアニオン性官能基は、分子内塩を形成していてもよいし、金属陽イオンまたは有機陽イオンと結合していてもよい。その金属陽イオンとしては、たとえば、Na+(ナトリウム陽イオン)、K+(カリウム陽イオン)、Ca2+(カルシウム陽イオン)などのアルカリ金属が挙げられ、有機陽イオンとしては、Me3N+H(トリメチルアンモニウム陽イオン)、Et3N+H(トリエチルアンモニウム陽イオン)、Me2N+H2(ジメチルアンモニウム陽イオン)などが挙げられる。
【0041】
なお、上記のイオン性官能基(A)は、主鎖となるポリマーに直接結合していてもよいし、他の結合基Rを介してポリマー主鎖に結合していてもよい(A−R−ポリマー主鎖)。結合基−R−としては、たとえば、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((C2H4O)n)などが挙げられる。
【0042】
(荷電層の形成)
最表面に荷電層を備えたセンサーチップは、たとえばアナライトを捕捉するためのリガンドを固定化する処理などが行われてない、無修飾のセンサーチップ(センサー基材)の表面に、以下に述べるような方法により荷電層を形成する工程(荷電層形成工程)を経ることで、作製することができる。
【0043】
「センサー基材」は、各種のアナライト測定方法に応じたものを用意すればよい。センサー基材がどのような構成を有するか、特に荷電層を形成する直前の状態がどのようなものかは公知であり、当業者であれば適宜選択することができるが、一般的には次の通りである。
【0044】
RIfS用のセンサー基材は、一般的には、基板(たとえばSi)と、その表層側に形成された光学薄膜(たとえばSiN)とにより構成される。
SPR用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)と、その表層側に形成された金属薄膜(たとえばAu)とにより構成される。
【0045】
SPFS用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)と、その表層側に形成された金属薄膜(たとえばAu)とにより構成され、必要に応じてその表層側にさらに、金属消光を防止するためのスペーサー層(誘電体層、たとえばSiO2)とを備えていてもよい。
【0046】
全反射用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)により構成される。
全反射蛍光用のセンサー基材は、一般的には、誘電体部材(たとえば高屈折率ガラスまたは高屈折率樹脂チップ)により構成される。
【0047】
QCM用およびQCM−D用のセンサー基材は、一般的には、ATカット水晶振動子と、その表層側に形成された電極(たとえばAu)とにより構成される。
荷電層の形成方法は特に限定されるものではないが、たとえば、表面電荷の強さ、耐久性の観点から、上述したようなイオン性官能基を側鎖に有するポリマー(イオン性ポリマー)からなる被膜をセンサーチップ表面に形成する方法が好適である。
【0048】
・イオン性ポリマー
イオン性官能基でセンサーチップを修飾する方法は特に限定されるものではないが、表面電荷の強さ、耐久性の観点からは、本質的にイオン性官能基を側鎖に有するポリマー(イオン性ポリマー)からなる被膜でセンサーチップ表面を被覆する、つまり荷電層として本質的にイオン性ポリマーからなる層を形成する方法が好適である。なお、「本質的にイオン性ポリマーからなる層」は、イオン性ポリマーのみからなる層であってもよいし(表面電荷密度を極力高める観点などからはそのようにすることが好ましい)、表面電荷密度に悪影響を及ぼさないなど発明の作用効果を阻害しない範囲において、イオン性ポリマー以外の物質を含有する層であってもよい。
【0049】
イオン性ポリマーは、あらかじめイオン性官能基を有するモノマーを重合して得られたものでもよいし、イオン性官能基を誘導または導入しうる他の官能基を有するモノマーを重合した後、当該官能基にイオン性官能基を誘導または導入することによって得られたものでもよい。たとえば、イオン性官能基を有さないポリマー(ポリメタクリル酸メチル等)からなる層を形成した後、プラズマ処理やUVおよびオゾン処理などの表面電荷を与える処理を施すことによって荷電させ(上記の場合はアニオン性になる)、荷電層に変換することもできる。
【0050】
センサー性能の観点からは、イオン性ポリマーは、成膜性が良く、水溶性でないものが適している。そのようなイオン性ポリマーの一つとして、炭化水素骨格を主鎖とする樹脂(炭化水素系樹脂)が挙げられる。炭化水素系樹脂は、ビニル基、アリル基、ジエンなどを有する、公知の各種のモノマーを用いて合成することができる。より具体的には、たとえば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;(メタ)アクリル酸、または蟻酸ビニル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、ビニルマレイン酸などのカルボン酸またはそのエステル類;スチレンスルホン酸、またはスチレンスルホン酸エステルなどのスルホン酸またはそのエステル類;この他、硫酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステルなども挙げられる。
【0051】
また、イオン性官能基が導入されたウレタン系樹脂、たとえばカチオン性水性ポリウレタン樹脂(たとえば「ハイドラン(登録商標)CP」シリーズ、DIC株式会社)などとして公知の物質も、用いることのできるイオン性ポリマーとして挙げられる。
【0052】
さらに、ポリアミノ酸由来の骨格を主鎖とするイオン性ポリマーも挙げられる。そのようなイオン性ポリマーとしては、たとえば、側鎖にカルボキシル基を有するポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸、ならびに側鎖にアミノ基を有するポリリジンが挙げられる。
【0053】
上記の各種のイオン性ポリマーは、公知の方法によって合成することができ、市販品として入手することもできる。イオン性ポリマーの化学的構造や性状(数平均分子量など)は、所望の荷電層を形成する上で適切なものを選択すればよい。
【0054】
(荷電層の形成方法)
最表面に荷電層を備えたセンサーチップは、無修飾または必要に応じて前処理が施されたセンサーチップの表面に、以下に述べるような方法により荷電層を形成する工程(荷電層形成工程)により作製することができる。
【0055】
「無修飾のセンサーチップ」は、分子間相互作用測定装置に応じたものを用意すればよい。RIfS用の無修飾のセンサーチップは、一般的には、基板(たとえばSi)と、その表層側に形成された光学薄膜(たとえばSiN)とにより構成される。
【0056】
たとえば、荷電層としてイオン性ポリマーからなる層を形成する場合、そのイオン性ポリマーがセンサーチップの表面に対して十分な付着性を有するものであれば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等、公知の手法を用いてセンサーチップの表面に塗布することができる。図3には、模式的な例として、ノズルからイオン性ポリマー材料をセンサー基材上に供給して塗布する様子を示した。ここで、センサー基材を支持する支持台を回転させることにより、いわゆるスピンコート法により塗布を行ってもよい。このようなコーティング方法を用いる場合は、イオン性ポリマーの種類に応じて、適切な溶媒に、適切な濃度(たとえば0.1〜10重量%)となるよう溶解させて塗布液を調製し、これを塗布するようにすればよい。一般的には、塗布液中のイオン性ポリマーの濃度は0.5〜10重量%、塗布膜厚としてRIfS用センサーチップでは5nm〜500nm、その他では5nm〜100nmの範囲で調整することにより、イオン性ポリマーからなる荷電層を形成することができる。
【0057】
また、必要であれば、センサーチップの表面にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)またはシランカップリング剤からなる膜を予め形成しておき、必要に応じた処理(たとえばシランカップリング剤が有するカルボキシル基を活性エステル化する処理)を行った上で、イオン性ポリマーを塗布ないし接触させて、それらの官能基間に結合を生じさせ、固定化する態様であってもよい。
【0058】
あるいは、重合の起点となる化合物を基板に直接、またはSAMやシランカップリング剤を介して固定化し、逐次反応で分子長を制御可能なラジカルリビング重合法を用いてin situでイオン性ポリマー膜を形成する(グラフト重合する)ようにしてもよい。
【0059】
なお、上記の態様において、あらかじめセンサーチップ上に固定化されるSAM、シランカップリング剤、重合の起点となる化合物などがイオン性官能基を有することがあったとしても、それらの物質の集合(膜ないし層)は本発明における「荷電層」の概念に該当するものではない。
【0060】
また、上述したような方法は、あらかじめイオン性官能基を有するイオン性ポリマーからなる層を形成する場合のみならず、事後的にイオン性官能基を導入するために、イオン性官能基を有さないポリマーからなる層を形成する場合にも適用可能である。
【0061】
・表面電荷密度
本実施形態のセンサーチップは、高い密度で(好ましくは最密充填で)荷電微粒子を吸着させるために、荷電層の表面電荷密度が少なくとも一定の水準を満たす程度に高いことが好ましい。センサーチップと荷電微粒子とを接触させる工程における条件下、より具体的には当該工程に用いられる荷電微粒子を含む媒質(水溶液)のpH条件下において、荷電層の表面電荷密度は、通常10〜500mC/m2、好ましくは50〜200mC/m2で調整することができる。このような表面荷電密度は、ゼータポテンシャル測定装置(例えば、ゼータ電位測定システム「ELSZ−2」(大塚電子株式会社製)で平板試料用セルを用いて測定できる。)など、公知の手段を用いて測定することができる。また、荷電微粒子の投影断面積あたりのイオン性官能基の数が少なくとも1となるような表面電荷密度であることが好ましい。荷電層を形成するために用いるイオン性ポリマーの一分子あたりに導入するイオン性官能基の数や、センサーチップ表面の単位体積あたりに塗布するイオン性ポリマーの量などの条件を調節することにより、表面電荷密度が所望の範囲に収まるようにすることができる。
【0062】
・表面粗さ
平滑な荷電微粒子層を形成するために、基礎となる荷電層の表面も平滑であることが理想的である。このような平滑さは、代表的には、表面粗さを指標とすることができる。荷電層(たとえばイオン性ポリマーからなる層)の表面の算術平均粗さ(Rz)は、1〜50nmであることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、1〜10nmであることが特に好ましい。このような表面粗さは、表面粗さ測定装置や原子間力顕微鏡(AFM)など、公知の手段を用いて測定することができる。
【0063】
−荷電微粒子修飾センサーチップ−
本明細書では、前記イオン性官能基修飾センサーチップおよび荷電微粒子を用いて、荷電層のさらに表層側に荷電微粒子からなる層(以下、「荷電微粒子層」と称する。)を備えるセンサーチップ(以下、「荷電微粒子修飾センサーチップ」と称する。)を使用する。
【0064】
・荷電微粒子
荷電微粒子としては、正または負に荷電した、通常1〜200nm、好ましくは1〜150nm程度のサイズを有する微粒子(ナノ粒子)を用いることが、静電相互作用を利用した強固な固定化のために重要である。なお、このような荷電微粒子のサイズは、動的光散乱法により測定される体積平均粒子径、または商品の粒径等の公称値(カタログ値)によって表すことができる。
【0065】
荷電微粒子の分散形態としては、結合力が強い自己乳化型の方が好ましいが、自己乳化型でなくても利用可能である。
用いることのできる荷電微粒子としては種々のものが知られており、後述するような適切な手段により表面改質、異種の材料被覆、あるいはリガンドを担持することができるものであれば特に限定されるものではないが、代表的には、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなるものを挙げることができる。
【0066】
荷電微粒子を形成するためのイオン性ポリマーとしては、荷電層を形成するための前述したようなイオン性ポリマーと同様のもの、すなわち、前述したようなカチオン性官能基またはアニオン性官能基を側鎖に有し、粒子状に凝集するものを用いることができる。イオン性のラテックス微粒子が好ましい。
【0067】
顔料としては、カラーインデックス等に記載されている、従来公知の顔料を用いることができる。
生体関連物質としては、脂質、リン脂質(たとえばリン脂質等からなる脂質膜を有するリポソーム)、タンパク質、コレステロール、細胞等の微粒子分散ができる物質およびそれらの混合物(たとえば膜タンパク質を含む膜画分)を用いることができる。
【0068】
SiO2またはTiO2からなる荷電微粒子としては、いわゆるコロイダルシリカ(たとえば「スノーテック(登録商標)」シリーズ、日産化学工業株式会社)や超微粒子酸化チタン(たとえば「STT−65C−S」、チタン工業株式会社)などとして知られている物質を用いることができる。これらの物質は、酸性では正電荷を、アルカリ性では負電荷を帯びる。TiO2は、アナターゼ型であっても、ルチル型であってもよい。
【0069】
金属からなる荷電微粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、あるいはこれらの金属の酸化物を含有する複合物等のナノ粒子を用いることができる。これらの金属からなる微粒子(典型的にはコロイド粒子)は、通常正または負に荷電している。たとえば、金、銀等のコロイド粒子は通常負に荷電している。
【0070】
半導体ナノ粒子としては、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、CdTe、ZnTeなどを用いることができる。
カーボンナノチューブ、フラーレンとしては、公知の分散方法によって分散させたものを用いることができる。そのような分散物も市販されているので利用可能である。
【0071】
以上の荷電微粒子は、いずれかの種類を単独で用いても、必要に応じて複数の種類を混合して用いてもよい。
更に、図2に示すように、前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、交互に正電荷と負電荷の微粒子または低分子からなる層を交互に組み合わせて、所望の厚みを有する交互積層構造を形成することもできる。
【0072】
たとえば、チップ基板の直上に設けられる荷電層がカチオン性である場合、その上にアニオン性微粒子からなる第一の荷電微粒子層を形成し、さらにその上にカチオン性微粒子からなる第二の荷電微粒子層を形成し、以下必要に応じて第三の荷電微粒子層(アニオン性)、第四の荷電微粒子層(カチオン性)・・・を形成させることができる。
【0073】
また、上記交互積層構造において、荷電微粒子に代えて正または負の電荷を有する低分子を使用する場合、2官能以上の多官能を有する分子であることが必要である。例えば、アニオン性低分子としては、トリメリット酸、クエン酸、コハク酸、テレフタル酸等が挙げられ、カチオン性低分子としては、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、ジアミノブタン、1,8-ジ(N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)オクタン等が挙げられ、ベタイン構造を有する低分子としてはアミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ安息香酸、各種アミノ酸を挙げることができる。
【0074】
(荷電微粒子層の形成方法)
荷電微粒子層を備えたセンサーチップ(荷電微粒子センサーチップ)は、前述したような方法、たとえばイオン性ポリマーを塗布することにより、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層を形成する工程(荷電微粒子層形成工程)を経ることで、作製することができる。
【0075】
荷電微粒子層を形成するためにアニオン性の荷電微粒子を用いる場合は、カチオン性の荷電層があらかじめ表面に形成されているセンサーチップを作製しておけばよく、逆にカチオン性の荷電微粒子を用いる場合は、アニオン性の荷電層があらかじめ表面に形成されているセンサーチップを作製しておけばよい。
【0076】
荷電層への荷電微粒子の接触は、荷電微粒子を含む媒質を荷電層に接触させることによって行うことが好適である。媒質としては、たとえばアナライト測定方法において汎用されている水を用いること、つまり荷電微粒子の水溶液を用いることが好適である。この場合の水は、純水の他、緩衝液(たとえばリン酸緩衝液生理食塩水)や、その他の必要な試薬等の水溶液であってもよい。荷電層に荷電微粒子を静電相互作用により固定化することが可能であれば、水以外の媒質を用いることも可能である。
【0077】
また、荷電微粒子を含む媒質の荷電層への接触のさせ方は特に限定されるものではなく、当該媒質が移動(流下)している状態において接触させてもよいし、静止した状態で接触させてもよい。図3には、ノズルからセンサー基材の荷電層上に荷電微粒子を含む媒質を供給し、荷電微粒子を荷電層との静電相互作用により固定化することで、荷電層上に荷電粒子層を形成する様子を示してある。前者の接触の態様としては、流路型の測定部材を構築し、あらかじめ荷電層が形成されているセンサーチップに対して、荷電微粒子を含む媒質をフローセルにより形成される密閉流路から導入することにより、上記センサーチップの表面に接触させることが好適である。このような態様は、次に述べる後者の態様に比べて、荷電微粒子による被覆を十分な水準に到達させるまでの時間が短くて済む。また、後者の接触の態様として、あらかじめ荷電層が形成されているセンサーチップを、容器内に収められた荷電微粒子を含む媒質に単に浸漬するようにしてもよいし、荷電層が形成されているセンサーチップが底面をなすウェル型の測定部材を構築し、そのウェルにリガンド担持荷電微粒子を含む媒質を注入するようにしてもよい。いずれの態様の場合も、荷電微粒子を含む媒質を接触させた後、必要に応じてセンサーチップを洗浄してもよい。また、ウェル型の構造において接触させる場合は、必要に応じて振盪、撹拌等を行ってもよい。
【0078】
前記媒質中のリガンド担持荷電微粒子の濃度、荷電層と前記媒質との接触時間(前記媒質の送液速度や送液時間)などの各種条件は特に限定されるものではなく、目的とする状態の荷電微粒子層が形成されるような条件を採用すればよい。たとえば、センサーチップの表面が荷電微粒子で十分に(最密充填で)被覆されるようにするためには、前記媒質中の荷電微粒子の濃度を十分に高くする、および/または荷電層と前記媒質との接触時間を十分に長くすることが好ましい。一方、前記媒質中の荷電微粒子の濃度を調整することにより、センサーチップの固定化させる荷電微粒子の密度を調整することも可能である。前記媒質中の荷電微粒子の濃度は、たとえば0.01〜1wt%の範囲で調整することが可能である。
【0079】
荷電微粒子層形成工程が、前述したように、密閉流路に荷電微粒子を含む媒質を送液することでセンサーチップと接触させるような態様で行われる場合、適切な処理時間を判断するために、当該処理工程の開始前からシグナルの測定を始め、以後連続的にリアルタイムで測定し続けてもよい。処理時間の経過と共に測定値が変化する(RIfSにおいては通常ボトムピーク波長が長波長側に移る)様子の観測を通じて、荷電層に荷電微粒子が結合し、荷電微粒子層が形成されていく状態を随時確認することができる。たとえば、測定値が変化しなくなる、ないし変動が十分に小さくなることにより、荷電微粒子の結合、すなわち荷電微粒子層の形成が飽和(最密充填)に達したものと判断し、荷電微粒子層形成工程を終了させることができる。また、測定値の変化が所定の水準に達した段階で、荷電微粒子層の形成が所望の水準に達したと判断して、その段階で荷電微粒子層形成工程を終了させることも可能である。
【0080】
なお、荷電層上に固定化された荷電微粒子層上にさらなる荷電微粒子または低分子からなる層を積層させるときは、上述した荷電微粒子層形成工程と同様の工程を所定の回数繰り返せばよい。すなわち、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子または低分子からなる層に、新たに積層させるための荷電微粒子または低分子を接触させて、静電相互作用によりそれらの物質からなる層を形成することができる。
【0081】
また、後述するような本発明の好ましい実施形態において、金コロイドからなる層の上面に生体関連物質からなる層を形成する場合も、上述した荷電微粒子層形成工程と同様の工程を行えばよい。すなわち、あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成することができる。なお、この工程において、生体関連物質は金コロイドからなる層に必ずしも静電相互作用のみによって結合しているとは限らず、その他の相互作用の働きにより結合していることも排除されるものではない。
【0082】
−用途−
作製された荷電微粒子修飾センサーチップの用途は、特に限定されるものではない。換言すれば、荷電微粒子の選択によりセンサーチップの表面を様々な状態に修飾することができ、それにより荷電微粒子修飾センサーチップの多様な用途が生み出される。
【0083】
たとえば、あらかじめ荷電微粒子の表面に撥水性(疎水性)または撥油性(親水性)を賦与しうる官能基を導入しておき、その荷電微粒子を用いてセンサーチップの表面を修飾することにより、センサーチップ表面の撥水性または撥油性を向上させることが可能となる。
【0084】
また、イオン性ポリマー、SiO2、TiO2などからなる荷電微粒子層を形成した場合、その表面にあらかじめ反応性の官能基(たとえば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、水酸基(シラノール構造、チタノール構造))を導入しておくことにより、その官能基と反応して化学的に結合しうる反応基を有する化合物を当該荷電微粒子に結合させることができる。したがって、そのような荷電微粒子層を備えたセンサーチップは、前記反応を利用して形成される、特定の物質からなる層をさらに備えたセンサーチップの作製用部材として利用したり、前記反応を起こす特定の物質を計測するために利用することができる。
【0085】
センサーチップの基本的な使用の態様として、荷電微粒子層を形成する物質と相互作用により吸着する物質を検出することができる。たとえば、荷電微粒子層として顔料からなる層をセンサーチップの表面に形成することにより、その顔料への活性剤やタンパク質等の吸着を計測することができる。同様に、荷電微粒子層としてカーボンナノチューブやフラーレンなどの炭素材料からなる層を形成することにより、それらの炭素材料に吸着する物質を検出することができる。
【0086】
一方、荷電微粒子として金属からなる粒子を用いることにより、表面が金属で被覆されたセンサーチップを作製することができる。その金属は測定系に応じたものを選択することができ、たとえば局在プラズモンを利用する測定系(SPFS等)用のセンサーチップとする場合は、金ナノ粒子を用いることにより金薄膜を形成してもよい。また、荷電微粒子として触媒活性を有する金属イオンを用いた場合は、センサーチップの表面において所定の反応を促進することができるようになる。
【0087】
荷電微粒子として半導体ナノ粒子を用いることにより、表面が半導体ナノ粒子で被覆されたセンサーチップを作製することができる。半導体ナノ粒子は、所定の波長の励起光を照射することにより所定の波長の蛍光を発するので、そのような蛍光を利用する測定系用のセンサーチップとすることができる。
【0088】
さらに、センサーチップの表面に形成された荷電微粒子層の形態の変化を分析することも可能となる。
たとえば、荷電微粒子層として生体関連物質の一種であるリポソームからなる層をセンサーチップの表面に形成することにより、そのリポソームからの薬剤が放出されることに伴う形状の変化(リポソームからなる層の厚さの変化)を測定することができる。あわせて、そのリポソームとタンパク質や細胞膜との相互作用(吸着を)計測することもできる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態の一つとして、荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備えるセンサーチップが挙げられる。この金コロイドからなる層は、各種の生体関連物質を接触させると、それを吸着して固定化することができる。したがって、本発明のさらなる実施形態として、前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備え、さらに、その金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備えるセンサーチップが挙げられる。この実施形態における生体関連物質としては、たとえば、タンパク質または膜タンパク質を含む膜画分が挙げられる。
【0090】
このような生体関連物質で形成されている層を表面に備えたセンサーチップは、その生体関連物質と相互作用する物質を用いた分析に利用することができる。すなわち、本発明の好ましい実施形態の一つとして、生体関連物質(たとえばタンパク質)で形成されている層に、その生体関連物質と相互作用する物質(たとえば前記タンパク質を抗原として認識する抗体、あるいは前記タンパク質を受容体とする化合物)を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むアッセイ方法が挙げられる。このようなアッセイ方法により、前記物質の存在、あるいは膜画分中の膜タンパク質の存在を定量的または定性的に検出することができる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例において、RIfS方式の分子間相互作用測定装置としては「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタオプト株式会社)を使用し、無修飾のセンサーチップおよびフローセルとしては、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(基板:シリコンウェハ、光学薄膜:窒化シリコン、無修飾)およびフローセル(PDMS製、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mmの溝及びこの溝の両末端にそれぞれ直径1mmの貫通口を有する。)を使用し、シリンジポンプとしては「Econoflo Syringe Pump 70−2205」(Harvard Apparatus製)を使用した。
【0092】
[作製例1]カチオン性修飾センサーチップ
カチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」(DIC株式会社製、体積平均粒径30nm)を水で希釈し、濃度1wt%の塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコーター(回転数:3000rpm)を用いて、上記RIfS用センサー基板の表面に塗布した。塗布後140℃で1分間乾燥して、上記カチオン性ポリウレタンからなる被膜が形成された、カチオン性修飾センサーチップを作製した。このカチオン性修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図4に示す。表面の起伏は最大で約4nmであった。
【0093】
[実施例1]SiO2微粒子修飾センサーチップ
作製例1で作製したカチオン性修飾センサーチップをRIfS測定装置MI−Affinity(コニカミノルタオプト社製)にセットし、RIfS用フローセルを積載して密閉流路を形成し、シリンジポンプにより、液体を測定装置外部から密閉流路に送液してセンサーチップ表面に接触させることが可能な状態にした。
【0094】
SiO2微粒子「スノーテックスXS」(日産化学社工業社製、体積平均粒径5nm)を0.5重量%の濃度で含有する水溶液を、前記シリンジポンプにより20μL/minの送液速度で75分間(計1500μL)、測定部材の密閉流路に導入し、イオン性(カチオン)被膜センサーチップの表面に接触させて、当該SiO2微粒子からなる層を形成した。
【0095】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図5に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図6に示す。図5のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図6のAFMからRIfSセンサーチップの表面がSiO2の単粒子層で被覆されていることが分かる。
【0096】
本被膜は乾燥させても安定で、再度流路中水を流しても安定であることが確認できた。 RIfS表面のSiNでは反応基であるSiO2の存在量は限られているが、このチップは全域に渡ってSiO2が存在し、シランカップリングを介した反応性に優れたチップであることが分かる。
【0097】
[実施例2]アニオン性ポリマー微粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、アニオン性ポリマー微粒子「ハイドランAP 2010」(DIC株式会社製)を0.5重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該アニオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した。
【0098】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図7に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図8に示す。図7のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図8から最密充填に近い状態で微粒子が固着されている様が確認できた。成膜温度の低い、AP2010ポリマー微粒子が静電相互作用で基板に衝突してできたクレーターのような模様も確認できた。表面にはカルボキシル基も多く存在するため反応基を多く有するセンサーチップとして利用できる。
【0099】
[実施例3]金ナノ粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、金ナノ粒子「Auコロイド溶液−SC 10nm」(田中貴金属製)を0.01重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該金ナノ粒子からなる層を形成した。
【0100】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図9に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図10に示す。図9のRIfSの測定データから、高充填率であることが確認された。また、図10から最密充填に近い状態で微粒子が固着されている様が確認できた。従来RIfSセンサーチップ上への金被膜形成はセンサー性能を劣化させるため実用化されていないが、単粒子層で形成することで吸収が少なくRIfS測定にも問題ないことが確認された。金被覆を行うことでRIfSにおいて局在プラズモンの効果が加わったハイブリッド計測の可能性が開かれ、安定な金−チオール系の反応をRIfSでも利用可能になった。
【0101】
[実施例4]リポソーム修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、リポソーム(体積平均粒径150nm)を0.5重量%の濃度で含有する分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該リポソームからなる層を形成した。上記工程を通してのRIfSの測定データを図11に示す。このようなリポソームからなる層を有するセンサーチップは、リポソームの薬剤放出に伴う形状変化、タンパク質等の細胞膜への吸着などの計測のために利用可能である。
【0102】
[実施例5]顔料修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、銅フタロシアニン(体積平均粒径140nm)を0.5重量%の濃度で含有する分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該銅フタロシアニンからなる層を形成した。上記工程を通してのRIfSの測定データを図12に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図13に示す。このような銅フタロシアニン(顔料)からなる層を有するセンサーチップは、顔料表面への活性剤、タンパク質等の吸着などの計測のために利用可能である。
【0103】
[作製例2]アニオン性修飾センサーチップ
カチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」(DIC株式会社製、体積平均粒径30nm)に代えてアニオン性ポリマー微粒子「ハイドランAP 2010」(DIC株式会社製)を用いたこと以外は、作製例1と同様の操作を行い、当該アニオン性ポリマーからなる被膜が形成された、アニオン性修飾センサーチップを作製した。
【0104】
[実施例6]カチオン性ポリマー微粒子修飾センサーチップ
作製例1で作製したカチオン性修飾センサーチップに代えて作製例2で作製したアニオン性修飾センサーチップを用い、また、SiO2に代えてカチオン性水性ポリウレタン樹脂「ハイドラン CP−7610」を水で希釈し、濃度0.5wt%の濃度で含有する水溶液を用い5回注入を行った以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該カチオン性ポリマー微粒子からなる層を形成した。
【0105】
上記工程を通してのRIfSの測定データを図14に示す。また上記工程により作製された荷電微粒子修飾センサーチップ表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図15に示す。 「CP−7610」の成膜温度は0℃であるため粒子の存在は見えず、一部溶けている構造が確認できた。
【0106】
[実施例7]金ナノ粒子修飾センサーチップ
SiO2微粒子に代えて、金ナノ粒子「Auコロイド溶液−SC 15nm」(田中貴金属製)を0.0070重量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、当該金ナノ粒子からなる層を形成した。この工程を通してのRIfSの測定データを図16に示す。
【0107】
[実施例7A]
(目的タンパク質を発現させた膜画分を固定化した基板の作製)
実施例7で作製した金ナノ粒子修飾センサーチップに、PDMS製のウェル型セルを密着させて固定化槽を形成し、そこに目的タンパク質を発現させた細胞の膜画分を100μg/mLの濃度で含む溶液を入れて前記センサーチップの表面に接触させ、室温で1時間反応させた。反応後、センサーチップをPBS(10×PBS(−)バッファ(pH7.4;和光純薬工業(株):コードNo.314−90185)を、超純水を用いて10倍希釈して調製したバッファ)にて洗浄した。
【0108】
(相互作用の測定)
前記工程で得られたセンサーチップをRIfS測定装置MI−Affinity(コニカミノルタオプト社製)に設置し、RIfS用フローセルを積載して密閉流路を形成し、シリンジポンプにより、液体を測定装置外部から密閉流路に送液してセンサーチップ表面に接触させることが可能な状態にした。
【0109】
PBSを20μL/minの流量で送液し、そこに前記膜タンパク質と相互作用する化合物をインジェクトして、相互作用に伴う、分光反射率が最小になる波長の変化(Δλ)を追跡した。この工程を通してのRIfSの測定データを図17に示す。この図に示すように、前記化合物をインジェクトした後にΔλが増加しており、基板上に固定化した膜タンパク質と前記化合物との相互作用が確認できた。
【0110】
[比較例7B]
(目的タンパク質を発現させていない膜画分を固定化した基板の作製)
固定化に用いた膜画分を、目的タンパク質を発現させていない細胞の膜画分に代えた以外は、実施例7Aと同様にしてセンサーチップを作製した。
【0111】
(相互作用の測定)
実施例7Aと同様の準備をした後、PBSを20μL/minの流量で送液し、そこに膜タンパク質と相互作用する化合物をインジェクトして、相互作用に伴う、分光反射率が最小になる波長の変化(Δλ)を追跡した。この工程を通してのRIfSの測定データを図18に示す。この図に示すように、前記化合物をインジェクトした後、Δλは増加しておらず、目的タンパク質が存在していない場合は前記化合物との相互作用が見られないことが確認された。
【符号の説明】
【0112】
1:センサー基材
2:荷電層
3:荷電微粒子層
4:交互積層構造
10:支持台
11:ノズル
21:イオン性ポリマー材料
31:荷電微粒子
100:センサーチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正または負に荷電した層(荷電層)と、当該荷電層上に静電相互作用により固定化されている、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)で形成されている層(荷電微粒子層)とを備えていることを特徴とするセンサーチップ。
【請求項2】
前記荷電層がイオン性ポリマーからなる層である、請求項1に記載のセンサーチップ。
【請求項3】
前記イオン性ポリマーがカチオン性官能基を側鎖に有するポリマーである、請求項2に記載のセンサーチップ。
【請求項4】
前記荷電層の表面電荷密度が50〜200mC/m2の範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項5】
前記荷電微粒子の体積平均粒径が1〜200nmの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項6】
前記荷電微粒子が、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項7】
前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、更に逆荷電の低分子または荷電微粒子が交互に積層した積層構造が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項8】
前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項9】
さらに、前記金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備える、請求項8に記載のセンサーチップ。
【請求項10】
前記生体関連物質がタンパク質または膜タンパク質を含む膜画分である、請求項9に記載のセンサーチップ。
【請求項11】
前記センサーチップがRIfS用、SPR用、SPFS用、エバネッセント用、エバネッセント蛍光用、QCM用またはQCM−D用である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサーチップの製造方法であって、
あらかじめセンサーチップの表面に形成されている正または負に荷電した層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
請求項9または10に記載のセンサーチップの製造方法であって、
あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項14】
請求項9または10に記載のセンサーチップを使用するアッセイ方法であって、
前記生体関連物質で形成されている層に、前記生体関連物質と相互作用する物質を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むことを特徴とする、アッセイ方法。
【請求項1】
正または負に荷電した層(荷電層)と、当該荷電層上に静電相互作用により固定化されている、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)で形成されている層(荷電微粒子層)とを備えていることを特徴とするセンサーチップ。
【請求項2】
前記荷電層がイオン性ポリマーからなる層である、請求項1に記載のセンサーチップ。
【請求項3】
前記イオン性ポリマーがカチオン性官能基を側鎖に有するポリマーである、請求項2に記載のセンサーチップ。
【請求項4】
前記荷電層の表面電荷密度が50〜200mC/m2の範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項5】
前記荷電微粒子の体積平均粒径が1〜200nmの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項6】
前記荷電微粒子が、イオン性ポリマー、顔料、生体関連物質、SiO2、TiO2、金属、半導体ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項7】
前記荷電層上に固定化された荷電微粒子層上に、更に逆荷電の低分子または荷電微粒子が交互に積層した積層構造が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項8】
前記荷電微粒子層として金コロイドからなる層を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項9】
さらに、前記金コロイドからなる層の上面に固定化されている、生体関連物質で形成されている層を備える、請求項8に記載のセンサーチップ。
【請求項10】
前記生体関連物質がタンパク質または膜タンパク質を含む膜画分である、請求項9に記載のセンサーチップ。
【請求項11】
前記センサーチップがRIfS用、SPR用、SPFS用、エバネッセント用、エバネッセント蛍光用、QCM用またはQCM−D用である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサーチップの製造方法であって、
あらかじめセンサーチップの表面に形成されている正または負に荷電した層(荷電層)に、当該荷電層とは逆に荷電した微粒子(荷電微粒子)を接触させ、静電相互作用により固定化することにより、当該荷電微粒子からなる層(荷電微粒子層)を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
請求項9または10に記載のセンサーチップの製造方法であって、
あらかじめセンサーチップの表面に形成されている荷電微粒子層としての金コロイドからなる層に生体関連物質を接触させ、固定化することにより、当該生体関連物質からなる層を形成する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項14】
請求項9または10に記載のセンサーチップを使用するアッセイ方法であって、
前記生体関連物質で形成されている層に、前記生体関連物質と相互作用する物質を接触させ、両者が相互作用により結合したことに由来するシグナルを検出する工程を含むことを特徴とする、アッセイ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−47671(P2013−47671A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151508(P2012−151508)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
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