説明

表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子

【課題】アミノ樹脂架橋粒子を改質することにより、吸湿性が低い表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を提供する。
【解決手段】樹脂架橋粒子表面の少なくとも一部が、疎水性部を有する改質剤により疎水化されている表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散剤、光学フィルム、液晶表示装置、各種フィルム用コーティング剤や滑り性向上剤、研磨剤、艶消し剤等に用いることができるアミノ樹脂架橋粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アミノ樹脂架橋粒子の製造方法として、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、メラミンのN−メチロール誘導体の希薄水溶液を水溶性酸触媒の存在下に縮合を進め、透明な水溶液が混濁を開始した瞬間にメラミン樹脂の縮合反応を停止するために多量の水を添加してアミノ樹脂架橋粒子を製造する方法が開示されている。特許文献2には、メラミンとホルムアルデヒドとの水溶液を保護コロイドの存在下で反応させてアミノ樹脂架橋粒子を製造する方法が開示されている。特許文献3と特許文献4には、メラミンやベンゾグアナミンのアミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる縮合物を、界面活性剤や乳化剤を含む水溶液中で、硫酸やアルキルベンゼンスルホン酸等の存在下で縮合硬化させて得られるアミノ樹脂架橋粒子を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭32−5743号公報
【特許文献2】特公昭43−29159号公報
【特許文献3】特開昭62−68811号公報
【特許文献4】特開2003−171432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1〜4に開示された製造方法で得られたアミノ樹脂架橋粒子は、吸湿性が高いために、保管時等に吸湿し、水を内包した状態となる。そのため、そのままでは前記アミノ樹脂架橋粒子を電子情報材料用途に適用することが難しい。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸湿性が低い表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子とは、アミノ樹脂架橋粒子表面の少なくとも一部が、疎水性部を有する改質剤により疎水化されているところに特徴を有する。前記構成によれば、アミノ樹脂架橋粒子の表面が疎水性部を有する改質剤によって疎水化されているので、水分子との反応や水分子の吸着が抑制され、吸湿性が低くなる。
【0006】
アミノ樹脂架橋粒子の疎水化は、例えば、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と、前記官能基と反応する官能基と疎水性部とを有する改質剤とを反応させて、アミノ樹脂架橋粒子表面に疎水性部を導入することにより達成される。
【0007】
本発明で用いる疎水性部を有する改質剤としては、例えば、疎水性部とエポキシ基とを有する化合物または疎水性部を有するシランカップリング剤が好ましい。これらの化合物はアミノ樹脂架橋粒子表面に有する官能基との反応性が高く、疎水性部をアミノ樹脂架橋粒子表面に導入することが容易になるためである。疎水性部とエポキシ基とを有する化合物または疎水性部を有するシランカップリング剤とアミノ樹脂架橋粒子とが反応する結果、アミノ樹脂架橋粒子に疎水性部が導入され、アミノ樹脂架橋粒子の吸湿性が低下する。なお、疎水性部を有する改質剤の疎水性部とは、2個以上の炭素が連続して結合している部分、または炭素とケイ素が結合している部分であることが好ましい。
【0008】
本発明で用いる疎水性部を有する改質剤の成分量は、アミノ樹脂架橋粒子100質量部に対し0.1質量部〜10質量部であることが好ましい。疎水性部を有する改質剤の成分量が前記範囲にあれば、疎水性部を有する改質剤とアミノ樹脂架橋粒子との反応が効果的に進行するとともに、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率が十分低いものとなる。
【0009】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、30℃、90%RHの環境下で1日間放置したときの吸湿率が3.0質量%以下であることが好ましい。これにより、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿性が十分低くなり、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の用途範囲が広がる。
【0010】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、平均粒子径が0.1μm〜30μmであることが好ましい。
【0011】
本発明で用いるアミノ樹脂架橋粒子は、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを縮合硬化させたものであることが好ましい。前記方法で得られるアミノ樹脂架橋粒子を本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の原料として用いれば、粒子径が制御され、耐熱性と耐溶剤性に優れた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子が得られやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、疎水性部を有する改質剤により疎水化されているので、吸湿性が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子とは、アミノ樹脂架橋粒子表面の少なくとも一部が、疎水性部を有する改質剤により疎水化されていることを特徴としている。
【0014】
まず、本発明で用いるアミノ樹脂架橋粒子について説明する。アミノ樹脂架橋粒子とは、アミノ基および/またはイミノ基を有する高分子からなるものが好ましい。アミノ基やイミノ基は、アミノ樹脂架橋粒子の生成の際の重合反応に関与していても、関与していなくても、どちらでもよい。アミノ基および/またはイミノ基を有する高分子は、1種類の単量体が重合した単重合生成物であっても、2種類以上の単量体が共重合した共重合生成物であっても構わない。アミノ基および/またはイミノ基を有する高分子で単重合生成物を与える単量体としては、ビニルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、エチレンイミン、アミノスチレン等が挙げられる。アミノ基および/またはイミノ基を有する高分子で、共重合生成物としては、例えば、アミノ基を含む化合物とホルムアルデヒドとを縮合させて得られるものが挙げられる。
【0015】
前記アミノ樹脂架橋粒子は、架橋構造を有しており、常温常圧で固体であるものが好ましい。そのため、前記アミノ基および/またはイミノ基を有する高分子のうち、アミノ基を含む化合物とホルムアルデヒドとを縮合させて得られるものが、本発明に用いるアミノ樹脂架橋粒子として特に好ましい。
【0016】
ホルムアルデヒドと縮合するアミノ基を含む化合物としては、分子内に2個以上のアミノ基を有するものが好ましく、トリアジン環に2個または3個のアミノ基が直接結合した化合物や尿素がさらに好ましい。前記アミノ基を含む化合物として、具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、尿素等が挙げられる。これらアミノ基を含む化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。とりわけ、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを縮合させて得られるものが、本発明で用いるアミノ樹脂架橋粒子として好ましい。
【0017】
本発明で用いるアミノ樹脂架橋粒子として好ましいのは、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物である。特に、下記に示す方法で得られる生成物を本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の原料として用いれば、粒子径が制御され、耐熱性と耐溶剤性に優れた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を得られやすくなるので好ましい。すなわち、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを、界面活性剤溶液と混合することにより、アミノ樹脂前駆体の乳濁液を得るアミノ樹脂前駆体生成工程と、前記乳濁液に触媒を添加することで乳濁状態のアミノ樹脂前駆体を縮合硬化させてアミノ樹脂粒子を含む懸濁液を得るアミノ樹脂粒子生成工程と、前記懸濁液からアミノ樹脂粒子を分離して脱水アミノ樹脂粒子を得る分離工程と、前記脱水アミノ樹脂粒子を加熱する加熱工程とを有する製造方法により得られる生成物は、本発明に用いるアミノ樹脂架橋粒子として特に好ましい。
【0018】
次に、本発明で用いる疎水性部を有する改質剤について説明する。前記疎水性部を有する改質剤とは、疎水性部を有し、疎水性部を有する改質剤によりアミノ樹脂架橋粒子を疎水化できるものであればよい。
【0019】
本発明で用いる疎水性部を有する改質剤としては、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基と疎水性部とを有する改質剤が好ましい。改質剤が反応するアミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基としては、例えば、アミノ基やイミノ基が挙げられる。また、アミノ樹脂架橋粒子がアミノ基を含む化合物とホルムアルデヒドとを縮合させて得られたものである場合、メチロール基も前記官能基として挙げられる。そのため、本発明で用いる疎水性部を有する改質剤は、アミノ基やイミノ基やメチロール基と反応して、前記官能基に結合し得るものが好ましい。
【0020】
疎水性部を有する改質剤として特に好ましいのは、疎水性部とエポキシ基とを有する化合物、疎水性部を有するシランカップリング剤、およびシリコーン化合物よりなる群から選ばれる1種以上の物質である。エポキシ基を有する化合物およびシランカップリング剤は、アミノ樹脂架橋粒子との反応性が高く、アミノ樹脂架橋粒子と容易に結合するため、エポキシ基を有する化合物およびシランカップリング剤が疎水性部を有するものであれば、アミノ樹脂架橋粒子が容易に疎水化されるためである。シリコーン化合物は、疎水性基であるメチル基やフェニル基等を側鎖や末端に多く有するが、側鎖および/または末端の一部に、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基が導入されたシリコーン化合物であれば、アミノ樹脂架橋粒子と結合して、アミノ樹脂架橋粒子が容易に疎水化されるためである。
【0021】
本発明において、疎水性部とは、2個以上の炭素が連続して結合している部分、または炭素とケイ素が結合している部分であることが好ましい。疎水性部が分子末端にある場合(疎水性部が側鎖として有される場合を含む)は、炭素数が2個以上のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、シクロアルキニル基、アリール基、アラルキル基;トリアルキルシリル基等の官能基等が、疎水性部として例示される。疎水性部が分子末端にない場合は、−CR12−CR34−、−CR5=CR6−、−C≡C−、−CR78−SiCR910−で表される構造(ただし、R1〜R8は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す。R9〜R10は、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシロキシ基、または水酸基を表し、好ましくは炭化水素基である。)を有する部分を疎水性部とする。
【0022】
本発明で用いる疎水性部とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、疎水性部を有するグリシジルエーテル、疎水性部を有するグリシジルエステル等の疎水性部とグリシジル基とを有する化合物;エポキシシクロヘキサン基を有する化合物等の脂環式エポキシ基を有する化合物等が、好ましく用いられる。疎水性部とエポキシ基とを有する化合物は、エポキシ基が、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基として作用する。
【0023】
疎水性部とエポキシ基とを有する化合物としては、分子内にエポキシ基を1個のみ有する化合物であっても、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物のいずれであっても、好ましく用いられる。
【0024】
前記疎水性部を有するグリシジルエーテルとは、エーテル結合を構成する酸素原子に、グリシジル基と、疎水性部を有する有機基が結合している化合物が好ましい。このような化合物としては、メチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル等のアルケニルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル;ポリエチレンジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル等のポリアルキレンジグリシジルエーテル等が例示される。
【0025】
前記疎水性部を有するグリシジルエステルとは、エステル結合を構成する酸素原子にグリシジル基が結合し、エステル結合を構成するカルボニル炭素に疎水性部を有する有機基が結合している化合物が好ましい。このような化合物としては、オクタデカン酸グリシジルエステル等のアルカン酸グリシジルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル等が例示される。
【0026】
前記脂環式エポキシ基を有する化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が例示される。脂環式エポキシ基を有する化合物においては、脂肪族環状炭化水素基が疎水性部として作用する。
【0027】
本発明で用いる疎水性部を有するシランカップリング剤とは、ケイ素原子に、水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、およびアシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、疎水性部を有する有機基が結合している化合物が好ましい。疎水性部を有するシランカップリング剤は、ケイ素原子に結合した水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、またはアシロキシ基が、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基として作用する。
【0028】
前記疎水性部を有するシランカップリング剤としては、組成式RnSiX4-nで表されるケイ素化合物、およびその(部分)加水分解および縮合物が好ましい。ただし、前記式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、シクロアルキニル基、アリール基、およびアラルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、同一であっても異なっていてもよい。Xは、水酸基、ハロゲン基、アルコキシ基、およびアシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、同一であっても異なっていてもよい。nは1〜3の整数である。
【0029】
疎水性部を有するシランカップリング剤は、Xが、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基として作用する。Xとしては、アルコキシ基および/またはアシロキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。さらに、Xが、メトキシ基および/またはエトキシ基であれば、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基との反応性が優れるため、特に好ましい。
【0030】
前記Rが置換基を有している場合、当該置換基としては、エポキシ基等のアミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応し得る置換基であれば、より好ましい。前記エポキシ基としては、グリシジル基や脂環式エポキシ基等が例示される。
【0031】
本発明で用いられる疎水性部を有するシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−オクチルメトキシシロキサン、トリメチルエトキシシラン等のアルキル基含有シラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のケチミノ基含有シラン;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シラン;ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化アルキル基含有シラン;フェニルトリメトキシシラン、トリフェニルシラノール、ジフェニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のアリール基含有シラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記例示した疎水性部を有するシランカップリング剤のうち、エポキシ基含有シランは、前記Xとエポキシ基とがアミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基との反応性を有するため、特に好ましい。
【0032】
本発明で用いるシリコーン化合物とは、シリコーン化合物の側鎖および/または末端の一部に、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と反応する官能基が導入された化合物が好ましい。前記官能基としては、例えば、水素原子、水酸基、アルコキシ基、エポキシ基を有する官能基、カルボキシル基を有する官能基、アミノ基を有する官能基等が挙げられる。
【0033】
前記シリコーン化合物としては、常温常圧で液体であることが好ましく、例えばシリコーンオイルが好ましい。
【0034】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、メチルハイドロジェンシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル等のジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルのメチル基またはフェニル基の一部を各種有機基に変性した変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、シリコーンオイルの構造は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
【0035】
次に、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子について説明する。本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子とは、アミノ樹脂架橋粒子表面の少なくとも一部が、疎水性部を有する改質剤により疎水化されていることを特徴としている。アミノ樹脂架橋粒子は、疎水性部を有する改質剤がアミノ樹脂架橋粒子と反応することにより疎水化されてもよいし、疎水性部を有する改質剤がアミノ樹脂架橋粒子表面に吸着することにより疎水化されてもよいか、また、アミノ樹脂架橋粒子と疎水性部を有する改質剤とが、水素結合等の弱い分子間力に基づき相互作用することにより、アミノ樹脂架橋粒子が疎水化されてもよい。
【0036】
本発明でいう疎水化とは、疎水化されることによって、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子が表面改質される前のアミノ樹脂架橋粒子よりも、吸湿性が低下していることを意味する。
【0037】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、30℃、90%RH(相対湿度)の環境下で1日間放置したときの吸湿率が3.0質量%以下であることが好ましい。表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率が3.0質量%以下であれば、水分の存在を好まない電子情報材料等の様々な用途へ、前記アミノ樹脂架橋粒子を適用できるようになる。
【0038】
吸湿率は、次の方法に従い測定を行い、値を算出したものである。まず、吸湿テスト前の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量(約5g)を正確に測定し、この質量をw1とする。次に、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子約5gを、直径10cmの時計皿にのせ、薄く広げる。本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は微小であるため、アミノ樹脂架橋粒子約5g中には多数のアミノ樹脂架橋粒子が含まれる。その後、30℃、90%RHの環境下に1日放置し、吸湿させる。次に、吸湿テスト後の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量測定を行い、この質量をw2とする。そして、以下の式に基づき、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率を求める。本発明では、上記時計皿を10個設け、一度に同じ条件で表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率の測定を行った。そして測定数を10として、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率の平均値を求め、これを吸湿率とする。
表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率(質量%)=(w2−w1)/w1×100
【0039】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、1.5μm以上が最も好ましい。また、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、2μm以下が最も好ましい。平均粒子径が0.1μm以上30μm以下であれば、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子が、電子情報材料等の様々な用途に、より好適に用いられるようになる。
【0040】
平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザーIIIコールターカウンターを用いて、体積基準の粒度分布を計測し、得られた体積基準の粒度分布ヒストグラムから算術平均値を算出したものである。
【0041】
本発明のアミノ樹脂架橋粒子は、粒子が個々独立した状態で得られるものが好ましい。また、個々の粒子がほぼ球形の形状を有するものが好ましい。
【0042】
次に、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の製造方法について説明する。
【0043】
本発明で用いるアミノ樹脂架橋粒子としては、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを縮合硬化させたものが好ましく、前記縮合硬化は界面活性剤溶液中で行うことがより好ましい。さらに好ましくは、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを、界面活性剤溶液と混合することにより、アミノ樹脂前駆体の乳濁液を得るアミノ樹脂前駆体生成工程と、前記乳濁液に触媒を添加することで乳濁状態のアミノ樹脂前駆体を縮合硬化させてアミノ樹脂粒子を含む懸濁液を得るアミノ樹脂粒子生成工程と、前記懸濁液からアミノ樹脂粒子を分離して脱水アミノ樹脂粒子を得る分離工程と、前記脱水アミノ樹脂粒子を加熱する加熱工程を有する製造方法により得られる生成物である。
【0044】
前記アミノ樹脂前駆体生成工程では、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを反応させて、初期縮合物を得る。
【0045】
ホルムアルデヒドは、ホルマリン、トリオキサン、パラホルムアルデヒド等、ホルムアルデヒドを発生するものであればよい。
【0046】
初期縮合物は、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを、メラミンおよび/またはベンゾグアナミン1モルに対して、ホルムアルデヒド1.2モル〜3.5モルの割合で、好ましくは1.8モル〜3.0モルの割合で混合して反応させることで得られる。この際の反応条件としては、水溶媒中で、pH5〜10の範囲、反応温度50℃〜100℃の範囲、反応時間30分〜60分の範囲とすることが好ましい。
【0047】
メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを反応させる際の反応溶液のpHは、必要に応じて、アルカリ性物質である炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を用いて、適宜調節することが好ましい。
【0048】
このようにして得られた初期縮合物は水親和性であり、水溶性または水分散性の樹脂状物である。
【0049】
水親和性の程度は、一般に、15℃の初期縮合物に水を滴下して白濁を生じるまでの水の滴下量の、初期縮合物に対する質量%(以下、これを水混和度と称する)によって決定される。本実施の形態に好適な初期縮合物の水混和度は、100質量%以上である。水混和度を100質量%以上とすることで、初期縮合物を界面活性剤を含んだ水溶液中に分散させた場合、粒子径が小さい、均一な粒子径を有するアミノ樹脂前駆体の懸濁液が形成しやすくなる。
【0050】
初期縮合物と界面活性剤とを混合させると、アミノ樹脂前駆体の乳濁液が得られる。なお、乳濁液とは、乳濁液および/または懸濁液を示すものである。
【0051】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用できる。これらの界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤、またはそれらの混合物がより好ましい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、アルキル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホン酸塩;ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩等が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、前記例示した塩の形態で用いてもよいし、対カチオンがプロトンである酸の形態で用いてもよい。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪属アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等が挙げられる。
【0054】
前記界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0055】
前記界面活性剤の中で、より好ましいのはアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩であり、特に好ましいのは炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩である。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩は、アミノ樹脂前駆体の乳濁液中で特異な界面活性能を発揮するため、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液が安定した懸濁状態で得られやすくなる。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩としては、例えば、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。これらアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
前記界面活性剤の使用量は、初期縮合物100質量部に対して0.01質量部〜10質量部の範囲が好ましい。界面活性剤の使用量が0.01質量部以上であれば、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液が安定した懸濁状態で得られやすくなる。界面活性剤の使用量が10質量部以下であれば、アミノ樹脂前駆体の乳濁液またはアミノ樹脂粒子を含む懸濁液が泡立ちを起こしにくくなり、得られるアミノ樹脂架橋粒子の物性に悪影響を及ぼしにくくなる。
【0057】
初期縮合物の水性溶液中の濃度は、得られる乳濁液の取り扱い性や、操作の経済性を考慮して、5質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0058】
初期縮合物と界面活性剤との混合方法としては、例えば、水性溶液中に予め界面活性剤を混合しておき、そこに初期縮合物を水性溶液中に添加する方法、水性溶液中に初期縮合物を混合しておき、そこに界面活性剤を添加する方法が挙げられる。初期縮合物と界面活性剤との混合は、適宜撹拌することにより行うことが好ましい。
【0059】
アミノ樹脂前駆体の乳濁液は、触媒が添加されることで、アミノ樹脂前駆体が縮合硬化し、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液が得られる。
【0060】
触媒としては、例えば、酸が好適であり、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;スルファミン酸;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸類;フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸等の有機酸等を挙げることができる。これらの中でも、ベンゼンスルホン酸が好ましく、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸がより好ましい。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸は、触媒作用を有するとともに、アミノ樹脂前駆体の乳濁液中で特異な界面活性能を発揮するため、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液が安定した懸濁状態で得られやすくなる。
【0061】
炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を触媒として用いる場合、その使用量は、前記初期縮合物100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部の範囲内がより好ましく、0.5質量部〜10質量部の範囲内であることがさらに好ましい。前記アルキルベンゼンスルホン酸の使用量が0.1質量部以上であれば、縮合硬化に要する時間を短くすることができるとともに、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液が安定した懸濁状態で得られやすくなるので、その後で得られるアミノ樹脂粒子が凝集したり粗大化しにくくなる。前記アルキルベンゼンスルホン酸の使用量が20質量部以下であれば、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液に必要量以上にアルキルベンゼンスルホン酸が分配されなくなるため、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液中で粒子の凝集、融着が生じにくくなり、粒子径の揃ったアミノ樹脂粒子が得られやすくなる。
【0062】
アミノ樹脂前駆体を縮合硬化させる方法としては、例えば、アミノ樹脂前駆体の乳濁液に触媒を加えて、0℃から加圧下100℃以上の温度で撹拌下に保持すればよい。縮合硬化は、一般には90℃あるいはそれ以上の温度に昇温して一定時間保持することにより完結されるが、必ずしも高温での硬化は必要でなく、低温で短時間、縮合させた場合でも、懸濁液中のアミノ樹脂粒子がメタノールやアセトンで膨潤しなくなる程度まで硬化されていれば十分である。
【0063】
このようにして得られたアミノ樹脂粒子を含む懸濁液は、中和処理を施してもよい。
【0064】
アミノ樹脂粒子を含む懸濁液は、前記懸濁液からアミノ樹脂粒子を分離することで、脱水アミノ樹脂粒子が得られる。前記懸濁液からアミノ樹脂粒子を分離するには、公知の方法により行えばよく、例えば、自然沈降あるいは遠心分離法とデカンテーションとによる分離、ろ過による分離等の各種分離法が挙げられる。前記懸濁液からアミノ樹脂粒子を分離する際、分離を促進させるために、硫酸アルミニウム等の凝集剤を添加してもよい。
【0065】
前記脱水アミノ樹脂粒子を加熱処理すると、本発明に用いるのに好適なアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0066】
加熱処理は、130℃〜230℃の温度範囲で行うことが好ましい。加熱処理により、アミノ樹脂粒子に付着している水分および残存している不活性なホルムアルデヒドを除去することができ、かつ、アミノ樹脂粒子内の縮合(架橋)をさらに促進させることができる。前記加熱工程の加熱温度が230℃以下であれば、変色のないアミノ樹脂架橋粒子が得られやすい。
【0067】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、全体の雰囲気(気体)のうち、酸素の割合が10容量%以下、かつ不活性ガスの割合が90容量%以上である雰囲気が好ましく、酸素の割合が5容量%以下、かつ不活性ガスの割合が95容量%以上である雰囲気がより好ましく、酸素の割合が3容量%以下、かつ不活性ガスの割合が97容量%以上である雰囲気がさらに好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。上記例示のうち、不活性ガスとしては、経済性の面で窒素ガスがより好ましい。混合処理を不活性ガス雰囲気下で行うことで、変色のないアミノ樹脂架橋粒子が得られやすい。
【0068】
加熱処理の方式は特に限定されないが、例えば、減圧乾燥、熱風乾燥等が挙げられる。
【0069】
加熱処理により得られるアミノ樹脂架橋粒子は、一部凝集や融着、固着が起こっている場合がある。そのような場合、アミノ樹脂架橋粒子を解砕処理することで、凝集や融着、固着のないアミノ樹脂架橋粒子が得られやすくなる。解砕処理は、例えば、ボールミルやジェットミル等を用いることができる。
【0070】
上記のようにして得られたアミノ樹脂架橋粒子を用いて、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子が製造されることが好ましい。本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、アミノ樹脂架橋粒子と疎水性部を有する改質剤とを混合して混合物を得る混合工程と、得られた混合物を加熱する加熱工程とを有する製造方法により得られる。
【0071】
疎水性部を有する改質剤の使用量は、前記疎水性部を有する改質剤の成分量として、アミノ樹脂架橋粒子100質量部に対し0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、本発明で用いる疎水性部を有する改質剤の成分量は、アミノ樹脂架橋粒子100質量部に対し10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。疎水性部を有する改質剤の成分量が0.1質量部以上であれば、アミノ樹脂架橋粒子が疎水化され、吸湿性を下げる効果が得られやすくなる。疎水性部を有する改質剤の成分量が10質量部以下であれば、改質剤とアミノ樹脂架橋粒子との反応効率が十分確保されやすくなる。なお、疎水性部を有する改質剤の成分量とは、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子中の疎水性部を有する改質剤に相当する部分の質量を意味する。
【0072】
疎水性部を有する改質剤が液体の場合は、疎水性部を有する改質剤をそのままアミノ樹脂架橋粒子と混合してもよいし、疎水性部を有する改質剤を溶媒で希釈してアミノ樹脂架橋粒子と混合してもよい。疎水性部を有する改質剤が固体の場合は、疎水性部を有する改質剤を溶媒に溶解させて溶液の状態とし、前記溶液とアミノ樹脂架橋粒子とを混合する。
【0073】
溶媒は、疎水性部を有する改質剤が溶解するものであれば特に限定されるものではない。前記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
溶媒を用いる場合、溶媒使用量はアミノ樹脂架橋粒子100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。溶媒使用量がアミノ樹脂架橋粒子に対して20質量部以下であれば、後段の加熱工程で効率的に溶媒を蒸発除去でき、エネルギー的にも有利である。
【0075】
溶媒使用量の下限は、疎水性部を有する改質剤が液体の場合は特に定められるものではなく、疎水性部を有する改質剤とアミノ樹脂架橋粒子とができるだけ均一に混合される溶媒使用量であればよい。疎水性部を有する改質剤が固体の場合は、溶媒使用量は疎水性部を有する改質剤の溶解に必要な量が下限値となるが、この下限値以上の溶媒使用量であれば、疎水性部を有する改質剤とアミノ樹脂架橋粒子とができるだけ均一に混合される限り、溶媒使用量の下限に特に制限はない。
【0076】
アミノ樹脂架橋粒子と、疎水性部を有する改質剤を含む液体または疎水性部を有する改質剤を含む溶液との混合は、例えば、アミノ樹脂架橋粒子が撹拌されているところに、前記液体または前記溶液を滴下したり、散布したりすることで行われる。アミノ樹脂架橋粒子へ疎水性部を有する改質剤を滴下または散布する際、アミノ樹脂架橋粒子は、粉体状態であってもよいし、アミノ樹脂架橋粒子が溶媒に分散された分散体であってもよい。前記操作により、アミノ樹脂架橋粒子と疎水性部を有する改質剤が均一に混合されるようになる。
【0077】
アミノ樹脂架橋粒子と疎水性部を有する改質剤を含む液体または疎水性部を有する改質剤を含む溶液との混合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。窒素雰囲気としては、全体の雰囲気(気体)のうち、酸素の割合が10容量%以下、かつ窒素の割合が90容量%以上である雰囲気が好ましい。混合処理を窒素雰囲気下で行うことで、混合処理時の引火等を防止できる。
【0078】
次いで、得られた混合物は加熱処理され、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子が得られる。加熱処理により、アミノ樹脂架橋粒子と疎水性部を有する改質剤との反応が促進される。同時に、疎水性部を有する改質剤が溶媒で希釈または溶解された状態でアミノ樹脂架橋粒子に添加された場合、あるいは分散体のアミノ樹脂架橋粒子を用いた場合は、加熱処理により溶媒が蒸発除去され、アミノ樹脂架橋粒子が乾燥処理される。
【0079】
加熱処理を行う温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、また230℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。加熱温度を80℃以上とすることで、溶媒の蒸発除去が十分かつ効率的に行われ、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と疎水性部を有する改質剤との反応が十分進行する。加熱温度を230℃以下とすることで、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の変色が抑えられやすい。
【0080】
加熱処理は、気相部が不活性ガス雰囲気となるように行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、全体の雰囲気(気体)のうち、酸素の割合が10容量%以下、かつ不活性ガスの割合が90容量%以上である雰囲気が好ましく、酸素の割合が5容量%以下、かつ不活性ガスの割合が95容量%以上である雰囲気がより好ましく、酸素の割合が3容量%以下、かつ不活性ガスの割合が97容量%以上である雰囲気がさらに好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。上記例示のうち、不活性ガスとしては、経済性の面で窒素ガスがより好ましい。加熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことで、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の変色が抑えられやすい。
【0081】
加熱処理の時間は、疎水性部を有する改質剤の希釈または溶解に用いる溶媒やアミノ樹脂架橋粒子分散体を調製する際の溶媒の種類や使用量に応じて、適宜設定することができるが、例えば、30分以上が好ましく、60分以上がより好ましく、また120分以下が好ましい。加熱処理の時間を30分以上とすることで、溶媒の蒸発除去およびアミノ樹脂架橋粒子の乾燥が十分行われ、アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と疎水性部を有する改質剤との反応が十分進行する。加熱処理の時間を120分以下とすることで、加熱処理に要するエネルギーを低く抑えることができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、実施例1〜4と比較例1〜2の製造条件と測定結果を表1に示す。
【0083】
<吸湿率の測定方法>
吸湿テスト前の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量(約5g)を正確に測定し、この質量をw1とする。次に、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子約5gを、直径10cmの時計皿にのせ、薄く広げる。本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は微小であるため、アミノ樹脂架橋粒子約5g中には多数のアミノ樹脂架橋粒子が含まれる。その後、30℃、90%RHの環境下に1日放置し、吸湿させる。次に、吸湿テスト後の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量測定を行い、この質量をw2とする。そして、以下の式に基づき、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率を求める。
表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率(質量%)=(w2−w1)/w1×100
【0084】
本発明では、上記時計皿を10個設け、一度に同じ条件で表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率の測定を行った。測定数を10として、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の吸湿率の平均値を求め、これを吸湿率とした。
【0085】
<含水率の測定方法>
含水率の測定に用いる表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量(2g〜3g)を正確に測定し、この質量をw3とする。次に、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子2g〜3gを秤量瓶に入れ、秤量瓶を蓋をしない状態で乾燥器に入れ、110℃で1時間放置して乾燥する。次に、乾燥後の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の質量測定を行い、この質量をw4とする。そして、以下の式に基づき、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の含水率を求める。
表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の含水率(質量%)=(w3−w4)/w3×100
【0086】
本発明では、含水率測定用の試料を10個設け、一度に同じ条件で表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の含水率の測定を行った。測定数を10として、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の含水率の平均値を求め、これを含水率とした。
【0087】
<平均粒子径の測定方法>
平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザーIIIコールターカウンターを用いて計測し、得られた体積基準の粒度分布ヒストグラムの算術平均値をもって平均粒子径とした。
【0088】
[実施例1]
(アミノ樹脂架橋粒子の作製)
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた四つ口フラスコに、メラミン60質量部、ベンゾグアナミン90質量部、37%ホルマリン250質量部、10%炭酸ナトリウム溶液0.6質量部を仕込み、混合物とした。この混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、該温度で40分間保持し、初期縮合物を得た。別に65%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10.4質量部とステアリン酸ナトリウム1.5質量部を水2181質量部に溶解させて界面活性剤溶液を調製し、75℃で保持し、撹拌状態下にある界面活性剤溶液に、前記初期縮合物を投入し、アミノ樹脂前駆体の乳濁液を得た。この乳濁液に、3%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液243質量部を投入し、70℃〜90℃の温度で縮合硬化させ、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液を得た。得られた懸濁液を30℃まで冷却し、これに1%硫酸アルミニウム水溶液200質量部を添加した後、吸引ろ過により固液分離することで、脱水アミノ樹脂粒子を得た。脱水アミノ樹脂粒子を、窒素ガスを乾燥機内に供給しながら加熱温度160℃で2時間加熱することで、183質量部のアミノ樹脂架橋粒子の集塊物を得た。この集塊物をボールミルで解集塊し、粉体状のアミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0089】
(表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の作製)
上記アミノ樹脂架橋粒子の作製で得られた粉体状のアミノ樹脂架橋粒子100質量部を、容量1Lの混合撹拌装置(大進製作所製、SUS反応釜、1軸/撹拌翼2枚)に入れ、窒素ガスを混合撹拌装置に供給しながら、窒素雰囲気下で撹拌した。一方、疎水性部を有する改質剤としてビニルトリエトキシシランを用い、ビニルトリエトキシシラン1.5質量部を、メタノール1.88質量部と水0.38質量部の混合溶媒に溶解して、改質剤溶液を調製した。なお、疎水性を有する改質剤の質量は、疎水性部を有する改質剤の成分量としての質量である。改質剤溶液をアミノ樹脂架橋粒子が撹拌されているところに5分間〜10分間かけて滴下し、窒素雰囲気下で混合した。疎水性部を有する改質剤溶液の滴下終了後、10分間さらに混合撹拌した。得られた混合物を、定温乾燥機に入れ、窒素ガスを乾燥機内に供給しながら加熱温度150℃で60分間加熱することで、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を得た。なお、加熱温度とは、加熱を行う装置内の雰囲気温度である。
【0090】
得られた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は1.8μm、含水率は1.0質量%、吸湿率は2.4質量%であった。
【0091】
[実施例2]
実施例1において、疎水性部を有する改質剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.33質量部を、メタノール2.92質量部と水0.58質量部の混合溶媒に溶解して、改質剤溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0092】
得られた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は1.8μm、含水率は1.0質量%、吸湿率は1.9質量%であった。
【0093】
[実施例3]
実施例1において、疎水性部を有する改質剤としてアルキルグリシジルエーテル(アルキル基:炭素数11〜15の混合物であり、炭素数12,13のものが主)を用い、アルキルグリシジルエーテル1質量部を、メタノール9質量部に溶解して、改質剤溶液を調製し、加熱温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0094】
得られた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は1.8μm、含水率は1.0質量%、吸湿率は2.0質量%であった。
【0095】
[実施例4]
実施例1において、疎水性部を有する改質剤として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを用い、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル1質量部を、メタノール9質量部に溶解して、改質剤溶液を調製し、加熱温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして、表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0096】
得られた表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は1.8μm、含水率は1.0質量%、吸湿率は2.5質量%であった。
【0097】
[比較例1]
実施例1において、アミノ樹脂架橋粒子の作製で得られたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径、含水率、吸湿率を測定した。平均粒子径は1.8μm、含水率は0.6%、吸湿率は3.5質量%であった。
【0098】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた四つ口フラスコに、メラミン150質量部、37%ホルマリン483質量部、10%炭酸ナトリウム溶液0.6質量部を仕込み、混合物とした。この混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、該温度で40分間保持し、初期縮合物を得た。別に65%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム14.4質量部とステアリン酸ナトリウム1.5質量部を水2181質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製し、75℃で保持し、撹拌状態下にある界面活性剤溶液に、前記初期縮合物を投入し、アミノ樹脂前駆体の乳濁液を得た。この乳濁液に、5.7%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液66.8質量部を投入し、70℃〜90℃の温度で縮合硬化させ、アミノ樹脂粒子を含む懸濁液を得た。以降の工程は実施例1のアミノ樹脂架橋粒子の作製と同様にして行い、アミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0099】
得られたアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は1.8μm、含水率は0.9%、吸湿率は8.8質量%であった。
【0100】
【表1】

【0101】
表1の結果から明らかなように、本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、表面改質されていないアミノ樹脂架橋粒子よりも吸湿率が低くなり、耐湿性が向上した。また、本発明のアミノ樹脂架橋粒子は、いずれも吸湿率が3.0質量%以下となった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子は、電子情報材料、各種フィルム用コーティング剤や滑り性向上剤、研磨剤、艶消し剤等の様々な用途への適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ樹脂架橋粒子表面の少なくとも一部が、疎水性部を有する改質剤により疎水化されていることを特徴とする表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項2】
アミノ樹脂架橋粒子表面に存在する官能基と、前記官能基と反応する官能基と疎水性部とを有する改質剤とを反応させて、アミノ樹脂架橋粒子表面に疎水性部を導入することにより疎水化されているものである請求項1に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項3】
前記疎水性部を有する改質剤が、疎水性部とエポキシ基とを有する化合物または疎水性部を有するシランカップリング剤である請求項1または2に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項4】
前記疎水性部が、2個以上の炭素が連続して結合している部分、または炭素とケイ素が結合している部分である請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項5】
前記疎水性部を有する改質剤の成分量が、前記アミノ樹脂架橋粒子100質量部に対し0.1質量部〜10質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項6】
30℃、90%RHの環境下で1日間放置したときの吸湿率が3.0質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項7】
平均粒子径が0.1μm〜30μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。
【請求項8】
前記アミノ樹脂架橋粒子が、メラミンおよび/またはベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを縮合硬化させたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面改質されたアミノ樹脂架橋粒子。

【公開番号】特開2009−108205(P2009−108205A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282336(P2007−282336)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】