説明

袋体および内容物入り袋体

【課題】良好な自立性を確保しつつ、吊り下げによる耐荷重を増加し、さらに、コストを抑制可能な袋体および内容物入り袋体を提供する。
【解決手段】対向する一対の前壁11、後壁12の左右両側が折り返されてなる筒状の胴部材10と、該胴部材10の下部開口10aを閉塞する底部材20と、該底部材20を上側にした状態で被吊り下げ手段に吊り下げ可能な吊り下げ部材40とを備え、底部材20を下側にした状態で自立可能な袋体1であって、底部材1は、一対の前壁11、稿壁12のうち、一方の壁側から他方の壁側に向かって両側部が折り返されて、該側部が胴部材10の他方の壁の内面に融着され、吊り下げ部材40は、その両端部が底部材20の側部の内面に挟まれて融着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自立可能な袋体および内容物入り袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタンディングパウチなどの底部にガゼットが設けられて自立可能な袋体にあっては、底部とは反対側の上部に外部と連通するスパウトが取り付けられて、該スパウトを下側にしてフックなどの被吊り下げ手段に吊り下げ可能なものが提案されている。
フックなどに袋体を吊り下げるためには、袋体の底部の例えばヒートシール部に孔を形成したり、このヒートシール部に形成された孔に紐などの別部材を取り付ける方法が考えられるが、これらの方法では、内容物が充填された袋体を流通させる際に、孔が引っかかって袋体が破損したり、また、孔を形成した場合、孔を形成した箇所の剛性が低下して安定的に自立できなくなるなど自立性が損なわれる虞がある。
そこで、近年、袋体の自立性を確保するために、ヒートシール部を構成する二枚のフィルムのうち一方のフィルムの左右側部に孔を形成し、この孔から他方の融着層を露出させて、この露出部分に略帯状の吊り下げ手段の両端をそれぞれ融着して取り付けるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の袋体は、吊り下げ手段をフックなどの被吊り下げ手段に掛けた際に、吊り下げ手段の両端に吊り下げ荷重が直接的に加わるため、内容物の重量によっては吊り下げ手段の融着された部分が剥離して外れてしまう虞があるという課題がある。
また、上述した従来の袋体にあっては、製造時にフィルムに孔を形成する工程が必要であり、また、孔を形成する際に切除片が生じるため切除片を除去する工程が必要になるため異物混入の虞があるだけでなく、工数が増加してコストが上昇してしまう虞があるという課題がある
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な自立性を確保しつつ、吊り下げによる耐荷重を増加し、さらに、コストを抑制可能な袋体および内容物入り袋体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、対向する一対の壁部を有する筒状の胴部材と、半折りされてその折り線を上側にして該胴部材の内面下端に取り付けられた底部材と、該底部材に設けられ、袋体を吊り下げ可能とする吊り下げ部材とを備えた、自立可能な袋体であって、該底部材は、前記一対の壁部のうち、一方の壁部側から他方の壁部側に向かって両側部が折り返されて、該側部が前記胴部材の他方の壁部の内面に融着され、前記吊り下げ部材は、その両端部が前記底部材の前記側部の内面に挟まれて融着されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記吊り下げ部材は、前記折り線に並行する帯状に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記一対の壁部のうち、前記他方の壁部の内面に、前記底部材の側部を覆う補助融着部材が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、袋体の内部に内容物が収容された内容物入り袋体である。
【発明の効果】
【0008】
この発明の袋体によれば、吊り下げ部材の両端部を底部材の側部に挟んで融着し、底部材の側部を一方の壁部側から他方の壁部側に折り返して他方の壁部の内面に融着することで、左右両側が折り返された筒状の胴部材と、この胴部材の下縁を閉塞する底部材とを備えた自立可能な袋体に対して、取り付け用の孔を形成することなしに吊り下げ部材を取り付けることができる。
さらに、吊り下げ部材が、折り返されて形成された底部材の側部に挟み込まれることで、吊り下げ部材を、例えばフックなどの被吊り下げ手段に吊り下げたときに、その吊り下げ荷重が、底部材が折り返されて形成されている部分に加わり、吊り下げ部材が融着されている部分に吊り下げ荷重が直接的に加わるのを防止することができる。
したがって、製造時に胴部材や底部材に孔を形成する工程や切除片を除去する工程を省略することができるため、コストの上昇を抑制することができる効果がある。
また、吊り下げ部材が融着されている部分に吊り下げ荷重が直接的に加わるのを防止することができるため、吊り下げ部材の耐荷重を増加させることが可能になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における袋体の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における袋体の正面図である。
【図3】本発明の実施形態における袋体の展開図である。
【図4】本発明の実施形態における後壁側の側縁同士が接合される部分の断面図である。
【図5】本発明の実施形態における底部材の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態における袋体の断面図であって、(a)は図2のA−A線に沿う断面図、(b)は図2のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明の実施形態における底部材の製造工程を示す斜視図であり、(a)は、積層フィルムを半折りにする工程および底部材を所定幅で断裁する工程を示す図であり、(b)は、(a)のC−C線に沿う図であり、(c)は、所定幅で断裁した底部材の側部に融着部材を取り付けた状態を示す図である。
【図8】図8に示す底部材の側部を折り返した状態を示す斜視図である。
【図9】図9に示す底部材を胴部材に挿入した状態を示す図であり、(a)は底部材を挿入した状態の斜視図、(b)はさらに胴部材の下部開口を閉塞した状態を示す底面図である。
【図10】本発明の実施形態における内容物を充填する前の袋体の正面図である。
【図11】本発明の実施形態における内容物を充填した後の袋体の斜視図である。
【図12】図12に示す袋体を運搬台に載置した状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示す袋体の吊り下げ部材を被吊り下げ手段に吊り下げた状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施形態における変形例を示す図4に相当する断面図であって、(a)は封筒貼りの場合、(b)は合掌貼りの場合を示している。
【図15】本発明の実施形態における底部材および吊り下げ部材の第1変形例を示す図であって、(a)は底部部材のみの正面図、(b)は底部部材に吊り下げ部材を挟み込んで融着部材を取り付けた状態の正面図である。
【図16】本発明の実施形態における底部材および吊り下げ部材の第2変形例を示す図であって、(a)は底部部材のみの正面図、(b)は底部部材に吊り下げ部材を挟み込んだ状態の正面図、(c)は融着部材を取り付けた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明の実施形態の袋体について図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、この実施形態の袋体1は、自立性を有するいわゆるスタンディングパウチであり、対向する一対の前壁11および後壁12を有した胴部材10を備えている。この胴部材10は、熱可塑性を有する融着層と、この融着層よりも融点が高い基材層とが少なくとも積層された積層フィルム15が、それぞれ左右両側の折返し部13,14で折り返されて略筒状に形成される。
胴部材10には、この胴部材10の下部開口10aを閉塞する底部材20が取り付けられ、さらに、胴部材10の上部には、袋体1の外部に連通されて内容物を注出可能に形成された注出口50が取り付けられる。なお、図1,2では注出口50に蓋体51が螺合されているが、蓋体51を備えないタイプの注出口50であってもよい。
【0011】
胴部材10の折返し部13,14は、略矩形状に形成された積層フィルム15の側縁16,17同士が対向するように、図3に示す折り線L1、L2に沿って融着層が内側となる方向に折り返されて形成され、図4に示すように、側縁16,17間に跨るように融着部材18が重ねられて、この融着部材18が配置される部分がヒートシールされて側縁16,17同士が接合される。これにより胴部材10が略筒状を呈することとなる。
【0012】
積層フィルム15の基材層は、印刷適性に優れ、さらに、突き刺し強度、引っ張り強度、耐衝撃性などを備えたフィルムが好ましい。基材層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられ、これらの二軸延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムが好ましい。また、これらのフィルムに、酸素や水蒸気に対するバリア性を付与するために、アルミニウム、マグネシウムなどの金属、または酸化珪素などの酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデンなどのバリア性コート剤などをコートしたコートフィルムなどを用いてもよい。基材層は、前記フィルムの単体であってもよく、積層体であってもよい。
【0013】
積層フィルム15の融着層は、ヒートシール可能な層であって、融着層の材質としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、これらの未延伸フィルムや、前記樹脂を多層に共押出ししたフィルムが好ましい。
【0014】
なお、上述した積層フィルムの基材層と融着層の間に、必要に応じて中間層を設けてもよい。
中間層としては、例えば、酸素バリア性、水蒸気バリア性、引裂き性などの機能性を備えたフィルムが挙げられる。中間層の材質としては、例えば、アルミニウムなどの金属箔や上述の蒸着フィルム、コートフィルムや機能性フィルムが挙げられる。
基材層、融着層、および必要に応じて用いる中間層からなる積層フィルムは、接着剤を用いたドライラミネート法、熱接着性樹脂を用いた押し出しラミネート法などの公知の方法で製造できる。なお、胴部材10は、ヒートシール可能なフィルムからなる単層フィルムや、単体の共押し出しフィルムを用いてもよい。
【0015】
底部材20は、胴部材10と同様に基材層と融着層とが積層されて最内層に融着層を有する略矩形の積層フィルム21からなり、融着層が外側となるように、折り線L3に沿って上下に半折りされてなる(図5参照)。
図3に示すように、半折りされた底部材20の長手方向の寸法は、前壁11の幅寸法よりも長く、且つ、前壁11の幅と後壁12の幅とを加算した寸法よりも短く設定される。これにより、底部材20の幅方向中心と前壁11の幅方向中心とを揃えると、底部材20の側部22,23がそれぞれ、折り線L1,L2よりも後壁12側に配置されることとなる。なお、上述した底部材20のうち、折り線L1,L2よりも後壁12側に配置される部分をそれぞれ底部材20の側部22,23と称し、底部材20の側部22,23の間の部分を本体部27と称する。
【0016】
図3、図6(a),(b)に示すように、底部材20は、側部22の外面28、および、側部23の外面28がそれぞれ後壁12の内面35に融着される。また、底部材20の折り線L3とは反対側(下側)の縁部24は、底部材20と胴部材10との互いの下縁を一致させた状態で、外面28の融着層が、胴部材10の下側の縁部25の内面35の融着層と融着される。さらに、底部材20の下側の縁部24は、外面28とは反対側の外面29の融着層が、側部22,23と対向する部分を除き、胴部材10の縁部25の内面35の融着層と融着される。ここで、図6(a),(b)では、折返し部14側、すなわち側部22近傍の融着構造のみを示しているが、側部22近傍と側部23近傍とは左右対称の融着構造であるため、側部23近傍については図示を省略する。
【0017】
底部材20の側部22の外面28と胴部材10の後壁12の内面35とが融着されている部分と、側部22が融着されていない部分との間の段差部分(図6(a)中、「e」で示す部分)を覆うように、略矩形の補助融着部材30が融着される。同様に、底部材20の側部23の外面28と胴部材10の後壁12の内面35とが融着されている部分と、側部22が融着されていない部分との間の段差部分を覆うように、略矩形の補助融着部材31が融着される(図3参照)。そして、これら補助融着部材30,31と底部材20の本体部27の縁部24の外面29の融着層とが、それぞれ融着される。
【0018】
底部材20の基材層と融着層としては、胴部材10で挙げた基材層と融着層と同じものが挙げられる。また、底部材20が積層フィルムである場合、中間層を有していてもよく、中間層は、胴部材10で挙げた中間層と同じものが挙げられる。
【0019】
底部材20と胴部材10は、同じ材質のフィルムであっても異なる材質のフィルムであってもよいが、それらのヒートシールによる接着が可能になる点から、ともに同種の樹脂からなる融着層を有する積層フィルムであることが好ましい。
【0020】
補助融着部材30,31は、表裏両面がヒートシール性を有するフィルム43からなり、フィルム43としては、例えば、表裏両面に融着層が露出する積層フィルム、単層フィルム、共押出しフィルムなどが挙げられる。なかでも、ヒートシールによる熱で厚み方向に全体的に溶融し、厚みがより薄くなる点から、単層の合成樹脂フィルムからなるものが好ましい。
【0021】
ここで、上述した段差部分(図6(a)中、「e」で示す部分)のヒートシールが不充分になって接着不良が生じ、内容物が漏れるおそれがあるため、この段差部分を覆うように、補助融着部材30,31が配置されるが、補助融着部材30,31が単層の合成樹脂フィルムであれば、補助融着部材30,31がヒートシールの熱によって溶融して段差部分に入り込むため、ヒートシール不良が生じ難くなる。
【0022】
補助融着部材30,31が単層の合成樹脂フィルムである場合、その材質は、胴部材10の融着層や底部材20の融着層の樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。なお、補助融着部材30,31が単層の合成樹脂フィルムの一例を説明したが、基材層の表裏両面に融着層が形成された3層フィルムとしても良い。このように多層の場合は、融着層と、基材層に用いる樹脂とを積層した共押し出しフィルムや、ドライラミネート法により積層したフィルムを用いることができる。
【0023】
ところで、上述した底部材20には、底部材20を上側にした状態で袋体1をフックなどの被吊り下げ手段F(図12参照)に吊り下げるための吊り下げ部材40(例えば、図1〜図3参照)が取り付けられている。この吊り下げ部材40は、少なくとも表裏両面に融着層を有するフィルムからなり、底部材20の折り線L3に並行する略帯状に形成される。
吊り下げ部材40の両端部41,42(図2参照)は、それぞれ底部材20の各側部22,23の内面32,33(図6参照)に挟まれた状態となり、底部材20と同様に、胴部材10の前壁11側から後壁12側に、胴部材10の折り線L1,L2の位置で折り曲げられて底部材20に融着される。
【0024】
これにより、吊り下げ部材40は、底部材20よりも下側で、胴部材10の側部22と側部23との間に亘って取り付けられ、例えば、内容物が未充填で胴部材10の前壁11および後壁12が近接配置された状態では、図3に示すように、胴部材10の下側の縁部25よりも上側(換言すれば、内側)に配置される。一方、図1に示すように、内容物が充填されるとガゼットを形成する底部材20が袋体1の厚さ方向に広がるため、胴部材10の下側の縁部25よりも下側(換言すれば、外側)に容易に引き出すことが可能となる。また、袋体1を自立させる際には、吊り下げ部材40は、下縁よりも上側に配置させることが可能なため、自立させる際の妨げにならない。
【0025】
吊り下げ部材40は、引っ張り強度、耐衝撃性などを備えたフィルムが好ましい。吊り下げ部材40の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、および、ポリアセタールなどが挙げられ、これらの未延伸フィルムや、一軸または二軸延伸フィルムを単体で用いることができる。また、これらのフィルムの表裏又は表裏の何れか一方に融着層を積層してもよい。
【0026】
吊り下げ部材40の融着層は、上述した胴部材10の融着層と同様であり、融着層の材質としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、これらの未延伸フィルムや、前記樹脂を多層に共押出したフィルムなどが好ましい。吊り下げ部材40に融着層を積層する場合、接着剤を用いたドライラミネート法などの公知の方法で製造することができる。なお、吊り下げ部材40は、ヒートシール可能な樹脂からなる単体フィルムとしてもよい。
上述した吊り下げ部材40の融着強度は、少なくとも内容物の質量の1.5倍以上有れば実用上問題はない。
【0027】
この実施形態の袋体1は上述した構成を備えており、次に、袋体1の製造方法について図面を参照しながら説明する。
まず、図7(a)に示すように、底部材20を構成するロール状の積層フィルム21、および、吊り下げ部材40を構成するロール状のフィルム43をそれぞれ製袋機(図示せず)に装填して、積層フィルム21およびフィルム43を送りながら、底部材20の積層フィルム21の幅方向(図7(a)中、矢印で示す方向)の中央よりも一方側(図7(a)中、右側)に、吊り下げ部材40のフィルム43を載置させる。そして、底部材20を構成する積層フィルム21を幅方向の略中央の折れ線L3に沿って半折りに折り曲げて、吊り下げ部材40のフィルム43を底部材20の積層フィルム21で挟み込む。その後、底部材20が所定長さとなるように所定位置(図7(a)中、二点鎖線で示す)で溶断する。ここで、吊り下げ部材40のフィルム43を底部材20の積層フィルム21で挟み込んだ状態で溶断することで、図7(b)に示すように、溶断箇所のフィルム43と積層フィルム21とが溶融した溶断部Yが形成され、この溶断部Yによりフィルム43と積層フィルム21とが融着される。なお、図7(b)中、符号21aは融着層、符号21bは基材層を示している。
【0028】
次いで、図7(c)に示すように、吊り下げ部材40を挟み込んだ底部材20の側部22の外面29側を覆うように、側部22の外面29に平板状の補助融着部材30の片面を融着させ、同様に、側部23の外面29側を覆うように、側部23の外面29に平板状の補助融着部材31の片面を融着させる。
さらに、胴部材10への取付準備として、図8に示すように、底部材20の両側部22,23を、底部材20の側部22,23の外面29と本体部27の外面29とが向い合うように同一方向へ折り返す。
【0029】
ここで、上述した補助融着部材30は、図3に示すように、本体部27側の縁部30aが折り線L1と略重なり、下側の縁部30bは、上述した胴部材10および底部材20の下側の縁部24,25と一致するように取り付けられ、同様に、補助融着部材31は、本体部27側の縁部31aが折り線L2と略重なり、下側の縁部31bは、胴部材10および底部材20の下側の縁部24,25と一致するように取り付けられる。
【0030】
一方、図3、図9(a),(b)に示すように、胴部材10を構成する積層フィルム15を、袋体1の幅寸法の略2倍の所定幅に断裁し、この断裁した積層フィルム15を折り線L1,L2に沿って、融着層が内側となるように折り返し、ヒートシールにより融着部材18を介して側縁16,17同士を接合させて筒状の胴部材10を形成する。
【0031】
そして、両側部22,23が折り返された底部材20を、胴部材10の内面35に外面28が当接するように、胴部材10の下部開口10aから図9に示す矢印方向に挿入する。この際、胴部材10と底部材20との互いの縁部24,25を一致させ、側部22,23の外面28が後壁12の内面35に当接するように胴部材10の折返し部13,14と底部材20の折り返された部分とを一致させる。
【0032】
これにより、底部材20は、側部22が、胴部材10の前壁11の内面35から折り線L1を介して後壁12の内面35に回り込むように配置され、側部23が、胴部材10の前壁11の内面35から折り線L2を介して後壁12の内面35に回り込むように配置されることとなる。
【0033】
次いで、胴部材10の前壁11および後壁12を挟み込みようにして、底部材20の側部22,23に予め融着された補助融着部材30,31が配置されている範囲HS1、HS2(図2参照)をヒートシールする。この際、図示を省略しているが、底部材20の側部22,23の外面28の融着層と、これら側部22,23の外面28に当接する後壁12の内面35の融着層とだけが融着され、それ以外の融着層が溶融されないように、適所にステンレス製のセパレータなどの断熱材を挿入しつつヒートシールバー(図示せず)によりヒートシールが行われる。これにより底部材20の側部22,23の外面28の融着層と、これら側部22,23の外面28に当接する後壁12の内面35の融着層とが融着され、さらに、補助融着部材30,31が溶融して底部材20の側部22,23と胴部材10との段差部分e(図6(a)参照)に入り込む。
【0034】
同様に、縁部24,25近傍の範囲HS4(図2参照)をヒートシールして、これにより、図9(b)に示すように、底部材20の縁部24(図6(b)参照)近傍の外面28,29と胴部材10の縁部25近傍の内面35とが融着され、さらに、底部材20の縁部24近傍の本体部27の外面29と、側部22,23を覆う補助融着部材30,31がそれぞれ融着される。これらの融着は、胴部材10の積層フィルム15の融着層と底部材20の積層フィルム21の融着層とが融着されるとともに、底部材20の融着層と補助融着部材30,31の融着層とが融着される。
【0035】
その後、胴部材10の上部開口の略中央部に注出口50を配置して、上部開口近傍の範囲HS5(図2参照)をヒートシールする。これにより、注出口50が胴部材10に取り付けられると共に胴部材10の上部開口が閉塞され、図10に示す袋体1となる。ここで、袋体1には、最終的に内容物が充填されることとなるが、内容物の充填方法としては、上部開口の一部をヒートシールせずに充填用の通路として残しておき、この通路を介して内容物を充填した後に通路をヒートシールにより閉塞する方法や、上部開口を閉塞した後に注出口50を介して内容物を充填方法など、適宜の方法が適用可能である。
【0036】
袋体1は、内容物が充填されると、図11に示すように、胴部材10の下側の縁部25が、前壁11と後壁12とが離間される厚さ方向に膨らみ、半折りにされていた底部材20が開いた状態になる。これによって、底部材20を下側にして、図12に示すように、略水平で平坦な場所である、運搬台Dなどの上に自立可能となり、自立状態で運搬することができる。そして、例えば袋体1が輸液バッグである場合、袋体1が自立していれば、袋体1に印字又は記載された内容液(薬剤)の名称や患者の名前などの情報を誤って認識することを防止することができる。また、自立状態で運搬可能であるため、運搬台Dの載置面積が同一の場合、袋体1を寝かして運搬する場合よりも、一度に多数の袋体1を運搬可能になる。
【0037】
また、袋体1を図11に示す状態で、注出口50を下側すなわち底部材20を上側にして、吊り下げ部材40を上方に引き出して、図13に示すように、フック等の被吊り下げ手段Fへ引っ掛けることで、袋体1を吊り下げ状態にすることが可能となる。そのため、重力の作用により、注出口50から内容物の注出が可能となる。なお、図10、図11では、蓋体51を備えないタイプの注出口50を設けた一例を示している。
【0038】
以下、本発明の袋体の実施例について説明する。
<第1実施例>
第1実施例の胴部材10および底部材20は、基材層として厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONY)に、融着層である厚さ80μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をドライラミネートにより積層した。また、吊り下げ部材40には、厚さ250μmの低密度ポリエチレンを、補助融着部材30,31には、厚さ200μmの低密度ポリエチレンを用いた。
【0039】
そして、上述した製造方法により、底部材20に吊り下げ部材40を挟み込んで、両側部22,23を袋体1の幅寸法に合わせて折り曲げて筒状に形成した胴部材10の下側の縁部25近傍に挿入して、ヒートシールにより底部材20と吊り下げ部材40、および、底部材20と胴部材10とをそれぞれ融着させた。
<第2実施例>
第2実施例の胴部材10および底部材20は、基材層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)に、機能層である厚さ15μmの二軸延伸ナイロンを、さらに、機能層の内側に、融着層である厚さ80μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をドライラミネートにより積層した。また、吊り下げ部材40には、厚さ250μmの低密度ポリエチレンを、補助融着部材30,31には、厚さ200μmの低密度ポリエチレンを用いた。
【0040】
そして、上述した製造方法により、底部材20に吊り下げ部材40を挟み込んで、両側部22,23を袋体1の幅寸法に合わせて折り曲げて筒状に形成した胴部材10の下側の縁部25近傍に挿入して、ヒートシールにより底部材20と吊り下げ部材40、および、底部材20と胴部材10とをそれぞれ融着させた。
【0041】
<第3実施例>
第3実施例の胴部材10および底部材20は、基材層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートに、機能層として順次、厚さ7μmのアルミニウム箔、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンを、さらに、融着層である厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレンをドライラミネートにより積層した。また、吊り下げ部材40には、厚さ250μmの低密度ポリエチレンを、補助融着部材30,31には、厚さ200μmの低密度ポリエチレンを用いた。
【0042】
なお、上述した各実施例では、融着層として直鎖状低密度ポリエチレンを用いる場合について説明したが、未延伸ポリプロピレンを用いた場合も、上述した各実施例と同様の結果が得られた。また、補助融着部材30,31としてポリエチレンテープを用いる場合について説明したが、延伸ナイロンの表裏面に融着層としてポリエチレンを設けた共押しテープや、エチレンビニルアルコールの表裏面に融着層としてポリエチレンを設けたものとした場合も上述した各実施例と同様の結果が得られた。
【0043】
したがって、上述した実施形態の袋体1によれば、吊り下げ部材40の両端部41,42を底部材20の側部22,23に挟んで融着し、底部材20の側部22,23を前壁11側から後壁12側に折り返して後壁12の内面35に融着することで、左右両側が折り返された筒状の胴部材10と、この胴部材10の下部開口10aを閉塞する底部材20とを備えた自立可能な袋体に対して、取り付け用の孔を形成することなしに吊り下げ部材40を取り付けることができる。
さらに、吊り下げ部材40が、底部材20の折り返された部分を経由して屈曲して形成されるので、吊り下げ部材40が、被吊り下げ手段Fに掛けられたときに、その吊り下げ荷重が、吊り下げ部材40が屈曲形成されている部分に加わった後に、吊り下げ部材40が融着されている部分に加わるため、この融着されている部分に吊り下げ荷重が直接的に加わるのを防止することができる。
そして、この結果、製造時に胴部材10や底部材20に孔を形成する工程や切除片を除去する工程を省略することができるため、コストの上昇を抑制することができるとともに、吊り下げ部材40が融着されている部分に吊り下げ荷重が直接的に加わるのを防止することができるため、吊り下げ部材40の耐荷重を増加させることが可能になる。
【0044】
また、底部材20と胴部材10とがそれぞれ内側に融着層を有する積層フィルム15,21とすることで、袋体1の突き刺し強度、引っ張り強度、および、耐衝撃性を向上させつつ、底部材20と胴部材10とをヒートシールにより容易に融着させることができる。
さらに、吊り下げ部材40が底部材20の折り線L3に並行する帯状に形成されていることで、底部材20を下側にして袋体1を自立させる場合に、自立の妨げとなることがなく一方、底部材20を上側にして袋体1を吊り下げる場合には、容易に吊り下げ部材40を引き出して、被吊り下げ手段Fに引っ掛けて、袋体1を吊り下げることができる。
【0045】
なお、この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、後壁12の幅方向略中央で胴部材10の側縁16,17同士を対向させて融着部材18を背貼りして筒状の胴部材10を形成する場合について説明したが、胴部材10が筒状であればよく、胴部材10の側縁16,17同士を対向させる位置は後壁12の幅方向略中央に限られるものではない。
【0046】
また、胴部材10は、側縁16,17同士を対向させて背貼りをする形態に限られず、例えば、図14(a)に示すように、胴部材10の側縁16の内面35と側縁17の外面とを重ねて融着した封筒貼りであってもよく、また、図14(b)に示すように、胴部材10の側縁16と側縁17の内面35同士を接着した合掌貼りとしてもよい。また、これら側縁16と側縁17の封筒貼りや合掌貼りは、ヒートシールにより行ってもよく、接着剤を用いて行ってもよい。
【0047】
さらに、胴部材10は、融着部材18により側縁16,17同士を融着して筒状にする形態に限られず、例えば、インフレーション成型により得た筒状のフィルムにより筒状の胴部材10を形成しても良い。
【0048】
また、上述した実施形態では、胴部材10が1枚の積層フィルム15から構成される場合について説明したが、一つの筒状の胴部材10を形成する積層フィルム15の枚数は1枚に限られるものではなく、複数枚であっても良い。この場合、複数枚の積層フィルム15の側縁を上述した方法などを用いて接合することで筒状にすればよい。同様に、底部材20を1枚の積層フィルム21を半折りにして形成する場合について説明したが、複数の積層フィルムを上縁で張り合わせて形成するようにしても良い。
【0049】
さらに、上述した実施形態では、底部材20の各側部22,23が、前壁11の内面35から折れ線L1,L2の内側を介して後壁12の内面35に回り込んで後壁12の内面35に融着される場合について説明したが、底部材20の各側部22,23が、後壁12の内面35から折れ線L1,L2の内側を介して前壁11の内面35に回り込んで前壁11の内面35に融着されるようにしてもよい。また、底部材20の側部22,23が両方とも同じ方向に折り返される場合について説明したが、側部22,23のうち一方の側部が前壁11側から後壁12側、他方の側部が後壁12側から前壁11側というように異なる方向に回り込んでもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、ヒートシールにより胴部材10と底部材20とを融着させる場合について説明したが、積層フィルム15、積層フィルム21が複数枚重なり段差が生じる部分には、ヒートシールに加えてポイントシールをするようにしてもよい。これにより、段差部分に融着不良が生じるのを防止することができる。
さらに、上述した実施形態では、胴部材10に明確な折り線L1,L2を形成する場合について説明したが、胴部材10が、左右側部で折り返されていれば曲面であってもよく、明確な折り線L1,L2を形成しなくても良い。
【0051】
さらに、上述した実施形態では、底部材20の下側の縁部24と、胴部材10の下側の縁部25とを、略帯状の範囲HS4でヒートシールする場合について説明したが、範囲HS4の形状は略帯状に限られず、例えば、範囲HS4の上縁を左右両側に向かうにつれて徐々に高さが増加する円弧状や傾斜形状にしても良い。
【0052】
また、上述した実施形態では、ヒートシールを行う範囲HS1,HS2がそれぞれ折り線L1,L2に接するように配置される場合について説明したが、側部22,23が本体部27が配置されている側とは異なる側の壁部(前壁11又は後壁12)の内面35に融着されていればよく、範囲HS1,HS2がそれぞれ折り線L1,L2と若干離間されても良い。
さらに、上述した側部22,23に融着される補助融着部材30,31が平板状である場合について説明したが、側部22,23の外面29と本体部27の外面29とを融着できれば補助融着部材30,31は平板状に限られるものではない。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、底部材20の長さ寸法と吊り下げ部材40の長さ寸法とが略同一である場合について説明したが、図15(a),(b)に示す底部材20および吊り下げ部材40の第1変形例のように、補助融着部材30,31に覆われる範囲内であれば、吊り下げ部材40を、側部22,23からはみ出る長さに設定してもよい。これにより、吊り下げ部材40の端部41,42を補助融着部材30,31を介して胴部材10に融着することができるため、更なる吊り下げ荷重の向上を図ることができる。この場合の、吊り下げ部材40の端部41,42が底部材20からはみ出るため、底部材20を製造方法は、底部材20の積層フィルム21を断裁した後に、同様に断裁した吊り下げ部材40を挟み込み、その後、補助融着部材30,31を取り付けることとなる。
【0054】
また、図16(a)〜(c)に示す底部材20および吊り下げ部材40の第2変形例のように、底部材120の側部122,123に凹部121を形成して、吊り下げ部材40の端部41,42を露出させてもよく、これにより、図15(a),(b)と同様に吊り下げ部材40の端部41,42を補助融着部材30,31を介して胴部材10に融着することができるため、更なる吊り下げ荷重の向上を図ることができる。なお、図16中、符号127は、底部材120の本体部である。
【0055】
また、上述した実施形態では、底部材20の側部22,23と吊り下げ部材40とを溶断部Yを介して融着する場合について説明したが、これに限られず、例えば、融着する箇所の底部材20の内面32,33の基材層に微小な複数の切込み状の孔を形成して、ヒートシールの際に当該孔を介して底部材20や胴部材10の融着層のシーラント材を内面32,33側に染み出させ、これら染み出させたシーラント材により、吊り下げ部材40を底部材20と融着させる方法や、接着剤やホットメルト剤などの接着手段を用いて底部材20と吊り下げ部材40とを接着固定する方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 胴部材
10a 下部開口
11 前壁(壁部)
12 後壁(壁部)
20 底部材
22,23 側部
30,31 補助融着部材
32,33 内面(側部の内面)
35 内面(壁部の内面)
40 吊り下げ部材
41,42 端部
F 被吊り下げ手段
L3 折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の壁部を有する筒状の胴部材と、
半折りされてその折り線を上側にして該胴部材の内面下端に取り付けられた底部材と、
該底部材に設けられ、袋体を吊り下げ可能とする吊り下げ部材とを備えた、自立可能な袋体であって、
該底部材は、前記一対の壁部のうち、一方の壁部側から他方の壁部側に向かって両側部が折り返されて、該側部が前記胴部材の他方の壁部の内面に融着され、
前記吊り下げ部材は、その両端部が前記底部材の前記側部の内面に挟まれて融着されてなることを特徴とする袋体。
【請求項2】
前記吊り下げ部材は、前記折り線に並行する帯状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の袋体。
【請求項3】
前記一対の壁部のうち、前記他方の壁部の内面に、前記底部材の側部を覆う補助融着部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の袋体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の袋体の内部に内容物が収容された内容物入り袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−192948(P2012−192948A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56947(P2011−56947)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】