説明

袋保持装置

【課題】袋体を保持部に開口状態に保持でき、袋体に詰入体を注入する作業を良好に行え、しかも注入し終えた袋体は単に引き上げることで保持部から簡単に取り出しでき、作業能率良く次々と袋体に詰入体を注入する作業を行える画期的な袋保持装置を提供する。
【解決手段】袋体1を収納部2に保持する袋保持体Aから成り、この袋保持体Aは、前記収納部2を形成する周壁部3の上部に前記袋体1の開口縁1aを支持して開口状態に保持する開口縁支持部4を設けると共に、前記周壁部3の一部若しくは全部をこの袋体1と離反する退避方向に可動する可動部5として構成し、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際にこの袋体1の上動により前記袋保持体Aの可動部5が作動して退避可動することで、この袋体1の引き上げに前記袋保持体Aが追従せずこの袋保持体Aの収納部2から前記袋体1を引き上げて取り出せるように構成した袋保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土嚢用の袋体を開口状態に保持して、この袋体に例えば土砂などの詰入体を注入する作業を行う場合に使用する袋保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土嚢は例えば麻製の袋体に、土砂などの詰入体を注入して構成したものであり、例えば建築素材として様々な用途に広く使用されている。特に、堤防の越水や決壊を阻止すべく堤防の上に多段に積み上げて使用したり、また、洪水時には地盤の低い地域や地下施設への水の進入を阻止すべく所定箇所に積み上げて簡易堤防として使用するなど、水害対策として一般に使用されている。
【0003】
ところで、この土嚢を作製する際、従来においては例えば作業者が二人掛かりで袋体の開口縁を開口状態に手で保持し、ショベルカーなどで勢い良くこの袋体に土砂を注入する作業が行われていた。
【0004】
しかし、上記の作業は、袋体を一々二人掛かりで保持する面倒な手間と人手を要するうえに、袋体を保持する作業者の手などが、ショベルカーから勢い良く注がれる前記土砂に巻き込まれる危険性を有するなど、作業性に問題があった。
【0005】
そこで、従来から、図8〜図10に図示したように、袋体1を開口状態に保持する袋保持装置が提案されている。
【0006】
これは、図8に図示したように、袋体1を袋保持体Aの収納部2に配設してこの袋体1の上縁部1aを周壁部3の上縁部に折り返し係止し、係止部材kをこの収納部2に上方から挿し込むことでこの袋体1の開口縁1aを周壁部3の上部に支持して開口状態に保持する構成である。
【0007】
この袋保持装置によれば、袋体1を一々作業者が二人掛かりで手で保持する必要がなく、それだけ手間と人手を削減できるうえに、作業者がショベルカーから注入される土砂に巻き込まれる危険性も無い。
【0008】
しかしながら、従来の袋保持装置は、土砂が注入されて大きくなった(膨らんだ)袋体1が、袋保持体Aの周壁部3と圧接するため、この袋体1を簡単にはこの袋保持体Aの収納部2から引き上げて取り出すことができない。即ち、袋体1と周壁部3との圧接により袋体1を上方に持ち上げようとすると袋保持体A自体も追従して上方に持ち上がってしまう。
【0009】
そのため、従来は先ず、図9に図示したように係止部材kを外して袋体1の上縁部1aを紐などで締結した後、図10に図示したように袋体1を引き上げるのではなく袋保持体Aを引き上げて袋体1からこの袋保持体Aを取り外さなければならない。
【0010】
即ち、従来の袋保持装置は、土砂を注入し終えた袋体1を、直接クレーンで所定の位置に適宜移動させることができず、一々、先ずクレーンで袋体1から袋保持体Aを取り外し、その後、このクレーンを袋保持体Aから袋体1に繋げ代えてこの袋体1を適宜移動させなければならないなど、極めて作業性が悪く、土嚢を大量に生産したい場合において生産性を著しく損ねる原因となっていた。
【0011】
この問題を解決するために、例えば、袋保持体Aに保持した袋体1に注入する土砂の量を加減して(減らして)この袋体1の膨れを抑止する方法を採用した場合、たとえ袋体1を袋保持体Aから良好に取り出すことができたとしても、この取り出した袋体1に加減した分の土砂を追加注入する作業を別途行わなければならず、一層作業性が悪く良好な方法とは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した問題点に鑑みて完成した画期的な袋保持装置であって、袋保持体に袋体を開口状態に保持でき、例えば作業者が手で直接この袋体を開口状態に保持したりする必要がなくこの袋保持体に開口状態に保持した袋体に作業性良く且つ安全に例えば土砂などの詰入体を注入でき、しかも、この詰入体を注入し終えた袋体を、例えばこれまでのように袋保持体を上方に引き上げてこの袋保持体を袋体から取り外す面倒な作業を行う必要がなく、単にこの詰入体を注入し終えた袋体をこの袋保持体の収納部から引き上げるだけで簡単且つスムーズにこの袋保持体の収納部からこの袋体を取り出せる構成とすることで、例えば、土嚢用の袋体を袋保持体に開口状態に保持して土砂などの詰入体を注入し、注入した袋体を袋保持体から取り出して適宜な位置に移動させ、次の袋体をこの袋保持体に保持するといった作業を極めて効率的に行え、この種の土嚢作製に極めて適した画期的で極めて実用性に秀れた商品価値の高い袋保持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
袋体1を開口状態に保持してこの袋体1に土砂や水や粒体などの詰入体sを注入する袋保持装置において、前記袋体1を収納部2に保持する袋保持体Aから成り、この袋保持体Aは、前記収納部2を形成する周壁部3の上部に前記袋体1の開口縁1aを支持して開口状態に保持する開口縁支持部4を設けると共に、この袋保持体Aには前記収納部2に保持した前記袋体1に詰入体sを注入して大きくなったこの袋体1を保持する前記周壁部3の一部若しくは全部をこの袋体1と離反する退避方向に可動させる可動部5を設けて、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際にこの袋体1の上動により前記袋保持体Aの可動部5が作動して退避可動することで、この袋体1の引き上げに前記周壁部3と袋体1との接触により前記袋保持体Aが追従せず可動部5の前記袋体1からの離反によってこの袋保持体Aの収納部2から前記袋体1を引き上げて取り出せるように構成したことを特徴とする袋保持装置に係るものである。
【0015】
また、前記袋保持体Aの周壁部3の一部若しくは全部を前記可動部5として構成し、この可動部5は、接地部6に枢着してこの接地部6との枢着箇所を支点に接地面aに対して回動自在に立設した構成としたことを特徴とする請求項1記載の袋保持装置に係るものである。
【0016】
また、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際に、この袋体1の上動によるこの袋体1と前記可動部5との当接押圧によって、この可動部5が前記接地部6との枢着箇所を支点に前記収納部2から離反する方向に退避回動するように構成したことを特徴とする請求項2記載の袋保持装置に係るものである。
【0017】
また、前記可動部5は、前記袋体1の上動によるこの袋体1と前記可動部5との当接押圧によって、この可動部5が前記接地部6との枢着箇所を支点に前記収納部2から離反する方向に退避回動した後、この袋体1と可動部5との当接押圧が解除されることによって、この可動部5が前記収納部2に近接する方向に戻り復帰回動するように構成したことを特徴とする請求項3記載の袋保持装置に係るものである。
【0018】
また、前記可動部5は、前記袋体1とこの可動部5との当接押圧が解除されることによって、この可動部5の自重により前記収納部2に近接する方向に戻り復帰回動するようにこの可動部5の重心位置を設定したことを特徴とする請求項4記載の袋保持装置に係るものである。
【0019】
また、前記袋保持体Aの収納部2が下方程幅広な形状となるように、この収納部2を構成する前記周壁部3の収納部2側内面の形状を設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の袋保持装置に係るものである。
【0020】
また、前記袋保持体Aの周壁部3の上縁部を平面視略環状に構成し、前記保持部2に配設した前記袋体1の開口縁1aを外側に折り返してこの袋体1の開口縁1aをこの周壁部3の上縁部に折り返し係止し得るように構成して、この周壁部3の上縁部をこの袋体1の開口縁1aを支持して開口状態に保持するための前記開口縁支持部4として構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の袋保持装置に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、袋保持体の周壁部の上部に袋体の開口部を支持させてこの袋保持体の収納部に袋体を開口状態に保持でき、例えば、作業者が直接手で袋体を保持したりする必要がなく、それだけ手間と人手を削減でき作業性良くしかも安全に袋体に詰入体を注入する作業を行える。
【0022】
しかも、詰入体を注入し終えた袋体を、この収納部の上部開口部から単に引き上げることで極めて簡単且つスムーズにこの収納部から取り出すことができる。
【0023】
従って、これまでは詰入体を注入して大きくなった袋体を袋保持体の収納部の上部開口部から持ち上げて取り出して所定の位置に適宜移動させるといったことができず、例えば、先ず袋保持体をクレーンで持ち上げて袋体から取り外し、次いでクレーンを袋保持体から袋体に繋ぎ代えてこの袋体を適宜移動・運搬するといった面倒な作業を行っていたところを、本発明においては、詰入体の注入をし終えた袋体を単純に袋保持体の収納部から引き上げるだけで取り出しでき、適宜移動・運搬することができる。
【0024】
よって、本発明は、例えば、この袋保持体に土嚢用の袋体を保持して土砂などを注入し、注入し終えたらこの袋体を引き上げて適宜な位置に移動させてこの袋保持体に他の袋体を保持するといった作業を繰り返すことで大量の土嚢を極めて効率良く次々と作製するといったことができる秀れた作業性と生産性を有するなど、例えばこの種の土嚢を製作するための袋保持装置としての極めて高い実用価値を有する画期的で極めて実用性に秀れた袋保持装置となる。
【0025】
また、請求項2,3記載の発明においては、本発明の秀れた機能を確実に達成し構成を簡易に実現できる。
【0026】
即ち、袋保持体の周壁部の一部若しくは全部を可動部に構成し、この可動部は接地部に枢着してこの接地部との枢着箇所を支点に接地面に対して回動自在に立設した構成とすることで、この可動部を収納部、即ち収納部に保持した袋体に対して離反する方向に退避回動させることができる。しかも、例えば、収納部から袋体を引き上げる際、上動する袋体とこの可動部との当接押圧によってこの可動部が収納部から離反する方向に退避回動するように構成すれば、上動する袋体に連動して可動部を作動させる複雑な作動機構などを必要とせずに極めて簡易な構成でありながら本発明の秀れた機能を確実に発揮し得る一層実用性に秀れた袋保持装置となる。
【0027】
また、請求項4,5記載の発明においては、収納部から袋体を引き上げる際にこの袋体から前記可動部が退避回動するだけでなく、袋体の引き上げが終わるとこの可動部が自動的に元の位置に戻り復帰回動するから、引き続き、収納部に他の袋体を保持して詰入体の注入作業を行うことができ、よって、例えば大量の袋体に次々と一層作業能率良く詰入体の注入作業を行うことができ、一層実用性に秀れた袋保持体となる。
【0028】
また、請求項6記載の発明においては、袋保持体の収納部に、詰入体を注入された袋体が膨らんで大きくなれるスペースが確保されるのでこの収納部に保持した袋体に詰入体を良好に注入できることとなる。
【0029】
また、例えば上記のようにこの周壁部の一部若しくは全部を可動部とし、この可動部が袋体との当接押圧により退避回動するように構成しておけば、下方程幅広となるように収納部を設定したことに起因して袋体が取り出しにくくなってしまうといった問題も生ぜず、更に例えばこの可動部の重心位置がこの可動部と接地部との枢着箇所よりも必然的に収納部内方寄りとなるため、この可動部が自重により戻り復帰回動する上記の構成を一層簡易に実現し得るなど、一層実用性に秀れた袋保持装置となる。
【0030】
また、請求項7記載の発明においては、袋保持体の収納部に配設した袋体の開口縁を、この袋保持体の周壁部の上部に折り返し係止することでこの袋体の開口縁を開口状態に保持してこの袋体を収納部に開口状態に保持する簡易な開口縁支持部の構成を採用したので、一層簡易設計実現可能で実用性に秀れた袋保持装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0032】
袋保持体Aの周壁部3に囲われる収納部2に土嚢用の袋体1を配設し、この袋体1の開口縁1aを前記周壁部3の上部に設けた開口縁支持部4に支持してこの袋体1を収容部2に開口状態に保持する。
【0033】
このように袋保持体Aによって袋体1を開口状態に保持し、この開口状態の袋体1に、例えば土砂や水や粒体などの様々な詰入体sを注入する作業が行える。
【0034】
即ち、袋体1を例えば作業者が直接手で保持する必要がなく、それだけ手間と人手を削減でき作業性良くしかも安全に袋体1に詰入体sを注入する作業が行えることとなる。
【0035】
また、このように詰入体sを注入し終えた袋体1を、袋保持体Aの収納部2の上部開口部2aから引き上げて取り出す。
【0036】
この際、袋体1は詰入体sを注入して大きくなっているために、この袋体1と、収納部2を構成する周壁部3との接触(圧接)により収納部2から袋体1を取り出せなかったり、袋体1の引き上げに追従して袋保持体A自体も引き上がってしまう懸念があるが、本発明においては、この詰入体sを注入して大きくなった袋体1を保持する前記周壁部3の一部若しくは全部をこの袋体1と離反する退避方向に可動させる可動部5を設けた構成とし、且つこの可動部5は、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際にこの袋体1の上動により作動して前記袋体1に対して退避可動するように構成しているので、前記袋体1を引き上げる際に懸念される前記周壁部3と袋体1との接触による袋体1の取り出しにくさや袋保持体Aが袋体1の引き上げに追従して持ち上がってしまう問題が生ぜず、可動部5の前記袋体1からの離反によってこの袋保持体Aの収納部2からの前記袋体1の引き上げ取り出しを簡単にしかもスムーズに達成できることとなる。
【0037】
即ち、これまでは詰入体sを注入して大きくなった袋体1を袋保持体Aの収納部2の上部開口部2aから持ち上げて取り出して所定の位置に適宜移動させるといったことができず、例えば、図10に図示したように、先ず袋保持体A自体を持ち上げて袋体1から取り外し、次いで袋体1の移動を行う面倒な作業を行っていたところを、本発明においては、単純に袋体1を収納部2の上部開口部2aから引き上げる操作によってこの袋体1をこの収納部2から簡単且つスムーズに取り出すことができる。
【0038】
従って、例えば、土嚢用の袋体1を袋保持体Aに開口状態に保持し、この袋体1に土嚢用の土砂などの詰入体sを注入し、注入し終えた袋体1はこの袋保持体Aの収納部2から簡単に取り出して所定箇所に適宜運搬し、新しい袋体1を袋保持体Aに保持して引き続き詰入体sの注入作業を行うことで、大量の土嚢を極めて簡単しかもスピーディーに作製するといったことが可能である。
【0039】
また、例えば、前記袋保持体Aの周壁部3の一部若しくは全部を前記可動部5として構成し、この可動部5は、接地部6に枢着してこの接地部6との枢着箇所を支点に接地面aに対して回動自在に立設した構成とした場合には、この可動部5を前記接地部6との枢着箇所を支点に収納部2から離反する方向に回動させることで、この収納部2に保持された袋体1からこの可動部5を退避可動させることができる。即ち、袋体1を収納部2の上部開口部2aから引き上げて取り出す際にこの可動部5をこの袋体1から退避可動させ得る構成を簡易な構成で確実に達成できることとなる。
【0040】
特に、例えばこの可動部5は、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際に、この袋体1の上動によるこの袋体1と前記可動部5との当接押圧によって、この可動部5が前記接地部6との枢着箇所を支点に前記収納部2から離反する方向に退避回動するように構成した場合には、例えば前記袋体1の上動に連動してこの可動部5を作動して退避可動(退避回動)させるために特別な連動装置を設けるといった必要がなく、単に袋体1とこの可動部5との当接押圧によりこの可動部5が自然に必要な回動量だけ退避回動することとなり、簡易構成でありながら本発明の機能を確実に発揮し得る秀れた構成となる。
【0041】
更に、例えば、前記可動部5は、前記袋体1の上動によるこの袋体1と前記可動部5との当接押圧によって、この可動部5が前記接地部6との枢着箇所を支点に前記収納部2から離反する方向に退避回動した後、この袋体1と可動部5との当接押圧が解除されることによって、この可動部5が前記収納部2に近接する方向に戻り復帰回動するように構成すれば、袋体1を収納部2の上部開口部2aから引き上げて取り出した後、この袋体1に対して退避可動(退避回動)した可動部5を例えば手動で元の位置(即ち、袋体1を開口状態に保持できる初期位置)に戻す作業を行わずとも可動部5を元の位置に復帰回動させることができる。しかも、例えば、可動部5が自重により自動的に元の位置に戻り復帰回動するように重心位置を設定するなどにより簡易に実現できる。
【0042】
従って、例えばこの袋保持体Aを使用して大量の袋体1を次々と取り代えて大量の袋体1に次々と詰入体sを注入させていく作業を極めて効率的に行えることとなる。
【0043】
また、例えば、前記袋保持体Aの収納部2が下方程幅広な形状となるように、この収納部2を構成する前記周壁部3の収納部2側内面の形状を設定した場合には、この収納部2に保持された袋体1が、この収納部2内で前記詰入体sにより十分に膨らんで大きくなれるスペースが確保されるために袋体1に詰入体sを良好に注入できることとなる。また、この収納部2から袋体1を引き上げて取り出す際、収納部2が下方程幅広となるように設定した周壁部3は、引き上げられる袋体1と一層接触し易くなってしまうが、例えば上記のようにこの周壁部3の一部若しくは全部を可動部5とし、この可動部5が袋体1との当接押圧により退避回動するように構成しておけば、下方程幅広となるように収納部2を設定したことに起因して袋体1が取り出しにくくなってしまうといった問題も生ぜず、更に例えばこの可動部5の重心位置がこの可動部5と接地部6との枢着箇所よりも必然的に収納部2内方寄りとなるため、この可動部5が自重により戻り復帰回動する上記の構成をも、一層簡易に実現できることとなる。
【0044】
また、前記袋保持体Aの周壁部3の上縁部を平面視略環状に構成し、前記保持部2に配設した前記袋体Aの開口縁1aを外側に折り返してこの袋体Aの開口縁1aをこの周壁部3の上縁部に折り返し係止し得るように構成して、この周壁部3の上縁部をこの袋体Aの開口縁1aを支持して開口状態に保持するための前記開口縁支持部4として構成した場合には、袋体1の開口縁1aを単に折り返し係止するシンプルな構成で、一層簡易設計実現可能となる。
【実施例】
【0045】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0046】
本実施例は、袋体1を開口状態に保持してこの袋体1に土砂や水や粒体などの詰入体sを注入する袋保持装置である。
【0047】
また、本実施例は、土嚢用の麻製の袋体1を開口状態に保持し、この袋体1に前記詰入体sとして土嚢用の土砂を注入して土嚢を作製する場合に使用する袋保持装置である。尚、例えば水嚢用の袋体1を開口状態に保持して水を注入して水嚢を製作する場合に使用する袋保持装置として構成するなど、本実施例以外の用途に使用する構成としても良い。
【0048】
本実施例の袋保持装置は、前記袋体1を収納部2に保持する袋保持体Aから成り、この袋保持体Aは、前記収納部2を形成する周壁部3の上部に前記袋体1の開口縁1aを支持して開口状態に保持する開口縁支持部4を設けている。
【0049】
袋保持体Aは、金属製杆体で環状(略正方形状)に形成した接地部6に、金属製杆体で構成した周壁部3を立設してこの周壁部3に囲まれる前記収納部2を形成した構成である。
【0050】
また、この袋保持体Aには前記収納部2に保持した前記袋体1に詰入体sを注入して大きくなったこの袋体1を保持する前記周壁部3の一部若しくは全部をこの袋体1と離反する退避方向に可動させる可動部5を設けている。尚、本実施例においては、周壁部3自体を、即ち周壁部3全体を可動部5として構成する。
【0051】
具体的には、図1に図示したように、周壁部3は、金属製杆体で半筒状に構成した柵状の左右一対の可動部5から成る囲い柵状に構成している。
【0052】
また、収納部2の形状が下方程幅広となるようにこの収納部2を構成する前記周壁部3、即ち左右一対の可動部5の収納部2側内面の形状を設定している。
【0053】
具体的には、この周壁部3が下方程幅広な略錐台形状(テーパ形状)となるように前記可動部5の形状を設定している。
【0054】
従って、この収納部2に保持した袋体1に土砂(詰入体s)を注入した際にこの袋体1の下部側が膨らんで大きくなるためのスペースが収納部2に十分に確保され、袋体1に良好に土砂を注入できる。
【0055】
この半筒状の柵状に構成した一対の可動部5は夫々、下端部を接地部6に枢着してこの接地部6との枢着箇所を支点に接地面aに対して回動自在に立設した構成である。
【0056】
具体的には、図1及び図3に図示したように、接地部6の所定箇所に嵌挿固定した枢着連結部材7に、可動部5の下端部を回動自在に軸着し、この枢着連結部材7を介して一対の可動部5を夫々接地部6に回動自在に枢着連結した構成である。尚、この一対の可動部5の下端部はコ字状に構成され、互いのコ字開口側を対向状態にして左右一対に設けられ、更に図1に図示したように、このコ字状の下端部のコ字開口側と反対のコ字基端側を前記枢着連結部材7に軸着した構成としている。尚、この可動部5と接地部6との枢着構造は、本実施例に限られるものではなく、どのような枢着構造を採用しても良い。
【0057】
この左右一対の可動部5は、前記収納部2の上部開口部2aから前記袋体1を引き上げて取り出す際にこの袋体1の上動により作動して退避可動する。具体的には、図3に図示したように、袋保持体Aの収納部2の上部開口部2aから袋体1を持ち上げる際に、この
上動する袋体1との各可動部5との当接押圧により、各可動部5が前記接地部6との枢着箇所を支点に前記収納部2から離反する方向に退避回動するように構成している。
【0058】
また、この左右一対の可動部5は、袋体1と各可動部5との当接押圧により前記収納部2から離反する方向に退避回動した後、この袋体1と各可動部5との当接押圧が解除されることによって、図4に図示したように、各可動部5が前記収納部2に近接する方向に戻り復帰回動するように構成している。具体的には、各可動部5が自重によって前記戻り復帰回動するようにこの各可動部5の重心位置を設定する。尚、本実施例では、図1に図示したように、各可動部5を半筒状に構成して、この可動部5のコ字状の下端部のコ字開口側と反対のコ字基端側を前記枢着連結部材7を介して接地部6に軸着した構成のため、この可動部5の前記接地部6との枢着箇所に比してこの可動部5の重心が必然的に収納部2内方側に位置し、よって、各可動部5は自重により良好に上述の戻り復帰回動を行う構成である。
【0059】
また、この左右一対の可動部5は、収納部2の周囲を取り囲むように立設した状態、即ち図1に図示したようにこの左右一対の可動部5により囲い柵状の前記周壁部3を成す立設状態を初期位置とし、この各可動部5が上述の戻り復帰回動によって収納部2に近接する方向に回動する際、この初期位置で各可動部5の戻り復帰回動が停止するように、この初期位置において各可動部5の下端部が前記接地部6に載置当接するように構成している。
【0060】
尚、この一対の可動部5を回動する際に、作業者がこの一対の可動部5間に手などを挟むことがないように、この左右一対の可動部5を閉じ回動、即ち図1に図示したように、初期位置に合わせた際にもこの一対の可動部5同志は接触せず、この一対の可動部5間に間隙が生ずるように設定している。
【0061】
また、この袋保持体Aの周壁部3の上縁部は平面視略環状に構成している。具体的には、左右一対の可動部5の上縁部は平面視略半円状に形成し、この左右一対の可動部5を閉じ回動して図1及び図5に図示したように初期位置に合わせた際、この左右一対の可動部5の上縁部により平面視略環状(円環状)の前記周壁部3の上縁部が形成されるように構成している。
【0062】
図2に図示したように、前記保持部2に配設した前記袋体1の開口縁1aを外側に折り返してこの袋体1の開口縁1aをこの周壁部3の上縁部に折り返し係止することで、この周壁部3の上縁部をこの袋体1の開口縁1aを支持して開口状態に保持するための前記開口縁支持部4として構成している。尚、この周壁部3の上縁部の前記袋体1の上縁部1aを折り返し係止する部位は、スリップし難い部材で構成、若しくはスリップし難い部材を設ける構成とする。
【0063】
この周壁部3の上縁部に袋体1の開口縁1aを支持する開口縁支持部4の構成は本実施例に限られるものではなく、他にも、本実施例と同様の機能を発揮し得る開口縁支持部4であれば良い。例えば、袋体1の開口縁1aを周壁部3の上縁部に折り返し係止した後、図6及び図7に図示したように、この外側に折り返した袋体1の開口縁1aとこの袋体1とを止着ピン8で止着固定する構成とした場合には、この袋体1を抜け止め状態に一層強固に周壁部3の上部に支持できる。また、この場合は、図6に図示したように、止着ピン8をチェーン9を介して袋保持体Aの所定箇所に吊り下げ配設した構成としておけば、この止着ピン8を使用したい時に直ちにこの袋保持体Aに吊り下げられている止着ピン8を使用して前記袋体1の上縁部1aの止着固定が行える。
【0064】
尚、本実施例においては、この袋保持体Aの周壁部3の上縁部の形状を、図5に図示したように、略楕円状に形成している。
【0065】
従って、この袋保持体Aの周壁部3の略楕円状の上縁部に開口縁1aを支持した前記袋体1の開口形状も楕円形状とすることができ、この袋体1に土砂を注入する際の袋体1の開口形状を横広とすることができるので、例えば図2のように、ショベルカーのショベルに大きな注ぎ手段によって土砂を注ぐ場合にも略楕円形状の開口形状であるが故に、非常に注入し易い。
【0066】
本実施例は、上述のように構成したから、袋保持体Aの収納部2に土嚢用の袋体1を配設し、この袋体1の上部開口縁1aをこの収納部2を構成する周壁部3の上部に折り返し係止してこの袋体1を袋保持体Aに上部開口状態に保持(セット)して、図2に図示したように、ショベルカーでこの袋体1に土嚢用の土砂(詰入体s)を注入する作業を行うことができる。
【0067】
また、土砂を注入し終えた袋体1は、開口縁1aを紐などで締結し、図3に図示したように、クレーンにより収納部2の上部開口部2aから上方に引き上げて取り出す。
【0068】
この際、袋体1の上動により前記袋保持体Aの周壁部3、即ち左右一対の可動部5が、前記袋体1との当接押圧によって自動的に退避回動することとなるので、この袋体1と周壁部3とが接触して引っ掛かったりし、それによってこの袋体1の引き上げに袋保持体Aが追従して持ち上がってしまったりする問題が生じ得ず、前記可動部5の前記袋体1からの離反によってこの袋保持体Aの収納部2から前記袋体1を極めてスムーズに引っ掛かりなく引き上げて取り出せる。
【0069】
このように袋体1が引き上げて取り出された収納部2は、可動部5が戻り復帰回動することにより、直ちに次の袋体1をセット(開口状態に保持)できる状態となる。
【0070】
よって、本発明は、この袋保持体Aに袋体1を保持して土砂を注入し、注入し終えた袋体(土嚢)はこの袋保持体Aから単純に引き上げるだけでスムーズに取り外しでき所定箇所に適宜移動・運搬させることができ、引き続き新しい袋体1をこの袋保持体Aにセットすることで次々と土嚢を作製でき、これまでにない高い作業性と秀れた生産性を有し、この種の土嚢作製用の袋保持装置としての極めて高い実用価値を有する画期的な袋保持装置となる。
【0071】
また、本実施例は、接地部6が例えば単なる脚体などではなく環状の構成とし、接地面aとそれだけ広い範囲で接地当接するので接地安定性に秀れ、接地面aの状態が良く無くとも、それだけ接地安定性良く接地でき良好に作業を進展できる。
【0072】
また、本実施例は、図1に図示したように、金属製杆体からなる柵枠状(フレーム状)の構成である為、軽量にして持ち運びが容易な構成とすることも簡易に達成でき、また、複雑な構成などが不要な簡易構成故に、量産化も容易である。
【0073】
尚、本実施例は、複数の袋保持体Aを互いの可動部5が当接しない方向に並設状態に連設した構成としても良く、この場合には、一層効率的に生産性良く大量の土嚢を作製できることとなる。
【0074】
また、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施例に係る袋保持装置の説明斜視図である。
【図2】本実施例に係る袋保持装置の使用状態を示す説明図である。
【図3】本実施例に係る袋保持装置の使用状態を示す説明図である。
【図4】本実施例に係る袋保持装置の使用状態を示す説明図である。
【図5】本実施例に係る袋保持装置の説明平面図である。
【図6】本実施例に係る袋保持装置の別例を示す説明図である。
【図7】本実施例に係る袋保持装置の別例を示す説明図である。
【図8】従来例を示す説明図である。
【図9】従来例を示す説明図である。
【図10】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 袋体
2 収納部
2a 上部開口部
3 周壁部
4 開口縁支持部
5 可動部
6 接地部
A 袋保持体
a 接地面
s 詰入体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体を開口状態に保持してこの袋体に土砂や水や粒体などの詰入体を注入する袋保持装置において、前記袋体を収納部に保持する袋保持体から成り、この袋保持体は、前記収納部を形成する周壁部の上部に前記袋体の開口縁を支持して開口状態に保持する開口縁支持部を設けると共に、この袋保持体には前記収納部に保持した前記袋体に詰入体を注入して大きくなったこの袋体を保持する前記周壁部の一部若しくは全部をこの袋体と離反する退避方向に可動させる可動部を設けて、前記収納部の上部開口部から前記袋体を引き上げて取り出す際にこの袋体の上動により前記袋保持体の可動部が作動して退避可動することで、この袋体の引き上げに前記周壁部と袋体との接触により前記袋保持体が追従せず可動部の前記袋体からの離反によってこの袋保持体の収納部から前記袋体を引き上げて取り出せるように構成したことを特徴とする袋保持装置。
【請求項2】
前記袋保持体の周壁部の一部若しくは全部を前記可動部として構成し、この可動部は、接地部に枢着してこの接地部との枢着箇所を支点に接地面に対して回動自在に立設した構成としたことを特徴とする請求項1記載の袋保持装置。
【請求項3】
前記収納部の上部開口部から前記袋体を引き上げて取り出す際に、この袋体の上動によるこの袋体と前記可動部との当接押圧によって、この可動部が前記接地部との枢着箇所を支点に前記収納部から離反する方向に退避回動するように構成したことを特徴とする請求項2記載の袋保持装置。
【請求項4】
前記可動部は、前記袋体の上動によるこの袋体と前記可動部との当接押圧によって、この可動部が前記接地部との枢着箇所を支点に前記収納部から離反する方向に退避回動した後、この袋体と可動部との当接押圧が解除されることによって、この可動部が前記収納部に近接する方向に戻り復帰回動するように構成したことを特徴とする請求項3記載の袋保持装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記袋体とこの可動部との当接押圧が解除されることによって、この可動部の自重により前記収納部に近接する方向に戻り復帰回動するようにこの可動部の重心位置を設定したことを特徴とする請求項4記載の袋保持装置。
【請求項6】
前記袋保持体の収納部が下方程幅広な形状となるように、この収納部を構成する前記周壁部の収納部側内面の形状を設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の袋保持装置。
【請求項7】
前記袋保持体の周壁部の上縁部を平面視略環状に構成し、前記保持部に配設した前記袋体の開口縁を外側に折り返してこの袋体の開口縁をこの周壁部の上縁部に折り返し係止し得るように構成して、この周壁部の上縁部をこの袋体の開口縁を支持して開口状態に保持するための前記開口縁支持部として構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の袋保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−198012(P2007−198012A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17942(P2006−17942)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(596103422)上越鉄工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】