説明

袋入り納豆

【課題】合成樹脂製の小袋に生成された納豆を封入して苦味の解消と発酵を抑制(膨れ防止)した袋入り納豆を提供する。
【解決手段】袋入り納豆において、膨れ防止手段が、塩分濃度0.2%乃至10%の調味材及び/又はPH5.5以下とするPH調整剤とから成る。このほか、膨れ防止手段として発酵抑制物質の添加と味付けや納豆の小袋への充填前又は充填包装後の凍結処理などが挙げられ、苦味解消(苦味抑制手段)には充填する納豆を発酵完了後0℃乃至5℃の冷蔵で2日乃至4日の熟成が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直ぐ食べられるように予め調味された納豆を高品質に1食分ずつ袋包装した納豆に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている納豆は、発泡トレーや紙カップなどの容器に充填された納豆に、たれ、からしなどが添付されているのが一般的である。この見慣れた納豆にはいくつかの問題点がある。(1)これを食するときには、納豆表面に載っているフィルムを取り除き、添付小袋を開封して中身を出し、納豆に加えてかき混ぜるという作業が発生する。人によってはわずらわしさを感じる。(2)家庭の食卓で使用するには容器のまま使えて便利ではあるが、外食でさまざまなシチュエーションの中で使用するには使い勝手が悪いケースが多い。(3)通常納豆は、厳密な冷蔵保管しないとアンモニア臭やチロシンの結晶析出又は乾燥による品質劣化が起きやすい。(4)納豆を長期保存の目的で冷凍貯蔵する場合、通常納豆は特に急いで解凍させたい場合に不便である。(5)ごみ問題で特に納豆の容器は汚く、洗いづらく処理に困るだけでなく、ゴミの量も多い。以上の課題を解決するために納豆そのものまたは予め調味された納豆を小袋包装形態で提供することが考えられる。しかし、この形態には2つの問題点がある。ひとつは納豆の保管温度を10℃以上の条件においておくと膨れが発生することである。もうひとつ問題点は袋内部は酸欠によって苦味が発生することである。
ところで、酸素の必要量を充たすことのできる発酵可能な袋を使用し、取扱い時手を汚さず取り出しが簡単な袋入り納豆は特開2004−57187号公報(特許文献1)に提案されている。発酵生成された納豆を内袋に充填し、該内袋を外袋に収めて配送コストや陳列スペースを節約する技術が特開平6−199386号公報(特許文献2)に開示されている。この特許文献1、2は袋内部に通気性を図っているものであるから、酸欠による苦味発生を解消しても液状の調味料を添加できない上、発酵抑制技術の提案はないものである。また、納豆を耐熱性のプラスチック袋に真空封入する技術は特開2003−235517号公報(特許文献3)に開示されているが、この技術は納豆の加熱殺菌処理による発酵抑制には効果があるが、風味や具材を変質させる点で有効ではなく、しかも、加熱殺菌処理以外の苦味解消の技術は提案されていない。
このほか、可食性の膜で納豆を包み容器で包装した納豆は、特開2003−70438号公報(特許文献4)や登録実用新案第3127452号公報(特許文献5)に提案されているが、調味料の添加に制限がある上、発酵抑制や苦味解消の技術は提案されていない。
【特許文献1】特開2004−57187号公報
【特許文献2】特開平6−199386号公報
【特許文献3】特開2003−235517号公報
【特許文献4】特開2003−70438号公報
【特許文献5】登録実用新案第3127452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来技術に鑑みて、張り合せた積層フィルムの小袋に生成された納豆を封入して苦味の解消と発酵抑制(膨れ防止)によって納豆を高品質に保持するとともに、調味料や具材などを変質なく添加できる利便性に優れた袋入り納豆を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に記載した袋入り納豆は、生成された納豆を合成樹脂製の耐熱性又は冷凍破裂しない小袋に封入し、膨れ防止手段を講じて成る袋入り納豆において、前記膨れ防止手段が、塩分濃度0.2%乃至10%の調味材及び/又はPH(水素イオン濃度指数)5.5以下とするPH調整剤から成る。
請求項2記載の袋入り納豆は、請求項1記載の袋入り納豆において、膨れ防止手段が、発酵抑制物質の添加と味付けとから成る。
請求項3記載の袋入り納豆は、請求項1記載の袋入り納豆において、膨れ防止手段が、納豆の小袋への充填包装後の凍結処理から成る。
請求項4記載の袋入り納豆は、請求項1記載の袋入り納豆において、膨れ防止手段が、納豆の小袋への充填前の凍結処理から成る。
請求項5記載の袋入り納豆は、請求項1記載の袋入り納豆に苦味抑制手段を講じて成る袋入り納豆において、前記苦味抑制手段が、充填する納豆を発酵完了後0℃乃至5℃の冷蔵で2日乃至4日の熟成から成る。
【発明の効果】
【0005】
本発明の袋入り納豆は小袋に充填包装された納豆が、酸性域へのPH調整や塩分濃度の調整、発酵抑制物質の添加、味付けしない納豆における包装後の加熱処理、さらにはチルド保管する前に一度冷凍させるなどで過剰な発酵が抑制されるとともに、調味の工夫や小袋充填する納豆の熟度が工夫されて苦味が解消された状態で提供されるから、高品質の納豆として広く外食産業も含め食事形態に多大の利便性を提供する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の袋入り納豆の納豆を充填する小袋は、横長矩形状で短尺方向(縦方向)に裂け易いプラスチックフィルム製であり、納豆の内容量は通常35gであるが15g、20g、25g、30gなどでも提供される。また、小袋に充填される納豆は、調味納豆、具材混合納豆、調味しないプレーン納豆など種々である。
そして、充填包装後の発酵ガスの発生による膨れを防止するには、調味段階で納豆に0.2%乃至10%の塩分濃度に相当する調味を施したり、酢やクエン酸や梅肉などの酸性材を加えてPHを5.5以下に調整する。また、苦味の抑制には、調味納豆であれば調味の工夫で苦味はマスキング可能であるが、プレーン納豆(味付けなしの納豆)の場合は、発酵完了後の納豆を冷蔵(0℃乃至5℃)で2日乃至4日の熟成により苦味を解消する。
【実施例1】
【0007】
本発明の醤油味の袋入り納豆Aを実施例で説明すると、原材料1は納豆1a(大豆はアメリカまたはカナダ産で遺伝子組み換えでないものと納豆菌)、刻みねぎ、ぶどう糖果糖液糖、砂糖、粉末醤油、酵母エキス、食塩、醤油、かつおエキス、発酵調味料、食酢、こんぶエキス、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素(原材料の一部に小麦粉、豚肉、乳を含む)であるが、内容量は35gである。
そして、原材料1の納豆1aは発酵終了した当日のものを直ぐ使用することは避け、0.5℃乃至5℃の冷蔵で2日乃至4日間で熟成させたもので、遊離アミノ酸を増加させて苦味の発生を解消したものである。
膨れ防止手段としては、(1)原材料1の調味料、食塩、醤油等の塩分濃度が0.2%乃至10%の調味とし、(2)食酢やクエン酸その他PH調整剤によりPH5.5以下とし、このほか、梅肉などの酸性の食品素材も使用される。(3)添加物使用可能であれば発酵抑制剤として認可されているニューレストール(日本新薬株式会社製)やぶどう糖果糖液糖が選択される。(4)味付けしない納豆のみを小袋充填する場合の膨れ防止策としては、-15℃以下で凍結させて1日以上経過させることが有効であることが判明した。このことは、凍結させることで膨れの原因となる増殖型の栄養細胞が死滅するためであり、そのために解凍後の品質が安定する。
このように処理された原材料1は図1に示すように、展開されたプラスチックフィルム2の内面に盛られ、二つ折りされて図2に示すように周縁3の3辺が接着されて小袋状(棒状)の袋入り納豆Aが完成する。
完成された袋入り納豆Aは、一端の矢印の切り口4より短手方向に簡単に引き裂かれ、他端を押し潰せば直接醤油味の納豆1aを口にすることができる。
【実施例2】
【0008】
次に、キムチ味の袋入り納豆Bを実施例により説明すると、原材料1は納豆1a(大豆はアメリカまたはカナダ産で遺伝子組み換えでないものと納豆菌)、白菜、りんご、糖類(砂糖、ぶどう糖果糖液糖、砂糖)、醤油、にんにく、酵母エキス、食塩、醸造酢、唐辛子、魚醤、かつお粉末、調味料(アミノ酸等)、パプリカ色素(原材料の一部に小麦、えび、乳を含む)であるが、内容量は35gである。
そして前記の醤油味の袋入り納豆Aにおける処理と同様に、苦味解消と膨れ防止策が図られ、図2に示すようにキムチ味の袋入り納豆Bが完成する。
特開2003−235517(P2003−235517A)で開示されているように納豆の苦味解消と膨れ防止の解消策として加熱処理が有効である。具体的には70℃で20分以上の熱湯処理条件で加熱して納豆菌の栄養細胞の殺菌と酵素の失活を行うものである。
しかし、調味納豆では、特に醤油味ベースでは風味の低下が避けられず、混合する具材においても加熱による食感や風味の変質が伴うため使用できる範囲が限られる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は、熟成されまたは調味されるなどで処理された納豆が、小袋を押し潰すだけで簡単に食することができるから、個人消費でも屋内外を問わず種々の形態で食される利便性が高くその需要は益々期待され、外食産業にとっても種々のシチュエーションで活用できるからその方面での需要も多大となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に使用されるプラスチックフィルム2を展開し、内面を上面にした平面図。
【図2】本発明の袋入り納豆A(B)の斜視図。
【符号の説明】
【0011】
1:原材料
1a:納豆
2:プラスチックフィルム
3:周縁
4:切り口
A、B:袋入り納豆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成された納豆を合成樹脂製の耐熱性の小袋に封入し、膨れ防止手段を講じて成る袋入り納豆において、
前記膨れ防止手段が、塩分濃度0.2%乃至10%の調味材及び/又はPH(水素イオン濃度指数)5.5以下とするPH調整剤から成る袋入り納豆。
【請求項2】
膨れ防止手段が、発酵抑制物質の添加と味付けとから成る請求項1記載の袋入り納豆。
【請求項3】
膨れ防止手段が、納豆の小袋への充填包装後の凍結処理から成る請求項1記載の袋入り納豆。
【請求項4】
膨れ防止手段が、納豆の小袋への充填前の凍結処理から成る請求項1記載の袋入り納豆。
【請求項5】
請求項1記載の袋入り納豆に苦味抑制手段を講じて成る袋入り納豆において、
前記苦味抑制手段が、充填する納豆を発酵完了後0℃乃至5℃の冷蔵で2日乃至4日の熟成から成る。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−153385(P2009−153385A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331439(P2007−331439)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(391037917)株式会社ヤマダフーズ (6)
【Fターム(参考)】