袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法
【課題】 袋状ワークの表面処理におけるめっき表面に塗布する防錆油の付着量を最適化させるように、防錆油の塗布技術を改善した袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法を提供する。
【解決手段】 袋状空間5を有する袋状ワークを搬送しながら、所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布する表面処理ラインにおいて、袋状空間5の開口部6を上向きとした姿勢で、袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、記袋状ワークの引上げの際に、袋状空間5の開口部6を下向きとした姿勢に変換させて防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、姿勢変換された袋状ワークの袋状空間5内に配置されて、該袋状空間5内の空気をそこに付着している防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間5内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】 袋状空間5を有する袋状ワークを搬送しながら、所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布する表面処理ラインにおいて、袋状空間5の開口部6を上向きとした姿勢で、袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、記袋状ワークの引上げの際に、袋状空間5の開口部6を下向きとした姿勢に変換させて防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、姿勢変換された袋状ワークの袋状空間5内に配置されて、該袋状空間5内の空気をそこに付着している防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間5内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋ナット等の袋状ワークにめっき処理等を施すための袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のホイールをハブに固定するハブナットとしての袋ナット等の袋状ワークには、装飾や防錆のために、めっき処理などの表面処理が施されている。かかる表面処理おいて、各処理工程に袋状ワークを搬送するため、木の枝状になったワーク保持治具が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このワーク保持治具の各枝部に、袋状ワークをばねの弾性力が作用するように差し入れて保持し、かかる状態の袋状ワークを、脱脂槽・アルカリ電解槽・酸電解槽や、多層のめっき被膜を形成するための各種めっき槽、各処理槽間の水洗槽などにおける各処理工程が一連の流れで実施されることにより、めっき処理などの表面処理が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−127498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、このような表面処理の工程において、めっき処理が完了した袋状ワークの表面に防錆油を塗布して工場出荷している。然しながら、防錆油の塗布量が必要以上に多いと、袋ナットのめねじ表面の防錆油の膜が厚くなり、使用時の締め付けトルクに影響を与え、本来の締め付けトルクで締め付けられなくなったり、また、その後の包装工程でのハンドリング工程で、余分な防錆油が他の関連装置に付着して装置稼動に影響をおよぼすような問題などを解消するための防錆油塗布技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明の課題は、袋状ワークの表面処理におけるめっき表面に塗布する防錆油の付着量を最適化させるように、防錆油の塗布技術を改善した袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインは、袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理ラインにおいて、袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成とすることにより、所定のめっき被膜を形成した後、袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬工程と、袋状ワークの袋状空間内を吸引する吸引工程又は/及び噴射する噴射工程と含む第一の油除去工程と、袋状ワークを軸回転させて防錆油を飛散させる第二の油除去工程とを、連続させるようにした表面処理方法を提供できる。しかも、第一の油除去部によって袋状空間内を吸引又は/及び噴射し、さらに袋状空間内の油付着量を低減し、さらに袋状ワーク表面の防錆油を遠心力で飛散させることにより、袋状ワークの余分な防錆油を除去して最適化できるため、袋状ワークとして、例えば袋ナットであれば、めねじ部に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナットの使用時の締め付けトルクの増加を防止でき、かつその後のハンドリング時における他の個所への油付着も低減できることとなる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインの前記第一の油除去部によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とすることにより、袋状ワークの袋状空間内の防錆油の付着量を最適化できる。また、表面処理ラインの第二の油除去部は、袋状ワーク表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させることを特徴とすることにより、袋状ワークの袋状空間内や袋状ワーク表面の防錆油は膜状であるため、その付着量も少なく防錆油の使用量の低減を図ることができ、かつ膜状の防錆油は油滴に成長しにくく、垂れ落ちや、他の個所への油付着を低減できる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインの袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去部による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とすることにより、袋状ワークの工程時間を短縮させることができ、生産性の向上に繋がる。また、前記第一の油除去工程による噴射の後に、吸引が行われることを特徴とすることにより、噴射時に発生する防錆油のオイルミストも吸引除去できるため、オイルミストの飛散を防止できるので、周囲環境の維持を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は袋状ワークの一例として袋ナットを示すものである。袋ナット1はめねじ部4を有する本体2と、本体2のおねじ部材の螺入側とは反対側の開口を塞ぐキャップ部3とを備え、めねじ部4とその奥部の空所(ボルト等のおねじ部材の先端部が進入する部分)とにより袋状空間5が形成される。このような袋ナット1が、鍛造加工さらに転造もしくは切削等によるねじ加工、キャップ部3の溶接及び熱処理の後、洗浄や防錆、めっき処理等の表面処理のため、一連の流れで搬送されながら各工程が実施される。
【0012】
図2は、袋ナット1のめっき処理等の表面処理を行う表面処理ラインLを示す図である。図2において、表面処理ラインLは、そのライン基端側Laに配置される袋ナット1を供給するためのワーク供給部7から始まって、ライン終端側Lbに配置される表面処理済みの袋ナット1を排出するためのワーク排出部8とを備えている。
【0013】
また、表面処理ラインLにおけるワーク供給部7とワーク排出部8との間には、めっき処理等の表面処理の各工程を行うための各種処理液槽や各種処理部が設けられる。本例ではニッケルクロムメッキなどのめっき処理を袋ナット1に施し、めっき処理が完了した袋ナット1に防錆油を塗布し、後工程や出荷などのために排出させるようにしている。
【0014】
また、表面処理ラインLにおけるワーク供給部7とワーク排出部8とは、循環搬送路9によって接続されている。この循環搬送路9は、例えばチェーン等の無限軌道が、モーター等の駆動装置(図示せず)により循環させられるものであればよい。
【0015】
この循環搬送路9には、図3に示すように、袋ナット1を保持して搬送するためのワーク保持具10が配設されている。ワーク保持具10は、保持具本体10aから延出される中央ピン10bと、その中央ピン10bに対して左右対称に配置された左右ピン10cを備えている。これら3本のピンを使って先端側で袋ナット1を保持する。左右ピン10cは双方の間隔が変る程度に弾性変形可能で、かつ先端部が外側に向かって折れ曲がっている。
【0016】
袋ナット1を装着する際には、左右ピン10cに力を加えて双方の間隔を狭め、袋ナット1の開口部6から袋状空間5内に差し込み、力を緩めると、左右ピン10cが外側へ弾性変形する力が袋ナット1の袋状空間5の内面に加わるとともに、先端部が引っかかり、循環搬送路9を搬送される際の移動による振動などでは、簡単には抜けなくしている。
【0017】
このワーク保持具10は、図4に示すように、袋ナット1を個別に保持し、循環搬送路9における袋ナット1の搬送中での姿勢を、袋状空間5の開口部6を上向きとした姿勢から、その開口部6を下向き(本例では斜め下向き)とする姿勢に変換させるようにした姿勢変換機構11に連繋されるとともに、循環搬送路9の無限軌道によって移動制御される搬送移動体9aに接続されている。
【0018】
図5はこの姿勢反転機構11を示す概念図である。図5において、ワーク保持具10が固定される固定プレート11aには、油圧、空気圧によって作動するシリンダや、モーターなどの駆動機構11bが連繋されている。そして、この駆動機構11bの作動によって固定プレート11aを動かし、ワーク保持具10で保持される袋ナット1の姿勢を変換させるようにしている。
【0019】
また、図6に示すように、ワーク供給部7において、開口部6を上向きとなした姿勢の袋ナット1を整列(本例では10個とし、長手側を5列、短手側を2列)載置させて待機させる矩形状の移載トレー7aを配置している。この移載トレー7aは、循環搬送路9における待機位置X1まで移動制御される。このように複数の袋ナット1が表面処理ライン6の循環搬送路9(待機位置X1)に移載されたとき、複数の袋ナット1を一括して保持させるように、複数のワーク保持具10が固定プレート11aから吊り下げられた状態で固定されている。
【0020】
図2に戻り、表面処理ラインLにおいて、袋ナット1の表面処理に用いられる各種処理液槽として、脱脂等が行われる脱脂槽12、スケール除去が行われる陰極酸電解槽13、活性化が行われる陽極電解脱脂槽14、ニッケルクロムメッキが行われる各種めっき槽15、防錆油の塗布が行われる防錆液槽16を備えている。
【0021】
また、ニッケルクロムメッキが行われる各種めっき槽15で行われるめっきは、下層としてニッケルメッキを施しており、この場合には、例えば半光沢ニッケルメッキ又は光沢ニッケルメッキ等があり、それらのいずれか一方を施すこと又は相前後して半光沢及び光沢のめっきを別々のめっき槽で順番に行うこともできる。また、上層としてニッケルメッキ層に、クロムメッキを施している。
【0022】
また、表面処理ラインLにおける各種めっき槽15であって、袋ナット1のめっき被膜をニッケルクロムメッキとするためのクロムメッキが行われるクロムめっき槽15aと、防錆油の塗布が行われる防錆液槽16との間には、所定のめっき被膜が形成された袋ナット1を、常温水や温水によって洗浄するワーク洗浄工程に使用するワーク洗浄部17と、このワーク洗浄部17によるワーク洗浄工程を経た袋ナット1を乾燥するワーク乾燥工程に使用するワーク乾燥部18とが配置されている。
【0023】
ワーク洗浄部17は、循環搬送経路9において、水洗浄や温水洗浄するための複数の洗浄槽17aを連接している。また、ワーク乾燥部18の直前に位置するワーク洗浄部17の洗浄槽17aは、温水(40〜50℃程度)による洗浄が行われる。
【0024】
また、ワーク乾燥部18は、圧縮空気の噴射によって袋ナット1の表面に付着する水滴を除去する水滴除去装置18aと、この水滴除去装置18aによって水滴が除去された袋ナット1の表面の水分を除去する乾燥装置18bと、を備えている。
【0025】
水滴除去装置18aは、図7に示すように、袋ナット1を保持して搬送するワーク保持具10によって袋状空間5の開口部6を下向きとした姿勢で搬送される袋ナット1に対して、該袋ナット1の開口部6に向かって圧縮空気を噴射する複数の下方ノズル18a1と、袋ナット1のキャップ部3に向かって圧縮空気を噴射する複数の上方ノズル18a2とを備えている。これらのノズルは圧縮空気供給源(図示せず)に接続されている。
【0026】
また、乾燥装置18bは、図8に示すように、循環搬送経路9中に、複数のワーク保持具10によって一括搬送される複数の袋ナット1を通過させるようにしたトンネル状の乾燥炉18b1が配置されている。この乾燥炉18b1には、本例では200℃程度の熱風を供給する熱風供給装置18b2が接続され、乾燥炉18b1内に供給口18b3から熱風を供給して対流伝熱乾燥による装置となしている。また、乾燥炉18b1内には、搬送方向と直交する方向に、袋ナット1と熱風との接触を均一化するための仕切壁18b4が設けられている。なお、対流伝熱乾燥に代えて主として赤外線による輻射伝熱乾燥なども採用可能である。
【0027】
図9に示すように、防錆油の塗布が行われる防錆油塗布工程に使用する防錆液槽16を有する防錆油塗布部19は、ワーク乾燥部18よりも搬送方向下流側における循環搬送経路9に設けられるワーク取出位置X2に連設される。
【0028】
このワーク取出位置X2には、循環搬送経路9の外側(図の下側)に袋ナット1を移動するための移載搬送路20の基端側20aを連設している。この移載搬送路20の終端側20bに、防錆液槽16、ワーク回転部としてのワーク回転装置21の順で連設させている。
【0029】
移載搬送路20には、その基端側20aと終端側20bとの間を往復移動制御される矩形状の移動トレー20cが設けられる。また、ワーク取出位置X2には、乾燥工程が終了した複数の袋ナット1を仮置きするための矩形状の仮置きトレー8aが配置されている。また、図10に示すように、この仮置きトレー8aに載置された袋ナット1を移載搬送路20の基端側20aで待機する矩形状の移動トレー20cに載置させるためのチャック装置22が設けられている。このチャック装置22は袋ナット1を個別に把持するようにしたチャック部22aが複数設けられる。このチャック部22aは空気圧を利用して開閉制御される一対のチャック爪22bによって、袋ナット1を把持するものである。
【0030】
また、図11に示すように、移載搬送路20の終端側20bと、防錆液槽16との間を往復移動制御される移動トレー搬送機23が設けられている。この移動トレー搬送機23によって袋ナット1が整列載置された移動トレー20cの任意個所(例えば短手側の両側部もしくは長手側の両端部)を保持しながら、防錆液槽16まで搬送する。この防錆液槽16には、昇降制御される受け部材16aが設けられて防錆油浸漬部を構成している。この受け部材16aによって移動トレー20cを防錆油中に浸漬させる防錆油浸漬工程と、防錆液槽16の防錆油から袋ナット1を引き上げさせる引上工程とが行われる。
【0031】
また、図12に示すように、防錆液槽16と、該防錆液槽16とワーク回転装置21との中間位置X3までの間を往復移動制御させる移動トレー移動機24が設けられている。この移動トレー移動機24によって受け部材16a上の移動トレー20cの任意個所を保持しながら中間位置X3まで移動するようになしている。
【0032】
また、移動トレー移動機24には、中間位置X3に移動された移動トレー20cを反転させ、袋ナット1の開口部5を下向きとするために、油圧、空気圧によって作動するシリンダや、モーターなどの駆動機構(図示せず)を備えるワーク姿勢変換部としての反転機構25が設けられている。この反転機構25は移動トレー20cを反転させ、その反転時に袋ナット1を落とさないようにするものであればよい。例えば、図13に示すように、移動トレー20cの袋ナット1を上下の網状部材25aで挟んで保持し、上下の網状部材25aを反転させたり、また、移動トレー20cを使用し、この一対(2個)の移動トレー20cで袋ナット1を挟んで保持し、反転させるものが挙げられる。
【0033】
また、図12に戻り、この中間位置X3には、移動トレー20cにおける袋ナット1の開口部6(下向きである)に入り込むように移動制御される第一の油除去部の一部を構成する吸引部としての吸引ノズル26が複数設けられている。この吸引ノズル26は、図示しない吸引機能を備える吸引源(吸引ポンプや圧縮空気を利用したサクション発生器)に接続されている。この吸引ノズル26によって袋ナット1の袋状空間5内の空気をそこの内面に付着している余分な防錆油とともに吸引して除去するようにして、吸引工程による油除去工程が行われる。また、この吸引ノズル26を圧縮空気を噴射させるように共用して使用することも可能である。この場合には圧縮空気供給源(図示せず)が切換バルブ(図示せず)を介して接続されている。また、この吸引ノズル26に加えて圧縮空気を噴射する下方ノズル18a1と同様な別部材の噴射ノズル26aを使用することも可能である。この場合も噴射ノズル26aが袋ナット1の袋状空間5内に入り込むように移動制御される噴射部として構成され、袋状空間5内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させて、袋ナット1の袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油の油付着量を低減するようにした噴射工程による油除去工程が行われる。この吸引工程、噴射工程の組み合わせによって第一の油除去工程を行うことができる第一の油除去部が構成される。この第一の油除去部によって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。また、吸引ノズル26によって吸引される吸引量と噴射ノズル26aによって噴射される噴射量は、可変制御される。
【0034】
また、図14に示すように、中間位置X3とワーク回転部としてのワーク回転装置21との間を往復移動制御されるワーク移載機27が設けられている。このワーク移載機27は、上述のチャック装置22と同様なものを採用できる。このワーク移載機27によって、反転された移動トレー20cにおける複数の袋ナット1を第二の油除去部の一部であるワーク回転装置21に移載させている。
【0035】
この第二の油除去部(ワーク回転部)としてのワーク回転装置21は、第二の油除去工程(ワーク回転工程)に使用される。このワーク回転装置21は、図15に示すように、複数の袋ナット1に対応した複数の回転軸21aが設けられ、この回転軸21aは下端側に固定される従動プーリ21bと、モーターなどの回転駆動源21cの駆動プーリ21dとの間に掛け渡されるベルト21eによって所定方向に回転制御される。また、回転軸21aには袋ナット1の開口部6内に差し込まれる左右一対のバネ部材21fが設けられ、弾性力によって袋ナット1をその中心軸まわりに軸回転させるように、回転軸21aと共回りさせるようにしている。
【0036】
また、回転軸21aに袋ナット1のめねじ部4と螺合するおねじ部(図示せず)を設けて共回り可能にすることもできる。また、回転軸21aを筒状の中空部材で構成することによって、この回転軸21aを上述の吸引ノズル26のような吸引機能又は噴射ノズル26aのような噴射機能を具有させるものにすることもできる。
【0037】
次に、袋状ワークの表面処理方法を説明する。図2に示す表面処理ラインLのワーク供給部7における移載トレー7a上には、開口部6を上向きとなした姿勢で複数の袋ナット1がセットされる。この移載トレー7aは、循環搬送経路9における待機位置X1に移載される。その後、待機位置X1の上方に達した複数のワーク保持具10は昇降機構(図示せず)によって下降され、ワーク保持具10によって開口部6を上向きとした姿勢の袋ナット1を複数同時に保持する。
【0038】
このように保持された袋ナット1は循環搬送路9に配置される各種処理液槽としての脱脂槽12、陰極酸電解槽13、陽極電解脱脂槽14、各種めっき槽15に順次搬送されながらめっき処理が行われる。なお、各種処理液槽の間には、水洗槽27が配置されており、各工程間での水洗工程が行われる。
【0039】
そして、所定のめっき被膜を形成した後の袋ナット1は、ワーク洗浄部17において、循環搬送路9の搬送方向上流側から順次配置される複数の洗浄槽17aに搬送される。このワーク洗浄部17の複数の洗浄槽17aの常温水や温水によって、袋ナット1の表面を多段階的に洗浄するワーク洗浄工程が行われる。このワーク洗浄工程を経た袋ナット1は、ワーク乾燥部18に搬送される。このワーク乾燥部18によって袋ナット1の水分を除去するようにしたワーク乾燥工程が行われる。
【0040】
このワーク乾燥部18のワーク乾燥工程は、図7に示すように、まず、姿勢変換機構11の作動によって、ワーク保持具10で保持される袋ナット1を、該袋ナット1の開口部6を下向きとなした姿勢に変換される。その後、ワーク保持具10で保持される袋ナット1に対して、水滴除去装置18aの複数の下方ノズル18a1から圧縮空気を噴射させて、袋状空間5内の水滴を吹き飛ばして除去するとともに、複数の上方ノズル18a2から噴射される圧縮空気によって袋ナット1の表面の水滴を吹き飛ばして除去する水滴除去工程が行われる。このように圧縮空気によって袋ナット1に付着する水滴を概ね除去することにより、次工程の乾燥工程で使用する乾燥装置18b(乾燥炉18b1)での負担を低減(省エネルギーを図る)することが可能となる。
【0041】
そして、このように表面の水滴が除去された袋ナット1は、姿勢変換機構11の作動によって、ワーク保持具10によって保持される状態で、開口部6を上向きとなした姿勢に変換される。その後、図8に示す乾燥装置18bの乾燥炉18b1に搬送され、乾燥炉18b1内を通過することによって袋ナット1の表面や、めっき被膜のピンホールなどの水分が除去される乾燥工程が行われる。
【0042】
その後、ワーク乾燥工程を経た袋ナット1は、次工程である防錆油塗布部19で行う防錆油塗布工程に進む。この防錆油塗布工程では、循環搬送経路9のワーク取出位置X2の仮置きトレー8aに、ワーク保持具10から外されて載置された袋ナット1は、図10に示すように、チャック装置22における下向きとなしたチャック爪22bによって保持され、移載搬送路20の基端側20aで待機する移動トレー20cに載置される。この移載トレー20cは移載搬送路20の終端側20bに移動される(図9参照)。その後、図11に示すように、移動トレー搬送機23によって移載トレー20cは保持されながら、防錆部としての防錆液槽16の受け部材16aまで移動される。そして、この受け部材16aによって移動トレー20cを防錆油中に浸漬させる防錆油浸漬工程と、移動トレー20cを防錆油から引き上げる引上工程とが行われる。
【0043】
さらに、図12に示すように、移動トレー移動機24によって受け部材16a上の移動トレー20cを保持しながら中間位置X3まで移動させる。かかる位置では、図13に示すように、反転機構25(ワーク姿勢変換部)によって移動トレー20cの上下を反転させ、袋ナット1の開口部5を下向きとすることにより、袋ナット1の開口部6から防錆油を自重で流下させて、袋ナット1の内部の余分な防錆油を除去するようにしている。その後、図12に示す吸引部としての吸引ノズル26を袋ナット1の袋状空間5内に配置されるように移動させ、袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油を除去する吸引工程(図16(a)参照)又は/及び噴射ノズル26aを袋ナット1の袋状空間5内に配置されるように移動させ、袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油を除去する噴射工程(図16(b)、(c)参照)が行われる。また、噴射ノズル26aによる噴射工程と同時又は後に、吸引ノズル26による吸引工程(図16(d)参照)を行うこともできる。この場合には、噴射時に発生する防錆油のオイルミストMも吸引ノズル26によって吸引除去(オイルミスト吸引工程)できるため、オイルミストMの飛散を防止できるので、周囲環境の維持を図ることができる。また、吸引機能と噴射機能を兼ね備える吸引ノズル26でも同様な油除去工程を行うことができる。換言すれば、姿勢変換された袋ナット1の袋状空間5内に配置されて、該袋状空間5内の空気をそこに付着している防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間5内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間5内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去工程を行っている。このことによって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。
【0044】
続いて、図14に示すように、移動トレー20cの袋ナット1をワーク移載機27のチャック装置22における水平方向を向くチャック爪22bによって保持し、第二の油除去部(ワーク回転部)としてのワーク回転装置21に移載させる。このワーク回転装置21に移載される袋ナット1は、図15に示すように、回転軸21aと共回りされるよう保持され、回転軸21aの回転によって、袋ナット1の外表面に付着している防錆油が油滴状態で飛散されることにより除去される第二の油除去工程としてのワーク回転工程が行われる。この防錆油の遠心力による除去は、袋ナット1の表面に防錆油が膜状に残るように回転軸21aの回転数が制御されている。このことによって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。また、回転軸21aに吸引機能を具有させるものであれば、回転操作中に吸引工程を行うことができる。
【0045】
この防錆油塗布工程では、前工程の乾燥工程によって、袋ナット1の水分が熱風によって除去させられた状態であるため、防錆油がはじかれることによる未塗布部を無くすことができる。また、このような乾燥状態から連続して防錆油塗布工程に進むことができる表面処理ラインLを構築することができる。これによて、例えばめっき被膜における微細なピンホールに入り込んでいる水分が除去でき、かつその水分が除去されたピンホール内へ防錆油が入りやすくなり、防錆効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】袋状ワークである袋ナットの表面及び断面図。
【図2】本発明の袋状ワークの表面処理ラインの概念図。
【図3】ワーク保持具の各状態の概略図。
【図4】ワーク保持具の姿勢変換状態の概略図。
【図5】姿勢変換装置の概念図。
【図6】表面処理ラインにおけるライン基端側の部分概略図。
【図7】ワーク乾燥部の水滴除去装置の概略図。
【図8】ワーク乾燥部の乾燥装置の概略図。
【図9】表面処理ラインにおけるライン終端側の部分概略図。
【図10】ライン終端側と移載搬送路との間のワーク移動の概略図。
【図11】移載搬送路から防錆油槽へのワーク移載の概略図。
【図12】防錆油槽とワーク回転装置との間の概略図。
【図13】反転機構によるワーク反転状態の概略図。
【図14】反転されたワークをワーク回転装置に移載させる概略図。
【図15】ワーク回転装置の概略図。
【図16】第一の油除去工程の各工程の状態を示す概要図。
【符号の説明】
【0047】
1 袋ナット(袋状ワーク)
5 袋状空間
6 開口部
17 ワーク洗浄部
18 ワーク乾燥部
18a 水滴除去装置
18b1 乾燥炉
19 防錆油塗布部
26 吸引ノズル
26a 噴射ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋ナット等の袋状ワークにめっき処理等を施すための袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のホイールをハブに固定するハブナットとしての袋ナット等の袋状ワークには、装飾や防錆のために、めっき処理などの表面処理が施されている。かかる表面処理おいて、各処理工程に袋状ワークを搬送するため、木の枝状になったワーク保持治具が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このワーク保持治具の各枝部に、袋状ワークをばねの弾性力が作用するように差し入れて保持し、かかる状態の袋状ワークを、脱脂槽・アルカリ電解槽・酸電解槽や、多層のめっき被膜を形成するための各種めっき槽、各処理槽間の水洗槽などにおける各処理工程が一連の流れで実施されることにより、めっき処理などの表面処理が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−127498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、このような表面処理の工程において、めっき処理が完了した袋状ワークの表面に防錆油を塗布して工場出荷している。然しながら、防錆油の塗布量が必要以上に多いと、袋ナットのめねじ表面の防錆油の膜が厚くなり、使用時の締め付けトルクに影響を与え、本来の締め付けトルクで締め付けられなくなったり、また、その後の包装工程でのハンドリング工程で、余分な防錆油が他の関連装置に付着して装置稼動に影響をおよぼすような問題などを解消するための防錆油塗布技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明の課題は、袋状ワークの表面処理におけるめっき表面に塗布する防錆油の付着量を最適化させるように、防錆油の塗布技術を改善した袋状ワークの表面処理ライン及び表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインは、袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理ラインにおいて、袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成とすることにより、所定のめっき被膜を形成した後、袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬工程と、袋状ワークの袋状空間内を吸引する吸引工程又は/及び噴射する噴射工程と含む第一の油除去工程と、袋状ワークを軸回転させて防錆油を飛散させる第二の油除去工程とを、連続させるようにした表面処理方法を提供できる。しかも、第一の油除去部によって袋状空間内を吸引又は/及び噴射し、さらに袋状空間内の油付着量を低減し、さらに袋状ワーク表面の防錆油を遠心力で飛散させることにより、袋状ワークの余分な防錆油を除去して最適化できるため、袋状ワークとして、例えば袋ナットであれば、めねじ部に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナットの使用時の締め付けトルクの増加を防止でき、かつその後のハンドリング時における他の個所への油付着も低減できることとなる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインの前記第一の油除去部によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とすることにより、袋状ワークの袋状空間内の防錆油の付着量を最適化できる。また、表面処理ラインの第二の油除去部は、袋状ワーク表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させることを特徴とすることにより、袋状ワークの袋状空間内や袋状ワーク表面の防錆油は膜状であるため、その付着量も少なく防錆油の使用量の低減を図ることができ、かつ膜状の防錆油は油滴に成長しにくく、垂れ落ちや、他の個所への油付着を低減できる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の袋状ワークの表面処理ラインの袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去部による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とすることにより、袋状ワークの工程時間を短縮させることができ、生産性の向上に繋がる。また、前記第一の油除去工程による噴射の後に、吸引が行われることを特徴とすることにより、噴射時に発生する防錆油のオイルミストも吸引除去できるため、オイルミストの飛散を防止できるので、周囲環境の維持を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は袋状ワークの一例として袋ナットを示すものである。袋ナット1はめねじ部4を有する本体2と、本体2のおねじ部材の螺入側とは反対側の開口を塞ぐキャップ部3とを備え、めねじ部4とその奥部の空所(ボルト等のおねじ部材の先端部が進入する部分)とにより袋状空間5が形成される。このような袋ナット1が、鍛造加工さらに転造もしくは切削等によるねじ加工、キャップ部3の溶接及び熱処理の後、洗浄や防錆、めっき処理等の表面処理のため、一連の流れで搬送されながら各工程が実施される。
【0012】
図2は、袋ナット1のめっき処理等の表面処理を行う表面処理ラインLを示す図である。図2において、表面処理ラインLは、そのライン基端側Laに配置される袋ナット1を供給するためのワーク供給部7から始まって、ライン終端側Lbに配置される表面処理済みの袋ナット1を排出するためのワーク排出部8とを備えている。
【0013】
また、表面処理ラインLにおけるワーク供給部7とワーク排出部8との間には、めっき処理等の表面処理の各工程を行うための各種処理液槽や各種処理部が設けられる。本例ではニッケルクロムメッキなどのめっき処理を袋ナット1に施し、めっき処理が完了した袋ナット1に防錆油を塗布し、後工程や出荷などのために排出させるようにしている。
【0014】
また、表面処理ラインLにおけるワーク供給部7とワーク排出部8とは、循環搬送路9によって接続されている。この循環搬送路9は、例えばチェーン等の無限軌道が、モーター等の駆動装置(図示せず)により循環させられるものであればよい。
【0015】
この循環搬送路9には、図3に示すように、袋ナット1を保持して搬送するためのワーク保持具10が配設されている。ワーク保持具10は、保持具本体10aから延出される中央ピン10bと、その中央ピン10bに対して左右対称に配置された左右ピン10cを備えている。これら3本のピンを使って先端側で袋ナット1を保持する。左右ピン10cは双方の間隔が変る程度に弾性変形可能で、かつ先端部が外側に向かって折れ曲がっている。
【0016】
袋ナット1を装着する際には、左右ピン10cに力を加えて双方の間隔を狭め、袋ナット1の開口部6から袋状空間5内に差し込み、力を緩めると、左右ピン10cが外側へ弾性変形する力が袋ナット1の袋状空間5の内面に加わるとともに、先端部が引っかかり、循環搬送路9を搬送される際の移動による振動などでは、簡単には抜けなくしている。
【0017】
このワーク保持具10は、図4に示すように、袋ナット1を個別に保持し、循環搬送路9における袋ナット1の搬送中での姿勢を、袋状空間5の開口部6を上向きとした姿勢から、その開口部6を下向き(本例では斜め下向き)とする姿勢に変換させるようにした姿勢変換機構11に連繋されるとともに、循環搬送路9の無限軌道によって移動制御される搬送移動体9aに接続されている。
【0018】
図5はこの姿勢反転機構11を示す概念図である。図5において、ワーク保持具10が固定される固定プレート11aには、油圧、空気圧によって作動するシリンダや、モーターなどの駆動機構11bが連繋されている。そして、この駆動機構11bの作動によって固定プレート11aを動かし、ワーク保持具10で保持される袋ナット1の姿勢を変換させるようにしている。
【0019】
また、図6に示すように、ワーク供給部7において、開口部6を上向きとなした姿勢の袋ナット1を整列(本例では10個とし、長手側を5列、短手側を2列)載置させて待機させる矩形状の移載トレー7aを配置している。この移載トレー7aは、循環搬送路9における待機位置X1まで移動制御される。このように複数の袋ナット1が表面処理ライン6の循環搬送路9(待機位置X1)に移載されたとき、複数の袋ナット1を一括して保持させるように、複数のワーク保持具10が固定プレート11aから吊り下げられた状態で固定されている。
【0020】
図2に戻り、表面処理ラインLにおいて、袋ナット1の表面処理に用いられる各種処理液槽として、脱脂等が行われる脱脂槽12、スケール除去が行われる陰極酸電解槽13、活性化が行われる陽極電解脱脂槽14、ニッケルクロムメッキが行われる各種めっき槽15、防錆油の塗布が行われる防錆液槽16を備えている。
【0021】
また、ニッケルクロムメッキが行われる各種めっき槽15で行われるめっきは、下層としてニッケルメッキを施しており、この場合には、例えば半光沢ニッケルメッキ又は光沢ニッケルメッキ等があり、それらのいずれか一方を施すこと又は相前後して半光沢及び光沢のめっきを別々のめっき槽で順番に行うこともできる。また、上層としてニッケルメッキ層に、クロムメッキを施している。
【0022】
また、表面処理ラインLにおける各種めっき槽15であって、袋ナット1のめっき被膜をニッケルクロムメッキとするためのクロムメッキが行われるクロムめっき槽15aと、防錆油の塗布が行われる防錆液槽16との間には、所定のめっき被膜が形成された袋ナット1を、常温水や温水によって洗浄するワーク洗浄工程に使用するワーク洗浄部17と、このワーク洗浄部17によるワーク洗浄工程を経た袋ナット1を乾燥するワーク乾燥工程に使用するワーク乾燥部18とが配置されている。
【0023】
ワーク洗浄部17は、循環搬送経路9において、水洗浄や温水洗浄するための複数の洗浄槽17aを連接している。また、ワーク乾燥部18の直前に位置するワーク洗浄部17の洗浄槽17aは、温水(40〜50℃程度)による洗浄が行われる。
【0024】
また、ワーク乾燥部18は、圧縮空気の噴射によって袋ナット1の表面に付着する水滴を除去する水滴除去装置18aと、この水滴除去装置18aによって水滴が除去された袋ナット1の表面の水分を除去する乾燥装置18bと、を備えている。
【0025】
水滴除去装置18aは、図7に示すように、袋ナット1を保持して搬送するワーク保持具10によって袋状空間5の開口部6を下向きとした姿勢で搬送される袋ナット1に対して、該袋ナット1の開口部6に向かって圧縮空気を噴射する複数の下方ノズル18a1と、袋ナット1のキャップ部3に向かって圧縮空気を噴射する複数の上方ノズル18a2とを備えている。これらのノズルは圧縮空気供給源(図示せず)に接続されている。
【0026】
また、乾燥装置18bは、図8に示すように、循環搬送経路9中に、複数のワーク保持具10によって一括搬送される複数の袋ナット1を通過させるようにしたトンネル状の乾燥炉18b1が配置されている。この乾燥炉18b1には、本例では200℃程度の熱風を供給する熱風供給装置18b2が接続され、乾燥炉18b1内に供給口18b3から熱風を供給して対流伝熱乾燥による装置となしている。また、乾燥炉18b1内には、搬送方向と直交する方向に、袋ナット1と熱風との接触を均一化するための仕切壁18b4が設けられている。なお、対流伝熱乾燥に代えて主として赤外線による輻射伝熱乾燥なども採用可能である。
【0027】
図9に示すように、防錆油の塗布が行われる防錆油塗布工程に使用する防錆液槽16を有する防錆油塗布部19は、ワーク乾燥部18よりも搬送方向下流側における循環搬送経路9に設けられるワーク取出位置X2に連設される。
【0028】
このワーク取出位置X2には、循環搬送経路9の外側(図の下側)に袋ナット1を移動するための移載搬送路20の基端側20aを連設している。この移載搬送路20の終端側20bに、防錆液槽16、ワーク回転部としてのワーク回転装置21の順で連設させている。
【0029】
移載搬送路20には、その基端側20aと終端側20bとの間を往復移動制御される矩形状の移動トレー20cが設けられる。また、ワーク取出位置X2には、乾燥工程が終了した複数の袋ナット1を仮置きするための矩形状の仮置きトレー8aが配置されている。また、図10に示すように、この仮置きトレー8aに載置された袋ナット1を移載搬送路20の基端側20aで待機する矩形状の移動トレー20cに載置させるためのチャック装置22が設けられている。このチャック装置22は袋ナット1を個別に把持するようにしたチャック部22aが複数設けられる。このチャック部22aは空気圧を利用して開閉制御される一対のチャック爪22bによって、袋ナット1を把持するものである。
【0030】
また、図11に示すように、移載搬送路20の終端側20bと、防錆液槽16との間を往復移動制御される移動トレー搬送機23が設けられている。この移動トレー搬送機23によって袋ナット1が整列載置された移動トレー20cの任意個所(例えば短手側の両側部もしくは長手側の両端部)を保持しながら、防錆液槽16まで搬送する。この防錆液槽16には、昇降制御される受け部材16aが設けられて防錆油浸漬部を構成している。この受け部材16aによって移動トレー20cを防錆油中に浸漬させる防錆油浸漬工程と、防錆液槽16の防錆油から袋ナット1を引き上げさせる引上工程とが行われる。
【0031】
また、図12に示すように、防錆液槽16と、該防錆液槽16とワーク回転装置21との中間位置X3までの間を往復移動制御させる移動トレー移動機24が設けられている。この移動トレー移動機24によって受け部材16a上の移動トレー20cの任意個所を保持しながら中間位置X3まで移動するようになしている。
【0032】
また、移動トレー移動機24には、中間位置X3に移動された移動トレー20cを反転させ、袋ナット1の開口部5を下向きとするために、油圧、空気圧によって作動するシリンダや、モーターなどの駆動機構(図示せず)を備えるワーク姿勢変換部としての反転機構25が設けられている。この反転機構25は移動トレー20cを反転させ、その反転時に袋ナット1を落とさないようにするものであればよい。例えば、図13に示すように、移動トレー20cの袋ナット1を上下の網状部材25aで挟んで保持し、上下の網状部材25aを反転させたり、また、移動トレー20cを使用し、この一対(2個)の移動トレー20cで袋ナット1を挟んで保持し、反転させるものが挙げられる。
【0033】
また、図12に戻り、この中間位置X3には、移動トレー20cにおける袋ナット1の開口部6(下向きである)に入り込むように移動制御される第一の油除去部の一部を構成する吸引部としての吸引ノズル26が複数設けられている。この吸引ノズル26は、図示しない吸引機能を備える吸引源(吸引ポンプや圧縮空気を利用したサクション発生器)に接続されている。この吸引ノズル26によって袋ナット1の袋状空間5内の空気をそこの内面に付着している余分な防錆油とともに吸引して除去するようにして、吸引工程による油除去工程が行われる。また、この吸引ノズル26を圧縮空気を噴射させるように共用して使用することも可能である。この場合には圧縮空気供給源(図示せず)が切換バルブ(図示せず)を介して接続されている。また、この吸引ノズル26に加えて圧縮空気を噴射する下方ノズル18a1と同様な別部材の噴射ノズル26aを使用することも可能である。この場合も噴射ノズル26aが袋ナット1の袋状空間5内に入り込むように移動制御される噴射部として構成され、袋状空間5内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させて、袋ナット1の袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油の油付着量を低減するようにした噴射工程による油除去工程が行われる。この吸引工程、噴射工程の組み合わせによって第一の油除去工程を行うことができる第一の油除去部が構成される。この第一の油除去部によって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。また、吸引ノズル26によって吸引される吸引量と噴射ノズル26aによって噴射される噴射量は、可変制御される。
【0034】
また、図14に示すように、中間位置X3とワーク回転部としてのワーク回転装置21との間を往復移動制御されるワーク移載機27が設けられている。このワーク移載機27は、上述のチャック装置22と同様なものを採用できる。このワーク移載機27によって、反転された移動トレー20cにおける複数の袋ナット1を第二の油除去部の一部であるワーク回転装置21に移載させている。
【0035】
この第二の油除去部(ワーク回転部)としてのワーク回転装置21は、第二の油除去工程(ワーク回転工程)に使用される。このワーク回転装置21は、図15に示すように、複数の袋ナット1に対応した複数の回転軸21aが設けられ、この回転軸21aは下端側に固定される従動プーリ21bと、モーターなどの回転駆動源21cの駆動プーリ21dとの間に掛け渡されるベルト21eによって所定方向に回転制御される。また、回転軸21aには袋ナット1の開口部6内に差し込まれる左右一対のバネ部材21fが設けられ、弾性力によって袋ナット1をその中心軸まわりに軸回転させるように、回転軸21aと共回りさせるようにしている。
【0036】
また、回転軸21aに袋ナット1のめねじ部4と螺合するおねじ部(図示せず)を設けて共回り可能にすることもできる。また、回転軸21aを筒状の中空部材で構成することによって、この回転軸21aを上述の吸引ノズル26のような吸引機能又は噴射ノズル26aのような噴射機能を具有させるものにすることもできる。
【0037】
次に、袋状ワークの表面処理方法を説明する。図2に示す表面処理ラインLのワーク供給部7における移載トレー7a上には、開口部6を上向きとなした姿勢で複数の袋ナット1がセットされる。この移載トレー7aは、循環搬送経路9における待機位置X1に移載される。その後、待機位置X1の上方に達した複数のワーク保持具10は昇降機構(図示せず)によって下降され、ワーク保持具10によって開口部6を上向きとした姿勢の袋ナット1を複数同時に保持する。
【0038】
このように保持された袋ナット1は循環搬送路9に配置される各種処理液槽としての脱脂槽12、陰極酸電解槽13、陽極電解脱脂槽14、各種めっき槽15に順次搬送されながらめっき処理が行われる。なお、各種処理液槽の間には、水洗槽27が配置されており、各工程間での水洗工程が行われる。
【0039】
そして、所定のめっき被膜を形成した後の袋ナット1は、ワーク洗浄部17において、循環搬送路9の搬送方向上流側から順次配置される複数の洗浄槽17aに搬送される。このワーク洗浄部17の複数の洗浄槽17aの常温水や温水によって、袋ナット1の表面を多段階的に洗浄するワーク洗浄工程が行われる。このワーク洗浄工程を経た袋ナット1は、ワーク乾燥部18に搬送される。このワーク乾燥部18によって袋ナット1の水分を除去するようにしたワーク乾燥工程が行われる。
【0040】
このワーク乾燥部18のワーク乾燥工程は、図7に示すように、まず、姿勢変換機構11の作動によって、ワーク保持具10で保持される袋ナット1を、該袋ナット1の開口部6を下向きとなした姿勢に変換される。その後、ワーク保持具10で保持される袋ナット1に対して、水滴除去装置18aの複数の下方ノズル18a1から圧縮空気を噴射させて、袋状空間5内の水滴を吹き飛ばして除去するとともに、複数の上方ノズル18a2から噴射される圧縮空気によって袋ナット1の表面の水滴を吹き飛ばして除去する水滴除去工程が行われる。このように圧縮空気によって袋ナット1に付着する水滴を概ね除去することにより、次工程の乾燥工程で使用する乾燥装置18b(乾燥炉18b1)での負担を低減(省エネルギーを図る)することが可能となる。
【0041】
そして、このように表面の水滴が除去された袋ナット1は、姿勢変換機構11の作動によって、ワーク保持具10によって保持される状態で、開口部6を上向きとなした姿勢に変換される。その後、図8に示す乾燥装置18bの乾燥炉18b1に搬送され、乾燥炉18b1内を通過することによって袋ナット1の表面や、めっき被膜のピンホールなどの水分が除去される乾燥工程が行われる。
【0042】
その後、ワーク乾燥工程を経た袋ナット1は、次工程である防錆油塗布部19で行う防錆油塗布工程に進む。この防錆油塗布工程では、循環搬送経路9のワーク取出位置X2の仮置きトレー8aに、ワーク保持具10から外されて載置された袋ナット1は、図10に示すように、チャック装置22における下向きとなしたチャック爪22bによって保持され、移載搬送路20の基端側20aで待機する移動トレー20cに載置される。この移載トレー20cは移載搬送路20の終端側20bに移動される(図9参照)。その後、図11に示すように、移動トレー搬送機23によって移載トレー20cは保持されながら、防錆部としての防錆液槽16の受け部材16aまで移動される。そして、この受け部材16aによって移動トレー20cを防錆油中に浸漬させる防錆油浸漬工程と、移動トレー20cを防錆油から引き上げる引上工程とが行われる。
【0043】
さらに、図12に示すように、移動トレー移動機24によって受け部材16a上の移動トレー20cを保持しながら中間位置X3まで移動させる。かかる位置では、図13に示すように、反転機構25(ワーク姿勢変換部)によって移動トレー20cの上下を反転させ、袋ナット1の開口部5を下向きとすることにより、袋ナット1の開口部6から防錆油を自重で流下させて、袋ナット1の内部の余分な防錆油を除去するようにしている。その後、図12に示す吸引部としての吸引ノズル26を袋ナット1の袋状空間5内に配置されるように移動させ、袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油を除去する吸引工程(図16(a)参照)又は/及び噴射ノズル26aを袋ナット1の袋状空間5内に配置されるように移動させ、袋状空間5の内面に付着する余分な防錆油を除去する噴射工程(図16(b)、(c)参照)が行われる。また、噴射ノズル26aによる噴射工程と同時又は後に、吸引ノズル26による吸引工程(図16(d)参照)を行うこともできる。この場合には、噴射時に発生する防錆油のオイルミストMも吸引ノズル26によって吸引除去(オイルミスト吸引工程)できるため、オイルミストMの飛散を防止できるので、周囲環境の維持を図ることができる。また、吸引機能と噴射機能を兼ね備える吸引ノズル26でも同様な油除去工程を行うことができる。換言すれば、姿勢変換された袋ナット1の袋状空間5内に配置されて、該袋状空間5内の空気をそこに付着している防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間5内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間5内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去工程を行っている。このことによって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。
【0044】
続いて、図14に示すように、移動トレー20cの袋ナット1をワーク移載機27のチャック装置22における水平方向を向くチャック爪22bによって保持し、第二の油除去部(ワーク回転部)としてのワーク回転装置21に移載させる。このワーク回転装置21に移載される袋ナット1は、図15に示すように、回転軸21aと共回りされるよう保持され、回転軸21aの回転によって、袋ナット1の外表面に付着している防錆油が油滴状態で飛散されることにより除去される第二の油除去工程としてのワーク回転工程が行われる。この防錆油の遠心力による除去は、袋ナット1の表面に防錆油が膜状に残るように回転軸21aの回転数が制御されている。このことによって、袋ナット1のめねじ部4に付着する防錆油が少なくなることにより、袋ナット1の使用時の締め付けトルクの増加や、その後のハンドリング時における他の個所への油付着を低減できることとなる。また、回転軸21aに吸引機能を具有させるものであれば、回転操作中に吸引工程を行うことができる。
【0045】
この防錆油塗布工程では、前工程の乾燥工程によって、袋ナット1の水分が熱風によって除去させられた状態であるため、防錆油がはじかれることによる未塗布部を無くすことができる。また、このような乾燥状態から連続して防錆油塗布工程に進むことができる表面処理ラインLを構築することができる。これによて、例えばめっき被膜における微細なピンホールに入り込んでいる水分が除去でき、かつその水分が除去されたピンホール内へ防錆油が入りやすくなり、防錆効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】袋状ワークである袋ナットの表面及び断面図。
【図2】本発明の袋状ワークの表面処理ラインの概念図。
【図3】ワーク保持具の各状態の概略図。
【図4】ワーク保持具の姿勢変換状態の概略図。
【図5】姿勢変換装置の概念図。
【図6】表面処理ラインにおけるライン基端側の部分概略図。
【図7】ワーク乾燥部の水滴除去装置の概略図。
【図8】ワーク乾燥部の乾燥装置の概略図。
【図9】表面処理ラインにおけるライン終端側の部分概略図。
【図10】ライン終端側と移載搬送路との間のワーク移動の概略図。
【図11】移載搬送路から防錆油槽へのワーク移載の概略図。
【図12】防錆油槽とワーク回転装置との間の概略図。
【図13】反転機構によるワーク反転状態の概略図。
【図14】反転されたワークをワーク回転装置に移載させる概略図。
【図15】ワーク回転装置の概略図。
【図16】第一の油除去工程の各工程の状態を示す概要図。
【符号の説明】
【0047】
1 袋ナット(袋状ワーク)
5 袋状空間
6 開口部
17 ワーク洗浄部
18 ワーク乾燥部
18a 水滴除去装置
18b1 乾燥炉
19 防錆油塗布部
26 吸引ノズル
26a 噴射ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理ラインにおいて、
袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、
前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、
姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、
前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去部と、
を含むことを特徴とする袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項2】
前記第一の油除去部によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とする請求項1に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項3】
前記第二の油除去部は、袋状ワークの外表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項4】
前記袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去部による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項5】
袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理方法において、
袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬工程と、
前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換工程と、
姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去工程と、
前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去工程と、
を含むことを特徴とする袋状ワークの表面処理方法。
【請求項6】
前記第一の油除去工程による噴射の後に、吸引が行われることを特徴とする請求項5に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項7】
前記第一の油除去工程によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とする請求項5又は6に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項8】
前記第二の油除去工程は、袋状ワーク表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させるようにしたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項9】
前記袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去工程による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項1】
袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理ラインにおいて、
袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬部と、
前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換部と、
姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去部と、
前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去部と、
を含むことを特徴とする袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項2】
前記第一の油除去部によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とする請求項1に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項3】
前記第二の油除去部は、袋状ワークの外表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項4】
前記袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去部による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理ライン。
【請求項5】
袋状空間を有する袋状ワークに所定のめっき被膜を形成した後、該めっき被膜に防錆油を塗布するようにした表面処理方法において、
袋状空間の開口部を上向きとした姿勢で、前記袋状ワークを防錆油中に浸漬する防錆油浸漬工程と、
前記袋状ワークの防錆油中から引上げの際に、袋状空間の開口部を下向きとした姿勢に変換させて前記防錆油を自重で流下させるワーク姿勢変換工程と、
姿勢変換された袋状ワークの袋状空間内に配置されて、該袋状空間内の空気をそこに付着している前記防錆油とともに吸引し、若しくは該袋状空間内に圧縮空気を噴射して、そこに付着している防錆油を飛散させ、又はその噴射後に該袋状空間内の空気を、その空間内に残留する防錆油とともに吸引する第一の油除去工程と、
前記袋状ワークをその中心軸まわりに軸回転させて、この袋状ワークの外表面に付着している防錆油を遠心力で飛散させるようにした第二の油除去工程と、
を含むことを特徴とする袋状ワークの表面処理方法。
【請求項6】
前記第一の油除去工程による噴射の後に、吸引が行われることを特徴とする請求項5に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項7】
前記第一の油除去工程によって吸引される吸引量と噴射される噴射量は、可変制御されることを特徴とする請求項5又は6に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項8】
前記第二の油除去工程は、袋状ワーク表面の防錆油を、膜状に形成させるように軸回転の回転数を制御させるようにしたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【請求項9】
前記袋状ワークの軸回転操作中に前記第一の油除去工程による吸引又は/及び噴射を行うことを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の袋状ワークの表面処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−7158(P2010−7158A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170573(P2008−170573)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(000147109)株式会社杉浦製作所 (11)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(000147109)株式会社杉浦製作所 (11)
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