説明

被介護者用シミュレーションハウス

【課題】身体障害者、高齢者、病人などの被介護者が、住宅の設計等に際して住宅設備の使用感を自ら体験することができ、住宅設備の設計に関する有用な情報を得ることができる被介護者用シミュレーションハウスを提供する。
【解決手段】幅W1、深さH1、及びまたぎ高さH2の内の少なくとも一つの寸法が変更可能な浴槽12と、浴室14の幅W2及び奥行きD1の少なくとも一方の寸法を変更するための第1可動壁14B及び第2可動壁14Cと、を備えた浴室14を有して構成された被介護者用シミュレーションハウス10とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の設計等に際して浴槽や階段などの住宅設備の使用感を体験することができるシミュレーションハウスに関し、特に、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者に好適な被介護者用シミュレーションハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の設計等に際して浴槽や階段などの住宅設備の使用感を体験することができるシミュレーションハウスが広く知られており、例えば、特許文献1には、階段の傾斜勾配と踏板の面積を変更可能な傾斜勾配体験装置を備えたシミュレーションハウス(モデルハウス)が開示されている。
このシミュレーションハウスによれば、住宅の設計等に際して階段の使用感を予め体験することができ、傾斜勾配や踏板の面積など、階段の設計に有用な情報を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−350404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のシミュレーションハウスの多くは、介護を必要としない健常者のために設計されたものであるため、従来のシミュレーションハウスによって得られる情報は、必ずしも、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者にとって有用な情報であるとは言えなかった。特に、浴槽、浴室、廊下、トイレ、階段、スロープ(坂)などの住宅設備については、例えば、車椅子での移動などを考慮した設計が必要であり、住宅の設計等に際して被介護者がこれらの住宅設備の使用感を自ら体験することができるシミュレーションハウスが求められていた。
【0004】
一方、このような被介護者等を対象としたシミュレーションハウスを実現するには広いスペースが必要であり、住宅販売会社等にとっては、設備投資負担が大きいと判断され、その結果、積極的にそのような施設を確保するに至らないことが推察された。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決したものであって、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者が、住宅の設計等に際して住宅設備の使用感を自ら体験することができ、住宅設備の設計に関する有用な情報を得ることができる被介護者用シミュレーションハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る被介護者用シミュレーションハウスは、幅、深さ、及びまたぎ高さの内の少なくとも一つの寸法が変更可能な浴槽と、浴室の幅及び奥行きの少なくとも一方の寸法を変更するための可動壁と、を備えた浴室を有してなることによって上記課題を解決したものである。
【0007】
本発明によれば、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者が、住宅の設計等に際して浴室や浴槽などの住宅設備の使用感を自ら体験することができ、被介護者にとって最適な浴槽の幅、深さ、及びまたぎ高さや、浴室の幅、奥行きなどの住宅設備の設計に関する有用な情報を得ることができる。特に、浴槽、浴室、廊下、トイレ、階段、スロープ(坂)などの住宅設備については、例えば、車椅子での移動などを考慮した設計が不可欠であるが、本発明によれば、住宅の設計等に際して被介護者がこれらの住宅設備の使用感を自ら体験することができ、被介護者に特に適したシミュレーションハウスを提供することができる。
【0008】
なお、前記浴室の出入口側には脱衣室が更に配設され、該脱衣室の床面は、前記浴室の床面に対して上下動可能に構成されていれば、浴室の床面と脱衣室の床面との段差による浴室及び脱衣室の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な段差(例えば、高齢者に負担のかからない段差)の情報を得ることができる。
【0009】
更に、一端が前記脱衣室の床面に連結され、前記脱衣室の床面の上下動に伴って傾斜角度が変更可能なスロープを更に備えていれば、スロープの傾斜の違いによるスロープの使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な傾斜(例えば、車椅子での移動を考慮した傾斜、高齢者の体力を考慮した傾斜)の情報を得ることができる。
【0010】
更に又、前記浴室における前記可動壁と、前記浴室の外側に前記可動壁と略平行に配設された固定壁と、によって構成され、前記可動壁の移動に伴って幅の寸法が変更可能な廊下を更に備えていれば、廊下の幅の違いによる廊下の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な幅(例えば、車椅子での移動を考慮した幅)の情報を得ることができる。
【0011】
なお、廊下が平面視で略L字形状とされていれば、廊下の幅の違いによる廊下の曲がり角の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な幅(例えば、車椅子でのコーナリングを考慮した幅)の情報を得ることができる。
【0012】
又、踏みづら及び蹴上げの少なくとも一方の寸法が変更可能な階段を更に備えていれば、踏みづら及び蹴上げの違いによる階段の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な踏みづら及び蹴上げ(例えば、高齢者の階段の上り下りに際して危険や負担が少ない踏みづら及び蹴上げ)の情報を得ることができる。
【0013】
更に、トイレの幅及び奥行きの少なくとも一方の寸法を変更するための可動壁を有するトイレを更に備えれば、トイレの幅及び奥行きの違いによるトイレの使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な幅及び奥行き(例えば、車椅子での利用を考慮した幅や奥行き)の情報を得ることができる。
【0014】
更に又、前記トイレは、該トイレ内における位置を変更可能な便器を有して構成されていれば、便器の位置によるトイレの使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な便器の位置(例えば、車椅子での利用を考慮した位置)の情報を得ることができる。
又、略直方体形状の第1の浴槽と、該第1の浴槽の最小深さよりも小さな最小深さを有し、且つ、長手方向の一方の側面が長手方向外側に傾斜する傾斜面とされた第2の浴槽と、該第2の浴槽の最小深さよりも大きな最小深さを有し、且つ、長手方向の一方の側面が前記第2の浴槽の傾斜面よりも傾斜の小さい傾斜面とされた第3の浴槽と、を少なくとも含む複数種類の浴槽を備え、前記浴室は、前記複数種類の浴槽の内のいずれか一つの浴槽を選択的に設置可能に構成されていれば、複数種類の浴槽の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な浴槽の情報を得ることができる。
【0015】
なお、前記浴槽の下方には、前記浴槽を上下動するための駆動手段を収容可能な第1の空間が形成され、前記脱衣室の床面の下方には、前記脱衣室を上下動するための駆動手段を収容可能な第2の空間が形成され、前記第1の空間及び前記第2の空間の双方に連通する第3の空間を更に形成すれば、浴槽及び脱衣室の駆動手段のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る被介護者用シミュレーションハウスは、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者が、住宅の設計等に際して住宅設備の使用感を自ら体験することができ、住宅設備の設計に関する有用な情報を得ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る被介護者用シミュレーションハウス(以下、単に「シミュレーションハウス」と称する。)を詳細に説明する。
【0018】
<全体構成>
【0019】
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るシミュレーションハウス10の全体構成について説明する。なお、図1はシミュレーションハウス10を上方から見た略示平面図、図2はシミュレーションハウス10を側方から見た略示立体図である。
【0020】
図1及び図2に示されるように、シミュレーションハウス10は、浴槽12が配設された浴室14と、この浴室14の出入口側に配設された脱衣室16と、一端が脱衣室16の床面16Aに連結されたスロープ18と、脱衣室16に隣接して配設されたトイレ20と、浴室14の外側に沿うように配設された、平面視が略L字形状の廊下22と、この廊下22の一方の側にスロープ18と略平行に配設された第1階段24及び第2階段26と、廊下22の他方の側に配設された第3階段28と、を有して構成されている。
【0021】
次に、このシミュレーションハウス10が備える各住宅設備について詳細に説明する。
【0022】
<浴槽>
【0023】
浴槽12は、図3に示されるように、略板状の底板12Aと、平面視が略コの字形状の第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cによって構成されている。なお、この浴槽12は、被介護者が浴槽の使用感を擬似的に体験するためのものであるため、必ずしもお湯がためられるように構成されている必要はない。
【0024】
この浴槽12の底板12Aの下方には、底板12Aを上下方向に移動可能な昇降機(図示省略)が設置されており、この昇降機によって底板12Aを上下方向(図2の矢印A参照)に移動することによって、図4(A)及び(B)に示されるように、浴槽12の深さH1の寸法が変更可能な構造となっている。なお、底板12Aの昇降機としては、例えば、油圧ジャッキや機械式ジャッキ等を適用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
図3に戻って、浴槽12の第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cは、互いの開口端部が対向するように配置され、これら第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cが一体的に組み合わされて浴槽12の枠部が形成される。より具体的には、第1浴槽ユニット12Bの開口端部は中空とされており、これと対向する第2浴槽ユニット12Cの開口端部が入れ子状に挿入可能な構造とされている。そのため、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cを浴槽12の長手方向(図2、図3の矢印B参照)に移動することによって、上記図4に示されるように、浴槽12の幅W1の寸法が変更可能な構造となっている。なお、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cを長手方向に移動するための移動手段は特に限定されないが、例えば、これらを手動で長手方向に移動させる方法の他、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cの下面にラックギアを設け、このラックギアをモータで駆動して第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cを長手方向に移動するように構成してもよい。
【0026】
更に、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cの下方には、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cを上下方向に移動可能な昇降機(図示省略)が設置されており、この昇降機によって第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cを上下方向(図2の矢印C参照)に移動することによって、上記図4に示されるように、浴槽12のまたぎ高さH2の寸法が変更可能な構造となっている。なお、本発明に係る「またぎ高さ」とは、浴室14の床面14Dを基準とした浴槽12の最上面の高さをいう。又、第1浴槽ユニット12B及び第2浴槽ユニット12Cの昇降機としては、例えば、油圧ジャッキや機械式ジャッキ等を適用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
高齢者や被介護者にとっては、このまたぎ高さH2と浴槽12の深さH1とのバランスが自らに適していると、入浴負担が大幅に軽減されるという特徴がある。従って、床面14D、浴槽12の最上面の高さ、浴槽12の深さH1、3つの相対関係を自在に調整可能にすることで、具体的な入浴時のシミュレーションを実行し、最適設計を実現できるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態においては、浴槽12の深さH1、幅W1、またぎ高さH2の寸法全てを変更可能に構成したが、本発明に係る「浴槽」はこれに限定されず、幅W1、深さH1、及びまたぎ高さH2の内の少なくとも一つの寸法が変更可能な浴槽であればよい。
【0029】
<浴室>
【0030】
浴室14は、図1に示されるように、脱衣室16からトイレ20に亘って配設された固定壁14Aと、この固定壁14Aに対して略垂直な方向(図1の矢印D参照)に移動可能に構成された第1可動壁14Bと、固定壁14Aに対して略平行な方向(図1の矢印E参照)に移動可能に構成された第2可動壁14Cによって仕切られている。そして、浴室14は、第1可動壁14B及び第2可動壁14Cをそれぞれ移動することによって、図5(A)及び(B)に示されるように、幅W2及び奥行きD1の寸法がそれぞれ変更可能な構造となっている。なお、第1可動壁14B及び第2可動壁14Cを移動するための移動手段は特に限定されないが、例えば、第1可動壁14B及び第2可動壁14Cを図示しない天井に設置したレールに移動可能に吊り下げた構造としてもよい。
【0031】
なお、本実施形態においては、浴室14の幅W2及び奥行きD1の双方の寸法を変更可能に構成したが、本発明に係る「浴室」はこれに限定されず、浴室の幅W2及び奥行きD1の少なくとも一方の寸法が変更可能であればよい。
【0032】
更に、シミュレーションハウス10は、図6に示されるように、略直方体形状の和風浴槽(本発明に係る「第1の浴槽」に相当)30と、この和風浴槽30の最小深さMH1(例えば650mm)よりも小さな最小深さMH2(例えば400mm)を有し、且つ、長手方向の一方の側面F1が長手方向外側に傾斜する傾斜面とされた洋風浴槽(本発明に係る「第2の浴槽」に相当)32と、この洋風浴槽32の最小深さMH2よりも大きな最小深さMH3(例えば600mm)を有し、且つ、長手方向の一方の側面F2が洋風浴槽32の傾斜面F1よりも傾斜の小さい傾斜面とされた和洋折衷浴槽(本発明に係る「第3の浴槽」に相当)34と、を少なくとも含む複数種類の浴槽を備えている。そして、浴室14は、複数種類の浴槽(本実施形態では、和風浴槽30、洋風浴槽32、和洋折衷浴槽34)の内のいずれか一つの浴槽を選択的に設置可能に構成されている。なお、ここでは3種類の浴槽30、32、34を個別に選択可能にしたが、本発明はそれに限定されず、浴槽30側面の傾斜角を可変にすることで、浴槽深さと側面の傾斜角との組み合わせによって、一つの浴槽30で和風、洋風、和洋折衷を構成可能にしてもよい。
【0033】
<脱衣室>
【0034】
脱衣室16の下方には、脱衣室16の床面16Aを上下方向(図2の矢印F参照)に移動可能な昇降機(図示省略)が設置されており、この昇降機によって脱衣室16の床面16Aを上下方向に移動することによって、図7(A)及び(B)に示されるように、浴室14の床面14Dに対する脱衣室16の床面16Aの高さH3の寸法が変更可能な構造となっている。なお、脱衣室16の床面16Aの昇降機としては、例えば、油圧ジャッキや機械式ジャッキ等を適用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。又、脱衣室16の床面16Aを「玄関の床面」に、又、浴室14の床面14Dを「室内の床面」にそれぞれ見立てれば、玄関の框(かまち)、即ち、玄関と室内との段差をシミュレーションすることも可能である。
【0035】
なお、浴槽12の下方には、浴槽12を上下動するための昇降機(駆動手段)を収容可能な第1の空間が形成され、脱衣室16の床面16Aの下方には、脱衣室16を上下動するための昇降機(駆動手段)を収容可能な第2の空間が形成され、第1の空間及び第2の空間の双方に連通する第3の空間を更に形成すれば(例えば、浴室14の床面14Dの下方に第3の空間を形成すれば)、浴槽12及び脱衣室16の昇降機のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0036】
<スロープ>
【0037】
スロープ18は、図8(A)及び(B)に示されるように、脱衣室16の床面16Aの上下動に伴って傾斜角度が変更可能に構成されている。これにより、家の門戸から、スロープ18を経て玄関(脱衣室16を共有する)に到るまでのシミュレーションを、様々な角度によって実行可能になる。特に、車椅子を利用する人にとっては、その腕力によって昇れる角度が微妙に異なっている。従って実際に利用することで、その人にとって最適な角度情報を得ることが出来る。脱衣室16と玄関を一つの床面16Aで共有することから、省スペース化も実現されている。
【0038】
<トイレ>
【0039】
トイレ20は、図1に示されるように、浴室14の固定壁14Aと、平面視が略L字形状の固定壁20Aと、トイレ20の奥行き方向(図1の矢印G参照)に移動可能に構成された可動壁20Bによって仕切られている。
【0040】
トイレ20は、可動壁20Bを奥行き方向に移動することによって、図9(A)及び(B)に示されるように、奥行きD2の寸法が変更可能な構造となっている。なお、可動壁20Bを移動するための移動手段は特に限定されないが、例えば、可動壁20Bを図示しない天井に設置したレールに移動可能に吊り下げた構造としてもよい。又、トイレ20は、図9(C)に示されるように、トイレ20内における位置を変更可能な便器36を備えている。なお、便器36を移動するための移動手段は特に限定されないが、例えば、便器36の底部にラックギアを設け、このラックギアをモータで駆動して便器36を前後方向に移動するように構成してもよい。
【0041】
又、本実施形態においては、トイレ20の奥行きD2の寸法のみを変更可能に構成したが、本発明はこれに限定されず、トイレ20の奥行きD2の寸法に加え、奥行きD2と直交する方向の幅の寸法が変更可能に構成されていてもよい。
【0042】
<廊下>
【0043】
廊下22は、図1に示されるように、浴室14の2枚の可動壁14B、14Cと、これらの可動壁14A、14Bと略平行に配設された、平面視で略L字形状の固定壁22Aによって構成されており、廊下22は、図10(A)及び(B)に示されるように、浴室14の可動壁14B、14Cの移動に伴って幅W3の寸法が変更可能な構造となっている。特に、本実施例では、2枚の可動壁14B、14Cが、浴室14の広さを可変調節する機能と、L字コーナーを含む廊下22の幅W3を可変調節する機能を兼ねているので、コンパクトなスペースで、多様なシミュレーションが可能となっている。
なお、図10(A)及び(B)には、可動壁14Cと固定壁22との幅W3のみ図示したが、可動壁14Bと固定壁22との幅W3の寸法も変更可能であることは言うまでもない。
【0044】
又、本実施形態においては、廊下22を平面視で略L字形状としたが、本発明に係る「廊下」はこれに限定されず、他の形状であってもよい。
【0045】
<階段>
【0046】
第1階段24及び第2階段26は、図2に示されるように、水平方向(図2の矢印H参照)に移動可能な複数のステップSTを有して構成されており、各ステップSTを水平方向に移動することによって、図11(A)及び(B)に示されるように、階段の踏みづらS1(図2参照)の寸法を変更可能であると共に、上記図2に示される第2階段26のように複数(本実施形態では2枚)のステップSTを同一の踏みづら位置に重ね合わせることによって、蹴上げS2の寸法が変更可能な構造となっている。
【0047】
なお、本実施形態においては、第1階段24及び第2階段26の踏みづらS1及び蹴上げS2の寸法の双方を変更可能に構成したが、本発明に係る「階段」はこれに限定されず、踏みづらS1及び蹴上げS2の少なくとも一方の寸法が変更可能な階段であればよい。
【0048】
又、図12に示されるように、第3階段28における固定壁22A側には、固定壁22Aに沿ってレール38が敷設されており、このレール38上には、被介護者を乗せて第3階段28の下部と上部との間を移動可能な階段昇降機40が設置されている。
【0049】
本実施形態に係るシミュレーションハウス10によれば、幅W1、深さH1、及びまたぎ高さH2の内の少なくとも一つの寸法が変更可能な浴槽12と、浴室14の幅W2及び奥行きD1の少なくとも一方の寸法を変更するための可動壁(本実施形態では第1可動壁14B及び第2可動壁14C)と、を備えた浴室14を有してなるため、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者が、住宅の設計等に際して浴室や浴槽などの住宅設備の使用感を自ら体験することができ、被介護者にとって最適な浴槽の幅、深さ、及びまたぎ高さや、浴室の幅、奥行きなどの住宅設備の設計に関する有用な情報を得ることができる。
又、略直方体形状の第1の浴槽(本実施形態では和風浴槽)30と、この第1の浴槽30の最小深さMH1よりも小さな最小深さMH2を有し、且つ、長手方向の一方の側面F1が長手方向外側に傾斜する傾斜面とされた第2の浴槽(本実施形態では洋風浴槽)32と、この第2の浴槽32の最小深さMH2よりも大きな最小深さMH3を有し、且つ、長手方向の一方の側面F2が第2の浴槽32の傾斜面F1よりも傾斜の小さい傾斜面とされた第3の浴槽(本実施形態では和洋折衷浴槽)34と、を少なくとも含む複数種類の浴槽を備え、浴室14は、複数種類の浴槽(本実施形態では、和風浴槽30、洋風浴槽32、和洋折衷浴槽34)の内のいずれか一つの浴槽を選択的に設置可能に構成されているため、複数種類の浴槽の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な浴槽の情報を得ることができる。
【0050】
又、浴室14の出入口側には脱衣室16が更に配設され、この脱衣室16の床面16Aは、浴室14の床面14Dに対して上下動可能に構成されているため、浴室の床面と脱衣室の床面との段差による浴室及び脱衣室の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な段差(例えば、高齢者に負担のかからない段差)の情報を得ることができる。
【0051】
更に、一端が脱衣室16の床面16Aに連結され、脱衣室16の床面16Aの上下動に伴って傾斜角度が変更可能なスロープ18を更に備えているため、スロープの傾斜の違いによるスロープの使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な傾斜(例えば、車椅子での移動を考慮した傾斜、高齢者の体力を考慮した傾斜)の情報を得ることができる。
【0052】
更に又、浴室14における可動壁14B、14Cと、浴室14の外側に可動壁14B、14Cと略平行に配設された固定壁22Aと、によって構成され、可動壁14B、14Cの移動に伴って幅W3の寸法が変更可能な廊下22を更に備えているため、廊下の幅の違いによる廊下の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な幅(例えば、車椅子での移動を考慮した幅)の情報を得ることができる。
【0053】
特に、廊下22が平面視で略L字形状とされているため、廊下の幅の違いによる廊下の曲がり角の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な幅(例えば、車椅子でのコーナリングを考慮した幅)の情報を得ることができる。
【0054】
又、踏みづらS1及び蹴上げS2の少なくとも一方の寸法が変更可能な階段(本実施形態では第1階段24及び第2階段26)を更に備えていれば、踏みづら及び蹴上げの違いによる階段の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な踏みづら及び蹴上げ(例えば、高齢者の階段の上り下りに際して危険や負担が少ない踏みづら及び蹴上げ)の情報を得ることができる。
【0055】
更に、トイレ20の奥行きD2の寸法を変更するための可動壁20Bを有するトイレ20を更に備えているため、トイレの奥行きの違いによるトイレの使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な奥行き(例えば、車椅子での利用を考慮した奥行き)の情報を得ることができる。
【0056】
更に又、トイレ20は、このトイレ20内における位置を変更可能な便器36を有して構成されていれば、便器36の位置によるトイレ20の使用感を被介護者自らが体験した上で、被介護者にとって最適な便器の位置(例えば、車椅子での利用を考慮した位置)の情報を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る被介護者用シミュレーションハウスは、身体障害者、高齢者、病人などの被介護者向けのモデルハウスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係る被介護者用シミュレーションハウスの略示平面図
【図2】同被介護者用シミュレーションハウスの略示立体図
【図3】本実施形態に係る浴槽の分解斜視図
【図4】(A)同浴槽の幅を広くした様子を示す浴槽の略示斜視図、(B)同浴槽の幅を狭くした様子を示す浴槽の略示斜視図
【図5】(A)本実施形態に係る浴室の奥行きを狭くした様子を示す浴室の略示俯瞰図、(B)同浴室の奥行きを広くした様子を示す浴室の略示俯瞰図
【図6】(A)本実施形態に係る第1の浴槽の略示斜視図、(B)本実施形態に係る第2の浴槽の略示斜視図、(C)本実施形態に係る第3の浴槽の略示斜視図
【図7】(A)本実施形態に係る脱衣室の床面を上昇させた様子を示す浴室と脱衣室の略示部分斜視図、(B)同脱衣室の床面を下降させた様子を示す浴室と脱衣室の略示部分斜視図
【図8】(A)本実施形態に係るスロープの傾斜を下げた様子を示すスロープ周辺の略示斜視図、(B)同スロープの傾斜を上げた様子を示すスロープ周辺の略示斜視図
【図9】(A)本実施形態に係るトイレの奥行きを広くした様子を示すトイレの略示俯瞰図、(B)同トイレの奥行きを狭くした様子を示すトイレの略示俯瞰図、(C)同トイレにおける便器の位置を変えた様子を示すトイレの略示俯瞰図
【図10】(A)本実施形態に係る廊下の幅を広くした様子を示す廊下周辺の略示斜視図、(B)同廊下の幅を狭くした様子を示す廊下周辺の略示斜視図
【図11】(A)本実施形態に係る第2階段の踏みづらを狭くした様子を示す第2階段周辺の略示斜視図、(B)同第2階段の踏みづらを広くした様子を示す第2階段周辺の略示斜視図
【図12】(A)本実施形態に係る第3階段に設置された階段昇降機が第3階段の下方に停止している様子を示す第3階段周辺の略示斜視図、(B)同階段昇降機が第3階段の上方に停止している様子を示す第3階段周辺の略示斜視図
【符号の説明】
【0059】
10・・・被介護者用シミュレーションハウス
12・・・浴槽
14・・・浴室
16・・・脱衣室
18・・・スロープ
20・・・トイレ
22・・・廊下
24・・・第1階段
26・・・第2階段
28・・・第3階段
30・・・第1の浴槽
32・・・第2の浴槽
34・・・第3の浴槽
36・・・便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅、深さ、及びまたぎ高さの内の少なくとも一つの寸法が変更可能な浴槽と、浴室の幅及び奥行きの少なくとも一方の寸法を変更するための可動壁と、を備えた浴室を有してなることを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項2】
請求項1において、
前記浴室の出入口側には脱衣室が更に配設され、該脱衣室の床面は、前記浴室の床面に対して上下動可能に構成されていることを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項3】
請求項2において、
一端が前記脱衣室の床面に連結され、前記脱衣室の床面の上下動に伴って傾斜角度が変更可能なスロープを更に備えたことを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記浴室における前記可動壁と、前記浴室の外側に前記可動壁と略平行に配設された固定壁と、によって構成され、前記可動壁の移動に伴って幅の寸法が変更可能な廊下を更に備えたことを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項5】
請求項至4において、
前記廊下は、平面視で略L字形状とされていることを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
踏みづら及び蹴上げの少なくとも一方の寸法が変更可能な階段を更に備えたことを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
トイレの幅及び奥行きの少なくとも一方の寸法を変更するための可動壁を有するトイレを更に備えたことを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項8】
請求項7において、
前記トイレは、該トイレ内における位置を変更可能な便器を有して構成されていることを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
略直方体形状の第1の浴槽と、該第1の浴槽の最小深さよりも小さな最小深さを有し、且つ、長手方向の一方の側面が長手方向外側に傾斜する傾斜面とされた第2の浴槽と、該第2の浴槽の最小深さよりも大きな最小深さを有し、且つ、長手方向の一方の側面が前記第2の浴槽の傾斜面よりも傾斜の小さい傾斜面とされた第3の浴槽と、を少なくとも含む複数種類の浴槽を備え、
前記浴室は、前記複数種類の浴槽の内のいずれか一つの浴槽を選択的に設置可能に構成されていることを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれかにおいて、
前記浴槽の下方には、前記浴槽を上下動するための駆動手段を収容可能な第1の空間が形成され、
前記脱衣室の床面の下方には、前記脱衣室を上下動するための駆動手段を収容可能な第2の空間が形成され、
前記第1の空間及び前記第2の空間の双方に連通する第3の空間を更に形成したことを特徴とする被介護者用シミュレーションハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−3580(P2007−3580A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180413(P2005−180413)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(505234823)株式会社シルバーはあと (1)
【Fターム(参考)】