説明

被処理水の浄化処理装置

【課題】光触媒モジュールを充填した通水路を通過する被処理水に万遍なく紫外線を照射して被処理水の浄化効率を高めることを課題とする。
【解決手段】第一紫外線ランプ1の保護管2の外周に外筒3を設け、保護管2と外筒3の間隙に光触媒モジュール4,…を充填して第一紫外線ランプ1の周囲に被処理水の通水路5を形成し、且つ外筒3の外周に第二紫外線ランプ6,6を設けたこ被処理水の浄化処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浄化効率を高めるようにした紫外線を使用した被処理水の浄化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来紫外線を使用した被処理水の浄化処理装置としては、処理管の中央に紫外線ランプを挿通し、その周りに金属細線束、金属細線の不織布、炭素繊維からなる基材、金属メッキを施した炭素繊維からなる基材の表面に二酸化チタン担持層を設けてなる光触媒モジュールを装填して処理管の中央に設けられた紫外線ランプより200~350mmの波長領域の紫外線を照射して光触媒モジュールと接触して通過する被処理水の浄化処理を行う装置が知られている(特開平11-77031号公報)。
【0003】
また、多数の通水孔を有する基材上に二酸化チタン担持層をを設けてなる光触媒モジュールで処理管の中央に挿通された囲み、紫外線ランプからは上述の波長領域の紫外線を照射して光触媒モジュールと接触して通過する被処理水の浄化処理を行う装置が知られている(特開2001-137842公報)。
【0004】
更に、本願発明者は先に内部に紫外線ランプを設置し、該紫外線ランプの周囲に石英ガラス製チップの表面に二酸化チタン担持層を設けた光触媒モジュールを装填した被処理水の処理装置を提案した(特願2003-113964)。
【特許文献1】特開平11-77031号公報、特開2001-137842公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような装置においては、紫外線は処理管の中央に設けられた紫外線ランプよりその周囲に充填され、或いは基板上に取り付けられた光触媒モジュールに照射されるため、紫外線が光触媒モジュールの片面にしか照射されず被処理水の浄化効率が損なわれるという欠点がある。
【0006】
また、これら紫外線ランプの周りに光触媒モジュールを充填乃至基板上に取り付けた装置においては、波長領域200~350mmの紫外線の照射距離は1mm程度であるので、紫外線ランプより離れるほど光触媒モジュールに紫外線が届きにくく、このため被処理水の浄化効率が損なわれるという欠点がある。
【0007】
更に、紫外線ランプの周りに光触媒モジュールを充填する装置においては、紫外線が当たらない光触媒モジュールが多数生じて被処理水の浄化効率を損なう等の欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記実情に鑑み、第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成し、且つ外筒の外周に第二紫外線ランプを設けた被処理水の浄化処理装置を提案するものである。
【0009】
即ち、この装置においては通水路内に送入された被処理水は光触媒モジュールと接触しながら通水路を通過し、この間に通水路の内外より第一紫外線ランプと第二紫外線ランプから紫外線の照射を受けて被処理水の浄化処理が行われる。
【0010】
また、他の被処理水の浄化処理する装置として、第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成すると共に、その周囲に被処理水の通水路を形成した第一紫外線ランプの複数本を所定の間隔を置いて並設し、且つ上記第一紫外線ランプの外筒の間に第二紫外線ランプを介在させた被処理水の浄化処理装置を提案する。
【0011】
この装置においては、並設された第一紫外線ランプの周囲に形成された通水路に被処理水を送水し、これら並設された通水路を被処理水が光触媒モジュールと接触しながら通過する間に通水路の内外より第一紫外線ランプと第二紫外線ランプから紫外線の照射を受けて被処理水の浄化処理が行われる。
【0012】
この場合、隣接する通水路の一端と他端を連結管で交互に連結すれば、被処理水は連結管を通して並設される通水路を順次通過し、この間に通水路の内外より第一紫外線ランプと第二紫外線ランプから紫外線の照射を受けて被処理水の浄化処理が行われてより長時間に亘って紫外線の照射を受けるので、十分な浄化処理を行うことができる。
【0013】
なお、この発明において第一紫外線ランプの周囲を通過する被処理水に外側より紫外線を照射する第二紫外線ランプはその本数が多いほど効果的であるが、経済効率を考慮してその外側を反射鏡で囲み、第二紫外線ランプからの紫外線の一部は反射鏡を介して被処理水の通水路乃至通水管内に配列充填される光触媒モジュールに照射させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
即ち、この発明によれば被処理水の通水路に配列充填される多数の光触媒モジュールには第一紫外線ランプと第二紫外線ランプより紫外線を照射されるため、光触媒モジュールの両面に紫外線が照射され、また光触媒モジュールが通水路の何れの位置にあっても、紫外線が照射され、このため、この発明においては光触媒モジュールに万遍なく紫外線が照射され、したがって被処理水の浄化効率が損なわれることがない。
【0015】
この発明で使用される紫外線ランプとしては、高周波の紫外線を発生する高圧水銀灯乃至低周波の紫外線を発生する低圧水銀灯等の紫外線ランプを使用することができるが、一般には波長領域200~350mmの紫外線を発生するものが使用される。
【0016】
また、第一紫外線ランプの周囲に形成される通水路の幅は第一紫外線ランプと第二紫外線ランプからの紫外線の照射距離、被処理流体の流量等を考慮して4mm~9mmの範囲が好ましい。
【0017】
一方、この発明に使用する光触媒モジュールとしては、二酸化チタン触媒或いは二酸化チタン触媒に白金等の助触媒を加えて基材表面に担持させたもの、或いは光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布(特許第3436267号公報)等を挙げることができる。
【0018】
基材としては、金属系、ステンレス、チタンテフロン(尚、テフロンは登録商標である)、炭素繊維、或いは石英ガラス、けい砂ガラス等の硬質ガラス、ソーダガラス等の軟質ガラス等の材質で構成されたガラスチップ等を挙げることができる。
【0019】
この場合、ガラスチップの形状としては、球状、その他の異型状体或いは円形乃至角型の柱状体等を使用することができる。
【0020】
このうち、円形乃至角型の柱状体のガラスチップを基材とする光触媒モジュールは、第一紫外線ランプの保護管と外筒との間隙に紫外線ランプに沿って縦方向に配列することにより被処理水の適当な流路を有する光触媒モジュールの充填層を容易に形成することができる。
【0021】
また、異型状のガラスチップを基材として用いる場合は、光触媒モジュールの充填層を通過する被処理流体に乱流を起こさせて紫外線照射による浄化処理効率を促進させることができる。
【0022】
一方、基材表面に二酸化チタン担持層を設ける方法としては、基材をチアニゾル二酸化チタン液に浸して、例えば400〜600℃程度の 高温焼成してアナターゼ化する方法を採用することができる。
【0023】
なお、ステンレス、ガラスチップ等の表面は滑面であるため、二酸化チタンを担持させることが難しく、被処理流体との接触反応中に二酸化チタン担持層が剥離することが屡々あるが、このような基材に対しては二酸化チタン触媒を担持させる方法としては、フッ素酸等の酸処理或いはサンドブラスト処理してその表面を荒らした後チアニゾル二酸化チタン液に浸して高温焼成してアナターゼ化する方法を採用することができる。
【0024】
これにより二酸化チタンは荒らされた基材表面に根付いて担持されるので、被処理流体との接触反応中においても二酸化チタン担持層が剥離されることがない。
【0025】
なお、ソーダガラス等の軟質ガラスを基材とする場合には、上述の高温焼成はその表面が熱溶融しない程度の温度で行うことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に石英ガラス等の硬質ガラス材質の柱状体基材の表面をサンドブラスト処理した後二酸化チタンを担持させた光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成し、且つ外筒の外周に第二紫外線ランプを設けた被処理水の浄化処理装置。
【実施例】
【0027】
(1)円柱状光触媒モジュールの製造例
図1は円柱状光触媒モジュールの製造工程を示すものであり、3mm径の石英ガラス製の円柱状基材(A)に3~7Kg/cmのエアー吹き付けて5分間サンドブラスト処理して基材5aの表面に凹凸面を形成した後(B)、チアニゾル二酸化チタン液に浸して400~600℃で高温焼成してアナターゼ化することにより基材の表面に二酸化チタン担持層を形成するものである(C)。
【0028】
(2)各種異型柱状の光触媒モジュールの製造例
異型柱状の光触媒モジュールに使用される基材としては図2に示すように縦方向に所定間隔を置いて溝が形成された円柱状基材、六角柱状基材、三角柱状基材等を挙げることができる。
【0029】
これら基材(D)は図3に示すように、3~7Kg/cmのエアー吹き付けて5分間サンドブラスト処理して基材の表面に凹凸面を形成した後(E)、チアニゾル二酸化チタン液に浸して400~600℃で高温焼成してアナターゼ化することにより基材の表面に二酸化チタン担持層を形成する(F)。
【0030】
実施例1
以下、この発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明すると、図4は円柱状の光触媒モジュールを充填した被処理水の浄化処理装置を示すものであり、この実施例において1はその外周に石英ガラス等の透明体で構成される保護管2が設けられた第一紫外線ランプで、第一紫外線ランプ1の保護管2の外周には所定の間隔を置いて石英ガラス等の透明体で構成される外筒3が設けられ、保護管2と外筒3の間隙には上述の方法で製造された円柱状光触媒モジュール4,…を第一紫外線ランプ1に沿って縦方向に配列充填して第一紫外線ランプ1の周囲に被処理水の通水路5を形成すると共に、外筒3の外周に左右に第二紫外線ランプ6,6を配置する。
【0031】
このように構成される処理ユニットは外側を囲む反射鏡体7で囲み、外装ケース8内に収納する。
【0032】
以上のような処理装置において被処理水は入口9より通水路5内に送入され、通水路5内では光触媒モジュール4,…と接触しながら上昇し、出口10より排出されるが、この間に通水路5の内外より第一紫外線ランプ1と第二紫外線ランプ6,6から紫外線(波長領域200~350mm)の照射を受けて被処理水の浄化処理が行われる。
【0033】
更に、この実施例において被処理水の通水路5の幅を4mmとし、以上の光触媒モジュール4,…をこの通水路に第一紫外線ランプ1に沿って縦方向に配列充填するものであり、この結果保護管2と外筒3との間に適当な幅の流路を形成して光触媒モジュール4,…が充填される。
【0034】
また、この実施例では光触媒モジュールは石英ガラス製の円柱状基材をサンドブラスト処理した後、二酸化チタン担持層を形成しているため、被処理流体との接触反応中においても二酸化チタン担持層が剥離されることがない。
【0035】
実施例2
図5は、この発明に係わる被処理水の浄化処理装置の他の実施例を示すもので、この実施例では保護管2と外筒3の間隙に充填される光触媒モジュール4,…が石英ガラス製の各種異型柱状基材の表面に二酸化チタンを担持させた光触媒モジュールである以外は図4と同様であるので、同様な符号を付してその説明を省略する。
【0036】
被処理水の浄化処理に際しては、保護管2と外筒3の間隙に被処理水を通過させ、第一紫外線ランプ1、第二紫外線ランプ6,6からそれぞれ紫外線を照射して被処理水の浄化処理を行うが、この実施例では保護管2と外筒3の間隙には各種異型柱状モジュール4,…が第一紫外線ランプ1に沿って縦方向に配列充填されているため、これを通過する被処理流体に乱流を起こさせて紫外線照射による浄化処理効率を促進させることができる。
【0037】
実施例3
図6は、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布、金属系、ステンレス、チタンテフロン、炭素繊維等の基材表面に二酸化チタン担持層を設けた光触媒モジュール4,…を充填した被処理水の浄化処理装置を示すものである。
【0038】
この場合、被処理水は光触媒モジュール4,…の繊維間を潜り抜けながら保護管2と外筒3の間隙を通過する間に内側から第一紫外線ランプ1、第二紫外線ランプ6,6からそれぞれ紫外線を照射して被処理水の浄化処理が行われる。
【0039】
実施例4
図7は、この発明の他の実施例を示すものであり、この実施例において1a,1b,1c,1dは所定の間隔を置いて並設された第一紫外線ランプで、第一紫外線ランプ1a,1b,1c,1dの保護管2a,2b,2c,2dの外周に所定の間隔を置いて外筒3a,3b,3c,3dが設けられ、その間隙に光触媒モジュール4,…を充填し、第一紫外線ランプ1a,1b,1c,1dの周囲にそれぞれ被処理水の通水路5a,5b,5c,5dを形成すると共に、隣接する被処理水の通水路5a,5b,5c,5dの上端と下端をU字管11,11で連結し、更に外筒3a,3b,3c,3dの間には第二紫外線ランプ6a,6b,6cを介在させる。
【0040】
また、このように構成される処理ユニットはその上端部と下端部を取付金具12,12を介して反射鏡体7内に固定し、更に外装ケース8内に収納する。
【0041】
以上のような処理装置においては、隣接する被処理水の通水路5a,5b,5c,5dの上端と下端をU字管11,11で連結することにより蛇行状の通水路が形成されるので、被処理水は入口9より光触媒モジュール4,…と接触しながら通水路5a,5b,5c,5dの順に送水され、出口10より排出されるが、この間に通水路5の内外より第一紫外線ランプ1と第二紫外線ランプ6,6から紫外線の照射を受けて被処理水の浄化処理が行われる。
【0042】
したがって、この発明においてはコンパクトな装置構成に拘わらず、被処理水は長時間に亘って紫外線の照射を受けるので、極めて効果的な被処理水の浄化処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
したがって、この発明によれば紫外線照射による極めて効果的な被処理水の浄化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】円柱状光触媒モジュールの製造工程を示す図
【図2】異型柱状の光触媒モジュールに使用される基材例を示す図
【図3】異型柱状の光触媒モジュールの製造工程を示す図
【図4】この発明に係わる被処理水の浄化処理装置の一実施例を示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は平面図
【図5】この発明に係わる被処理水の浄化処理装置の他の実施例を示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は平面図
【図6】この発明に係わる被処理水の浄化処理装置の更に他の実施例を示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は平面図
【図7】この発明に係わる被処理水の浄化処理装置の更に他の実施例を示す側面図
【図8】同上のA−A断面図
【図9】同上のB−B断面図
【符号の説明】
【0045】
1は第一紫外線ランプ
2は第一紫外線ランプの保護管
3は外筒
4,…は光触媒モジュール
5は被処理水の通水路
6,6は第二紫外線ランプ
7は反射鏡体
8は外装ケース
9は通水路の入口
10は通水路の出口
11,11はU字管
12,12は取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成し、且つ外筒の外周に第二紫外線ランプを設けたことを特徴とする被処理水の浄化処理装置。
【請求項2】
第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成すると共に、その周囲に被処理水の通水路を形成した第一紫外線ランプの複数本を所定の間隔を置いて並設し、且つ上記第一紫外線ランプの外筒の間に第二紫外線ランプを介在させたことを特徴とする被処理水の浄化処理装置。
【請求項3】
第一紫外線ランプの保護管の外周に外筒を設け、保護管と外筒の間隙に光触媒モジュールを充填し、第一紫外線ランプの周囲に被処理水の通水路を形成すると共に、その周囲に被処理水の通水路を形成した第一紫外線ランプの複数本を所定の間隔を置いて並設し、隣接する通水路の一端と他端を連結管で交互に連結した請求項2記載の被処理水の浄化処理装置。
【請求項4】
第二紫外線ランプの外周に反射鏡を配置した請求項1又は2記載の浄化処理装置。
【請求項5】
光触媒モジュールが光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布により構成される請求項1又は2記載の浄化処理装置。
【請求項6】
光触媒モジュールがその表面に光触媒層を担持させたガラスチップから構成される請求項1又は2記載の浄化処理装置。
【請求項7】
ガラスチップが球状、異型状、柱状である請求項6記載の浄化装置。
【請求項8】
光触媒モジュールがその表面をサンドブラスト処理を施した後光触媒層を担持させたガラスチップから構成される請求項6記載の浄化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−142118(P2006−142118A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−6205(P2004−6205)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【出願人】(591006302)ライザー工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】