説明

被処理流体の電磁波処理装置と方法

【課題】変調電磁波でなく、周波数を特定することで変調電磁波と同じように被処理流体のスケール成分の除去の可能性を追求し、新たな電磁波処理方法と装置を開発する。
【解決手段】被処理流体照射用のコイル部と、該コイル部に4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流を流す電磁波発生器を備えた電磁波処理装置を用いて、被処理流体を処理をすることにより、被処理流体流路又は被処理流体の貯留槽の壁面へのスケール付着防止、スケールの除去効果が得られるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理流体の電磁波処理装置と該装置を用いる電磁波処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は各種流体(本発明でいる流体は水を主成分とする流体であり、以下被処理水ということがある。)に変調電磁波処理を施すことにより、その後の流体の扱いが容易になる技術を開発し、その技術は各種分野に使用されている。その内容は特許第4305855号の特許公報などに開示されていて、還元(−)型変調電磁波処理だけでなく、酸化(+)型変調電磁波処理も行える装置を開発できたことにより、被処理水中に含まれるスケール成分によって、前記還元(−)型変調電磁波処理と酸化(+)型変調電磁波処理のいずれかを選択することで、容易に被処理水含有装置の壁面などへのスケール付着を防止と、壁面に一旦付着したスケールの除去などが行えるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4305855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被処理水中に含まれるスケール成分によって、上記特許文献1記載の還元(−)型変調電磁波処理と酸化(+)型変調電磁波処理のいずれかを使い分けることで、容易に被処理水含有装置の壁面などへのスケール付着を防止と、壁面に一旦付着したスケールの除去などが行えるようになった。
しかし、被処理流体の電磁波処理が時間の経過と共に周波数が変わる変調電磁波でないと電磁波処理効果が無いの否かについては十分研究をしていなかった。
【0005】
そこで本発明の課題は、変調電磁波でなく、周波数を特定することで変調電磁波と同じように被処理流体のスケール成分の除去の可能性を追求し、新たな電磁波処理方法と装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は次の解決手段によりを解決される。
請求項1記載の発明は、被処理流体照射用のコイル部と、該コイル部に4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流を流す電磁波発生器を備えたことを特徴とする被処理流体の電磁波処理装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、コイル部が、(i)被処理流体が流れる流体流路の表面に巻き付けたコイル、(ii)被処理流体を貯めた貯留槽に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(iii)被処理流体が流れる流体流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルの内の少なくとも一つのコイルを備えている請求項1記載の被処理流体の電磁波処理装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流に基づく電磁波により被処理流体を処理をすることを特徴とする被処理流体の電磁波処理方法である。
【0009】
請求項4記載の発明は、(i)被処理流体が流れる流体流路の表面に巻き付けたコイル、(ii)被処理流体を貯めた貯留槽に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(iii)被処理流体が流れる流体流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルの内の少なくとも一つのコイルに交流電流を流す請求項3記載の被処理流体の電磁波処理方法である。
【0010】
請求項5記載の発明は、アニオン系薬剤を含有又は添加した被処理流体又はカチオン薬剤を除いた被処理流体に電磁波処理をする請求項4記載の被処理流体の電磁波処理方法である。
【0011】
請求項6記載の発明は、4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理流体を流した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化すること及び流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失うことを確認して、前記被処理流体の電磁波処理の効果の程度を判定する被処理水の机上試験を行い、該机上試験法による判定結果が良いと、そのまま前記電磁波処理を実行し、前記机上試験法による判定結果が良くない場合には、前記被処理流体中にカチオン系薬剤が含まれていると、これを除いた後に該流体に対して前記電磁波処理をし、又はカチオン薬剤が含まれない状態で前記被処理流体にアニオン系薬剤を添加した後に該流体に対して前記電磁波処理を実行する請求項4記載の電磁波処理方法である。
【0012】
本発明の作用について次に説明する。
まず、被処理流体用の配管の内壁、被処理流体貯留槽の内壁等にスケールが付着するメカニズムを説明する。なお、先に述べたように、被処理流体は一般的に水系であるので、以下これを被処理水ということがある。
図31に示すように被処理水に接する配管の内壁、貯槽内壁等の表面はマイナスに帯電している。被処理水中で、飽和条件下にあるスケール成分が析出して生成するスケール結晶体の表面は、通常プラスに帯電する。この互いに異符号(プラスとマイナス)の電位間の電気的引力によって前記内壁等の表面にスケール成分が付着する。
【0013】
前記スケール成分は被処理水中に含まれる無機化合物が主体であり、CaCO3(炭酸カルシウム)、CaSO4(硫酸カルシウム)などである。ただし、単体無機化合物としてのスケール結晶体はほとんど無く、例えばシリカスケールではSiO2(シリカ)を主体として、Ca、Mg又はAl等の金属類を含み、共有結合又はイオン結合している。また、CaCO3単結合としてのスケール結晶体は少なく、ほとんどが10〜100個又はそれ以上の結晶の集合体である。前記結晶の集合体を形成する力は前述の電気的引力、又は水和力によって生じる。
【0014】
また、被処理水中に溶解するCa2+、Fe3+等の陽イオン(カチオン)の量が多いほど、同時に形成されたスケール結晶体の表面のプラス帯電力が増し、また、上記結晶の集合体の濃度も増加してスケール成長性も高くなる。
【0015】
次に、本発明の電磁波処理により被処理水用配管の内壁等にスケールが付着するのを防止するメカニズムを図30に示す。
前述のように、被処理水と接する配管内壁又は貯留槽内壁等の表面はマイナスに帯電しているが、電磁波により処理された被処理水中で形成されるスケール結晶体の表面は、図30に示すように中性又はマイナスに帯電する。この同符号電位間の電気的斥力によって、反発力を生じて、前記内壁表面などへのスケール付着を防止する。また、このとき、スケール結晶体同士も反発力によって分散し、スケール成長性を抑制し、小粒子化した結晶が多くできやすい。
【0016】
また、本発明により電磁波処理した被処理水の浸透性が増加するのに伴い、スケール結晶体内部での結晶体の溶解と再結晶化及びスケール結晶体表面のマイナス帯電による反発力によってスケール結晶体は小粒子化され、そのため分散されやすくなるものと考えられる。こうして被処理水の高流速部では小粒子化した結晶が流下除去されやすくなり、低流速部ではそれらが沈降・堆積しやすくなる。
【0017】
また、硬質のスケール、例えばシリカ主体のスケール結晶体は、そのスケール表面が平滑であればあるほど、電磁波処理水の浸透力を阻害させ、その軟化及び除去に長い時間を要する。また、被処理水のpHが低いほど、また温度が低いほど、スケール除去又はスケール軟化に時間がかかる。しかし、硬質のスケールであっても、通常の凹凸面を有するスケールの場合は、本発明の電磁波処理で容易に軟化又は除去できるものが多い。
【0018】
軟質スケール、例えばFe(OH)3、Ca(OH)2等は水和物(Fe(OH)3・nH2O)としてスケールを形成し、本発明の電磁波処理水と前記水和物内の水分子との置換が阻害されやすく、スケール除去効果が小さい。また軟質スケールが他のスライム防止剤又は防食剤として用いられるポリマー薬剤により付着物を形成している場合も本発明の電磁波処理を阻害しやすい。
【0019】
本発明の電磁波処理は、4kHz〜10kHzの周波数帯域で前記(a)単一周波数を持つ交流電流(以下「(a)タイプ」ということがあり、このタイプの交流電流による電磁波処理、電磁波処理水、電流発生器も同様に(a)タイプということがある。)又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流(以下「(b)タイプ」ということがあり、このタイプの交流電流による電磁波処理、電磁波処理水、電流発生器も同様に(b)タイプということがある。)を流すコイルを流体流路に巻き付けて行う。
【0020】
なお、本発明では数十ミリアンペアから数百ミリアンペアの交流電流をコイル部に流すものであり、また磁束密度が6ミリガウス程度又はそれ以下の電磁波強度の電磁波を被処理流体に与えるものであり、電磁加熱調理に用いられる電磁波強度(磁束密度約300〜500ミリガウス)とは全く異なる小さな電磁波強度で被処理流体を処理するものである。
【0021】
このとき、4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流をコイルに流すことで被処理流体を電磁波により処理する。
【0022】
なお、本発明の範囲には入らないが、(c)例えば、電磁波強度が同じで10〜500msの時間間隔で時間的に周波数が変化する交流電流((以下「(c)タイプ」ということがあり、このタイプの交流電流による電磁波処理、電磁波処理水、電流発生器も同様に(c)タイプということがある。)を用いても前記(a)タイプ及び(b)タイプと同様の作用効果がある。
【0023】
また、被処理水にはカチオン系薬剤が防食剤として用いられることもあるが、該カチオン系薬剤は、以下の理由で本発明の電磁波処理を阻害させる薬剤であるので、これを除去した後に電磁波処理を行うことが効果的である。この現象は次のようなメカニズムで生じると考えられる。
すなわち、カチオン系薬剤がマイナスに帯電する被処理水配管内壁をプラスに帯電させると共に、スケール結晶体表面のプラス荷電力を高め、プラス(配管内壁)対プラス(スケール結晶体)の反発力によって配管内壁面にスケールが付着するのを防止する。また、スケール結晶間の反発力によってスケール結晶体の成長性も抑制する。すなわち、上記カチオン系薬剤からなる防食剤の腐食防止作用は本発明の電磁波処理作用でスケール結晶体をマイナスに帯電させて、マイナス帯電の配管内壁と反発させることで防食させることとは正反対の帯電作用に基づくものである。
【0024】
カチオン系薬剤としては、界面活性剤、高分子系薬剤とリン酸塩系薬剤を含む防食剤、清缶剤、スケール防止剤、スライム防止剤、帯電防止剤、リンス(乾燥仕上)剤、床ワックス剤、消泡剤及び海生物付着防止剤などの薬剤がある。
【0025】
カチオン系薬剤とは反対にアニオン系薬剤は本発明の電磁波処理を促進させる薬剤であり、前記特許文献1にも、このために食品容器の洗剤などのアニオン系薬剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウムを積極的に被処理水に添加して、結晶の表面電荷の中性化を促すことでスケール結晶体及び被処理水配管内壁のプラス荷電力を弱める還元(−)型変調電磁波処理を行うことを提案したが、本発明でもアニオン系薬剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウムを積極的に被処理水に添加することが望ましい。
【0026】
また、アニオン系薬剤としては、カルボン酸型(オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、 硫酸エステル型(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム)、リン酸エステル型 (ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム)の薬剤がある。
【0027】
また、電磁波処理水の液滴を乾燥させ、顕微鏡による乾燥液滴界面のスケール成分の小結晶化確認テスト(机上試験)で本発明の電磁波処理の効果を確認できるが、前記机上試験において本発明の電磁波処理の効果がある周波数領域では、被処理流体中の粒子は電磁波処理をしない場合を基準(「ゼロ」)として、そのゼータ電位の変化量が電磁波処理を施してない粒子のゼータ電位に比較してマイナス側に極大値を有する変化量を示すことが判明した。
このように被処理流体中の粒子のゼータ電位がマイナス側になるようにすることが、スケール形成防止効果に寄与するものと推定される。
【0028】
前述のように被処理水に対して本発明の電磁波処理をしない(「未処理」)場合に比べて周波数(4kHz〜10kHz)範囲で本発明で規定する電磁波処理をする場合にはスケール除去効果を有することが判明したが、これは図6に示す酸化チタンのコロイド粒子を含む水を用いて測定した水にマイナスのゼータ電位を与える周波数(4kHz〜10kHz)で電磁波処理をする場合に対応しており、上記周波数(4kHz〜10kHz)で本発明で規定する電磁波処理をすることで被処理流体中の「微粒子」に対してマイナスのゼータ電位を与えているものと推定される。
これは、図6に示す酸化チタンのコロイド粒子を含む水を用いて測定した水にプラスのゼータ電位を与える周波数(1kHz以下又は25kHzを超える周波数)により本発明で規定する電磁波処理をする場合には前記スケール除去効果がなかったこととも整合性がある。
【0029】
図6から被処理水にマイナスのゼータ電位を与えるものと推定される約4kHz〜25kHzの範囲の中で確実に被処理水にマイナスのゼータ電位を与えるものと推定される上記周波数(4kHz〜10kHz)で被処理水を電磁波処理をすることで、被処理水中のスケール成分をマイナス帯電させているものと推定される。
【0030】
また、本発明は、4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一の周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流に基づく電磁波により被処理水を処理をするが、被処理水に照射する交流電磁波の周波数を特定せずに、ある範囲の周波数(例えば、図6に示す100Hz〜10,000Hz付近)を与えた場合には、プラスとマイナスのゼータ電位となっている物質相互間の結合と反発が生じるために未処理の場合に比べて改善されないものと推定される。
【0031】
本発明の以下に述べる実施例では被処理水に前記(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流に基づく電磁波を印加させた例を示し、その際の電磁波の印加効果を調べた。
また同時に(c)時間的に周波数が変化する交流電流に基づく電磁波を印加させた場合も同様の効果があることを参考例として説明している。
【発明の効果】
【0032】
請求項1及び3記載の発明によれば、コイル部で電磁波を発生させる装置による電磁波処理により、被処理流体(被処理水)を用いる流路又は被処理流体(被処理水)を貯めた貯留槽の壁面へのスケール付着防止、スケールの除去効果が得られるようになった。なお、前記スケール付着防止、スケールの除去効果には前記流路又は貯留槽の壁面の腐食防止、油含有排水の流路の詰まり防止、食器洗浄機の洗剤使用量の削減、洗車機の洗剤及びワックスなどの使用量削減、被処理水のろ過用フィルタの詰まり防止等も含まれる。
【0033】
請求項2及び4記載の発明によれば、それぞれ被処理流体の態様に応じて(i)被処理流体が流れる流体流路の表面に巻き付けたコイル、(ii)被処理流体中に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(iii)被処理流体が流れる流体流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルの内の少なくとも一つのコイルを用いて被処理流体に対して前記請求項1及び3記載の発明の電磁波処理効果を達成できる。
【0034】
請求項5記載の発明によれば、アニオン系薬剤を含有又は添加した被処理流体に電磁波処理をすることで、前記アニオン系薬剤を含まないで電磁波処理を実行する場合に比較してより効果的に前記請求項4記載の発明の電磁波処理効果を確実に行うことができ、また、又は被処理流体がカチオン薬剤を含む場合はカチオン薬剤を除いた状態で被処理流体に電磁波処理を実行することで効果的に前記請求項4記載の発明の電磁波処理効果を確実に行うことができる。また、カチオン薬剤を壁面にコーティングさせる用途などにおいては、前記請求項4記載の発明の電磁波処理流体を用いることで、カチオン薬剤の使用量を半減させても壁面への塗膜付着量を得ることができる。
【0035】
請求項6記載の発明によれば、前記机上試験による判定結果に基づき電磁波処理を実行することにより、確実に請求項4記載の電磁波処理効果を奏することができ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の電磁波発生器の回路図である。
【図2】本発明の電磁波発生器の回路図である。
【図3】図1の電磁波発生器による電磁波強度と周波数との関係図である。
【図4】図2の電磁波発生器による電磁波強度と周波数との関係図である。
【図5】図1の電磁波発生器による電磁波強度と周波数との関係図である。
【図6】図1又は図2の電磁波発生器を用いる塩化カリウム水溶液中の酸化チタン微粒子の基準ゼータ電位(未電磁波処理水中の酸化チタン微粒子のゼータ電位=ゼロ)の変化量と周波数との関係を示す図である。
【図7】ゼータ電位測定方法の説明図である。
【図8】被処理水配管の外側にコイルを設置する電磁場処理装置の構成図である。
【図9】投げ込み式のコイル部を有する電水磁場処理装置の構成図である。
【図10】外部照射方式のコイル部を有する電磁場処理装置の構成図である。
【図11】電磁場処理の有効性をテストする机上試験を説明する図である。
【図12】食器洗浄機で食器を洗剤と電磁波処理水で洗浄する食器洗浄システムを示す図である。
【図13】表1に示す洗剤添加量に対するルミテスター値を2次元座標で示す図である。
【図14】アニオン界面活性剤(400倍に非処理水で希釈:以下「400倍」などと記す)を添加して電磁波未処理水、(c)タイプの電磁波処理水(1回通液)及び(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図(図14(a)、図14(b)及び図14(c))と、アニオン界面活性剤(800倍)を添加して(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図14(d))である。
【図15】アニオン界面活性剤(400倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)及びアニオン界面活性剤(800倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図((図15(a)、(図15(b)及び(図15(c)))である。
【図16】アニオン界面活性剤(400倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図((図16(a)、図16(b))とアニオン界面活性剤(800倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図16(c))である。
【図17】カチオンコート剤(150倍)を添加して電磁波未処理水、(c)タイプの電磁波処理水(1回通液)及び(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図(図17(a)、図17(b)及び図17(c))とカチオンコート剤(300倍)を添加して(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す(図17(d)である。
【図18】カチオンコート剤(150倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図((図18(a)、図18(b))及びカチオンコート剤(300倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図18(c))である。
【図19】カチオンコート剤(150倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図((図19(a)、図19(b))及びカチオンコート剤(300倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図19(c))である。
【図20】カチオンワックス剤(200倍)を添加した電磁波未処理水、(c)タイプの電磁波処理水(1回通液)及び(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図20(a))、図20(b)及び図20(c))及びカチオンワックス剤(400倍)を添加して(c)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図20(d))である。
【図21】カチオンワックス剤(200倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図(図21(a)、図21(b))及びカチオンワックス剤(400倍)を添加して(a)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図21(c))である。
【図22】カチオンワックス剤(200倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(1回通液)、(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真をそれぞれ示す図(図22(a)、図22(b))であり、カチオンワックス剤(400倍)を添加して(b)タイプの電磁波処理水(5回通液)でワックス掛けをした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す図(図22)である。
【図23】参考例1の浴室の排水配管内部に(c)タイプの電磁波未処理水を流した場合(図23(a))と電磁波処理水を流した場合(図23(b))の様子を示す写真である。
【図24】参考例2の台所排水配管内部に(c)タイプの電磁波未処理水を流した場合(図24a))と電磁波処理水を流した場合(図24(b))の様子を示す写真である。
【図25】参考例3の横引き排水配管内部に(c)タイプの電磁波未処理水を流した場合(図25(a))と電磁波処理水を流した場合(図25(b))の様子を示す写真である。
【図26】実施例3のセメント混合機内部を(a)タイプの電磁波未処理水で洗浄した場合(図26(a))と電磁波処理水で洗浄した場合(図26(b))の様子を示す写真である。
【図27】実施例4のセメントを流すU字溝内部に(b)タイプの電磁波未処理水を流した場合(図27(a))と電磁波処理水を流した場合(図27(b))の様子を示す写真である。
【図28】参考例4のセメント圧送管内部に(c)タイプの電磁波未処理水を流した場合(図28(a))と電磁波処理水を流した場合(図28(b)の様子を示す写真である。
【図29】参考例5のセメント洗浄用水の循環タンクに電磁波未処理水を流した場合(図29(a))と電磁波処理水を流した場合(図29(b))の様子を示す写真である。
【図30】電磁場処理法により被処理水用配管の内壁等にスケールが付着するのを防止するメカニズムを示す図である。
【図31】被処理水用配管の内壁等にスケールが付着するメカニズムを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
本実施例は被処理流体(被処理水ということがある)に電磁波処理を行う。
【0038】
図1又は図2に示す電磁波発生器から、(a)単一の周波数を持つ交流電流で、(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流又は(c)時間的に周波数が変化する交流電流を流して被処理水に電磁波を照射する(上記3種類の電磁波の照射のタイプをそれぞれ(a)タイプ、(b)タイプ及び(c)タイプということがある。)。図1に示す電磁波発生器において、三角波又はのこぎり波の発振回路から発振する周波数を電圧−周波数変換回路により前記周波数を細分化し、各周波数に対応した電圧を得る。該電圧−周波数変換回路からの出力を波形整形増幅回路で電磁波強度を設定し、さらに電力を増幅させて適切な大きさの電力を得て図8〜図10に示すコイル部2に出力する。
【0039】
ここで図1に示す電磁波発生器は(a)約4,000〜10,000Hzまでの間のいずれか一つの単一周波数(図3に示すタイプの出力波形を有する、実線、破線、一点鎖線、二点鎖線などで示す5,000,6,000、7,000又は8,000Hzなどにピーク値を有するいずれか一つの単一の主要周波数)を持つ交流電流又は(c)図5に示す約4,500〜8,500Hzの間で時間的に周波数が変化する交流電流を流して電磁波を発生させるものである。
【0040】
また、図2に示す電磁波発生器は(a)約4,000〜10,000Hzまでの間のいずれか一つの単一周波数(図3に示すタイプの出力波形を有する、実線、破線、一点鎖線、二点鎖線などで示す5,000,6,000、7,000又は8,000Hzなどにピーク値を有するいずれか一つの単一の主要周波数を持つ交流電流又は(b)約4,000〜10,000Hzまでの間のいずれか一つの単一周波数(図4に示す7,000Hzなどにピーク値を有する互いに周波数の異なる複数の単一の主要周波数(約4,000〜10,000Hzまでの間のいずれか一つの単一周波数)を同時に形成する交流電流を流して電磁波を発生させるものである。
なお、図3〜図4に示す交流電流の周波数のピーク値の電磁波強度は最大約6×10-2ミリガウスである。
【0041】
以下の実際の実施例では(c)タイプの電磁波を発生させる場合は図1の発生器を使用し、(b)タイプの電磁波を発生させる場合は図1の発生器を使用する。
また図1と図2に示す電磁波発生器は共に発振する周波数に応じてゼータ電位が(+)にも、(−)にもなり得る。
なお、電磁波強度とは空間における電磁波の強さを意味し、単位は[V/m]又は[A/m]である。測定方法は使用目的により使い分けるが、本実施例では[A/m]を用いる(Vは電圧、Aは電流、mは長さ)。また電磁波の強さは電磁波処理する被処理水の量に応じて適宜選択する。コイル部2に流す電流に比例し、図示しない電磁波強度センサーを置いた所での磁界の大きさをこの場合の電磁波の強さ又は強度としている。
また、前記電磁波強度はコイル部2に流す電流値に比例してその大きさが変化する。
P=K×i2×t
P:被処理食用油又は工業用油への電磁波照射エネルギー[W]
i:コイル部2に流れる電流[A]
t:照射時間[秒]
K:定数[H/m3
【0042】
図6は、図1又は図2に示す回路を有する電磁波発生器を用いて10Hz〜120kHzの周波数帯域で周波数を種々変えて、測定した各周波数の電磁波強度のピーク値と被処理水(酸化チタン微粒子を含む塩化カリウム水溶液)のゼータ電位の変化量の関係を示す。
【0043】
なお、図2に示す電磁波発生器を用いる電磁波処理装置は、OSCからの信号を任意の周波数の信号に変換するための分周器31a、31bと2系統へ信号を分ける分配器32a、32bを通し、R系統ゼネレータ33a又はS系統ゼネレータ33bに電気的に掛け合わせた後、それぞれ電力増幅器34a、34bによりコイル部(図示せず)に出力する。この時、信号の流れとして同一構成で2系統を持ち、例えば一つの分配器32aからの信号を波形ゼネレータ33a、33bに送ることによる同期型とそれぞれ独立した系統(図2の上段と下段)で信号をそれぞれ波形ゼネレータ33a、33bに送る非同期型を選択可能である。この装置は、コイル部に方形波にサイン波を乗せた電磁波信号を間欠的に流すものである。
図6に示すように電磁波処理を好ましくは約4kHz〜10kHz付近の周波数帯域で行った場合の被処理水のゼータ電位の変化量が大きく変化し、電磁波処理を行わない場合(未処理時)又は他の周波数帯域に電磁波強度のピーク値を示す被処理水のゼータ電位の変化量に比べて大きく低下してゼータ電位がマイナスの値を示している。
【0044】
本実施例の被処理水の電磁波処理は、上記約4kHz〜10kHz付近の周波数帯域で行うので、被処理水中に含まれる粒子が還元性雰囲気に置かれて被処理水中の微粒子がマイナスに帯電してスケール生成を抑制しているものと考えられる。
【0045】
なお、図6に示すゼータ電位の測定手順は以下の(1)〜(4)に示す通りである。
(1)ゼータ電位測定装置:大塚電子(株)製の電気泳動光散乱光度計ELS−800
(2)試料、溶質:酸化チタンのコロイド粒子(粒径100〜200μm)
溶媒:10mモルのKCl水溶液
調整液:pH5.5
温度:25℃
(3)電磁波発生器
図1又は図2に示す電磁波発生器を用いてコイル電流を1.0アンペアで、例えば図6に示す電磁波強度のピーク値と被処理水のゼータ電位の変化量の関係を示す電磁波等を発生させる。
【0046】
(4)図7に示すようにコイル部2(コイルを20回巻き付けた塩化ビニル配管)の内部空間に前記粒子を含む試料を入れたビーカー24を挿入した後、電磁波発生器10などからコイル部2に1.0アンペアの電流を1分間流して処理をした。その後、ビーカー24内の粒子を含む試料をビーカー底部に設けた流出管25からゼータ電位測定装置26内に送り出してゼータ電位を測定した。
コイルに流す電流の主要周波数は、0.5,20,40,60,80,・・・及び120kHzで行った。また、電磁波発生器10などによる電磁波処理をしない場合にも、ビーカー24内の粒子を含む試料を低部に設けた流出管25からゼータ電位測定装置26内に送り出してゼータ電位を測定した。
【0047】
上記方法で得られた各周波数の電磁波強度のピーク値と被処理水のゼータ電位の変化量の関係を図6に示すが、図6のゼータ電位の変化量は電磁波処理を行わない場合(未処理時)のゼータ電位に対する変化量であり、10回の測定値の平均値である。
また、図1と図2に示す電磁波発生器で発生させる連続的に周波数の波形は方形波又はのこぎり波に限らず、サイン波、パルス波などの他の波形であってもよい。
【0048】
本発明者は、この電磁波処理により被処理水に含まれる微粒子のゼータ電位がマイナスになり、マイナスに帯電した微粒子が容器の壁面や被処理水が流れる配管内壁でのスケール生成を防止していると推定しているが、以下の全ての実施例では、特に断らない限り、被処理水に上記した(a)単一の周波数を持つ交流電流(図3)、(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流(図4)又は(c)時間的に周波数が変化する交流電流(図5)を流して電磁波処理を行った。
【0049】
次にコイル部の配置について説明する。
図8には被処理水配管1の外側にコイル2を設置する例を示す。コイル部2は被処理水が流れる配管1の外側へ設置され、該コイル2部へ電磁波発生器3から電磁波を流すとコイル部2より発生する電磁波が配管1を透過して被処理水に照射される。配管1の材質によっては電磁波の透過量が異なり、鋼鉄管<ステンレス管<塩化ビニル管の順に電磁波透過量は多くなる。透過率の悪い材質に対してはコイル電流値を増加させて被処理水に必要な電磁波量を確保する。
【0050】
図9には投げ込み式のコイル部2とコイル部2へ電流を流す電磁波発生器3を有する投げ込み照射型の電磁波処理装置を示す。処理対象の液体槽4(主に水を主成分とする液であるので、以下「水槽」ということがある)内に、例えば塩化ビニル管からなるコイル設置部材にコイルを巻いたコイル部2を投げ込み、コイル部2より発生する電磁波を水槽4内の液体に作用させる。
【0051】
本発明者らは、図8に示すような、被処理水が流れる配管1の外側にコイルを巻く方法では、配管1の電磁波透過性が良くない場合には配管1内部を通過する被処理水への電磁波の作用が著しく低下することを見出した。特に、配管1の材質として、鋼鉄管、鋳鉄管、ステンレス管等の金属材質からなる配管1を用いる場合には、電磁波の透過性が悪く、被処理水への電磁波の作用が著しく低下することが判った。そこで、このような場合には、コイル部2を水槽4内の被処理水中に浸漬した投げ込み照射型の電磁波発生器により被処理水を処理する方法を実施した。図9(a)に示す投げ込み照射型の電磁波処理装置の電磁波発信部を図9(b)に示すように絶縁性の合成樹脂製のケース5内に密封することが効果的である。
【0052】
図9に示すコイル部2を水槽4内に投げ込む方式のコイル部2は、図8の被処理水配管1にコイルを巻く方法と比較して配管1の材質に左右されないで電磁波を被処理水に有効に作用させることができる。また、図9に示す方法は図8に示す方法に比べて単位時間当たりの電磁波の照射エネルギーが高い。このように電磁波による照射エネルギーが高いため、投げ込み方式のコイル部2により発生させる電磁波強度は小さくても良い。
【0053】
また、被処理水に対する還元力及び酸化力を促進させる電磁波を作用させる手段として、図9に示す被処理水が一時的に貯留される水槽4等を有する場合には、コイル部2の投げ込み照射型の電磁波処理装置を採用することで、図8に示す方法に比較して効率的な電磁波処理が可能となる。
【0054】
図9に示すように水槽4内の被処理水中に投げ込み照射型の電磁波処理装置のコイル部2を浸漬しておくと、電磁波処理装置から発する電磁波エネルギーは全て被処理水に供給されるのでエネルギーのロスがない。しかも、図8の配管1内を流れる被処理水とは異なり、水槽4内に被処理水が滞留しているので長時間の電磁波を照射できる。このため、電磁波の照射時間の制御が容易になる。
なお、電磁波の処理効果判定は従来より用いている図11に示す机上試験(ラボテスト)による顕微鏡判定を行うことができる。
【0055】
図10には外部照射方式のコイル部を示す。
図10(a)は外部照射方式コイル部2を被処理水配管1の外側に位置するコイル部2から電磁波を照射するものであり、図10(b)は水槽4内の水面より上側に設置するコイル部2から被処理水に電磁波を照射する様子を示す。
以上図8〜図10に示すコイル部2からの電磁波処理方法のうち、最も少ない電磁波強度で処理が可能な方法は図9に示す投げ込み式である。透過させる物質の影響を受けず、直接、水に照射させることが可能である。
【0056】
以上の図1と図2の電磁波発生器により4kHz〜10kHzの周波数で電磁波処理は、次のような用途に用いられる。
【0057】
(1)被処理水を用いて壁面にスケールが付着しやすい性質又は壁面が腐食性を有する設備へ適用することが最も適している。
特に、被処理水の性質として壁面に対して腐食性を有する場合には壁面を構成する、例えば鋼材の腐食防止を行う必要がある。このような腐食性を有する被処理水を扱う設備に電磁波処理が有効である。また、被処理水とマイナス帯電性薬剤との併用により電磁波処理の相乗効果を生む。
ただし、一般的な水処理剤はプラス帯電性のものが多く、このようなプラス帯電性の水処理剤が混入した場合はゼータ電位がマイナスになる電磁波処理が阻害されるので、予めプラス帯電性の水処理剤を除いた上で被処理水を処理することが必要である。
【0058】
(2)工場排水、生活排水、食器洗浄機、洗車機などの洗浄機、アンモニア含有水などの各種被処理水が流れる配管又は水槽を構成する壁面の浄化に利用され、該壁面の防錆、海生物の付着防止、配管の付着物による詰まり防止、アンモニア臭気の消臭に利用できる。(3)残コンクリートの消泡、固液分離膜の延命作用などにも利用可能である。
【実施例1】
【0059】
図12に示す食器洗浄設備で用いて、NaOH又はKOHを5wt%とEDTA20wt%を含有する洗剤を含む水道水で食器を洗浄する際の電磁波処理をした。
水道水の流れる配管1に油を使用した調理物を食した後の食器を入れた食器洗浄機5を接続し、該食器洗浄機5に所定量の前記洗剤を添加して、該食器洗浄機5中で食器を洗浄して排出される排水をフィルタ6でろ過した後、貯留タンク4の第1室4aに送り、該第1室4aから仕切板7aの底部に設けた開口部から貯留タンク4の第2室4bに送り、該第2室4bで浮上する油を除き、エマルジョン層は仕切板7bの頂部から第3室4cに送り、該第3室4cで分離した油を除き、第3室4cと第4室4dの仕切板7cの底部に設けた開口部から第4室4dに送りほとんど油を含まないエマルジョン層を貯留タンク4の外部に排出する。
【0060】
上記図12に示す排水の処理系において水道水の流れる配管1の外周部にコイルを巻き付けたコイル部2として図1と図2の電磁波発生器を用いて電磁波処理を実施し、得られた電磁波処理水を食器洗浄機5に供給した場合の電磁波処理効果について検討した。なお、コイル部2の設置箇所は食器洗浄機5の後流側の配管1又は貯留タンク4でも良い。
【0061】
食器洗浄機5に投入する洗剤は、水酸化ナトリウム5wt%以下、水酸化カリウム5wt%以下、EDTA20wt%、リン酸塩微量と残り水からなる洗剤を使用した。また、食器洗浄機5での食器(ボール、バット)の洗浄効果はルミテスター値により測定した。
【0062】
ここで、ルミテスター値は食中毒の原因となるアデノシン三リン酸(ATP)の食器への付着量に対応した数値であり、洗浄によるATPの除去効果の目処となる。ルミテスター値は、ATPふき取り検査用のルミテスターPD−20(キッコマン(株)製のATPふき取り検査機の商品名)による測定値であり、この数値が高いほど食器等の洗浄効果が低いという指標となる。
また、食器に付着した油分は動植物油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質などの油分であり、食器洗浄後の排水中の油分の濃度を表す指標としてノルマルヘキサン値が用いられている。
上記食器洗浄機に投入する洗剤の量と食器洗浄後の排水のノルマルヘキサン値とは比例関係にある。
【0063】
一般に、洗剤を投入して食器洗浄機で食器を洗浄した後に食器洗浄機から排出する排水中には油成分が多量に含まれており、食器から油分を取り除くために食器洗浄機に投入した洗剤により、食器洗浄後の排水の一部が油分によりエマルジョン化し、このエマルジョンが長時間(約11時間)安定であるため、その処理に多大の労力、経費が掛かる問題が従来からあった。しかも、エマルジョン化した油分が多ければ多いほど食器に油分が再付着してしまい、水洗によっても油分を除去できなくなり、エマルジョンに起因するルミテスター値が上昇することも問題であった。
【0064】
そこで、食器洗浄後の排水ができる限りエマルジョンが生成しない方法を採用することが要請されているが、上記図12に示す食器洗浄系で水道水に予め本発明の電磁波処理装置を適用すると、洗剤を投入して食器を洗浄した後の排水がエマルジョン化する割合が著しく減少することが分かった。
【0065】
なお、以下に説明する電磁波処理には図3に示す(a)タイプの電磁波処理、図4に示す(b)タイプの電磁波処理及び図5に示す(c)タイプの電磁波処理があるが、これらの電磁波処理をそれぞれ(a)タイプ、(b)タイプ及び(c)タイプと呼ぶことにする。
【0066】
なお、本実施例では各7W、250mAで、(a)タイプでは7kHzの周波数、(b)タイプは5kHz、6kHz、7kHz及び8kHzの周波数、(c)タイプでは4.5〜8.5kHzの周波数を発振させた。
【0067】
表1には上記電磁波処理をした洗浄水に対して容器としてボール又はバットを用いた場合における使用した洗剤添加量と容器に付着した油分に由来するルミテスター値の関係を示す。また図13には表1に示す洗剤添加量に対するルミテスター値を2次元座標で示す。
【0068】
なお、ここで食器洗浄機5に投入する洗剤は、前述のように水酸化ナトリウム5wt%以下、水酸化カリウム5wt%以下、EDTA20wt%、リン酸塩微量と残り水からなる洗剤であり、該洗剤を水道水にそれぞれ(イ)0.090wt%、(ロ)0.045wt%、(ハ)0.025wt%加えた場合を示している。
【表1】

上記表1の結果から電磁波未処理で、かつ洗浄剤を含まない場合のルミテスター値が著しく高く、電磁波未処理水に洗浄剤を添加して使用する場合もルミテスター値がかなり高い。これら電磁波未処理の場合に比べて洗浄剤を含む電磁波処理水を使用した場合には洗浄効果が高いことが分かる。
【0069】
なお、食器がボールである場合よりバットの場合の方が比較的良く洗浄できている。これは、食器がボールである場合はボールを逆さまにして洗剤を吹き付ける時に比較して底までの深さがバットに比べて深いのでボールの底に洗浄水が到達し難く、洗浄効果がバットに比べて低い。
【0070】
表1と図13に示すように、電磁波処理をしていない未処理の場合には、食中毒の発生が起こり得るほどの高さのルミテスター値を示すが、本発明の電磁波処理をした水道水を使用するとボール又はバットに付着した油分に由来するルミテスター値が著しく低下する。 また、図13から分かるように洗剤の使用量が少ないほど、ルミテスター値が低くなっている。これは、本発明の電磁波処理をした水道水を使用すると油分のエマルジョン化が阻害されるため、又は油分と水分の分離が促進されるためにエマルジョンの生成量が減るためと考えられる。
【0071】
すなわち、図12に示す食器洗浄設備において貯留タンク4の第1室4a〜第4室4dに排水が順次送られる過程で油分の分離が電磁波処理水を用いない場合に比較して著しく進行して、洗剤の添加量に比例して生成量が増えるはずのエマルジョンの生成量が逆に減少したためである。このエマルジョンの生成量が減少した原因は、本発明の電磁波処理で排水中に油分の分離が促進され、油分の分離後の排水中になお残留する油分が電磁波未処理の場合に比べて減少したためである。
【0072】
しかも、洗剤量を減らすと増加するはずのルミテスター値が逆に減少している。これはボール、バットの洗浄効果が洗剤量を減らすほど高くなっていることを示しており、洗剤量を増すとその分、排水中の油分がエマルジョン化してエマルジョン量が増えるが、表1と図13の結果は洗剤量が多い場合は生成したエマルジョンがボールやバットに再度付着していることを示している。
このことから、(a)〜(c)タイプの電磁波処理により食器の洗浄効果高く、食器洗浄排水の処理でエマルジョン生成量を抑制し、しかも洗剤使用量を節減でき、環境保全だけでなくコスト的に有利であることが分かった。
【実施例2】
【0073】
[机上試験(乾燥液滴界面視察によるラボテスト)]
本出願人の特許である特許第4116002号公報に記載の変調電磁波処理が対象とする被処理水に有効に作用するか否かを机上試験(ラボテスト)で行う方法を紹介した。
前記ラボテストは、電磁波を発生する交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に結晶化可能な物質を含む被処理水を流した後、該被処理水の水滴試料をガラス板上で乾燥させる際に水滴界面付近へ結晶が集合性を有する場合を「スケール性有り」と判定し、前記界面への結晶集合性を失って小粒子化する場合を「スケール性消失」と判定するものである。
【0074】
本実施例では洗車機に使用される洗剤を添加した地下水を電磁波処理して用いて以下に述べる机上試験を行った。
なお、洗車にはコストを考慮して上水道水でなく地下水が使用される。しかし地下水は上水道水に比較して硬水成分であるカルシウム、マグシウム、鉄、シリカ成分などのスケール成分が多く含まれ、前記スケール成分が多いほど洗車性能が低下するため洗剤の使用量が増える。また洗車性能が低下した状態では洗車後のワックスの付着量も低下して、ワックス使用量を増加させることになる。洗剤とワックスは床や洗車機廻りに付着し、藻やカビの発生や汚れの原因となるので、それらの使用量を増さないことが要請されている。またスケールやワックスが床や洗車機廻りに付着しやすいことも問題であると言われている。
【0075】
以下の机上試験で地下水を本発明の電磁波処理することにより、洗剤とワックスの使用量を現行の使用量に比べて半減させても洗車効果があることが分かった。
【0076】
(1)本実施例の図1及び図2に示す電磁波発生器を用いて、試料として以下の洗剤(アニオンシャンプー1mlを東京地区の地下水(全硬度46.5)でそれぞれ400倍、800倍に薄めて使用した場合と、次にワックス剤としてカチオンコート剤の1mlを前記東京地区の地下水で150倍、300倍で薄めて使用した場合と又はワックス剤としてカチオンワックス1mlを前記東京地区の地下水で200倍、400倍に薄めて使用した場合について、電磁波処理した結果を示す。
【0077】
電磁波処理は前記(a)タイプ(図3)、(b)タイプ(図4)及び(c)タイプ(図5)で行い、各電磁波処理水について、図11に示すガラスパイプに本実施例の電磁波発生器3に接続したコイル(コイル部2)を巻き付けておき、これにコイル電流500mA(10W)で1回又は5回の通液テストを行い、前記電磁波処理をしない未処理の場合と比較するテストを行った。
【0078】
前記テストでは試料をガラス板上に滴下し、乾燥させた後、界面部の結晶状況を顕微鏡を用いて確認する。 その結果を表2と図14(a)〜図22(c)の顕微鏡写真に示す。
【表2】

上記アニオンシャンプー(アニオン界面活性剤)は直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩18〜30wt%、肪酸18〜30wt%、残り水からなる洗浄剤である。
カチオンコート剤はショ糖脂肪酸エステル5wt%、脂肪酸アルカノールアミド20〜25wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル10〜15wt%、残り水からなる洗浄剤である。
カチオンワックスは天然ロウベース3〜5wt%と適量のロウ希釈剤であるプロピルアルコールと残り水からなる洗浄剤である。
【0079】
なお、表2中で「カルシウム・マグネシウムが界面に形成」とあるのは全硬度46.5の地下水中に含まれる硬水成分としてカルシウム成分とマグネシウム成分が含まれているためであり、また、電磁波処理をしない未処理の場合はこれらの成分が水道配管の内壁に析出することが知られている。
また、表2中で「カチオン反発が見られる」又は「アニオン・カチオンによる凝集」なる記載は推定にすぎない。
【0080】
表2と図14(a)〜図22(c)に示す顕微鏡写真について説明する。
図14(a)にはアニオンシャンプーを400倍に前記地下水で希釈した(以下「400倍」などと簡単に記す)電磁波未処理水で洗車をした後の排水の机上試験で得られた液滴の乾燥後の界面部の顕微鏡写真を示す。電磁波で処理をしていない(未処理)水を用いて洗車した後の排水液滴の乾燥後の界面部には微結晶集合している(「スケール性あり」という)ことが分かる。
【0081】
しかし、図14(b)〜図14(d)に示すように(c)タイプの電磁波で処理したアニオンシャンプー添加電磁波処理水を用いて洗車をした後の排水の机上試験では図11のコイル部2を巻き付けたパイプに通液する回数が1回(1回通液)より5回(5回通液)と多いほど、またアニオンシャンプー濃度を低くする(400倍より800倍に希釈)ほど、得られた排水液滴の乾燥後の界面部には微結晶の集合が少なくなる。
【0082】
また、図15(a)、図15(b)に比べて図15(c)に示すように、アニオンシャンプーを前記地下水で400倍に希釈するより800倍に希釈して(a)タイプの電磁波処理水とした方が、また前記通液回数が1回より5回の方が得られた排水液滴の乾燥後の界面部には微結晶の集合が少なくなることが分かる。
【0083】
図16(a)、図16(b)に比べて図16(c)に示すように、アニオンシャンプーを400倍に希釈するより800倍に希釈して(b)タイプの電磁波処理水とした方が、また前記通液回数が1回より5回の方が得られた排水液滴の乾燥後の界面部には微結晶の集合が少なくなることが分かる。
【0084】
以上のことから次のことが分かる。
すなわち、アニオンシャンプーと前記本発明の電磁波処理でマイナス帯電した洗浄用地下水の相乗効果で地下水中のカルシウム、マグシウム、鉄、シリカ成分などのスケール成分が本来マイナス帯電しているガラス面への付着性を阻害しているものと考えられる。しかも従来洗車用として慣行とされていた400倍のアニオンシャンプー希釈水を800倍の希釈水としても十分洗浄効果を発揮し、スケール付着性が小さくなることが分かる。
【0085】
次に、ワックス掛けに対応する机上試験結果について説明する。
シャンプー含有洗浄水で洗浄した車体はワックス含有水を用いてワックス掛けが行われる。一般に、地下水中の前記スケール成分が多いほど洗車性能が低下するため洗剤の使用量が増え、また、洗車性能が低下した状態では洗車後のワックスの付着量も低下して、ワックス使用量を増加させることになる。洗剤とワックスは床や洗車機廻りに付着し、藻やカビの発生や汚れの原因となるので、それらの使用量を増さないことが要請されている。またスケールやワックスが床や洗車機廻りに付着しやすいことも問題であると言われている。
【0086】
通常、本発明の電磁波処理をしない場合にはアニオンシャンプー含有水で洗車した後の車にカチオン系のコート剤又はカチオン系のワックスを約150倍から200倍に希釈した水でワックス掛けを行い、車体の乾燥面にカチオン系のコート剤又はカチオン系のワックスをコーティングすることが行われる。
【0087】
図17(a)、図20(a)の顕微鏡写真に示すように前記地下水で150倍に希釈したカチオンコート剤又は200倍に希釈したカチオン系のワックスを含む上記地下水の電磁波未処理水を机上試験すると、得られた液滴の乾燥後の界面部には地下水に由来するカルシウムなどのカチオン性のスケール成分とワックス剤であるカチオン系のコート剤又はカチオン系のワックスとが互いに反発し合って乾燥界面に膜を形成している。
【0088】
しかし、図17(b)、図17(c);図20(b)、図20(c)の顕微鏡写真に示すように地下水で150倍に希釈したカチオンコート剤又は地下水で200倍に希釈したカチオン系のワックスを添加して(c)タイプの電磁波で処理した電磁波処理水の机上試験でもパイプ通液回数の多少に拘わらず、得られた液滴の乾燥後の界面部には微結晶が過剰に集合しており、カチオンコート剤又はカチオン系のワックスが車体表面に付着しやすいことが分かり、コート剤の濃度を半減させてもカチオンコート剤が車体表面に十分付着することが予想される。
【0089】
そこでカチオンコート剤又はカチオン系のワックスの濃度をそれぞれ半減させて(c)タイプの電磁波で処理した電磁波処理水の机上試験(5回通液)を行うと、図17(d)、図20(d)に示すように得られた液滴の乾燥後の界面部にはほぼ適正なカチオン系のコート剤又はカチオン系のワックス膜(地下水中のカルシウムなどのスケール成分も含まれると考えられる)が形成されていることが分かる。
【0090】
また、図18(a)〜図18(c)に示すように、カチオンコート剤を添加した(a)タイプの電磁波処理水の机上試験でも同様の結果が得られ、カチオンコート剤濃度を半減させても液滴の乾燥後の界面部には微結晶が集合しており、カチオンコート剤が車体表面に付着しやすいことが分かり、コート剤の濃度を半減させてもカチオンコート剤が車体表面に十分に付着することが予想される。
【0091】
同様に図19(a)〜図19(c)に示すように、カチオンコート剤を添加した(b)タイプの電磁波処理水の机上試験でも同様の結果が得られ、カチオンコート剤濃度の濃度を半減させても液滴の乾燥後の界面部には微結晶が集合しており、この場合もカチオンコート剤が車体表面に付着しやすいことが分かり、コート剤の濃度を半減させてもカチオンコート剤が車体表面に十分に付着することが予想される。
【0092】
また、図20(b)〜図20(d)、図21(a)〜図21(c)、図22(a)〜図22(c)に示すように前記地下水にカチオンワックスを添加した(a)タイプ、(b)タイプ及び(c)タイプの電磁波処理水の机上試験でも同様の結果が得れ、また、カチオンワックス濃度を半減させても得られた排水液滴の乾燥後の界面部には微結晶が集合しており、この場合もカチオンワックスが車体表面に付着しやすいことが分かり、カチオンワックスの濃度を半減させてもカチオンワックスが十分に車体表面に付着することが予想される。
【0093】
以上のカチオンコート剤、カチオンワックスを含む前記地下水を用いるワックス掛けでは本発明の(a)タイプ〜(c)タイプのマイナスに帯電した電磁波処理水を用いるので車体表面のマイナス帯電性が強くなり、前記電磁波処理水に含まれるカチオンコート剤、カチオンワックスが車体表面に付着しやすくなるので、これらカチオンコート剤、カチオンワックスの濃度を半減させても、ワックス掛けの効果が得られるもとと考えられる。
【0094】
こうして、ワックス使用量を現行のそれより半減させることができるので、コスト的にも環境対策上でも有利なことが分かる。
また、洗車機の床面上に付着するワックスの量も現状より減らすことができ、床面の清掃が容易となる利点もある。
この机上試験と同じ結果が実際の洗車機で得られた。
【0095】
なお、上記図17(a)又は図20(a)に示す電磁波未処理水の乾燥界面にできる膜に比べて図17(b)〜図17(d)又は図20(b)〜図20(d)に示す乾燥界面にできる膜がほぼ同じ濃さ、又はそれより濃く見えることからカチオン性添加剤を含む被処理水から予めカチオン性添加剤を除いて被処理水を本発明の(a)タイプ〜(c)タイプのマイナスに帯電した電磁波処理を施すことによりスケールが形成され難いことが分かる。
【参考例1】
【0096】
図23は、図1及び図2の電磁波発生器を用いて、(c)タイプの4kHz〜10kHzの周波数で出力10W、600mA(1.8×10-2ミリガウス)で(c)タイプ)で示す帯域の周波数を有する交流電流が流れるコイル部(図示せず)を浴室の排水の配管に設けて、3ヶ月間電磁波処理した場合の配管内部の様子を示す写真である。図23(a)には電磁波処理前の様子を示し、図23(b)には電磁波処理3ヶ月後の様子を示す写真である。
【参考例2】
【0097】
図24には、(c)タイプの電磁波発生器を用いた電磁波処理効果結果を示し、参考例1と全く同様の条件で台所排水の配管に設けたコイル部(図示せず)を通じて3ヶ月間電磁波処理した場合の配管内部の様子を示す写真である。図24(a)には電磁波処理前の様子を示し、図24(b)には電磁波処理3ヶ月後の様子を示す写真である。
【参考例3】
【0098】
図25には、(c)タイプの電磁波発生器を用いた電磁波処理効果結果を示し、参考例1と全く同様の条件で複数の食器洗浄用シンクから配管を通して集められて水平方向に配置される集合排水管である横引き排水管に設けたコイル部(図示せず)を通じて3ヶ月間電磁波処理した場合の配管内部の様子を示す写真である。図25(a)には電磁波処理前の様子を示し、図25(b)には電磁波処理3ヶ月後の様子を示す写真である。
いずれの場合も配管内壁に付着していたスケール成分は剥離している様子がよく分かる。
【実施例3】
【0099】
(a)タイプの電磁波発生器による電磁波処理水を用いた残コンクリートの電磁波処理効果
図1及び図2の電磁波発生器を用いて、4kHz〜10kHzの周波数で出力10W、600mA(6.0×10-2ミリガウス)で図3の(a)タイプで示す帯域の周波数を照射させた電磁波処理水をコンクリート混合機に供給する水として、3ヶ月間使用した場合のコンクリート混合攪拌機の様子を示す写真を図26に示す。
【0100】
図26(a)には電磁波処理水を用いないで混合機を使用した場合の様子を示し、図26(b)には電磁波処理水を用いて3ヶ月経過した後の様子を示す写真である。
コンクリート混合機に供給する水として本発明の電磁波処理水を用いると、コンクリート混合機内部にコンクリートの付着物が付き難いことが分かる。
【実施例4】
【0101】
(b)タイプの電磁波発生器による電磁波処理水を用いたセメントを流すU字溝の内壁面の電磁波処理効果
図1及び図2の電磁波発生器を用いて、4kHz〜10kHzの周波数で出力10W、600mA(6.0×10-2ミリガウス)で図4の(b)タイプで示す帯域の周波数を照射させた水を電磁波処理水とし、この電磁波処理水をセメントを流すU字溝で3ヶ月間使用した場合のセメントを流すU字溝の内壁部の様子を示す写真を図27に示す。
図27(a)には電磁波処理前の様子を示し、図27(b)には電磁波処理3ヶ月後の様子を示す写真である。
【参考例4】
【0102】
(c)タイプの電磁波発生器による電磁波処理水を用いたセメント圧送管内のの電磁波処理効果について
図1及び図2の電磁波発生器を用いて、4kHz〜10kHzの周波数で出力10W、600mA(6.0×10-2ミリガウス)で図5の(c)タイプで示す帯域の周波数を持つ交流電流をセメント圧送管に設けたコイル部に流し、該セメント圧送管内を流れる電磁波処理水を3ヶ月間用いた場合の配管内壁の様子を示す写真を図28に示す。
図28(a)には電磁波処理前の様子を示し、図28(b)には電磁波処理水を用いて3ヶ月後の様子を示す写真である。
【参考例5】
【0103】
(c)タイプの電磁波発生器による電磁波処理水を用いたセメント洗浄用水の循環タンク内の電磁波処理効果
図1及び図2の電磁波発生器を用いて、4kHz〜10kHzの周波数で出力10W、600mA(6.0×10-2ミリガウス)で図5の(c)タイプで示す帯域の周波数を持つ交流電流をセメント洗浄用水配管に設けたコイル部に流し、セメント洗浄用水配管内を流れる電磁波処理水を用いて3ヶ月間洗浄した場合の前記配管内壁の様子を示す写真を図29に示す。
【0104】
図29(a)には電磁波処理水で洗浄する前の様子を示し、図29(b)には電磁波処理3ヶ月後の様子を示す写真である。
このように本発明の電磁波処理により図4の(b)タイプで示す帯域の周波数に限らず、図3の(a)タイプと図5の(c)タイプで示す帯域の周波数を発生する電磁波発生器を用いて各種の装置の浄化処理が行えることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の電磁波処理により、このように生活排水設備に限らず、上記工業用設備及び、説明を省略しているアンモニア含有水などの各種被処理水が流れる配管又は水槽を構成する壁面の浄化及び前記壁面の防錆、海生物の付着防止、配管の付着物による詰まり防止、アンモニア臭気の消臭効果、(b)残コンクリートの消泡、固液分離膜の延命効果がある。
【符号の説明】
【0106】
1 配管
2 コイル部
3 電磁波発生器
4 貯留タンク(流体槽、水槽)
5 食器洗浄機
6 フィルタ
7a,7b 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体照射用のコイル部と、該コイル部に4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流を流す電磁波発生器を備えたことを特徴とする被処理流体の電磁波処理装置。
【請求項2】
コイル部は、(i)被処理流体が流れる流体流路の表面に巻き付けたコイル、(ii)被処理流体を貯めた貯留槽に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(iii)被処理流体が流れる流体流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルの内の少なくとも一つのコイルを備えている請求項1記載の被処理流体の電磁波処理装置。
【請求項3】
4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流に基づく電磁波により被処理流体を処理をすることを特徴とする被処理流体の電磁波処理方法。
【請求項4】
(i)被処理流体が流れる流体流路の表面に巻き付けたコイル、(ii)被処理流体を貯めた貯留槽に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(iii)被処理流体が流れる流体流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルの内の少なくとも一つのコイルに交流電流を流す請求項3記載の被処理流体の電磁波処理方法。
【請求項5】
アニオン系薬剤を含有又は添加した被処理流体又はカチオン薬剤を除いた被処理流体に電磁波処理をする請求項4記載の被処理流体の電磁波処理方法。
【請求項6】
4kHz〜10kHzの周波数帯域内で、(a)単一周波数を持つ交流電流又は(b)互いに周波数の異なる複数の単一周波数を持つ交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理流体を流した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化すること及び流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失うことを確認して、前記被処理流体の電磁波処理の効果の程度を判定する被処理水の机上試験を行い、該机上試験法による判定結果が良いと、そのまま前記電磁波処理を実行し、前記机上試験法による判定結果が良くない場合には、前記被処理流体中にカチオン系薬剤が含まれていると、これを除いた後に該流体に対して前記電磁波処理をし、又はカチオン薬剤が含まれない状態で前記被処理流体にアニオン系薬剤を添加した後に該流体に対して前記電磁波処理を実行する請求項4記載の電磁波処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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