被張付材の張設構造
【課題】接着強度のバラつきを生じさせることなく、被張付材をフレームの表面に張り付けることができる構造を提供することを課題とする。
【解決手段】接着可能な材料34を介して被張付材20をフレーム1の表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、そのフレーム1の表面のうち、被張付材20を張り付ける面には、凹部10が形成されており、その被張付材20を張り付ける面に接着可能な材料34を付着させ、その付着状態で被張付材20とフレーム1を相対的に加圧させて被張付材20をフレーム1の表面に張り付ける。
【解決手段】接着可能な材料34を介して被張付材20をフレーム1の表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、そのフレーム1の表面のうち、被張付材20を張り付ける面には、凹部10が形成されており、その被張付材20を張り付ける面に接着可能な材料34を付着させ、その付着状態で被張付材20とフレーム1を相対的に加圧させて被張付材20をフレーム1の表面に張り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被張付材の張設構造に関し、詳しくは、接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の被張付材の張設構造として、例えば、特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、被張付材であるネットをクランプした金型を用意させておき、一方、加熱したバックフレームに接着性樹脂を付着させたものも用意させておく。そして、接着性樹脂を付着させたバックフレームを金型に嵌め込んでクランプさせ、そのクランプ状態でバックフレームを冷却させている。すると、接着性樹脂がネットに浸透した状態で固化するため、テンションが掛けられたままの状態で、ネットがバックフレームの表面に張り付けられる。このようにネットが張り付けられたバックフレームを車両用シートに適用すると、車両の軽量化を図ることができる。
【特許文献1】特開平11−290153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、接着性樹脂134を付着させたバックフレーム101を金型に嵌め込んでクランプさせるため、そのクランプに伴って、接着性樹脂134がバックフレーム101とネット120との間から食み出してしまうことがあった(図11において、134aが接着性樹脂134の食み出しを示している)。このとき、接着性樹脂134は、必要量しか付着されていないため、接着性樹脂134が食み出してしまうと、ネット120とバックフレーム101との間に接着性樹脂134が行き渡らず、接着性樹脂134の中にブランク部Bが生じることがあり、結果として、張り付けられたネット120の接着強度にバラつきが生じることがあった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、接着強度のバラつきを生じさせることなく、被張付材をフレームの表面に張り付けることができる構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、そのフレームの表面のうち、被張付材を張り付ける面には、凹部が形成されており、その被張付材を張り付ける面に接着可能な材料を付着させ、その付着状態で被張付材とフレームを相対的に加圧させて被張付材をフレームの表面に張り付けることを特徴とする。
この構成によれば、加圧によって接着可能な材料はフレームの凹部へと入り込む。そのため、従来技術で説明したように、接着性樹脂を付着させたフレームを金型に嵌め込んでクランプさせる場合であっても、フレームと被張付材との間に接着可能な材料(接着性樹脂)を確実に留まらせることができる。したがって、接着強度のバラつきを生じさせることなく、被張付材をフレームの表面に張り付けることができる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、フレームの長手方向に沿って溝状に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、フレームと被張付材との間に多くの接着可能な材料を留まらせることができる。そのため、被張付材をフレームの表面に張り付けるとき、その張り付け強度を向上させることができる。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、凹部の入口側が狭いため、接着可能な材料が凹部から抜け出ることを防止できる。そのため、フレームの表面に張り付けた被張付材の剥がれを防止できる。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、被張付材を張り付ける面に複数形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、フレームと被張付材との間に多くの接着可能な材料を留まらせることができる。そのため、被張付材をフレームの表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、ネットを張り付けるフレームの例として、車両用のネットシートのバックフレーム1、2、3、4、5を例に説明することとする。また、接着可能な材料の例として、接着性樹脂34を例に説明する。また、被張付材の例として、ネット20を例に説明する。これらのことは、後述する実施例2以降においても同様である。
【0010】
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜6を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るバックフレーム単体の斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。図2は、図1のバックフレームにネットを張り付ける工程を説明する図である。図3は、図2の次工程を説明する図である。図4は、図3の次工程を説明する図である。図5は、図4でネットを張り付けたバックフレームの斜視図である。図6は、図5のバックフレームの縦断面模式図(図5のA−A線断面図)である。
【0011】
はじめに、図1を参照して、本発明の実施例1に係るバックフレーム1の構造を説明する。このバックフレーム1は、例えば、円筒状から成る金属性のパイプ部材の折り曲げと溶接とによって、シートバック(図示しない)の輪郭を成すように矩形状に形成されている。このバックフレーム1の表面のうち、ネット20を張り付ける面(図1において、バックフレーム1の下半面であり、以下、単に「バックフレーム1のネット張り付け面」と記す)には、凹部10が形成されている。なお、この凹部10は、バックフレーム1の長手方向に沿って複数形成されている。
【0012】
次に、図2〜6を参照して、上述したバックフレーム1にネット20を張り付ける工程を説明する。まず、この工程を説明するにあたって、必要となる冶具(第1の冶具30、第2の冶具40、第3の冶具50)を個別に説明しておく。
【0013】
はじめに、第1の冶具30から説明する(図2参照)。この第1の冶具30は、バックフレーム1を嵌め込んでバックフレーム1の表面に接着性樹脂(例えば、PP,PE等)34を付着させるための冶具である。そのため、この第1の冶具30の上面には、バックフレーム1を嵌め込み可能なキャビティ32が形成されている。なお、このキャビティ32には、予め、所定量の接着性樹脂34を載せておく。
【0014】
次に、第2の冶具40を説明する(図3参照)。この第2の冶具40は、バックフレーム1に張り付けるネット20をクランプするための冶具である。そのため、この第2の冶具40には、このクランプ状態を保持する複数のネット固定トグル44が設けられている。この第2の冶具40の上面にも、キャビティ42が形成されている。なお、この第2の冶具40も、予め、ネット20をクランプさせておく。
【0015】
最後に、第3の冶具50を説明する(図4参照)。この第3の冶具50は、バックフレーム1にネット20を張り付けるための冶具である。そのため、この第3の冶具50には、ネット20の張り付けをクランプ状態で保持する複数の押さえトグル52が設けられている。
【0016】
続いて、上述した3個の冶具30、40、50を用いて、バックフレーム1にネット20を張り付ける工程を説明する。まず、加熱装置(高周波、加熱炉など)を用いて、例えば、350度くらいになるように、バックフレーム1を加熱する作業を行う。その後、加熱したバックフレーム1を、第1の冶具30のキャビティ32に嵌め込ませる作業を行う(図2参照)。すると、バックフレーム1は加熱状態のため、バックフレーム1のネット張り付け面には、接着性樹脂34が溶融状態となって付着する。
【0017】
その後、溶融状の接着性樹脂34が付着したバックフレーム1を第2の冶具40のキャビティ42に嵌め込ませる作業を行う(図3参照)。このとき、図3からも明らかなように、ネット20を介した状態で、バックフレーム1はキャビティ42に嵌め込まれる。その後、第3の冶具50によってバックフレーム1にネット20を加圧状態で保持させる作業を行う(図4参照)。この記載が特許請求の範囲に記載の「被張付材とフレームを相対的に加圧させて」に相当する。この作業に伴って、溶融状の接着性樹脂34はネット20のメッシュおよびバックフレーム1の凹部10へと入り込む(図6参照)。
【0018】
その後、バックフレーム1を冷却させて、溶融状の接着性樹脂34を固化させる。すると、この固化に伴って、接着性樹脂34とネット20において、これらが一体となる物理的、化学的な結合が行われる。このようにして、バックフレーム1にネット20が張り付けられ製品として完成する。なお、張り付けられたネット20のうち、バックフレーム1の外側部分はトリミングによってカットされている(図5参照)。
【0019】
本発明の実施例1に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、加圧によって接着性樹脂34はバックフレーム1の凹部10へと入り込む。そのため、従来技術で説明したように、接着性樹脂134を付着させたバックフレーム101を金型に嵌め込んでクランプさせる場合であっても、バックフレーム1とネット20との間に接着性樹脂34を確実に留まらせることができる。したがって、接着強度のバラつきを生じさせることなく、ネット20をバックフレーム1の表面に張り付けることができる。すなわち、ネット20の張り付け強度を向上させることができる。
【0020】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施例2に係るバックフレームの斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。この実施例2は、実施例1と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。そのため、以下の説明にあたって、実施例1で説明した部材と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。このことは、後述する実施例3以降でも同様である。
【0021】
図7に示すように、実施例2のバックフレーム2には、実施例1で説明した凹部10に代わって凹溝12が形成されている。すなわち、バックフレーム2のネット張り付け面には、バックフレーム2の長手方向に沿って凹溝12が形成されている。このようにバックフレーム2が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム2の表面に張り付けることができる。
【0022】
本発明の実施例2に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム2の表面に形成されている凹みが溝状に形成されているため、実施例1と比較すると、バックフレーム1とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム2の表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【0023】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施例3に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例3は、実施例1と比較すると、ネット20の剥がれ防止構造を備えた形態である。
【0024】
図8に示すように、実施例3のバックフレーム3には、実施例1で説明した凹部10に代わって凹部14が形成されている。この凹部14は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されている。すなわち、その入口側の幅Aは、その奥側の幅Bより狭くなるように設定されている(図8の一部拡大図参照)。このようにバックフレーム3が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム3の表面に張り付けることができる。
【0025】
本発明の実施例3に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、凹部14の入口側が狭いため、実施例1と比較すると、固化した接着性樹脂34が凹部14から抜け出ることを防止できる。そのため、バックフレーム3の表面に張り付けたネット20の剥がれを防止できる。
【0026】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を、図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施例4に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例4は、実施例1と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。
【0027】
図9に示すように、実施例4のバックフレーム4には、その周方向に沿って実施例1で説明した凹部10が複数形成されている。このようにバックフレーム4が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム4の表面に張り付けることができる。
【0028】
本発明の実施例4に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム4の表面に複数の凹部10が形成されているため、実施例1と比較すると、バックフレーム4とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム4の表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【0029】
(実施例5)
最後に、本発明の実施例5を、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施例5に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例5は、実施例3と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。
【0030】
図10に示すように、実施例5のバックフレーム5には、その周方向に沿って実施例3で説明した凹部14が複数形成されている。このようにバックフレーム5が形成されているため、実施例3のバックフレーム3と同様に、ネット20をバックフレーム5の表面に張り付けることができる。
【0031】
本発明の実施例5に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム5の表面に複数の凹部14が形成されているため、実施例3と比較すると、バックフレーム5とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム5の表面に張り付けるとき、その張り付け強度を向上させることができる。
【0032】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、ネットを張り付けるフレームの例として、車両用のネットシートのバックフレーム1、2、3、4、5を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、金属製のフレームにネットを張り付けるのであれば、どのようなフレームであっても構わない。
【0033】
また、各実施例では、被張付材の例として、ネット20を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ファブリック等であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るバックフレーム単体の斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。
【図2】図2は、図1のバックフレームにネットを張り付ける工程を説明する図である。
【図3】図3は、図2の次工程を説明する図である。
【図4】図4は、図3の次工程を説明する図である。
【図5】図5は、図4でネットを張り付けたバックフレームの斜視図である。
【図6】図6は、図5のバックフレームの縦断面模式図(図5のA−A線断面図)である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係るバックフレームの斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。
【図8】図8は、本発明の実施例3に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施例4に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施例5に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図11】図11は、従来技術に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 バックフレーム(実施例1)
2 バックフレーム(実施例2)
3 バックフレーム(実施例3)
4 バックフレーム(実施例4)
5 バックフレーム(実施例5)
10 凹部(実施例1)
12 凹溝(実施例2)
14 凹部(実施例3)
20 ネット(被張付材)
34 接着性樹脂(接着可能な材料)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被張付材の張設構造に関し、詳しくは、接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の被張付材の張設構造として、例えば、特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、被張付材であるネットをクランプした金型を用意させておき、一方、加熱したバックフレームに接着性樹脂を付着させたものも用意させておく。そして、接着性樹脂を付着させたバックフレームを金型に嵌め込んでクランプさせ、そのクランプ状態でバックフレームを冷却させている。すると、接着性樹脂がネットに浸透した状態で固化するため、テンションが掛けられたままの状態で、ネットがバックフレームの表面に張り付けられる。このようにネットが張り付けられたバックフレームを車両用シートに適用すると、車両の軽量化を図ることができる。
【特許文献1】特開平11−290153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、接着性樹脂134を付着させたバックフレーム101を金型に嵌め込んでクランプさせるため、そのクランプに伴って、接着性樹脂134がバックフレーム101とネット120との間から食み出してしまうことがあった(図11において、134aが接着性樹脂134の食み出しを示している)。このとき、接着性樹脂134は、必要量しか付着されていないため、接着性樹脂134が食み出してしまうと、ネット120とバックフレーム101との間に接着性樹脂134が行き渡らず、接着性樹脂134の中にブランク部Bが生じることがあり、結果として、張り付けられたネット120の接着強度にバラつきが生じることがあった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、接着強度のバラつきを生じさせることなく、被張付材をフレームの表面に張り付けることができる構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、そのフレームの表面のうち、被張付材を張り付ける面には、凹部が形成されており、その被張付材を張り付ける面に接着可能な材料を付着させ、その付着状態で被張付材とフレームを相対的に加圧させて被張付材をフレームの表面に張り付けることを特徴とする。
この構成によれば、加圧によって接着可能な材料はフレームの凹部へと入り込む。そのため、従来技術で説明したように、接着性樹脂を付着させたフレームを金型に嵌め込んでクランプさせる場合であっても、フレームと被張付材との間に接着可能な材料(接着性樹脂)を確実に留まらせることができる。したがって、接着強度のバラつきを生じさせることなく、被張付材をフレームの表面に張り付けることができる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、フレームの長手方向に沿って溝状に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、フレームと被張付材との間に多くの接着可能な材料を留まらせることができる。そのため、被張付材をフレームの表面に張り付けるとき、その張り付け強度を向上させることができる。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、凹部の入口側が狭いため、接着可能な材料が凹部から抜け出ることを防止できる。そのため、フレームの表面に張り付けた被張付材の剥がれを防止できる。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、凹部は、被張付材を張り付ける面に複数形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、フレームと被張付材との間に多くの接着可能な材料を留まらせることができる。そのため、被張付材をフレームの表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、ネットを張り付けるフレームの例として、車両用のネットシートのバックフレーム1、2、3、4、5を例に説明することとする。また、接着可能な材料の例として、接着性樹脂34を例に説明する。また、被張付材の例として、ネット20を例に説明する。これらのことは、後述する実施例2以降においても同様である。
【0010】
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜6を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るバックフレーム単体の斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。図2は、図1のバックフレームにネットを張り付ける工程を説明する図である。図3は、図2の次工程を説明する図である。図4は、図3の次工程を説明する図である。図5は、図4でネットを張り付けたバックフレームの斜視図である。図6は、図5のバックフレームの縦断面模式図(図5のA−A線断面図)である。
【0011】
はじめに、図1を参照して、本発明の実施例1に係るバックフレーム1の構造を説明する。このバックフレーム1は、例えば、円筒状から成る金属性のパイプ部材の折り曲げと溶接とによって、シートバック(図示しない)の輪郭を成すように矩形状に形成されている。このバックフレーム1の表面のうち、ネット20を張り付ける面(図1において、バックフレーム1の下半面であり、以下、単に「バックフレーム1のネット張り付け面」と記す)には、凹部10が形成されている。なお、この凹部10は、バックフレーム1の長手方向に沿って複数形成されている。
【0012】
次に、図2〜6を参照して、上述したバックフレーム1にネット20を張り付ける工程を説明する。まず、この工程を説明するにあたって、必要となる冶具(第1の冶具30、第2の冶具40、第3の冶具50)を個別に説明しておく。
【0013】
はじめに、第1の冶具30から説明する(図2参照)。この第1の冶具30は、バックフレーム1を嵌め込んでバックフレーム1の表面に接着性樹脂(例えば、PP,PE等)34を付着させるための冶具である。そのため、この第1の冶具30の上面には、バックフレーム1を嵌め込み可能なキャビティ32が形成されている。なお、このキャビティ32には、予め、所定量の接着性樹脂34を載せておく。
【0014】
次に、第2の冶具40を説明する(図3参照)。この第2の冶具40は、バックフレーム1に張り付けるネット20をクランプするための冶具である。そのため、この第2の冶具40には、このクランプ状態を保持する複数のネット固定トグル44が設けられている。この第2の冶具40の上面にも、キャビティ42が形成されている。なお、この第2の冶具40も、予め、ネット20をクランプさせておく。
【0015】
最後に、第3の冶具50を説明する(図4参照)。この第3の冶具50は、バックフレーム1にネット20を張り付けるための冶具である。そのため、この第3の冶具50には、ネット20の張り付けをクランプ状態で保持する複数の押さえトグル52が設けられている。
【0016】
続いて、上述した3個の冶具30、40、50を用いて、バックフレーム1にネット20を張り付ける工程を説明する。まず、加熱装置(高周波、加熱炉など)を用いて、例えば、350度くらいになるように、バックフレーム1を加熱する作業を行う。その後、加熱したバックフレーム1を、第1の冶具30のキャビティ32に嵌め込ませる作業を行う(図2参照)。すると、バックフレーム1は加熱状態のため、バックフレーム1のネット張り付け面には、接着性樹脂34が溶融状態となって付着する。
【0017】
その後、溶融状の接着性樹脂34が付着したバックフレーム1を第2の冶具40のキャビティ42に嵌め込ませる作業を行う(図3参照)。このとき、図3からも明らかなように、ネット20を介した状態で、バックフレーム1はキャビティ42に嵌め込まれる。その後、第3の冶具50によってバックフレーム1にネット20を加圧状態で保持させる作業を行う(図4参照)。この記載が特許請求の範囲に記載の「被張付材とフレームを相対的に加圧させて」に相当する。この作業に伴って、溶融状の接着性樹脂34はネット20のメッシュおよびバックフレーム1の凹部10へと入り込む(図6参照)。
【0018】
その後、バックフレーム1を冷却させて、溶融状の接着性樹脂34を固化させる。すると、この固化に伴って、接着性樹脂34とネット20において、これらが一体となる物理的、化学的な結合が行われる。このようにして、バックフレーム1にネット20が張り付けられ製品として完成する。なお、張り付けられたネット20のうち、バックフレーム1の外側部分はトリミングによってカットされている(図5参照)。
【0019】
本発明の実施例1に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、加圧によって接着性樹脂34はバックフレーム1の凹部10へと入り込む。そのため、従来技術で説明したように、接着性樹脂134を付着させたバックフレーム101を金型に嵌め込んでクランプさせる場合であっても、バックフレーム1とネット20との間に接着性樹脂34を確実に留まらせることができる。したがって、接着強度のバラつきを生じさせることなく、ネット20をバックフレーム1の表面に張り付けることができる。すなわち、ネット20の張り付け強度を向上させることができる。
【0020】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施例2に係るバックフレームの斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。この実施例2は、実施例1と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。そのため、以下の説明にあたって、実施例1で説明した部材と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。このことは、後述する実施例3以降でも同様である。
【0021】
図7に示すように、実施例2のバックフレーム2には、実施例1で説明した凹部10に代わって凹溝12が形成されている。すなわち、バックフレーム2のネット張り付け面には、バックフレーム2の長手方向に沿って凹溝12が形成されている。このようにバックフレーム2が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム2の表面に張り付けることができる。
【0022】
本発明の実施例2に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム2の表面に形成されている凹みが溝状に形成されているため、実施例1と比較すると、バックフレーム1とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム2の表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【0023】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施例3に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例3は、実施例1と比較すると、ネット20の剥がれ防止構造を備えた形態である。
【0024】
図8に示すように、実施例3のバックフレーム3には、実施例1で説明した凹部10に代わって凹部14が形成されている。この凹部14は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されている。すなわち、その入口側の幅Aは、その奥側の幅Bより狭くなるように設定されている(図8の一部拡大図参照)。このようにバックフレーム3が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム3の表面に張り付けることができる。
【0025】
本発明の実施例3に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、凹部14の入口側が狭いため、実施例1と比較すると、固化した接着性樹脂34が凹部14から抜け出ることを防止できる。そのため、バックフレーム3の表面に張り付けたネット20の剥がれを防止できる。
【0026】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を、図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施例4に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例4は、実施例1と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。
【0027】
図9に示すように、実施例4のバックフレーム4には、その周方向に沿って実施例1で説明した凹部10が複数形成されている。このようにバックフレーム4が形成されているため、実施例1のバックフレーム1と同様に、ネット20をバックフレーム4の表面に張り付けることができる。
【0028】
本発明の実施例4に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム4の表面に複数の凹部10が形成されているため、実施例1と比較すると、バックフレーム4とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム4の表面に張り付けるとき、その張り付け強度をさらに向上させることができる。
【0029】
(実施例5)
最後に、本発明の実施例5を、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施例5に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。この実施例5は、実施例3と比較すると、ネット20の張り付け強度をさらに向上させた形態である。
【0030】
図10に示すように、実施例5のバックフレーム5には、その周方向に沿って実施例3で説明した凹部14が複数形成されている。このようにバックフレーム5が形成されているため、実施例3のバックフレーム3と同様に、ネット20をバックフレーム5の表面に張り付けることができる。
【0031】
本発明の実施例5に係るネット20の張設構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、バックフレーム5の表面に複数の凹部14が形成されているため、実施例3と比較すると、バックフレーム5とネット20との間に多くの接着性樹脂34を留まらせることができる。そのため、ネット20をバックフレーム5の表面に張り付けるとき、その張り付け強度を向上させることができる。
【0032】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、ネットを張り付けるフレームの例として、車両用のネットシートのバックフレーム1、2、3、4、5を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、金属製のフレームにネットを張り付けるのであれば、どのようなフレームであっても構わない。
【0033】
また、各実施例では、被張付材の例として、ネット20を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ファブリック等であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るバックフレーム単体の斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。
【図2】図2は、図1のバックフレームにネットを張り付ける工程を説明する図である。
【図3】図3は、図2の次工程を説明する図である。
【図4】図4は、図3の次工程を説明する図である。
【図5】図5は、図4でネットを張り付けたバックフレームの斜視図である。
【図6】図6は、図5のバックフレームの縦断面模式図(図5のA−A線断面図)である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係るバックフレームの斜視図であり、ネットを張り付ける前の状態を示している図である。
【図8】図8は、本発明の実施例3に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施例4に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施例5に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【図11】図11は、従来技術に係るバックフレームにネットを張り付けた状態の縦断面模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 バックフレーム(実施例1)
2 バックフレーム(実施例2)
3 バックフレーム(実施例3)
4 バックフレーム(実施例4)
5 バックフレーム(実施例5)
10 凹部(実施例1)
12 凹溝(実施例2)
14 凹部(実施例3)
20 ネット(被張付材)
34 接着性樹脂(接着可能な材料)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、
そのフレームの表面のうち、被張付材を張り付ける面には、凹部が形成されており、
その被張付材を張り付ける面に接着可能な材料を付着させ、
その付着状態で被張付材とフレームを相対的に加圧させて被張付材をフレームの表面に張り付けることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項2】
請求項1に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、フレームの長手方向に沿って溝状に形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、被張付材を張り付ける面に複数形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項1】
接着可能な材料を介して被張付材をフレームの表面に張り付ける被張付材の張設構造であって、
そのフレームの表面のうち、被張付材を張り付ける面には、凹部が形成されており、
その被張付材を張り付ける面に接着可能な材料を付着させ、
その付着状態で被張付材とフレームを相対的に加圧させて被張付材をフレームの表面に張り付けることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項2】
請求項1に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、フレームの長手方向に沿って溝状に形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、その入口側から奥に向かって幅広形状を成すように形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被張付材の張設構造であって、
凹部は、被張付材を張り付ける面に複数形成されていることを特徴とする被張付材の張設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−119566(P2010−119566A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295469(P2008−295469)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)
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