説明

被覆導電粒子及びその製造方法

【課題】微小な回路の接続においても十分な絶縁特性及び導通特性を維持することができ、しかも耐吸湿性にも優れる異方性導電接着剤を与えることを可能にする導電粒子を、より安価に提供すること。
【解決手段】樹脂粒子4と該樹脂粒子4を被覆する金属層6とを有する複合導電粒子3と、金属層6の外側に設けられ、金属層6表面の一部を被覆する絶縁性微粒子1と、を備える被覆導電粒子5。金属層6がニッケル−パラジウム合金めっき層6aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆導電粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)実装の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
【0003】
ところが、近年の液晶表示の高精細化に伴い、液晶駆動用ICの回路電極である金バンプは狭ピッチ化、狭面積化しており、そのため、異方性導電接着剤の導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させるといった問題が発生することがある。特にCOG実装ではその傾向が顕著である。さらに、隣接する回路電極間に導電粒子が流出すると、金バンプとガラスパネルとの間に補足される導電粒子数が減少する結果、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良を起こすといった問題もあった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決する方法として、特許文献1に例示されるように異方性導電接着剤の少なくとも片面に絶縁性の接着剤を形成することにより、COG実装又はCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法や、特許文献2に例示されるように導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法が提案されている。また、特許文献3や特許文献4に例示されるように、導電粒子の表面を絶縁性の微粒子で被覆する方法もある。
【0005】
導電粒子の導電性を向上させる試みとして、特許文献5では樹脂微粒子上に銅/金めっきを行なう方法が開示されている。特許文献6には、銅を50質量%以上含む金属層を被覆するニッケル層及び金層を有する導電粒子が開示されている。また、特許文献7には、金属被覆層中の金の含有量が90質量%以上の金属被覆粒子の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−279371号公報
【特許文献2】特許第2794009号公報
【特許文献3】特許第2748705号公報
【特許文献4】国際公開第2003/02955号パンフレット
【特許文献5】特開2006−28438号公報
【特許文献6】特開2001−155539号公報
【特許文献7】特開2005−36265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回路接続部材の片面に絶縁性の接着剤を形成する方法において、バンプ面積が例えば3000μm未満であるような微小な回路を接続する場合に、隣り合う電極間の絶縁性及び接続される電極同士の導通性に関して未だ改良の余地がある。
【0008】
また、近年主流になりつつあるニッケル層上に金めっきを行ったタイプの導電粒子は、ニッケルが溶出し、マイグレーションを起こすという問題を有している。金めっき層の厚みを400Å以下に設定するとその傾向が顕著となる。被覆層中に金を多く含有する金属被覆粒子は信頼性の面では良好であるが、コストが高く、近年は金含有量を下げる傾向であり実用的とは言い難い。銅めっき粒子は導電性、コストの上で優れてはいるが、マイグレーションしやすいため耐吸湿性の観点から問題がある。そこで両者(金と銅)の短所を補うための試みがなされているがまだ十分に満足できるレベルには達していない。銀めっき粒子は銅以上にマイグレーションしやすい。また、ニッケルは強磁性の材料なので、ニッケルを単独で用いると導電粒子が磁性凝集しやすくなる。この磁性凝集を抑制するためにニッケル中のリン等の含有比率を上げると磁性凝集を緩和できるものの、導電粒子の導通特性が悪くなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、微小な回路の接続においても十分な絶縁特性及び導通特性を維持することができ、しかも耐吸湿性にも優れる異方性導電接着剤を与えることを可能にする導電粒子を、より安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有する複合導電粒子と、金属層の外側に設けられ、金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子とを備える被覆導電粒子に関する。本発明に係る被覆導電粒子において、金属層はニッケル−パラジウム合金めっき層を有する。
【0011】
上記発明に係る被覆導電粒子によれば、微小な回路の接続においても十分な絶縁特性及び導通特性を維持することができ、しかも耐吸湿性にも優れる異方性導電接着剤を与えることが可能である。
【0012】
ニッケル−パラジウム合金めっき層におけるニッケル:パラジウムのモル比は1:99〜99:1であることが好ましい。
【0013】
ニッケル−パラジウム合金めっき層は、パラジウムの比率が互いに異なる複数の層から構成されていてもよい。この場合、それら複数の層のうち最外層が最も多くパラジウムを含むことが好ましい。これにより、パラジウムの使用量を最小限に抑制しつつ、より安価で良好な特性を有する被覆導電粒子を得ることができる。
【0014】
上記金属層は、ニッケル−パラジウム合金めっき層の外側に設けられた金めっき層又はパラジウムめっき層を更に有していてもよい。この場合、金めっき層又はパラジウムめっき層の外側に絶縁性微粒子が設けられる。
【0015】
当該被覆導電粒子を含有する異方性導電接着フィルムが圧着されたときに、絶縁性微粒子が金属層にめり込むことが好ましい。絶縁性微粒子が金属層にめり込むことにより、より優れた導電性が発現される。従って金属層の延性は極めて重要である。
【0016】
金めっき層又はパラジウムめっき層は、金属層の最外層に位置する還元めっき型の層であることが好ましい。
【0017】
ニッケル−パラジウム合金めっき層は、ホウ素又はリンを含むことが好ましい。
【0018】
別の側面において、本発明は被覆導電粒子の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有し、該金属層がニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子を、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基を有する化合物で処理して、金属層の表面に官能基を導入する工程と、金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子を複合導電粒子の外側に設ける工程と、を備える。あるいは、本発明に係る製造方法は、樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有し、該金属層がニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子を、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基を有する化合物で処理して、金属層の表面に官能基を導入する工程と、金属層上に高分子電解質層を設ける工程と、高分子電解質層を間に挟んで、金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子を複合導電粒子の外側に設ける工程と、を備える。
【0019】
上記本発明に係る製造方法によれば、微小な回路の接続においても十分な絶縁特性及び導通特性を維持することができ、しかも耐吸湿性にも優れる異方性導電接着剤を与えることを可能にする被覆導電粒子を、より安価に提供することができる。メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基は、パラジウムのような貴金属を含む金属層と配位結合により強い結合を形成することができる。
【0020】
金属層の表面に導入される官能基は水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
高分子電解質層はポリアミンから形成されることが好ましい。ポリアミンは好ましくはポリエチレンイミンである。
【0022】
上記絶縁性微粒子は、無機酸化物粒子であることが好ましい。この無機酸化物粒子は、好ましくはシリカ粒子である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、微小な回路の接続においても十分な絶縁特性及び導通特性を維持することができ、しかも耐吸湿性にも優れる異方性導電接着剤を与えることを可能にする被覆導電粒子を、より安価に提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る製造方法によれば、絶縁性微粒子の表面をイソシアネート基等の官能基で修飾する必要が必ずしもなく、修飾の工程における絶縁性微粒子の凝集の問題も回避できる。
【0025】
さらに、本発明によれば、絶縁性微粒子による複合導電粒子の被覆率のばらつきが小さく、適切な被覆率で複合導電粒子を絶縁性微粒子で安定して被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】被覆導電粒子の一実施形態を示す断面図である。
【図2】異方性導電接着剤の一実施形態を示す断面図である。
【図3】異方性導電接着剤による回路接続方法の一実施形態を示す断面図である。
【図4】回路接続構造体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、被覆導電粒子の一実施形態を示す断面図である。本実施形態に係る被覆導電粒子5は、樹脂粒子4と樹脂粒子4を被覆する金属層6とを有する複合導電粒子3と、金属層6の外側に配置された複数の絶縁性微粒子1とを備える。絶縁性微粒子1は、金属層6の表面の一部を被覆している。金属層6は、樹脂粒子4を直接被覆するニッケル−パラジウム合金めっき層6aと、ニッケル−パラジウム合金めっき層6aを覆う金めっき層又はパラジウムめっき層6bとから構成される。金めっき層又はパラジウムめっき層6bは必ずしも設けられていなくてもよい。
【0029】
複合導電粒子3の粒径は接続される回路部材の電極の間隔の最小値よりも小さいことが必要である。また、接続される電極の高さばらつきがある場合、複合導電粒子3の粒径は高さばらつきよりも大きいことが好ましい。係る観点から、複合導電粒子3の粒径は1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、2〜3.5μmであることがさらに好ましい。複合導電粒子の粒径は、BET法又は走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。また、異方性導電接着フィルム中にある複合導電粒子の粒径は、溶剤で接着剤組成物を溶解、除去した後、SEMによって測定が可能である。
【0030】
樹脂粒子4を形成する樹脂は特に限定されないが、樹脂粒子4は、例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレートのようなアクリル樹脂、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン及びポリブタジエンのようなポリオレフィン樹脂並びに、ポリスチレン樹脂から選ばれる樹脂を含む。
【0031】
ニッケルは安価であるが、厚い酸化皮膜が形成されることから、ニッケルのみから形成される金属層は、付着した絶縁性微粒子が脱落しやすい、耐マイグレーション性も完全ではない、延性が乏しい、磁性凝集しやすい、金属との接触抵抗が高いといった問題を有する。一方、パラジウムは高価であり、やや軟らかい。両者を含む合金を用いることにより、安価で、耐マイグレーション性が良好で、硬くて延性があり、絶縁性微粒子との吸着強度が強く、金属との接触抵抗が低い複合導電粒子を構成することができる。
【0032】
ニッケル−パラジウム合金めっき層におけるニッケル:パラジウムのモル比は1:99〜99:1であることが好ましく、1:9〜9:1が更に好ましい。単一層の場合は1:9〜9:1の範囲が好ましく、1:9〜5:5の範囲がより好ましい。導電粒子作製後は、原子吸光法によって、モル比の算出が可能である。
【0033】
金属層7の内側がニッケルリッチであり、外側がパラジウムリッチであることが好ましい。外側をパラジウムリッチとすることで絶縁性微粒子の吸着強度が強く、金属との接触抵抗が低い粒子を作ることができる。内側をニッケルリッチにすることで、全体として硬く延性のある粒子を作ることができる。具体的には内側のニッケル:パラジウムのモル比が99:1〜1:1程度がよく、外側のニッケル:パラジウムのモル比が1:99〜1:1の範囲が良い。より好ましくは内側のニッケル:パラジウムのモル比が99:1〜9:1程度がよく、外側のニッケル:パラジウムのモル比が1:99〜1:9の範囲が良い。
【0034】
ニッケルは強磁性を有するため、ニッケル−パラジウム合金にホウ素又はリンを含有させて磁性を低減させることが好ましい。リンの場合、ニッケルとパラジウムの合計モル数に対し、10モル%添加すればほぼ磁性は消失するが、導電性も低下するため、1〜10モル%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは1〜7モル%であり、更に好ましくは2〜5モル%である。
【0035】
ニッケル−パラジウム合金めっき層の厚みは200Å以上2000Å以下が好ましく、200Å以上1000Å以下がより好ましく、300Å以上700Å以下が更により好ましい。ニッケル−パラジウム合金めっき層の厚みが200Åより薄いと導電性が低下する傾向があり、1000Åより厚いと製造コストが上昇する傾向がある。
【0036】
ニッケル−パラジウム合金めっき層を形成させる方法としては、無電解ニッケル−パラジウム合金めっきが好ましい。無電解ニッケル−パラジウムめっき浴の金属源であるパラジウムイオンとしては、一般に使用されるパラジウムの塩(硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム等)を水に溶解して得ることができる。この無電解パラジウム−ニッケルめっき浴におけるパラジウムの濃度は特に制約はないものの、通常は0.0001〜1モル/l程度である。より好ましくは、0.1〜0.9モル/lである。
【0037】
もう一方の金属源であるニッケルイオンとしては、一般に使用されるニッケルの塩(硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル)を水に溶解することにより得ることができる。この無電解パラジウム−ニッケルめっき浴におけるニッケルの濃度は特に制約はないものの通常は0.0001〜1モル/l程度である。より好ましくは、0.1〜0.9モル/lである。
【0038】
還元剤としては次亜リン酸化合物、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン等を用いることができる。中でも次亜リン酸化合物を含むめっき浴は安定性が良く、好ましい。
【0039】
還元剤として次亜リン酸化合物を用いた場合、pH調整剤およびアンモニア錯化剤を用いるとよい。
【0040】
上記薬剤の配合割合は心材の種類、めっき速度を鑑みて決定すべきであるが、多くの場合(Ni+Pd):(アンモニア錯化剤):(次亜リン酸化合物)=1:1〜5:1〜3のモル比が好ましく、1:2:2がより好ましい。
【0041】
めっき液は通常の手法のように浸漬で用いてもよいが、滴下式がより好ましい。
【0042】
滴下式の場合の一例として、次亜リン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを含む母液に硫酸ニッケルと硫酸パラジウムにアンモニアを加えた液を滴下する方法が挙げられる。この場合滴下する硫酸ニッケルと硫酸パラジウムの比に基づいて合金めっき層の金属組成を調整することができる。
【0043】
めっき工程の初期においては硫酸ニッケル:硫酸パラジウムの比を硫酸ニッケルリッチとし、滴下終了間際に硫酸パラジウムリッチとする方法により、内側にニッケルが多く含まれ、外側にパラジウムが多く含まれるニッケル−パラジウム合金めっき層を形成させることができる。
【0044】
金めっき層又はパラジウムめっき層6bは、置換金めっき又は置換パラジウムめっきにより形成することができる。金めっき層又はパラジウムめっき層6bを設けることにより、更に導通特性を向上させることができる。
【0045】
COG用の異方性導電接着剤は、近年10μm程度の狭ピッチでの絶縁信頼性が求められている。そのため、更に絶縁信頼性を向上させるために、ニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子3を絶縁性微粒子1により被覆することが有効である。
【0046】
絶縁性微粒子1としては無機酸化物粒子が好ましい。有機粒子は、異方性導電接着剤の作製工程で変形して、特性が変化しやすい。
【0047】
無機酸化物粒子は、好ましくは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムから選ばれる少なくとも1種の元素を有する酸化物を含む。これらの中でも、絶縁性に優れることから、粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ(SiO)として供給されるシリカ粒子が好ましい。水分散コロイダルシリカ(SiO)中のシリカ粒子はその表面に水酸基を有するため、導電粒子3との結合性に優れる、更に粒子径を揃えやすい、安価であるといった観点からも水分散コロイダルシリカが好適である。水分散コロイダルシリカの市販品としては、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業社製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業社製)が挙げられる。絶縁信頼性の上では、分散溶液中のアルカリ金属イオン及び、アルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下であることが望ましく、好ましくは、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造される無機酸化物微粒子が適する。
【0048】
絶縁性微粒子のBET法による比表面積換算法又はX線小角散乱法で測定される粒子径は、20〜500nmであることが好ましい。絶縁性微粒子が小さいと、複合導電粒子3に吸着された絶縁性微粒子が絶縁膜として十分に作用せずに、一部にショートを発生させる可能性がある。一方、絶縁性微粒子の粒径が大きいと、接続される電極の導電性が低下する傾向がある。複合導電粒子を作製した後は、SEMによって、複合導電粒子表面の絶縁性微粒子の粒子径を測定することができる。また、異方性導電接着フィルム中にある複合導電粒子の場合、溶剤で接着剤組成物を溶解、除去した後、絶縁性微粒子の粒径をSEMによって測定が可能である。
【0049】
無機酸化物粒子表面の水酸基は、シランカップリング剤等でアミノ基、カルボキシル基又はエポキシ基に変性することが可能である。ただし、無機酸化物粒子の粒子径が500nm以下の場合、そのような変性は通常困難である。
【0050】
一般に、水酸基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基と強固な結合を形成することで知られる。水酸基とこれら官能基の結合の様式としては、脱水縮合による共有結合や水素結合が挙げられる。従って、複合導電粒子3の表面にこれらの官能基が形成されていることが好ましい。
【0051】
金やパラジウムに対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基とを有する化合物を用いて複合導電粒子3の金属層表面を処理することにより、複合導電粒子3の表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる官能基を導入するとよい。用いられる化合物としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン及びシステイン等が挙げられる。
【0052】
パラジウムのような貴金属はチオールと反応しやすく、ニッケルのような卑金属はチオールと反応し難い。従って、複合導電粒子3の表面においてパラジウムは50モル%以上であることが好ましい。
【0053】
金属層表面を上記化合物で処理する方法としては特に限定されないが、メタノールやエタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸等の化合物を10〜100mmol/L程度の濃度で分散し、その中に金属表面を有する複合導電粒子を分散させる方法がある。
【0054】
被覆導電粒子5は、複合導電粒子3と絶縁性微粒子1との間に設けられた高分子電解質層を更に備えていてもよい。この場合、高分子電解質層を間に挟んで絶縁性微粒子1が金属層6表面の一部を被覆する。
【0055】
水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基のような官能基を表面に有する粒子の表面電位(ゼータ電位)は、pHが中性領域であるとき、通常マイナスである。一方、水酸基を有する無機酸化物粒子の表面電位も通常マイナスである。表面電位がマイナスの粒子の表面を表面電位がマイナスの粒子で十分に被覆することは難しい場合が多いが、これらの間に高分子電解質層を設けることにより、効率的に絶縁性微粒子を複合導電粒子に付着させることができる。また、高分子電解質層を設けることにより複合導電粒子の表面に絶縁性微粒子を欠陥なく均一に被覆することができることから、回路電極間隔が狭ピッチでも絶縁性が確保され、電気的に接続する電極間では接続抵抗が低くなるという効果がより一層顕著に奏される。
【0056】
高分子電解質層を形成する高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができ、ポリカチオンが好ましい。ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、たとえば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミドおよびそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体を用いることができる。高分子電解質の中でもポリエチレンイミンは電荷密度が高く、結合力が強い。
【0057】
高分子電解質層は、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を実質的に含まないことが好ましい。
【0058】
上記高分子電解質は、水溶性及び水と有機溶媒との混合液に可溶である。高分子電解質の分子量は、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、500〜200000程度が好ましい。
【0059】
高分子電解質の種類や分子量を調整することにより、絶縁性微粒子による複合導電粒子の被覆率をコントロールすることができる。具体的にはポリエチレンイミン等、電荷密度の高い高分子電解質を用いた場合、絶縁性微粒子による被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質を用いた場合、絶縁性微粒子による被覆率が低くなる傾向がある。又、高分子電解質の分子量が大きい場合、絶縁性微粒子による被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の分子量が小さい場合、絶縁性微粒子による被覆率が低くなる傾向がある。
【0060】
被覆導電粒子5は、例えば、樹脂粒子4を被覆する金属層7を形成して、樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有する複合導電粒子を得る工程と、金属層上に高分子電解質層を設ける工程と、高分子電解質層を間に挟んで複合粒子の外側に絶縁性微粒子を設ける工程とを備える方法により製造することができる。
【0061】
金属層を有する複合導電粒子をメルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基を有する化合物で処理して、金属表面に官能基を導入してもよい。例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン及びシステインから選ばれる少なくとも1種の化合物を含む反応液に複合導電粒子を加えて、複合導電粒子の金属表面とこれらの化合物とを反応させる方法により、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる官能基が金属層表面に導入される。
【0062】
これら官能基を有する複合導電粒子を高分子電解質溶液中に分散することにより、金属層表面に高分子電解質が吸着して、高分子電解質層を形成させることができる。高分子電解質層が形成された複合導電粒子を高分子電解質溶液から取り出した後、リンスにより余剰の高分子電解質を除去することが好ましい。リンスは、例えば、水、アルコール、又はアセトンを用いて行われる。比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)が好ましく用いられる。複合導電粒子に吸着した高分子電解質は、複合導電粒子表面に静電的に吸着しているために、このリンスの工程で剥離することはない。
【0063】
上記高分子電解質溶液は、高分子電解質を水または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルが挙げられる。
【0064】
上記高分子電解質溶液における高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10質量%程度が好ましい。また、高分子電解質溶液のpHは、特に限定されない。高分子電解質を高濃度で用いた場合、絶縁性微粒子による複合導電粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、絶縁性微粒子による複合導電粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
【0065】
高分子電解質層が形成された複合導電粒子を、絶縁性微粒子を含む分散液中に分散させることにより、複合導電粒子に高分子電解質層を介して絶縁性微粒子を吸着させることができる。高分子電解質層が設けられていることにより、静電的な引力によって絶縁性微粒子が吸着される。吸着が進行して電荷が中和されるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することは実質的にない。
【0066】
絶縁性微粒子の吸着後、分散液から取り出された被覆導電粒子から、リンスによって余剰の絶縁性微粒子を除去することが好ましい。リンスは、例えば、水、アルコール、又はアセトンを用いて行われる。比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)が好ましく用いられる。複合導電粒子に吸着した絶縁性微粒子は、複合導電粒子表面に静電的に吸着しているために、このリンスの工程で剥離することはない。
【0067】
高分子電解質層の形成後、及び絶縁性微粒子の吸着後、リンスを行うことにより、余剰の高分子電解質または絶縁性微粒子が次の工程に持ち込まれることを防止できる。リンスを行わない場合、溶液内でカチオン及びアニオンが混ざり、高分子電解質及び絶縁性微粒子の凝集や沈殿が生じることがある。
【0068】
以上のようにして得られた被覆導電粒子を加熱により乾燥してもよい。これにより絶縁性微粒子と複合導電粒子の結合を強化することができる。結合力が増す理由としては、例えば金属表面に導入されたカルボキシル基等の官能基と絶縁性微粒子粒子表面の水酸基との化学結合が挙げられる。加熱温度は60〜200℃、加熱時間は10〜180分の範囲がよい。加熱温度が60℃より低い場合や加熱時間が10分より短い場合は絶縁性微粒子が剥離しやすくなる傾向がある。加熱温度が200℃より高い場合や加熱時間が180分より長い場合は複合導電粒子が変形することがある。
【0069】
被覆導電粒子を疎水性のシランカップリング剤やシリコーンオリゴマー等を用いて処理することにより、疎水化してもよい。
【0070】
図2は、異方性導電接着剤の一実施形態を示す断面図である。図2に示す異方性導電接着剤10は、フィルム状の絶縁性接着剤7と、絶縁性接着剤7内に分散した複数の被覆導電粒子5とを含有する。
【0071】
絶縁性接着剤7は、熱硬化性樹脂及びその硬化剤を含有する。絶縁性接着剤7は、熱硬化性樹脂としてのラジカル反応性樹脂及び硬化剤としての有機過酸化物を含有していてもよいし、紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂であってもよい。
【0072】
絶縁性接着剤7を構成する熱硬化性樹脂は好ましくはエポキシ樹脂であり、これとその潜在性硬化剤が好適に組み合わせられる。
【0073】
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0074】
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。
【0075】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロマイグレーション防止のために好ましい。
【0076】
絶縁性接着剤7は、接着後の応力を低減するため、あるいは接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴムを含有してもよい。
【0077】
絶縁性接着剤7をフィルム状にするために、絶縁性接着剤7にフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂をフィルム形成性高分子として配合することが効果的である。これらの熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化時の応力緩和の効果も有する。特に、接着性を向上させるために、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有することが好ましい。
【0078】
絶縁性接着剤7の厚みは被覆導電粒子5の粒径及び異方性導電接着剤10の特性を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1〜100μmである。厚みが1μm未満であると接着性が低下する傾向があり、100μmを超えると導電性を得るために多量の被覆導電粒子を必要とする傾向がある。同様の観点から、絶縁性接着剤7の厚みはより好ましくは3〜50μmである。
【0079】
フィルム状の異方性導電接着剤10は、例えば、絶縁性接着剤と、絶縁被覆導電粒子と、これらを溶解又は分散する有機溶剤とを含有する液状組成物を剥離性基材に塗布する工程と、塗布された液状組成物から硬化剤の活性温度以下の温度で有機溶剤を除去する工程とを含む方法により得ることができる。このとき用いられる有機溶剤は、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。
【0080】
異方性導電接着剤は本実施形態のようにフィルム状である必要は必ずしもなく、例えばペースト状であってもよい。
【0081】
図3は、異方性導電接着剤による回路接続方法の一実施形態を示す断面図である。図3に示されるように、基板21及び該基板上に設けられた電極22を有する第一の回路部材20と、基板31及び基板31上に設けられた電極32を有する第二の回路部材30とを、電極22及び電極32が向き合うように対向配置し、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に異方性導電接着剤10を配置する。この状態で全体を加熱及び加圧することにより、図4の断面図に示されるように、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続された接続構造体100が得られる。
【0082】
これら回路部材は、ガラス基板やポリイミド等のテープ基板、ドライバーIC等のベアチップ、リジット型のパッケージ基板等が挙げられる。
【0083】
得られた接続構造体100において、絶縁被覆導電粒子の電極との接触部分では絶縁性微粒子が剥離して、対向する電極同士は導通する。一方、同一基板上で隣り合う電極間は絶縁性微粒子が介在することで絶縁性が維持される。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
(1)複合導電粒子の作製
平均粒径3.8μmの樹脂粒子(架橋ポリスチレン粒子)100gを、パラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒液100mLに添加し、30℃で30分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。水洗後の樹脂粒子をpH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された樹脂粒子を得た。
【0086】
次に、表面が活性化された樹脂粒子を0.2%アンモニア水溶液200mLに分散し、65℃に加温した。次いで、そこに表1の実施例1に示す無電解めっき液(滴下液A及び滴下液B)を各液50mL/分の滴下速度で滴下し、500Å厚のめっき層を形成させた。原子吸光法によりめっき層のパラジウムとニッケルとの比を測定したところ、滴下した金属イオンの比と同程度であった。
【0087】
その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗後に粒子を乾燥させて、コア粒子としての樹脂粒子の外側に形成された500Å厚のニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子1を作製した。めっき後の粒子外観は良好であった。
【0088】
メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlに溶解させて反応液を作製した。この反応液に複合導電粒子1を1g加え、室温で2時間スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽で攪拌した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により取り出された複合導電粒子をメタノールで洗浄して、表面にカルボキシル基を有する複合導電粒子1gを得た。
【0089】
分子量70000の30%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬社製)を超純水で希釈し、0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。そこに表面にカルボキシル基を有する上記複合導電粒子1gを加え、室温で15分攪拌した。その後φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により複合導電粒子を取出し、取り出された複合導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。更にφ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により複合導電粒子を取出し、メンブレンフィルタ上の複合導電粒子を200gの超純水で2回洗浄を行うことで、複合導電粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0090】
コロイダルシリカ分散液(質量濃度20%、扶桑化学工業社製、製品名クオートロンPL−10、平均粒子径100nm)を超純水で希釈して、0.1質量%のシリカ粒子分散液を得た。そこに、ポリエチレンイミンによる処理済の上記複合導電粒子を加え、室温で15分攪拌した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いたろ過により被覆導電粒子を取り出し、取り出された被覆導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。更にφ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により被覆導電粒子を取出し、メンブレンフィルタ上の被覆導電粒子を200gの超純水で2回洗浄して、複合導電粒子に吸着していないシリカ粒子を除去した。その後80℃で30分、120℃で1時間の順で加熱することにより粒子を乾燥して、シリカ粒子によって被覆された被覆導電粒子1を得た。
【0091】
(2)異方性導電接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製商品名、PKHC)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、分子量:85万)75gを酢酸エチル400gに溶解し、30質量%溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エボキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、ノバキュアHX−3941)300gを加え、撹拌して接着剤溶液を準備した。
【0092】
この接着剤溶液に、上記被覆導電粒子1を分散させた。その濃度は接着剤溶液の量を基準として9体積%とした。得られた分散液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータを用いて塗布し、90℃で10分の加熱により乾燥して、厚み25μmの異方性導電接着フィルムをセパレータ上に形成させた。
【0093】
次に、作製した異方性導電接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み:0.5μm)とAl回路付きガラス基板(厚み:0.7mm)の接続を、以下に示すi)〜iii)の手順に従って行った。i)異方性導電接着フィルム(2×19mm)をAl回路付きガラス基板に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)での圧力で貼り付ける。ii)セパレータを剥離し、チップのバンプとAl回路付きガラス基板の位置合わせを行う。iii)190℃、40gf/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行う。
【0094】
(実施例2)
表1の実施例2に示す無電解めっき液を用いたことの他は実施例1と同様にして、500Å厚のニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子2を作製した。めっき後の粒子外観は良好であった。次いで、実施例1と同様の手順で複合導電粒子2にシリカ粒子を付着させて、シリカ粒子によって被覆された被覆導電粒子2を作製し、さらに異方導電性接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続を行った。
【0095】
(実施例3)
表1の実施例3に示す無電解めっき液を用いたことの他は実施例1と同様にして、500Å厚のニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子3を作製した。めっき後の粒子外観は概ね良好であったが、一部剥離が発生した。次いで、実施例1と同様の手順で複合導電粒子3にシリカ粒子を付着させて、シリカ粒子によって被覆された被覆導電粒子3を作製し、さらに異方導電性接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続を行った。
【0096】
(実施例4)
表1の実施例4(1)に示す無電解めっき液を50mL/分の滴下速度で滴下し、表面が活性化された樹脂微粒子上に250Å厚のニッケル−パラジウム合金めっき層を形成した。引き続き、表1の実施例4(2)に示す無電解めっき液を用いて各液50mL/分の滴下速度で滴下し、250Å厚のニッケル−パラジウム合金めっき層をさらに形成した。これら以外は実施例1と同様の手順で複合導電粒子4を作製した。めっき後の粒子外観は良好であった。次いで、実施例1と同様の手順で複合導電粒子4にシリカ粒子を付着させて、シリカ粒子によって被覆された被覆導電粒子4を作製し、さらに異方導電性接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続を行った。
【0097】
(比較例1)
表2の比較例1に示す無電解めっき液を用いたことの他は実施例1と同様にして、表面が活性化された樹脂粒子上に500Å厚のニッケルめっき層を有する複合導電粒子5を作製した。めっき後の粒子外観は良好であった。次いで、実施例1と同様の手順で複合導電粒子5にシリカ粒子を付着させて、シリカ粒子によって被覆された被覆導電粒子5を作製し、さらに異方導電性接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続を行った。
【0098】
(比較例2)
表2の比較例2に示す無電解めっき液を用いたことの他は実施例1と同様にして50mL/分の滴下速度で滴下を行い、500Å厚のパラジウムめっき層を有する複合導電粒子6を作製した。しかし、めっき剥離が多く発生したことから、次の工程に進むことができなかった。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
シリカ粒子被覆率の確認
シリカ粒子による複合導電粒子の被覆率を、SEMを用いた画像解析により確認した。被覆率の計算は、複合導電粒子の直径の半分の大きさの直径を有する円をSEM像上に描き、その円内のシリカ粒子の投影面積及びその数を測定し、式:被覆率=(シリカ粒子の投影面積×シリカ粒子の数)/(測定範囲の面積)によって被覆率を求めた。SEM画像25枚から被覆率を測定し、そのときの被覆率のばらつきを式:C.V.=(標準偏差/平均被覆率)から求めた。本系の場合、被覆率は50%程度が最適であり、被覆率のばらつきは少ないほど望ましい。
【0102】
絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験
実施例及び比較例で作製したサンプルの絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験を行った。異方性導電接着フィルムはチップ電極間の絶縁抵抗が高く、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗が低いことが重要である。20サンプルのチップ電極間(10μm)の絶縁抵抗を測定し、その最小値を求めた。絶縁抵抗は気温60℃、湿度90%、20V直流電圧印加の条件で250時間放置する信頼性試験後の値を測定した。そして、絶縁抵抗が109Ω以上であったサンプルを良品として、歩留まりを算出した。さらに、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗に関しては14サンプルの平均値を測定した。導通抵抗は初期値と気温85℃、湿度85%の条件で1000時間放置する信頼性試験(吸湿耐熱試験)後の値を測定した。
【0103】
【表3】

【0104】
測定結果を表3に示す。比較例2の場合、被覆導電粒子の作製自体ができなかったため、評価を行うことができなかった。各実施例のサンプルによれば、絶縁抵抗及び導通抵抗が得られるととともに、高い耐吸湿性が発揮された。また、実施例1、3、4は被覆率が安定しているため、製造しやすいというメリットがある。一方、ニッケルめっき層のみを設けた比較例1のサンプルでは、絶縁性微粒子が安定的に吸着せず、信頼性が劣ることが分かった。また、導通性に関しては実施例3,4が最も優れており、実施例1、実施例2、比較例1の順で低下した。これはすなわち、複合導電粒子表面におけるパラジウムの比率が多いほど、導通信頼性が良いことを示している。
【符号の説明】
【0105】
1…絶縁性微粒子、3…複合導電粒子、4…樹脂粒子、5…被覆導電粒子、6…金属層、6a…ニッケル−パラジウム合金めっき層、6b…金めっき層またはパラジウムめっき層、7…絶縁性接着剤、10…異方性導電接着剤、20…第一の回路部材、21…基板、22…電極、30…第二の回路部材、31…基板、32…電極、100…接続構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有する複合導電粒子と、
前記金属層の外側に設けられ、前記金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子と、を備え、
前記金属層がニッケル−パラジウム合金めっき層を有する、被覆導電粒子。
【請求項2】
前記ニッケル−パラジウム合金めっき層におけるニッケル:パラジウムのモル比が1:99〜99:1である、請求項1に記載の被覆導電粒子。
【請求項3】
前記ニッケル−パラジウム合金めっき層が、パラジウムの比率が互いに異なる複数の層から構成されており、それら複数の層のうち最外層が最も多くパラジウムを含む、請求項1又は2に記載の被覆導電粒子。
【請求項4】
前記金属層が、前記ニッケル−パラジウム合金めっき層の外側に設けられた金めっき層又はパラジウムめっき層を更に有し、該金めっき層又は該パラジウムめっき層の外側に前記絶縁性微粒子が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆導電粒子。
【請求項5】
前記金めっき層又は前記パラジウムめっき層が、前記金属層の最外層に位置する還元めっき型の層である、請求項4に記載の被覆導電粒子。
【請求項6】
当該被覆導電粒子を含有する異方性導電接着フィルムが圧着されたときに、前記絶縁性微粒子が前記金属層にめり込む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被覆導電粒子。
【請求項7】
前記ニッケル−パラジウム合金めっき層がホウ素又はリンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被覆導電粒子。
【請求項8】
樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有し、該金属層がニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子を、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基を有する化合物で処理して、前記金属層の表面に官能基を導入する工程と、
前記金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子を前記複合導電粒子の外側に設ける工程と、
を備える、被覆導電粒子の製造方法。
【請求項9】
樹脂粒子と該樹脂粒子を被覆する金属層とを有し、該金属層がニッケル−パラジウム合金めっき層を有する複合導電粒子を、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基を有する化合物で処理して、前記金属層の表面に官能基を導入する工程と、
前記金属層上に高分子電解質層を設ける工程と、
前記高分子電解質層を間に挟んで、前記金属層表面の一部を被覆する絶縁性微粒子を前記複合導電粒子の外側に設ける工程と、
を備える、被覆導電粒子の製造方法。
【請求項10】
前記金属表面に導入される官能基が水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記高分子電解質層がポリアミンから形成される、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ポリアミンがポリエチレンイミンである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁性微粒子が無機酸化物粒子である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記無機酸化物粒子がシリカ粒子である、請求項13に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49138(P2012−49138A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211356(P2011−211356)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2010−151205(P2010−151205)の分割
【原出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】