説明

被覆弾性糸

【課題】高次加工して、衣服などに使用する際、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られる被覆弾性糸を提供する。
【解決手段】芯糸と鞘糸からなる被覆弾性糸であって、芯糸にポリウレタン系弾性繊維を用い、鞘糸に構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなり、以下の(1)から(3)を満足する顕在捲縮糸を用いてなることを特徴とする被覆弾性糸。
・ 伸縮伸長率が100%以上
・ 単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
・ 熱水収縮率が10%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性糸に小さい曲率半径のヘリカルクリンプ構造を有する顕在捲縮糸を巻き付けた被覆弾性糸であり、特に伸長回復性に優れた被覆弾性糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高伸縮性を狙った被覆弾性糸に関する提案が多数なされている。例えば、ポリウレタン弾性糸と非弾性糸を合撚(先撚り)した後、仮撚りを施す方法が提案されている(特許文献1参照)。このような方法では伸長回復性は向上するが、合撚後、糸にトルクが生じ取扱が良くなく、工業的にもコスト高となることがしばしば指摘されていた。さらに、芯糸にポリウレタン弾性繊維、鞘糸に構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維を用いた被覆弾性糸が提案されている(特許文献2参照)。この方法であると布帛の伸縮性は改善されたが、特にスポーツインナーなどの着圧や運動追従性が要求される分野では十分とはいえず、被覆弾性糸の伸縮性についてはさらなる改善が求められている。
【特許文献1】特開平11−241240号公報
【特許文献2】特開2003−119632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高次加工して、衣服などに使用する際、高伸縮性を有する布帛が得られる被覆弾性糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の顕在捲縮糸は、次の構成を有する。
すなわち、芯糸と鞘糸からなる被覆弾性糸であって、芯糸にポリウレタン系弾性繊維を用い、鞘糸に、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなり、以下の(1)から(3)を満足する顕在捲縮糸を用いてなることを特徴とする被覆弾性糸。
・ 伸縮伸長率が100%以上
・ 単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
・ 熱水収縮率が10%以下
【発明の効果】
【0005】
本発明の被覆弾性糸は、高次加工して衣服などに使用する際、ストレッチ性に優れた布帛が得られる被覆弾性糸を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の被覆弾性糸は、芯糸と鞘糸からなる被覆弾性糸であって、芯糸にポリウレタン系弾性繊維を用い、鞘糸に、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなり、以下の(1)から(3)を満足する顕在捲縮糸を用いてなることを特徴とする被覆弾性糸である。
(1) 伸縮伸長率が100%以上
・ 単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
・ 熱水収縮率が10%以下
以下、図面を参照しながら本発明の被覆弾性糸を説明する。図1は、本発明の被覆弾性糸の一例を示す概略側面図である。
【0007】
図1に示す本発明の被覆弾性糸(イ)は、ポリウレタン弾性糸(ロ)に、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなる顕在捲縮糸(ハ)を1重または2重に巻き付けた構造を有している。
【0008】
本発明で用いるポリウレタン弾性糸(ロ)としては、ポリマージオールと、有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートと、多官能活性水素化合物とを反応させて得られるポリウレタン重合体を紡糸して得られたものが好ましい。
【0009】
本発明で用いるポリマージオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンエーテルグリコールのようなポリエーテルグリコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類の少なくとも一種とアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、β−メチルアジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸の少なくとも一種を反応させて得られるポリエステルグリコール類、ポリカプロラクトングリコール、ポリヘキサメチレンジカーボネートグリコールのようなポリマージオールの一種または二種以上の混合物または共重合物が例示できる。
【0010】
また、本発明で用いる有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような有機ジイソシアネートの一種または二種以上の混合物が例示できる。さらにトリイソシアネートを少量併用してもよい。
【0011】
本発明で用いる多官能活性水素化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、1,4−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水などの一種またはこれらの二種以上の混合物が例示できる。所望により、これら化合物に、モノアミン、モノアルコールのような停止剤を少量併用してもよい。
【0012】
また、ポリウレタン重合体には、2,6−ジテトラブチルパラクレゾール、亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、ヒドロキシベンゾフェノン系またはヒドオキシベンゾチアゾールなどの光または紫外線吸収剤、1,1−ジアルキル置換セミカルバジド、ジチオカルバミン酸塩などのガス黄変、劣化防止剤、および酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料を適宜使用してもよい。
【0013】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0014】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリトリメチレンテレフタレートとしては、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物として、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。
【0015】
ポリトリメチレンテレフタレートは、代表的なポリエステル長繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートと同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュ構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0016】
また、本発明において、ポリエステル系複合繊維は、上記のようなポリエチレンテレフタレートを前記一方の構成成分における最大重量成分(すなわち主成分)として含有し、上記のようなポリトリメチレンテレフタレートを前記他方の構成成分における最大重量成分として含有する。換言すれば、必要に応じて、ポリエステル系複合繊維には、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0017】
本発明において、上記のようなポリエステル系複合繊維はサイドバイサイド型または偏心芯鞘型である。サイドバイサイド型または偏心芯鞘型でないと、糸条に熱が付与された際に、コイル状のヘリカルクリンプが発現せず、糸条に伸縮性を付与することができない問題がある。
【0018】
次に、顕在捲縮糸について説明する。本来、少なくとも2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされただけのポリエステル系複合繊維は潜在捲縮糸もしくは半顕在捲縮糸などと呼ばれるが、熱処理を施すことにより、高収縮成分と低収縮成分の熱収縮差が発生し、高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて3次元コイル状のヘリカルクリンプ(ニ)が発現する。本発明で用いる顕在捲縮糸(ハ)は、潜在捲縮糸、半顕在捲縮糸に緊張熱処理もしくは仮撚りを施し、ヘリカルクリンプ(ニ)を発現させ、顕在化したものである。緊張熱処理の手段としては上記2種のポリエステル成分を貼り合わせたポリエステル系複合繊維をホットピンもしくは熱板などのヒーターを用いてガラス転移点以上で熱脆化しない75〜190℃程度の温度で緊張熱処理を施すことが好ましい。
【0019】
以上のようにして得られる本発明で用いる顕在捲縮糸は、伸縮伸長率が100%以上である。伸縮伸長率が100%未満であると布帛化したときに所望のストレッチ感が得られない。一方、伸縮伸長率の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には230%程度となる。
【0020】
また、以上のようにして得られる本発明で用いる顕在捲縮糸は、単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上でもある。顕在捲縮糸において、良好な伸縮性を発現し、布帛化した時に美しい表面感を得るには、微細なヘリカルクリンプを発現することが不可欠である。すなわち、単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上であることが必要である。一方、単フィラメントの捲縮数の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には80山/25mm程度となる。
【0021】
さらに、以上のようにして得られる本発明で用いる顕在捲縮糸は、熱水収縮率が10%以下である。熱水収縮率が10%より大きくなると、編織後の精錬、染色などの工程で生地の収縮量が大きくなり、布帛表面にシボが発生し外観品位が悪くなったり、生地厚な布帛となる。
【0022】
本発明の被覆弾性糸は、20%伸長時の伸長回復率が80%以上であることが好ましい。20%伸長時の伸長回復率が80%未満であると布帛化したときに所望のストレッチ感およびキックバック感が得られない場合がある。一方、20%伸長時の伸長回復率の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には95%程度となる。
【0023】
また、本発明において、適度なキックバック性、ストレッチ性を得るためには、ポリエステル系複合繊維のそれぞれの成分の極限粘度が異なり、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]との極限粘度比([ηb]/[ηa])が0.3〜0.8であることが好ましい。
【0024】
このように極限粘度の異なる二つの重合体が貼り合わされることによって、紡糸・延伸時に高粘度側に応力が集中しやすく、二成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および布帛の熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて3次元コイル状のヘリカルクリンプが発現しやすい。このヘリカルクリンプの径および単フィラメントの捲縮数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどヘリカルクリンプの径が小さく、単フィラメントの捲縮数が多くなる。ストレッチ素材としてコイル捲縮は、ヘリカルクリンプの径が小さいこと、単フィラメントの捲縮数が多いこと(すなわち、伸長特性に優れ、見映えがよいこと)、ヘリカルクリンプの耐へたり性がよいこと(伸縮回数に応じたヘリカルクリンプのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れること)が好ましい。さらに、ヘリカルクリンプの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性と回復性を有することが好ましく、低収縮成分としてポリエチレンテレフタレート、高収縮成分としてポリトリメチレンテレフタレートを配すると良い。
【0025】
そして、本発明において、コイル状捲縮を発現させ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点から、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は1.0以上であるのが好ましく、1.2以上であるのがより好ましい。
【0026】
本発明においては、ポリエステル系複合繊維におけるポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の観点から30/70以上70/30以下の範囲である。好ましくは35/65以上65/35以下、より好ましくは40/60以上60/40以下の範囲である。
【0027】
さらに、本発明において、被覆弾性糸の撚り係数Kは3000〜10000の範囲であることが好ましい。なお、撚り係数Kは次式によって算出される値である
K=T×D1/2
ただし、T:撚り数(回/m)、D:糸の総繊度(デシテックス)を示す。
【0028】
撚り係数Kが3000未満であると被覆弾性糸の被覆性に問題が生じやすくなり、特に、布帛化した後、伸ばした状態で芯糸であるポリウレタン弾性糸が剥き出しになる目むきという現象が発生しやすくなる。一方、撚り係数が10000超であると、鞘糸が芯糸を拘束してしまい、所望の伸長性が得られにくくなる。
【0029】
本発明の被覆弾性糸は、鞘糸を一重もしくは二重に被覆した構造であることが好ましい。二重被覆を行う場合は、被覆弾性糸のトルクバランスを考慮し、下撚りと上撚りの撚り方向を反対にすることが好ましく、一般的には、下撚りをS方向、上撚りをZ方向とする。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例中の極限粘度[η]、伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/25mm)、熱水収縮率(%)、20%伸長時の伸長回復率(%)は次の方法で求めた。
【0032】
<極限粘度[η]>
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0033】
<伸縮伸長率(%)>
1.8×10-3cN/デシテックス荷重下で、周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを作り、これを1.8×10-3cN/デシテックスの荷重をかけた状態で、90℃、20分間の熱水処理をする。次いで、荷重を外し、1昼夜風乾する。1.8×10-3cN/デシテックス荷重下での試料の長さを測定する(L0)。その後、88.3×10-3cN/デシテックスの荷重を加え、2分後に試料の長さを測定する(L1)。そして下記式にて伸縮伸長率を算出する。なお、試験回数は20回とし、その平均値を求めた。
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
<単フィラメントの捲縮数(山/mm)>
サンプリングした捲縮糸より単糸を取り出し、1.8×10-3cN/デシテックスの荷重下、25mm間の捲縮数を測定した。なお、20本の単糸の平均値を単フィラメントの捲縮数とした。
【0034】
<熱水収縮率(%)>
JIS−L−1013(1999) 8.18.1 熱水収縮率 a)かせ収縮率(A法)に準じて測定を行った。
<20%伸長時の伸長回復率(%)>
自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1デシテックス当たり0.08826cNの初荷重をかけた状態で、20cmのつかみの間隔で取付、引張速度を20cm/minとして、20%の伸度まで引き伸ばし、直ちに、同じ速度で除重した。完全に除重した後、直ちに、初荷重まで引き伸ばし、このときの回復伸びを伸長回復率とした。
【0035】
<タイツの外観およびストレッチ評価>
出来上がったタイツの外観および風合いについて、20代から50代の女性モニター5名に着用してもらい官能評価を実施した。外観およびストレッチ性の評価点数結果の平均点を各評価点数として示す。各評価点数の合計点数を総合評価とし、総合評価が大きいものほど優れていることを示す。
【0036】
外観評価点 3:タイツ表面がフラットで美しい。
【0037】
2:タイツ表面にわずかに凹凸を確認できる。
【0038】
1:タイツ表面に凹凸がはっきり確認できる。
【0039】
ストレッチ性評価点 3:ストレッチ性が優れている。
【0040】
2:ストレッチ性がやや欠ける。
【0041】
1:ストレッチ性が欠ける。
[実施例1]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を得た。
得られたポリエステル系複合繊維を熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。(緊張熱処理条件)
糸加工速度 :300m/min
熱板の温度 :130℃
延伸倍率 :1.03
総繊度22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を芯糸、得られた顕在捲縮糸を鞘糸として用いて下記条件にてカバリングを実施し、1重被覆弾性糸を得た。得られた被覆弾性糸の20%伸長時の伸長回復率(%)、撚り係数は表2に示す。
[カバリング加工条件]
ドラフト:2.9
撚り数 :600T/m
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られた被覆弾性糸のS、Z撚りをそれぞれ2本ずつ用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。得られたタイツの外観およびストレッチ性の評価結果について表3に示す。
[実施例2]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で48孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス48フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス48フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を得た。
【0042】
実施例1と同様に得られたポリエステル系複合繊維を熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0043】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :300m/min
熱板の温度 :130℃
延伸倍率 :1.03
総繊度22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を芯糸、得られた顕在捲縮糸を鞘糸として用いて下記条件にてカバリングを実施し、1重被覆弾性糸を得た。得られた被覆弾性糸の20%伸長時の伸長回復率(%)、撚り係数は表2に示す。
[カバリング加工条件]
ドラフト:2.9
撚り数 :600T/m
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られた被覆弾性糸のS、Z撚りをそれぞれ2本ずつ用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。得られたタイツの外観およびストレッチ性の評価結果について表3に示す。
[実施例3]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維をホットピン上に1回巻き付けて走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0044】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :300m/min
ホットピンの温度:120℃
延伸倍率 :1.03
総繊度22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を芯糸、得られた顕在捲縮糸を鞘糸として用いて下記条件にてカバリングを実施し、2重被覆弾性糸を得た。得られた被覆弾性糸の20%伸長時の伸長回復率(%)、撚り係数は表2に示す。
[カバリング加工条件]
ドラフト:3.4
下撚り数 :S800T/m
上撚り数 :Z680T/m
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られた被覆弾性糸の4本用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。得られたタイツの外観およびストレッチ性の評価結果について表3に示す。
[比較例1]
極限粘度が0.78と0.47のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエチレンテレフタレート複合繊維(延伸糸)を得た。
【0045】
実施例1と同様に得られたポリエステル系複合繊維を熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0046】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :300m/min
熱板の温度 :130℃
延伸倍率 :1.03
総繊度22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を芯糸、得られた顕在捲縮糸を鞘糸として用いて下記条件にてカバリングを実施し、1重被覆弾性糸を得た。得られた被覆弾性糸の20%伸長時の伸長回復率(%)、撚り係数は表2に示す。
[カバリング加工条件]
ドラフト:2.9
撚り数 :600T/m
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られた被覆弾性糸のS、Z撚りをそれぞれ2本ずつ用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。
【0047】
得られたタイツの外観およびストレッチ性の評価結果について表3に示す。
[比較例2]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維に緊張熱処理を施さず、潜在捲縮糸のまま使用した。ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)の伸縮伸長率(%)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0048】
総繊度22デシテックスのポリウレタン弾性繊維を芯糸、ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を鞘糸として用いて下記条件にてカバリングを実施し、1重被覆弾性糸を得た。得られた被覆弾性糸の20%伸長時の伸長回復率(%)、撚り係数は表2に示す。
[カバリング加工条件]
ドラフト:2.9
撚り数 :600T/m
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られた被覆弾性糸のS、Z撚りをそれぞれ2本ずつ用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。
【0049】
得られたタイツの外観およびストレッチ性の評価結果について表3に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の被覆弾性糸は、衣服などに使用する際、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られることができる。衣料用として、特に、インナー、ストッキングなどのストレッチ素材を提供することができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の被覆弾性糸の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0055】
(イ): 被覆弾性糸
(ロ): ポリウレタン弾性糸
(ハ):顕在捲縮糸
(ニ):ヘリカルクリンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸と鞘糸からなる被覆弾性糸であって、芯糸にポリウレタン系弾性繊維を用い、鞘糸に、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなり、以下の(1)から(3)を満足する顕在捲縮糸を用いてなることを特徴とする被覆弾性糸。
・ 伸縮伸長率が100%以上
・ 単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
・ 熱水収縮率が10%以下
【請求項2】
20%伸長時の伸長回復率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の被覆弾性糸。
【請求項3】
該ポリエステル系複合繊維の構成成分の極限粘度が異なり、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]との極限粘度比([ηb]/[ηa])は0.3〜0.8であることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆弾性糸。
【請求項4】
該ポリエステル系複合繊維における構成成分の複合比(重量比率)がポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート=30/70〜70/30の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆弾性糸。
【請求項5】
撚り係数が3000〜10000の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被覆弾性糸。
ただし、撚り係数 K=T×D1/2
T:撚り数(回/m)、D:糸の総繊度(デシテックス)を示す。

【図1】
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【公開番号】特開2009−68147(P2009−68147A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238873(P2007−238873)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】