説明

被誘導式整形外科ガイド及び外科システム

【課題】整形外科手術の際に以降に使用するコンポーネントを位置決めするために使用される基準部を確立するための被誘導式整形外科ガイドを提供する。
【解決手段】整形外科ガイド20は、手術部位に対して所望の位置に整形外科ガイド20を配置するために手術ナビゲーションシステムによって追跡される電磁コイル28と、後で使用する外科コンポーネントの配置を誘導するために外科コンポーネントが係合できるような基準ピン10を手術部位に対して所望の位置に配置するための少なくとも一つの孔32,34,36が設けられた本体21とを備え、本体21と電磁コイル28とが既知の関係で取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術ナビゲーションシステムと共に使用される外科コンポーネントに関する。特に、本発明は、整形外科手術の際に以降で使用するコンポーネントを案内するための被誘導式器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの外科手術は、外科器具、インプラント又は患者の身体部分のような手術部位の物体に対して既知の関係で取り付けられたトラッキング要素(追跡要素)をセンサによって検出するようにした手術ナビゲーションシステムを用いて行われるようになってきている。センサ情報がコンピュータに送られると、コンピュータは手術ナビゲーションシステム座標系におけるトラッキング要素の三次元的位置を三角法で測定する。こうして、コンピュータは、物体の位置及び向きを求め、外科医の誘導のためにその位置及び向きを表示することができる。例えば、この位置及び向きは、X線、CTスキャン、超音波又は他の画像技術によって得られた患者の解剖学的構造の画像に重ねて表示することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、多くの整形外科手術は従来の器具を用いて行われており、解剖学的目標を目視及び/又は触知することによって手術の様々なコンポーネントの位置を外科医が機械的に調整している。これらの処置の際には、骨に前処置を施すための器具の形態の整形外科コンポーネント、サイズ決定が正しいことを確かめるための暫定コンポーネント、インプラントコンポーネント及び/又は他の適宜のコンポーネントが手術部位に配置される。これらコンポーネントは、多くの場合、適正に機能を果たすための位置及び向きに関する要件を有している。例えば、骨切削ガイドは、切削器を案内して所望の位置に切削面を生成するためには、適正な向きで骨上の位置を調整されなくてはならない。
【0004】
本発明の目的は、以降で使用する外科コンポーネントを案内するための被誘導式整形外科ガイド及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つ態様として、整形外科手術の際に手術部位に対して基準部を確立するために手術ナビゲーションシステムと共に使用するための被誘導式整形外科ガイドが提供される。基準部は、以降で使用する外科コンポーネントの配置を誘導するために当該外科コンポーネントと係合し得る。整形外科ガイドは、本体と、手術部位に対して所望の位置に整形外科ガイドを位置決めするために手術ナビゲーションシステムによって追跡されるための被追跡手段と、手術部位に対して所望の位置に基準部を確立するための基準部確立手段とを備える。
【0006】
本発明の他の態様として、膝関節に隣接する大腿骨の遠位端部において使用するための外科システムが提供される。この外科システムは、手術ナビゲーションシステムと、遠位大腿骨切削ガイドと、ベース部材と、接続リンクと、基準部ガイド部材とを備える。手術ナビゲーションシステムは、手術中に物体の位置を追跡するための追跡手段を備える。遠位大腿骨切削ガイドは、大腿骨の遠位端部に遠位大腿骨切削ガイドを取り付けるための取付手段と、大腿骨の遠位端部に平坦面を切削加工するための切削器を案内するための案内手段とを備える。ベース部材は、第1の調整軸線に沿って摺動するように遠位大腿骨切削ガイドに取り付けられており、接続リンクは第2の調整軸線に沿って摺動するようにベース部材に取り付けられており、基準部ガイド部材は第3の調整軸線周りに旋回するように接続リンクに取り付けられている。基準部ガイド部材は、大腿骨の遠位端部に対して基準部を確立するための基準部確立手段と、大腿骨に対して所望の位置への基準部ガイド部材の位置決めを誘導するために手術ナビゲーションシステムによって追跡されるための被追跡手段とを備える。基準部ガイド部材は、基準部ガイドの内外方向回転角度を平面内で調整するために第3の調整軸線周りに旋回できるようになっており、接続リンクは、基準部ガイドの内外方向位置を平面内で調整するために第2の調整軸線に沿って並進移動できるようになっており、ベース部材は、基準部ガイドの前後方向位置を平面内で調整するために第1の調整軸線に沿って並進移動できるようになっている。
【0007】
本発明の他の態様では、患者の身体の手術部位で整形外科手術を行う方法が、整形外科ガイドの位置を追跡(トラッキング)するために手術ナビゲーションシステムを作動させるステップと、手術ナビゲーションシステムによって指示される通りに手術部位に対して所望される位置に整形外科ガイドを位置決めするステップと、整形外科ガイドを用いて手術部位に対して基準部を確立するステップと、手術部位に対して所望の位置に外科コンポーネントを位置決めするために基準部と外科コンポーネントとを係合させるステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の様々な説明上の例が添付図面を参照して説明される。これら図面は、本発明の説明上の例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【0009】
被誘導式整形外科ガイドの各実施形態は、様々な外科コンポーネントを案内するように構成されている。例えば、被誘導式整形外科ガイドは、単数又は複数のピン、ねじ、棒、フィン、レール、蟻継ぎのアリ、平坦面、穴、スロット、切り欠き及び/又は骨内又は骨上の他の適宜の基準のような骨に対する基準部を定めるために使用することができる。基準部は、切削器具、リーマ加工器具、テンプレート、ドリルガイド、暫定インプラント、インプラント及び/又は任意の適宜の手術部位のための他のコンポーネントを含む以降で使用する外科コンポーネントの位置及び/又は向きの基準とするために使用される。手術部位の例には、股関節、膝関節、脊椎関節、肩関節、肘関節、足関節、手及び足の指関節、骨折部位、腫瘍部位及び/又は他の適宜の整形外科手術部位が含まれる。本発明の整形外科ガイドは、それを使用しなければ手術ナビゲーションシステムと共に使用することができないコンポーネントによって基準として参照され得る基準部を確立するために使用され得る。よって、整形外科ガイドは、既存の被誘導タイプではないコンポーネントを使用しながら三次元手術ナビゲーション技術の恩恵を与えるために使用され得る。整形外科ガイドは、別の中間基準部を定めるように構成されていてもよく、以降で使用される外科コンポーネントと係合してこれを直接的に案内する基準部自体として機能してもよい。直接的に基準部として機能するガイドには、単数又は複数のピン、ねじ、棒、フィン、レール、蟻継ぎのアリ、平坦面、穴、スロット、切り欠き及び/又は以降で使用するコンポーネントと直接的に係合してこれを手術部位に対して案内する他の機構が含まれ得る。例えば、整形外科ガイドは、切削器を受容して案内し骨上に切削表面を生成するためのスロットを含んでいてもよい。
【0010】
図1〜図3は、基準ピン10の配置を誘導するように構成された例示の被誘導式整形外科ガイド20を示しており、基準ピン上には大腿骨切削ガイド50が配置され、膝関節置換手術において大腿骨コンポーネントを受容するための大腿骨2の切削を誘導する。整形外科ガイド20は、表側表面22と該表側表面と反対側の裏側表面24と該表側表面22から該裏側表面24まで延びる周側壁26とを有した本体21を備える。説明上の例では、整形外科ガイド20は、表側表面22と裏側表面24との間の側壁26の周界内で本体21内に埋め込まれた電磁コイル28の形態のトラッキング要素(追跡要素)を備えている。電磁コイル28は、手術ナビゲーションシステムと接続して手術ナビゲーションシステムと電磁コイル28との間で電気信号を伝達するために、電磁コイル28から本体21の外へ延びるリード線30を備えている。電磁コイル28は、電磁界内に配置されると、電荷を生じ、生じた電荷は、電磁コイル28すなわち整形外科ガイド20の三次元的な位置及び向きが手術ナビゲーション座標系と関連付けられ得るように、手術ナビゲーションシステムに伝達される。例えば、手術ナビゲーションシステムは、既知の位置に複数のセンサを備え、これらセンサが電磁コイル28からの信号を受信してコンピュータに情報を送るようにすることができる。すると、コンピュータは、手術ナビゲーションシステム座標系内で電磁コイルの三次元的位置を三角法で測定することができる。そして、手術ナビゲーションシステムは、電磁コイル28の位置及び向きを検出して、電磁コイル28と整形外科ガイド20との間の既知の関係から整形外科ガイド20の位置及び向きを求めることによって、整形外科ガイド20の位置及び向きを決定することができる。
【0011】
説明上の例は能動型電磁トラッキング要素を示しているが、トラッキング要素は、電磁的又は音響的に、若しくは画像又は他の適宜の検出手段によって、検出することも可能である。さらに、トラッキング要素は能動型でも受動型でもよい。能動型トラッキング要素の例には、電磁システムの電磁場エミッタ(例えば例示の電磁コイル28)、画像システムの発光ダイオード、音響システムの超音波エミッタなどが含まれ得る。受動型トラッキング要素の例には、反射表面を備えた要素が含まれ得る。例えば、反射性球体又は円盤を整形外科ガイドに取り付けてこれを画像システムによって検出してもよい。
【0012】
整形外科ガイド20は、以降に使用するコンポーネントを案内するために骨上又は骨内に基準部を確立するための基準部確立手段を備える。例示の整形外科ガイド20では、孔32,34,36が整形外科ガイド20を貫通して表側表面22から裏側表面24まで延びている。孔は、ピン10、ねじ又は他の基準部の配置を誘導することができる。例えば、ドリル用ビットを孔32,34,36のうちの一つ又は複数に沿って案内して、その下の骨2に穴40(図2)を形成させることができる。すると、ピン10を骨2の穴に挿入できるようになる。あるいはまた、セルフドリリングピンを使用してもよい。また、ピン10を設けず、骨2に形成された穴40自体が基準部として機能してもよい。あるいはまた、整形外科ガイド20は、骨2に対する切り欠き、スロット又は他の基準部の形成を誘導するための切り欠き、スロット、案内面又は他の機構を備えてもよい。さらに、整形外科ガイド20は、骨2内又は骨2上に棒、レール又は他の基準部を設置するのを誘導するためのスロット、切り欠き、案内面又は他の機構を備えてもよい。
【0013】
基準部が骨2上に位置決めされると、外科コンポーネントは、自身を正確に位置決めするために、基準部を基準にできる。例えば、図3では、大腿骨切削ガイド50は、整形外科ガイド20を使用して取り付けられた基準ピン10を受容するための孔52,54及び56を含んでいる。あるいはまた、外科コンポーネントは、整形外科ガイド20を使用して形成された穴40に係合するための突起、又は整形外科ガイド20を使用して位置決めされた他のタイプの基準部に係合するための他の機構を備えていてもよい。大腿骨切削ガイド50は、表側表面60と裏側表面62と該表側表面60から該裏側表面62まで延びる周側壁63とを有した本体58を備える。基準部受容孔52,54,56が表側表面60から裏側表面62まで延びている。切削器を案内して大腿骨膝関節インプラントを受容するように大腿骨2の端部の形状を整えるために、複数のスロット64,66,68,70,72が切削ガイド50を貫通して表側表面60から裏側表面62まで形成されている。例えば、後側切削スロット70は、大腿骨2上に後側切子面を切削加工するために、鋸歯を案内することができる。後側面取面切削スロット68は、大腿骨2上に後側面取面を切削加工するために、鋸歯を案内することができる。前側切削スロット64は、大腿骨2上に前側切子面を切削加工するために、鋸歯を案内することができる。前側面取面切削スロット66は、大腿骨2上に前側面取面を切削加工するために、鋸歯を案内することができる。滑車凹部切削スロット72は、大腿骨2上に滑車凹部の底面を切削加工するために、鋸歯を案内することができる。さらに、ドリル案内孔74は、大腿骨インプラントの固定柱を受容するための柱穴を大腿骨に形成するために、ドリルビットを案内することができる。固定孔76は、鋸切断及びドリル孔形成が行われる間、骨2上の所定の位置に切削ガイド50を保持するための付加的なピン、ねじ又は他の留め具を受容するように配置されている。
【0014】
図1の例示の整形外科ガイド20では、孔32,34,36は所定の範囲のサイズで提供された切削ガイド50に形成された孔に対応している。整形外科ガイド20の中央の孔32は切削ガイド50の中央の孔52に対応しており、全てのサイズの切削ガイド50に共通のものである。基準ピン10を受容するための付加的な孔54,56は、切削ガイド50のサイズによって場所が変動し得る。したがって、整形外科ガイド20は、複数の場所に、対応する付加的な整形外科ガイド孔34,36を含んでいる。付加的な整形外科ガイド孔34,36は、使用される予定の切削ガイド50のサイズを識別するために、ラベル又は標識を付けられていてもよい。次に、ラベル又は標識を付けられた対応する整形外科ガイド孔34,36を使用して、基準ピン10が位置決めされる。切削ガイド50を確実に位置決めするには、二つのピン10があれば十分である。
【0015】
次に、膝関節置換手術の際に大腿骨2の遠位端部を置換する処置で使用される外科コンポーネントである例示の大腿骨切削ガイド50に関連して、整形外科ガイド20の使用方法を説明する。外科医は、大腿骨インプラントの所望の術中サイズ及び位置を術前に予め決めておくことができる。例えば、X線画像、CTデータ、MRIデータ又は他の患者データをデジタル化して、患者の解剖学的構造のコンピュータモデルを形成し、コンピュータスクリーン上で利用可能な膝関節インプラントのモデルと重ね合わせればよい。次に、外科医は、適切なサイズのインプラントを選び、それを仮想現実的にコンピュータモデル上の所望の位置に誘導することができる。次に、この位置情報が手術ナビゲーションシステムによって使用され、整形外科ガイド20の中央共通孔32を適切な位置に位置決めするように外科医を誘導して、選択された切削ガイド50を適正に位置決めさせる。例えば、外科医は、当該技術分野において公知の従来の方法で、遠位切削表面4を形成することができる。次に、被誘導式整形外科ガイド20を遠位切削表面4に配置し、中央孔32が要求位置にあることを手術ナビゲーションシステムが指示するまで整形外科ガイド20を誘導すればよい。次に、孔32を通して大腿骨2までドリル加工し、ドリル加工された穴40に基準ピン10を押し入れることによって、基準ピン10を挿入することができる。こうして、整形外科ガイド20は特定の前後方向(A/P)及び内外方向(M/L)の位置に固定され、次に、予定されるインプラントサイズに対応する他の孔34,36が適正な回転位置にあることを手術ナビゲーションシステムが指示するまで中央孔32内のピン10周りに整形外科ガイド20を回転すればよい。次に、適切な孔34,36を通して大腿骨2にドリル加工し、ドリル加工された穴40に基準ピン10を押し入れることにより、基準ピン10を挿入することができる。その後、整形外科ガイド20は、持ち上げて基準ピン10から外すことによって除去することができる。基準ピン10に沿って切削ガイド50を摺動させることによって、適切な大腿骨切削ガイド50を大腿骨2の遠位切削表面4上に位置決めすることができる。固定孔76のうちの一つ又は複数のものを通して大腿骨2にピン、ねじ又は他の留め具を挿入することによって、切削ガイドを骨に留めることができる。切削ガイド50のスロット64,66,68,70,72及び孔74を用いて鋸歯及びドリルを案内し、所望のA/P位置、M/L位置及び回転位置に特定のサイズのインプラントを受容するように大腿骨2に前処理を施すことができる。
【0016】
あるいはまた、整形外科ガイド20は、それ自体が以降に使用するコンポーネントを案内するための基準部として機能してもよい。例えば、整形外科ガイド20は、手術ナビゲーションシステム座標系に対する以降に使用するコンポーネントと直接係合して案内するための孔、スロット、平坦面及び/又は他の機構を含み得る。例えば、切削ガイド50の案内スロット64,66,68,70,72及び孔74は、被誘導式整形外科ガイド20に直接的に形成されていてもよい。しかしながら、切削ガイド50の機構の全てを有している被誘導整形外科ガイド20は、切削ガイド50よりも高価で且つ/又は壊れやすくなる恐れがある。切削ガイド50は様々なサイズで提供されることが典型的であることから、上述したような基準部を設定するための別個の単一の被誘導式整形外科ガイド20を提供することが、費用を抑え且つ/又は要求される保守も少なくし得る。さらに、既存の被誘導式でない切削ガイド50を使用しながら手術ナビゲーション技術の恩恵を与えるために、別個の被誘導式整形外科ガイドを使用することもできる。これは、必要とされる新しい機器の数を減少させることによって、被誘導式でない処置から被誘導式の処置への移行の費用を大幅に低減させる。
【0017】
図4は、図1の被誘導式整形外科ガイドの代替的構成を示している。図4の整形外科ガイド120は、図1の整形外科ガイド20の半分の幅である。この小型の整形外科ガイド120は、切開部のサイズが小さい低侵襲外科処置における使用に非常に適している。整形外科ガイド120は、本体121と、手術ナビゲーションシステムによって整形外科ガイド120の位置及び向きを追跡(トラッキング)できるようにするための電磁コイル128の形態のトラッキング要素とを備える。切開部への整形外科ガイドの挿入を容易にするために、整形外科ガイド120からハンドル125が延びている。低侵襲外科処置では、整形外科ガイド120の本体121が柔軟組織によって大きく覆われるように、切開部の縁の下に整形外科ガイドの縁端123を滑り込ませることが必要となることがある。そこで、ハンドル125は、切開部から突出する把持表面を備えている。整形外科ガイド120の本体121は、中心孔132と、第1及び第2の組の付加的な基準部案内孔134,136とを含んでいる。付加的な基準部案内孔134,136は、各孔に関連付けられた対応する切削ガイド50を表示するためにラベル又は標識を付されている。半分のサイズの器具上に基準部案内孔134,136をうまく収めるために、オフセットされた代替中心孔133が設けられている。代替中心孔133は、第2の組の基準部案内孔136が第1の組の基準部案内孔134からオフセットされ第1の基準部案内孔134と重ならないようにできるように、第2の組の基準部案内孔136と関連付けられている。対応する中心孔132,133と付加的な基準部案内孔134,136とを関連付けるために、エッチングによって形成された線137,139のような視覚的手掛かりを設けることもできる。
【0018】
図5〜図7は、調整機構をさらに備えている図1の被誘導式整形外科ガイドの例示の代替的構成を示している。整形外科ガイド200は、ベース部材202と、基準部を確立するためのガイド部材280と、ベース部材202をガイド部材280に接続する接続リンク240とを備える。ベース部材202は、手術ナビゲーション座標系内に整形外科ガイド200を留める。例えば、ベース部材202は、手術部位に隣接する骨に取り付けられ得る。例示のベース部材202の細長い形状は、ベース部材202が低侵襲外科技術において使用されるような細い切開部内に嵌入することを可能とさせる。例示のベース部材202は、ベース部材202を骨に留めるために、固定部材を受容するための固定孔204を含んでいる。固定孔204は、図示されているように、固定部材が小さい切開部及び/又は内側又は外側にオフセットされた切開部の中に所定の角度をなして挿入されることを可能とさせるために、一方側に角度をなしていてもよい。接続リンク240は、ガイド部材280が骨に対して所望の向きに留められることを可能とさせるために、ベース部材202に対するガイド部材280の調整を可能とさせる。このような調整機能は、接続リンク240をベース部材202及びガイド部材280に接続する調整機構によって提供される。
【0019】
接続リンク240は、ベース部材202から延びるライザーブロック(立ち上がりブロック)206を通してベース部材202に接続されている。接続リンクボルト208は、サドルワッシャ210及びライザーブロック206を貫通して延び、第1のロックノブ212とねじ式に係合している。接続リンクボルト208は、横断孔216を有した頭部214を備えている。接続リンク240は、横断孔216の軸線217に沿って並進移動し且つ該軸線217周りに回転できるように横断孔216によって受容される筒状シャフト242を備えている。第1のロックノブ212が接続リンクボルト208のねじ部218に締め付けられると、接続リンクボルト208がサドルワッシャ210及びライザーブロック206を通して引き寄せられる。接続リンク240の筒状シャフト242は引き寄せられてサドルワッシャ210の切り欠き部220に当接する。第1のロックノブの締め付けにより、サドルワッシャ210でベース部材202に対して接続リンク240をロックさせ、ベース部材202に対する接続リンク240の並進移動及び回転を防止させる。
【0020】
接続リンクボルトの頭部214は、例えば肩部222を形成するように半径方向に拡張され、筒状シャフト242が横断孔216から外れても接続リンクボルト208が意図せずにサドルワッシャ210及びライザーブロック206を通り抜けてしまわないようにすることができる。接続リンクボルト208は、接続リンクボルト208がベース部材202に対して回転することを防止するために、サドルワッシャ210及びライザーブロック206の非円形の孔226,228に対応する非円形のシャフト部分224を含んでいてもよい。接続リンクボルト208を回転しないように拘束することによって、接続リンク240とベース部材202との間の相対運動は、横断孔216の軸線217に沿った並進移動と該軸線217周りの回転のみとなる。さらに、接続リンクボルト208を拘束することによって、第1のロックノブ212を締め付けることが容易になる。
【0021】
ライザーブロック206は、ライザーブロックを二つの離間した片持ち部分232,234に分割するスリット230を含んでいてもよい。これら片持ち部分232,234は、ばねとして作用し、ばね無しの場合よりも広い範囲の引張り力調整を調整機構に可能とさせる。スリット230がある場合、第1のロックノブ212は、ガイド部材280の重量の作用を受けたときに横断孔216内の所望の位置に筒状シャフト242を保持するに十分でありながらもユーザが手の圧力で横断孔216内の筒状シャフト242を移動することを許容する引張り力に容易に調整することができる。その後、第1のロックノブ212を締め付けて、最終的な所望の位置に筒状シャフト242をロックすることができる。
【0022】
接続リンク240は、接続リンク240から延びるタブ244を介してガイド部材280に接続されている。タブ244は、横断孔216の軸線217に対して所定角度をなしている軸線248を有した孔246を含んでいる。これら孔の軸線217,248の間の角度は、ベース部材202に対するガイド部材280の二次的な回転方向調整を可能とさせている。ガイド部材280は、互いに離間した第1のアーム284と第2のアーム286とを有したヨーク282を備える。各アーム284,286は、ベース部材202に対するガイド部材280の二次的な並進方向調整を可能とさせる細長いスロット288を含んでいる。タブ244は、第1のアーム284と第2のアーム286との間に摺動及び旋回可能な関係で受容される。ガイド部材ボルト290は、第1のアーム284及び第2のアーム286のうちの一方のアーム284とタブ244の孔246と他方のアーム286とを貫通して延び、第2のロックノブ292とねじ式に係合している。
【0023】
このような構成は、ガイド部材280にタブ孔軸線248周りの回転及び細長いスロット288に沿った並進移動をさせる。ガイド部材ボルト290は半径方向に拡張された頭部294を備え、この頭部294がヨークの二つのアームのうちの一方284に当接し、ガイド部材ボルト290がスロット288を通って引き抜けることを防止している。第2のロックノブ292がガイド部材ボルト290のねじ部296に締め付けられると、ヨークの第1のアーム284及び第2のアーム286が互いに撓んで、接続リンク240のタブ244を把持する。第1のアーム284及び第2のアーム286のばね作用は、ガイド部材280の重量による作用を受けたときにヨーク282内の所望の位置にタブ244を保持するのに十分でありながらも、なおユーザが手の圧力でヨーク282内のタブ244を回転させることを許容するような引張力に第2のロックノブ292を容易に調整できるようなタブ244の把持力の範囲を可能にさせる。
【0024】
その後、第2のロックノブ292を締め付けると、タブ244、結果としてガイド部材280を最終的な所望の位置にロックすることができる。任意選択の一つ又は複数のロックワッシャ250がタブ244とヨーク282との間に設けられてもよい。ロックワッシャ250は、ヨーク282とタブ244との間の把持力を増加させるために、複数の歯252を備えていてもよい。さらに、ガイド部材ボルトの頭部294は、第2のロックノブ292が締め付けられたときにガイド部材ボルト290が回転することを防止するために、スロット288に隣接して設けられた対応する凹部(図示せず)に受容される非円形プロファイル(断面)を備えていてもよい。例えば、ガイド部材ボルトの頭部294は、スロット288を取り囲む平坦な側面を有したさら孔内に嵌合する平坦な側面295を有していてもよい。
【0025】
ガイド部材280は、手術ナビゲーションシステム座標系に基準部を確立するための基準部確立手段を備える。図5の例示の整形外科ガイドでは、ガイド部材280は、基準部を確立するために、ピンを案内するための案内孔298を含んでいる。ガイド部材280は、手術ナビゲーションシステムがガイド部材280の位置及び向きを追跡(トラッキング)することを可能とさせるために、電磁コイル300のようなトラッキング要素を備える。
【0026】
使用の際、手術ナビゲーションシステム座標系にとって既知の部材にベース部材202を取り付けることによって、ベース部材202を手術ナビゲーションシステム座標系内に固定する。例えば、図6に示されているように、ベース部材202を大腿骨299に取り付けることができる。例示のベース部材202の細長い形状は、ベース部材202を小さい切開部に入れることを可能とさせる。例えば、膝関節に隣接して設けられた狭い内側又は外側切開部内にベース部材202を挿入することができる。さらに、固定孔204は、このような内側又は外側切開部内に固定部材を挿入することを可能とさせるために、図示されているように、角度を付けて設けられていてもよい。
【0027】
ベース部材202に対してガイド部材280を動かすことを可能とさせるためには、第1のロックノブ212及び第2のロックノブ292を緩める。図6に示されているようにベース部材202が大腿骨299上に配置されている場合には、第1のロックノブ212は、ガイド部材280の内外方向位置及び屈曲角度をロックする。第2のロックノブ292は、ガイド部材280の内外反位置及び切除深さをロックする。ガイド部材280が所望の位置に位置決めされたことを手術ナビゲーションシステムが指示するまで、調整機構を操作する。その後、第1のロックノブ212及び第2のロックノブ292を締め付け、ベース部材202に対してガイド部材280を所望の位置にロックする。次に、ガイド部材280を用いて、以降に使用する外科コンポーネントを案内するための基準部を確立することができる。例えば、案内孔298を通してピン302を大腿骨299に挿入することができる。その後、被誘導式ガイド200は除去することができる。
【0028】
図7は、ピン302に取り付けられた遠位大腿骨切削ブロック304を示している。遠位大腿骨切削ブロック304は、ピン302を受容するための孔306,308,310と、切削器を案内して骨上に表面を形成するための切削器ガイド312とを含んでいる。孔306,308,310は、複数列の孔として設けられてもよい。各列は、異なる切除高さ(レベル)を提供し得る。例えば、一つの列の孔308は、予め定められた公称切除高さ(nominal resection)に対応し得る。他の列の孔306,310は、外科医の好みや骨の状態により必要とされる場合に骨の切除量を多くする又は少なくすることを可能とさせる。使用されるピン302の数よりも多い孔を各列に設けることによって、遠位大腿骨切削ブロック304をピン302から持ち上げて外して同じ列の隣の穴に位置決めし直すことで遠位大腿骨切削ブロック304の位置を前後方向に調整することができるようになる。遠位大腿骨切削ブロック304が所望の切除高さ及び前後方向位置に位置決めされた状態で、孔306,308,310のうちの幾つかに付加的な固定部材を挿入して、切削器を案内して大腿骨299を切削する間、遠位大腿骨切削ブロック304を所定の位置に保持することができる。
【0029】
図5〜図7の調整可能な被誘導式整形外科ガイド200は、大腿骨299の遠位部分に基準部を位置決めして遠位大腿骨切削ガイド304を位置決めするように構成されているものとして図示されている。しかしながら、調整可能な被誘導式整形外科ガイドを使用して、大腿骨仕上げガイド及び/又は脛骨切削ガイドのような切削ガイドを含む他の外科コンポーネントのための基準部を確立してもよい。さらに、図1〜図3及び図4の被誘導式整形外科ガイドのように、図5〜図7の整形外科ガイドもそれ自体が以降で使用する外科コンポーネントを直接的に案内するための基準部として機能することもできる。
【0030】
図8〜図11は、調整機構をさらに備えた図1の整形外科ガイドの他の例示の代替的構成を示している。整形外科ガイド400は、ベース部材402と、ガイド部材480と、ベース部材402とガイド部材480とを調整可能に接続するための接続リンク装置440とを備える。ベース部材402は、接続リンク装置440を受容するための受容体ブロック404と、手術ナビゲーションシステム座標系内に整形外科ガイドを固定するためのアンカー部分(係留部分)406とを含む。例示のアンカー部分406は、骨内に打ち込むことができる主取付柱408を含む。主取付柱408は、骨に対してベース部材402が回転しないようにするために、フィン410を備えていてもよい。ベース部材402が回転しないようにするために、補助取付柱411を備えていてもよい。補助取付柱411は、回転しないようにより大きなモーメントアームを形成するために、主取付柱408から半径方向に離間して設けるとよい。ベース部材402は、骨からベース部材402を取り外すために、ベース部材402を把持するための把持手段を備えていてもよい。例示のアンカー部分406は、ベース部材402の上方まで延びており、ピン引き抜き器、スラップハンマー(slap hammer)、及び/又はベース部材402を引き抜くための他の適宜の器具によって係合され得る環状溝412を含んでいる。
【0031】
接続リンク装置440は、ガイド部材480を骨に対して所望の向きで固定できるようにさせるために、ベース部材402に対するガイド部材480の調整を可能にさせる。この調整性は、接続リンク装置440をベース部材402及びガイド部材480に接続する調整機構によって提供される。
【0032】
接続リンク装置440は、回転支持体442によってベース部材402に接続されている。説明上の例では、回転支持体442は、上側表面443と下側表面445と一端から突出しているトラニオン446とを有した板状本体444を含んでいる。トラニオン446は、受容体ブロック404に形成された孔414内に該孔414の軸線416周りに回転するように受容されている。回転支持体442を所定の位置にロックするために、受容体ブロック404に止めねじ418が螺入される。トラニオン446は、止めねじ418の先端部420を受容するための環状溝448を含んでいてもよい。止めねじ418が溝448と緩く係合している場合には、回転支持体442は孔414の軸線416周りの回転は許容される一方で、孔414の軸線416に沿った並進移動は防止される。止めねじ418を締め付けることによって、回転支持体442をその回転位置にロックする。
【0033】
回転支持体442の反対側の端部には調整ねじハウジング450が支持されている。調整ねじハウジング450は、対向するてこ台456によって規定される横断開口部454を有した本体452を含んでいる。回転支持台442は、その上側表面443及び下側表面445を対向するてこ台456の頭頂458に密着させた状態で、開口部454内に受容されている。てこ台456は、調整ねじハウジング450が回転支持体442に対して揺動することを許容している。一対の角度調整ねじ460が調整ねじハウジング450に螺入され、開口部454を横断する方向に開口部454に疎通し、調整ねじ460が回転支持体442の上側表面433と係合できるようになる。調整ねじ460は、てこ台の頭頂458の両対辺上に位置するように、調整ねじハウジング450内に配置される。角度調整ねじ460のうちの一方を緩め、他方を締め付けることによって、調整ねじハウジング450がてこ台頭頂458上で旋回し、回転支持体442に対する調整ねじハウジング450の角度を調整することができるようになる。
【0034】
接続リンク装置440は、ガイド部材480の一部が調整ねじハウジング450に接続することによって、ガイド部材480に接続されている。説明上の例では、螺刻されたねじ部付きロッド483がガイド部材480から突出しており、調整ねじハウジング450、対向するてこ台456の頭頂458、回転支持体442に形成された細長いスロット462を貫通して、調整ナット464とねじ式に係合している。ガイド部材480と調整ねじハウジング450との間には、それらを互いから離れる方向に付勢するために、ばね466が介挿されている。調整ナット464を締め付けることによって、ねじ部付きロッド482を調整ねじハウジング450内に引き込み、それによってガイド部材480を調整ねじハウジング450に向かって移動させ、ばね466を圧縮させる。調整ナット464を緩めることにより、ガイド部材480が調整ねじハウジング450から離れる方向に移動できるようになる。
【0035】
ガイド部材480は、手術ナビゲーションシステム座標系内に基準部を確立するための基準部確立手段を備えている。図8の例示の整形外科ガイドでは、ガイド部材480は、前面484と後面486とを有したガイド部材本体482を備えている。ピンを案内して基準部を確立するための案内孔487が前面484から後面486まで延びている。ガイド部材480は、手術ナビゲーションシステムがガイド部材480の位置及び向きを追跡(トラッキング)することを可能とさせるために、電磁コイル488の形態のトラッキング要素を備えている。
【0036】
任意選択であるが、ガイド部材480は、以降に使用する外科コンポーネントを直接的に案内するための基準面を備えていてもよい。図8〜図11の例示の整形外科ガイドは、以降に使用する外科コンポーネントを直接的に案内するために、前面484から後面486まで延びる細長い切削器案内スロット490の形態の基準面を備えている。任意選択の直接的に案内するための基準面が設けられている場合、案内孔487は、ガイド部材480が以降に使用する外科コンポーネントを直接的に案内する間、該ガイド部材480を所定の位置に保持するための固定部材を受容することができる。典型的には所定の範囲のサイズで提供されなければならない大腿骨切削ガイドと異なり、多くの場合、広範なサイズの脛骨を切削するのに単一の脛骨切削ガイドが使用され得る。したがって、図示されているように、脛骨への使用に合わせて構成された単一の直接案内式整形外科ガイドを提供することが有利となるであろう。しかしながら、図8〜図11の整形外科ガイドを使用して、脛骨切削ガイド、大腿骨切削ガイド、インプラント及び/又は他の外科コンポーネントのような別個の外科コンポーネントのための基準部を確立してもよい。既存の被誘導式でないコンポーネントに手術ナビゲーション技術の恩恵を与えるために、整形外科ガイドを使用して、既存の脛骨切削ガイドのための基準部を確立することも有利となり得る。
【0037】
使用の際には、図9及び図10に示されているように、骨に隣接して整形外科ガイド400を固定するために、取付柱408を骨に挿入する。脛骨500上での使用の場合、ガイド部材480を前脛骨皮質504に隣接して配置するためには、近位脛骨表面502に取付柱408を挿入すればよい。両方の角度調整ねじ460を緩めた状態では、前脛骨皮質504に対して所望の位置まで回転支持体442に沿って調整ねじハウジング450及びガイド部材480を摺動させることができる。ガイド部材480の内外反方向の向きを調整するために、止めねじ418を緩めた状態では、回転支持体442、調整ねじハウジング450及びガイド部材480を回転させることができる。角度調整ねじ460の緩め具合を別々にすることにより、図11に最もよく示されているように、回転支持体442に対する調整ねじハウジング450及びガイド部材480のてこ台頭頂458周りの角度を変えることができる。この角度は、ガイド部材480の後方傾斜の向きを調整する。最後に、調整ナット464を締め付けるか緩めることにより、ガイド部材480の高さを変動させ、ガイド部材480の切除深さ位置を確立することができる。
【0038】
ガイド部材480を追跡(トラッキング)するために手術ナビゲーションシステムを使用しながら、これら全ての調整を行うことができる。ガイド部材480が所望の位置にあることを手術ナビゲーションシステムが指示したときに、調整ねじを締め付けてその位置にロックすることができる。例えば、ガイド部材480の案内孔487を通して前脛骨皮質504に基準ピン506を挿入することによって、ガイド部材480を使用して、脛骨500上に基準部を確立することができる。その後、整形外科ガイド400を除去して、以降に使用する外科コンポーネントを基準ピン506に係合させることができる。例えば、切削器を案内して近位脛骨表面502を切除するための切削ブロックを基準ピン506に係合させることができる。あるいはまた、ガイド部材480は、以降に使用する外科コンポーネントを案内するために、切削器案内スロットの場合のように、直接的に基準部を確立することもできる。例えば、切削器を案内して近位脛骨表面502を切除するために、切削器案内スロット490に切削器を挿入することができる。
【0039】
図8〜図11の例示の整形外科ガイド400は、膝関節置換手術の際に直接的に切削器を案内して近位脛骨上に切削表面を形成するように構成されたものとして示されている。しかしながら、この整形外科ガイド400は、他の外科コンポーネント及び/又は他の手術位置を直接的に案内する又は他の外科コンポーネント及び/又は他の手術位置のための基準部を確立するために、使用されてもよい。例えば、膝関節の大腿骨又は脛骨、股関節の大腿骨又は骨盤及び/又は他のコンポーネント及び位置に対して所望の位置に器具又はインプラントを直接的に案内するために又はそれらを案内するための基準部を確立するために、整形外科ガイド400を使用することもできる。
【0040】
図12〜図17は、調整機構をさらに備えた図1の被誘導式整形外科ガイドの他の例示の代替的構成を示している。整形外科ガイド600は、ベース部材602と、基準部を確立するためのガイド部材680と、ベース部材602とガイド部材680とを接続する接続リンク640とを備える。ベース部材602は、手術ナビゲーションシステム座標系内に整形外科ガイド600を固定する。例えば、ベース部材602は、手術部位に隣接する骨に固定され得る。あるいはまた、ベース部材602は、例示のベース部材602が図7の遠位大腿骨切削ガイド304に固定されている図16に示されているように、他の外科コンポーネントに固定されてもよい。例示のベース部材602は、遠位大腿骨切削ガイド304と係合可能なクランプナット604を備えている。クランプナット604は、軸線方向に延びるねじ孔606と、ねじ孔606を横断する方向に延び且つ下部分を切り取ったアンダーカットスロット608とを含んでいる。ねじ610は、クランプナット604のねじ孔606と係合可能なねじ部付きシャンク612と、ノブ614とを含んでいる。シャンク612は、ベース部材602のベースクランプ孔616を貫通し、クランプナット604と係合する。ねじ610を回転させたときにクランプナット604が回転することを防止するために、一対の側部翼616がベース部材602から下方に突出している。このクランプナット604は、ベース部材602を遠位大腿骨切削ガイド304上の選択された相対位置に締め付けることを可能にさせる。
【0041】
接続リンク640は、ベース部材602に対するガイド部材680の調整を可能とさせる。この調整性は、接続リンク640をベース部材602及びガイド部材680に接続する調整機構によって提供される。接続リンク640は一端にアーム642を備えており、このアーム640は、ベース部材602の位置が遠位大腿骨切削ガイド304に対して第1の方向に調整でき且つ接続リンク640の位置がベース部材602に対して第1の方向を横切る方向の第2の方向に調整できるように、アンダーカットスロット608を横切る方向にベース部材602のアーム受容開口部618に摺動可能に係合している。図12〜図17の説明上の例では、第1の方向及び第2の方向が互いに垂直になっている。ベース部材602は、アーム受容開口部618と連通しているねじ孔620を含んでいる。ロックノブ622は、ねじ孔620に螺合するシャンク624を備えており、シャンク624の先端部626がアーム642に係合し、締め付けられてベース部材602に対してアーム642をロックできるようになっている。接続リンク640は、アーム642と反対側にサドル644(鞍状部)を備えている。サドル644は互いに離間した側面部646,648を備え、これら側面部646,648は同心に整列配置された孔650,652を含んでいる。孔650,652は、クランプボルト654を受容し、クランプノブ656がクランプボルト654に螺合する。孔の一方652は、クランプノブ656を回転させるときにクランプボルト654が回転するのを防止するために、クランプボルト654の非円筒状の頭部658を受容するように非円筒状になっていてもよい。
【0042】
ガイド部材680は、手術ナビゲーションシステム座標系内に基準部を確立するための基準部確立手段を備えている。図12〜図17の例示の整形外科ガイドでは、ガイド部材680が、ピンを案内して基準部を確立するための案内孔682を含んでいる。ガイド部材680は、手術ナビゲーションシステムがガイド部材680の位置及び向きを追跡(トラッキング)できるようにするために、電磁コイル684のようなトラッキング要素を備えている。ガイド部材680は、サドル644と係合するタブ(耳状部)686を備えている。タブ686の貫通孔688は、クランプボルト654がサドルの一方の孔652とタブ686の貫通孔688とサドルの他方の孔650とを貫通してクランプノブ656と係合できるように、孔650,652と整列するように配置される。サドル644とタブ686とによる構成はヒンジを形成し、ガイド部材680がクランプボルトの軸線周りに旋回し、クランプノブ656を締め付けることによって所望の角度位置にロックされ得るようにする。
【0043】
使用の際には、ベース部材602を手術部位に固定する。例えば、ベース部材602を骨に取り付ければよい。あるいはまた、図16に示されているように、ベース部材602を遠位大腿骨切削ガイド304に取り付けてもよい。これにより、外科的処置の論理的且つ迅速な進行を容易にさせる便利な取付構成を提供する。クランプナット604のアンダーカットスロット608は、遠位大腿骨切削ガイド304の上部309に沿って形成されたレール305及びスロット307に係合する。手術部位に対するガイド部材680の前後方向位置を調整するためには、ベース部材602を遠位大腿骨切削ガイド304に沿って摺動させる。前後方向の位置は、ねじ610を締め付けることによってロックされる。手術部位に対するガイド部材680の内外方向の位置を調整するためには、アーム受容開口部618内で接続リンクのアーム642を摺動させる。内外方向位置はロックノブ622を締め付けることによってロックされる。手術部位に対するガイド部材680の内外方向回転角度を調整するためには、サドル644内でガイド部材680を旋回させる。内外方向回転角度は、クランプノブ656を締め付けることによってロックされる。ガイド部材680が所望の位置に位置決めされたことを手術ナビゲーションシステムが指示するまで、機構を操作する。次に、ロックノブ、すなわちねじ部付きシャンク612、ロックノブ622及びクランプノブ656を締め付けて、位置を固定する。その後、ガイド部材680を用いて、以降に使用する外科コンポーネントを案内するための基準部を確立することができる。例えば、案内孔682を通して大腿骨299にピン303を挿入することができる。その後、被誘導式整形外科ガイド600及び遠位大腿骨切削ガイドブロック700を除去することができる。
【0044】
図17は、ピン303に取り付けられた前方粗切削用ガイドブロック700を示している。前方粗切削用ガイドブロック700は、ピン303を受容するための孔702と、切削器を案内して骨上に表面を形成するための切削器ガイド704とを備えている。ピン303によって確立されたような所望の位置に前方粗切削用ガイドブロック700を配置した状態で、孔702のうちの幾つかに付加的な固定部材を挿入して、切削器を案内して大腿骨299を切削している間、前方粗切削用ガイドブロック700を固定することができる。大腿骨299の遠位表面及び前側表面が切削されると、大腿骨インプラントの近位遠位位置、前後位置、内外方向回転が確立される。仕上げガイドの基準として大腿骨299の切削された遠位表面及び前側表面を参照し、所望の内外方向位置に仕上げガイドを配置することができる。その後、仕上げ切削を行い、大腿骨インプラントを挿入することができる。図12〜図17の被誘導式整形外科ガイドは、前方粗切削用ガイドブロック700を位置決めするために使用されるとして示されている。しかしながら、この被誘導式整形外科ガイドは、後方粗切削用ガイドブロックや他の適宜の外科コンポーネントを位置決めするために、使用することもできる。
【0045】
被誘導式整形外科ガイドの幾つかの例及びその使用方法を詳細に説明、図解したが、これらは説明及び例として意図されたものに過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではないことは了解されよう。膝関節置換手術に関連付けた特定の位置にピンを設定する又は切削器を案内する整形外科ガイドに関して本発明を説明した。しかしながら、他のタイプの外科コンポーネントと共に使用するために、他のタイプの基準部を患者身体内の他の位置に位置決めするように整形外科ガイドを構成することもできる。したがって、整形外科ガイドの変形形態及び改変並びにその使用方法は当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲はこのような改変及び等価なものを全て網羅することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】骨に対して基準部を確立するために使用される本発明による例示の被誘導式整形外科ガイドの斜視図である。
【図2】図1の被誘導式整形外科ガイドによって確立された基準部を示している図1の骨の斜視図である。
【図3】図2の基準部を用いて位置決めされる外科コンポーネントを示している斜視図である。
【図4】図1の整形外科ガイドの例示の代替的構成の斜視図である。
【図5】調整機構を有した図1の整形外科ガイドの例示の代替的構成の組立分解斜視図である。
【図6】骨に対して基準部を確立するために使用される図5の整形外科ガイドの斜視図である。
【図7】図6の基準部を用いて位置決めされる外科コンポーネントを示している斜視図である。
【図8】調整機構を有した図1の整形外科ガイドの例示の代替的構成の組立分解斜視図である。
【図9】骨に対して基準部を確立するために使用される図8の整形外科ガイドの斜視図である。
【図10】骨に対して基準部を確立するために使用される図8の整形外科ガイドの斜視図である。
【図11】明確にするために骨が省略されている図10の線11−11に沿った断面図である。
【図12】調整機構を有した図1の整形外科ガイドの例示の代替的構成の組立分解斜視図である。
【図13】図12の整形外科ガイドの正面図である。
【図14】図12の整形外科ガイドの上面図である。
【図15】図12の整形外科ガイドの側面図である。
【図16】骨に対して基準部を確定するために使用される図12の整形外科ガイドの斜視図である。
【図17】図16の基準部を用いて位置決めされる外科コンポーネントを示している斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
2 大腿骨
10 基準ピン
20 整形外科ガイド
21 本体
28 電磁コイル
32 孔
34 孔
36 孔
50 切削ガイド
52 孔
54 孔
56 孔
58 本体
64 スロット
66 スロット
68 スロット
70 スロット
72 スロット
74 ドリル案内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以降に使用する外科コンポーネントの配置を誘導するために該外科コンポーネントと係合可能な基準部を手術部位に対して確立するために手術ナビゲーションシステムと共に使用するための被誘導式整形外科ガイドであって、
手術部位に対して所望の位置に前記整形外科ガイドを配置するために、前記手術ナビゲーションシステムによって追跡されるための被追跡手段と、
前記外科コンポーネントの配置を誘導するために、前記外科コンポーネントが基準部位に係合可能となるように、前記手術部位に対して所望の位置に基準部を確立するための基準部確立手段と、
を備え、前記基準部確立手段が前記被追跡手段と既知の関係で取り付けられていることを特徴とする被誘導式整形外科ガイド。
【請求項2】
前記基準部確立手段は、基準部ガイド部材と、該基準部ガイド部材が平面内で旋回できるように前記基準部ガイド部材と係合する接続リンクと、ベース部材とを備え、前記基準部ガイド部材の位置が前記手術ナビゲーションシステムに指示された通りに前記ベース部材に対して所望の位置に平面内で調整できるように、前記接続リンクが前記ベース部材に取り付けられ、前記平面と平行に摺動するように係合している、請求項1に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項3】
前記基準部ガイド部材は、前記基準部ガイド部材を通る少なくとも一つの孔と、前記少なくとも一つの孔を通して前記手術部位に対して所望の位置に挿入可能な少なくとも一つのピンとを備える、請求項2に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項4】
前記ベース部材は、大腿骨に対する前記基準部ガイド部材の内外方向の位置を調整するために前記接続リンクが前記ベース部材に対して摺動でき且つ大腿骨に対する前記基準部ガイド部材の内外方向の回転位置を調整するために前記接続リンクに対して旋回できるように、遠位大腿骨に隣接して取り付け可能である、請求項2に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項5】
前記被追跡手段は、前記基準部ガイド部材と共に移動するように前記基準部ガイド部材に取り付けられた少なくとも一つのトラッキング要素を備え、前記トラッキング要素は、前記基準部ガイド部材を所望の位置に案内するために、前記手術ナビゲーションシステムによって追跡可能である、請求項2に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項6】
前記トラッキング要素は電磁コイルである、請求項5に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項7】
前記基準部確立手段は、第1の調整軸線を規定するベース部材と、前記第1の調整軸線に沿って並進移動するように取り付けられており且つ第2の調整軸線を規定する接続リンクと、平面内で前記第2の調整軸線周りに旋回するように取り付けられた基準部ガイド部材とを含み、前記第2の調整軸線が前記第1の調整軸線を横切る方向に延びている、請求項1に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項8】
前記第1の調整軸線に対して前記接続リンクをロックし且つ前記第2の調整軸線に対して前記基準部ガイド部材をロックするためのロック手段をさらに備える、請求項7に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項9】
前記第1の調整軸線が前記ベース部材に形成された非円筒形状孔によって規定されており、前記接続リンクが前記第1の調整軸線に沿って並進移動するように前記非円筒形状孔内に取り付けられた非円筒形状シャフトを含み、前記第2の調整軸線が前記接続リンクのサドルによって規定されており、前記基準部ガイド部材が前記サドル内で旋回するようになっている、請求項7に記載の被誘導式整形外科ガイド。
【請求項10】
膝関節に隣接する大腿骨の遠位端部において使用するための外科システムであって、
手術中に物体の位置を追跡するための追跡手段を含む手術ナビゲーションシステムと、
大腿骨の遠位端部に遠位大腿骨切削ガイドを取り付けるための取付手段と、大腿骨の遠位端部に平坦面を切削するために切削器を案内するための案内手段とを含む遠位大腿骨切削ガイドと、
第1の調整軸線に沿って摺動するように前記遠位大腿骨切削ガイドに取り付けられているベース部材と、
第2の調整軸線に沿って摺動するように前記ベース部材に取り付けられている接続リンクと、
基準部ガイド部材と、
を備え、該基準部ガイド部材は、大腿骨の遠位端部に対して基準部を確立するための基準部確立手段と、大腿骨に対して所望の位置への前記基準部ガイド部材の位置決めを誘導するために手術ナビゲーションシステムによって追跡されるための被追跡手段とを含み、前記基準部ガイド部材は、前記基準部ガイド部材の内外方向回転角度を平面内で調整するために前記基準部ガイド部材を第3の調整軸線周りに旋回できるように該第3の調整軸線周りに旋回するように前記接続リンクに取り付けられており、前記接続リンクは、前記基準部ガイド部材の内外方向位置を平面内で調整するために第2の調整軸線に沿って並進移動でき、前記ベース部材は、前記基準部ガイド部材の前後方向位置を平面内で調整するために前記第1の調整軸線に沿って並進移動できるようになっていることを特徴とする外科システム。
【請求項11】
切削器を案内して遠位大腿骨の前面に平坦面を切削するための案内手段と前記基準部ガイド部材によって確立された基準部に係合するための係合手段とを含む前方大腿骨切削ガイドをさらに備える、請求項10に記載の外科システム。
【請求項12】
切削器を案内して遠位大腿骨の後面に平坦面を切削するための案内手段と前記基準部ガイド部材によって確立された基準部に係合するための係合手段とを含む後方大腿骨切削ガイドをさらに備える、請求項10に記載の外科システム。
【請求項13】
前記追跡手段は、前記整形外科ガイドの位置を検出して三角法によって測定するための複数のセンサを含む、請求項10に記載の外科システム。
【請求項14】
前記被追跡手段は前記整形外科ガイドに取り付けられた電磁コイルであり、該電磁コイルが前記追跡手段によって検出可能な信号を生成する、請求項10に記載の外科システム。
【請求項15】
前記基準部確立手段は、手術部位の骨に孔を形成するときにドリルを案内するためのドリルガイドを含む、請求項10に記載の外科システム。
【請求項16】
前記基準部確立手段は、手術部位に隣接してピンを配置するように誘導するために前記整形外科ガイドに形成された少なくとも一つの孔である、請求項10に記載の外科システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−130315(P2006−130315A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318440(P2005−318440)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(503322582)ジンマー テクノロジー,インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】