説明

裁割機

【課題】 刃物に大きな負荷をかけることなくワークを円滑に裁ち割ることができる裁割機を実現する。
【解決手段】 本裁割機Aは、刃先を下方に向けて傾斜姿勢となってワークテーブルTの上方に設置された両刃の刃物1と、ワークWを載せたワークテーブルTを刃物1に向けて押上げる昇降機構2と、刃物1を水平方向へスイング動作させて傾斜姿勢から水平姿勢へと変位させながらワークWを裁断するように動作させるリンク機構5(刃物制御機構)とを備える。
これにより、ワークテーブルTが上昇するに従って刃物1がスイング動作し傾斜姿勢から水平姿勢に変位しながらワークWを裁断して行くこととなる。従って、刃物1の刃先全体が一度にワークWに当てられることがなく刃物1への負荷が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定枚数の用紙類を積層した手帳や書籍等のワークを2分割に裁断する裁割機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の裁割機は、水平方向へスライド自在に設けた刃物と、ワークテーブルを押上げる押上げ装置とを備え、押上げ装置でワークテーブル上のワークを刃物の刃先全体に押付けながら刃物を水平方向にスライドさせてワークを裁ち割るようにしていた。
【特許文献1】実開昭58−121695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の裁割機では、刃物を一度にワークに当てるため、刃物には大きな負荷がかかり、ワークによっては破れることがあり、しかも刃先がよれて真っ直ぐ切れ難いこともあった。また、刃物に一度に大きな負荷が加わるため、刃物をスライド動作させるのに大きな動力を要した。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、刃物に大きな負荷をかけることなくワークを円滑に裁ち割ることができる裁割機を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る裁割機は、一定枚数の用紙類を積層した手帳や書籍等のワークを2分割に裁断する装置であって、刃先を下方に向け且つ傾斜姿勢に保持した状態でワークテーブルの上方に設置された両刃の刃物と、ワークを載せたワークテーブルを刃物に向けて押上げる昇降機構と、刃物を水平方向へスイング動作させて傾斜姿勢から水平姿勢へと変位させながらワークを裁断するように動作させる刃物制御機構とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
これにより、昇降機構によってワークテーブルが上昇されると、ワークには最上部の後側から傾斜姿勢の刃物が入刃され、ワークテーブルが上昇するに従って刃物がスイング動作し傾斜姿勢から水平姿勢に変位しながらワークを裁断して行く。そして、ワーク最下部まで裁断した時点で刃物が水平姿勢となって刃先がワークテーブル等に当接され、ワークが2分割に裁ち割られる。
従って、刃物の刃先全体を一度にワークに当てることなく傾斜姿勢から徐々に入刃させてワークを2つに裁ち割ることとなり、刃物に対して大きな負荷がかかることがない。
【0007】
(2)また、ワークテーブルの左右にガイド爪が設置され、このガイド爪は、少なくとも刃物の刃先の高さ付近までは直線部となっており、それより上部は刃物の刃先角度と等しいか、それより大きい逃げ角を有して外方へ傾斜した傾斜部となっているように構成してもよい。
これにより、両刃の刃物で切断されたワークは、刃先の角度に沿って刃物の左右で傾いて円滑に逃げて行き、刃物のワークへの入刃が円滑に行われてワークの切断が円滑に行われる。
【0008】
(3)また、刃物は、スイング動作終了時点で水平姿勢に保持調節できるように刃物ホルダーにクランプによって固定されているように構成してもよい。
スイング動作終了時点で刃物がワークテーブル面と平行な水平姿勢となるように姿勢調節する必要がある。しかるに、刃物は、刃物ホルダーにクランプ保持させることで、テスト運転で刃物を後方へスイング動作させ、且つ昇降機構によってワークテーブルを上昇させて刃先全体がワークテーブル上に当接されるように姿勢調節して刃物のクランプを固定させることができる。従って、刃物の姿勢調節が非常に簡単に行える利点がある。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、刃物の刃先全体を一度にワークに当てることなく傾斜姿勢から徐々に入刃させてワークを2つに裁ち割るようにするので、刃物に対して大きな負荷がかかることがない。従って、ワークを引きずって破くこともなく、また、刃先を真直ぐな状態に保ってワークを2つに裁ち割ることができ、切断部分を綺麗に仕上げることができる。また、刃物を可動させる動力が小さく済み、省力化を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、裁割機Aは、一定枚数の用紙類を積層した手帳や書籍等のワークWを2分割に裁断する装置であって、刃先を下方に向けて傾斜姿勢となってワークテーブルTの上方に設置された両刃の刃物1と、ワークWを載せたワークテーブルTを刃物1に向けて押上げる昇降機構2と、刃物1を水平方向へスイング動作させて傾斜姿勢から水平姿勢へと変位させながらワークWを裁断するように動作させる刃物制御機構とを備える。
【0011】
また、この裁割機Aには、ワークテーブルTに向けてワークWを側方から送り込む送込み機構3と(図2参照)、ワークテーブルTの前方に配置されて裁断されたワークWを送り出す送出し機構4とが設けられている。
【0012】
刃物1は、刃物ホルダー10にクランプ保持され、基台Fにスイング動作自在に設置されている。刃物ホルダー10は、長さの異なる2本のアーム11,12によって前後で軸支されて基台Fに吊持されている。この前後のアーム11,12のうち前側のアーム11の長さが短く形成されており、従って、刃物1は、前側が上向きの傾斜姿勢となっている。そして、この刃物1は、後方へスイング動作させると次第に傾斜角度βが小さくなってスイング動作終了時にはワークテーブル面と平行な水平姿勢とされる。
【0013】
なお、スイング動作終了時点で刃物1がワークテーブル面と平行な水平姿勢となるように姿勢調節する必要がある。しかるに、刃物1は、刃物ホルダー10にクランプ保持されているので(図3参照)、テスト運転で刃物1を後方へスイング動作させ、且つ昇降機構2によってワークテーブルTを上昇させて刃先全体がワークテーブルT上に当接されるように水平に姿勢調節して刃物1のクランプを固定させることで、刃物1の姿勢調節が非常に簡単に行える利点がある。
【0014】
昇降機構2は、例えば、油圧シリンダーによって構成されており、ワークテーブルTの下面に連結されている。この昇降機構2によってワークWを裁断する時にはワークテーブルT上のワークWを刃物1に押し当てるようにワークテーブルTを上昇させ、ワーク裁断後はワークテーブルTを降下させて元の下方位置に復帰させる。
【0015】
また、刃物1と昇降機構2とはリンク機構5によって連結されており、両者が連動するように構成されている。従って、このリンク機構5によって、昇降機構2によるワークWの上昇と刃物1のスイング動作とがタイミングよく行うことができる。
【0016】
このリンク機構5は、L型アーム50と刃物ホルダー10に軸支されたリンクアーム51とを備え、L型アーム50は、中央の屈曲部分で回動可能に基台Fに軸支されている。そして、L型アーム50の一端には刃物ホルダー10の後部に軸支されたリンクアーム51と揺動可能に軸支され、他端には昇降機構2(油圧シリンダー)の昇降可動部に揺動可能に軸支されている。これにより、昇降機構2の昇降可動部が上昇すると、L型アーム50が揺動して刃物ホルダー10を後方へ引っ張り、刃物1が傾斜姿勢から水平姿勢に変位しながらスイング動作することとなる。
なお、このリンク機構5と上記刃物ホルダー10を吊持する2本のアーム11,12とが上記刃物制御機構を構成する。
【0017】
また、図2に示すように、この裁割機Aには、ワークテーブルT上のワークWがバラバラに崩れないように、ワークテーブルTの左右位置にピン状のガイド爪6(6a,6b)が設置されると共に、ワークテーブルTの後方位置に押出プレート7とストッパ板8が設置されている。
【0018】
これらガイド爪6a,6bは、図3に示すように、少なくとも刃物1の刃先の高さ付近までは直線部61となっており、それより上部は刃物1の刃先角度αと等しいか、それより大きい逃げ角θを有して外方へ傾斜した傾斜部62となっている。従って、両刃の刃物1で切断されたワークWは、刃先の角度αに沿って刃物1の左右で傾いて円滑に逃げて行き、刃物1のワークWへの入刃が円滑に行われてワークWの切断が円滑に行われる(図3(b)参照)。
【0019】
また、ワークテーブルTの左右側部は、図4に示すように、串歯状に形成されており、その凹部Uの各々にピン状のガイド爪6が挿入配置されている。そして、左右のガイド爪6a,6bは、操作ハンドルhに連結されたボールネジ機構Nで連動されている(図2参照)。従って、操作ハンドルhを回動させることで左右のガイド爪6a,6bの間隔がワーク幅に合わせて広狭自在となる。
【0020】
ストッパ板8は、刃物1の後方側へのスイング動作に引きずられてワークWが後方へ崩れるのを防止するようにワークWを受け止め、ワークWの裁断が円滑に行われるようにする(図1、図2参照)。そのため、図5に示すように、このストッパ板8には刃物1の断面形状に沿ったV字状の切欠き80が設けられており、刃物1がこの切欠き80を通過して後方へのスイング動作が支障なく行われるようになっている。
【0021】
押出プレート7は、プッシュ機構70によって前方へ繰り出すように進退自在に構成されており、裁断された後のワークWを前方へ押出して送出し機構4へと送り込むようにする(図1参照)。
【0022】
また、ワークテーブルT上には、図6に示すように、刃物1の刃先が当接される刃受け部材9が取付けられている。この刃受け部材9は、プラスチック製で断面略正方形形状をした角棒状に形成されている。そして、刃受け部材9は、その中央部よりも側方部に刃物1の刃先が当接されるようにワークテーブルTに設置されている(図4中の一点鎖線も参照)。従って、刃受け部材9は、裁断によって刃先が何度も当接されて表面の刃受け面90が荒らされると左右位置を反転させ、左右部位とも荒らされると回転させて他の面を刃受け面90とすることで、4面につき左右部位で合計8箇所にわたって刃先受けとして使用できる利点がある。
【0023】
以上の構成の実施の形態による裁割機Aによれば、昇降機構2によってワークテーブルTが上昇されると、ワークWには最上部の後側から傾斜姿勢の刃物1が入刃され、ワークテーブルTが上昇するに従って刃物1が後方へスイング動作し傾斜姿勢から水平姿勢に変位しながらワークWを裁断して行く。そして、ワーク最下部まで裁断した時点で刃物1が水平姿勢となって刃物1の刃先がワークテーブルTの刃受け部材9に当接され、ワークWが2分割に裁ち割られる。
【0024】
このように、刃物1の刃先全体を一度にワークWに当てることなく傾斜姿勢から徐々に入刃させてワークWを2つに裁ち割るようにするので、刃物1に対して大きな負荷がかかることがない。従って、ワークWを引きずって破くこともなく、また、刃先を真直ぐな状態に保ってワークWを2つに裁ち割ることができ、切断部分を綺麗に仕上げることができる。そして、刃物1への負荷が軽減されることから、例えば、4mm厚以下(例えば、2〜3mm厚)の薄い刃物1を使用することができ、これによって、一層ワーク切断部分が真直ぐに揃った綺麗な仕上げが可能となる。また、刃物1を可動させる昇降機構2の動力が小さく済み、省力化を図ることもできる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されず適宜設計変更を施すことが可能である。例えば、刃物1のスイング動作は、主に昇降機構2と連動させたリンク機構5で行っていたが、独立したリンク機構、油圧シリンダーや送りネジ機構等その他の刃物制御機構によって動作させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態による裁割機の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施の形態による裁割機の全体構成を示す正面図である。
【図3】裁割機の刃物によってワークを裁断するときの状態を示す模式図である。
【図4】ワークテーブルを上から見た平面図である。
【図5】ワークテーブルの後部に設置したストッパ板を示す平面図である。
【図6】ワークテーブルに設置した刃受け部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 刃物
2 昇降機構
3 送込み機構
4 送出し機構
5 リンク機構
6 ガイド爪
7 押出プレート
8 ストッパ板
10 刃物ホルダー
11 前側の短いアーム
12 後側のアーム
13 リンクアーム
50 L型アーム
A 裁割機
F 基台
T ワークテーブル
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定枚数の用紙類を積層した手帳や書籍等のワークを2分割に裁断する装置であって、
刃先を下方に向け且つ傾斜姿勢に保持した状態でワークテーブルの上方に設置された両刃の刃物と、
ワークを載せたワークテーブルを刃物に向けて押上げる昇降機構と、
刃物を水平方向へスイング動作させて傾斜姿勢から水平姿勢へと変位させながらワークを裁断するように動作させる刃物制御機構とを備えることを特徴とする裁割機。
【請求項2】
請求項1に記載の裁割機において、
ワークテーブルの左右にガイド爪が設置され、このガイド爪は、少なくとも刃物の刃先の高さ付近までは直線部となっており、それより上部は刃物の刃先角度と等しいか、それより大きい逃げ角を有して外方へ傾斜した傾斜部となっている裁割機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の裁割機において、
刃物は、スイング動作終了時点で水平姿勢に保持調節できるように刃物ホルダーにクランプによって固定されている裁割機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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