説明

裁断装置

【構成】 裁断装置は、裁断テーブルとピックアップテーブルと、シート材を搬送するコンベヤと、シート材を裁断する裁断ヘッドと、ピックアップテーブル上のシート材にパーツ情報を投影する投影装置、とを備え、シート材の裁断テーブルからピックアップテーブルへの移動と同期しかつ同じ速度で、投影装置からシート材へ投影するパーツ情報を移動させる。
【効果】 シート材の移動と並行してパーツをピックアップできるので、作業時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は裁断装置に関し、特に裁断テーブルからピックアップテーブルへシート材が移動している間も、裁断済みのパーツをピックアップできる裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
裁断装置では、裁断テーブル上で裁断ヘッドをXYの2方向に移動させて、皮革、布帛等のシート材を裁断する。裁断済みのシート材をコンベヤで裁断テーブルからピックアップテーブルへ搬送して、パーツをシート材からピックアップする。複数のサイズのパーツを同じシート材から切り出すことがあるので、パーツのサイズが分かるマークが有ると便利である。またパーツの種類毎に仕分けるので、パーツの種類毎のマークがあると便利である。これらの点に関し、特許文献1:特表平9−512215(WO95/29046)は、パーツのサイズ及び種類を表すマークをプロジェクタからシート材に投影することを提案している。裁断では、例えばシート材を複数枚積層して裁断し、裁断が終わるとシート材をピックアップテーブルへ搬出するのと同時に、裁断テーブルへ次のシート材の束を搬入する。プロジェクタは固定であり、プロジェクタからマークを投影してピックアップすると、ピックアップテーブル上をシート材が移動している間はピックアップができない。
【0003】
特許文献2:特開2009−160666は、長尺のシート材を延反テーブルから裁断テーブルを介してピックアップテーブルまで搬送し、シート材をコンベヤで移動させながら裁断することを提案している。この手法では、シート材は絶えず移動しているので、固定のプロジェクタからマークを投影することが難しい。このため、シート材にパーツの種類、サイズ等のラベルを貼り付ける、あるいはシート材を覆うカバー等にパーツの種類、サイズ等を手書きすることも考えられる。しかしラベルプリンタを設けるのは、コストとラベルを貼り付ける手間がかかる。カバーにパーツの情報を手書きするのは手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−512215
【特許文献2】特開2009−160666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、ピックアップテーブル上をシート材が移動している間も、パーツのピックアップができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、裁断テーブルとピックアップテーブルと、裁断テーブルからピックアップテーブルへシート材を搬送するコンベヤと、裁断テーブル上を移動してシート材を裁断する裁断ヘッドと、ピックアップテーブル上のシート材にパーツ情報を投影する投影装置、とを備えた裁断装置において、
シート材の裁断テーブルからピックアップテーブルへの移動と同期しかつ同じ速度で、投影装置からシート材へ投影するパーツ情報を移動させるための同期手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、シート材の移動と並行してパーツをピックアップできるので、作業時間を短縮できる。なおシート材を固定して裁断する場合でも、シート材をピックアップテーブルへ移動させる時間を、ピックアップに利用できる。
【0008】
好ましくは、同期手段は、シート材の移動と同期してかつ同じ速度で、投影装置を移動させる。このようにすれば、パーツ情報をシート材と確実に同期してかつ同速で移動させることができる。
【0009】
あるいは同期手段は、シート材の移動と同期して、投影装置からシート材上に投影する画像内で、パーツ情報をシート材と同じ速度で移動させる。このようにすると投影装置の移動機構を設けずに、画像処理等でパーツ情報を移動させることができる。
【0010】
好ましくは、裁断装置はシート材を裁断テーブルからピックアップテーブルへ移動させながら、シート材を裁断するために、裁断ヘッドを駆動するための手段を備えている。このようにすると、裁断と並行してピックアップできるので、作業時間をさらに短縮できる。
【0011】
また好ましくは、裁断テーブル上のシート材へ投影する裁断情報を示す裁断画像の発生手段を設けると共に、前記投影装置は裁断テーブル上へ裁断画像を投影自在で、かつ裁断画像の位置を作業者が変更することにより、裁断情報をシート材に対して位置合わせするための位置合わせ手段、を設ける。このようにすると、1個の投影装置でパーツ情報の投影と裁断情報の投影とができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の裁断装置の平面図
【図2】実施例での制御系のブロック図
【図3】実施例での裁断アルゴリズムを示すフローチャート
【図4】変形例の裁断装置の平面図
【図5】変形例での裁断アルゴリズムを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
【実施例】
【0014】
図1〜図3に、実施例の裁断装置2を示し、図4,図5に変形例の裁断装置3を示す。各図において、4は裁断テーブル、6はピックアップテーブル、8は延反テーブルで、延反テーブル8は設けなくても良い。裁断テーブル4とピックアップテーブル6は、物理的には一体のテーブルを裁断エリアとピックアップエリアとに分割したものでもよい。10はプロジェクタで、裁断テーブル4上の図示しないシート材に裁断情報を投影し、ピックアップテーブル6上の同様に図示しないシート材に、パーツ情報を投影する。プロジェクタは単焦点レンズを用いたものでもズームレンズを用いたものでも良い。なおプロジェクタ10に代え、2個あるいは3個などの波長の異なるレーザを設けて、レーザビームの投影位置を高速で移動させることにより、裁断情報やパーツ情報を投影しても良い。プロジェクタ10はモータ14によりガイドレール12に沿って移動し、その一端は裁断テーブル4に面した位置に、他端はピックアップテーブル6に面した位置にあり、移動の機構はボールネジ、ベルト、チェーンなどである。なおプロジェクタ10にモータ14を取り付けて、自走させても良い。
【0015】
16は裁断ヘッドで、図示しない裁断刃を備え、アーム18に沿って図のY方向に移動し、アーム18は図のX方向に移動する。Xはシート材の送り方向で、Yはシート材の短辺方向である。また延反テーブル8上には延反機本体20があり、シート材を延反して延反テーブル8上に配置する。ピックアップテーブル6の適宜の位置に、あるいは作業者が持つハンディコントローラなどに、完了スイッチ22を設け、1回の裁断分のピックアップが完了したことを入力できるようにする。24は制御部で、適宜のコンピュータからなり、裁断装置2を制御する。34〜36はコンベヤで、34は延反テーブルのコンベヤ、35は裁断テーブルのコンベヤ、36はピックアップテーブルのコンベヤである。
【0016】
図2に、裁断装置2の制御系を示す。図1の制御部24は、裁断パターン発生部30,操作パネル31,投影画像発生部32,コンベヤ制御部33,裁断ヘッドドライブ38,プロジェクタ移動部39を備えている。裁断パターン発生部30はシート材を裁断する裁断パターンを発生し、操作パネル31は例えば感圧パネルなどから成り、裁断情報をパネル上に表示する。そして作業者が指、マウスなどで裁断情報を操作パネル31上でドラッグすると、それに伴ってシート材上に投影する裁断情報を移動させる。裁断情報とは、皮革などでパーツ毎の位置合わせが必要な場合、裁断する個々のパーツの形状とその配置である。この場合、個々のパーツを作業者が操作パネル31上でドラッグし、ドラッグした結果を、プロジェクタ10から皮革上に投影することにより、パーツ毎に裁断する位置を位置決めする。チェック柄などの柄合わせの場合、柄合わせの基準点を操作パネル31上とシート材上とに表示し、操作パネル31上で基準点をドラッグすることにより柄合わせを行う。またシート材の長手方向は図1のX方向と必ずしも平行でない。そこで図1のX方向に沿った例えば2点を操作パネル31上とシート材上とに表示し、操作パネル31上で2点をドラッグすることにより、シート材の長手方向を教示する。以上のように、操作パネル31により裁断情報をシート材に対し位置合わせする。
【0017】
投影画像発生部32はプロジェクタ10が投影する画像を発生し、この画像は裁断情報の画像とパーツ情報の画像である。裁断情報の画像は、前記のように、裁断するパーツの形状と位置、裁断の基準点、X軸に沿った2点などである。パーツ情報は裁断したパーツ毎の仕分け方を指定する情報で、例えばパーツのサイズと種類、あるいはその一方を示す情報から成り、例えばパーツの種類とサイズを示すマーク等からなり、例えば種類を示すマークとパーツの形状とを組合せ、パーツ形状の大小でサイズを表示しても良い。またパーツの種類とサイズを記号化したマークを表示しても良い。さらにプロジェクタ10がカラープロジェクタの場合、サイズとパーツの種類とに応じて、色相と彩度などでパーツの種類とサイズを表示してもよい。コンベヤ制御部33はコンベヤ34〜36を制御し、裁断ヘッドドライブ38は、裁断ヘッド16を駆動すると共に、XY方向に沿って移動させ、プロジェクタ移動部39は、モータ14により、プロジェクタ10をガイドレール12に沿って移動させる。
【0018】
図3に実施例での裁断手順を示す。延反テーブル8から1回の裁断分のシート材が裁断テーブル4上に到着すると各コンベヤを停止し(ステップ1)、プロジェクタ10からシート材上へ裁断情報を投影する(ステップ2)。裁断情報を用いて柄合わせやパーツの位置合わせ、X軸方向の傾き補正などを行い(ステップ3)、これらが終了すると裁断を開始し、裁断ヘッド16をXY方向に沿って移動させる。またコンベヤ34〜36を起動し、プロジェクタ10をモータ14により移動させ、ピックアップ用のマーク、即ちパーツ情報をシート材上に投影する。この時、プロジェクタ10はシート材と同じ方向に同じ速度で移動し、パーツ情報自体は例えば一定でも良く、あるいはピックアップテーブル6へシート材が搬入された長さに応じてパーツ情報を増すようにしても良い。なお裁断情報がパーツの形状を含んでいる場合、パーツ情報はこの形状にパーツの種類やサイズのマークを付加した画像でも良い。また裁断と並行して、次のシート材を裁断テーブル4へ搬入する(ステップ4)。
【0019】
このようにして、裁断テーブル4上で裁断を行うのと同期して、ピックアップテーブル6上でパーツ情報をシート材に投影し、パーツをピックアップする。そしてコンベヤ34〜36は、次の1回分のシート材が裁断テーブル上に到着すると停止する。これと同時に、裁断済みのシート材はピックアップテーブルへの移動を完了する(ステップ5)。作業者はピックアップを完了すると、完了スイッチ22からその旨を入力し、プロジェクタ10を裁断テーブル4上の位置に早戻りさせる(ステップ6)。ステップ5とステップ6の実行順序は任意であるが、完了スイッチ22が押されるまで、次の裁断情報を投影できないので、次の裁断が始まらない。なお完了スイッチの代わりに遅れスイッチを設けて、このスイッチにタッチすると、プロジェクタの早戻りを所定時間ずつ遅らせてもよい。プロジェクタ10をガイドレール12に沿って、シート材の移動と同じ速度で同じ方向に移動させることにより、裁断と同時にピックアップを行うことが可能になる。
【0020】
プロジェクタ10を移動させる代わりに、プロジェクタの位置を固定し、投影画像内でのパーツ情報(マーク等)の位置を移動させても良い。このような変形例を図4,図5に示し、3は新たな裁断装置で、11は新たなプロジェクタである。他の部材は図1〜図3の実施例と同様で、プロジェクタ11は裁断テーブル4に裁断情報を投影自在で、ピックアップテーブル6にパーツ情報を投影自在である。裁断テーブル4からピックアップテーブル6へのシート材の移動と同期して、投影画像中でのパーツ情報の位置を、シート材と同じ速度で移動させる。図5はそのためのアルゴリズムを示し、図3と共通のステップは同じステップである。ステップ10で、パーツ情報でのピックアップ用のマークを、シート材と同方向に、シート材上で同じ速度で移動するように移動させる。またコンベヤ34〜36は、次の1回分のシート材が裁断テーブル上に到着すると停止する。これと同時に、裁断済みのシート材はピックアップテーブルへの移動を完了する(ステップ5)。ステップ11で完了スイッチが入力されると、ピックアップ用のマークの投影を停止する。また次回の裁断分の位置合わせ、柄合わせ、X方向の教示等が終了し、裁断を再開するとパーツ情報の投影を再開する。図4,図5の裁断装置3では、裁断情報とパーツ情報を同時に投影できるので、裁断テーブル4上で柄合わせなどを行いながら、ピックアップできる。
【0021】
プロジェクタ10,11には、焦点距離が短いため、低い高さから広い範囲に投影できる単焦点レンズを用いたものが好ましい。実施例では裁断とピックアップとを同時に行うことを示したが、シート材を固定したまま裁断ヘッド16のみを移動させて裁断し、シート材をピックアップテーブル6へ移動させるのと同時にパーツ情報の移動を開始し、この間にピックアップを行うようにしても良い。シート材がピックアップテーブル6へ移動し終わった時点で、ピックアップが完了していない場合、ピックアップの完了まで柄合わせなどを待つか、プロジェクタ10を一旦早戻りさせて柄合わせなどを行った後に、再度移動させてパーツ情報を投影しても良い。
【0022】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) シート材の移動と並行してパーツをピックアップできるので、作業時間を短縮できる。
(2) シート材を移動させながら裁断する場合、裁断と並行してピックアップできるので、作業時間をさらに短縮できる。
(3) シート材を固定して裁断する場合でも、シート材をピックアップテーブル6へ移動させる時間を、ピックアップに利用できる。
(4) プロジェクタ10,11をパーツ情報の投影と裁断情報の投影とに兼用すると、1個の投影装置でよい。
(5) ピックアップテーブル6上に1回分のシート材を展開せずにピックアップできるので、ピックアップテーブル6の長さを1回分のシート材よりも短くできる。

【符号の説明】
【0023】
2,3 裁断装置
4 裁断テーブル
6 ピックアップテーブル
8 延反テーブル
10,11 プロジェクタ
12 ガイドレール
14 モータ
16 裁断ヘッド
18 アーム
20 延反機本体
22 完了スイッチ
24 制御部
30 裁断パターン発生部
31 操作パネル
32 投影画像発生部
33 コンベヤ制御部
34〜36 コンベヤ
38 裁断ヘッドドライブ
39 プロジェクタ移動部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断テーブルとピックアップテーブルと、裁断テーブルからピックアップテーブルへシート材を搬送するコンベヤと、裁断テーブル上を移動してシート材を裁断する裁断ヘッドと、ピックアップテーブル上のシート材にパーツ情報を投影する投影装置、とを備えた裁断装置において、
シート材の裁断テーブルからピックアップテーブルへの移動と同期しかつ同じ速度で、前記投影装置からシート材へ投影するパーツ情報を移動させるための同期手段を設けたことを特徴とする、裁断装置。
【請求項2】
前記同期手段は、シート材の移動と同期してかつ同じ速度で、投影装置を移動させることを特徴とする、請求項1の裁断装置。
【請求項3】
前記同期手段は、シート材の移動と同期して、投影装置からシート材上に投影する画像内で、パーツ情報をシート材と同じ速度で移動させることを特徴とする、請求項1の裁断装置。
【請求項4】
シート材を裁断テーブルからピックアップテーブルへ移動させながら、シート材を裁断するために、前記裁断ヘッドを駆動するための手段を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの裁断装置。
【請求項5】
裁断テーブル上のシート材へ投影する裁断情報を示す裁断画像の発生手段を設けると共に、前記投影装置は裁断テーブル上へ裁断画像を投影自在で、かつ裁断画像の位置を作業者が変更することにより、裁断情報をシート材に対して位置合わせするための位置合わせ手段、を設けたことを特徴とする、請求項2または3の裁断装置。
【請求項6】
裁断テーブル上のシート材へ投影する裁断情報を示す裁断画像の発生手段を設けると共に、前記投影装置は裁断テーブル上へ裁断画像を投影自在で、かつ裁断画像の位置を作業者が変更することにより、裁断情報をシート材に対して位置合わせするための位置合わせ手段、を設けたことを特徴とする、請求項4の裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−125977(P2011−125977A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288267(P2009−288267)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】