説明

裁断装置

【課題】従来よりも小さいスペースに設置できる裁断装置を提供すること。
【解決手段】裁断装置1は、布地6を支持する矩形の支持面21を有する裁断テーブル2と、裁断テーブル2の支持面21上を平面方向に駆動される裁断ユニット3を備える。裁断ユニット3は、裁断テーブル2の一方の短辺に、支持面21と略同じ高さに設けられた支持面レール22と、裁断テーブル2の他方の短辺に、支持面21よりも高い位置に掛けられた高架レール26と、支持面レール22と高架レール26の間に、上記支持面21と平行に掛け渡された移動梁32と、裁断刃を内蔵して移動梁32に沿って移動するカッターヘッド33を有する。高架レール26は、裁断テーブル2の他方の短辺の前端と後端に設けられた前後の支柱24,25で支持され、高架レール26の下方に、支持面21に載置される布地6を挿通する挿通隙間Sが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持面上にシート材を支持して裁断ユニットで裁断を行う裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被服用の布地を裁断してパターンピースを作製する裁断装置として、プロッタ型の裁断装置がある(例えば、特許文献1参照)。この種の裁断装置は、図4に示すように、布地を支持する矩形の支持面21を有する裁断テーブル102と、裁断テーブル102の支持面21上を平面方向に駆動される裁断ユニット103を備えたものが知られている。裁断ユニット103は、矩形の支持面21の長辺に沿って裁断テーブル102の縁部に設けられた2つのレール22,22と、これらのレール22に沿って走行する2つのキャリア131,131と、これらのキャリア131の間に掛け渡されてレール22に沿って移動する移動梁133と、裁断刃を内蔵して移動梁133に沿って移動するカッターヘッド134を有して構成されている。この裁断装置100は、ノート型PC(パーソナルコンピュータ)で形成された制御装置4に、パターンピースの裁断パターンを表す裁断データが入力され、この裁断データに基づいて、カッターヘッドを駆動しながら裁断刃を作動させて布地を裁断して、パターンピースを作製するようになっている。
【0003】
この裁断装置100は、布地がロール状に巻回されたロール体61から、一連の裁断工程で必要な長さの布地6を、裁断テーブル21の支持面上に引き出して載置するように構成されている。上記ロール体61を支持するロール支持部23は、裁断テーブル102の支持面21の短辺に設置されており、このロール支持部23は、裁断テーブル102の短辺の両端から支持面21の長手方向に夫々延出する2つの支持アーム231,231を有している。布地6から裁断するパターンピース81が比較的大きい場合、布地6が支持面21の長辺に沿ってロール体61から長く引き出され、支持面21の長辺にパターンピース81の長手方向が一致するように、制御装置4で裁断データが調整されて裁断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−264571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の裁断装置100は、裁断テーブル102の支持面21の短辺にロール支持部23が設置されているので、長手方向の寸法が大きく、広い設置スペースが必要となる問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、従来よりも小さいスペースに設置できる裁断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の裁断装置は、シート材を支持する矩形の支持面を有する矩形の裁断テーブルと、この裁断テーブルの支持面上を平面方向に駆動される裁断ユニットとを備える裁断装置において、
上記矩形の裁断テーブルの隣り合う2つの辺に、上記支持面にシート材を供給するための供給構造が夫々設けられていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、比較的小さいパターンピースを裁断する場合は、矩形の裁断テーブルの長辺に設けられた供給構造により、シート材を短辺と平行方向に供給して支持面上に配置する。一方、比較的大きいパターンピースを裁断する場合は、矩形の裁断テーブルの長辺に隣り合う短辺に設けられた供給構造により、シート材を長辺と平行方向に供給して支持面上に配置する。このように、パターンピースの大きさに応じてシート材を供給する方向を選ぶことができるので、シート材を支持する支持面を従来よりも小さくできる。したがって、裁断テーブルを従来よりも小さくでき、その結果、この裁断装置は、従来よりも小さいスペースに設置できる。
【0009】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断テーブルの一方の辺に設けられた供給構造は、シート材のロール体を支持するロール支持部であり、
上記裁断テーブルの他方の辺に設けられた供給構造は、上記裁断ユニットとの間に形成されて上記支持面に供給されるシート材が挿通される隙間であって、上記支持面と実質的に同一平面上に形成された挿通隙間である。
【0010】
上記実施形態によれば、ロール支持部に支持されたロール体からシート材を引き出して支持面上に配置することができると共に、ロール体から引き出す方向と直角をなす方向に、挿通隙間にシート材を挿通させて支持面上に配置することができる。
【0011】
一実施形態の裁断装置は、上記ロール支持部は、上記裁断テーブルの長辺に設けられ、
上記挿通隙間は、上記裁断テーブルの短辺に設けられている。
【0012】
上記実施形態によれば、ロール支持部を裁断テーブルの長辺に設けるので、ロール支持部が支持するロール体は短辺方向に突出する。また、挿通隙間を裁断テーブルの短辺に設けるので、長辺方向への突出を無くすることができる。したがって、裁断テーブルに設置する機器を、平面視においてコンパクトにでき、その結果、裁断装置の設置スペースを小さくできる。
【0013】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断ユニットは、
上記裁断テーブルの一方の短辺に、支持面と略同じ高さに設けられた支持面レールと、
上記裁断テーブルの他方の短辺に、支持面よりも高い位置に掛けられた高架レールと、
上記支持面レールと高架レールの間に、上記支持面と平行に掛け渡されて上記支持面レール及び高架レールに沿って移動する移動梁と、
裁断刃を内蔵して上記移動梁に沿って移動するカッターヘッドとを有し、
上記高架レールの下方に上記挿通隙間が形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、上記裁断ユニットにより、上記支持面と平行にカッターヘッドを駆動し、上記支持面上に設置されたシート材を裁断することができる。ここで、上記シート材は、上記裁断テーブルの長辺のロール支持部から供給することができると共に、上記裁断テーブルの短辺の挿通隙間から供給することができる。したがって、プロッタ型の裁断装置において、パターンピースの大きさに応じてシート材の供給方向を適宜選択可能に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の裁断装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施形態の裁断装置を長辺側から見た様子を示す正面図である。
【図3】本実施形態の裁断装置を示す平面図である。
【図4】従来の裁断装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施形態の裁断装置を模式的に示す斜視図である。実施形態の裁断装置1は、矩形の支持面21を有する裁断テーブル2と、裁断テーブル2の支持面21上を平面方向に駆動される裁断ユニット3を備える。
【0018】
裁断テーブル2は、シート材としての布地6を支持する支持面21を備え、この支持面21の上で平面方向に駆動される裁断ユニット3が、布地6を裁断パターン82に沿って裁断するように構成されている。支持面21は、基布にパイル毛が植えられてなるモケット状の織物で形成されており、裁断を行なう際に、図示しないブロワで支持面21の下側から支持面21を通して空気を吸引し、これにより布地6を支持面21に固定するように形成されている。
【0019】
裁断ユニット3は、裁断テーブル2の一方の短辺に、支持面21と略同じ高さに設けられた支持面レール22と、裁断テーブル2の他方の短辺に、支持面21よりも高い位置に掛けられた高架レール26と、支持面レール22と高架レール26の間に、上記支持面21と平行に掛け渡されて上記支持面レール22及び高架レール26に沿って移動する移動梁32と、裁断刃を内蔵して上記移動梁32に沿って移動するカッターヘッド33を有する。カッターヘッド33は、布地を表面側の回転刃と、裏面側の下刃とのせん断作用により布地を切断するように形成されている。なお、カッターヘッド33は、鋸状のカッターを往復駆動して布地を切断するものでもよく、布地の種類や枚数に応じた種々の切断方式のものを設定できる。
【0020】
裁断ユニット3の高架レール26は、裁断テーブル2の他方の短辺の前端に設けられた前支柱24と、裁断テーブル2の他方の短辺の後端に設けられた後支柱25によって支持されている。上記高架レール26の下方であって、支持面21の延長平面との間に、支持面21に載置される布地6を挿通するための挿通隙間Sが形成されている。この挿通隙間Sは、後述するように、支持面21に布地6を供給するための供給構造として作用する。支持面レール22には、キャリア31が支持面レール22に沿って走行自在に設置され、このキャリア31に一端が連結された移動梁32の他端が、上記高架レール26に移動自在に接続されている。
【0021】
この裁断装置1は、支持面21に布地6を供給するための供給構造として、布地6のロール体61を支持するロール支持部23が裁断テーブル2の長辺に設けられている。ロール支持部23は、裁断テーブルの長辺の両端に固定されて短辺方向に突出する2つの支持アーム231,231を有する。図3に示すように、支持面レール22側の支持アーム231は、平面視において支持面レール22の延長線上に配置されている一方、高架レール26側の支持アーム231は、平面視において高架レール26よりも支持面21の長手方向の内側に配置されている。支持アーム231の先端部には、ロール体61の軸を受けて回転自在に支持する軸支部が設けられている。
【0022】
裁断装置1は、裁断テーブル2に接続された市販のノート型PCで構成された制御装置4により、裁断ユニット3の動作を制御する。制御装置4は、操作者に操作されるコントローラ41に接続されており、操作者によるコントローラ41の操作に基づいて、布地6に対して裁断を実行する形状を表す裁断パターンの布地6における配置を調整可能になっている。コントローラ41としては、市販のゲーム用コントローラを用いることができる。
【0023】
次に、上記構成の裁断装置1が、布地6を裁断して被服のパターンピースを作製する際の動作を説明する。
【0024】
図1に示すように、寸法が比較的小さいワイシャツのパターンピースを作製する場合、ロール支持部23にロール体61が設置され、布地6の先端部が引き出されて支持面21の上に載置される。続いて、操作者によるコントローラ41の操作に基づき、制御装置4がパターンピースの裁断パターンの情報を読み出し、ディスプレイ42に表示した布地6の形状に裁断パターンの形状を重ねて示す。ディスプレイ42を視認する操作者からの操作に基づき、布地6に対して裁断を行うべき裁断パターンの位置と姿勢が調節され、設定される。具体的には、寸法が比較的小さいワイシャツのパターンピースが、パターンピースの長手方向が支持面21の短手方向を向くように設定される。操作者から裁断の実行の指令を受けると、制御装置4による制御のもと、裁断ユニット3のカッターヘッド33が支持面21と平行の面内を移動しながら、回転刃と下刃を駆動して布地6を裁断パターンに従った形状に裁断し、パターンピース82を作製する。裁断ユニット3の動作が終了すると、支持面21上のパターンピース82が採取され、布地6の残部が回収されて、一連の裁断工程が終了する。
【0025】
一方、寸法が比較的大きいズボンのパターンピースを作製する場合、ロール支持部23に設置されたロール体61から、必要な長さの布地6を引き出され、支持面21上に載置され、布地6がロール体61から切断される。ここで、裁断テーブル2の支持面21の短辺よりも長い布地6を引き出して切断し、この布地6を支持面21上で法線軸回りに略直角に回転させ、図2に示すように、布地6を挿通隙間Sに挿通させた状態で布地6の端部を裁断テーブル2から垂下させる。続いて、操作者によるコントローラ41の操作に基づき、制御装置4がパターンピースの裁断パターンの情報を読み出し、ディスプレイ42に表示した布地6の形状に裁断パターンの形状を重ねて示す。ディスプレイ42を視認する操作者からの操作に基づいて、裁断パターンの位置と姿勢が調節され、設定される。具体的には、寸法が比較的大きいズボンのパターンピースが、パターンピースの長手方向が支持面21の長手方向を向くように設定される。操作者から裁断の実行の指令を受け、制御装置4による制御のもと、裁断ユニット3が動作し、図3に示すように、布地6を裁断パターンに従った形状に裁断してパターンピース81を作製する。裁断ユニット3の動作が終了すると、支持面21上のパターンピース81が採取され、布地6の残部が回収されて、一連の裁断工程が終了する。
【0026】
このように、本実施形態の裁断装置1によれば、寸法が比較的小さいパターンピース82を作製する場合、布地6を支持面21の短手方向に引き出して、パターンピース82の長手方向が支持面21の短辺方向を向くように裁断を行う。一方、寸法が比較的大きいパターンピース81を作製する場合、布地6を支持面21の長手方向に引き出して、パターンピース81の長手方向が支持面21の長辺方向を向くように裁断を行う。このように、パターンピース81,82の寸法に合わせて、布地6を載置する方向を、支持面21の長手方向と短手方向のいずれかに選択して設定することができるので、比較的小さい支持面21により、種々のパターンピース81,82を作製することができる。したがって、裁断装置1を小型化でき、設置スペースを従来よりも小さくすることができる。
【0027】
また、本実施形態の裁断装置1によれば、ロール支持部23を支持面21の長辺であって裁断テーブル2の長辺に設置したので、ロール支持部23を裁断テーブル2の短辺方向に突出させて、裁断装置1の大型化を防止できる。したがって、裁断装置1の設置スペースを従来よりも小さくすることができる。
【0028】
上記実施形態において、支持面21への布地6の供給構造として、裁断テーブル2の長辺にロール支持部23を設置したが、裁断テーブル2の長辺には、ロール体61から布地6を引き出して切断し、所定の寸法の布地6を作成して支持面21まで運搬する延反装置を設置してもよい。裁断テーブル2の長辺に延反装置を設置することにより、裁断テーブル2の長辺が更に長くなることを防止でき、したがって、裁断装置1の大型化を防止できる。
【0029】
また、支持面21への布地6の供給構造として、ロール支持部23を設けたが、供給構造は、支持面21と同一平面の裁断テーブル2の縁部で構成してもよい。
【0030】
また、上記実施形態において、布地6を支持面21の長手方向に載置する際、ロール体61から引き出した布地6を支持面21に載置し、この布地6をロール体61から切断し、引き出した布地6を支持面21上で法線軸回りに略直角に回転させて、布地の端部を挿通隙間Sに挿通させて裁断テーブル2から垂下させたが、引き出した布地6を一端回収した後、裁断テーブル2の外側から挿通隙間Sを通して支持面21上に載置してもよい。すなわち、挿通隙間Sに布地6を挿通させる方向は、裁断テーブル2の外側から支持面21に向かう方向と、支持面21から裁断テーブル2の外側に向かう方向との、いずれでもよい。
【0031】
また、布地6を支持面21の長手方向に載置する際、布地6の端部は必ずしも挿通隙間Sに挿通させなくてもよい。
【0032】
また、上記実施形態において、裁断ユニット3で布地6の裁断を行なう際に、支持面21を通してブロワで布地6を吸引して支持面21に固定したが、ロール体61から支持面21の短辺方向に引き出して切断した布地6を、支持面21の法線軸回りに略直角に回転させる際に、上記ブロワで支持面21を通して空気を吹き出し、布地6を支持面21から浮かせてもよい。これにより、布地6を支持面21上で容易に回転させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 裁断装置
2 裁断テーブル
3 裁断ユニット
4 制御装置
21 支持面
23 ロール支持部
S 挿通隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を支持する矩形の支持面を有する矩形の裁断テーブルと、この裁断テーブルの支持面上を平面方向に駆動される裁断ユニットとを備える裁断装置において、
上記矩形の裁断テーブルの隣り合う2つの辺に、上記支持面にシート材を供給するための供給構造が夫々設けられていることを特徴とする裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の裁断装置において、
上記裁断テーブルの一方の辺に設けられた供給構造は、シート材のロール体を支持するロール支持部であり、
上記裁断テーブルの他方の辺に設けられた供給構造は、上記裁断ユニットとの間に形成されて上記支持面に供給されるシート材が挿通される隙間であって、上記支持面と実質的に同一平面上に形成された挿通隙間であることを特徴とする裁断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の裁断装置において、
上記ロール支持部は、上記裁断テーブルの長辺に設けられ、
上記挿通隙間は、上記裁断テーブルの短辺に設けられていることを特徴とする裁断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の裁断装置において、
上記裁断ユニットは、
上記裁断テーブルの一方の短辺に、支持面と略同じ高さに設けられた支持面レールと、
上記裁断テーブルの他方の短辺に、支持面よりも高い位置に掛けられた高架レールと、
上記支持面レールと高架レールの間に、上記支持面と平行に掛け渡されて上記支持面レール及び高架レールに沿って移動する移動梁と、
裁断刃を内蔵して上記移動梁に沿って移動するカッターヘッドとを有し、
上記高架レールの下方に上記挿通隙間が形成されていることを特徴とする裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121092(P2012−121092A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273131(P2010−273131)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(591264474)有限会社ナムックス (10)
【Fターム(参考)】