説明

装置の機能をテストする方法

健常者が所定の基準を満たすとともに、特定の方法ステップに従うことを条件として、この人物を外部対照として使用して測定装置の機能をテストすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に気体化合物の濃度を測定するための装置に関し、特に呼気中の気体化合物の濃度を測定するための装置に関する。より具体的には、本発明は、このような装置の機能をテストする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気中の無機及び有機気体成分の双方が、いくつかの疾病の代謝プロセスに関する有用な識見を提供できることが知られている。このような成分の濃度は、研究及び臨床の双方の背景において綿密に調査されてきた。これらの識見に基づいて、濃度値が診断の立証に役立ち、患者の健康状態などをモニタするのに有用であることが分かってきた。呼気中に存在する気体成分の例として、本明細書では酸化窒素(NO)と呼ぶ一酸化窒素、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、及び揮発性有機化合物が挙げられる。1つの実例としてNOがあり、これは1990年代初期に炎症の診断マーカであることが判明したため、多くの研究の的になってきた。NO濃度の測定における使用に様々な技術及びセンサが提案されてきた。例として、以下に限定されるわけではないが、ケミルミネセンス、半導体ベースセンサ、電気化学センサ、及びポリマベースセンサが挙げられる。
【0003】
測定される気体成分の正体、又は選択する技術にかかわらず、装置の機能、正確性及び信頼性をテストできることが重要である。
【0004】
伝統的には、測定装置により測定される物質の濃度が判明しているとともに実用的に安定した気体混合物である基準ガスが使用されている。例えば、測定装置を使用して呼気中のNOの濃度を測定する場合、窒素中に既知の濃度のNOを有する特別な基準ガスを使用することができる。すなわち、所定の濃度のNOを含有する窒素がバルクガスとなる。この基準ガスは、圧縮した形でボンベ内で保存され、その後多くの場合圧力調整器及びガス器具を介して測定装置に供給される。その後、測定装置の示度が、特別な基準ガス内で測定される物質の既知の濃度と比較される。
【0005】
この技術は、特別な基準ガスの製造、保管、及び取扱いのコストに起因してかなり高価なものとなることが多い。場合によっては、求められる仕様に適合する特別な基準ガスを製造することは技術的にも困難である。例えば、測定される物質の濃度が低い特別な基準ガスが必要な場合などがこれにあたる。特別な基準ガスの注文、輸送、及び取扱いには時間もかかり、しかも保管寿命が限られている場合がある。さらに、ボンベの寸法及び重さのためにボンベの取り扱い自体が不便である。
【0006】
測定装置のなかには、事前較正されたセンサを使用し、又は製造中に他の方法で事前較正され、これらの規定耐用年数中に較正を必要としないものもある。それでもなお、特定の装置からの測定値が正確かつ信頼できるものであるかどうかをテストする可能性を有することは有利であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kharitonov他著、健常及び喘息の成人及び小児における呼気NO測定の再現性、Eur Respir J 2003年、第21巻、433〜438ページ
【非特許文献2】Aldeen著、Poster ATS 2005‐米国オハイオ州クリーブランドクリニックにおけるスタッフの自己テストによる生物学的QC
【非特許文献3】Marianne Andersson著、Poster ERS 2005、呼気酸化窒素の長期変動、スウェーデン ゴーゼンバーグ市サールグレンスカ大学におけるスタッフの自己テスト
【非特許文献4】Bradley Efron及びR.J.Tibshirani著、ブートストラップ法入門(統計及び応用確率に基づくモノグラフ)、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、背景技術に関連する欠点の一部又は全てを除去し、又は少なくとも軽減する選択的なテスト方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚いたことに、本発明者らは、添付の特許請求の範囲に記載し、引用により本明細書に組み入れられる本発明の実施形態によれば、基準ガスの使用を、基準人物としてヒトを使用することと少なくとも部分的に置き換えることができることを発見した。
【0010】
本発明者らは、ヒト対照を使用して呼気中の気体物質の濃度を測定する装置の機能をテストする方法を提供し、この方法は、
‐上記ヒト対照が正常状態にあることをチェックするステップと、
‐上記ヒト対照が吐き出した空気中の上記気体物質の濃度を測定して現在値を得るステップと、
‐測定した濃度の上記現在値が所定の範囲内にあるかどうかを判定するステップと、
‐基準値を決定するステップと、
‐上記基準値と上記現在値との差分を求めるステップと、
‐所定値を超える偏差を、装置が不調であるか又は較正を必要としているかを示すものとして解釈するステップとを含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、現在値の所定の範囲が、測定される気体成分の関連する診断間隔に適応する。この場合の「適応する」という表現は、所定の範囲が、診断間隔、すなわち健常な個体をテストしたときに通常得られる値から、問題の疾病を抱える個体をテストしたときに通常得られる値までの間隔と実質的に同じになるように選択されることを意味する。或いは、所定の範囲が診断間隔に重なるように選択される。気体成分がNOである実施形態では、現在値の所定の範囲が約10〜約40ppbであることが好ましい。当業者であれば理解するであろうが、その他の指標については、検出される成分が別のものであれば所定の範囲も別のものとなる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、同じヒト対照の測定から得られる現在値と以前に得られた値とに基づいて移動平均を計算することにより基準値が決定される。移動平均を求める際には、以前の測定から得られた少なくとも2つの測定値を使用することが好ましく、移動平均を求める際に少なくとも3つの測定値を使用することがより好ましい。当業者であれば、移動平均計算の妥当性が、妥当な量の以前の測定値を超えてさらに向上することはないということを理解するであろう。
【0013】
好ましい実施形態によれば、測定が少なくとも2日の間隔を空けて行われ、間隔が少なくとも3日であることが好ましく、間隔が少なくとも4日であるが8日未満であることがより好ましい。
【0014】
別の実施形態によれば、気体物質が酸化窒素である。しかしながら、当業者であれば、健常者において測定可能な安定した濃度で生じるのであれば、本発明が呼気中で見つかる他の気体化合物の測定にも適用可能であることを理解するであろう。非限定的な例のリストには、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、及びその他の揮発性有機化合物が含まれる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、被験者は、風邪を引いていないこと、気道疾病がないこと、喘息でないこと、喫煙者でないこと、過敏症でないこと、直近3時間以内に硝酸塩に富む食物を摂取していないこと、及び直近1時間以内に激しい運動を行っていないことという基準を満たしているときに、対照として及び正常な状態にあるとみなされる。ヒト対照が喘息でないことという要件に関して、抗炎症薬の投与を受けることなどにより疾病が良好に抑制されているならば、喘息の人も資格を得られることを理解すべきである。
【0016】
さらに、本発明の実施形態によれば、装置が不調である(又は較正を必要とする)ことを示すものとされる特定値を超えた偏差の解釈は、対照が正常状態にあることの追加確認を前提とし及び条件とする。
【0017】
本発明のさらなる可能な特徴及び利点については、以下の発明を実施するための形態において説明する。
【0018】
以下、非限定的な実施形態により、及び添付図面を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】連続測定における基準人物(被検者X)のNO示度(FENO=呼気酸化窒素濃度)を示すグラフである。
【図1b】測定値と計算した移動平均との間の差分を示すグラフである。2つの測定が±10ppbの所定偏差を超えていることが分かり、現在のFENO値と移動平均との間の差分を示す図1bにおいて最もはっきりと見られる。被験者は正常状態にあったので、この結果は測定装置が不調であり、及び/又は較正を必要とすることを示す。
【図2a】上記と同様のグラフであるが、基準人物(被検者Y)が小さな変動のみを示し、全測定期間中装置が良好に機能した例を示している。
【図2b】上記と同様のグラフであるが、基準人物(被検者Y)が小さな変動のみを示し、全測定期間中装置が良好に機能した例を示している。
【図3a】基準人物(被検者Z)が、過敏症又は風邪などの何らかの一過性の気道の問題を抱えていると訴えた(フラグを付けた)例を示す図である。従って、これらの値は無視することができる。
【図3b】基準人物(被検者Z)が、過敏症又は風邪などの何らかの一過性の気道の問題を抱えていると訴えた(フラグを付けた)例を示す図である。従って、これらの値は無視することができる。
【図4】本発明の実施形態の基本ステップを示すブロック図であり、構造化手順は、装置の正しい機能の確認、又は装置の不調の指示で終了する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で説明する方法を詳細に説明する前に、この方法が説明する装置の特定の構成部品に限定されず、或いはこのような装置及び方法として説明する方法のステップが様々であってよいことを理解されたい。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、「1つの(英文不定冠詞)」及び「その(英文定冠詞)」という単数形は、文脈において単数であることをはっきりと示していない限り複数形の意味も含むことに留意されたい。従って、例えば「(1つの)要素」という言及には複数のこのような要素が含まれるなどである。
【0021】
本明細書及びこれに続く特許請求の範囲では、次の意味を有すると定義すべきいくつかの用語に対する言及が行われる。
【0022】
「約」という用語は、適用可能な場合、所定の値の+/−2%、好ましくは数値の+/−5%、最も好ましくは+/−10%の偏差を示すために使用される。
【0023】
以下では、本発明による方法について、呼気中のNOの濃度をppb(10億分の1)で測定する測定装置を参照しながら部分的に説明する。測定機器が使用する単位は当然ながら重要なことではなく、この方法は、ppm(百万分の1)などのいずれかの従来の濃度単位を使用する測定機器とともに同等に使用することができる。ppbで測定されるNOの例を使用して、本発明の方法の正確性及び信頼性について説明する。研究及び診断の双方の目的で呼気中の気体成分を測定するための装置のメーカーは多く存在する。背景技術の欄で説明したように、様々なセンサ、様々な化学分析などを含む、ガスの濃度を測定するための様々な技術的アプローチが存在する。しかしながら、呼気中の気体成分を測定するための装置の機能をテストする一般的方法を提供する本発明にとって技術の選択は重要ではない。以下の説明及びこれに含まれる実施例では、本明細書で説明する技術を理解しやすくするために、本方法を1つの特定の測定装置に関して説明する。測定装置は、スウェーデン、ソルナのAerocrine AB社が市販するNIOX MINO(登録商標)であり、これを診断用の気体の測定に使用する。この装置を使用して呼気中の酸化窒素の濃度を測定することができる。このような測定は、多くの場合呼気酸化窒素濃度(FENO)の測定又はFENO測定と呼ばれる。NIOX MINO(登録商標)は、米国呼吸器学会(ATS)2005年呼気測定用推奨機器第______号に適合する。この用途では、測定装置の機能をテストする個体又は測定装置の機能をテストするのに使用される個体は、ヒト対照又は基準人物と呼ばれる。本明細書で説明する技術によれば、ある基準に従ってヒト対照候補が認定される。候補の認定は認定手続きと呼ばれる。装置のテスト手順も、所定の方法論を使用して行われる。発明者らは、言及した基準及び方法論を展開するための検討を行った。機器のテスト手順は、生物学的試験手順と呼ばれる。以下では、生物学的試験手順のためのヒト対照候補を認定する認定手続きの実施形態について概説する。生物学的試験手順の実施形態についても説明する。
【実施例】
【0024】
要点
発明者らは、認定手続き及び生物学的試験手順のための基準及び方法論を展開してテストする研究を行った。
【0025】
要約すれば、この研究により、健常な個体から得た、現在値と移動平均との間の差分限度が±10ppbであるFENO測定値を使用して、FENO測定のための機器の機能をテストできることが確認された。
【0026】
発明者らはまた、気道感染症及び過敏症を患う個体から得た値などの除外すべき測定値を週1回の測定において容易に検出できることも発見した。
【0027】
驚いたことに、研究結果は、単に週1回の手順において2人の健常な個体をヒト対照として使用することにより、装置の不調により検出されない状況を意味する偽陽性の比率が約0.01%未満になるであろうことを示した。
【0028】
同じく驚いたことに、週1回のテスト手順において2人の健常な個体をヒト対照として使用した場合、現在のFENO値偏差が+15ppbである欠陥機器を検出する確率がすでに約92%にも上っていた。
【0029】
要約すれば、研究から得たデータは、健常な個体からもたらされるFENO値を、FENO測定のための装置の機能の実際的な生物学的テストの外部ソースとして効果的に使用できることを示す。
【0030】
研究の背景
発明者らは、呼気中の気体化合物の濃度を測定する装置の機能を健常な個体を使用してテストできることを前提とした。発明者らは、このテストが装置の測定機能の外部テストとして機能するようになるためには、(単複の)健常な個体がこの成分に関して信頼性できる再現可能な値を有すること、或いはこれらの値の妥当性を確実にするように方法を展開する必要があることが求められると理解した。
【0031】
研究では、本明細書ではFENO測定用の装置からのFENO値により示される、呼気中のNOの診断的測定に焦点を当てた。
【0032】
例えば、Kharitonov他による、健常及び喘息の成人及び小児における呼気NO測定の再現性、Eur Respir J 2003年、第21巻、433〜438ページ、Aldeenによる、Poster ATS 2005‐米国オハイオ州クリーブランドクリニックにおけるスタッフの自己テストによる生物学的QC、及びMarianne Anderssonによる、Poster ERS 2005、呼気酸化窒素の長期変動、スウェーデン ゴーゼンバーグ市サールグレンスカ大学におけるスタッフの自己テストなどのこれまでの研究では、長期にわたる個体内部での変動は低いことが示されている。
【0033】
発明者らによる、10人の健常な個体により最大2.5年の期間にわたって行ったFENO測定をまとめた長期研究では、4.2ppbの平均SD(標準偏差)が得られ、上記の結果が確認された。
【0034】
3.5ヶ月の間1人の健常な個体のFENOを毎日測定した研究では、上述のAldeenにより8〜9%の低い変動性も報告された。上述のKharitonov他からは、健常な個体(n=30、n=個体数)及び喘息患者(n=29)の双方において5日間連続して行った標準化されたFENO測定から2.11ppbの平均プールSDが報告された。これらのデータは、健常な個体のFENO値が長期間にわたって安定していることを示しており、これは測定機器の測定機能をテストするためのヒト対照として健常な個体を使用することが可能であることを示している。
【0035】
この研究の1つの目的は、健常な個体を基準の外部ソースとして使用して、呼気中の気体化合物の濃度を測定するための装置の、特にFENO測定のための装置の正確な機能を確認するということの実現可能性を調査することであった。別の目的は、許容される個体の変動に関する統計的及び臨床的に適切な限界を定めることであった。
【0036】
研究の実施
研究は、2つのパートに分割した。パート1の目的は、個体FENO値に関する基準限界を確立することであった。ヒト対照として使用する個体の認定においてこのような限界が使用されることになる。発明者らの仮説は、呼気中の気体化合物の濃度を測定する装置が正しく機能しているかどうかをテストするために、個体を実際的な生物学的テストのソースとして使用することが可能であるというものであった。研究のパート1から得られた結果を以下に開示する。
【0037】
パート1中、17人の個体が参加した3週間の測定期間中にFENO値を取得した。これらの個体のうち15人から得た値を使用して、個体がヒト対照として認定されるかどうかを評価するために、個体の標準偏差(SD)及び上下の基準限界(表1を参照)を計算した。
【0038】
【表1】

【0039】
研究のパート2では、1つの目的は、FENO測定のための装置により例示される、健常な個体を使用して呼気中の気体化合物の濃度を測定するための装置の測定機能をテストできるかどうかをチェックするための長期データを収集することであった。
【0040】
研究のパート1に参加した健常な対照個体が、研究のパート2の間に週1回の測定を行い続けた。個体の基準限界は、3つの以前の週1回の値と当日の測定結果とを使用する移動平均計算原理に基づいた。別の方法では、認定手続きを反復し、呼気の濃度を毎日、1日おき、又は2日おきに測定することにより、認定期間をわずか1週又は1.5週などに短縮することができる。
【0041】
以下の定義を使用して、個々の値が正常であるか又は異常であるかを判定した。
【0042】
正常な測定値は、3つの以前の正常な測定値の平均から±10ppbを超えて異ならない測定値と定義される。ヒト対照が病気であり、或いはNOレベルに影響する可能性のある他の要因の影響を受けているときには、測定値を取得しないことが有利である。
【0043】
必然的に、異常な測定値は、3つの以前の正常な測定値の平均から±10ppbを超えて異なる測定値と定義される。
【0044】
発明者らの第1の仮説は、個体の基準限界を、推定平均個体FENO値±2SDと定義することであった。これにより、3週間の間に行われた10回の測定による認定期間から推定平均個体FENO値が算出される。しかしながら発明者らは、この定義には、ゆっくりではあるが時間に伴う生理学的変化を考慮に入れず、長年などにわたる長期間の間、個体のベースラインが同じままになり得るという不都合があると結論付けた。このことは、個体が認定期間と比較して何らかの理由で若干高い或いは低い値の状態の期間を有する(この場合これら値はなおも低い変動性を有することができる)ことにより、装置が誤って不正確な示度(偽陰性)を示すようになる可能性があることを意味する。この不都合を避けるために、発明者らは、機器の不具合を暗示することのない、長期にわたるドリフトを容認する別の方法を展開した。評価のために選択した方法は、個々のヒト対照ごとに移動平均を求めることであった。
【0045】
本発明の1つの実施形態、すなわちNOを測定するための装置に焦点を当てた実施形態による方法を目的として、2週間にわたる一連の6〜10回の測定値の平均が10〜40ppbの間にあれば、この人物をヒト対照として認定することにする。上述のように、認定手続きを反復することにより、認定期間をわずか1週間又は1.5週間に短縮することができる。実施例は以下のとおりである。
【0046】
個体は、連続したn(nは数字である)日間FENO値を測定され、これによりn個のテスト値が与えられる。
【0047】
n日後、次のように平均が計算される。
【0048】
【数1】

【0049】
個体がヒト対照として認定されるためには、平均Xnが10〜40ppbの間になければならない。
【0050】
上述の測定期間内の第n日の後、ヒト対照は週1回の測定を継続する。個体の基準限界は移動平均に基づく。移動平均は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの最近測定された毎週の値に基づく。特定の実施形態によれば、当日の測定値も移動平均の計算に含まれる。或いは、この説明の始めに説明したように認定プロセスが短縮される。
【0051】
このことを示すために別の実施例が与えられ、ヒト対照Aは、自身のFENO値を連続する4週間測定され、これにより、
A:t、RA:t-1、RA:t-2及びRA:t-3の4個のテスト値が与えられ、
この場合、RA:tはテスト装置Aの現在のFENO示度であり、RA:t-1は最も直近の以前の有効示度であり、RA:t-2は2番目に近い以前の有効示度であり、RA:t-3は3番目に近い以前の有効示度である。
【0052】
移動平均は次のように計算される。
【0053】
【数2】

【0054】
現在値を含める場合、移動平均は、例えば次のように計算される。
(RA:t+RA:t-1+RA:t-2+RA:t-3)/4
【0055】
現在値と移動平均との間の差分は次のように計算される。
【0056】
【数3】

【0057】
この場合も、移動平均の計算に現在値を含めることができる。dAが±10ppbの範囲内になければ、測定値は範囲外にあると定義される。
【0058】
研究のパート2では、別の目的は、提案されるヒト対照を使用して測定装置の機能をテストする手順の妥当性を調査するための長期データを収集することであった。研究のこのパートでは、研究のパート1に参加した個体が週1回の測定を行い続けた。個体の基準限界は、3つの以前の毎週の値と現在の測定結果とを使用する移動平均計算原理に基づくものであった。上述の定義を使用して、個々の値を正常又は異常と記録した。
【0059】
このことは、値が容認されるためには、現在の個体FENO値と以前の3つのテストから得た移動平均との間の差分が±10ppbの範囲内になければならないことを暗示する。
【0060】
このようにして、研究の第2のパートでは、延長期間中に週に1回測定されるFENO値が、ヒト対照の測定値のために移動平均を使用して計算し上記のように定義した予想基準限界の範囲内にあるどうかを調査した。
【0061】
研究のパート2を3ヶ月間行い、ここに示す結果は、FENO値を測定するための装置を使用して15個体により行われた週1回のFENO測定を対象にしている。
【0062】
この研究のために、ヒト対照候補は、2週間にわたって得た一連の6〜10回の測定値が10ppb〜40ppbの範囲の平均値を有すればヒト対照になることを認定されると決定した(ただし、ヒト対照候補が病気であるとわかっているときの測定値を除く)。
【0063】
測定値が範囲を外れているかどうかを判定するために、移動平均と現在の測定値との間の差分の技術を使用することも決定した。このアプローチの理由については上述しており、後程さらに説明する。
【0064】
機器内の2つの測定値の間の差分が7ppb以上になると、同じ機器内の2つの測定が反復して行われるようにすることもさらに決定した。
【0065】
テスト設計
研究のパート2では、週1回、午前8時から午後6時までの昼間に健常な個体が測定を行った。各個体は、連続して2回の正常な測定を行った。
【0066】
FENOは、ATS(米国呼吸器学会)のガイドラインに基づいて50ml/秒の呼気流量で測定した。装置は、センサ製造時に公称200ppbNOの較正用ガスで較正した。
【0067】
被検者
研究被検者(n=15)は、年齢が33〜59才の間であった。研究に参加する全ての被検者は、機器の取り扱い訓練を受けた。さらに、研究に組み入れるために、個体は次のテスト対象患者基準を満たす必要があった。
‐健常な成人、年齢18〜65才であること
‐参加時にわかっているウィルス感染/気道疾病がないこと
‐喘息(又は良好に管理され、治療された喘息)と診断されていないこと
‐研究前1年以内に喫煙履歴がないこと
‐以前の経験に基づく10〜40ppbの安定したFENOレベルであること
【0068】
テストの被験者は、各々の場合において以下を症例報告表に記録するように指示された。
‐呼吸器感染の症状
‐継続的過敏症(投与中のあらゆる薬剤の名称を含む)
‐朝及び/又は夕方に服用している処方薬(薬剤の名称及び文書化すべき投与の理由)
‐測定前3時間以内における硝酸塩に富む食物の摂取
‐測定前1時間以内における激しい運動
‐副作用
【0069】
統計的方法
正常な測定の定義:第1の測定と第2の測定との間の差分が7ppb以上あれば範囲外すなわち不認可とみなされる。
【0070】
統計的テストは全てパラメータに関するものであった。p値<0.05の測定値又はその他の値が統計的に有意であるとみなされた。p値が0.05であるということは、関連値が正しいものである確率が95%(1−0.05=0.95)であることを意味する。測定結果が<5ppbと記録された場合、値は4ppbに設定された。限界<5ppbを選択した理由は、研究で使用される装置(NIOX MINO(登録商標))の下部測定限界が5ppbだからである。値を4ppbに設定する理由は、移動平均の計算に測定限界の5ppb未満の示度にも値を割り当てることが必要だからである。
【0071】
移動平均の定義:個体の基準限界は移動平均計算に基づいた。移動平均は、以前の3つの有効測定値の平均値を現在の示度から減算することにより計算した。移動平均計算の原理については上述した。
【0072】
機器間の測定値の差分は、標準的な両側t検定でテストした。
【0073】
結果
全般
3ヶ月後に15個体から得た合計152個の(重複した)測定値を解析した。個体は、休暇の週を除く全ての週に必要な測定を行った。3つの場合でFENO値が7ppb以上異なった。NIOX MINOでは2個体により測定が反復され、許容できる反復間の差分が示された。
【0074】
2個体が長期の薬剤投与を報告した。1個体が花粉症のための、1個体が過敏症のための、及び1個体が関節炎のための薬剤の投与を受けた。3個体が季節性過敏症を報告した。1個体が過敏症の兆候を報告した。5個体が、研究期間の何日かの測定日中に呼吸器感染症の兆候を報告した。1個体が、測定期間の後半で急性の耳の炎症を患った。
【0075】
2個体が、測定前の2回の単一の機会における硝酸塩に富む食物の摂取を報告した。1個体が、測定の第1週中に超低カロリーダイエット(VLCD)を開始し、9週後に終了した。1個体は、既知の食物過敏症を有していた。
【0076】
測定前の運動を報告した個体は無かった。
【0077】
欠損値
ほとんどの個体が、報告された3ヶ月のテスト期間中に少なくとも10回の測定を行った。週1回の測定を行わなかった唯一の理由は休暇であった。
【0078】
FENO測定結果
研究のパート2から得られた平均FENO値は、<5〜43.5ppbであった。全ての個体の測定から得られた結果を以下の表2に示しており、平均、最小、最大及びSD(標準偏差)を示している。最大個体SDは7.98ppbであった。
【0079】
【表2】

【0080】
FENO値及び移動平均のグラフ表現
図1a、図1b、図2a、図2b、図3a、及び図3bに、FENO値及び移動平均を示している。上部のグラフ(図1a、図2a、及び図3a)は、個々のテスト個体の個体FENO値(黒い菱形)のグラフ表現を、計算した移動平均から得られる最大(丸印を付けた上側の線)及び最小(丸印を付けた下側の線)許容限界とともに示している。
【0081】
下部のグラフ(図1b、図2b、及び図3b)は、現在のFENO値と移動平均との間の差分を、最大及び最小許容限界とともに示している。双方の場合について、差分が±10を逸脱した場合、値は範囲外と定義された。グラフ内のフラグ付きの値は、個体に注釈のある値であった。注釈は、風邪の兆候、過敏症、硝酸塩に富む食物の摂取及び刺激的薬物の投与に関するものであった。
【0082】
6個体が、移動平均と現在のFENO値との間の差分が±10ppbの限界を逸脱したことを示した。これらのうちの4個体は、測定値の時点における呼吸器感染症を報告した。1個体は、全テスト期間中におけるいくつかの過敏症の薬の服用を報告した。別の個体は、全テスト期間中における抗炎症剤セレコキシブ(Celebra(登録商標))の長期投薬を報告した。
【0083】
グラフでわかるように、この方法は、呼吸器感染症及び硝酸塩に富む食物の摂取などの、FENO値に影響することがわかっている要因に起因するFENO値の変動の検出が正確である。
【0084】
生物学的試験手順における移動平均の使用についての検出感度の評価
生物学的試験手順における移動平均の使用についての検出感度をテストするために、発明者らは、ブートストラップ推定を使用して生物学的試験手順が失敗する確率を計算した。
【0085】
ブートストラップ推定は、この研究のパート1及びパート2で得られた現在のデータに基づいた。ブートストラップ法の詳細な説明については、Bradley Efron及びR.J.Tibshirani著、ブートストラップ法入門(統計及び応用確率に基づくモノグラフ)、1995年を参照されたい。合計253個の正常な測定値が存在し、この中には少なくとも3つの前述した正常な測定値が含まれ、これらから移動平均を計算することができる。これらの測定値を15個体に分配した。平均測定期間は118日である。各推定は、10,000回のブートストラップから得られたものである。
【0086】
2つの推定が与えられ、各々が考えられる装置の状態の範囲に対応する。発明者らは、全ての計算に関して、いずれの場合にも2人のヒト対照を利用できると仮定した。
【0087】
第1に、発明者らは、単一の生物学的試験手順を行う場合、測定機器に障害が存在するときに生物学的試験手順が失敗する確率を推定した。これは、生物学的試験手順により障害が検出されるであろう確率の推定である。
【0088】
第2に、測定機器に障害が存在するときに、2回の連続する生物学的手順において少なくとも1回の生物学的試験手順が失敗する確率を推定した。これは、2回の連続する生物学的試験手順において障害が検出されるであろう確率の推定である。
【0089】
個々のブートストラップごとに2個体をランダムに選択し、利用できる正常な測定値の数により個々の個体ごとに重み付けした。個々の個体ごとに、少なくとも3つの前述した正常な測定値を含む2つの連続した日付けから得た正常な測定値をランダムに選択した。これらの選択に対して生物学的試験手順を行った。この推定は、ブートストラップの選択が生物学的試験手順を失敗させる回数の割合である。
【0090】
較正外れをシミュレートするために、ある日付けの測定値に誤差を加えた(+5ppb、+10ppb、+15ppb、−15ppb、−15ppb)。次に、この測定誤差を以前の3つの正常な測定値の(変化のない)平均と比較した。2回の連続する生物学的試験手順の場合に測定値が正常とみなされれば、これを反映させるように平均を更新した。
【0091】
結果、2回の連続する生物学的試験手順(すなわち2つの別個の場合について)後には偽陽性率が約0.02%であり、ヒト対照において範囲外の測定値である+15ppbの増加を検出する確率は、1回の生物学的試験手順後では約92%、2回の生物学的試験手順後では約95%であることが示された。
【0092】
例えば、2つの生物学的試験手順後には、偽陽性率(NIOX MINOなどの正常に機能する測定機器が生物学的試験手順で失敗する確率)は約0.02%である。さらに、2人のヒト対照で+15ppbのバイアス(すなわち測定装置の示度が15ppb高すぎること)を検出する確率は、1回の生物学的試験手順後では約92%、2回の連続する生物学的試験手順後では約95%である。
【0093】
研究は、2人のヒト対照及び概説した移動平均技術を使用することにより、高い検出感度及び低い偽陽性率という両方の目的が達成されたことを示した。
【0094】
概説した移動平均技術は、不変のベースラインを有することと比較して、時間に伴うある程度の生物学的FENO変動を許容するという利点を有する。時間に伴う変化を考慮しなければ、認定期間中に得られた平均値と比較してFENO値が幾分高い又は低い期間を有する個体は偽陽性を引き起こすであろう。
【0095】
この特定の実施形態で測定値と移動平均の値との間の差分の限界に±10ppbを選択する理由は、考慮すべきいくつかの不正確な要素が存在することである。第1に、FENOの生物学的な不正確さは、1つのSD内で±2.5ppbである。個体の大部分を含むためには3つのSDを適用する必要があり、これは±7.5ppbと同等である。測定装置の妥当な不正確さは±2.5ppbなので、累積の不正確さは±10ppbになる。
【0096】
研究のパート2の間に得られたFENO値は、FENO値の変化を検出する方法論の検出感度が非常に良好であることを示している。4個体において、呼吸器感染症の期間に範囲を外れた値が検出された。さらなる2個体において、過敏症の症候を有する期間に範囲を外れた値が生じた。これらの場合は別として、範囲を外れた偽陽性の値を含む事例はほとんどなく、これは、概説した移動平均技術が、基準として健常な個体を使用することにより、FENOを測定するための機器の測定機能のテストを行う実現可能な方法であることを示している。
【0097】
従って、±10ppbという現在値と移動平均との間の差分の限界を有する健常な個体から得たFENO値を使用して示すように、本発明による方法は、呼気中の気体化合物の濃度を測定する装置の機能を単純かつ安価にテストするための実施可能なアプローチである。
【0098】
特に、行った研究及び解析により、健常な個体から得たFENO測定値を、呼気NOを測定するための装置の機能の実際的な生物学的テストに有効に使用できることが示されている。
【0099】
上述の研究及び解析に基づいて、発明者らは、以下で説明するような認定手続き及び生物学的試験手順をまとめた。
【0100】
認定手続き
認定手続きでは、生物学的試験手順を行うように予定されている(単複の)個体に正常値を設定した。最低1個体、しかし好ましくは2又はそれ以上の個体が認定手続きを受ける必要がある。正規の個体の1又はそれ以上が生物学的試験手順に参加できなくなった場合に予備として機能できるので、第3の個体も認定手続きを受けることが有利となり得る。
【0101】
ヒト対照候補は、2週間の間に認定されることになる。ヒト対照候補が測定を行う場合、測定機器は通常の使用のように使用される。測定値は、ヒト対照候補のパーソナル・クオリフィケーション・テスタ・ログに入力される。
【0102】
認定された状態でいるためには、ヒト対照は週1回の測定を実施し、測定値を自身のパーソナル・クオリフィケーション・テスタ・ログ及び自身のウイークリー・ヒューマン・コントロール・ログに入力することが有利である。最新の正常な測定値が1ヶ月よりも古い場合には認定を一時中断し、ヒト対照が1週間のうちに3回の正常測定を実施できたときに再開することが提案される。
【0103】
認定手続きは、生物学的試験手順に使用されるとともに以下の基準を満たす1人、好ましくは2人又はそれ以上のヒト対照候補を識別することにより開始されることが好ましい。
1.年齢が18才以上であること
2.進行中の風邪或いは分かっている気道疾患がないこと
3.喘息と診断されていないこと、又は喘息が良好に管理され治療されていること
4.非喫煙者であること
5.10〜40ppbの期待FENO値を有すること
6.好ましくは過敏症でないこと(季節性を除く、以下を参照)
【0104】
信頼できる結果を得るために、以下も考慮することが有利である。
あらゆる測定前に、ヒト対照又はヒト対照候補は
7.測定前3時間以内に硝酸塩に富む食物を避けること、及び、
8.測定前少なくとも1時間は、あらゆる激しい運動を避けること。
【0105】
さらに、以下の場合には測定を行うべきではない。
9.風邪を引いている場合、又は、
10.急性季節性過敏症の場合。
【0106】
2週間の間に6〜10回のFENO測定を1日1回行い、記録した値をパーソナル・クオリフィケーション・テスタ・ログに入力することが有利である。
【0107】
次に平均値を計算する。この値は、約10〜約40ppbの区間内になければならない。
【0108】
この用途では、個体の状態を示すために「正常状態」という用語を使用する。基本的には、上記基準1〜6を満たす個体は正常状態にあるとみなされる。しかしながら、個体は基準7及び8も満たすべきであり、基準9及び10による事象が発生した場合には測定が行われないことが好ましい。
【0109】
生物学的試験手順
以下で説明する生物学的試験手順は、本発明による方法の実施形態である。この手順は、生物学的試験手順のためのヒト対照として認定された個体によってのみ行われることが有利である。2人のヒト対照を利用できることが有利である。第1のヒト対照による測定が承認されない場合、第2のヒト対照が測定を受け又は行うべきである。第2のヒト対照による測定が承認されない場合、測定機器を運用から外すべきである。その後、測定機器のメーカーの技術サポートに連絡することが有利である。
【0110】
1人のヒト対照のみを利用でき、かつ測定が承認されない場合、第2の認定されたヒト対照が利用可能になるまで測定機器が一時的に運用から外され、その後生物学的試験手順が繰り返される。
【0111】
以下は生物学的試験手順の範囲内にあるテストを実施するための手順の例である。
【0112】
1.正しいセンサが取り付けられていることなどの、測定機器の測定の設備が整っていることをチェックする。装置のディスプレイ上の記号などにより、測定機器が生物学的試験手順に入ったことを示すことが想像できる。
【0113】
2.測定機器の測定準備ができていることを確実にする。その後、ユーザマニュアルに説明されている手順に従って測定を行うことが有利である。
【0114】
3.測定の結果(テスト結果)が表示されるのを待つ。
【0115】
4.テスト結果を、「ウイークリー・ヒューマン・コントロール・ログ」及び「測定機器テスタ・ログ」内に入力する。
【0116】
5.「ウイークリー・ヒューマン・コントロール・ログ」内にあるヒト対照の以前の3つのテストの平均を計算する。計算した平均値から現在のテスト結果の値を減算して差分を得る。計算の詳細については「ウイークリー・ヒューマン・コントロール・ログ」を参照する。特定の実施形態によれば、差分が±10ppbの範囲内にあれば現在のテスト結果が承認される。他の測定装置などに適用する代替の実施形態では、承認されたテスト結果のための異なる限界が考えられる。
【0117】
6.測定が承認されない場合、第2のヒト対照が利用可能になるまで機器を運用から外すべきである。しかしながら、第2のヒト対照を利用できる場合、第2のヒト対照を使用して生物学的試験手順全体を最初から(ステップ1から先へ)行うことが有利である。第2のヒト対照の測定値が、ポイント5で説明する基準に従って承認されれば、生物学的試験手順は承認される。
【0118】
第2のヒト対照のテスト結果も承認されない場合、測定機器を運用から外すべきである。
【0119】
連続する2日間の反復測定が、機器の下部測定限界よりも低い値(NIOX MINOでは、この値は5ppbである)を示す場合、或いは生物学的試験手順が承認されない場合は、この測定機器を使用すべきでない。このような場合にはメーカーに連絡することが有利である。
【0120】
過敏症により正常値よりも高い値が生じる可能性があるので、生物学的試験手順の範囲内のテスト(上記ポイント1〜5)が承認されない場合には、ヒト対照が知らずに何らかの種類の過敏症を患っているかどうかを確認することが好ましい。同様に、ヒト対照が、風邪を引いていたり、何らかの硝酸塩に富む食物を食べていたり、何らかの抗炎症薬を投与されていたり、或いは直前1時間以内に運動していたりした場合は除外すべきである。
【0121】
測定は、その日のうちのいかなる時点でも行うことができる。しかしながら、毎日その日の同じ時間に測定を行うことが推奨される。
【0122】
本発明の方法及びその実施形態は、FENO測定のための装置に関して、より具体的には測定装置の例としてNIOX MINO(登録商標)(Aerocrine AB社、スウェーデン、ソルナ)を使用して説明したものである。当然ながら、本明細書で説明する技術を、呼気中の気体成分を測定するための他の装置とともに使用することもできる。同様に、呼気中の酸化窒素以外の他の物質を測定するための測定機器の場合にも本発明で説明する技術を使用することができる。
【0123】
当業者であれば、装置の正確性、気体成分の診断間隔などに応じて必要な調整を容易に行うことができる。例えば、異なる装置の仕様及び性能に応じて、現在値と移動平均値との間の差分に関する±10ppbの限界を調整することが必要となる可能性がある。
【0124】
本明細書では特定の実施形態を詳細に開示したが、これは例示のみを目的として一例として行ったものであり、以下の添付の特許請求の範囲に対して限定することを意図するものではない。詳細には、特許請求の範囲により定義される本発明の意図及び範囲を逸脱することなく本発明に様々な代用、変更、及び修正を行えることが発明者により企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対照を使用して、呼気中の気体物質の濃度を測定するための装置の機能をテストする方法であって、
‐前記ヒト対照が正常状態にあることをチェックするステップと、
‐前記ヒト対照が吐き出した空気中の前記気体物質の濃度を測定して現在値を取得するステップと、
‐前記測定した濃度の前記現在値が特定の範囲内にあるかどうかを判定するステップと、
‐基準値を決定するステップと、
‐前記基準値と前記現在値との間の差分を求めるステップと、
‐特定の値を超える偏差を、前記装置が不調であることを示すものと解釈するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特定の範囲が、前記測定される気体物質の関連する診断間隔に適応する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準値が、前記現在値と、同じヒト対照を使用した測定から以前に取得した値とに基づいて移動平均を計算することにより決定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移動平均を求める際に、以前の測定から得られた少なくとも2つの測定値が使用される、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記移動平均を求める際に、少なくとも3つの測定値が使用される、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
測定が、2日以上であるが8日未満の間隔で行われる、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記気体物質が、二酸化炭素、酸素、酸化窒素、及び揮発性有機化合物の中から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記気体物質が酸化窒素である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記現在値の前記特定の範囲が約10〜約40ppbである、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被験者が、風邪を引いていないこと、気道疾患がないこと、喘息でないこと、喫煙者でないこと、過敏症でないこと、非季節性過敏症でないこと、直近3時間以内に硝酸塩に富む食物を摂取していないこと、及び直近1時間以内に激しい運動を行っていないことという基準を満たすときに、対照として及び正常状態にあると見なされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記装置が不調であることを示すものとしての特定値を超えた偏差の解釈が、前記対照が正常状態にあることの追加確認を前提とし及びこれを条件とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−508206(P2011−508206A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539362(P2010−539362)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000673
【国際公開番号】WO2009/082318
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510127734)
【Fターム(参考)】