説明

装軌式車両の走行体

【課題】 厚さの異なる複数種類の履帯に交換した場合に、各履帯の外側面と上部旋回体の下面との間隔を一定に保つ。
【解決手段】 上ローラ装置18のベースとなるローラ取付部材19に、上側軸挿嵌孔20と下側軸挿嵌孔21とを上,下方向に離間して設け、ゴムクローラ15およびパッドクローラ28の厚さに応じて、支持軸25を各軸挿嵌孔20,21のうち一方に選択的に嵌合する。上側軸挿嵌孔20の孔中心と下側軸挿嵌孔21の孔中心との距離が、パッドクローラ28の厚さとゴムクローラ15の厚さとの差としているので、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間隔Aと、上部旋回体3の下面3Aとパッドクローラ28の外側面28Bとの間隔Aを一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の装軌式車両の走行体に関し、特に履帯を案内する上ローラ装置を備えた装軌式車両の走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、山岳地、泥濘地等の不整地を安定して走行するためクローラ式の下部走行体を備えている。このクローラ式の下部走行体を構成するトラックフレームは、通常、センタフレームと、該センタフレームの左,右両側に位置して前,後方向に延びた左,右のサイドフレームとにより構成されている。各サイドフレームの一端には走行用の油圧モータを介して駆動輪が取り付けられ、他端には遊動輪が取り付けられ、この駆動輪と遊動輪とに亘って履帯(クローラ)が巻回されている。
【0003】
そして、サイドフレームには、通常、駆動輪と遊動輪との間で周回する履帯を案内するためのローラ装置を設けており、ローラ装置は、駆動輪と遊動輪との間に位置してサイドフレームの下面側に設けられた下ローラ装置と、駆動輪と遊動輪との間に位置してサイドフレームの上側に設けられた上ローラ装置とからなっている。上ローラ装置は、履帯を下側から支持することにより駆動輪と遊動輪との間で履帯が弛むのを防止し、履帯が適正な無限軌道を保つようにガイドしている。
【0004】
ここで、路盤工事や都市土木等に用いられる油圧ショベルの履帯としては、全周が一体として形成されたゴムクローラが一般的である(例えば、特許文献1)。しかし、当該ゴムクローラは、ゴム部が破損すると丸ごと交換しなければならない。このため、リンク部材を無端状に連結し、当該リンク部材の接地面側に1駒ずつゴムパッドを取り付けることにより、たとえゴム部が破損しても1駒ずつの交換が可能なパッドクローラの需要が増えてきている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−299920号公報
【特許文献2】特開平10−181646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、油圧ショベルの運転席に着座して作業するオペレータにとっては、着座位置が高いと揺れを多く感じて安定感が悪いという印象を受ける。従って、油圧ショベルは、オペレータの着座位置を低くするためにトラックフレームに対する上部旋回体の取付位置を下げ、履帯の上面と上部旋回体の下面との間隔(隙間)をできる限り小さく設定している。
【0007】
ここで、上述したゴムクローラとパッドクローラの厚みを比較すると、パッドクローラの方が厚いことから、履帯をゴムクローラからパッドクローラに交換すると履帯の上面と上部旋回体の下面との間隔がより狭くなる。このため、パッドクローラをトラックフレームに装着したときには、周回するパッドクローラの表面に付着した土砂等が、上部旋回体に干渉して上部旋回体に傷がつくおそれがある。また、オペレータが、油圧ショベルに乗り降りするときに履帯の上面に足をかける際に、履帯としてパッドクローラを用いた場合には、パッドクローラの上面と上部旋回体の下面との間隔が狭く、パッドクローラの上面に迅速に足をかけられないという不具合がある。
【0008】
これに対し、履帯の上面と上部旋回体の下面との間隔を一定に保つため、ゴムクローラ仕様のトラックフレームと、パッドクローラ仕様のトラックフレームとを使い分けて対応するという考え方もあるが、この場合には、履帯だけでなくトラックフレームまでも交換することになり、コストも嵩むという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、厚みが異なる複数種類の履帯を同一のトラックフレームに装着した場合でも、履帯の上面と上部旋回体との下面との間隔を常に一定に保つことができるようにした装軌式車両の走行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による装軌式車両の走行体は、センタフレームと、該センタフレームを挟んで長さ方向に延びて設けられた左,右のサイドフレームと、該サイドフレームの長さ方向の一側に設けられた駆動輪と、前記サイドフレームの長さ方向の他側に設けられた遊動輪と、前記駆動輪と遊動輪との間に巻回して設けられた履帯と、前記サイドフレームの上面側に設けられ前記駆動輪と前記遊動輪との間で前記履帯を案内する上ローラ装置とを備えてなる。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記上ローラ装置は、前記サイドフレームに固着されるローラ取付部材と、該ローラ取付部材に上,下方向に離間して設けられた複数の軸挿嵌孔と、前記履帯の厚さに応じて前記各軸挿嵌孔のいずれかに嵌合される支持軸と、該支持軸に回転可能に設けられ前記履帯の内側面を下側から支持するローラ部材とにより構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記各軸挿嵌孔は、その周縁の一部が上,下方向で互いに重なり合う位置に設ける構成とし、前記各軸挿嵌孔のうち最下位置の軸挿嵌孔よりも上側の軸挿嵌孔に前記支持軸を嵌合したときに該支持軸よりも下側の空間部を埋める軸支持片を設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記ローラ取付部材には、前記ローラ取付部材の上面部から前記各軸挿嵌孔のうちの最上位置の軸挿嵌孔まで上,下方向に貫通して延びるスリット状の切欠き部を設け、前記ローラ取付部材の上端側には、前記切欠き部と交差する方向に延びるボルト挿通孔を設け、該ボルト挿通孔に挿通したボルトにより、前記軸挿嵌孔に嵌合した前記支持軸を固定する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、厚さの異なる複数種類の履帯を同一のトラックフレームに装着する場合に、ローラ取付部材に設けた各軸挿嵌孔のいずれか1つを選択して支持軸を嵌合することにより、装着する履帯の厚さに関わらず、履帯の上面と上部旋回体の下面との間隔(隙間)を一定に維持することができる。このため、厚い履帯を装着した場合でも、履帯の上面と上部旋回体の下面との間隔が狭まることがなく、履帯の表面に付着した土砂等が上部旋回体に干渉するのを抑え、該上部旋回体を土砂等から保護することができる。また、履帯の上面と上部旋回体の下面との間に一定の間隔を確保することにより、オペレータは、履帯の上面に容易に足をかけることができ、この履帯を足場として上部旋回体に迅速に乗り降りすることができる。また、厚さの異なる複数種類の履帯を、同一のトラックフレームに巻回することができるので、履帯と一緒にトラックフレームを交換する必要がなく、コストの低減にも寄与することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、上側の軸挿嵌孔に嵌合されたローラ部材の支持軸を、下側から軸支持片によって支持することができる。このため、支持軸が下側の軸挿嵌孔に脱落するのを防止することができ、この支持軸に取り付けられたローラ部材によって履帯の内側面を安定して支持することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、スリット状の切欠き部を設けることにより、ローラ取付部材に設けた各軸挿嵌孔に対し、支持軸を容易に挿嵌することができる。そして、各軸挿嵌孔の1つに支持軸を挿嵌した状態でボルトを締め込むことにより、支持軸をローラ取付部材に対して確実に固定することができる。このように、ローラ取付部材に対し、ボルトを用いて支持軸を簡単に取り付けることができるので、履帯を交換する際の作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態による上ローラ装置を備えた油圧ショベルにゴムクローラを装着した状態を示す正面図である。
【図2】トラックフレーム、上ローラ装置を、上ローラ装置を分解した状態で示す斜視図である。
【図3】ローラ取付部材の上側軸挿嵌孔に支持軸を取り付ける時の上ローラ装置の分解斜視図である。
【図4】ゴムクローラを装着した油圧ショベルの上ローラ装置等を示す拡大正面図である。
【図5】ゴムクローラ、上ローラ装置等を図4中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】第1の実施の形態による上ローラ装置を備えた油圧ショベルにパッドクローラを装着した状態を示す正面図である。
【図7】ローラ取付部材の下側軸挿嵌孔に支持軸を取り付ける時の上ローラ装置の分解斜視図である。
【図8】パッドクローラを装着した油圧ショベルの上ローラ装置等を示す拡大正面図である。
【図9】パッドクローラ、上ローラ装置等を図8中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による上ローラ装置を備えた油圧ショベルに三角クローラを装着した状態を示す正面図である。
【図11】ローラ取付部材の上側軸挿嵌孔に支持軸を取り付けるときの上ローラ装置の分解斜視図である。
【図12】ローラ取付部材の中間軸挿嵌孔に支持軸を取り付けるときの上ローラ装置の分解斜視図である。
【図13】ローラ取付部材の下側軸挿嵌孔に支持軸を取り付けるときの上ローラ装置の分解斜視図である。
【図14】ゴムクローラを装着した油圧ショベルの上ローラ装置等を示す拡大正面図である。
【図15】ゴムクローラ、上ローラ装置等を図14中の矢示XV−XV方向からみた断面図である。
【図16】パッドクローラを装着した油圧ショベルの上ローラ装置等を示す拡大正面図である。
【図17】パッドクローラ、上ローラ装置等を図16中の矢示XVII−XVII方向からみた断面図である。
【図18】三角クローラを装着した油圧ショベルの上ローラ装置等を示す拡大正面図である。
【図19】三角クローラ、上ローラ装置等を図18中の矢示XIX−XIX方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る装軌式車両の走行体を、油圧ショベルの下部走行体に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図19に従って詳細に説明する。
【0019】
図1において、1は土砂等の掘削作業に用いられる建設機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0020】
一方、下部走行体2は、後述するトラックフレーム5と、左サイドフレーム8と、右サイドフレーム9と、左,右の駆動輪13と、左,右の遊動輪14と、左,右の履帯としてのゴムクローラ15とにより大略構成されている。
【0021】
ここで、油圧ショベル1は、作業現場の環境、作業内容等に伴う顧客のニーズに対応するために、複数種類の履帯を交換して取り付けることができるようになっている。即ち、図1に示す後述するゴムクローラ15と、図6に示す後述のパッドクローラ28との中から選択して取り付けることができる構成となっている。
【0022】
5は油圧ショベル1の下部走行体2を構成するトラックフレームを示している。このトラックフレーム5は、図2に示すように、左,右方向の中央部に位置し旋回装置6が取り付けられる後述するセンタフレーム7と、該センタフレーム7の左側に位置する左サイドフレーム8とセンタフレーム7の右側に位置する右サイドフレーム9とにより大略構成されている。
【0023】
7はトラックフレーム5の中央部に位置するセンタフレームである。このセンタフレーム7は、図2に示すように、中央に位置する中央フレーム部7Aと、該中央フレーム部7Aの前側に位置して左,右方向に延びた左前脚部7B,右前脚部7Cと、中央フレーム部7Aの後側に位置して斜め左方向に延びた左後脚部7D,斜め右方向に延びた右後脚部7Eとを備えている。ここで、前記左,右の前脚部7B,7Cは、例えば前側に排土板装置(図示せず)を設ける構造とするために、左,右方向にほぼ一直線に延びている。これにより、センタフレーム7は、上方からみて全体が略K字状をなし、左前脚部7B,右前脚部7Cの先端部には、後述する左,右のサイドフレーム8,9がほぼ直角に取り付けられている。
【0024】
8はセンタフレーム7の左側に溶接手段を用いて固着された左サイドフレーム、9はセンタフレーム7の右側に溶接手段を用いて固着された右サイドフレームをそれぞれ示している。ここで、左サイドフレーム8は、センタフレーム7の左前脚部7B、左後脚部7Dの先端部に取り付けられた状態で前,後方向に延びている。一方、右サイドフレーム9は、センタフレーム7の右前脚部7C、右後脚部7Eの先端部に取り付けられた状態で前,後方向に延びている。
【0025】
この場合、左サイドフレーム8は、前,後方向に延びたフレーム本体10と、該フレーム本体10の前側に設けられ、後述する遊動輪14をヨーク(図示せず)を介して前,後方向に移動可能に支持する2枚のガイド板11と、前記フレーム本体10の後側に設けられ、油圧モータ(図示せず)を介して後述する駆動輪13が取り付けられる駆動輪ブラケット12とにより大略構成されている。
【0026】
また、フレーム本体10は、図2に示す如く、例えば1枚の鋼板を折曲げ加工することにより形成されている。即ち、フレーム本体10は、上面板10Aと、該上面板10Aの内側(センタフレーム7側)から下向きに延びた内側面板10Bと、前記上面板10Aの外側から下向きに延びた外側面板10Cとにより逆U字状に形成されている。また、上面板10Aは、土砂等が外側に落下するように、内側から外側に向けて下向きに傾斜する傾斜面となっている。
【0027】
一方、右サイドフレーム9も、左サイドフレーム8と同様に、上面板10A、内側面板10B、外側面板10Cからなるフレーム本体10と、フレーム本体10の前側に設けられた2枚のガイド板11と、フレーム本体10の後側に設けられた駆動輪ブラケット12とにより大略構成されている。
【0028】
13は左サイドフレーム8および右サイドフレーム9の長さ方向の一側に設けられた駆動輪を示している。該駆動輪13は、走行モータ(図示せず)等によって回転駆動されることにより、後述するゴムクローラ15およびパッドクローラ28を周回させるものである。
【0029】
14は左サイドフレーム8および右サイドフレーム9の長さ方向の他側に設けられた遊動輪を示している。該遊動輪14は、左,右のサイドフレーム8,9のフレーム本体10内に配設された履帯張り装置(図示せず)によって駆動輪13から離間する方向に付勢され、後述するゴムクローラ15およびパッドクローラ28に適度な張りを与える構成となっている。
【0030】
15は駆動輪13と遊動輪14との間に巻回して設けられた履帯としてのゴムクローラを示している。該ゴムクローラ15は、左サイドフレーム8および右サイドフレーム9に設けられた後述する下ローラ装置16および上ローラ装置18によってガイドされた状態で、走行モータにより駆動輪13と遊動輪14との間で周回され、外側面15Aが地面に接触して下部走行体2を走行させるものである。
【0031】
ここで、図4および図5に示すように、ゴムクローラ15は、外側面15Aと裏面15Bとを有する帯形状のゴム体内に、複数(多数)個の芯金15Cをそれぞれ間隔をもって埋設して一体成形されたゴム製の走行用履帯である。そして、ゴムクローラ15の芯金15Cには、左,右一対の突起部15Dが一体形成され、該各突起部15Dは、ゴムクローラ15の周回方向に伸長するほぼ直方体形状からなり、ゴムクローラ15の裏面15B側から突出している。該突起部15Dは、油圧ショベル1の下部走行体2に設けられた駆動輪13および遊動輪14に係合し、ゴムクローラ15が外れるのを防止している。また、突起部15Dの内周側はゴムクローラ15の内側面15Eとなり、当該内側面15Eが後述する下ローラ装置16および上ローラ装置18と接触している。
【0032】
16は左サイドフレーム8および右サイドフレーム9の下側に回転可能に設けられた下ローラ装置を示している。該下ローラ装置16は、左,右のサイドフレーム8,9を構成するフレーム本体10の前,後方向に間隔をもって複数個、例えば4個設けられ、ゴムクローラ15および後述するパッドクローラ28をガイドするものである。
【0033】
また、各下ローラ装置16は、図5に示す如く、左,右のサイドフレーム8,9を構成するフレーム本体10の内側面板10Bと外側面板10Cとによって支持されたローラ軸16Aと、該ローラ軸16Aに回転可能に取り付けられゴムクローラ15を案内するローラ部材16Bとにより構成されている。
【0034】
ここで、ローラ軸16Aは、左,右方向に延びた円柱状のロッドからなり、その両端部にフレーム本体10の内側面板10B、外側面板10Cに挿通したボルト17を螺着することにより、フレーム本体10の下端側に回転不能に取り付けられている。
【0035】
また、ローラ部材16Bは、左,右方向の中央部分が鍔状の大径部16B1となる段付円筒体として形成され、その内周側にはローラ軸16Aが摺動可能に挿嵌されるスリーブからなる軸受(図示せず)が設けられている。なお、軸受としては、内輪、外輪および玉からなる玉軸受等の他の軸受を用いることもできる。
【0036】
そして、各下ローラ装置16は、ローラ部材16Bの大径部16B1をゴムクローラ15の左,右の突起部15D間に配置することにより、ゴムクローラ15の周回動作を許しつつ、該ゴムクローラ15が、左,右方向に位置ずれしないように案内することができる。
【0037】
次に、第1の実施の形態に用いられる上ローラ装置18について説明する。
【0038】
18は左サイドフレーム8および右サイドフレーム9の上面側にそれぞれ設けられた上ローラ装置を示している。該上ローラ装置18は、駆動輪13と遊動輪14との間でゴムクローラ15および後述するパッドクローラ28を下側から支持しつつ周回方向に案内するものである。ここで、上ローラ装置18は、図2および図3に示すように、後述するローラ取付部材19と、支持軸25と、ローラ部材26とにより大略構成されている。
【0039】
19は左,右のサイドフレーム8,9を構成するフレーム本体10に固着されるローラ取付部材を示している。該ローラ取付部材19は、金属または耐摩耗性に優れた樹脂等により一体成形されており、上面19A、内側面19B、外側面19C、前面19D、後面19E、下面19Fを有するブロック体として構成されている。
【0040】
ここで、ローラ取付部材19の下面19Fは、フレーム本体10の上面板10Aと同様の傾斜面となっており、当該上面板10Aに溶接されている。これにより、ローラ取付部材19は、内側面19B、外側面19C等が鉛直方向に延びた状態でフレーム本体10に固着されている。
【0041】
20はローラ取付部材19に設けられた上側軸挿嵌孔を示し、21は上側軸挿嵌孔20から下側に離間して設けられた下側軸挿嵌孔を示している。該各軸挿嵌孔20,21は、等しい孔径をもってローラ取付部材19の内側面19Bから外側面19Cに向けて貫通しており、後述する支持軸25および軸支持片27を嵌合させるものである。
【0042】
このように、第1の実施の形態においては、ローラ取付部材19に上,下方向に離間して上側軸挿嵌孔20と下側軸挿嵌孔21とを設ける構成としている。この場合、上側軸挿嵌孔20と下側軸挿嵌孔21とは、その孔中心を上,下方向に垂直にずらすことにより、上側軸挿嵌孔20の下側周縁と下側軸挿嵌孔21の上側周縁とが上,下方向で重なり合う位置に設けられている。これにより、各軸挿嵌孔20,21が重なり合った周縁は、略8の字形状を成している。
【0043】
ここで、図5に示すゴムクローラ15の外側面15Aから内側面15Eまでの高さ寸法をゴムクローラ15の厚さ寸法B1とし、図9に示す後述のパッドクローラ28の外側面28Bから内側面28Fまでの高さ寸法をパッドクローラ28の厚さ寸法B2とすると、ゴムクローラ15の厚さ寸法B1と、パッドクローラ28の厚さ寸法B2とは、下記数1の関係となる。
【0044】
【数1】

【0045】
即ち、後述するパッドクローラ28の厚さ寸法B2は、ゴムクローラ15の厚さ寸法B1よりも寸法C1だけ大きく設定されている。そして、ローラ取付部材19に穿設された上側軸挿嵌孔20の孔中心と下側軸挿嵌孔21の孔中心との間の距離C1は、上述の寸法C1と等しく設定されている。
【0046】
22はローラ取付部材19の上端側に設けられたスリット状の切欠き部を示し、該切欠き部22は、ローラ取付部材19の上面19Aから各軸挿嵌孔20,21のうち最上位置となる上側軸挿嵌孔20まで上,下方向に貫通して延びている。したがって、ローラ取付部材19の上端側は、切欠き部22を挟んで前,後方向に2分割されている。また、ローラ取付部材19の上面19Aと上側軸挿嵌孔20との間には、切欠き部22と交差する方向に延び、ローラ取付部材19を前,後方向に貫通するボルト挿通孔23が設けられている。このボルト挿通孔23にボルト24を挿通した状態でナット24Aを締め付けることによりスリット状の切欠き部22が狭まり、これにより上側軸挿嵌孔20、または下側軸挿嵌孔21に嵌合された後述する支持軸25を挟み込んで固定することができる。
【0047】
25はゴムクローラ15および後述するパッドクローラ28に応じて各軸挿嵌孔20,21のいずれかに嵌合される支持軸を示している。該支持軸25は、金属材料を用いて左,右方向に延びる中実な円柱として形成されている。そして、支持軸25の基端側は、ゴムクローラ15および後述のパッドクローラ28に応じてローラ取付部材19に設けられた上側軸挿嵌孔20または下側軸挿嵌孔21に選択的に挿通され、支持軸25の先端側には、後述するローラ部材26が回転可能に取り付けられている。
【0048】
ここで、ゴムクローラ15を装着する時には、ローラ取付部材19の上側軸挿嵌孔20に支持軸25を挿通した状態で、ローラ取付部材19に設けられたボルト挿通孔23にボルト24を挿通し、ナット24Aにより締め付ける。これにより、ローラ取付部材19のスリット状の切欠き部22が狭まり、上側軸挿嵌孔20の内周面20Aが、支持軸25の外周面25Aを押圧することにより支持軸25が固定される。
【0049】
一方、後述のパッドクローラ28を装着する時には、ローラ取付部材19の下側軸挿嵌孔21に支持軸25を挿通した状態で、ローラ取付部材19に設けられたボルト挿通孔23にボルト24を挿通し、ナット24Aにより締め付ける。これにより、ローラ取付部材19の切欠き部22が狭まり、下側軸挿嵌孔21の内周面21Aが、支持軸25の外周面25Aを押圧することにより支持軸25が固定される。
【0050】
26は支持軸25の先端側に回転可能に設けられたローラ部材を示している。該ローラ部材26は、金属および耐摩耗性に優れた樹脂等により左,右方向に延びた円柱状に形成されている。そして、ローラ部材26は、ゴムクローラ15の内側面15Eおよび後述するパッドクローラ28の内側面28Fを下側から支持し、これらゴムクローラ15、パッドクローラ28を駆動輪13および遊動輪14に向けてガイドするものである。
【0051】
27は支持軸25と共に上側軸挿嵌孔20または下側軸挿嵌孔21に取り付けられる軸支持片を示している。この軸支持片27は、各軸挿嵌孔20,21のうち最下位置となる下側軸挿嵌孔21よりも上側に位置する上側軸挿嵌孔20に支持軸25を嵌合したときに、該支持軸25よりも下側に形成される空間部を埋めるものである。ここで、軸支持片27は、金属および耐摩耗性に優れた樹脂等により形成され、支持軸25の外周面25Aと等しい曲率を有する凹円弧面27Aと、各軸挿嵌孔20,21の内周面20A,21Aと等しい曲率を有する凸円弧面27Bとからなり、ローラ取付部材19の左,右方向の厚さ寸法とほぼ等しい長さを有する棒状体として構成されている。
【0052】
そして、例えばゴムクローラ15を装着するため、支持軸25を上側軸挿嵌孔20に挿嵌したときには、支持軸25と下側軸挿嵌孔21との間には空間部が形成される。この状態で、支持軸25と下側軸挿嵌孔21との間の空間部に軸支持片27を嵌め込むことにより、軸支持片27の凹円弧面27Aが、支持軸25の外周面25Aに当接してこれを下側から支持することにより、支持軸25が上側軸挿嵌孔20から脱落するのを防止することができる構成となっている。
【0053】
次に、図6は油圧ショベル1の駆動輪13と遊動輪14との間に履帯としてのパッドクローラ28を装着した状態を示している。このパッドクローラ28は、作業環境や作業内容に応じて上述のゴムクローラ15と交換して装着されるものである。
【0054】
ここで、図8および図9に示すように、パッドクローラ28は、複数のゴムパッド28A、リンク部材28D、連結ピン28E等から大略構成されている。ここで各ゴムパッド28Aは、金属材料からなる芯体の外周側をゴム部材で覆うことにより形成され、地面に接地する外側面28Bと、内周側に位置する裏面28Cとを有している。一方、各リンク部材28Dは、パッドクローラ28の周回方向に伸長するほぼ長円板状に形成され、各リンク部材28Dは連結ピン28Eにより無端状に連結されている。そして、無端状に連結された各リンク部材28Dの接地面側にゴムパッド28Aを1駒ずつボルトを用いて取り付けることにより、パッドクローラ28が構成されている。これにより、破損したゴムパッド28Aのみを交換することができるので経済的である。
【0055】
このように構成されたパッドクローラ28は、油圧ショベル1の下部走行体2に設けられた駆動輪13および遊動輪14に巻回され、リンク部材28Dが、下ローラ装置16のローラ部材16Bに設けられた大径部16B1等に係合することにより、パッドクローラ28が外れるのを防止している。この場合、リンク部材28Dの内周側は、パッドクローラ28の内側面28Fとなり、当該内側面28Fが下ローラ装置16および上ローラ装置18と接触している。
【0056】
ここで、上述したように、パッドクローラ28の厚さ寸法B2は、ゴムクローラ15の厚さ寸法B1よりも寸法C1だけ大きく設定され、ローラ取付部材19に設けた上側軸挿嵌孔20の孔中心と下側軸挿嵌孔21の孔中心との距離C1と等しく設定されている。
【0057】
従って、図4および図5に示すように、トラックフレーム5にゴムクローラ15を装着したときには、ローラ取付部材19の上側軸挿嵌孔20に支持軸25を取り付け、この支持軸25に設けたローラ部材26によってゴムクローラ15の内側面15Eを支持する。このとき、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間には、上,下方向に適度な間隔Aが形成される。これにより、ゴムクローラ15の外側面15Aに付着した土砂等が上部旋回体3に干渉するのを抑えることができ、かつ、オペレータが上部旋回体3に乗り降りするときに、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間に足先を挿入し、容易にゴムクローラ15の外側面15Aに足を掛けることができる構成となっている。
【0058】
一方、図8および図9に示すように、トラックフレーム5にパッドクローラ28を装着したときには、ローラ取付部材19の下側軸挿嵌孔21に支持軸25を取り付け、この支持軸25に設けたローラ部材26によってパッドクローラ28の内側面28Fを支持する。これにより、パッドクローラ28の装着時においては、ゴムクローラ15の装着時よりも上述の距離C1だけローラ部材26の位置が下がるので、ゴムクローラ15の外側面15Aと上部旋回体3の下面3Aとの間に形成される間隔Aとパッドクローラ28の外側面28Bと上部旋回体3の下面3Aとの間に形成される間隔Aとが同一となる。この結果、同一のトラックフレーム5にパッドクローラ28を装着した場合でも、ゴムクローラ15を装着した場合でも、上部旋回体3の下面3Aとパッドクローラ28Aの外側面28Bとの間隔Aを最適なものとすることができる。
【0059】
なお、トラックフレーム5にパッドクローラ28を装着したときには、支持軸25を下側軸挿嵌孔21に挿嵌することにより、支持軸25と上側軸挿嵌孔20との間に空間部が形成されることになる。この場合には、軸支持片27を反転させることにより、支持軸25と上側軸挿嵌孔20との間に形成される空間部に軸支持片27を嵌め込むことができるので、軸支持片27の紛失を防ぐことができる。
【0060】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き上ローラ装置18を有するもので、この油圧ショベル1は、オペレータが、運転席に着座して走行操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0061】
ここで、第1の実施の形態による油圧ショベル1は、作業現場の環境、作業内容等に伴う顧客のニーズに対応するために、同一のトラックフレーム5に対し、厚さの異なるゴムクローラ15とパッドクローラ28のうち一方を選択的に装着することができる構成となっている。
【0062】
具体的には、図3ないし図5に示すように、トラックフレーム5にゴムクローラ15を装着する際には、ローラ取付部材19に設けられた上側軸挿嵌孔20に支持軸25を嵌合し、支持軸25と下側軸挿嵌孔21との間に形成された空間部に軸支持片27を嵌合した状態でボルト挿通孔23にボルト24を挿通してナット24Aを締め込むことにより、支持軸25と軸支持片27とを固定する。これにより、駆動輪13と遊動輪14との間に巻回されたゴムクローラ15の内側面15Eを、支持軸25に取り付けたローラ部材26によって下側から支持することができる。
【0063】
このとき、ゴムクローラ15の外側面15Aから内側面15Eまでの厚さ寸法はB1となり、地表面からゴムクローラ15の外側面15Aまでの高さ寸法はD1となっている。そして、ゴムクローラ15の外側面15Aと上部旋回体3の下面3Aとの間には、上,下方向の間隔Aが形成される。この間隔Aは、ゴムクローラ15の表面(外側面15A)に付着した土砂等が、上部旋回体3に干渉することがなく、また、オペレータが、ゴムクローラ15の外側面15Aに容易に足をかけて、上部旋回体3に乗り降りすることができる程度の大きさに設定されている。
【0064】
一方、図6ないし図9に示すように、ゴムクローラ15に替えてパッドクローラ28をトラックフレーム5に装着する際には、ローラ取付部材19に設けられた下側軸挿嵌孔21に支持軸25を嵌合し、ボルト挿通孔23にボルト24を挿通してナット24Aを締め込むことにより、支持軸25を固定する。このとき、支持軸25と上側軸挿嵌孔20との間に形成される空間部に軸支持片27を嵌め込んで収納することにより、軸支持片27の紛失を防止することができる。これにより、駆動輪13と遊動輪14との間に巻回されたパッドクローラ28の内側面28Fを支持軸25に取り付けたローラ部材26によって下側から支持することができる。
【0065】
このとき、パッドクローラ28の外側面28Bから内側面28Fまでの厚さ寸法はB2となり、地表面からパッドクローラ28の外側面28Bまでの高さ寸法はD2となっている。
【0066】
この場合、上記数1より、パッドクローラ28の厚さ寸法B2は、ゴムクローラ15の厚さ寸法B1よりも寸法C1だけ厚い。このため、仮に上側軸挿嵌孔20に取り付けた支持軸25のローラ部材26によって、パッドクローラ28を支持したとすると、地表面からパッドクローラ28の外側面28Bまでの高さ寸法D2は、地表面からゴムクローラ15の外側面15Aまでの高さ寸法D1よりも寸法2C1だけ高くなる。一方、上部旋回体3の下面3Aとパッドクローラ28の外側面28Bとの間隔は、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間隔Aよりも、パッドクローラ28の厚さ寸法B2とゴムクローラ15の厚さ寸法B1との寸法差C1だけ狭くなることになる。
【0067】
そこで、図8および図9に示すように、トラックフレーム5にパッドクローラ28を装着するときには、下側軸挿嵌孔21に取り付けた支持軸25のローラ部材26によってパッドクローラ28の内側面28Fを支持する。この場合、下側軸挿嵌孔21の孔中心は、上側軸挿嵌孔20の孔中心から距離C1だけ下方に設定されているので、上ローラ装置18のローラ部材26の位置も距離C1だけ下がることになる。この結果、ゴムクローラ15よりも厚さ寸法が大きなパッドクローラ28を装着した場合でも、パッドクローラ28の外側面28Bと上部旋回体3の下面3Aとの間にゴムクローラ15の外側面15Aと上部旋回体3の下面3Aとの間と等しい間隔Aを確保することができる。
【0068】
この結果、トラックフレーム5にゴムクローラ15を装着した場合でも、パッドクローラ28を装着した場合でも、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間、およびパッドクローラ28の外側面28Bとの間に等しい間隔Aを確保することができる。従って、パッドクローラ28の表面(外側面28B)に付着した土砂等が上部旋回体3に干渉するのを防止し、上部旋回体3を保護することができる。また、オペレータは、パッドクローラ28の表面(外側面28B)に容易に足をかけることができ、迅速かつ安全に上部旋回体3に乗り降りすることができる。また、ゴムクローラ15を用いる場合とパッドクローラ28を用いる場合とでトラックフレーム5を交換する必要がなく、同一のトラックフレーム5に対し、ゴムクローラ15とパッドクローラ28とをいずれも最適な状態で巻回することができるので、顧客への対応性が高く、経済性も高めることができる。
【0069】
次に、図10ないし図19は、本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、上ローラ装置のローラ取付部材に上,下方向に離間して3個の軸挿嵌孔を設けることにより、上述した厚さの異なる2種類の履帯(ゴムクローラ、パッドクローラ)に加えて、三角クローラにも対応させたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0070】
まず、図10は油圧ショベル1の駆動輪13と遊動輪14との間に履帯としての三角クローラ31を装着した状態を示している。該三角クローラ31は、作業環境や作業内容に応じてゴムクローラ15、パッドクローラ28と交換してトラックフレーム5に装着されるものである。
【0071】
ここで、図18および図19に示すように、三角クローラ31は、複数の三角シュー31A、リンク部材31D、連結ピン31E等から大略構成されている。ここで、各三角シュー31Aは、金属材料からなる芯体の外周側をゴム部材で覆うことにより断面三角形状に形成されており、地面に接地する外側面31Bと、内周側に位置する裏面31Cとを有している。一方、各リンク部材31Dは、三角クローラ31の周回方向に伸長するほぼ長円板状に形成され、各リンク部材31Dは連結ピン31Eにより無端状に連結されている。そして、無端状に連結された各リンク部材31Dの接地面側に三角シュー31を1駒ずつボルトを用いて取り付けることにより、三角クローラ31が構成されている。これにより、破損した三角シュー31Aのみを交換することができるので経済的である。
【0072】
このように構成された三角クローラ31は、油圧ショベル1の下部走行体2に設けられた駆動輪13および遊動輪14に巻回され、リンク部材31Dが、下ローラ装置16のローラ部材16Bに設けられた大径部16B1等に係合することにより、三角クローラ31が外れるのを防止している。この場合、リンク部材31Dの内周側は、三角クローラ31の内側面31Fとなり、当該内側面31Fが下ローラ装置16および後述する上ローラ装置32と接触している。
【0073】
次に、第2の実施の形態に用いる上ローラ装置32について説明する。
【0074】
32は左サイドフレーム8および右サイドフレーム9の上面側にそれぞれ設けられた上ローラ装置を示している。該上ローラ装置32は、駆動輪13と遊動輪14との間でゴムクローラ15、パッドクローラ28および三角クローラ31を下側から支持しつつ周回方向に案内するものである。そして、上ローラ装置32は、後述のローラ取付部材33と、支持軸25と、ローラ部材26とにより大略構成されている。
【0075】
33は左,右のサイドフレーム8,9を構成するフレーム本体10に固着されるローラ取付部材を示している。該ローラ取付部材33は、金属または耐摩耗性に優れた樹脂等により一体成形されており、上面33A、内側面33B、外側面33C、前面33D、後面33E、下面33Fを有するブロック体として構成されている。
【0076】
ここで、ローラ取付部材33の下面33Fは、フレーム本体10の上面板10Aと同様の傾斜面となっており、当該上面板10Aに溶接されている。これにより、ローラ取付部材33は、内側面33B、外側面33C等が鉛直方向に延びた状態でフレーム本体10に固着されている。
【0077】
34はローラ取付部材33に設けられた上側軸挿嵌孔を示し、35は上側軸挿嵌孔34から下側に離間して設けられた中間軸挿嵌孔を示し、36は中間軸挿嵌孔35から下側に離間して設けられた下側軸挿嵌孔を示している。該各軸挿嵌孔34,35,36は、等しい孔径をもってローラ取付部材33の内側面33Bから外側面33Cに向けて貫通しており、支持軸25および後述の軸支持片39,40を嵌合させるものである。
【0078】
このように、第2の実施の形態においては、ローラ取付部材33に上,下方向に離間して上側軸挿嵌孔34と中間軸挿嵌孔35と下側軸挿嵌孔36とを設ける構成としている。この場合、これら上側軸挿嵌孔34,中間軸挿嵌孔35,下側軸挿嵌孔36は、その孔中心を上,下方向に垂直にずらすことにより、上側軸挿嵌孔34の下側周縁と中間軸挿嵌孔35の上側周縁とが上,下方向で重なり合い、中間軸挿嵌孔35の下側周縁と下側軸挿嵌孔36の上側周縁とが上,下方向で重なり合う位置に設けられている。これにより、各軸挿嵌孔34,35,36が重なり合った周縁は、上,下方向に円を重ね合わせた3段の円弧状を成している。
【0079】
ここで、図14ないし図19に示すように、パッドクローラ28の厚さ寸法B2は、ゴムクローラ15の厚さ寸法B1よりも、寸法C1だけ大きく設定されている。
【0080】
一方、三角クローラ31の外側面31Bから内側面31Fまでの高さ寸法を三角クローラ31の厚さ寸法B3とすると、パッドクローラ28の厚さ寸法B2と、三角クローラ31の厚さ寸法B3とは、下記数2の関係となる。
【0081】
【数2】

【0082】
即ち、三角クローラ31の厚さ寸法B3は、パッドクローラ28の厚さ寸法B2よりも寸法C2だけ大きく設定されている。
【0083】
そして、ローラ取付部材33に形成された3つの軸挿嵌孔34,35,36のうち、上側軸挿嵌孔34の孔中心と中間軸挿嵌孔35の孔中心との間の距離は、パッドクローラ28の厚さ寸法B2とゴムクローラ15の厚さ寸法B1との差(寸法C1)に等しい距離C1に設定されている。また、中間軸挿嵌孔35の孔中心と下側軸挿嵌孔36の孔中心との間の距離は、三角クローラ31の厚さ寸法B3とパッドクローラ28の厚さ寸法B2との差(寸法C2)に等しい距離C2に設定されている。
【0084】
従って、第2の実施の形態においては、上側軸挿嵌孔34は、トラックフレーム5にゴムクローラ15を装着するときに使用し、中間軸挿嵌孔35は、トラックフレーム5にパッドクローラ28を装着するときに使用し、下側軸挿嵌孔36は、トラックフレーム5に三角クローラ31を装着するときに使用する構成となっている。
【0085】
ここで、図18および図19に示すように、下側軸挿嵌孔36に支持軸25を取り付け、この支持軸25に取り付けたローラ部材26によって三角クローラ31の内側面31Fを下側から支持した場合には、地表面から三角クローラ31の外側面31Bまでの高さ寸法はD3となる。
【0086】
この場合、上記数2より、三角クローラ31の厚さ寸法B3は、パッドクローラ28の厚さ寸法B2よりも寸法C2だけ厚い。このため、仮に中間軸挿嵌孔35に取り付けられた支持軸25のローラ部材26によって、三角クローラ31を支持したとすると、地表面から三角クローラ31の外側面31Bまでの高さ寸法は、地表面からパッドクローラ28の外側面28Bまでの高さ寸法D2よりも寸法2C2だけ高くなる。一方、上部旋回体3の下面3Aと三角クローラ31の外側面31Bとの間隔は、上部旋回体3の下面3Aとパッドクローラ28の外側面28Bとの間隔Aよりも、三角クローラ31の厚さ寸法B3とパッドクローラ28の厚さ寸法B2との寸法差C2だけ狭くなる。
【0087】
そこで、トラックフレーム5に三角クローラ31を装着するときには、下側軸挿嵌孔36に取り付けた支持軸25のローラ部材26によって三角クローラ31の内側面31Fを支持する。この場合、下側軸挿嵌孔36の孔中心は、中間軸挿嵌孔35の孔中心から距離C2だけ下方に設定されているので、上ローラ装置32のローラ部材26の位置も距離C2だけ下がることになる。この結果、パッドクローラ28よりも厚さ寸法が大きな三角クローラ31を装着した場合でも、三角クローラ31の外側面31Bと上部旋回体3の下面3Aとの間に間隔Aを確保することができる。
【0088】
このように、第2の実施の形態による上ローラ装置32では、上側軸挿嵌孔34に取り付けた支持軸25のローラ部材26によってゴムクローラ15の内側面15Eを支持した状態(図14,図15の状態)での、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間隔Aと、中間軸挿嵌孔35に取り付けた支持軸25のローラ部材26によってパッドクローラ28の内側面28Fを支持した状態(図16,図17の状態)での、上部旋回体3の下面3Aとパッドクローラ28の外側面28Bとの間隔Aと、下側軸挿嵌孔36に取り付けた支持軸25のローラ部材26によって三角クローラ31の内側面31Fを支持した状態(図18,図19の状態)での、上部旋回体3の下面3Aと三角クローラ31の外側面31Bとの間隔Aとを一定に保つことができる構成となっている。
【0089】
37はローラ取付部材33の上端側に設けられたスリット状の切欠き部を示し、該切欠き部37は、ローラ取付部材33の上面33Aから各軸挿嵌孔34,35,36のうち最上位置となる上側軸挿嵌孔34まで上,下方向に貫通して延び、ローラ取付部材33の上端側は、切欠き部37を挟んで前,後方向に2分割されている。また、ローラ取付部材33の上面33Aと上側軸挿嵌孔34との間には、ローラ取付部材33を前,後方向に貫通するボルト挿通孔38が設けられ、該ボルト挿通孔38に挿通したボルト24にナット24Aを螺合することにより、各軸挿嵌孔34,35,36に挿通した支持軸25を固定することができる構成となっている。
【0090】
39は各軸挿嵌孔34,35,36のうち最上位置の上側軸挿嵌孔34に支持軸25を嵌合したときに該支持軸25よりも下側の空間部を埋める軸支持片を示している。40は各軸挿嵌孔34,35,36のうち中間軸挿嵌孔35に支持軸25を嵌合したときに該支持軸25よりも下側の空間部を埋める軸支持片を示している。これら各軸支持片39,40は、金属および耐摩耗性に優れた樹脂等により形成されており、軸支持片39は、支持軸25の外周面25Aと等しい曲率を有する凹円弧面39Aと、中間軸挿嵌孔35および下側軸挿嵌孔36の内周縁に対応する略8の字形の凸円弧面39Bとを有する棒状体からなっている。一方、軸支持片40は、支持軸25の外周面25Aと等しい曲率を有する凹円弧面40Aと、支持軸25の外周面25Aと等しい曲率を有する凸円弧面40Bとを有する棒状体からなっている。
【0091】
そして、支持軸25を上側軸挿嵌孔34に挿通することにより、中間軸挿嵌孔35および下側軸挿嵌孔36が空間部となった場合には、この支持軸25の下側に形成された空間部に軸支持片39を嵌め込むことにより支持軸25の脱落を防止することができる。
【0092】
同様に、支持軸25を中間軸挿嵌孔35に挿通することにより、下側軸挿嵌孔36が空間部となった場合には、この支持軸25の下側に形成された空間部に軸支持片40を嵌め込むことにより支持軸25の脱落を防止することができる。
【0093】
第2の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き上ローラ装置32を備えるもので、図16および図17に示すように、トラックフレーム5にパッドクローラ28を装着するときには、中間軸挿嵌孔35に取り付けた支持軸25のローラ部材26によってパッドクローラ28の内側面28Fを支持する。この場合、中間軸挿嵌孔35の孔中心は、上側軸挿嵌孔34の孔中心から距離C1だけ下方に設定され、この距離C1は、パッドクローラ28の厚さ寸法B2とゴムクローラ15の厚さ寸法B1との寸法差C1と等しい。この結果、ゴムクローラ15よりも厚さ寸法が大きなパッドクローラ28を装着した場合でも、パッドクローラ28の外側面28Bと上部旋回体3の下面3Aとの間にゴムクローラ15の外側面15Aと上部旋回体3の下面3Aとの間と等しい間隔Aを確保することができる。
【0094】
また、図18および図19に示すように、トラックフレーム5に三角クローラ31を装着するときには、下側軸挿嵌孔36に取り付けた支持軸25のローラ部材26によって三角クローラ31の内側面31Fを支持する。この場合、下側軸挿嵌孔36の孔中心は、中間軸挿嵌孔35の孔中心から距離C2だけ下方に設定され、この距離C2は、三角クローラ31の厚さ寸法B3とパッドクローラ28の厚さ寸法B2との寸法差C2と等しい。この結果、パッドクローラ28よりも厚さ寸法が大きな三角クローラ31を装着した場合でも、三角クローラ31の外側面31Bと上部旋回体3の下面3Aとの間にパッドクローラ28の外側面28Bと上部旋回体3の下面3Aとの間と等しい間隔Aを確保することができる。
【0095】
かくして、第2の実施の形態によれば、トラックフレーム5にゴムクローラ15を装着した場合でも、パッドクローラ28を装着した場合でも、三角クローラ31を装着した場合でも、上部旋回体3の下面3Aとゴムクローラ15の外側面15Aとの間、パッドクローラ28の外側面28Bとの間、および三角クローラ31の外側面31Bとの間に等しい間隔Aを確保することができる。
【0096】
従って、パッドクローラ28の表面(外側面28B)、あるいは、三角クローラ31の表面(外側面31B)に付着した土砂等が上部旋回体3に干渉するのを防止し、上部旋回体3を保護することができる。また、オペレータは、パッドクローラ28の表面、あるいは、三角クローラ31の表面に容易に足をかけることができ、迅速かつ安全に上部旋回体3に乗り降りすることができる。また、ゴムクローラ15を用いる場合とパッドクローラ28を用いる場合と三角クローラ31を用いる場合とでトラックフレーム5を交換する必要がなく、同一のトラックフレーム5に対し、ゴムクローラ15、パッドクローラ28、三角クローラ31をいずれも最適な状態で巻回することができるので、顧客への対応性が高く、経済性も高めることができる。
【0097】
なお、上述した第1の実施の形態では、上ローラ装置18のローラ取付部材19を左,右のサイドフレーム8,9を構成するフレーム本体10の上面板10A上に固着した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばフレーム本体10の内側面板10Bにローラ取付部材19を固着する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態によるローラ取付部材33についても同様である。
【0098】
また、上述した各実施の形態では、装軌式車両の走行体として、油圧ショベル1の下部走行体2を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、油圧クレーン等の他の装軌式車両の下部走行体にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
5 トラックフレーム
7 センタフレーム
8 左サイドフレーム
9 右サイドフレーム
13 駆動輪
14 遊動輪
15 ゴムクローラ(履帯)
16 下ローラ装置
18,32 上ローラ装置
19,33 ローラ取付部材
20,34 上側軸挿嵌孔
21,36 下側軸挿嵌孔
22,37 切欠き部
23,38 ボルト挿通孔
25 支持軸
26 ローラ部材
27,39,40 軸支持片
28 パッドクローラ(履帯)
31 三角クローラ(履帯)
35 中間軸挿嵌孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタフレームと、該センタフレームを挟んで長さ方向に延びて設けられた左,右のサイドフレームと、該サイドフレームの長さ方向の一側に設けられた駆動輪と、前記サイドフレームの長さ方向の他側に設けられた遊動輪と、前記駆動輪と遊動輪との間に巻回して設けられた履帯と、前記サイドフレームの上面側に設けられ前記駆動輪と前記遊動輪との間で前記履帯を案内する上ローラ装置とを備えてなる装軌式車両の走行体において、
前記上ローラ装置は、前記サイドフレームに固着されるローラ取付部材と、該ローラ取付部材に上,下方向に離間して設けられた複数の軸挿嵌孔と、前記履帯の厚さに応じて前記各軸挿嵌孔のいずれかに嵌合される支持軸と、該支持軸に回転可能に設けられ前記履帯の内側面を下側から支持するローラ部材とにより構成したことを特徴とする装軌式車両の走行体。
【請求項2】
前記各軸挿嵌孔は、その周縁の一部が上,下方向で互いに重なり合う位置に設ける構成とし、
前記各軸挿嵌孔のうち最下位置の軸挿嵌孔よりも上側の軸挿嵌孔に前記支持軸を嵌合したときに該支持軸よりも下側の空間部を埋める軸支持片を設ける構成としてなる請求項1に記載の装軌式車両の走行体。
【請求項3】
前記ローラ取付部材には、前記ローラ取付部材の上面部から前記各軸挿嵌孔のうちの最上位置の軸挿嵌孔まで上,下方向に貫通して延びるスリット状の切欠き部を設け、前記ローラ取付部材の上端側には、前記切欠き部と交差する方向に延びるボルト挿通孔を設け、該ボルト挿通孔に挿通したボルトにより、前記軸挿嵌孔に嵌合した前記支持軸を固定する構成としてなる請求項1または2に記載の装軌式車両の走行体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−49303(P2013−49303A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187162(P2011−187162)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)