説明

装飾幕用装置及びその装置を使用した柱状幕

【課題】 新たに枠を制作しなくともデザイナーの指定するサイズや形状等に沿った幕の制作が可能となり、1台で様々なサイズに対応でき、半永久的な使用が可能となり、枠の固定作業も容易で、円柱状幕の表面形状も可変自在に多様なバリエーションに展開が可能で、急に作業現場で変更を要する場合でもその変更にも対応し得る装飾幕用装置及びその装置を使用した柱状幕を提供する。
【解決手段】同一平面上で同心円の形状若しくは該同心円の形状に近似する形状をした複数個の同心円状のリング体を相互に連結部材にて連結形成するか、または同一平面上で相互に隔離した楕円形状、湾曲形状若しくは三角形、多角形状をした複数個の大きさが異なる類似形状のリング体を相互に連結部材にて連結形成し、該連結したリング体の中心部に取付け手段を設け、前記各リング体のそれぞれに幕取付け部材をスライド可能に取付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は劇場や舞台あるいはコンサート、イベント、ブライダル、ディナーショーなどで使用される各種形状の柱を幕で形成する場合の装飾幕用装置及びその装置を使用した柱状幕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舞台美術等で円柱状幕を制作する場合、デザイナーの指定したサイズによりまず木材等で上部の枠を作る。その枠に合わせて幕を制作し、制作した幕を前記枠に固定していた。当然、その都度新たに枠及び幕を制作することになり、サイズが指定されて初めて制作に取り掛かることができる。また現場でのサイズや形状等の変更には対応し難いという問題があった。
【0003】
また、従来の布製の横断幕、懸垂幕として、布製の横断幕、懸垂幕の辺部の縫製加工において、補強部材に布製テープを用い、該布製テープの長手方向を二つ折りにし、二つ折りの他方の端を、横断幕、懸垂幕の本体の辺部の折り返し部分に綴じ込み、辺部折り返し部の縫製加工と同時に、上記布製テープを縫着したものが開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000-322015
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、舞台美術等で円柱状幕を制作する場合、従来の制作方法では枠をその都度制作する必要があり、手間がかかるだけでなく現場でのサイズや形状等の変更に対して対応し難い点があった。
【0006】
また、上記特許文献1に示す横断幕、懸垂幕の辺部加工時において、三角形の豚革製補強部材の縫着に代わって、補強部材に布製テープを用いたので、ミシン縫製加工が容易になったとはいえ、幕のサイズや形状等の変更に対しては依然として現場で迅速に対応することが出来ない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは新たに枠を制作しなくともデザイナーの指定するサイズや形状等に沿った幕の制作が可能となり、1台で様々なサイズに対応でき、半永久的な使用が可能となり、枠の固定作業も容易で、円柱状幕の表面形状もフラットから、2倍ヒダ、3倍ヒダ、ランダムなヒダ等立体的にも可変自在に多様なバリエーションに展開が可能で、急に作業現場で変更を要する場合でもその変更にも対応し得る装飾幕用装置及びその装置を使用した柱状幕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る装飾幕用装置は、同一平面上で同心円の形状若しくは該同心円の形状に近似する形状をした複数個の同心円状のリング体を相互に連結部材にて連結形成するか、または同一平面上で相互に隔離した楕円形状、湾曲形状若しくは三角形、多角形状をした複数個の大きさが異なる類似形状のリング体を相互に連結部材にて連結形成し、該連結したリング体の中心部に取付け手段を設け、前記各リング体のそれぞれに幕取付け部材をスライド可能に取付けたことを特徴とする。
【0009】
前記相互に連結部材にて連結した各リング体の一部が開放形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の装飾幕用装置である。
【0010】
上記同心円の形状若しくは該同心円の形状に近似する形状に配置した複数のリング体を相互に連結する連結部材は該複数のリング体を複数の区画に分割形成したことを特徴とする。
【0011】
上記幕取付け部材は内側のリング体から外側のリング体に向けて取付け個数が増えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る装飾幕用装置を使用した柱状幕は、幕体上部に形成した取付け穴は上記請求項1記載の装飾幕用装置に係止し、かつ前記幕体の取付け穴は同一リング体に取付けた幕取付け部材に係止した状態で幕体が懸垂していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る装飾幕用装置を使用した柱状幕は、幕体上部に形成した取付け穴は上記請求項1記載の装飾幕用装置に係止し、かつ前記幕体の取付け穴は外側のリング体の幕取付け部材とその内側に位置するリング体の幕取付け部材に交互に係止し、2倍ヒダ、3倍ヒダ、ランダムなヒダ等立体的に可変自在な状態で幕体が懸垂していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る装飾幕用装置は1台を用意することにより新たに枠を制作しなくともデザイナーの指定するサイズや形状等に沿った幕の制作が可能となり、1台で様々なサイズに対応でき、半永久的な使用が可能である。また本発明に係る装飾幕用装置は枠の固定作業も容易で、円柱状幕の表面形状もフラットから、2倍ヒダ、3倍ヒダ、ランダムなヒダ等立体的にも可変自在に多様なバリエーションに展開が可能で、急に作業現場で変更を要する場合でもその変更に対応し得る装飾幕用装置及びその装置を使用した柱状幕が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る装飾幕用装置の平面図、図2は本発明に係る装飾幕用装置の側面図をそれぞれ示す。
リング体1は同一平面上に同心円の形状若しくは同心円の形状に近似する形状をした複数個が等間隔、若しくは不等間隔又は両者を組み合わせた間隔に配置する。これら間隔の選択は用途等により適宜決定する。リング体1は金属製、その他の機械的強度を有するパイプその他の棒状体で形成する。
【0016】
リング体1は相互に所定間隔を維持して連結するためにリング体1の中心部で交叉し放射状に伸びる複数本の連結部材2を用いて固定する。固定手段としては各リング体1と連結部材2の交叉する箇所を溶接又は結着部材等により固定する。同心円状に配置された複数のリング体1は連結部材2により複数の区画に分割形成される。
【0017】
3はリング体1の中心部に位置する連結部材2の上部に溶接その他の固定部材により固定したクランプで、舞台装置の天井等の取付け箇所に取り外し自在に取付ける。
【0018】
4はリング体1のそれぞれにスライド可能に取付けた幕取付け部材である。幕取付け部材4は例えば棒状装置を略S字形状に曲げ加工をして得ることが出来るが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、要は柱状幕5の上部をリング体1にスライド可能に取付けることができるものであればよい。幕取付け部材4はその上部がリング体1にスライド可能に係止し、下部は柱状幕5の上部の取付け穴に係止する。リング体1のそれぞれに取付ける幕取付け部材4の設置個数は内側のリング体1から外側のリング体1に向けて取付け個数が増えるようにする。特に、幕取付け部材4がリング体1同士を連結する連結部材2の近傍に位置するか、又は接した状態にある場合はその連結部材2によって幕取付け部材4の移動が阻止されることとなり、柱状幕5を吊り下げる時に幕取付け部材4の移動が阻止される結果、柱状幕5の位置決めの役割も果たす上に、安定した支持が得られる。
【0019】
図3は装飾幕用装置の平面図、図4は本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕をフラット状に吊り下げた場合の側面図をそれぞれ示す。
柱状幕5は最外殻に位置する幕取付け部材4に取付ける事により柱状幕5の表面は略同一円周上に位置するようにフラットに形成される。本発明で使用する柱状幕5は天然繊維、合成繊維等の生地、各種素材のシート、ビーズチェーン等の美術表現可能な素材であれば特に限定されない。
【0020】
図5は装飾幕用装置の平面図、図6は本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕がヒダ(普通)となるように吊り下げた場合の側面図をそれぞれ示す。
柱状幕5を最外殻に位置するリング体1の幕取付け部材4に取付けるときに、柱状幕5の一部が折り重なるように吊り下げる事により柱状幕5の表面には縦方向に沿って折り曲げ部の線が所定間隔をおいて現われ、柱状幕5の表面にヒダが形成される。ヒダの形成は折り畳み部の一方が表側となり他方が内側に位置するように順次、折り返すことにより形成される。
【0021】
図7は装飾幕用装置の平面図、図8は本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕がヒダ(ギザギザ)となるように吊り下げた場合の側面図をそれぞれ示す
図6に示すように最外殻に位置するリング体1の幕取付け部材4と最外殻の直前に位置するリング体1の幕取付け部材4とに交互に柱状幕5を取付ける事により、柱状幕5の表面はV字型の凹凸面が交互に形成され、外部からはギザギザの柱状幕5が形成され、立体感が一層強調される。また、連結部材2の近傍又は接して取付けられている幕取付け部材4は連結部材2により幕取付け部材4の移動が阻止されることにより、一層安定したジグザグ形状の柱状幕5が形成される。
柱状幕5の形成に際してはサイズ等の変更により、最外殻のリング体1に限らず、内側に位置する所定サイズのリング体1を使用することにより適宜、現場作業において所望する柱状幕5を得ることができる。
【0022】
図9(a)から(g)は円形以外の各種形状のリング体を示す模式図である。
例えば、図9(a)は正方形、図9(b)は各角部が丸みを帯びた正方形、図9(c)は三角形、図9(d)は五角形、図9(e)は多角形の一例である六角形、図9(f)は円の一部が欠けた円形、図9(g)は楕円形、図9(h)は複雑な形状をそれぞれ示す。図9(a)から(h)はいずれも連結部材2を省略して示している。
このような各種形状にすることにより、舞台美術等において、柱状幕5が多様な変化に対応でき、美術表現の可能性が一層高まる。
【0023】
図10(a)から(d)は円形以外の各種形状のリング体の一部が開放形状に形成されている場合を示す模式図である。図10(a)から(d)はいずれも連結部材2を省略して示している。図10(a)は一部開放した三角形、図10(b)はクランク型図形、図10(c)はS字型図形、図10(d)は開放型半円図形をそれぞれ示す。図10(a)から(d)は同心円状又は枝分かれ形状等に形成する事ができる。柱状幕5が多様な変化に対応できるようにするためである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る装飾幕用装置の平面図である。
【図2】本発明に係る装飾幕用装置の側面図である。
【図3】本発明に係る装飾幕用装置の平面図である。
【図4】本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕をフラット状に吊り下げた場合の側面図である。
【図5】本発明に係る装飾幕用装置の平面図である。
【図6】本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕がヒダ(普通)となるように吊り下げた場合の側面図である。
【図7】本発明に係る装飾幕用装置の平面図である。
【図8】本発明に係る装飾幕用装置を使用して柱状幕がヒダ(ギザギザ)となるように吊り下げた場合の側面図である。
【図9】(a)から(h)は円形以外の各種形状のリング体を示す模式図である。
【図10】(a)から(d)は円形以外の各種形状のリング体の一部が開放形状に形成されている場合を示す模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1 リング体
2 連結部材

3 クランプ
4 幕取付け部材
5 柱状幕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上で同心円の形状若しくは該同心円の形状に近似する形状をした複数個の同心円状のリング体を相互に連結部材にて連結形成するか、または同一平面上で相互に隔離した楕円形状、湾曲形状若しくは三角形、多角形状をした複数個の大きさが異なる類似形状のリング体を相互に連結部材にて連結形成し、該連結したリング体の中心部に取付け手段を設け、前記各リング体のそれぞれに幕取付け部材をスライド可能に取付けたことを特徴とする装飾幕用装置。
【請求項2】
前記相互に連結部材にて連結した各リング体の一部が開放形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の装飾幕用装置。
【請求項3】
上記同心円の形状若しくは該同心円の形状に近似する形状に配置した複数のリング体を相互に連結する連結部材は該複数のリング体を複数の区画に分割形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の装飾幕用装置。
【請求項4】
上記幕取付け部材は内側のリング体から外側のリング体に向けて取付け個数が増えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の装飾幕用装置。
【請求項5】
幕体上部に形成した取付け穴は上記請求項1記載の装飾幕用装置に係止し、かつ前記幕体の取付け穴は同一リング体に取付けた幕取付け部材に係止した状態で幕体が懸垂していることを特徴とする装飾幕用装置を使用した柱状幕。
【請求項6】
幕体上部に形成した取付け穴は上記請求項1記載の装飾幕用装置に係止し、かつ前記幕体の取付け穴は外側のリング体の幕取付け部材とその内側に位置するリング体の幕取付け部材に交互に係止し、2倍ヒダ、3倍ヒダ、ランダムなヒダ等立体的に可変自在な状態で幕体が懸垂していることを特徴とする請求項1記載の装飾幕用装置を使用した柱状幕。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−195622(P2007−195622A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15265(P2006−15265)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(506026656)フジハル商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】