説明

装飾用粘着シート

【課題】金属調図柄を有する領域を有する装飾用粘着シートの金属調図柄領域に、研磨処理のような鋳造感並びに立体感を付与する。
【解決手段】透明支持体フィルム4の背面側に、鏡面光沢を備えた金属調の層5、粘着剤層6、必要に応じ剥離紙の層7が設けられ、前記透明支持体フィルム4の表面側に、必要に応じ設けられる印刷図柄層3、鏡面光沢を備えた金属調の層3の少なくとも一部を覆う透明層2、この透明層2の少なくとも一部に設けられたマット剤が配合されたクリヤーインキで形成された透明幾何学模様層1が設けられた装飾用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品、プラスチック成形品、ガラス製品、木材製品、例えば、家電製品、事務機器、車両内外装品、船舶内外装品、その他各種家具類や、建築内装材等の表面に、研磨処理された鋳造金属感並びに立体感を示す図柄を有する装飾用粘着シート、及びこの装飾用粘着シートが貼付された装飾製品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製品、プラスチック成形品、ガラス製品、木材製品、例えば、家電製品、事務機器、車両内外装品、船舶内外装品、その他各種家具類や、建築内装材等の表面に、金属感を有する装飾を施す方法として、メッキによる方法がある。しかし、製品の材質によってはメッキを施すことができないものがあるし、またメッキによる方法は工程が煩雑でありコストも高く、その上環境問題上好ましい方法とはいえない。また、艶消しされた金属感は前記メッキ表面を研磨処理やサンドブラスト、シボ加工、放電処理などにより粗面化することによって得られるが、工程に手間がかかる。一方、装飾シートあるいは装飾品に立体感を付与するには、一般に機械エンボスやエッチング処理などの方法によっているが、これらの処理も、製品の材質などによっては採用できないことがあり、しかもこれらの処理には大型の装置が必要とされ、高コストである。
【0003】
これに対し、各種製品に簡便に装飾を施す方法として、転写シートや、基材シートに印刷を施した粘着シートを用いることは従来から広く行われている。そして、このような転写シートや装飾性粘着シートにおいて、鏡面光沢を有する金属調図柄を得るため、アルミニウム蒸着層を設ける(例えば、特許文献1、2参照)あるいは特定の大きさ、厚みを有するアルミニウム薄片を配合したインキにより印刷を行うこと(例えば、特許文献3、4参照)が行われている。また、アルミニウム粉末を配合したインキにより艶消し状の金属調図柄を得ることも行われている。一方、転写シートや装飾用粘着シートなどの図柄に印刷により立体感を付与する方法としては、凸部となるべき箇所が盛り上がるように印刷インキを用いて印刷する方法、あるいは予め図柄を印刷した後、この図柄の凹部に当たる部分に撥液性のインキで印刷を行い、その後透明ニスを全面あるいは部分的に塗布することにより、撥液インキの未付着部に透明ニスを盛り上がらせる方法(例えば、特許文献5参照)など、種々の方法が採られている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−42937号公報
【特許文献2】特開平6−128537号公報
【特許文献3】特開平10−158561号公報
【特許文献4】特許第3556210号公報
【特許文献5】特開平10−264346号公報
【0005】
しかし、従来は、これら転写シートや装飾用粘着シートの鏡面光沢を有する金属調領域あるいは艶消し状の金属調領域を更に立体的に表現することについてはあまり配慮がなされておらず、また従来の印刷手法によってはこれら金属調部分を立体的に表現できるものではなかった。また装飾用粘着シートなどにおいては、図柄によっては、図柄内に、鏡面光沢を有する金属調領域と艶消し状の金属調領域とを同時に有する図柄も求められており、このような要求に印刷による簡便な方法で対応することも必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、金属調の図柄領域、特に艶消し金属調図柄領域の表面がエッチング処理により凹凸に形成されたような立体感が付与された装飾用粘着シートを提供することを目的とするものである。
また、本発明の他の目的は、金属調図柄領域の一部がメッキのような鏡面光沢を有し、金属調図柄領域の残部領域が研磨処理のような鋳造感を有する装飾用粘着シートを提供することである。
また、本発明は、前記装飾用粘着シートにより装飾された装飾製品を提供することである。
【0007】
本発明者らは、種々検討を行ったところ、金属調図柄領域を有する装飾用粘着シートの少なくとも金属調図柄領域上に透明層を形成し、この透明層上に金属調図柄領域の少なくとも一部を覆うように、マット剤を配合したクリヤーインキにより微細幾何学模様を印刷することにより、上記目的が達成できることを見出して、本発明を成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、透明支持体フィルムの背面側に、鏡面光沢を備えた金属調の層、粘着剤層、必要に応じ設けられる剥離紙の層が設けられ、該透明支持体フィルムの表面側に、必要に応じ設けられる印刷図柄層、鏡面光沢を備えた金属調の層の少なくとも一部を覆う透明層、この透明層上の少なくとも一部に設けられマット剤が配合されたクリヤーインキで形成された透明幾何学模様層がこの順序で設けられてなる装飾用粘着シートに関する。
【0009】
本発明においては、印刷図柄層によって背面の鏡面光沢を備えた金属調の層を覆うことにより、印刷図柄層によって覆われていない金属調層を金属調図柄部とし、この金属調図柄部の少なくとも一部を透明層およびマット剤が配合されたクリヤーインキで形成された透明幾何学模様層で被覆することにより、透明幾何学模様層側から鏡面光沢を備えた金属調の層を観察する場合、該透明幾何学模様層で被覆された金属調図柄部が、メッキのような金属感、艶消しされ、研磨処理のような鋳造感を有するとともに、その表面に幾何学模様状にエッチング処理されたような立体感が現出される。このとき、鏡面光沢を備えた金属調の層が予め図柄状に形成されている場合には、金属調図柄を形成するために印刷層を設ける必要はないし、また鏡面光沢を備えた金属調の層の全てが前記透明層ならびに幾何学模様層で被覆される場合には、当然のこととして、金属調図柄部は全て研磨処理のような鋳造感を有するとともに、その表面が幾何学模様状にエッチング処理されたような立体感を有するものとなる。また、幾何学模様層で被覆されていない金属調図柄部は、透明層にマット剤が含まれていなければ、鏡面光沢を有する金属調図柄部となる。
【0010】
また、本発明の装飾用粘着シートは、透明層にマット剤が含まれていてもよい。これにより、前記透明層および幾何学模様層で被覆された透明幾何学模様層形成領域での鋳造感および立体感がより強く現出される。なお、前記幾何学模様層で被覆されていない金属調図柄部がマット剤を含有する透明層で被覆されていれば、該被覆された金属調図柄部は艶消しされた金属調を示すこととなる。
【0011】
また、本発明の装飾用粘着シートは、マット剤を含有する透明幾何学模様層の幾何学模様の大きさが、金属調図柄中央領域より周辺領域で小さく形成されていることを特徴とする。これにより、艶消し金属調図柄領域の図柄中央部において前記立体感が強く現出し、周辺部では立体感の弱い金属調図柄とされ、グラデーション様に立体感の現出を行うことができる。
【0012】
また、本発明の装飾用粘着シートは、マット剤を含有する透明幾何学模様層の幾何学模様の模様密度が、図柄中央領域より周辺領域で小さく形成されていることを特徴とする。これにより、艶消し金属調図柄領域の図柄中央部において前記立体感が強く現出し、周辺部では立体感の弱い金属調図柄とされ、グラデーション様に立体感の現出を行うことができる。
【0013】
また、本発明の装飾用粘着シートは、透明幾何学模様が凸状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の装飾用粘着シートは、透明幾何学模様が凸状に形成され、またその模様形状が格子状、円形、四角、菱形、三角形、または五角形以上の多角形であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の装飾用粘着シートは、マット剤を含有する透明幾何学模様層および透明層の少なくともいずれかに滑剤、汚染防止剤、帯電防止剤または紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする。滑剤、汚染防止剤の配合により、金属調図柄領域の汚れを防止することができ、帯電防止剤の配合により、装飾用粘着シートへの静電気の蓄積を防止でき、紫外線吸収剤の配合により装飾用粘着シートの耐光性の向上が図られる。
【0016】
また、本発明の装飾用粘着シートは、マット剤を含有する透明幾何学模様層の上に透明保護層が設けられていることを特徴とする。これにより、粘着シートの汚れや耐光性、機械的強度などの特性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明は、上記の装飾用粘着シートが貼着された装飾製品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、本発明の方法を具体的に説明する。
図1は、本発明の装飾用粘着シートの実施例の積層構成を示す模式断面図であり、1は微細幾何学模様をなすマット剤含有透明層、2は透明層、3は印刷図柄層、4は透明支持体フィルム層、5は鏡面光沢を有する金属調の層、6は粘着剤層、7は剥離紙を表す。
【0019】
図1に示される装飾用粘着シートは、例えば、次のような方法により作成できる。すなわち、透明支持体フィルム4の背面側に鏡面光沢を有する金属調の層5を全面または部分的に設け、この金属調の層5の上に粘着剤層6および剥離紙7を形成する。次いで、透明支持体フィルム4の表面側に図柄層3を印刷により設ける。その後印刷図柄層3上に透明層2を印刷またはコーターにより全面または部分的に設け、透明層2の上に凸状幾何学模様をなすマット剤含有透明幾何学模様層1を印刷により設ける方法による。しかし、本発明の装飾用粘着シートの作成方法は、この例示の方法に限られるものではなく、例えば、支持体フィルム4上に、印刷図柄層3、透明層2、マット剤含有透明幾何学模様層1を設けた後、支持体フィルム背面側に金属調層5、粘着剤層6、剥離紙7を設けるような方法によってもよいし、支持体フィルム4の背面に金属調層5を設けた後、支持体フィルム4の表面側に印刷図柄層3、透明層2、マット剤含有透明幾何学模様層1を設け、最後に粘着剤層6および剥離紙7を設けるような方法によってもよいなど、装飾用粘着シートの各層は適宜の順序で設けられればよい。
【0020】
以下、本発明の装飾用粘着シートを構成する各層について詳細に説明する。
先ず本発明の装飾用粘着シートの透明支持体フィルム4としては、従来粘着シート分野で支持体フィルムとして用いられているものの内、透明なものであれば何れのものをも用いることができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリプロピレン、フッ素系樹脂、セロファン等からなるプラスチックフィルムが挙げられる。支持体フィルムは、これら樹脂の単独フィルムであってもよいし、これら樹脂の2種以上のフィルムの積層体であってもよい。耐光性などを考慮すると、これらの中ではポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましい。支持体フィルムには、シートの透明性あるいは形成される印刷像の画質を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、蛍光増白剤等の添加剤が含有されていてもよい。また透明着色されていてもよい。しかし、支持体フィルムは、印刷図柄層および金属調の層が本来有する色が自然な状態で見えるよう、無色透明であることが好ましい。基材シート2の厚さは用途に応じて適宜選択されるが、一般に5〜500μmのものが好ましく、可撓性などを考慮すると、20〜100μmのものがより好ましい。
【0021】
透明支持体4上に設けられる鏡面光沢を有する金属調の層5は、印刷法、コーターを用いるコート法、蒸着法、箔押し法、転写法などによって設けられればよい。鏡面光沢を有する金属調の層を印刷法あるいはコート法により設けられる場合、インキとしては、例えば、前記特許文献2または3に記載されるような、厚みが0.5μm以下で箔面積が20μm2〜2000μm2であるアルミニウム箔片を75%以上含有するアルミニウム箔100重量部に対し、バインダーポリマー15〜200重量部および溶剤600〜3000重量部を含んでなるインキが用いられる。印刷法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷などの通常の印刷法が用いられる。また、コート法による場合は、ロールコート、リバースロールコート、スピンコート、スプレーコートなどの周知コート法が用いられる。
【0022】
一方、鏡面光沢を有する金属調の層5が蒸着金属により形成される場合には、金属蒸着法(例えば真空蒸着法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法など従来知られた方法により、支持体上に金属を蒸着させればよい。蒸着金属としては、アルミニウム、クロム、錫、金、銀等が挙げられる。蒸着は全面に行われてもよいし、パターン状に行われてもよい。また必要であれば、全面蒸着後、適宜の方法によりパターン化されてもよい。また、支持体フィルム面に対する蒸着金属の付着性を良好なものとするために、ウレタン系、エポキシ系、ビニル系、アルリル系等の熱硬化型塗料またはポリエステルアクリル系、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系のアクリル変性やエポキシ樹脂系などの紫外線硬化型塗料をアンダーコート層として塗布してもよい。
【0023】
金属調層5上には、本発明の装飾用粘着シートを被装飾体である各種製品に貼着するための粘着剤層が設けられる。この粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤は、従来公知の粘着剤のいずれのものであってもよい。このような粘着剤の例としては、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型などからなる、アクリル系、塩ビ/酢ビ系、ゴム系、ビニルエーテル系などの粘着剤が挙げられる。粘着剤の層厚は任意の厚さでよく特に限定されないが、通常20〜200μmとされる。粘着剤はロールコート法、リバースロールコート法などによって形成される。
【0024】
さらに、粘着剤層6上には、必要に応じ剥離紙7が設けられる。剥離紙としては、粘着剤層に対し離型性を有するシートが用いられればよい。離型紙としては、具体的には、表面がシリコーンなどによって離型性が付与された、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムあるいは紙などが挙げられる。剥離紙自身が粘着剤層に対し離型性を有するものであれば、前記離型処理をすることは特に必要ではない。
【0025】
前記金属調の層5に対し透明支持体フィルム4の反対面(表面側)に設けられる図柄層3は印刷によって設けられる。印刷図柄層3は、装飾用粘着シートに装飾印刷模様を形成すると共に、金属調の層を部分的に隠蔽し、これにより金属調図柄模様を形成するために設けられる。この印刷図柄層3は必要に応じ設けられればよく、例えば、金属調の層5が図柄状とされ、この金属調の層の図柄のみで装飾用粘着シートの図柄が完成されているような場合には、印刷図柄層3は設けられなくてもよい。印刷図柄層を形成するために用いられる印刷インキとしては、樹脂バインダー中に任意の色の染料、顔料を含有させた印刷インキが使用される。顔料としてはアルミ、マイカ等のメタリック顔料が含まれていてもよい。印刷インキの樹脂バインダーは、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、ゴム系、メラミン系、アルキッド系等、従来印刷インキで用いられているものであればよい。インキには、必要に応じ従来から周知の各種添加剤が配合される。また、インキは、常温硬化型、熱硬化型のインキのほか、紫外線硬化型インキであってもよい。印刷インキとしては、支持体フィルムと密着性のよいウレタン樹脂などの二液硬化性樹脂や紫外線あるいは電子線硬化性樹脂などを樹脂バインダーとして使用する印刷インキが好ましい。印刷図柄層の形成には、グラビア印刷、スクリーン印刷などの通常の印刷法が用いられる。なお、印刷インキの樹脂バインダーとして二液硬化性樹脂を使用する場合、印刷インキからなる図柄層を形成した後30〜80℃で溶剤の乾燥を行うと、樹脂フィルムへの固着力が向上する。印刷図柄層は、単色によるものでも多色によるものであってもよい。多色とする場合には、通常実施されている多色印刷法によればよい。図柄層に印刷されたインキにより、支持体フィルム背面に設けられた鏡面光沢を有する金属調層の一部を隠蔽することにより、隠蔽されていない金属調層が金属調図柄として観察できる。
【0026】
印刷図柄層3の上に設けられる透明層2は、その上に設けられるマット剤含有透明幾何学模様層1とともに、金属調層に立体感並びに艶消し金属調を付与するために用いられる。このため、透明層2は、金属調層に立体感並びに艶消し金属調を付与する必要がある範囲に設けられればよい。透明層がマット剤を含まない場合には、透明層は印刷図柄層に影響を与えないことから、幾何学模様層1が形成されない範囲、例えば装飾用粘着シート全面に設けられてもよい。透明層の形成には、通常の印刷で用いられている、熱硬化型クリヤーインキあるいは紫外線硬化型クリヤーインキが用いられればよい。熱硬化型クリヤーインキとしては、ウレタン系、エポキシ系、ビニル系、アルリル系のクリヤーインキが挙げられる。一方、紫外線硬化型クリヤーインキとしては、ポリエステルアクリル系、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系のアクリル変性やエポキシ樹脂系などのクリヤーインキが挙げられる。速乾性、透明性、耐久性などの点から、紫外線硬化型クリヤーインキを用いることが好ましい。
【0027】
透明層2には、マット剤が含まれていてもよい。マット剤としては、有機系のマット剤と無機系のマット剤があり、有機系のマット剤としては、架橋ポリスチレン、架橋ポリエチレン、架橋アクリル等の架橋樹脂あるいはフェノール樹脂などのビーズまたは粉体が使用される。また、無機系のマット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの粉粒体が用いられる。マット材の粒径は、1〜10μm程度が好ましい。1μm未満では、艶消し感を顕出することが難しく、一方10μmを超えると細かなメッシュによるスクリーン印刷の際に美麗な印刷をほどこすことが難しくなる。またマット剤の印刷インキに対する含有量は、5〜35重量%程度が好ましい。5重量%未満であると艶消し感を顕出することが難しく、一方、35重量%を越えると分散不良の問題や下地層の印刷インキや基材ベースとの密着性の欠如の問題が起こるし、特に無機系のマット剤の場合には、乾燥時に印刷面に亀裂が入る場合がある。製品が屋外で使用されるような場合には、耐光性を考えると無機系のマット剤を用いることが好ましい。透明層には、この他、従来クリヤーインキに用いられている周知の添加剤を添加してもよい。滑剤を添加することにより表面の汚れを防止することができる。クリヤーインキは、その透明性が阻害されない限り着色されていてもよいが、無色透明であることが通常好ましい。膜厚は1〜30μm程度が好ましく、3〜8μmであることがより好ましい。
【0028】
透明層2上には、マット剤が含まれた透明幾何学模様層1が設けられる。この幾何学模様層は印刷で設けられ、印刷法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷などの通常の印刷法が用いられる。また、幾何学模様層を形成するためのインキは、上記透明層を形成する際に用いられるマット剤含有印刷インキと同様のものが用いられればよい。使用する印刷インキは、透明層を形成するために用いられたものと種類が異なる、例えばバインダー樹脂やマット剤が異なるものが用いられてもかまわないが、層の密着性などを考えると、透明層で用いられたものと同じインキを用いることが好ましい。また、速乾性、透明性、耐久性などの点から、紫外線硬化型インキを用いることが好ましい。前記したように、透明幾何学模様層1は鏡面光沢を有する金属調の層5に立体感及び艶消し感を付与するために設けられるものであるから、このような必要がある箇所にのみ設けることが必要とされる。膜厚は20〜500μm程度が好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。
【0029】
この透明幾何学模様層1は、模様部が凸状または凹状に設けられればよい。幾何学模様としては、図2に示されるように、格子状(図2(a))、あるいは水玉状(図2(b))などとなるよう、例えば凸状に配置される。幾何学模様はこれらに限られるものでなく、図2(c)のような三角形状、或いは図2(d)のような四角形状、あるいはそれ以上の多角形状であってもよいし、これ以外の形状、例えば星型などであってもよい。また、模様部は、図2(e)、2(f)に示されるように、凹状に形成されてもよい。本発明においては、透明幾何学模様層1は同じ形状の凸状部あるいは凹状部が繰り返し幾何学的に配置されていればよい。模様の大きさは、金属調部が立体的に観察できる大きさ、並びに密度であればよく、特に限定されるものではないが、通常、単位図形の大きさで500μm〜5mm程度であればよい。図形の大きさが大きくなるほど、表面が幾何学模様にエッチング処理されたような立体感が強くなり、小さくなるほどその効果は小さくなる。また、幾何学模様の大きさあるいは密度を徐々に変化させることにより、立体感にグラデーションを付与することができる。このとき、金属調図柄領域に続く図柄領域の印刷濃度を薄い色から徐々に濃い色に変化させるなどの手法をとると、金属調部がより立体感を持った状態で観察可能である。さらに、必要であれば、幾何学模様は二種類以上の形状のものが用いられてもよい。
【0030】
この他、前記微細透明幾何学凸状模様層1上に保護膜がさらに設けられてもよいが、この保護膜としては、例えば紫外線硬化型のクリヤーインキなどをグラビア印刷、スクリーン印刷などの通常の印刷法により、あるいはコーターなどにより塗布すればよい。保護層の厚みは、例えば20〜500μm程度が一般的である。勿論、微細透明幾何学模様層が凹状の場合においては、この凹状の幾何学模様層上に保護層が設けられる。
【0031】
なお、前記透明層2、微細透明幾何学凸状模様層1及び保護層には、必要に応じ従来周知或いは公知の滑剤、汚染防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを適宜含有させることができる。滑剤、汚染防止剤の添加により、表面の汚れを防止でき、また紫外線吸収剤の添加により、紫外線による膜の劣化を防止でき、帯電防止剤の添加により膜の帯電が防止でき、帯電に基づく火花放電を防止でき、発火の危険性などがある場所の装飾用シートとして好ましく使用できる。
【0032】
本発明の装飾用粘着シートは、家電製品、事務機器、車両内外装品、船舶内外装品、その他各種家具類や、建築内装材等の被装飾体に貼着されて使用される。粘着剤が感圧性の粘着剤である場合、粘着剤が剥離紙で保護されている場合には剥離紙を剥がして、前記製品等の所定の位置に位置決めし、押圧して貼着することにより、また粘着剤が感熱性の粘着剤である場合には、位置決め後加熱押圧することにより貼着される。また、本発明の装飾用粘着シートは、単なる製品の装飾のみならず、表示、宣伝、看板などの他の目的で用いられてもよい。
【実施例】
【0033】
実施例1
膜厚50μmの無延伸ウレタンフィルムの片面に錫の真空蒸着層を設けた。一方、n−ブチルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部を酢酸エチル中で溶液重合し、この重合体100重量部に日本ポリウレタン工業社製ポリイソシアネート(コロネート L)を1重量部添加し、これを剥離紙の離型性付与面に30μ厚(乾燥膜厚)で塗布し、乾燥した後、粘着剤面を真空蒸着面に貼り合わせて、支持体を作成した。
【0034】
上記支持体のウレタンフィルム面に黒色インキおよび灰色インキにより金属調図柄領域を除き図柄印刷を行った。次いで未印刷部である金属調図柄領域に対応する部分を、UVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)を用い、スクリーン印刷により6μm厚(乾燥厚)に印刷した。次いでUVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)100重量部に対し、サイリシア350(富士シリシア化学社製)を5重量部配合したインキを用い、1mm×1mmの格子状パターンを前記透明層の上にスクリーン印刷により70μm厚(乾燥厚)印刷した。紫外線照射によりインキの乾燥を行い、装飾用粘着シートを得た。この粘着シートの金属調部は、研磨処理のような鋳造感並びに表面を幾何学模様にエッチング処理したような立体感を示した。
【0035】
実施例2
クリヤー層のUVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)に代えて、UVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)100重量部に対し、サイリシア350(富士シリシア化学社製)を5重量部配合したインキを用いることを除き、実施例1と同様にして、装飾用粘着シートを作成した。
得られた装飾用粘着シートは、実施例1と同様、研磨処理のような鋳造感並びに表面を幾何学模様にエッチング処理したような立体感を示した。
【0036】
実施例3
クリヤー層および微細透明幾何学凸状模様層のサイリシア350(富士シリシア化学社製)の配合量を、5重量部から10重量部とすることを除き、実施例2と同様にして、装飾用粘着シートを作成した。
得られた装飾用粘着シートは、実施例2と同様、研磨処理のような鋳造感並びに表面を幾何学模様にエッチング処理したような立体感を示した。
【0037】
比較例1
透明幾何学模様層を形成する印刷インキとして、マット剤を配合しないUVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)を用いることを除き実施例1と同様にして、装飾用粘着シートを作成した。
得られた装飾用粘着シートの金属調図柄領域は、鏡面光沢を有し、また立体感を示さなかった。
【0038】
比較例2
微細透明幾何学凸状模様層を形成する印刷インキとして、マット剤を配合しないUVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)を用いることを除き実施例3と同様にして、装飾用粘着シートを作成した。
得られた装飾用粘着シートの金属調図柄領域は、研磨処理のような鋳造感を示したが、表面を幾何学模様にエッチング処理したような立体感は得られなかった。
【0039】
これら実施例1〜3および比較例1、2の結果を表1に示す。
【表1】

【0040】
実施例4
実施例1で得られた支持体を用い、ウレタンフィルム面に灰色インキにより金属調図柄領域を長方形に残すように図柄印刷を行った。長方形状の金属調図柄領域の長手方向の端部を残すように、UVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)100重量部に対し、サイリシア350(富士シリシア化学社製)を5重量部配合したインキを用い、スクリーン印刷により帯状に透明層を印刷した。次いで、UVクリヤーインキ(セイコーアドバンス社製)100重量部に対し、サイリシア350(富士シリシア化学社製)を5重量部配合したインキを用い、スクリーン印刷により透明層上に透明幾何学模様を印刷した。この印刷は、長方形帯状領域の中央領域は1mm×1mmの格子状の模様の繰り返し模様とし、また中央から外れる領域については中央から離れるにしたがって、凸状四角形状の面積が小さくなるパターンを有するものとした。これにより、長方形状の金属調図柄領域の長手方向の端部領域は鏡面光沢を備えた金属調を示し、長手方向中央帯状領域は立体感がグラデーション様に変化し、且つ研磨処理のような鋳造感を有する金属調を示した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の装飾用粘着シートの一実施例の模式断面図である。
【図2】透明幾何学模様層の模様パターンの例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 透明幾何学模様層
2 透明層
3 印刷図柄層
4 透明支持体フィルム
5 鏡面光沢を備えた金属調の層
6 粘着剤層
7 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体フィルムの背面側に、鏡面光沢を備えた金属調の層、粘着剤層、必要に応じ剥離紙の層が設けられ、前記透明支持体フィルムの表面側に、鏡面光沢を備えた金属調の層の少なくとも一部を覆う透明層、およびこの透明層上の少なくとも一部に、マット剤が配合されたクリヤーインキで形成された透明幾何学模様層が設けられた装飾用粘着シート。
【請求項2】
請求項1に記載の装飾用粘着シートにおいて、前記支持体表面と透明層の間に印刷図柄層が設けられていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装飾用粘着シートにおいて、透明層にマット剤が含まれていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記マット剤を含有する透明幾何学模様層の幾何学模様の大きさが、金属調図柄中央領域より周辺領域で小さく形成されていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記マット剤を含有する透明幾何学模様層の幾何学模様の模様密度が、図柄中央領域より周辺領域で小さくされていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記透明幾何学模様が凸状に形成されていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記透明幾何学模様の模様形状が格子状、円形、四角、菱形、三角形、または五角形以上の多角形であることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記マット剤を含有する透明幾何学模様層および透明層の少なくともいずれかに滑剤、汚染防止剤、帯電防止剤または紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の装飾用粘着シートにおいて、前記マット剤を含有する透明幾何学模様層の上に透明保護層が設けられていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の装飾用粘着シートが貼着された装飾製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−254374(P2008−254374A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100583(P2007−100583)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(391046562)株式会社倉本産業 (18)
【Fターム(参考)】