説明

装飾紐およびその製造方法

【課題】手芸、包装、日用品、アクセサリ等に幅広く利用できる外観美麗な装飾紐を、容易に製造できるようにする。また、装飾的効果のほか、実用的価値も高められるようにする。
【解決手段】線状をなす紙縒りからなる芯材21と、該芯材21の表面に螺旋状に巻回される水引からなるカバーリング材31と、該カバーリング材31の下に芯材21の長さ方向に沿って添付され、前記カバーリング材31の巻回後に溶融される熱溶着糸41を有する装飾紐11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば手芸や包装(結束、ラッピング、商品タグの留め紐、手提げ袋の提げ手)などのほか、箸置き、コースタ、ランチョンマット、金封、袋、籠、ストラップ、キーホルダ、お守りなどの日用品をはじめ、コサージュ、アクセサリ、髪飾り、迎春飾り、餅飾り、フラワーアレンジメント、各種物品のオーナメントなどの装飾品等に好適に用いられるような装飾紐に関し、より詳しくは、外観が美麗で、実用的価値も高いような装飾紐に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾紐には様々あるが、一般的には、外観を美しくするために表面が組紐のように編んで形成されている。
【0003】
包装等にも用いることができる多用途の装飾紐も提案されており、これには例えば、下記特許文献1に開示されたようなものがある。この装飾紐の場合も、数本の装飾紐を編んで表面が形成されている。
【0004】
このように編んで形成した装飾紐は確かに美麗であるが、製造には編むための専用の装置が必要となる。
【0005】
この点、下記特許文献2の装飾紐のように、飾り布を巻き付けて表面を構成する装飾紐では、編むための装置を用いずとも製造ができる。
【0006】
しかし、製造にあたっては飾り布の左右両端縁部を突き合せなければならず、精度が要求される。また、特許文献2に開示された製法は、径が20mm以上の太いものに適しており、それより細い装飾紐の製造は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭61−20063号公報
【特許文献2】特開平11−286858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、外観が美麗でありながらも製造が容易で、細いものでも製造できるような装飾紐を得ることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、線状をなす芯材の表面に、水引からなるカバーリング材が螺旋状に巻回された装飾紐である。
【0010】
別の手段は、線状をなす芯材と、該芯材の表面に螺旋状に巻回される水引からなるカバーリング材と、該カバーリング材の下に芯材の長さ方向に沿って添付され、前記カバーリング材の巻回後に溶融される溶着糸を有する装飾紐である。
【0011】
前記「水引」とは、紙縒り又は糸などの線状体に直接着色したり、前記線状体を芯にしてその表面に細幅フィルムや飾り糸を巻きつけたりしたものをいう。水引からなるカバーリング材は、水引を、例えば着色など適宜加工したものであってもよい。
【0012】
カバーリング材の巻回は、隙間のないように密に行うほか、隙間をあけて粗く行うもよく、また複数種類、複数本の水引をカバーリング材として用いることもできる。
【0013】
芯材の表面をカバーリング材が覆い、そのカバーリング材は水引で構成されているので、従来のように表面を編んで構成した装飾紐とは外観が異なるものの、芯材とカバーリング材の態様により所望の美麗な外観が得られる。
【0014】
しかも、カバーリング材を芯材の表面に巻回して製造するので、編む装置は不要で、製造は容易である。
【0015】
またカバーリング材の巻回により装飾紐の表面には凹凸ができ、この凹凸が他の物との間や装飾紐相互間で、滑り止め、戻り止めなどの役割を果たす。
【0016】
さらに、溶着糸を有する場合には、溶着糸がカバーリング材を固定するので、接着剤を用いてカバーリング材を固定した場合に比して、接着剤が徒に露出したりすることはなく、美麗な外観を確保するとともに、製造を容易にすることができる。溶着糸は芯材の長さ方向に沿って添付するので、溶着糸の使用量を抑えることが可能である。
【0017】
このような装飾紐は、前述のような様々な場面で利用されるが、たとえば両端が包装体に取り付けられて提げ手として用いられるとよい。包装体に対する取り付けは直接または間接に行える。
【0018】
提げ手として用いた装飾紐は、カバーリング材の存在によって、美麗な外観が得られ、包装体を引き立てる。また、提げ手として包装体を持ち易くする。
【0019】
また、このような提げ手では、カバーリング材が芯材の形態を保持するとともに、芯材を補強する。またカバーリング材の巻回によってできる凹凸が、掌とのなじみを向上し、手との間での滑り止め効果も発揮する。このため、持ち易い。
【0020】
別の手段は、芯材の表面に水引からなるカバーリング材を螺旋状に巻回する巻回工程と、該巻回工程の前段において前記芯材の長さ方向に沿って溶着糸を沿わせる添付工程と、前記巻回工程の後、前記溶着糸を溶融させる溶融工程を有する装飾紐の製造方法である。
【0021】
芯材を長さ方向に送りながら溶着糸の添付、カバーリング材の巻回、溶着糸の溶融と、一連の工程で装飾紐を製造できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、多様な外観を有する水引を活用するので、美麗な装飾紐を容易に得ることができる。外観上は表面を編んで構成した装飾紐と異なるもの、カバーリング材の選定により、容易に、バラエティーに富んだ様々な装飾紐を得られる。また、カバーリング材を芯材に巻回して製造するので、太いものは勿論のこと、細い装飾紐でも容易に製造できる。
【0023】
しかも、カバーリング材は表面において螺旋状に巻回されているので、凹凸を有する。この凹凸が手に持ったときは滑り止めとして働き、装飾紐同士が接触したり装飾紐と他の物が接触したりするときには滑り止めや戻り止め、位置決めとして働く。このため、たとえば袋の提げ手として用いたときには滑り止め機能を有するなど、用途・使用態様に応じた機能を発揮させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】装飾紐の斜視図。
【図2】カバーリング材の斜視図。
【図3】他の例に係る装飾紐の斜視図。
【図4】他の例に係る装飾紐の斜視図。
【図5】他の例に係る装飾紐の斜視図。
【図6】作用状態の一例を示す説明図。
【図7】使用状態の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、装飾紐11の構造を示すべく一部を解いた状態の斜視図であり、この装飾紐11は、手芸や包装(結束、ラッピング、商品タグの留め紐、手提げ袋の提げ手)などのほか、箸置き、コースタ、ランチョンマット、金封、袋、籠、ストラップ、キーホルダ、お守りなどの日用品をはじめ、コサージュ、アクセサリ、髪飾り、迎春飾り、餅飾り、フラワーアレンジメント、各種物品のオーナメントなどの装飾品等に好適に使用される。
【0026】
図1に示したように装飾紐11は、線状をなす芯材21の表面に、水引からなるカバーリング材31が螺旋状に巻回されて構成されている。
【0027】
前記芯材21には、紙縒り、合成樹脂製又は金属製のワイヤなどが用いられる。太さは、用途に応じて適宜設定される。また、外観は適宜の色彩、模様のものを用い、カバーリング材31の間から出するときには、カバーリング材31との調和を図るようにする。
【0028】
前記カバーリング材31は水引であって、紙縒り、糸、合成樹脂製ワイヤなどの線状体に直接着色したり、前記線状体を芯にしてその表面に細幅フィルムや飾り糸を巻きつけたりしたものである。このような水引に着色等を施して構成することもできる。
【0029】
図2にカバーリング材31の一例を示す。
図2(a)は、前記線状体32のみからなるカバーリング材で、予め適宜の色が付されたり、着色されたりして、適宜の色彩や模様を有する。図面では断面円形のものを表したが、断面形状が方形のものなどであるもよい。また、線状体32は糸(撚糸、撚糸の束、無撚糸を含む)で構成することもできる。
【0030】
図2(b)は、前記線状体32の表面に、金属蒸着テープなどのような光沢や色彩を有する装飾テープ33を螺旋状に粗く巻回したものである。線状体32が露出するので、線状体32の外観と調和の取れる装飾テープ33を選定する。
【0031】
図2(c)は、前記線状体32の表面に、金属蒸着テープなどのような光沢や色彩を有する装飾テープ33を螺旋状に、隙間なく密に巻回したものである。複数種類の装飾テープ33を巻回して複数色の外観を付与することもできる。
【0032】
図2(d)は、前記線状体32の表面に、撚糸又は無撚糸34(以下、「糸」という。)を螺旋状に巻回したものである。巻回は、図示したように密に行うも、粗く行うも、いずれでもよい。
【0033】
図2(e)は、前記線状体32の表面に、金属蒸着テープなどのような光沢や色彩を有する装飾テープ33と、糸34(撚糸又は無撚糸)を螺旋状に巻回したものである。装飾テープと糸34との間には隙間を設けて、線状体32を露出させることもできる。
【0034】
図2(f)は、前記線状体の表面に、金属蒸着テープなどのような光沢や色彩を有する装飾テープであって、前記(b)、(c)、(e)に図示したものよりも細幅にした糸状の装飾テープ35と、撚糸36を、隙間をあけて螺旋状に巻回したものである。
【0035】
上記線状体32は、柔軟性を有する材料であるのが好ましい。芯材21に対する巻き付けがより硬くしっかりと行えるようにするためである。このため、紙縒りであれば柔らかい紙からなるものを使用する。
【0036】
このようなカバーリング材の巻回状態を保持するために、装飾紐11は、溶着糸としての熱溶着糸41を有する(図1参照)。熱溶着糸41は、その融点以上に加熱されると溶けて、接触している部分を接着するものである。
【0037】
すなわち、熱溶着糸41は、カバーリング材31の下に、芯材21の長さ方向沿って添付され、カバーリング材31の巻回後に溶融され、カバーリング材31と芯材21とを一体化する。図1等においては、熱溶着糸41を破線で表した。
【0038】
使用する熱溶着糸41は、芯材21等の太さなどの条件に応じて適宜のものが使用される。また熱溶着糸41は、芯材21の表面の適宜箇所に添付するとよいが、好ましくは、径方向において相対向する2箇所に添付するとよい。1箇所であると、周方向の1箇所しか固定できない状態であって、巻回状態を確保しにくくなり得るが、2箇所より多いと、巻回状態の確保という点では十分すぎる反面、製造装置が複雑になるからである。
【0039】
以上のような構成の装飾紐11の製造は、芯材21に熱溶着糸41を沿わせる添付工程と、該添付工程の後、カバーリング材31を螺旋状に巻回する巻回工程と、該巻回工程の後、前記熱溶着糸41が溶融する温度で加熱する溶融工程としての加熱溶融工程を経て行う。
【0040】
添付工程では、長さ方向に沿って搬送される芯材21(紙縒りであれば予め紙縒りにしたものも、直前で紙縒りにするものも含む。)の径方向において対向する2箇所に、熱溶着糸41を引き出しながら沿わせる。沿わせるには芯材21と熱溶着糸41を孔状の通路(図示せず)に通せば、連続した作業で製造が行える。
【0041】
巻回工程では、前記添付工程を経た熱溶着糸41付きの芯材21に対して、周知の手段でカバーリング材31を巻き付ける。カバーリング材31は、図1に示したように適宜の隙間をあけて巻き付けられる。
【0042】
前記加熱溶融工程では、前記巻回工程で、カバーリング材31が硬くしっかりと巻き付けられた芯材21を、周知の連続加熱乾燥炉(図示せず)に通す。すると、連続加熱乾燥炉では、熱溶着糸41が溶融する所定の温度で全体が加熱され、前述のように熱溶着糸41が溶融し、カバーリング材31の芯材21に対する接着がなされる。芯材21が紙縒りからなる場合には、溶けた熱溶着糸41が紙縒りの表面を部分的にコーティングすることになるので、紙縒りの形態を保持できる。
【0043】
加熱溶融工程を経て完成した装飾紐11は、適宜長さに裁断されたり、巻き取られたりする。前述のような連続した一連の工程で、装飾紐11は製造される。
【0044】
なお、前記巻回工程では、図3に示した他の例に係る装飾紐11のように、カバーリング材31を密に巻くも、図4に示した他の例に係る装飾紐11のように芯材21に対するカバーリング材31の太さを図1、図3に示した装飾紐11の場合よりも細くして、より粗く巻くもよい。
【0045】
図示はしないが、カバーリング材31としては、複数種類、複数本の水引をカバーリング材として用いることもできる。また、水引ではない前述のような装飾テープなどをカバーリング材として加えることもできる。
【0046】
また、図5に示したように、カバーリング材31の下に別の下層カバーリング材37を巻くこともできる。この下層カバーリング材37は、水引のほか、金属蒸着テープのような光沢や色彩を有する装飾テープや組紐など適宜のものを用いることができる。このようにカバーリング材31と下層カバーリング材37を2重に巻く場合には、カバーリング材31と下層カバーリング材37の巻回方向を逆にするとよい。また、熱溶着糸41は、下層カバーリング材37を巻回した後に添付する。
【0047】
以上のようにして構成された装飾紐11は、芯材21の表面をカバーリング材31が覆い、そのカバーリング材31は様々な外観を有する水引で構成されているので、芯材21とカバーリング材31の態様により所望の美麗な外観が得られる。しかも、カバーリング材31を芯材21の表面に螺旋状に巻回して製造するので、製造は容易であるとともに、太いものは勿論のこと、細いものでも容易に製造できる。
【0048】
また、熱溶着糸41でカバーリング材31を固定するので、接着剤を用いてカバーリング材31を固定した場合に比して、接着剤が徒に露出したりすることはなく、美麗な外観を確保するとともに、製造を容易にすることができる。
【0049】
さらに、カバーリング材31を螺旋状に巻回したことにより、装飾紐11の表面には凹凸ができ、この凹凸が他の物との間や装飾紐相互間で、滑り止め、戻り止めなどの役割を果たす。たとえば、手に持ったときは滑り止めとして働き、装飾紐11同士が接触したり装飾紐11と他の物が接触したりするときには滑り止めや戻り止め、位置決めとして働く。このため、用途・使用態様に応じて適宜の機能を発揮させることもできる。
【0050】
若干の例を示すと、図6(a)に示したように、装飾紐11を引き揃えるときには、各装飾紐11の表面の凹部12と凸部13が互いに噛み合うので、一体性を高めることができる。装飾紐11同士を結束する場合も、各装飾紐11の表面の凹部12と凸部13が互いに噛み合うので、引き寄せた装飾紐11が戻りにくくなって結束作業が行いやすい。
【0051】
図6(b)に示したように、物品51に掛け渡すときには、装飾紐11の凹部12が物品51の角に引っ掛かるので、装飾紐11が引っ張られた位置から戻るのを抑制し、掛け渡したときの位置ずれを防止し、また緩みを防止できる。
【0052】
図6(c)に示したように装飾紐11に紐やワイヤなどの他の部材52を結束したり、簾を構成するように並べて1枚のシート状にしたりするときには、その部材52が装飾紐11の凹部12にとどまるので、部材52が装飾紐11の長さ方向で位置ずれするのを防止できる。
【0053】
このような装飾紐11は、前述のような様々な場面で利用されるが、その一例を示すと、たとえば図7に示したように、両端を包装体としての紙袋61の上端の開口部62に取り付けて、提げ手63として用いることができる。
【0054】
紙袋61は、上端に開口部62を有する周知の形態で、この開口部62の内側に、アーチ状に湾曲された装飾紐11の両端部が粘着剤を塗布した固定シート64によって固定されている。この場合の装飾紐11は、紙袋61が紙製であるので、装飾紐11の芯材21は紙縒りからなるものであるとよい。紙袋61に対する取り付けは、紙袋61に形成された孔に差し込んで、結び玉をつくったり他の部材を止めたりして行うものなど、直接または間接に取り付ける適宜の構造でもよい。
【0055】
このように提げ手63として用いられる装飾紐11では、前述のように所望通りの美麗な外観を得られ、手提げ袋を引き立てる。
【0056】
また、提げ手63のカバーリング材31が芯材21の形態を保持するとともに、芯材21を補強する。このため、耐久性を高めることができる。
【0057】
さらに、カバーリング材31の巻回によってできた凹凸が、掌に対してなじみ易くさせ、手との間での滑り止め効果も発揮する。このため、持ち易い。また、前記したように提げ手63の両端に結び玉を作って紙袋に取り付ける場合には、前述のように凹凸が適宜噛み合って、結び玉の形状を一定に保つので、不測にほどけるようなことも防止できる。
【0058】
この発明の構成と、前述の一形態の構成との対応において、
この発明の溶着糸は、前記の熱溶着糸に対応し、
同様に、
溶融工程は、加熱溶融工程に対応するも、
この発明は、前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
たとえば、溶着糸は超音波等によって溶融される糸であるもよい。
【符号の説明】
【0059】
11…装飾紐
21…芯材
31…カバーリング材
41…熱溶着糸
61…紙袋
63…提げ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状をなす芯材の表面に、水引からなるカバーリング材が螺旋状に巻回された
装飾紐。
【請求項2】
線状をなす芯材と、
該芯材の表面に螺旋状に巻回される水引からなるカバーリング材と、
該カバーリング材の下に芯材の長さ方向に沿って添付され、前記カバーリング材の巻回後に溶融される溶着糸を有する
装飾紐。
【請求項3】
両端が包装体に取り付けられて提げ手として用いられる
請求項1または請求項2に記載の装飾紐。
【請求項4】
線状をなす芯材の表面に水引からなるカバーリング材を螺旋状に巻回する巻回工程と、
該巻回工程の前段において前記芯材の長さ方向に沿って溶着糸を沿わせる添付工程と、
前記巻回工程の後、前記溶着糸を溶融させる溶融工程を有する
装飾紐の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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