説明

装飾部を外部時計エレメントに固定する方法およびこの方法により作製した外部エレメント

【課題】電気溶着による溶着部の孔の縁を、傷つけずきれいな縁にする。
【解決手段】 電気溶着した金属層(3)で被覆した外部時計エレメント(2)に装飾部(1)を固定する方法。装飾部(1)の代わりに、外部エレメント(2)に開けた孔(4)にダミー部(5)を一時的に設置し、電気溶着(3)を実施する。溶着部を平らにしたのち、ダミー部(5)を取り除き、装飾部を孔(4)に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気溶着した金属層で被覆した外部時計エレメントに装飾部を固定したり、また挿入部品を固定する方法およびこの方法により作製した外部エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部時計エレメントに装飾部を挿入または組み入れる場合、この外部時計エレメントを電気溶着金属層で被覆したのち、装飾部を嵌入する箇所内の少なくとも部分的に上記エレメントに穿孔し、これによって形成された孔の径を増大させながら嵌入される装飾部の寸法に適合させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、電気溶着を外部時計エレメントに予め形成すると、装飾部品用の嵌入用孔を開ける機械処理が必要になり、このため孔の入口周囲にある溶着部が傷つくリスクがあり、これによってきれいな縁にならないため、高級品市場の時計には美観の観点から受け入れられない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、本明細書の第1段落に記載されている内容を満たした上で、外部時計エレメントとして使用する基板を用意し、この基板に組み入れる予定の装飾部を用意し、組み入れる装飾部の寸法の孔をこの基板に開ける第1の一連の工程を含むほか、本方法は、このようにして形成した孔にこの孔の寸法に適合したダミー部を挿入することと、基板上に金属層を電気溶着することと、必要であればこの金属層を平らにし、ダミー部は基板から取り除き、装飾部は基板に挿入し、基板は例えば接着剤による結合などで固定することとを特徴とする。
【0005】
本発明はまた、上記の方法により作製した外部時計エレメントにも関する。
【0006】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して記載し、有利な実施形態を説明のために非限定的な例として提供した以下の説明文から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】外部エレメントとして使用した基板の半径方向の断面図であり、基板はこの場合腕時計のベゼルである。
【図2】基板に組み入れる装飾部の図であり、基板はこの場合発光ディスクである。
【図3】装飾部を挿入するために穿孔した基板の図である。
【図4】基板の孔に挿入したダミー部の図である。
【図5】電気溶着操作の図である。
【図6】電気溶着部を平らにする操作の図である。
【図7】ダミー部のない基板の図である。
【図8】装飾部を備えた最終基板の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は「基板」と称する外部時計エレメント2を示し、この基板に装飾部を組み入れる。具体的に本明細書では、このエレメントは腕時計のベゼルである。図2に装飾部1を示す。装飾部1で支持するサファイアクリスタル7の下に配置するのは発光ディスク6である。このディスクは「ルミノバ」(登録商標)という名で知られている発光ディスクである。図3では、基板2の両面に孔が開いている。一変形例によれば、この孔はめくら孔であってもよい。この穿孔部はいくつかの段部またはショルダー部を含む。段部8および段部9はディスク6を受容するためのものであり、段部10は、以下に説明するように電気溶着部を受容するために形成する。
【0009】
図4に示すように、穿孔した基板2にはダミー部5を挿入する。このダミー部は、一時的な挿入物であり、本発明の主要部を形成するものである。このダミー部は、後で施す電気溶着物が孔8に進入するのを防止するものであり、そのためにダミー部5は、孔8の形状に完全に合致するサイズにして、溶着物の進入するのを防止する。ダミー部5は、例えばプラスチック材料などの絶縁材で作製する。ポリオキシメチレン(POM)射出成形によって得ることもできる。
【0010】
図5は、電気溶着の説明図であって、この電気溶着は符号3で示している。基板2が例えば金属、鋼鉄または真鍮であれば、電着操作は問題なく実施されるが、電着すべきではない領域は分離しなければならず、これは容易ではない。本明細書において好適な例では、基板は例えばZrO2セラミック(二酸化ジルコニウム)などの絶縁材、または適切なプラスチック材で作製し、基板2を金属で被覆しなければならない場合は、この処理は実際の電着処理の前に行う。そのため、例えばクロム(50nm)および金(50nm)の薄層はPVDによって溶着し、この層に対して電気溶着部を適切に接着することができる。溶着部は金5N18でもよい。図5はこの溶着部3を示し、この溶着部の上面に凸凹があってもよい。このような場合、必要であれば溶着部は平らにして所望の場所だけに残るようにし、この場合は段部10を超えないようにする。図6は、平らにした後に基板2がどのように見えるかを示している。この図は、ダミー部5を溶着部3と同じ高さにしたことも示している。この操作が終了すると、ダミー部5は矢印Aの方向へ逆に押して基板2から取り除いてよい。
【0011】
図7は、ダミー部5のない基板2を示す。ダミー部の頭部と電気溶着部3との間に接着性は生じないため、溶着部の縁はきれいで鮮明に見える。装飾部1は最終的に、図8に示すように形成されたスペースに挿入することができる。装飾部は、図8の11で示す場所に塗布した接着剤によって接着される。装飾部は、他の適切な固定方法によって装着または固定してもよい。
【0012】
これまで記載した実施例では、一個の装飾部1で説明しており、この場合この装飾部は、回転する腕時計のベゼルに装着した発光ディスクである。このディスクは、例えば注意すべき減圧停止を表示するダイバー用の腕時計に装着することができる。また、ベゼルである1つの基板に複数の装飾部を同じ方法で組み入れることができることは明らかである。したがって、時間を示す12個の記号をベゼルに組み入れることができる。
【0013】
上記のように、本発明は、装飾部を装着した外部エレメントの作製を実施する方法だけでなく、該方法により作製した実際の外部エレメントにも関するものであり、エレメントまたは基板は、例えば鋼鉄などの導電材、または例えばセラミック材などの非導電材で作製する。特に、本明細書で例として引用したエレメントは腕時計のベゼルだが、これは腕時計の中間部材すなわち文字盤であってもよい。同じように、外部エレメントに装着する装飾部は発光ディスクに限らず、上記で言及したように、ベゼルに刻まれている、時間を示す記号であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気溶着した金属層(3)で被覆した外部時計エレメント(2)に装飾部(1)を固定する方法であって、
a)前記外部エレメントとして使用する基板(2)(図1)を用意するステップと、
b)前記基板に組み入れる装飾部(1)を用意する(図2)ステップと、
c)組み入れる前記装飾部(1)の寸法の孔(4)を少なくとも部分的に前記基板(2)に開ける(図3)ステップと、
d)このようにして形成した孔(4)(図4)に、前記孔(4)の寸法に適合したダミー部(5)を挿入するステップと、
e)前記基板(2)上に金属層(3)を電気溶着する(図5)ステップと、
f)前記ダミー部(5)を前記基板(2)から取り除く(図7)ステップと、
g)前記装飾部(1)を前記基板(2)に挿入し、前記基板と接着剤で結合(図8)固定するか、または前記基板に装着するステップとから構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1のステップe)とf)の間に、前記金属層(3)を平らにするステップh)(図6)を更に有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基板(2)は絶縁材であることと、前記ステップe)はクロムおよび金の薄層を含む金属化ステップの後に実施することと、前記電気溶着した金属層(3)は金層であることとを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で作製した外部時計エレメント。
【請求項5】
前記エレメントは腕時計のベゼルであることを特徴とする、請求項4に記載の外部エレメント。
【請求項6】
前記エレメント(2)は腕時計の文字盤であることを特徴とする、請求項4に記載の外部エレメント。
【請求項7】
前記装飾部(1)は発光ディスクであることを特徴とする、請求項6に記載の外部エレメント。
【請求項8】
前記装飾部(1)は、時間を示す記号列であることを特徴とする、請求項6または7に記載の外部エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24878(P2013−24878A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161218(P2012−161218)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)