装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品
【課題】 黄金色の色調を有し、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られるとともに、装飾面の光沢が得られ、寸法が異常に大きくなることのない装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品を提供する。
【解決手段】 ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいない装飾部品用セラミックスである。内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから好ましい黄金色が提供でき、ニオブが酸化されることによって生じる体積膨張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、規格寸法の範囲から外れることがほとんどない。
【解決手段】 ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいない装飾部品用セラミックスである。内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから好ましい黄金色が提供でき、ニオブが酸化されることによって生じる体積膨張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、規格寸法の範囲から外れることがほとんどない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金色を呈する時計用装飾部品や装身具用装飾部品には、色調や耐食性の面から金やその合金、または各種金属にメッキを施したものが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、硬質相として窒化チタンを45〜75重量%、炭化チタンを7.5
〜25重量%、結合相としてクロムを全量中炭化物に換算して1〜10重量%、モリブデンを全量中炭化物に換算して0.1〜5重量%、及びニッケルを全量中5〜20重量%含有して、
測色計にて得られるL*a*b*表色系の明度指数がL*=65〜69、a*=4〜9、b*=5〜16である焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、次式(A)で表わされる硬質相が70〜98重量%と、
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中の1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.19≧X≧0,0.6≧Y≧0,0.93≧Z≧0.6
Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%と不可避不純物とから成る装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%とP,Al,B,Si,Mn,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Taの1種以上の金属、合金又はAl,Y,Zr,Mg,Ni,Siの酸化物、Al,Si,Bの窒化物、Moの炭化物もしくはこれらの相互固溶体の1種以上の化合物から成る強化相が0.1〜10重量%と残りが次式(A)で表わされる硬質相と不可避不純物とから成る
装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0006】
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中から選ばれた1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.5≧X≧0,0.6≧Y≧0.06,0.93≧Z≧0.6
そして、特許文献2および3では、TiNZ(0.6≦Z≦0.95)を主体にした硬質相に
よる、黄金色の色調を保持させた装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0007】
また、特許文献4では、窒化チタンを主成分とし、ニッケルを副成分とするとともに、窒化バナジウム,窒化ニオブ,窒化タンタル,炭化モリブデン,炭化ニオブ,炭化タングステンおよび炭化タンタルのうち少なくともいずれか1種、を添加成分として含む装飾部品用セラミックスであって、少なくとも装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72〜84であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ4〜9,28〜36である装飾部品用セラミックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−13154号公報
【特許文献2】特開昭58−204149号公報
【特許文献3】特開昭58−204150号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1767661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、色調が銀色と紫色とを併せ持つ色調から銀色とピンク色とを併せ持った色調であり、黄金色の色調ではなかった。
【0010】
また、特許文献2および3に記載された装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、硬度,靱性等の機械的特性や装飾部品間で発生する色調感の差である色差に影響を与える炭素の比率は幅広い値をとることができることから、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きい場合が発生したりするという課題があった。
【0011】
特許文献4に記載された装飾部品用セラミックスは、炭素の比率が制御されたものではなく、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きくなったりするおそれがあった。
【0012】
さらに、特許文献2および3に記載された装飾部品用セラミックスでは、脱脂工程で酸化を抑制することができず、この酸化によって体積膨張が発生することがあった。そして、この体積膨張が発生すると、セラミックスの密度が低下して、装飾面の光沢が低下するとともに、規格寸法の範囲から大きい方に外れるという課題があった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、黄金色の色調を有し、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られるとともに、装飾面の光沢が得られ、寸法が異常に大きくなることがなく所望の規格寸法に収めやすい装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的に前記ニオブの酸化物を含んでいないことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記構成において、装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体は、前記ニッケルと、前記ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が前記装飾面に含むことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チ
タン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることを特徴とする
ものである。
【0019】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で
含むことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体は、前記クロムおよび前記ニッケルからなる金属間化合物を含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の複合装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスと、該装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の時計用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の携帯端末機用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の生活用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の車両用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明のスポーツ用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の楽器用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の装身具用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明の建材用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから、好ましい黄金色が提供できるとともに、ニオブが酸化されることによって生じる体積膨
張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、寸法が製品の規格寸法の範囲から外れることがほとんどないものとできる。
【0033】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、装飾面における炭素の含有量が0.4
質量%以上0.9質量%以下であるときには、炭素が窒化チタンに拡散して固溶体を形成し
て焼結を促進するため、硬度,靱性等の機械的特性を高くすることができるとともに、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されると思われ、色調感の差である色差(△E*ab)を小さくすることができるので、装飾部品間で発生する色調感の差をほとんど感じることがない。
【0034】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であるときには、装飾面における光の反射率が高いため、光沢が増し、高級感および美的満足感を得ることができる。
【0035】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含むときには、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさを得ることができる。
【0036】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、前記窒化チタン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であるときには、光沢のある色調感がさらに増す
ため、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0037】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むときには、窒化チタ
ンの結晶を強固に結合することができる。また、装飾部品用セラミックスを身に付けているときに、汗と反応してニッケルが溶出することが少ない。併せて、ニオブを2.5質量%
以上10質量%以下の含有量で含むことから、ニオブが窒化チタンの結晶に固溶したり、結晶粒界に溶融したりすることによって、ニオブは窒化チタンの粒成長を抑制するように働くため、結晶粒界は拡がり、入射した光に対して装飾面を形成する結晶による鏡面反射と結晶粒界による拡散反射とを有し、装飾面における明度指数L*を高くできるとともに、その色調は優れた相乗効果を生むので、光沢のある色調感が増し、さらに高級感があって、美的満足感を得ることができる。
【0038】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むときには、耐食性が向上するため、高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間維持することができる。
【0039】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、窒化チタン質焼結体は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むときには、非磁性体となるために、この装飾部品用セラミックスが時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を受けにくくすることができる。
【0040】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、窒化チタン質焼結体は、平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であるときには、粗大な結晶粒を少なくできるので、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、その一方で、装飾面における結晶粒界の面積が抑制されるために、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0041】
また、本発明の複合装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることから、例えば、異なる色調が紫色であると、本発明の装飾部品用セラミックスの呈する色調の黄金色との組み合わせによって、装飾が求められる店頭広告やインテリア雑貨に用いたときに、消費者の購買意欲を刺激することができる。また、異なる色調が黒色であると、本発明の装飾部品用セラミックスの呈する色調の黄金色との組み合わせによって、視認性が高まり、遠方からの視認が求められる用途、例えば、案内板等の表示部品として好適に用いることができる。さらに、異なる色調が銀色であれば、より高級感に溢れた装飾性を高めることができる。
【0042】
また、本発明の時計用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される時計に好適に用いることができる。
【0043】
また、本発明の携帯端末機用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともにファッション性も重視される携帯端末機に好適に用いることができる。
【0044】
また、本発明の生活用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される生活用品に好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明の車両用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される車両用品に好適に用いることができる。
【0046】
また、本発明のスポーツ用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求されるスポーツ用品に好適に用いることができる。
【0047】
また、本発明の楽器用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される楽器に好適に用いることができる。
【0048】
また、本発明の装身具用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される装身具に好適に用いることができる。
【0049】
また、本発明の建材用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される建材に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の複合装飾部品の一例を示す、装飾面を平面視した模式図である。
【図2】本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示す、(a)は時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側からみた斜視図である。
【図3】本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の時計用装飾部品である時計用裏蓋の一例を示す底面図である。
【図5】本実施形態の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた携帯電話機の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す例の携帯電話機の筐体を開いた状態を示す斜視図である。
【図8】本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた他の例であるノート型パーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【図9】本実施形態の生活用品用装飾部品である石鹸ケースの構成の一例を示す模式図である。
【図10】本実施形態の生活用品用装飾部品の他の例であるコーヒーカップセットの一例を示す斜視図である。
【図11】本実施形態の車両用品用装飾部品を取り付けた車体の一例を示す斜視図である。
【図12】本実施形態の車両用品用装飾部品を用いたコーナーポールの一例を示す正面図である。
【図13】本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたゴルフクラブの一例を示す正面図である。
【図14】本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたスパイクシューズの一例を示す底面図である。
【図15】本実施形態の楽器用装飾部品を用いたギターの一例を示す斜視図である。
【図16】本実施形態の装身具用装飾部品を用いた人工歯冠の一例を示す模式図である。
【図17】本実施形態の装身具用装飾部品を用いたイヤホンユニットの一例を示す正面図である。
【図18】本実施形態の装身具用装飾部品を用いためがねの一例を示す斜視図である。
【図19】本実施形態の建材用装飾部品を用いたドアハンドル用のグリップの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の装飾部品用セラミックスの実施の形態について説明する。
【0052】
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなるものである。
【0053】
本実施形態において、窒化チタン質焼結体とは、窒化チタン(TiN)を主成分とする焼結体であり、ここでいう主成分とは、装飾部品用セラミックスを構成する全成分100質
量%に対して、50質量%以上を占める成分である。この主成分である窒化チタンは、装飾品として良好な黄金色を呈するとともに、強度や硬度等の機械的特性が高いという特徴を有していることから、本実施形態の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスにおいては、窒化チタンを70質量%以上の含有量で含有させることが好適である。
【0054】
また、ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用し、ニオブは、色調調整剤として作用するものであって、金属ニオブ以外に組成式が例えばNbNi3,NbCで示されるニオブ化合物として存在するものも含む。そして、クロムは空気中の酸素と結合し装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させる傾向があり、炭素は靱性や硬度等の機械的特性を向上させる傾向がある。
【0055】
そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことが重要である。上記構成の窒化チタン質焼結体の内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことにより、脱脂工程で熱と圧力とを加えることでニオブが酸化することによって生じる体積膨張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、規格寸法の範囲から外れることがほとんどないものとすることができる。
【0056】
なお、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないとは、装飾部品用セラミックスの表面から0.1mm以内の領域を除く装飾部品用セラミックスにおいて、ニオブの酸化物が0.5質量%以下であることをいい、ニオブの酸化物とは組成式がそれぞれNbO,NbO2,Nb2O3,Nb2O5で表される一酸化ニオブ,二酸化ニオブ,三酸化二ニオブおよび五酸化二ニオブ等である。このようなニオブの酸化物はX線回折法により検出することができ、検出されなかった場合をニオブの酸化物が0.5質量%以下であるものとみなすこ
とができる。
【0057】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、装飾面における炭素の含有量が0.4質
量%以上0.9質量%以下であることが好ましい。装飾面に炭素がこの含有量で含まれるこ
とにより、炭素は窒化チタンに拡散して固溶体を形成して焼結を促進するため、靱性や硬度等の機械的特性を高くすることができる。また、炭素はクロマティクネス指数a*および以下の式(A)で規定される色調感の差である色差(△E*ab)に影響を与える。炭素をこの含有量で含むことによって、炭素の呈する黒色により無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されるため、装飾部品間で発生する色差をほとんど感じることのない好ましい黄金色とすることができる。
【0058】
△E*ab=((△L*)2+(△a*)2+(△b*)2))1/2・・・(A)
なお、炭素の含有量については、炭素分析法を用いて測定すればよい。
【0059】
このように装飾的価値を求める需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈する装飾部品用セラミックスとするには、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることが好ましい。
【0060】
ここで、明度指数L*とは色調の明暗を示す指数であり、明度指数L*の値が大きいと色調は明るく、明度指数L*の値が小さいと色調は暗くなる。また、クロマティクネス指数a*は色調の赤から緑の度合いを示す指数であり、a*の値がプラス方向に大きいと色調は赤色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、a*の値がマイナス方向に大きいと色調は緑色になる。さらに、クロマティクネス指数b*は色調の黄から青の度合いを示す指数であり、b*の値がプラス方向に大きいと色調は黄色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、b*の値がマイナス方向に大きいと色調は青色になる。
【0061】
また、装飾面の算術平均高さRaは、光の反射率に影響を及ぼして色調が変わるため、装飾面の算術平均高さRaを0.03μm以下としておくことが好ましい。これにより、光の反射率が高くなり、明度指数L*の値を上昇させることができる。この算術平均高さRaが0.03μmを超えると、明度指数L*の値が低下し、色調は暗くなり高級感が低下するおそれがある。
【0062】
この光の波長は380〜780nmを有する可視光線の集合であり、算術平均高さRaを0.03μm以下とすることによって、可視光線を分光し、青色を示す波長域450〜500nmの光の
反射を少なくするとともに、黄色を示す波長域570〜590nmの光の反射を多くするように作用するので、高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈することができる。特に、波長域570〜700nmの光に対する装飾面の反射率は、50%以上であることが好適である。
【0063】
なお、算術平均高さRaはJIS B 0601−2001に準拠して測定すればよく、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用い
て測定する場合であれば、例えば、装飾部品用セラミックスの装飾面に、触針先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒に設定し、この測定で得られた5箇
所の平均値を算術平均高さRaの値とする。
【0064】
そして、明度指数L*の値を72以上84以下としたのは、黄金色の色調に程良い明るさが発現するからであり、クロマティクネス指数a*の値を3以上9以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに赤味を抑えることができるためである。また、クロマティクネス指数b*の値を27以上36以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに黄金色を出せるからである。特に明度指数L*の値は、72以上79以下であることが好適である。
【0065】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、装飾面における開気孔率が2.5%以下であ
ることが好ましい。装飾面における開気孔率は、特に明度指数L*の値に影響を及ぼし、開気孔率が高いと明度指数L*の値は小さくなり、開気孔率が低いと明度指数L*の値は大きくなる。装飾面における開気孔率を2.5%以下にすることで、明度指数L*の値を77
以上にすることができ、より好まれる色調となる。さらに、明度指数L*の値を78以上とすることが好適であり、この場合には開気孔率は1.1%以下とすることが好ましい。
【0066】
なお、装飾面における開気孔率は、金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカ
メラで装飾面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS等)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔の面積を求めて測定総面積における割合を装飾面
の開気孔率とすればよい。
【0067】
なお、本実施形態の装飾部品用セラミックスにおける装飾面とは、装飾部品の装飾的価値が要求される面を指し、全ての面を指すものではない。例えば、本実施形態の装飾部品用セラミックスを時計用ケースに用いる場合では、この時計用ケースの外側の面は、鑑賞の対象となるものでもあり装飾的価値が要求されるので装飾面である。
【0068】
そして、このような装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値およびクロマティクネス指数a*,b*の値は、JIS Z 8722−2000に準拠して測定することで求められる。例えば、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d等)を用い、光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を5mm×7mmに設定して測定することができる。
【0069】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含むことが好ましい。これら金属間化合物が装飾面に含まれていることによって、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出される。このような金属間化合物は、例えば、組成式がTiNi3,Ti2NiまたはNbNi3として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
【0070】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることが好ましい。後述するように組成式をTiNx
としたときの原子数xの値により、その色調は影響を受ける。原子数xが小さくなると色調は黄金色から薄い黄金色になり、原子数xが大きくなると色調はくすんだ濃い黄金色になる。このような観点から組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、0.8以上0.96
以下であることが好ましく、原子数xの値がこの範囲であるときには、光沢のある色調感がさらに増すため、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0071】
窒化チタンは、脱脂または焼成雰囲気中に含まれる酸素および炭素と置換または反応して酸炭窒化チタン(TiCNO)に成りうるため、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、酸素・窒素分析装置および炭素分析装置を用いて、次のようにして求めることができる。具体的には、これら分析装置により窒化チタン質焼結体の酸素、窒素および炭素の含有量を測定した後、100質量%より酸素,窒素および炭素の
含有量を引いた値をチタンの含有量とする。そして、チタンの含有量と窒素の含有量とをそれぞれの原子量で除すことによりモル数が求められるので、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとする。
【0072】
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0073】
ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶同士を結合する結合剤として作用するために、できる限り多く加えることが好ましいが、一方で、装飾部品用セラミックスにおける比率が高過ぎる場合は、装飾部品用セラミックスを身に付けていると汗と反応してニッケルが溶出してしまい、色調は赤みを帯びて、需要者の求める高級感,美的満足感および精神的安らぎ等の装飾的価値を与える黄金色とならなくなるおそれがある。また、CIE1976L*a*b*色空間におけるクロマティクネス指数a*は高くなるものの、明度指数L*,クロマティクネス指数b*とも低くなるため、ニッケルの含有量は7質量%以上14.5質量%以下であることが好ましい。特に、この装飾用部品用セラミックスが腕時計用ケース,バンド駒等を始めとする身に付けるものである場合は、ニッケルの含有量は7質量%以上10質量%以下であることがより望ましい。
【0074】
また、ニオブの含有量を2.5質量%以上10質量%以下としたのは、ニオブが窒化チタン
に固溶する、あるいはニッケルの内部に溶融することによって、明度指数L*の値を高くする色調調整剤としての作用がある反面、ニオブの含有量が多いと共有結合性が高いために焼結が難しくなるおそれがあるからである。
【0075】
また、ニオブの含有量は3質量%以上8質量%以下であることがより望ましい。これは、ニオブは粒成長を抑制するように働くので、結晶粒界は増加し、入射した光は装飾面を形成する結晶による鏡面反射と併せて結晶粒界による拡散反射の影響を強く受ける結果、装飾面における明度指数L*は高くなるとともに、その色調は優れた相乗効果を生むため、光沢のある色調感が増し、さらに高級感,美的満足感を得ることができる。その結果、視覚を通じて精神的安らぎが得られるからである。
【0076】
なお、反射は一般的に鏡面反射と拡散反射とからなり、本実施形態における鏡面反射とは、光が鏡面である装飾面、微視的には装飾面を形成する結晶に入射した後、反射したときにその入射角と反射角が同じになる反射をいい、拡散反射とは光が結晶粒界に入り込み、ランダムな反射を繰り返した後、再び外部に向かう反射をいう。
【0077】
ただし、装飾面を形成する結晶を後述するバレル研磨により表面粗さを調整することができ、原子間力顕微鏡で測定したときの粒界を含まない結晶面の表面粗さを算術平均高さRaで0.001〜0.002μmにすると、結晶面での反射が鏡面反射から拡散反射に一部変化する傾向が見られ、装飾面におけるクロマティクネス指数b*を32以上にすることができて
鮮やかな黄金色となるので好適である。
【0078】
また、ニッケルはニオブと化合してニッケルニオブ、例えばNbNi3として析出していることが好適で、NbNi3の析出により、明度指数L*の値は大きくなって、気品漂う明るさが醸し出される。このNbNi3等のニッケルニオブは、X線回折法で検出することができる。
【0079】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましい。クロムは、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成するので耐食性を向上させることができるとともに、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成すると、ニッケルがクロムと反応してニッケルクロム化合物を生成して、ニッケルがイオン化して流出することを抑制することができる。しかしながら、クロムの含有量は色の鮮やかさに影響を及ぼすため、ニッケルの流出を抑制し、耐食性と鮮やかさとを兼ね備えるためには、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましいのである。
【0080】
なお、ニッケルがクロムを包囲した状態とは、クロムが窒化チタンの結晶と接することなく粒界相に周囲を取り囲まれた状態をいい、この状態については、走査型電子顕微鏡で得られた装飾面の画像と、エネルギー分散型(EDS)X線マイクロアナライザーによって検出されるニッケル,クロムの分布状態を示す装飾面の画像とを照合することで確認することができる。
【0081】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことが好ましい。クロムおよびニッケルが磁性体であるのに対し、この金属間化合物は、非磁性体であることから、この装飾部品用セラミックスが時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなる。このような金属間化合物は、例えば、組成式がCr2Ni3またはCr3Ni2として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
【0082】
チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は、蛍光X線分析(XRF)法を用いて測定することができる。具体的には、予め窒化チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの各元素の濃度の異なる混合粉末を少なくとも2種類以上用意して、それぞれプレス法により成形して標準試料とする。次に、これら各標準試料にX線を照射して、蛍光X線の強度と既知の濃度との関係から最小二乗法を用いて検量線を作成する。そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスを粉砕して粉末とし、プレス法により成形して測定試料とする。この測定試料にX線を照射して、蛍光X線の強度を測定し、検量線より濃度である含有率を求める。また、窒素については酸素・窒素分析装置で測定することができ、炭素は炭素分析装置で測定すればよい。
【0083】
また、窒化チタン質焼結体からなる本実施形態の装飾部品用セラミックスは、熱伝導率が22W/(m・K)以上かつ26W/(m・K)以下であることが好適である。熱伝導率が22W/(m・K)以上であれば、放熱特性に優れたものとなり、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子等の発熱する電子部品から発生した熱を速やかに外部に逃がして誤作動のおそれを少なくすることができるので、電子部品が搭載された携帯端末機の一部に本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いると好適である。
【0084】
また、熱伝導率が26W/(m・K)以下であれば、本実施形態の装飾部品用セラミックスの表面における結露を抑制することができるので、車両に取り付けるエンブレム等に本発明の装飾部品用セラミックスを用いたときには、冬の寒い朝であっても結露を生じにくいため美的満足感が損なわれることがほとんどない。さらに、熱伝導率が22W/(m・K
)以上かつ26W/(m・K)以下の範囲であれば、放熱特性および熱衝撃抵抗性の2つ特性を併せ持つことができるので好適であり、40℃〜800℃における熱膨張係数が8.5×10―6/℃以上9.7×10―6/℃以下であることがより好適である。この熱膨張係数は、JI
S R 1618−2002に準拠して求めることができる。
【0085】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、動的弾性率が300GPa以上であるこ
とが好ましい。動的弾性率が300GPa以上であれば、装飾部品用セラミックスを撓みに
くくすることができるので、腕時計用ケース、バンド駒等を始めとする身につけるものに本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いたときには、接触や落下等で変形することがほとんどない。この動的弾性率は、JIS R 1602−1995で規定される超音波パルス法に準拠して求めることができる。なお、セラミックスの厚みが薄く、セラミックスから切り出した試験片の厚みをJIS R 1602−1995の超音波パルス法で規定される10mmとすることができないときには、セラミックスの厚みをそのまま試験片の厚みとして評価して、その結果が上記数値を満足することが好適である。ただし、そのままの厚みで評価して上記数値を満足することができないほどにセラミックスの厚みが薄いときには、自由共振式固有振動法を用いて測定すればよい。
【0086】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスにおいては、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、装飾面の光沢を維持するという観点から、結晶の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であること好ましい。焼結体の平均結晶粒径が大きくなると粗大な結晶粒が増加することにより強度が低下しやすく、焼結体の平均結晶粒径が小さくなると結晶粒界が増加することにより拡散反射の影響を強く受けやすくなることから、装飾面における明度指数L*が高くなりやすく、装飾部品間における色差を感じやすくなり好ましくない。このような観点から、焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることが好ましく、平均結晶粒径の値がこの範囲であるときには、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。特に、この装飾用部品用セラミックスが腕時計用ケース、バンド駒等を始めとする身につけるものである場合には、接触や落下等でキズが入りにくくするために強度を上げるには、焼結体の平均結晶粒径が2.1μm以上4.3μm以下であることが好ましい。この平均結晶粒径は、破断面を走査型電子顕微鏡によって1000倍〜3000倍に拡大した86〜110μm×65〜92μmの範囲で、同じ長さの直線を8本引き、この8本の直線上に存
在する結晶の個数をこれら直線の合計長さで除すことで求められる。なお、倍率が1000倍のときには、直線1本当たりの長さを80μmとし、倍率が3000倍のときには、直線1本当たりの長さを27μmとすればよい。
【0087】
図1(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の複合装飾部品の一例を示す、装飾面を平面視した模式図である。
【0088】
図1(a)〜(f)に示す複合装飾部品3は、装飾面を平面視して、黄金色を呈する本実施形態の装飾部品用セラミックス1と、装飾部品用セラミックス1と異なる色調の装飾面を有する装飾部品2とが並べて配置されているものの例である。装飾部品用セラミックス1および装飾部品2の形状として、図1(a)はいずれも三角形状であり、(b)はいずれも四角形状であり、(c)はいずれも平行四辺形状であり、(d)は六角形状と三角形状との組み合わせであり、(e)は八角形状と四角形状との組み合わせであり、(f)は四角形状の装飾部品2と装飾部品2の周囲を囲んだ装飾部品用セラミックス1との組み合わせである。
【0089】
そして、装飾部品用セラミックス1と異なる色調として、具体的には、装飾部品2の色調が紫色であれば、装飾が求められる店頭広告やインテリア雑貨に用いたときに、消費者の購買意欲を刺激することができる。
【0090】
また、装飾部品2の色調が黒色であれば、本実施形態の装飾部品用セラミックス1の呈する色調の黄金色との組み合わせによって、視認性が高まり、遠方からの視認が求められる用途、例えば、案内板等の表示部品として好適に用いることができる。さらに、装飾部品2の色調が銀色であれば、より高級感に溢れた装飾性を高めることができる。
【0091】
なお、装飾部品2は、本実施形態の装飾部品用セラミックス1と異なる色調で装飾性を高めるものであればよいため、材質は問わず、また、装飾部品用セラミックス1および装飾部品2の形状や組み合わせについては、これらの図1(a)〜(f)に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0092】
また、本実施形態の時計用装飾部品は、上記構成の本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とし、その例としては、時計用ケースや時計用バンド駒がある。
【0093】
図2は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示しており、(a)は時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側から見た斜視図である。また、図3は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。また、図4は本実施形態の時計用装飾部品である時計用裏蓋の一例を示す底面図である。また、図5は本実施形態の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。なお、これらの図において同じ部位を示す場合は同じ符号を付してある。
【0094】
図2(a)および(b)に示す時計用ケース10Aは、図示しないムーブメント(駆動機構)を収容する凹部11と、腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えており、凹部11は厚みの薄い底部13と厚みの厚い胴部14とからなる。また、図3に示す時計用ケース10Bは、図示しないムーブメント(駆動機構)が入る穴部15と、胴部14に形成された腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えている。
【0095】
図4に示す時計用裏蓋17は、周辺側に設けられた複数の取付け孔18にネジ(図示しない)を介して、例えば図3に示す時計用ケース10Bの裏側から取り付けられる様になっている。
【0096】
図5に示す時計用バンド50を構成するバンド駒は、ピン40が挿入される貫通孔21を有する中駒20と、中駒20を挟むようにして配置され、ピン40の両端が差し込まれるピン穴31を有する外駒30とから構成されており、中駒20の貫通孔21にピン40が挿入され、挿入されたピン40の両端が外駒30のピン穴31に差し込まれることにより、中駒20と外駒30とが順次連結されて時計用バンド50が構成されている。
【0097】
これら、時計用ケース10A,10B,時計用裏蓋17および時計用バンド50を構成するバンド駒として用いられる本実施形態の時計用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなるものであることから、時計としての高級感,美的満足感を十分に得ることができ、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができる。
【0098】
なお、本実施形態の時計用装飾部品は、手首に装着するタイプの心拍計および脈拍計用装飾部品も含むものとする。
【0099】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、装飾面のビッカース硬度(Hv)が長期信頼性に影響を与える要因の一つとなり、ビッカース硬度(Hv)が8GPa以上であることが好ましい。ビッカース硬度(Hv)をこの範囲にすると、装飾面は傷が入りに
くくなるので、ガラスまたは金属からなる塵埃のような硬度の高い物質と接触しても装飾面に容易に傷が生じることがないからである。この装飾面のビッカース硬度(Hv)はJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
【0100】
また、破壊靱性は装飾面の耐磨耗性に影響し、その値は高いほどよく、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは4MPa・m1/2以上であることが好ましい。この破壊靱性はJIS R 1607−1995で規定する圧子圧入法(IF法)に準拠して測定することができる。
【0101】
装飾部品用セラミックスが身に付けて用いられるようなものである場合は、軽い方が好まれるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、その見掛け密度は6g/cm3以下(0g/cm3を除く)であることが好適であり、この見掛け密度はJIS R 1634−1998に準拠して測定される。装飾部品用セラミックスが時計用バンド駒の一部である中駒20の場合であれば、引張荷重が頻繁に中駒20にかかるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、引張強度は196N(ニュートン)以上であることが好適である。この
引張強度を求めるには、貫通孔21の長さより長い、超硬製のピン(図示しない)を中駒20の貫通孔21a,21bに挿入した後、このピンを引き離す方向に引っ張り、中駒20が破壊したときの強度をロードセルで読み取ればよい。また、装飾部品用セラミックスが時計用ケースまたは時計用バンド駒である場合、図示しないムーブメント(駆動機構)への悪影響を考慮すると、質量磁化が162G・cm3/g以上の強磁性金属、例えばコバルト(Co
)の比率は、装飾部品用セラミックス100質量%に対し、合計で0.1質量%以下であることが好適である。このような強磁性金属の比率は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析法で測定することができる。
【0102】
図6は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた携帯電話機の一例を示す斜視図であり、図7は、図6に示す例の携帯電話機の筐体が開いた状態を示す斜視図である。
【0103】
本実施形態の携帯端末機用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることが好適であり、その具体例としては、図6および図7に示す例の携帯電話機の各種操作キー,ケースまたはスイッチ等がある。
【0104】
図6に示す例の携帯電話機60は、携帯電話機60のモードを、ラジオを聴くモードであるラジオモードや音楽を聴くモードである音楽モードなどに変更するモードキー61aと、携帯電話機60をマナーモードにするマナーキー61bとを第1の筐体62に備え、指などの接触を検知してこの接触により入力が行なわれるタッチセンサ63と、被写体を撮像するカメラ64と、ライト65と、タッチセンサ63等の入力の有効または無効を設定するスライドスイッチ66とを第2の筐体67に備えている。
【0105】
そして、図7に示す例の携帯電話機60は、第2の筐体67を開いた状態を示すものであり、第1の筐体62と第2の筐体67とは、ヒンジ68を介して連結されており、これにより第2の筐体67は、自在に開閉することができる。また、第2の筐体67は、フロントケース69aとリアケース69bとを有しており、フロントケース69aには液晶表示ユニット70が設けられている。
【0106】
また、第1の筐体62もフロントケース71aとリアケース71bとを有しており、フロントケース71aには各種操作キーが設けられている。この操作キーには、電話番号等を入力するテンキー72a,各種機能のメニューについてカーソルを移動するカーソル移動キー72b,着信時に押して操作することによって通話を開始する通話キー72c,電源のオンオフおよび通話後に押して操作することによって通話を終了する電源/終話キー72d,カーソル移動キー72bの中心に配置されたセンターキー72fの左右に配置されたファンクションキ
ー73L,73R等がある。
【0107】
上述のケースであるフロントケース69aや71a,リアケース69bや71b,操作キーであるテンキー72a,カーソル移動キー72b,通話キー72c,電源/終話キー72d,センターキー72f,ファンクションキー73Lや73R等の少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間にわたって与え、このような色調を呈する携帯電話機60を所有することによる満足感を感じさせることができる。また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、他の色調との相性がよいことから、様々な色調の部材と組み合わせて用いることもできるので、需要者の嗜好の多様化に応えることができる。
【0108】
次に、図8は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた他の例であるノート型パーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【0109】
図8に示すノート型パーソナルコンピュータ80は、キーボード81,トラックパッド82およびボタンスイッチ83L,83Rを備えた本体側ケーシング84と、この本体側ケーシング84にヒンジ85L,85Rを介して開閉自在に取り付けられたディスプレイ86を備えたディスプレイ側ケーシング87とからなる。
【0110】
キーボード81は、複数のキーからなり、キーを押すことによって文字の入力や機能を呼び出すことができるものである。また、トラックパッド82は感圧式または静電式のポインティングデバイスからなるものであり、ディスプレイ86の画面におけるポインタの移動や命令入力等に利用されるものである。例えば、ディスプレイ86にアイコン表示されたファイルの指定やアプリケーションプログラムの選択等に用いられ、ボタンスイッチ83L,83Rとのコンビネーション操作によって、ディスプレイ86上のアイコンのドラッグやテキストファイル上の文字列の複数選択等にも用いられる。
【0111】
また、ボタンスイッチ83Lは、前述のコンビネーション操作の他、トラックパッド82のポインティング機能で指定または選択されたファイルの開閉もしくは処理の実行等の指令にも用いられるものであり、ボタンスイッチ83Rには、ディスプレイ86の画面上にコンテキストメニューを表示させたり、トラックパッド82のポインティング機能で指定あるいは選択されたファイルの属性情報を表示させたりする機能がある。なお、ここでいうコンテキストメニューとは、選択可能な処理をディスプレイ86の画面にポップアップ表示する機能のことである。
【0112】
そして、上述のキーボード81のキーおよびボタンスイッチ83a,83bの少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間にわたって与え、このような色調を呈するノート型パーソナルコンピュータ80を所有することによる満足感を感じさせることができる。
【0113】
なお、携帯端末機の一例として携帯電話機60およびノート型パーソナルコンピュータ80を用いて説明したが、本実施形態の装飾部品用セラミックスが用いられる携帯端末機は携帯電話機60およびノート型パーソナルコンピュータ80に限定されるものではなく、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant),携帯型のカーナビゲーションやオーディオプレーヤー等の携帯型の端末機であって、部品に装飾性が求められるものであれば、様々な携帯端末機が該当する。
【0114】
次に、図9は、本実施形態の生活用品用装飾部品である石鹸ケースの構成の一例を示す模式図である。
【0115】
この石鹸ケース90は、本体93と蓋92とからなり、石鹸91を載置する本体93の載置面94には、石鹸91の表面に付着している水を切るための排出孔95が形成されている。石鹸91を使用しないときには、本体93の載置面94に石鹸91は載置され、蓋92を本体93に嵌め合わすことにより収納されている。石鹸91を使用するときには、本体93から蓋92を外して石鹸91を取り出して使用する。そして、使用後の石鹸91を本体93の載置面94に載置することにより、排出孔95により石鹸91の表面に付着している水を切ることができ、石鹸91が水に溶けるのを防ぐことができるものである。
【0116】
この石鹸ケース90である蓋92または本体93を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0117】
また、図10は、本実施形態の生活用品用装飾部品の他の例であるコーヒーカップセットの一例を示す斜視図である。
【0118】
図10に示すコーヒーカップセット100は、コーヒーカップ101とソーサー102とスプーン103とからなり、このコーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103を本実施形態の
装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に対し、所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0119】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは他の色調との相性がよいので、コーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103の少なくとも1つを本実施形態の装飾部品用
セラミックスで形成し、他を異なる色調として組み合わせて用いることもできる。
【0120】
また、本実施形態の生活用品用装飾部品は、石鹸ケース90やコーヒーカップセット100
だけではなく、歯ブラシやカミソリの柄,耳かきおよびハサミ等の生活用品用装飾部品に好適に用いることができる。特に、高級ホテルの浴室や洗面所において、各種ロゴ等のマーキングされたアメニティーグッズに本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いることにより、非日常感が強く演出された高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0121】
次に、図11は、本実施形態の車両用品用装飾部品を取り付けた車体の一例を示す斜視図である。
【0122】
図11に示す車体110には、車両用品用装飾部品であるエンブレム111が取り付けられており、このエンブレム111を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、
需要者に対し、視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができるので車体110の装飾的価値を高めることができる。なお、図11では車体110の前方に取り付けたエンブレム111を示したが、車体110の後方に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したメーカー名や車種名等を示すエンブレム111を取り付けることによっても、車
体110の装飾的価値を高めることができる。
【0123】
また、図12は、本実施形態の車両用品用装飾部品を用いたコーナーポールの一例を示す正面図である。
【0124】
図12に示すコーナーポール112は、駐車場における車両の出し入れ時等に運転席から見
えにくい車体の左前方(右ハンドル車の場合)の目印とするために取り付けられるものであり、車体への取り付け部113とポール部114と発光ダイオード(LED)等からなる点灯部115と、を有している。このコーナーポール112のポール部114を本実施形態の装飾部品
用セラミックスで形成したり、点灯部115に替えて本実施形態の装飾部品用セラミックス
で形成したエンブレムを取り付けたりすることにより、コーナーポール112はもとより車
体の装飾的価値が向上するので好適である。
【0125】
また、本実施形態の車両用装飾部品は、エンブレム111やコーナーポール112だけでなく、ホイールキャップの一部や車体のボンネット上に設けられるフードオーナメントの一部、さらに車内に取り付ける小物やアクセサリーまたはこれらの一部として用いても装飾的価値が向上するので好適である。
【0126】
次に、図13は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたゴルフクラブの一例を示す正面図である。
【0127】
図13に示すゴルフクラブ120は、シャフト121と、このシャフト121の一端に取り付けら
れたグリップ122と、シャフト121の他端に取り付けられたヘッド123とを備えている。ヘ
ッド123は、ゴルフボールを捉える部分であるフェース面123Fや地面に接地する部分となるソール面123Sを有しており、図13に示すように、本実施形態の装飾部品用セラミック
スで形成したアクセサリー124がフェース面123Fに埋め込まれていれば装飾的価値が向上するので好適である。
【0128】
また、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品は、フェース面123Fだけではなく、ソー
ル面123Sやグリップ122に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したアクセサリー124が埋め込まれていたり、グリップ122そのものが本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成されていたりしても好適である。
【0129】
また、図14は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたスパイクシューズの一例を示す底面図である。
【0130】
図14に示すスパイクシューズ130は、例えば、サッカーやラグビーに用いられるもので
あり、靴底131にはボールを蹴るときに軸足を固定するための突起状に形成されたスタッ
ド132が複数装着されている。本実施形態の装飾部品用セラミックスがこのスタッド132として用いられると、装飾的価値が向上することに加え、従来から用いられているアルミニウム合金製のスタッドよりも耐磨耗性が優れているので、スタッド132の交換頻度が少な
くなり、交換によるコストを低減することができる。なお、競技中に発生するおそれがあるスタッド132の欠けを防止するために、透明な樹脂でスタッド132の表面を被覆してもよい。
【0131】
次に、図15は、本実施形態の楽器用装飾部品を用いたギターの一例を示す斜視図である。
【0132】
図15に示すギター140の主な構成は、本体141と本体141から前方に延設されたネック142とからなる。ネック142の先端部にはナット143が配設され、ナット143より前方には弦144の張力を調整することができるチューニングベグ145がそれぞれの弦144毎に設けられている。また、弦144を保持してナット143に対して動かないようにするためのクランプ機構146がナット143の近くに配設されている。
【0133】
一方、本体141には、弦144の張力を同時に増大、あるいは減少させて印象的な音効果を与えるためのトレモロ装置147が取り付けられている。トレモロ装置147は、本体141に取
り付けられているベースプレート148と、このベースプレート148に保持されて弦144を調
律可能に保持するブリッジサドル149と、トレモロ装置147を稼動させるトレモロバー150
とにより構成されている。このギター140のベースプレート148,ブリッジサドル149,ト
レモロバー150等を本発実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、ギタ
ー140の装飾的価値が向上するため、このギター140を所有することによる満足感を感じさせることができるとともに多くの観客を魅了することができる。
【0134】
次に、図16は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いた人工歯冠の一例を示す模式図である。
【0135】
図16の模式図は、歯肉155の内部の顎骨152に埋め込まれた人工歯根(インプラント)153に固定された支台(アパットメント)154に装着された人工歯冠151を示すものである。
この人工歯冠151を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、歯が黄
金色の輝きを放つため、歯の装飾を好む需要者に高い陶酔感を与えることができる。
【0136】
また、顎骨152に埋め込まれる人工歯根153がスクリュー状に形成され、このスクリュー状に形成された部分には、新生骨の生成を誘導する能力が高いキチン,コラーゲン,およびこれらの誘導体の少なくともいずれか1種を含む生体分解性基材からなる硬質の接合層が形成されていてもよい。また、支台154の基部には、架橋された上記生体分解性基材よ
りなる軟質の接合層が顎骨152の上側に位置する歯肉155に当接するように形成されていてもよい。
【0137】
そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体からなるので、生体に適合しやすく、この利点を生かして、人工歯冠151だけでなく、人工歯根153や支台154に用いても好適である。
【0138】
また、図17は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いたイヤホンユニットの一例を示す正面図である。
【0139】
図17に示すイヤホンユニット160は、聴取者の耳殻内に挿入されて音波を発するスピー
カ161と、このスピーカ161を収容するケース162と、このケース162に当接するコード導出部163を介してスピーカ161に電気信号を供給するコード164とを備えている。
【0140】
このイヤホンユニット160のケース162を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
【0141】
さらに、図18は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いためがねの一例を示す斜視図である。
【0142】
図18に示すめがね170は、視力を矯正したり、紫外線から目を保護したりするための一
対のレンズ171a,171bと、一対のレンズ171a,171bを連結するブリッジ172と、それ
ぞれのレンズ171a,171bに連結される鎧173a,173bと、ヒンジを介して回動することができるように鎧173a,173bに連結されるテンプル174a,174bと、レンズ171a,171bにそれぞれノーズパッド連結部材を介して取り付けられるノーズパッド175とを備えて
いる。
【0143】
このめがね170のブリッジ172,テンプル174a,174bおよびノーズパッド175の少なく
とも1つを本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
【0144】
図19は、本実施形態の建材用装飾部品を用いたドアハンドル用のグリップの一例を示す
斜視図である。
【0145】
図19に示すドアハンドル180は、L字状に延びる本体181および本体181の端部に嵌合さ
れる筒状のグリップ182を備えており、グリップ182はその先端側からフランジ183aが形
成されたナット183と、後端側からフランジ184とで挟まれることによって本体181に固定
されている。
【0146】
このようなドアハンドル180のグリップ182を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる建材用装飾部品とすることができる。
【0147】
次に、本実施形態の装飾部品用セラミックスの製造方法について説明する。
【0148】
本実施形態の装飾部品用セラミックスを得るには、まず、焼結体中で主成分となる窒化チタンと、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の各粉末とを所定量秤量し、粉砕・混合して調合原料とする。より具体的には、平均粒径が10〜30μmの窒化チタンの粉末と、平均粒径が10〜20μmのニッケルの粉末と、平均粒径が20〜50μmのニオブの粉末、平均粒径が30〜60μmのクロムの粉末および平均粒径が0.1〜10μmの炭素の粉末とを準備し、
ニッケルの粉末が7〜14.5質量%、ニオブの粉末が2.5〜10質量%、クロムの粉末が1.5〜6.5質量%および炭素の粉末が0.4〜0.9質量%であって、残部が窒化チタンの粉末となるように秤量して粉砕・混合すればよい。
【0149】
なお、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成するには、ニッケルの粉末とクロムの粉末とが接触する頻度を高くすることが必要である。この頻度を高くするためには、粉砕・混合時間を長くすればよく、例えば、粉砕・混合時間を150時間以上にすればよい。このとき、この調合原料における不可避不純物としては珪素,
リン,イオウ,マンガン,鉄等が挙げられるが、これらは装飾面の色調に悪影響を及ぼすおそれがあるので、各々0.5質量%未満であることが好適である。
【0150】
また、窒化チタンの粉末は化学量論的組成のTiNであっても、あるいは非化学量論的組成のTiN1−x(0<x<1)であってもよいが、耐磨耗性および装飾的価値が高い色調という観点からは、各粉末の純度は99%以上であることが好ましく、窒化チタンの粉末が一部ニッケルの粉末と反応してTiNiを微量生成しても何等差し支えない。特に、装飾部品用セラミックスを成す窒化チタン質焼結体について組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96とするには、窒化チタンの粉末は組成式をTiNxとしたときに0.7≦x≦0.9のものを用いればよい。
【0151】
次いで、調合原料に例えば水を加え、ミルを用いて混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法等により円板,平板,円環体等の所望形状に成形する。
【0152】
また、成形法として乾式加圧を選択した場合は、成形圧力は装飾面における開気孔率およびビッカース硬度(Hv)に影響を与えることから、成形圧力を49〜196MPaとする
ことが好適である。成形圧力を49〜196MPaとするのは、相対密度が95%以上で開気孔
率が2.5%以下の焼結体を得ることができるとともに、ビッカース硬度(Hv)を8GP
a以上にすることができるからである。また、金型の寿命を長くすることもできる。
【0153】
そして、得られた成形体を不活性ガス雰囲気中で、この不活性ガスの温度および圧力をそれぞれ310〜390℃,30〜60kPaに維持しながら脱脂して脱脂体とした後、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で脱脂体をセラ
ミックス製の容器内に収納して焼成することで、理論密度に対する相対密度が95%以上の焼結体を得る。なお、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で焼成するのは、酸化性雰囲気中で焼成すると、チタンが酸化してそのほとんどが組成式TiO2で表される酸化チタンとなり、この酸化チタンが本質的に備えている白色の色調の影響を受けてしまい、装飾部品用セラミックスの全体の色調が白っぽくかすむからである。
【0154】
また、真空中で焼成して装飾部品用セラミックスを得る場合は、その真空度が1.33Pa以下であることが好適である。真空度を1.33Pa以下とするのは、チタンが焼成中に酸化して装飾部品用セラミックスの色調が白っぽくかすむようなことなく、黄金色の装飾部品用セラミックスを得るためである。さらに、焼成温度を1200〜1800℃とすることが好適である。これにより、相対密度が95%以上で開気孔率が2.5%以下の焼結体を得ることがで
きるとともに、焼成コストも下げられるからである。
【0155】
また、窒化チタン質焼結体の熱伝導率を22W/(m・K)以上とするには、熱伝導率を低下させる要因となるリチウム,ナトリウム,カリウム,鉄,カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム,バリウム,マンガンおよび硼素の含有量は、装飾部品用セラミックス100質量%に対し、合計で0.3質量%以下にすればよい。一方、窒化チタン質焼結体の熱伝導率を26W/(m・K)以下とするには、粒成長を抑制することが求められるため、1200℃以上1550℃以下とすればよい。
【0156】
そして得られた焼結体の装飾的価値が求められる面に、ラップ盤を用いてラップ加工を行なった後、バレル研磨を行なうことにより、焼結体のその表面は黄金色の色調を有する装飾面となって、本実施形態の装飾部品用セラミックスを得ることができる。なお、このような装飾面に現れる気孔は、その開口部の最大径を30μm以下にすることが好適で、この範囲にすることで、気孔内への雑菌,異物や汚染物等の凝着を低減することができる。
【0157】
装飾部品用セラミックスからなる製品の形状が複雑な形状の場合には、予め乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法および射出成形法等によってブロック形状または製品形状に近い形状に成形した後に切削加工を施したり、成形体を焼結した後に製品形状になるように研削加工を施したりして製品形状とし、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよく、あるいは最初から射出成形法によって製品形状とし、焼成後に、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよい。
【0158】
ここで、装飾面となる表面の算術平均高さRaを0.03μm以下とするには、錫製のラップ盤に平均粒径の小さいダイヤモンド砥粒を供給してラップ加工すればよく、例えば平均粒径が1μm以下のダイヤモンド砥粒を用いればよい。また、バレル研磨では、回転バレル研磨機を用い、メディアとしてグリーンカーボランダム(GC)を回転バレル研磨機に投入し、湿式で24時間行なえばよい。
【0159】
以上のようにして得られる本実施形態の装飾部品用セラミックスは、特に美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができるので、上述のように、時計用ケース,時計用バンド駒等の時計用装飾部品や携帯電話機,ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末機用装飾部品を始め、石鹸ケース,コーヒーカップセット,ナイフ,フォーク,ハブラシやカミソリの柄,耳かき,ハサミ,印材や名刺等の生活部品用装飾部品や、メーカー名や車種名等のエンブレムやコーナーポール等の車両用装飾部品や、ゴルフクラブやスパイクシューズを装飾するスポーツ用品用装飾部品や、ギター等を装飾する楽器用装飾部品や、イヤホンユニットの装飾や人工歯冠,めがね,ブローチ,ネックレス,イヤリング,リング,ブレスレット,アンクレット,ネクタイピン,タイタック,メダル,ボタン等
の装身具用装飾部品や、床,壁,天井を飾るタイルあるいはドアハンドル用のグリップ等の建材用装飾部品として好適に用いることができる。また、時計と携帯電話とが複合化され、両者の機能を兼ね備えた腕時計型携帯電話機用装飾部品としても好適に用いることができる。
【0160】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0161】
まず、窒化チタン粉末(純度が99%,平均粒径が22.3μm),ニッケル粉末(純度が99.5%,平均粒径が12.8μm),ニオブ粉末(純度が99.5%,平均粒径が33μm),クロム粉末(純度が99%,平均粒径が55μm)および炭素粉末(純度が99%以上,平均粒径が0.5μm)を焼結体での比率(含有量)が表1に示す比率になるように秤量し、粉砕・混合
して調合原料とした。
【0162】
次に、得られた各調合原料に水を加えて、振動ミルを用いて72時間粉砕・混合した後、バインダとしてパラフィンワックスを調合原料に対し3質量部添加して、噴霧乾燥法により乾燥させて顆粒とした。そして、得られた顆粒を98MPaの圧力で加圧成形して、成形体を作製した。次に、この成形体を不活性ガス雰囲気中にて、表1に示すガスの温度および圧力に維持しながら脱脂して脱脂体とした後、窒化アルミニウムを主成分とする焼成用敷粉が散布されたセラミックス製の容器内に脱脂体を載置し、窒素雰囲気中にて1530℃で2時間保持して焼成して、図4に示す時計用裏蓋4の形状となる焼結体を得た。
【0163】
そして、回転バレル研磨機を用いて、水とメディアとしてグリーンカーボランダム(GC)とを入れて、24時間バレル研磨を行ない、試料No.1〜29の窒化チタン質焼結体からなる時計用裏蓋4である装飾部品用セラミックスを得た。
【0164】
そして、各試料の取付け孔18a,18cの各中心間の距離pを測定顕微鏡を用いて倍率を100倍で測定した後、試料No.10の距離pを基準値1として、各試料の距離pの測定値
を相対値で算出し、距離pの相対値が0.998以上1.002以下にあるものを規格範囲内として合格、この範囲から外れるものを規格範囲外として不合格と判断した。
【0165】
また、各試料の表面から0.1mm以内の領域を除いた部分を対象にしてX線回折法によ
りニオブの酸化物の有無を調べ、ニオブの酸化物が検出された試料には×を、検出されなかった試料には○を表1で示した。
【0166】
そして、各試料を構成するチタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は蛍光X線分析(XRF)装置を用いて測定し、炭素については、炭素分析装置を用いて測定した。また、装飾面の算術平均高さRaについては、JIS B 0601−2001に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、測定長さを5mm,カットオフ値を0.8mm,触針先端半径を2μ
m,触針の走査速度を0.5mm/秒として5箇所を測定し、その平均値を算出した。さら
に、破壊靭性K1cについては、JIS R 1607−1995で規定された圧子圧入法(IF法:indentation−Fracture法)に準拠して破壊靱性K1cを測定し、硬度については、
JIS R 1610−2003に準拠して、装飾面のビッカース硬度Hv(以下、硬度という。)を5箇所測定し、その平均値を算出した。
【0167】
また、各試料の明度指数とクロマティクネス指数について、JIS Z 8722−2009に準拠して、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d)の光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を3×5mmに設定して装飾面の色調を測定した。
【0168】
また、光沢および色調については、20歳代〜50歳代の各年代について男女5名ずつ計40名のモニターに、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を実施した。高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目の調査結果に対して、ランク付けを実施し、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも90%以上のものは「優」と、上記3項目のうち少なくとも1項目が80%で、残りの項目が90%であるものは「良」と、
3項目のうち少なくとも1項目が70%で、残りの項目が80%であるものは「可」と、1項
目でも70%未満となっているものは「不可」と評価した。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった試料No.10を標準試料として、試料No.10に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0169】
それぞれの結果について、表1,表2に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
表1に示す通り、ニオブの酸化物が検出された試料No.8は、距離pの相対値が規格寸法の範囲から外れているのに対し、本実施形態の試料No.1〜7,9〜16,18〜22,24〜29は、ニオブの酸化物が検出されず、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから、距離pの相対値が規格寸法の範囲内にあることが分かる。
【0172】
また、試料No.17は、窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用するニッケルが0質量%であることから、未焼結部分が確認され、装飾部品に用いることはできなかったことが、試料No.23は、ニオブが0質量%であることから、モニターが求める装飾的価値が得られず、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
【0173】
また、表2に示す通り、ニオブの酸化物が検出された試料No.8は、光沢を得ることができなかったことから、モニターが求める装飾的価値が得られず、高級感,美的満足感,精神的安らぎの各項目において「得られる」と言う回答は無く、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
【0174】
さらに、表2に示す通り、特に、試料No.3〜7,9〜11,13〜22,24〜29は、装飾面における炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることから、破壊靱性および
硬度が高い上、標準試料である試料No.10に対する色差(△E*ab)が小さく、モニターが求める装飾的価値が得られていることが分かる。また、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されて、試料No.10に対する色差(△E*ab)を小さくすることができているので、装飾部品間で発生する色調感の差をほとんど感じることがなかった。
【0175】
特に、本実施形態の試料No.3〜7,9〜11,15,16,19〜21,25〜27は、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることから、装飾面における光の反射率が高いため、光沢が増し、高級感,美的満足感および精神的安らぎともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
【実施例2】
【0176】
ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物による特性の変化を確認した。
【0177】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表3に示す比率となるように秤量した後、表3に示す時間で、水とともに粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.30〜34の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成用敷粉については、いずれの試料も、窒化アルミニウムの含有量が95質量%である焼成用敷粉を用いた。
【0178】
そして、装飾部品用セラミックスの装飾面において、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表3に示した。
【0179】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、試料No.34を標準試料として、試料No.34に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0180】
得られた結果を表3に示す。
【0181】
【表3】
表3に示す通り、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれている試料No.31〜33は、上記金属間化合物が装飾面に含まれていない試料No.30,34よりも装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出されるので、より高い高級感および美的満足感をモニターに与えていることが分かる。
【実施例3】
【0182】
窒化チタン粉末の組成式の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0183】
まず、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときの原子数xが表4に示す数値となる窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表3に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.35〜39の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0184】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった試料No.38を標準試料として、試料No.38に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0185】
さらに、組成式をTiNxとしたときの原子数xの値を求めた。具体的には、酸素・窒素分析装置を用いて酸素,窒素の含有量を測定し、炭素の含有量と合わせて100質量%か
ら引いた値をチタンの含有量として、チタンと窒素の含有量とをそれぞれの原子量で除すことによりモル数を求めて、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとした。
【0186】
得られた結果を表4に示す。
【0187】
【表4】
表4に示す通り、原子数xの値が0.8未満の試料No.35および原子数xの値が0.96を
超える試料No.39と比較して、原子数xが0.8以上0.96以下である試料No.36〜38は
、光沢のある色調感が増すために、より高い高級感,美的満足感および精神的安らぎをモニターに与えていることが分かる。
【実施例4】
【0188】
NiおよびNbの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0189】
まず、試料No.38に用いた窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表5に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例3と同様の製造方法にて試料No.40〜51の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0190】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった実施例3の試料No.38を標準試料として、試料No.38に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。さらに、実施例3と同様の算出方法で原子数xを求めた。
【0191】
得られた結果を表5に示す。
【0192】
【表5】
表5に示す通り、試料No.41〜43,46〜50は、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことから、明度指数L*が72以
上84以下,クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
【実施例5】
【0193】
Crの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0194】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表6に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.52〜57の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0195】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定した。次に、JIS B 7001−1995で規定する耐食試験のうち、人工汗半浸せき試験(40±2℃、24時間放置)を行ない、試験後の各試料の色調を測定し、試験前後の明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*の差を算出した。
【0196】
得られた結果を表6に示す。
【0197】
【表6】
表6に示す通り、クロムを1.5質量%未満の含有量で含む試料No.52に比べて、試料
No.53〜56は、クロムを1.5質量%以上の含有量で含むことから、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させ、明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*とも試験前後の変化が少なく、耐食性が良好であることが分かる。
【0198】
但し、クロムの含有量が6.5質量%を超えると、試料No.57から分かるように耐食性
は良好であるものの、鮮やかさを示すクロマティクネス指数a*、b*がともに低下するため、耐食性と鮮やかさを兼ね備えたものにするには、試料No.53〜56に示すように、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことがより好適である。
【実施例6】
【0199】
開気孔率の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0200】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表7に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、バレル研磨前まで実施例1と同様の製造方法を行ない、開気孔率による明度指数L*への影響を確認するため、バレル研磨に使用するグリーンカーボランダム(GC)の直径を異ならせることにより開気孔率を調整した試料No.58〜61の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0201】
その後、装飾面の開気孔率は金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで
装飾面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2とし、測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔率を求めて装飾面の開気孔率とした。また、実施例1
と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。
【0202】
得られた結果を表7に示す。
【0203】
【表7】
表7に示す通り、開気孔率が2.5%を超える試料No.61に比べて、開気孔率が2.5%以下の試料No.58〜60は、明度指数L*の値を76以上にすることができ、より好まれる色調となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分に満足させられていることが分かる。
【実施例7】
【0204】
クロムおよびニッケルからなる化合物による特性の変化を確認した。
【0205】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表8に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.62〜64の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成における雰囲気はいずれも真空とし、表8に示す真空度で焼成した。
【0206】
そして、装飾部品用セラミックスの未研磨面において、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表8に示した。
【0207】
【表8】
表8に示す通り、試料No.63,64は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことから、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含まない試料No.62に比べ、時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなるといえる。
【実施例8】
【0208】
平均結晶粒径の違いによる特性の変化を確認した。
【0209】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表9に示す比率となるように秤量した後、粉砕時間を異ならせることにより原料粒径を調整して調合原料とした。次に、バレル研磨前まで実施例1と同様の製造方法を行ない、平均結晶粒径の違いによる3点曲げ強度および明度指数L*への影響を確認するため、平均結晶粒径を調整した試料No.65〜75の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0210】
その後、破断面を走査型電子顕微鏡によって3000倍に拡大した86〜110μm×65〜92μ
mの範囲で、同じ長さの直線を8本引き、この8本の直線上に存在する結晶の個数をこれら直線の合計長さで除すことで求めて窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径とした。
また、3点曲げ強度については、JIS R 1601−2008に準拠して測定した。さらに、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。
【0211】
得られた結果を表9に示す。
【0212】
【表9】
表9に示す通り、窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μmに満たない試料No.65
および10μmを超える試料No.75に比べて、窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下の試料No.66〜74は、3点曲げ強度が640MPa以上となると共に高
級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分に満足させられていることが分かる。
【0213】
以上説明したような本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いて、時計用装飾部品や携帯端末機用装飾部品および腕時計型携帯電話機用装飾部品を始め、生活用品用装飾部品,車両用品用装飾部品,スポーツ用品用装飾部品,楽器用装飾部品,装身具用装飾部品や建材用装飾部品として用いれば、美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができて好適である。
【符号の説明】
【0214】
1:装飾部品用セラミックス
2:装飾部品
3:複合装飾部品
10A,10B:時計用ケース
11:凹部
12:足部
13:底部
14:胴部
15:穴部
17:時計用裏蓋
20:中駒
21:貫通孔
30:外駒
31:ピン穴
40:ピン
50:時計用バンド
60:携帯電話機
80:ノート型パーソナルコンピュータ
90:石鹸ケース
100:コーヒーカップセット
110:車体
112:コーナーポール
120:ゴルフクラブ
130:スパイクシューズ
140:ギター
151:人工歯冠
160:イヤホンユニット
170:めがね
180:ドアハンドル
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金色を呈する時計用装飾部品や装身具用装飾部品には、色調や耐食性の面から金やその合金、または各種金属にメッキを施したものが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、硬質相として窒化チタンを45〜75重量%、炭化チタンを7.5
〜25重量%、結合相としてクロムを全量中炭化物に換算して1〜10重量%、モリブデンを全量中炭化物に換算して0.1〜5重量%、及びニッケルを全量中5〜20重量%含有して、
測色計にて得られるL*a*b*表色系の明度指数がL*=65〜69、a*=4〜9、b*=5〜16である焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、次式(A)で表わされる硬質相が70〜98重量%と、
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中の1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.19≧X≧0,0.6≧Y≧0,0.93≧Z≧0.6
Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%と不可避不純物とから成る装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%とP,Al,B,Si,Mn,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Taの1種以上の金属、合金又はAl,Y,Zr,Mg,Ni,Siの酸化物、Al,Si,Bの窒化物、Moの炭化物もしくはこれらの相互固溶体の1種以上の化合物から成る強化相が0.1〜10重量%と残りが次式(A)で表わされる硬質相と不可避不純物とから成る
装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0006】
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中から選ばれた1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.5≧X≧0,0.6≧Y≧0.06,0.93≧Z≧0.6
そして、特許文献2および3では、TiNZ(0.6≦Z≦0.95)を主体にした硬質相に
よる、黄金色の色調を保持させた装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
【0007】
また、特許文献4では、窒化チタンを主成分とし、ニッケルを副成分とするとともに、窒化バナジウム,窒化ニオブ,窒化タンタル,炭化モリブデン,炭化ニオブ,炭化タングステンおよび炭化タンタルのうち少なくともいずれか1種、を添加成分として含む装飾部品用セラミックスであって、少なくとも装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72〜84であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ4〜9,28〜36である装飾部品用セラミックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−13154号公報
【特許文献2】特開昭58−204149号公報
【特許文献3】特開昭58−204150号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1767661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、色調が銀色と紫色とを併せ持つ色調から銀色とピンク色とを併せ持った色調であり、黄金色の色調ではなかった。
【0010】
また、特許文献2および3に記載された装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、硬度,靱性等の機械的特性や装飾部品間で発生する色調感の差である色差に影響を与える炭素の比率は幅広い値をとることができることから、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きい場合が発生したりするという課題があった。
【0011】
特許文献4に記載された装飾部品用セラミックスは、炭素の比率が制御されたものではなく、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きくなったりするおそれがあった。
【0012】
さらに、特許文献2および3に記載された装飾部品用セラミックスでは、脱脂工程で酸化を抑制することができず、この酸化によって体積膨張が発生することがあった。そして、この体積膨張が発生すると、セラミックスの密度が低下して、装飾面の光沢が低下するとともに、規格寸法の範囲から大きい方に外れるという課題があった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、黄金色の色調を有し、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られるとともに、装飾面の光沢が得られ、寸法が異常に大きくなることがなく所望の規格寸法に収めやすい装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的に前記ニオブの酸化物を含んでいないことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記構成において、装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体は、前記ニッケルと、前記ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が前記装飾面に含むことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チ
タン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることを特徴とする
ものである。
【0019】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で
含むことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体は、前記クロムおよび前記ニッケルからなる金属間化合物を含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記いずれかの構成において、前記窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の複合装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスと、該装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の時計用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の携帯端末機用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の生活用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の車両用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明のスポーツ用品用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の楽器用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の装身具用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明の建材用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから、好ましい黄金色が提供できるとともに、ニオブが酸化されることによって生じる体積膨
張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、寸法が製品の規格寸法の範囲から外れることがほとんどないものとできる。
【0033】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、装飾面における炭素の含有量が0.4
質量%以上0.9質量%以下であるときには、炭素が窒化チタンに拡散して固溶体を形成し
て焼結を促進するため、硬度,靱性等の機械的特性を高くすることができるとともに、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されると思われ、色調感の差である色差(△E*ab)を小さくすることができるので、装飾部品間で発生する色調感の差をほとんど感じることがない。
【0034】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であるときには、装飾面における光の反射率が高いため、光沢が増し、高級感および美的満足感を得ることができる。
【0035】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含むときには、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさを得ることができる。
【0036】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、前記窒化チタン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であるときには、光沢のある色調感がさらに増す
ため、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0037】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むときには、窒化チタ
ンの結晶を強固に結合することができる。また、装飾部品用セラミックスを身に付けているときに、汗と反応してニッケルが溶出することが少ない。併せて、ニオブを2.5質量%
以上10質量%以下の含有量で含むことから、ニオブが窒化チタンの結晶に固溶したり、結晶粒界に溶融したりすることによって、ニオブは窒化チタンの粒成長を抑制するように働くため、結晶粒界は拡がり、入射した光に対して装飾面を形成する結晶による鏡面反射と結晶粒界による拡散反射とを有し、装飾面における明度指数L*を高くできるとともに、その色調は優れた相乗効果を生むので、光沢のある色調感が増し、さらに高級感があって、美的満足感を得ることができる。
【0038】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むときには、耐食性が向上するため、高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間維持することができる。
【0039】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、窒化チタン質焼結体は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むときには、非磁性体となるために、この装飾部品用セラミックスが時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を受けにくくすることができる。
【0040】
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、窒化チタン質焼結体は、平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であるときには、粗大な結晶粒を少なくできるので、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、その一方で、装飾面における結晶粒界の面積が抑制されるために、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0041】
また、本発明の複合装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることから、例えば、異なる色調が紫色であると、本発明の装飾部品用セラミックスの呈する色調の黄金色との組み合わせによって、装飾が求められる店頭広告やインテリア雑貨に用いたときに、消費者の購買意欲を刺激することができる。また、異なる色調が黒色であると、本発明の装飾部品用セラミックスの呈する色調の黄金色との組み合わせによって、視認性が高まり、遠方からの視認が求められる用途、例えば、案内板等の表示部品として好適に用いることができる。さらに、異なる色調が銀色であれば、より高級感に溢れた装飾性を高めることができる。
【0042】
また、本発明の時計用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される時計に好適に用いることができる。
【0043】
また、本発明の携帯端末機用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともにファッション性も重視される携帯端末機に好適に用いることができる。
【0044】
また、本発明の生活用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される生活用品に好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明の車両用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される車両用品に好適に用いることができる。
【0046】
また、本発明のスポーツ用品用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求されるスポーツ用品に好適に用いることができる。
【0047】
また、本発明の楽器用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される楽器に好適に用いることができる。
【0048】
また、本発明の装身具用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される装身具に好適に用いることができる。
【0049】
また、本発明の建材用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される建材に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の複合装飾部品の一例を示す、装飾面を平面視した模式図である。
【図2】本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示す、(a)は時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側からみた斜視図である。
【図3】本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の時計用装飾部品である時計用裏蓋の一例を示す底面図である。
【図5】本実施形態の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた携帯電話機の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す例の携帯電話機の筐体を開いた状態を示す斜視図である。
【図8】本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた他の例であるノート型パーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【図9】本実施形態の生活用品用装飾部品である石鹸ケースの構成の一例を示す模式図である。
【図10】本実施形態の生活用品用装飾部品の他の例であるコーヒーカップセットの一例を示す斜視図である。
【図11】本実施形態の車両用品用装飾部品を取り付けた車体の一例を示す斜視図である。
【図12】本実施形態の車両用品用装飾部品を用いたコーナーポールの一例を示す正面図である。
【図13】本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたゴルフクラブの一例を示す正面図である。
【図14】本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたスパイクシューズの一例を示す底面図である。
【図15】本実施形態の楽器用装飾部品を用いたギターの一例を示す斜視図である。
【図16】本実施形態の装身具用装飾部品を用いた人工歯冠の一例を示す模式図である。
【図17】本実施形態の装身具用装飾部品を用いたイヤホンユニットの一例を示す正面図である。
【図18】本実施形態の装身具用装飾部品を用いためがねの一例を示す斜視図である。
【図19】本実施形態の建材用装飾部品を用いたドアハンドル用のグリップの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の装飾部品用セラミックスの実施の形態について説明する。
【0052】
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなるものである。
【0053】
本実施形態において、窒化チタン質焼結体とは、窒化チタン(TiN)を主成分とする焼結体であり、ここでいう主成分とは、装飾部品用セラミックスを構成する全成分100質
量%に対して、50質量%以上を占める成分である。この主成分である窒化チタンは、装飾品として良好な黄金色を呈するとともに、強度や硬度等の機械的特性が高いという特徴を有していることから、本実施形態の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスにおいては、窒化チタンを70質量%以上の含有量で含有させることが好適である。
【0054】
また、ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用し、ニオブは、色調調整剤として作用するものであって、金属ニオブ以外に組成式が例えばNbNi3,NbCで示されるニオブ化合物として存在するものも含む。そして、クロムは空気中の酸素と結合し装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させる傾向があり、炭素は靱性や硬度等の機械的特性を向上させる傾向がある。
【0055】
そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことが重要である。上記構成の窒化チタン質焼結体の内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことにより、脱脂工程で熱と圧力とを加えることでニオブが酸化することによって生じる体積膨張が抑制されて、密度が低下しにくくなるため、装飾面の光沢が得られるとともに、規格寸法の範囲から外れることがほとんどないものとすることができる。
【0056】
なお、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないとは、装飾部品用セラミックスの表面から0.1mm以内の領域を除く装飾部品用セラミックスにおいて、ニオブの酸化物が0.5質量%以下であることをいい、ニオブの酸化物とは組成式がそれぞれNbO,NbO2,Nb2O3,Nb2O5で表される一酸化ニオブ,二酸化ニオブ,三酸化二ニオブおよび五酸化二ニオブ等である。このようなニオブの酸化物はX線回折法により検出することができ、検出されなかった場合をニオブの酸化物が0.5質量%以下であるものとみなすこ
とができる。
【0057】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、装飾面における炭素の含有量が0.4質
量%以上0.9質量%以下であることが好ましい。装飾面に炭素がこの含有量で含まれるこ
とにより、炭素は窒化チタンに拡散して固溶体を形成して焼結を促進するため、靱性や硬度等の機械的特性を高くすることができる。また、炭素はクロマティクネス指数a*および以下の式(A)で規定される色調感の差である色差(△E*ab)に影響を与える。炭素をこの含有量で含むことによって、炭素の呈する黒色により無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されるため、装飾部品間で発生する色差をほとんど感じることのない好ましい黄金色とすることができる。
【0058】
△E*ab=((△L*)2+(△a*)2+(△b*)2))1/2・・・(A)
なお、炭素の含有量については、炭素分析法を用いて測定すればよい。
【0059】
このように装飾的価値を求める需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈する装飾部品用セラミックスとするには、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることが好ましい。
【0060】
ここで、明度指数L*とは色調の明暗を示す指数であり、明度指数L*の値が大きいと色調は明るく、明度指数L*の値が小さいと色調は暗くなる。また、クロマティクネス指数a*は色調の赤から緑の度合いを示す指数であり、a*の値がプラス方向に大きいと色調は赤色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、a*の値がマイナス方向に大きいと色調は緑色になる。さらに、クロマティクネス指数b*は色調の黄から青の度合いを示す指数であり、b*の値がプラス方向に大きいと色調は黄色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、b*の値がマイナス方向に大きいと色調は青色になる。
【0061】
また、装飾面の算術平均高さRaは、光の反射率に影響を及ぼして色調が変わるため、装飾面の算術平均高さRaを0.03μm以下としておくことが好ましい。これにより、光の反射率が高くなり、明度指数L*の値を上昇させることができる。この算術平均高さRaが0.03μmを超えると、明度指数L*の値が低下し、色調は暗くなり高級感が低下するおそれがある。
【0062】
この光の波長は380〜780nmを有する可視光線の集合であり、算術平均高さRaを0.03μm以下とすることによって、可視光線を分光し、青色を示す波長域450〜500nmの光の
反射を少なくするとともに、黄色を示す波長域570〜590nmの光の反射を多くするように作用するので、高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈することができる。特に、波長域570〜700nmの光に対する装飾面の反射率は、50%以上であることが好適である。
【0063】
なお、算術平均高さRaはJIS B 0601−2001に準拠して測定すればよく、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用い
て測定する場合であれば、例えば、装飾部品用セラミックスの装飾面に、触針先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒に設定し、この測定で得られた5箇
所の平均値を算術平均高さRaの値とする。
【0064】
そして、明度指数L*の値を72以上84以下としたのは、黄金色の色調に程良い明るさが発現するからであり、クロマティクネス指数a*の値を3以上9以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに赤味を抑えることができるためである。また、クロマティクネス指数b*の値を27以上36以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに黄金色を出せるからである。特に明度指数L*の値は、72以上79以下であることが好適である。
【0065】
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、装飾面における開気孔率が2.5%以下であ
ることが好ましい。装飾面における開気孔率は、特に明度指数L*の値に影響を及ぼし、開気孔率が高いと明度指数L*の値は小さくなり、開気孔率が低いと明度指数L*の値は大きくなる。装飾面における開気孔率を2.5%以下にすることで、明度指数L*の値を77
以上にすることができ、より好まれる色調となる。さらに、明度指数L*の値を78以上とすることが好適であり、この場合には開気孔率は1.1%以下とすることが好ましい。
【0066】
なお、装飾面における開気孔率は、金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカ
メラで装飾面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS等)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔の面積を求めて測定総面積における割合を装飾面
の開気孔率とすればよい。
【0067】
なお、本実施形態の装飾部品用セラミックスにおける装飾面とは、装飾部品の装飾的価値が要求される面を指し、全ての面を指すものではない。例えば、本実施形態の装飾部品用セラミックスを時計用ケースに用いる場合では、この時計用ケースの外側の面は、鑑賞の対象となるものでもあり装飾的価値が要求されるので装飾面である。
【0068】
そして、このような装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値およびクロマティクネス指数a*,b*の値は、JIS Z 8722−2000に準拠して測定することで求められる。例えば、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d等)を用い、光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を5mm×7mmに設定して測定することができる。
【0069】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含むことが好ましい。これら金属間化合物が装飾面に含まれていることによって、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出される。このような金属間化合物は、例えば、組成式がTiNi3,Ti2NiまたはNbNi3として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
【0070】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることが好ましい。後述するように組成式をTiNx
としたときの原子数xの値により、その色調は影響を受ける。原子数xが小さくなると色調は黄金色から薄い黄金色になり、原子数xが大きくなると色調はくすんだ濃い黄金色になる。このような観点から組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、0.8以上0.96
以下であることが好ましく、原子数xの値がこの範囲であるときには、光沢のある色調感がさらに増すため、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
【0071】
窒化チタンは、脱脂または焼成雰囲気中に含まれる酸素および炭素と置換または反応して酸炭窒化チタン(TiCNO)に成りうるため、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、酸素・窒素分析装置および炭素分析装置を用いて、次のようにして求めることができる。具体的には、これら分析装置により窒化チタン質焼結体の酸素、窒素および炭素の含有量を測定した後、100質量%より酸素,窒素および炭素の
含有量を引いた値をチタンの含有量とする。そして、チタンの含有量と窒素の含有量とをそれぞれの原子量で除すことによりモル数が求められるので、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとする。
【0072】
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0073】
ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶同士を結合する結合剤として作用するために、できる限り多く加えることが好ましいが、一方で、装飾部品用セラミックスにおける比率が高過ぎる場合は、装飾部品用セラミックスを身に付けていると汗と反応してニッケルが溶出してしまい、色調は赤みを帯びて、需要者の求める高級感,美的満足感および精神的安らぎ等の装飾的価値を与える黄金色とならなくなるおそれがある。また、CIE1976L*a*b*色空間におけるクロマティクネス指数a*は高くなるものの、明度指数L*,クロマティクネス指数b*とも低くなるため、ニッケルの含有量は7質量%以上14.5質量%以下であることが好ましい。特に、この装飾用部品用セラミックスが腕時計用ケース,バンド駒等を始めとする身に付けるものである場合は、ニッケルの含有量は7質量%以上10質量%以下であることがより望ましい。
【0074】
また、ニオブの含有量を2.5質量%以上10質量%以下としたのは、ニオブが窒化チタン
に固溶する、あるいはニッケルの内部に溶融することによって、明度指数L*の値を高くする色調調整剤としての作用がある反面、ニオブの含有量が多いと共有結合性が高いために焼結が難しくなるおそれがあるからである。
【0075】
また、ニオブの含有量は3質量%以上8質量%以下であることがより望ましい。これは、ニオブは粒成長を抑制するように働くので、結晶粒界は増加し、入射した光は装飾面を形成する結晶による鏡面反射と併せて結晶粒界による拡散反射の影響を強く受ける結果、装飾面における明度指数L*は高くなるとともに、その色調は優れた相乗効果を生むため、光沢のある色調感が増し、さらに高級感,美的満足感を得ることができる。その結果、視覚を通じて精神的安らぎが得られるからである。
【0076】
なお、反射は一般的に鏡面反射と拡散反射とからなり、本実施形態における鏡面反射とは、光が鏡面である装飾面、微視的には装飾面を形成する結晶に入射した後、反射したときにその入射角と反射角が同じになる反射をいい、拡散反射とは光が結晶粒界に入り込み、ランダムな反射を繰り返した後、再び外部に向かう反射をいう。
【0077】
ただし、装飾面を形成する結晶を後述するバレル研磨により表面粗さを調整することができ、原子間力顕微鏡で測定したときの粒界を含まない結晶面の表面粗さを算術平均高さRaで0.001〜0.002μmにすると、結晶面での反射が鏡面反射から拡散反射に一部変化する傾向が見られ、装飾面におけるクロマティクネス指数b*を32以上にすることができて
鮮やかな黄金色となるので好適である。
【0078】
また、ニッケルはニオブと化合してニッケルニオブ、例えばNbNi3として析出していることが好適で、NbNi3の析出により、明度指数L*の値は大きくなって、気品漂う明るさが醸し出される。このNbNi3等のニッケルニオブは、X線回折法で検出することができる。
【0079】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましい。クロムは、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成するので耐食性を向上させることができるとともに、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成すると、ニッケルがクロムと反応してニッケルクロム化合物を生成して、ニッケルがイオン化して流出することを抑制することができる。しかしながら、クロムの含有量は色の鮮やかさに影響を及ぼすため、ニッケルの流出を抑制し、耐食性と鮮やかさとを兼ね備えるためには、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましいのである。
【0080】
なお、ニッケルがクロムを包囲した状態とは、クロムが窒化チタンの結晶と接することなく粒界相に周囲を取り囲まれた状態をいい、この状態については、走査型電子顕微鏡で得られた装飾面の画像と、エネルギー分散型(EDS)X線マイクロアナライザーによって検出されるニッケル,クロムの分布状態を示す装飾面の画像とを照合することで確認することができる。
【0081】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことが好ましい。クロムおよびニッケルが磁性体であるのに対し、この金属間化合物は、非磁性体であることから、この装飾部品用セラミックスが時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなる。このような金属間化合物は、例えば、組成式がCr2Ni3またはCr3Ni2として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
【0082】
チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は、蛍光X線分析(XRF)法を用いて測定することができる。具体的には、予め窒化チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの各元素の濃度の異なる混合粉末を少なくとも2種類以上用意して、それぞれプレス法により成形して標準試料とする。次に、これら各標準試料にX線を照射して、蛍光X線の強度と既知の濃度との関係から最小二乗法を用いて検量線を作成する。そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスを粉砕して粉末とし、プレス法により成形して測定試料とする。この測定試料にX線を照射して、蛍光X線の強度を測定し、検量線より濃度である含有率を求める。また、窒素については酸素・窒素分析装置で測定することができ、炭素は炭素分析装置で測定すればよい。
【0083】
また、窒化チタン質焼結体からなる本実施形態の装飾部品用セラミックスは、熱伝導率が22W/(m・K)以上かつ26W/(m・K)以下であることが好適である。熱伝導率が22W/(m・K)以上であれば、放熱特性に優れたものとなり、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子等の発熱する電子部品から発生した熱を速やかに外部に逃がして誤作動のおそれを少なくすることができるので、電子部品が搭載された携帯端末機の一部に本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いると好適である。
【0084】
また、熱伝導率が26W/(m・K)以下であれば、本実施形態の装飾部品用セラミックスの表面における結露を抑制することができるので、車両に取り付けるエンブレム等に本発明の装飾部品用セラミックスを用いたときには、冬の寒い朝であっても結露を生じにくいため美的満足感が損なわれることがほとんどない。さらに、熱伝導率が22W/(m・K
)以上かつ26W/(m・K)以下の範囲であれば、放熱特性および熱衝撃抵抗性の2つ特性を併せ持つことができるので好適であり、40℃〜800℃における熱膨張係数が8.5×10―6/℃以上9.7×10―6/℃以下であることがより好適である。この熱膨張係数は、JI
S R 1618−2002に準拠して求めることができる。
【0085】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、動的弾性率が300GPa以上であるこ
とが好ましい。動的弾性率が300GPa以上であれば、装飾部品用セラミックスを撓みに
くくすることができるので、腕時計用ケース、バンド駒等を始めとする身につけるものに本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いたときには、接触や落下等で変形することがほとんどない。この動的弾性率は、JIS R 1602−1995で規定される超音波パルス法に準拠して求めることができる。なお、セラミックスの厚みが薄く、セラミックスから切り出した試験片の厚みをJIS R 1602−1995の超音波パルス法で規定される10mmとすることができないときには、セラミックスの厚みをそのまま試験片の厚みとして評価して、その結果が上記数値を満足することが好適である。ただし、そのままの厚みで評価して上記数値を満足することができないほどにセラミックスの厚みが薄いときには、自由共振式固有振動法を用いて測定すればよい。
【0086】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスにおいては、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、装飾面の光沢を維持するという観点から、結晶の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であること好ましい。焼結体の平均結晶粒径が大きくなると粗大な結晶粒が増加することにより強度が低下しやすく、焼結体の平均結晶粒径が小さくなると結晶粒界が増加することにより拡散反射の影響を強く受けやすくなることから、装飾面における明度指数L*が高くなりやすく、装飾部品間における色差を感じやすくなり好ましくない。このような観点から、焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることが好ましく、平均結晶粒径の値がこの範囲であるときには、装飾部品用セラミックスとしての必要な強度が得られるとともに、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。特に、この装飾用部品用セラミックスが腕時計用ケース、バンド駒等を始めとする身につけるものである場合には、接触や落下等でキズが入りにくくするために強度を上げるには、焼結体の平均結晶粒径が2.1μm以上4.3μm以下であることが好ましい。この平均結晶粒径は、破断面を走査型電子顕微鏡によって1000倍〜3000倍に拡大した86〜110μm×65〜92μmの範囲で、同じ長さの直線を8本引き、この8本の直線上に存
在する結晶の個数をこれら直線の合計長さで除すことで求められる。なお、倍率が1000倍のときには、直線1本当たりの長さを80μmとし、倍率が3000倍のときには、直線1本当たりの長さを27μmとすればよい。
【0087】
図1(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の複合装飾部品の一例を示す、装飾面を平面視した模式図である。
【0088】
図1(a)〜(f)に示す複合装飾部品3は、装飾面を平面視して、黄金色を呈する本実施形態の装飾部品用セラミックス1と、装飾部品用セラミックス1と異なる色調の装飾面を有する装飾部品2とが並べて配置されているものの例である。装飾部品用セラミックス1および装飾部品2の形状として、図1(a)はいずれも三角形状であり、(b)はいずれも四角形状であり、(c)はいずれも平行四辺形状であり、(d)は六角形状と三角形状との組み合わせであり、(e)は八角形状と四角形状との組み合わせであり、(f)は四角形状の装飾部品2と装飾部品2の周囲を囲んだ装飾部品用セラミックス1との組み合わせである。
【0089】
そして、装飾部品用セラミックス1と異なる色調として、具体的には、装飾部品2の色調が紫色であれば、装飾が求められる店頭広告やインテリア雑貨に用いたときに、消費者の購買意欲を刺激することができる。
【0090】
また、装飾部品2の色調が黒色であれば、本実施形態の装飾部品用セラミックス1の呈する色調の黄金色との組み合わせによって、視認性が高まり、遠方からの視認が求められる用途、例えば、案内板等の表示部品として好適に用いることができる。さらに、装飾部品2の色調が銀色であれば、より高級感に溢れた装飾性を高めることができる。
【0091】
なお、装飾部品2は、本実施形態の装飾部品用セラミックス1と異なる色調で装飾性を高めるものであればよいため、材質は問わず、また、装飾部品用セラミックス1および装飾部品2の形状や組み合わせについては、これらの図1(a)〜(f)に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0092】
また、本実施形態の時計用装飾部品は、上記構成の本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とし、その例としては、時計用ケースや時計用バンド駒がある。
【0093】
図2は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示しており、(a)は時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側から見た斜視図である。また、図3は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。また、図4は本実施形態の時計用装飾部品である時計用裏蓋の一例を示す底面図である。また、図5は本実施形態の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。なお、これらの図において同じ部位を示す場合は同じ符号を付してある。
【0094】
図2(a)および(b)に示す時計用ケース10Aは、図示しないムーブメント(駆動機構)を収容する凹部11と、腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えており、凹部11は厚みの薄い底部13と厚みの厚い胴部14とからなる。また、図3に示す時計用ケース10Bは、図示しないムーブメント(駆動機構)が入る穴部15と、胴部14に形成された腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えている。
【0095】
図4に示す時計用裏蓋17は、周辺側に設けられた複数の取付け孔18にネジ(図示しない)を介して、例えば図3に示す時計用ケース10Bの裏側から取り付けられる様になっている。
【0096】
図5に示す時計用バンド50を構成するバンド駒は、ピン40が挿入される貫通孔21を有する中駒20と、中駒20を挟むようにして配置され、ピン40の両端が差し込まれるピン穴31を有する外駒30とから構成されており、中駒20の貫通孔21にピン40が挿入され、挿入されたピン40の両端が外駒30のピン穴31に差し込まれることにより、中駒20と外駒30とが順次連結されて時計用バンド50が構成されている。
【0097】
これら、時計用ケース10A,10B,時計用裏蓋17および時計用バンド50を構成するバンド駒として用いられる本実施形態の時計用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなるものであることから、時計としての高級感,美的満足感を十分に得ることができ、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができる。
【0098】
なお、本実施形態の時計用装飾部品は、手首に装着するタイプの心拍計および脈拍計用装飾部品も含むものとする。
【0099】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、装飾面のビッカース硬度(Hv)が長期信頼性に影響を与える要因の一つとなり、ビッカース硬度(Hv)が8GPa以上であることが好ましい。ビッカース硬度(Hv)をこの範囲にすると、装飾面は傷が入りに
くくなるので、ガラスまたは金属からなる塵埃のような硬度の高い物質と接触しても装飾面に容易に傷が生じることがないからである。この装飾面のビッカース硬度(Hv)はJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
【0100】
また、破壊靱性は装飾面の耐磨耗性に影響し、その値は高いほどよく、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは4MPa・m1/2以上であることが好ましい。この破壊靱性はJIS R 1607−1995で規定する圧子圧入法(IF法)に準拠して測定することができる。
【0101】
装飾部品用セラミックスが身に付けて用いられるようなものである場合は、軽い方が好まれるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、その見掛け密度は6g/cm3以下(0g/cm3を除く)であることが好適であり、この見掛け密度はJIS R 1634−1998に準拠して測定される。装飾部品用セラミックスが時計用バンド駒の一部である中駒20の場合であれば、引張荷重が頻繁に中駒20にかかるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、引張強度は196N(ニュートン)以上であることが好適である。この
引張強度を求めるには、貫通孔21の長さより長い、超硬製のピン(図示しない)を中駒20の貫通孔21a,21bに挿入した後、このピンを引き離す方向に引っ張り、中駒20が破壊したときの強度をロードセルで読み取ればよい。また、装飾部品用セラミックスが時計用ケースまたは時計用バンド駒である場合、図示しないムーブメント(駆動機構)への悪影響を考慮すると、質量磁化が162G・cm3/g以上の強磁性金属、例えばコバルト(Co
)の比率は、装飾部品用セラミックス100質量%に対し、合計で0.1質量%以下であることが好適である。このような強磁性金属の比率は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析法で測定することができる。
【0102】
図6は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた携帯電話機の一例を示す斜視図であり、図7は、図6に示す例の携帯電話機の筐体が開いた状態を示す斜視図である。
【0103】
本実施形態の携帯端末機用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることが好適であり、その具体例としては、図6および図7に示す例の携帯電話機の各種操作キー,ケースまたはスイッチ等がある。
【0104】
図6に示す例の携帯電話機60は、携帯電話機60のモードを、ラジオを聴くモードであるラジオモードや音楽を聴くモードである音楽モードなどに変更するモードキー61aと、携帯電話機60をマナーモードにするマナーキー61bとを第1の筐体62に備え、指などの接触を検知してこの接触により入力が行なわれるタッチセンサ63と、被写体を撮像するカメラ64と、ライト65と、タッチセンサ63等の入力の有効または無効を設定するスライドスイッチ66とを第2の筐体67に備えている。
【0105】
そして、図7に示す例の携帯電話機60は、第2の筐体67を開いた状態を示すものであり、第1の筐体62と第2の筐体67とは、ヒンジ68を介して連結されており、これにより第2の筐体67は、自在に開閉することができる。また、第2の筐体67は、フロントケース69aとリアケース69bとを有しており、フロントケース69aには液晶表示ユニット70が設けられている。
【0106】
また、第1の筐体62もフロントケース71aとリアケース71bとを有しており、フロントケース71aには各種操作キーが設けられている。この操作キーには、電話番号等を入力するテンキー72a,各種機能のメニューについてカーソルを移動するカーソル移動キー72b,着信時に押して操作することによって通話を開始する通話キー72c,電源のオンオフおよび通話後に押して操作することによって通話を終了する電源/終話キー72d,カーソル移動キー72bの中心に配置されたセンターキー72fの左右に配置されたファンクションキ
ー73L,73R等がある。
【0107】
上述のケースであるフロントケース69aや71a,リアケース69bや71b,操作キーであるテンキー72a,カーソル移動キー72b,通話キー72c,電源/終話キー72d,センターキー72f,ファンクションキー73Lや73R等の少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間にわたって与え、このような色調を呈する携帯電話機60を所有することによる満足感を感じさせることができる。また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、他の色調との相性がよいことから、様々な色調の部材と組み合わせて用いることもできるので、需要者の嗜好の多様化に応えることができる。
【0108】
次に、図8は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた他の例であるノート型パーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【0109】
図8に示すノート型パーソナルコンピュータ80は、キーボード81,トラックパッド82およびボタンスイッチ83L,83Rを備えた本体側ケーシング84と、この本体側ケーシング84にヒンジ85L,85Rを介して開閉自在に取り付けられたディスプレイ86を備えたディスプレイ側ケーシング87とからなる。
【0110】
キーボード81は、複数のキーからなり、キーを押すことによって文字の入力や機能を呼び出すことができるものである。また、トラックパッド82は感圧式または静電式のポインティングデバイスからなるものであり、ディスプレイ86の画面におけるポインタの移動や命令入力等に利用されるものである。例えば、ディスプレイ86にアイコン表示されたファイルの指定やアプリケーションプログラムの選択等に用いられ、ボタンスイッチ83L,83Rとのコンビネーション操作によって、ディスプレイ86上のアイコンのドラッグやテキストファイル上の文字列の複数選択等にも用いられる。
【0111】
また、ボタンスイッチ83Lは、前述のコンビネーション操作の他、トラックパッド82のポインティング機能で指定または選択されたファイルの開閉もしくは処理の実行等の指令にも用いられるものであり、ボタンスイッチ83Rには、ディスプレイ86の画面上にコンテキストメニューを表示させたり、トラックパッド82のポインティング機能で指定あるいは選択されたファイルの属性情報を表示させたりする機能がある。なお、ここでいうコンテキストメニューとは、選択可能な処理をディスプレイ86の画面にポップアップ表示する機能のことである。
【0112】
そして、上述のキーボード81のキーおよびボタンスイッチ83a,83bの少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間にわたって与え、このような色調を呈するノート型パーソナルコンピュータ80を所有することによる満足感を感じさせることができる。
【0113】
なお、携帯端末機の一例として携帯電話機60およびノート型パーソナルコンピュータ80を用いて説明したが、本実施形態の装飾部品用セラミックスが用いられる携帯端末機は携帯電話機60およびノート型パーソナルコンピュータ80に限定されるものではなく、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant),携帯型のカーナビゲーションやオーディオプレーヤー等の携帯型の端末機であって、部品に装飾性が求められるものであれば、様々な携帯端末機が該当する。
【0114】
次に、図9は、本実施形態の生活用品用装飾部品である石鹸ケースの構成の一例を示す模式図である。
【0115】
この石鹸ケース90は、本体93と蓋92とからなり、石鹸91を載置する本体93の載置面94には、石鹸91の表面に付着している水を切るための排出孔95が形成されている。石鹸91を使用しないときには、本体93の載置面94に石鹸91は載置され、蓋92を本体93に嵌め合わすことにより収納されている。石鹸91を使用するときには、本体93から蓋92を外して石鹸91を取り出して使用する。そして、使用後の石鹸91を本体93の載置面94に載置することにより、排出孔95により石鹸91の表面に付着している水を切ることができ、石鹸91が水に溶けるのを防ぐことができるものである。
【0116】
この石鹸ケース90である蓋92または本体93を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0117】
また、図10は、本実施形態の生活用品用装飾部品の他の例であるコーヒーカップセットの一例を示す斜視図である。
【0118】
図10に示すコーヒーカップセット100は、コーヒーカップ101とソーサー102とスプーン103とからなり、このコーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103を本実施形態の
装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に対し、所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0119】
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは他の色調との相性がよいので、コーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103の少なくとも1つを本実施形態の装飾部品用
セラミックスで形成し、他を異なる色調として組み合わせて用いることもできる。
【0120】
また、本実施形態の生活用品用装飾部品は、石鹸ケース90やコーヒーカップセット100
だけではなく、歯ブラシやカミソリの柄,耳かきおよびハサミ等の生活用品用装飾部品に好適に用いることができる。特に、高級ホテルの浴室や洗面所において、各種ロゴ等のマーキングされたアメニティーグッズに本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いることにより、非日常感が強く演出された高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
【0121】
次に、図11は、本実施形態の車両用品用装飾部品を取り付けた車体の一例を示す斜視図である。
【0122】
図11に示す車体110には、車両用品用装飾部品であるエンブレム111が取り付けられており、このエンブレム111を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、
需要者に対し、視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができるので車体110の装飾的価値を高めることができる。なお、図11では車体110の前方に取り付けたエンブレム111を示したが、車体110の後方に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したメーカー名や車種名等を示すエンブレム111を取り付けることによっても、車
体110の装飾的価値を高めることができる。
【0123】
また、図12は、本実施形態の車両用品用装飾部品を用いたコーナーポールの一例を示す正面図である。
【0124】
図12に示すコーナーポール112は、駐車場における車両の出し入れ時等に運転席から見
えにくい車体の左前方(右ハンドル車の場合)の目印とするために取り付けられるものであり、車体への取り付け部113とポール部114と発光ダイオード(LED)等からなる点灯部115と、を有している。このコーナーポール112のポール部114を本実施形態の装飾部品
用セラミックスで形成したり、点灯部115に替えて本実施形態の装飾部品用セラミックス
で形成したエンブレムを取り付けたりすることにより、コーナーポール112はもとより車
体の装飾的価値が向上するので好適である。
【0125】
また、本実施形態の車両用装飾部品は、エンブレム111やコーナーポール112だけでなく、ホイールキャップの一部や車体のボンネット上に設けられるフードオーナメントの一部、さらに車内に取り付ける小物やアクセサリーまたはこれらの一部として用いても装飾的価値が向上するので好適である。
【0126】
次に、図13は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたゴルフクラブの一例を示す正面図である。
【0127】
図13に示すゴルフクラブ120は、シャフト121と、このシャフト121の一端に取り付けら
れたグリップ122と、シャフト121の他端に取り付けられたヘッド123とを備えている。ヘ
ッド123は、ゴルフボールを捉える部分であるフェース面123Fや地面に接地する部分となるソール面123Sを有しており、図13に示すように、本実施形態の装飾部品用セラミック
スで形成したアクセサリー124がフェース面123Fに埋め込まれていれば装飾的価値が向上するので好適である。
【0128】
また、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品は、フェース面123Fだけではなく、ソー
ル面123Sやグリップ122に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したアクセサリー124が埋め込まれていたり、グリップ122そのものが本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成されていたりしても好適である。
【0129】
また、図14は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたスパイクシューズの一例を示す底面図である。
【0130】
図14に示すスパイクシューズ130は、例えば、サッカーやラグビーに用いられるもので
あり、靴底131にはボールを蹴るときに軸足を固定するための突起状に形成されたスタッ
ド132が複数装着されている。本実施形態の装飾部品用セラミックスがこのスタッド132として用いられると、装飾的価値が向上することに加え、従来から用いられているアルミニウム合金製のスタッドよりも耐磨耗性が優れているので、スタッド132の交換頻度が少な
くなり、交換によるコストを低減することができる。なお、競技中に発生するおそれがあるスタッド132の欠けを防止するために、透明な樹脂でスタッド132の表面を被覆してもよい。
【0131】
次に、図15は、本実施形態の楽器用装飾部品を用いたギターの一例を示す斜視図である。
【0132】
図15に示すギター140の主な構成は、本体141と本体141から前方に延設されたネック142とからなる。ネック142の先端部にはナット143が配設され、ナット143より前方には弦144の張力を調整することができるチューニングベグ145がそれぞれの弦144毎に設けられている。また、弦144を保持してナット143に対して動かないようにするためのクランプ機構146がナット143の近くに配設されている。
【0133】
一方、本体141には、弦144の張力を同時に増大、あるいは減少させて印象的な音効果を与えるためのトレモロ装置147が取り付けられている。トレモロ装置147は、本体141に取
り付けられているベースプレート148と、このベースプレート148に保持されて弦144を調
律可能に保持するブリッジサドル149と、トレモロ装置147を稼動させるトレモロバー150
とにより構成されている。このギター140のベースプレート148,ブリッジサドル149,ト
レモロバー150等を本発実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、ギタ
ー140の装飾的価値が向上するため、このギター140を所有することによる満足感を感じさせることができるとともに多くの観客を魅了することができる。
【0134】
次に、図16は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いた人工歯冠の一例を示す模式図である。
【0135】
図16の模式図は、歯肉155の内部の顎骨152に埋め込まれた人工歯根(インプラント)153に固定された支台(アパットメント)154に装着された人工歯冠151を示すものである。
この人工歯冠151を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、歯が黄
金色の輝きを放つため、歯の装飾を好む需要者に高い陶酔感を与えることができる。
【0136】
また、顎骨152に埋め込まれる人工歯根153がスクリュー状に形成され、このスクリュー状に形成された部分には、新生骨の生成を誘導する能力が高いキチン,コラーゲン,およびこれらの誘導体の少なくともいずれか1種を含む生体分解性基材からなる硬質の接合層が形成されていてもよい。また、支台154の基部には、架橋された上記生体分解性基材よ
りなる軟質の接合層が顎骨152の上側に位置する歯肉155に当接するように形成されていてもよい。
【0137】
そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体からなるので、生体に適合しやすく、この利点を生かして、人工歯冠151だけでなく、人工歯根153や支台154に用いても好適である。
【0138】
また、図17は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いたイヤホンユニットの一例を示す正面図である。
【0139】
図17に示すイヤホンユニット160は、聴取者の耳殻内に挿入されて音波を発するスピー
カ161と、このスピーカ161を収容するケース162と、このケース162に当接するコード導出部163を介してスピーカ161に電気信号を供給するコード164とを備えている。
【0140】
このイヤホンユニット160のケース162を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
【0141】
さらに、図18は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いためがねの一例を示す斜視図である。
【0142】
図18に示すめがね170は、視力を矯正したり、紫外線から目を保護したりするための一
対のレンズ171a,171bと、一対のレンズ171a,171bを連結するブリッジ172と、それ
ぞれのレンズ171a,171bに連結される鎧173a,173bと、ヒンジを介して回動することができるように鎧173a,173bに連結されるテンプル174a,174bと、レンズ171a,171bにそれぞれノーズパッド連結部材を介して取り付けられるノーズパッド175とを備えて
いる。
【0143】
このめがね170のブリッジ172,テンプル174a,174bおよびノーズパッド175の少なく
とも1つを本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
【0144】
図19は、本実施形態の建材用装飾部品を用いたドアハンドル用のグリップの一例を示す
斜視図である。
【0145】
図19に示すドアハンドル180は、L字状に延びる本体181および本体181の端部に嵌合さ
れる筒状のグリップ182を備えており、グリップ182はその先端側からフランジ183aが形
成されたナット183と、後端側からフランジ184とで挟まれることによって本体181に固定
されている。
【0146】
このようなドアハンドル180のグリップ182を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる建材用装飾部品とすることができる。
【0147】
次に、本実施形態の装飾部品用セラミックスの製造方法について説明する。
【0148】
本実施形態の装飾部品用セラミックスを得るには、まず、焼結体中で主成分となる窒化チタンと、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の各粉末とを所定量秤量し、粉砕・混合して調合原料とする。より具体的には、平均粒径が10〜30μmの窒化チタンの粉末と、平均粒径が10〜20μmのニッケルの粉末と、平均粒径が20〜50μmのニオブの粉末、平均粒径が30〜60μmのクロムの粉末および平均粒径が0.1〜10μmの炭素の粉末とを準備し、
ニッケルの粉末が7〜14.5質量%、ニオブの粉末が2.5〜10質量%、クロムの粉末が1.5〜6.5質量%および炭素の粉末が0.4〜0.9質量%であって、残部が窒化チタンの粉末となるように秤量して粉砕・混合すればよい。
【0149】
なお、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成するには、ニッケルの粉末とクロムの粉末とが接触する頻度を高くすることが必要である。この頻度を高くするためには、粉砕・混合時間を長くすればよく、例えば、粉砕・混合時間を150時間以上にすればよい。このとき、この調合原料における不可避不純物としては珪素,
リン,イオウ,マンガン,鉄等が挙げられるが、これらは装飾面の色調に悪影響を及ぼすおそれがあるので、各々0.5質量%未満であることが好適である。
【0150】
また、窒化チタンの粉末は化学量論的組成のTiNであっても、あるいは非化学量論的組成のTiN1−x(0<x<1)であってもよいが、耐磨耗性および装飾的価値が高い色調という観点からは、各粉末の純度は99%以上であることが好ましく、窒化チタンの粉末が一部ニッケルの粉末と反応してTiNiを微量生成しても何等差し支えない。特に、装飾部品用セラミックスを成す窒化チタン質焼結体について組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96とするには、窒化チタンの粉末は組成式をTiNxとしたときに0.7≦x≦0.9のものを用いればよい。
【0151】
次いで、調合原料に例えば水を加え、ミルを用いて混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法等により円板,平板,円環体等の所望形状に成形する。
【0152】
また、成形法として乾式加圧を選択した場合は、成形圧力は装飾面における開気孔率およびビッカース硬度(Hv)に影響を与えることから、成形圧力を49〜196MPaとする
ことが好適である。成形圧力を49〜196MPaとするのは、相対密度が95%以上で開気孔
率が2.5%以下の焼結体を得ることができるとともに、ビッカース硬度(Hv)を8GP
a以上にすることができるからである。また、金型の寿命を長くすることもできる。
【0153】
そして、得られた成形体を不活性ガス雰囲気中で、この不活性ガスの温度および圧力をそれぞれ310〜390℃,30〜60kPaに維持しながら脱脂して脱脂体とした後、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で脱脂体をセラ
ミックス製の容器内に収納して焼成することで、理論密度に対する相対密度が95%以上の焼結体を得る。なお、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で焼成するのは、酸化性雰囲気中で焼成すると、チタンが酸化してそのほとんどが組成式TiO2で表される酸化チタンとなり、この酸化チタンが本質的に備えている白色の色調の影響を受けてしまい、装飾部品用セラミックスの全体の色調が白っぽくかすむからである。
【0154】
また、真空中で焼成して装飾部品用セラミックスを得る場合は、その真空度が1.33Pa以下であることが好適である。真空度を1.33Pa以下とするのは、チタンが焼成中に酸化して装飾部品用セラミックスの色調が白っぽくかすむようなことなく、黄金色の装飾部品用セラミックスを得るためである。さらに、焼成温度を1200〜1800℃とすることが好適である。これにより、相対密度が95%以上で開気孔率が2.5%以下の焼結体を得ることがで
きるとともに、焼成コストも下げられるからである。
【0155】
また、窒化チタン質焼結体の熱伝導率を22W/(m・K)以上とするには、熱伝導率を低下させる要因となるリチウム,ナトリウム,カリウム,鉄,カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム,バリウム,マンガンおよび硼素の含有量は、装飾部品用セラミックス100質量%に対し、合計で0.3質量%以下にすればよい。一方、窒化チタン質焼結体の熱伝導率を26W/(m・K)以下とするには、粒成長を抑制することが求められるため、1200℃以上1550℃以下とすればよい。
【0156】
そして得られた焼結体の装飾的価値が求められる面に、ラップ盤を用いてラップ加工を行なった後、バレル研磨を行なうことにより、焼結体のその表面は黄金色の色調を有する装飾面となって、本実施形態の装飾部品用セラミックスを得ることができる。なお、このような装飾面に現れる気孔は、その開口部の最大径を30μm以下にすることが好適で、この範囲にすることで、気孔内への雑菌,異物や汚染物等の凝着を低減することができる。
【0157】
装飾部品用セラミックスからなる製品の形状が複雑な形状の場合には、予め乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法および射出成形法等によってブロック形状または製品形状に近い形状に成形した後に切削加工を施したり、成形体を焼結した後に製品形状になるように研削加工を施したりして製品形状とし、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよく、あるいは最初から射出成形法によって製品形状とし、焼成後に、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよい。
【0158】
ここで、装飾面となる表面の算術平均高さRaを0.03μm以下とするには、錫製のラップ盤に平均粒径の小さいダイヤモンド砥粒を供給してラップ加工すればよく、例えば平均粒径が1μm以下のダイヤモンド砥粒を用いればよい。また、バレル研磨では、回転バレル研磨機を用い、メディアとしてグリーンカーボランダム(GC)を回転バレル研磨機に投入し、湿式で24時間行なえばよい。
【0159】
以上のようにして得られる本実施形態の装飾部品用セラミックスは、特に美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができるので、上述のように、時計用ケース,時計用バンド駒等の時計用装飾部品や携帯電話機,ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末機用装飾部品を始め、石鹸ケース,コーヒーカップセット,ナイフ,フォーク,ハブラシやカミソリの柄,耳かき,ハサミ,印材や名刺等の生活部品用装飾部品や、メーカー名や車種名等のエンブレムやコーナーポール等の車両用装飾部品や、ゴルフクラブやスパイクシューズを装飾するスポーツ用品用装飾部品や、ギター等を装飾する楽器用装飾部品や、イヤホンユニットの装飾や人工歯冠,めがね,ブローチ,ネックレス,イヤリング,リング,ブレスレット,アンクレット,ネクタイピン,タイタック,メダル,ボタン等
の装身具用装飾部品や、床,壁,天井を飾るタイルあるいはドアハンドル用のグリップ等の建材用装飾部品として好適に用いることができる。また、時計と携帯電話とが複合化され、両者の機能を兼ね備えた腕時計型携帯電話機用装飾部品としても好適に用いることができる。
【0160】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0161】
まず、窒化チタン粉末(純度が99%,平均粒径が22.3μm),ニッケル粉末(純度が99.5%,平均粒径が12.8μm),ニオブ粉末(純度が99.5%,平均粒径が33μm),クロム粉末(純度が99%,平均粒径が55μm)および炭素粉末(純度が99%以上,平均粒径が0.5μm)を焼結体での比率(含有量)が表1に示す比率になるように秤量し、粉砕・混合
して調合原料とした。
【0162】
次に、得られた各調合原料に水を加えて、振動ミルを用いて72時間粉砕・混合した後、バインダとしてパラフィンワックスを調合原料に対し3質量部添加して、噴霧乾燥法により乾燥させて顆粒とした。そして、得られた顆粒を98MPaの圧力で加圧成形して、成形体を作製した。次に、この成形体を不活性ガス雰囲気中にて、表1に示すガスの温度および圧力に維持しながら脱脂して脱脂体とした後、窒化アルミニウムを主成分とする焼成用敷粉が散布されたセラミックス製の容器内に脱脂体を載置し、窒素雰囲気中にて1530℃で2時間保持して焼成して、図4に示す時計用裏蓋4の形状となる焼結体を得た。
【0163】
そして、回転バレル研磨機を用いて、水とメディアとしてグリーンカーボランダム(GC)とを入れて、24時間バレル研磨を行ない、試料No.1〜29の窒化チタン質焼結体からなる時計用裏蓋4である装飾部品用セラミックスを得た。
【0164】
そして、各試料の取付け孔18a,18cの各中心間の距離pを測定顕微鏡を用いて倍率を100倍で測定した後、試料No.10の距離pを基準値1として、各試料の距離pの測定値
を相対値で算出し、距離pの相対値が0.998以上1.002以下にあるものを規格範囲内として合格、この範囲から外れるものを規格範囲外として不合格と判断した。
【0165】
また、各試料の表面から0.1mm以内の領域を除いた部分を対象にしてX線回折法によ
りニオブの酸化物の有無を調べ、ニオブの酸化物が検出された試料には×を、検出されなかった試料には○を表1で示した。
【0166】
そして、各試料を構成するチタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は蛍光X線分析(XRF)装置を用いて測定し、炭素については、炭素分析装置を用いて測定した。また、装飾面の算術平均高さRaについては、JIS B 0601−2001に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、測定長さを5mm,カットオフ値を0.8mm,触針先端半径を2μ
m,触針の走査速度を0.5mm/秒として5箇所を測定し、その平均値を算出した。さら
に、破壊靭性K1cについては、JIS R 1607−1995で規定された圧子圧入法(IF法:indentation−Fracture法)に準拠して破壊靱性K1cを測定し、硬度については、
JIS R 1610−2003に準拠して、装飾面のビッカース硬度Hv(以下、硬度という。)を5箇所測定し、その平均値を算出した。
【0167】
また、各試料の明度指数とクロマティクネス指数について、JIS Z 8722−2009に準拠して、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d)の光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を3×5mmに設定して装飾面の色調を測定した。
【0168】
また、光沢および色調については、20歳代〜50歳代の各年代について男女5名ずつ計40名のモニターに、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を実施した。高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目の調査結果に対して、ランク付けを実施し、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも90%以上のものは「優」と、上記3項目のうち少なくとも1項目が80%で、残りの項目が90%であるものは「良」と、
3項目のうち少なくとも1項目が70%で、残りの項目が80%であるものは「可」と、1項
目でも70%未満となっているものは「不可」と評価した。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった試料No.10を標準試料として、試料No.10に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0169】
それぞれの結果について、表1,表2に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
表1に示す通り、ニオブの酸化物が検出された試料No.8は、距離pの相対値が規格寸法の範囲から外れているのに対し、本実施形態の試料No.1〜7,9〜16,18〜22,24〜29は、ニオブの酸化物が検出されず、内部に実質的にニオブの酸化物を含んでいないことから、距離pの相対値が規格寸法の範囲内にあることが分かる。
【0172】
また、試料No.17は、窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用するニッケルが0質量%であることから、未焼結部分が確認され、装飾部品に用いることはできなかったことが、試料No.23は、ニオブが0質量%であることから、モニターが求める装飾的価値が得られず、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
【0173】
また、表2に示す通り、ニオブの酸化物が検出された試料No.8は、光沢を得ることができなかったことから、モニターが求める装飾的価値が得られず、高級感,美的満足感,精神的安らぎの各項目において「得られる」と言う回答は無く、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
【0174】
さらに、表2に示す通り、特に、試料No.3〜7,9〜11,13〜22,24〜29は、装飾面における炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることから、破壊靱性および
硬度が高い上、標準試料である試料No.10に対する色差(△E*ab)が小さく、モニターが求める装飾的価値が得られていることが分かる。また、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されて、試料No.10に対する色差(△E*ab)を小さくすることができているので、装飾部品間で発生する色調感の差をほとんど感じることがなかった。
【0175】
特に、本実施形態の試料No.3〜7,9〜11,15,16,19〜21,25〜27は、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることから、装飾面における光の反射率が高いため、光沢が増し、高級感,美的満足感および精神的安らぎともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
【実施例2】
【0176】
ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物による特性の変化を確認した。
【0177】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表3に示す比率となるように秤量した後、表3に示す時間で、水とともに粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.30〜34の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成用敷粉については、いずれの試料も、窒化アルミニウムの含有量が95質量%である焼成用敷粉を用いた。
【0178】
そして、装飾部品用セラミックスの装飾面において、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表3に示した。
【0179】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、試料No.34を標準試料として、試料No.34に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0180】
得られた結果を表3に示す。
【0181】
【表3】
表3に示す通り、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれている試料No.31〜33は、上記金属間化合物が装飾面に含まれていない試料No.30,34よりも装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出されるので、より高い高級感および美的満足感をモニターに与えていることが分かる。
【実施例3】
【0182】
窒化チタン粉末の組成式の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0183】
まず、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときの原子数xが表4に示す数値となる窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表3に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.35〜39の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0184】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった試料No.38を標準試料として、試料No.38に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
【0185】
さらに、組成式をTiNxとしたときの原子数xの値を求めた。具体的には、酸素・窒素分析装置を用いて酸素,窒素の含有量を測定し、炭素の含有量と合わせて100質量%か
ら引いた値をチタンの含有量として、チタンと窒素の含有量とをそれぞれの原子量で除すことによりモル数を求めて、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとした。
【0186】
得られた結果を表4に示す。
【0187】
【表4】
表4に示す通り、原子数xの値が0.8未満の試料No.35および原子数xの値が0.96を
超える試料No.39と比較して、原子数xが0.8以上0.96以下である試料No.36〜38は
、光沢のある色調感が増すために、より高い高級感,美的満足感および精神的安らぎをモニターに与えていることが分かる。
【実施例4】
【0188】
NiおよびNbの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0189】
まず、試料No.38に用いた窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表5に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例3と同様の製造方法にて試料No.40〜51の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0190】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」との回答であった実施例3の試料No.38を標準試料として、試料No.38に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。さらに、実施例3と同様の算出方法で原子数xを求めた。
【0191】
得られた結果を表5に示す。
【0192】
【表5】
表5に示す通り、試料No.41〜43,46〜50は、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことから、明度指数L*が72以
上84以下,クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
【実施例5】
【0193】
Crの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0194】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表6に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.52〜57の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0195】
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定した。次に、JIS B 7001−1995で規定する耐食試験のうち、人工汗半浸せき試験(40±2℃、24時間放置)を行ない、試験後の各試料の色調を測定し、試験前後の明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*の差を算出した。
【0196】
得られた結果を表6に示す。
【0197】
【表6】
表6に示す通り、クロムを1.5質量%未満の含有量で含む試料No.52に比べて、試料
No.53〜56は、クロムを1.5質量%以上の含有量で含むことから、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させ、明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*とも試験前後の変化が少なく、耐食性が良好であることが分かる。
【0198】
但し、クロムの含有量が6.5質量%を超えると、試料No.57から分かるように耐食性
は良好であるものの、鮮やかさを示すクロマティクネス指数a*、b*がともに低下するため、耐食性と鮮やかさを兼ね備えたものにするには、試料No.53〜56に示すように、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことがより好適である。
【実施例6】
【0199】
開気孔率の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
【0200】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表7に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、バレル研磨前まで実施例1と同様の製造方法を行ない、開気孔率による明度指数L*への影響を確認するため、バレル研磨に使用するグリーンカーボランダム(GC)の直径を異ならせることにより開気孔率を調整した試料No.58〜61の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0201】
その後、装飾面の開気孔率は金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで
装飾面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2とし、測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔率を求めて装飾面の開気孔率とした。また、実施例1
と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。
【0202】
得られた結果を表7に示す。
【0203】
【表7】
表7に示す通り、開気孔率が2.5%を超える試料No.61に比べて、開気孔率が2.5%以下の試料No.58〜60は、明度指数L*の値を76以上にすることができ、より好まれる色調となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分に満足させられていることが分かる。
【実施例7】
【0204】
クロムおよびニッケルからなる化合物による特性の変化を確認した。
【0205】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表8に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.62〜64の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成における雰囲気はいずれも真空とし、表8に示す真空度で焼成した。
【0206】
そして、装飾部品用セラミックスの未研磨面において、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表8に示した。
【0207】
【表8】
表8に示す通り、試料No.63,64は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことから、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含まない試料No.62に比べ、時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなるといえる。
【実施例8】
【0208】
平均結晶粒径の違いによる特性の変化を確認した。
【0209】
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表9に示す比率となるように秤量した後、粉砕時間を異ならせることにより原料粒径を調整して調合原料とした。次に、バレル研磨前まで実施例1と同様の製造方法を行ない、平均結晶粒径の違いによる3点曲げ強度および明度指数L*への影響を確認するため、平均結晶粒径を調整した試料No.65〜75の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
【0210】
その後、破断面を走査型電子顕微鏡によって3000倍に拡大した86〜110μm×65〜92μ
mの範囲で、同じ長さの直線を8本引き、この8本の直線上に存在する結晶の個数をこれら直線の合計長さで除すことで求めて窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径とした。
また、3点曲げ強度については、JIS R 1601−2008に準拠して測定した。さらに、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。
【0211】
得られた結果を表9に示す。
【0212】
【表9】
表9に示す通り、窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μmに満たない試料No.65
および10μmを超える試料No.75に比べて、窒化チタン質焼結体の平均結晶粒径が1μm以上10μm以下の試料No.66〜74は、3点曲げ強度が640MPa以上となると共に高
級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分に満足させられていることが分かる。
【0213】
以上説明したような本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いて、時計用装飾部品や携帯端末機用装飾部品および腕時計型携帯電話機用装飾部品を始め、生活用品用装飾部品,車両用品用装飾部品,スポーツ用品用装飾部品,楽器用装飾部品,装身具用装飾部品や建材用装飾部品として用いれば、美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができて好適である。
【符号の説明】
【0214】
1:装飾部品用セラミックス
2:装飾部品
3:複合装飾部品
10A,10B:時計用ケース
11:凹部
12:足部
13:底部
14:胴部
15:穴部
17:時計用裏蓋
20:中駒
21:貫通孔
30:外駒
31:ピン穴
40:ピン
50:時計用バンド
60:携帯電話機
80:ノート型パーソナルコンピュータ
90:石鹸ケース
100:コーヒーカップセット
110:車体
112:コーナーポール
120:ゴルフクラブ
130:スパイクシューズ
140:ギター
151:人工歯冠
160:イヤホンユニット
170:めがね
180:ドアハンドル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的に前記ニオブの酸化物を含んでいないことを特徴とする装飾部品用セラミックス。
【請求項2】
装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項3】
装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項4】
前記窒化チタン質焼結体は、前記ニッケルと、前記ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物を装飾面に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項5】
前記窒化チタン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項6】
前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項7】
前記クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項8】
前記窒化チタン質焼結体は、前記クロムおよび前記ニッケルからなる
金属間化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項9】
前記窒化チタン質焼結体は、平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスと、該装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることを特徴とする複合装飾部品。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする時計用装飾部品。
【請求項12】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする携帯端末機用装飾部品。
【請求項13】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする生活用品用装飾部品。
【請求項14】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする車両用品用装飾部品。
【請求項15】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするスポーツ用品用装飾部品。
【請求項16】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする楽器用装飾部品。
【請求項17】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする装身具用装飾部品。
【請求項18】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする建材用装飾部品。
【請求項1】
ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、内部に実質的に前記ニオブの酸化物を含んでいないことを特徴とする装飾部品用セラミックス。
【請求項2】
装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項3】
装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項4】
前記窒化チタン質焼結体は、前記ニッケルと、前記ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物を装飾面に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項5】
前記窒化チタン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項6】
前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項7】
前記クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項8】
前記窒化チタン質焼結体は、前記クロムおよび前記ニッケルからなる
金属間化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項9】
前記窒化チタン質焼結体は、平均結晶粒径が1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスと、該装飾部品用セラミックスと異なる色調の装飾面を有する装飾部品とが並べて配置されていることを特徴とする複合装飾部品。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする時計用装飾部品。
【請求項12】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする携帯端末機用装飾部品。
【請求項13】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする生活用品用装飾部品。
【請求項14】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする車両用品用装飾部品。
【請求項15】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするスポーツ用品用装飾部品。
【請求項16】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする楽器用装飾部品。
【請求項17】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする装身具用装飾部品。
【請求項18】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする建材用装飾部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−47033(P2011−47033A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143909(P2010−143909)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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