説明

装飾部材

【目的】 本発明は、一部のNiアレルギー体質の人が携帯した際に、Niアレルギーによる かぶれ現象を防止する装飾部材を提供する。
【構成】 本発明は 合金素材の表面上に Cu、Co、Pd、Pd−Co、Sn−Zn等の下地メッキ層を被覆構成し、該表面上に AuーCo、AuーPd−Cu、Au−Cu等の金色仕上げメッキ層を 被覆積層したことを特徴とし、更に該金色の装飾部材表面に Pd−Co、Pd、Ptメッキ等の内の一種の白色メッキを部分選択的に 被覆積層し、金色と白色で二色に構成したことを特徴とする。
【効果】 Niを含有しない新規なメッキの構成により Niアレルギーを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、装飾部材のメッキ構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の携帯時計、メガネフレームなどの 装飾部材の表面処理による金色または 金色と白色の二色メッキ構成は、該部材表面に■ 下地メッキとして 耐食性等の基本品質を有する Ni、NiーP等のメッキ層を被覆した後、該表面に 仕上げメッキとして 所望の色調を有するAuーNi、Au−Ni−In等のメッキ層を被覆積層した金色の装飾部材。
【0003】■ 前記 ■の金色の装飾部材の表面に PdーNi等の白色仕上げメッキ層を 部分選択的に被覆積層して 金色と白色の二色に構成をした装飾部材が主流であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の金色 または 金色と白色の二色の構成を有する装飾部材では、Ni含有メッキを使用しているため、一部のNiアレルギー体質の人が携帯した際に、かぶれ、肌荒れなどの炎症を起こしてしまうという欠点を有していた。
【0005】本発明は、これらの課題を解決するもので、その目的とするところは、装飾部材としての耐食性等の基本品質を有し、かつ 所望の金色 または 金色と白色の二色を有するNiを含有しないメッキ層で構成し、Niによる肌荒れ等の炎症を起こさない装飾部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の装飾部材は、■ 合金素材の表面上に Cu、Co、Pd,Ag、In、Pd−Co、PdーAg、Sn−Cu、SnーZn、AgーSn、Pb−Sn、Cu−Sn−Znメッキの内の一種または二種以上の下地メッキ層を被覆構成し、該表面上に AuーCo、AuーPd、AuーSn、AuーPdーCu、AuーPd−In、AuーCo−In、Au−Ag−Cu,Au−Ag、AuーCu、Auメッキの内の一種または二種以上の仕上げメッキ層を被覆積層したことを特徴とする。
【0007】■の金色の装飾部材表面上に、Pd−Co、Pd、Pt、Rh、Ru、Crメッキの内の一種の白色メッキ層を部分選択的に被覆積層し、金色と白色の 二色に構成したことを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明の上記構成によれば、Niを使用しないメッキ構成であるから、一部のNiアレルギー体質の人が携帯した際に、汗に含まれる塩化ナトリウム等の電解質が、Niの溶出を助長せしめ、イオン化して、皮膚が それを吸収し Niアレルギーを起こし、かぶれてくる現象を防止し、しかも 耐食性等の基本品質および 装飾性を満足させる。
【0009】
【実施例】以下本発明について、[実施例群A]および[実施例群B]に基づいて 説明する。
【0010】[実施例群A]図1から図6は 本発明請求項1の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図である。黄銅あるいは亜鉛合金により形成された時計用外装部品を素材とし、該素材表面上に 一種または二種以上の下地メッキ層を 表1〜表2に示したメッキ条件にて被覆形成した。さらに、該下地メッキ層上に 一種または二種以上の仕上げメッキ層を 表3〜表4に示したメッキ条件にて被覆積層した。図1〜図6に示した各々のメッキ構成毎に 本発明実施例No.1〜No.120、比較例No.1〜No.15との合計135例を サンプルとし時計用外装部品に用い、携帯時計を完成させた後、Ni非溶出性、密着性、耐摩耗性 および 耐食性について評価した結果と メッキ構成等をまとめて表5〜 表12に整理した。
【0011】
【表1】


【0012】
【表2】


【0013】
【表3】


【0014】
【表4】


【0015】
【表5】


【0016】
【表6】


【0017】
【表7】


【0018】
【表8】


【0019】
【表9】


【0020】
【表10】


【0021】
【表11】


【0022】
【表12】


【0023】前述の 表5〜表12に示す 評価特性に対する 評価基準を表13に示す。
【0024】
【表13】


【0025】次に、各評価特性の 評価方法について以下述べる。
【0026】評価に当たっては、基本的には JIS Hー8622の装飾用金および金合金メッキに準じて行った。
【0027】被膜厚は、JIS Hー8521の 顕微鏡断面試験方法により 層の厚さを求めた。
【0028】耐摩耗性は、牛皮上に携帯時計の側面を密着させ 500g荷重を携帯時計に加えながら、5cmストロークにて3万回擦って摩耗させた携帯時計側面の 被膜の摩耗程度を確認した。
【0029】密着性は、携帯時計をバイスにて両端より圧縮荷重を加え、折曲部が90゜以上になるようにして 折曲部の被膜の剥離程度を調べた。
【0030】耐食性については、人工汗、人工海水(3%NaCl)中に携帯時計完成品を40℃×90%の温湿雰囲気中で20時間 携帯時計の半分を浸漬し、腐食および変色の発生を調べた。
【0031】Ni検出方法については、デンマークの「ニッケル含有製品販売禁止行政命令」472条(1989年6月27日付け)に定められた許容基準「遊離のニッケルが0.5μg/cm2/週以下」を 満足しているかどうか、該法令に定められた検出方法(1%ジメチルグリオキシムエチルアルコール溶液と 10%アンモニア水を用い 綿布上に それぞれの溶液を2滴ずつ滴下し、その布で30秒間一定の動作で試料の表面を擦りつけ、薄い赤から明るい赤の範囲での 赤色変化の程度を見る。そして、赤い色を検出しない場合は、0.5μg/cm2/週以下とみなす。)で評価した。(薄い赤から明るい赤の範囲での赤色変化は、Ni最少溶出検出量が 0.5μg/cm2/週を 越えていることを示す)。
【0032】本発明における前記本発明[実施例群A]の実施例No.1〜No.120のサンプルにおいて、黄銅あるいは亜鉛合金を素材とした 新規のメッキ構成による携帯時計完成品は、装飾的価値の高い金色色調を呈し、Ni検出試験においては、すべて 全く検出されず Niによるアレルギーに対し 高い防止効果が確認できた。さらに人工汗および人工海水の耐食試験にて腐食の発生が見られず、また 折り曲げによる密着性試験 および 牛皮による耐摩耗性試験においては、本発明実施例No.1〜No.120のいずれにおいても、密着性品質、耐摩耗性品質は、時計用外装部品として十分であった。次に 比較例No.1〜No.15のうち No.2、No.4、No.5、No.7、No.10、No.11、No.12、No.13、No.15に示すように 仕上げメッキ層にNiを含有したメッキを被覆した従来構成は、Ni検出試験において 強いNiの溶出が見られた。また比較例No.1、No.3、No.6、No.8、No.9、No.14に示すように、仕上げメッキ層にNi含有メッキを使わなくても、下地メッキ層にNi含有メッキを被覆した構成では、Ni検出試験において下地メッキ層のNi成分より 若干のNi溶出が確認された。つまり、下地メッキ層および仕上げメッキ層の少なくとも一層に Ni含有メッキを被覆した比較例No.1〜No.15においては、Ni検出試験において Niの溶出がありNiアレルギーに対する防止効果は無いといえる。また、比較例において 密着性、耐摩耗性および耐食性については、携帯時計として十分であった。
【0033】以上金色仕上げを行う場合の 図1〜図6に示した被覆構成を応用した本発明の[実施例群A]について述べた。
【0034】[実施例群B]図7〜図12は、本発明請求項2の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図である。黄銅あるいは亜鉛合金により形成された時計用外装部品を素材とし、該素材上に 一種または二種以上の下地メッキ層を被覆し、次に該下地メッキ層上に 一種または二種以上の金色仕上げメッキ層を被覆し、さらに金色の仕上げメッキ層を残す部分の表面上に有機レジストを塗り、次にPdーCo、Pd、Pt、Rh,Ru、Crメッキの内の一種の白色部分メッキを行ったのち、有機レジストを有機溶剤により除去し、最終的に金色と白色の二色に構成した。
【0035】下地メッキ層および金色の仕上げメッキ層は 請求項1の[実施例群A]と同様の それぞれ表1〜表2、表3〜表4に示したメッキ条件にて被覆形成し、また白色の部分メッキ層は 表14に示したメッキ条件にて被覆した。図7〜図12に示した各々のメッキ構成毎に本発明[実施例群B]の実施例No.1〜No.6、比較例No.1〜No.6の合計12例をサンプルとし 時計用外装部品を用い携帯時計を完成させた後、Ni非溶出性・耐摩耗性・密着性および耐食性について評価した結果と メッキ構成等をまとめて 表15に整理した。なお表15に示す評価特性に対する評価基準については、[実施例群A]に示した表13と全く同様に行った。
【0036】
【表14】


【0037】
【表15】


【0038】さて、前記本発明[実施例群B]の実施例No.1〜No.6のサンプルにおいては、[実施例群A]と同様に、Ni検出試験においては Niの溶出が全く見られず Niアレルギーに対し高い防止効果が確認できた。また、密着性・耐摩耗性・耐食性についても 携帯時計として十分であった。次に比較例No.1〜No.6については、下地メッキ層、仕上げメッキ層の少なくとも一層以上にNi含有メッキを使用しているため Ni検出試験にてNiの溶出が見られ、いずれもNiアレルギーに対する防止効果が見られなかった。しかし 耐摩耗性・密着性・耐食性については 携帯時計として十分であった。
【0039】
【発明の効果】以上述べたように 本発明によれば、合金素材の表面上に Cu、Co,Pd、Ag、In、Pd−Co、Pd−Ag、Sn−Cu、Sn−Zn、Ag−Sn、Pb−Sn、Cu−Sn−Znメッキの内の一種または二種以上の下地メッキ層を構成し、該表面上に AuーCo、AuーPd、AuーSn、AuーPdーCu、AuーPdーIn、AuーCo−In、Au−AgーCu、Au−Ag、AuーCu、Auメッキの一種または二種以上の金色仕上げメッキ層を被覆積層することを特徴とし、さらに該金色装飾部材表面に Pd−Co、Pd、Pt、Rh、Ru、Crメッキの内の一種の白色メッキを部分選択的に被覆し、金色と白色の二色構成したことを特徴とすることから、次のような効果を有する。
【0040】Niを使用しないメッキ構成であるから、一部のNiアレルギー体質の人が携帯した際に、汗に含まれる塩化ナトリウム等の電解質が Niの溶出を助長せしめ、イオン化して、皮膚がそれを吸収しニッケルアレルギーを起こし、かぶれてくるような現象を防止し、しかも 密着性・耐食性・耐摩耗性およびデザインバラェティーに富んだ時計用外装・メガネフレーム、指輪、ネックレス、イヤリング等の装飾部材を提供できる。このように 本発明の効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図2】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図3】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図4】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図5】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図6】 本発明の[実施例群A]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図7】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図8】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図9】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図10】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図11】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【図12】 本発明の[実施例群B]の装飾部材のメッキ構成を示す断面図。
【符号の説明】
1・・・・・・素材
2・・・・・・下地メッキ層1
3・・・・・・仕上げメッキ層1
4・・・・・・仕上げメッキ層2
5・・・・・・下地メッキ層2
6・・・・・・下地メッキ層3
7・・・・・・部分メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】合金素材の表面上に Cu、Co、Pd,Ag、In、Pd−Co、PdーAg、Sn−Cu、SnーZn、AgーSn、Pb−Sn、Cu−Sn−Znメッキの内の一種または二種以上の下地メッキ層を被覆構成し、該表面上に AuーCo、AuーPd、AuーSn、AuーPdーCu、AuーPd−In、AuーCo−In、Au−Ag−Cu,Au−Ag、AuーCu、Auメッキの内の一種または二種以上の仕上げメッキ層を被覆積層したことを特徴とする装飾部材。
【請求項2】請求項1記載の金色の装飾部材表面上に、Pd−Co、Pd、Pt、Rh、Ru、Crメッキの内の一種の白色メッキ層を部分選択的に被覆積層し、金色と白色の 二色に構成したことを特徴とする装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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