説明

裏地付白衣

【課題】本発明が解決しようとする課題は、内部に着用する下着の色が透けて見えない裏地付白衣を提供することである。
【解決手段】実施形態の裏地付白衣は、白色または有彩色の表地と、前記表地の少なくとも一部に付された、マンセル表色系(JIS Z8721)による明度が3.5以下の有彩色または無彩色の裏地とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、裏地付白衣に関する。
【背景技術】
【0002】
医療に従事する医師および看護師は白衣を着用する。このとき、特に女性の医師および看護師において、内部に着用した下着の色や形状が白衣を通して透けて見えることを防止したいという要求が存在する。
【0003】
表地に対して裏地を付した衣類が存在するものの、裏地は一般的に肌触りの向上または防寒を目的として設けられている。そのような衣類では、下着の透過を防止する効果は十分に得られない。
【0004】
したがって、多くの場合、白衣の下にTシャツといったインナーを着用することで下着の透過が防止されている。しかしながら、この場合、動き易さの低下や体温の過度な上昇をもたらし、円滑な医療行為の妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3808342号公報
【特許文献2】特許第4296485号公報
【特許文献3】特許第4478860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、内部に着用する下着の色が透けて見えない裏地付白衣を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の裏地付白衣は、白色または有彩色の表地と、前記表地の少なくとも一部に付された、マンセル表色系(JIS Z8721)による明度が3.5以下の有彩色または無彩色の裏地とを含む。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の裏地付白衣は、内部に着用した下着の色が表地を介して透けて見えることを防ぐ効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る裏地付白衣を示す図。
【図2】第2の実施形態に係る裏地付白衣を示す図。
【図3】赤色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図4】オレンジ色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図5】黄色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図6】緑色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図7】青色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図8】紫色色相におけるトーンごとの評価を示す図。
【図9】無彩色色相における評価を示す図。
【図10】測定結果を色相(Hue)−明度(Value)平面にプロットした図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(裏地付白衣)
本発明の実施形態は、裏地付白衣に関する。実施形態に係る裏地付白衣は、表地と裏地とを含む。
【0011】
表地とは、裏地付白衣を着用した際に外側に位置する布地を意味する。白衣の色は、一般的に白に限定されず、用途に応じて有彩色とされている。したがって、実施形態における表地の色も白色または有彩色であってよい。有彩色とは、例えば、薄い青色、薄い緑色、薄いピンク色等であってよい。
【0012】
表地の形状は、コートの形状、ワンピースの形状、または上衣と下衣から成るツーピースの形状であってよい。特に、実施形態に係る裏地付白衣は、下着の上に直接着る白衣であることが好ましい。すなわち、表地の形状はワンピースまたはツーピースであることが好ましい。ツーピースの場合、特に上衣であることが好ましい。上衣とは、上半身に着用する衣類を意味し、例えばジャケット、シャツまたはカットソーであってよい。下衣とは、下半身に着用する衣類を意味し、例えばズボンまたはスカートであってよい。表地の素材に特別限定は無く、一般的な白衣の表地として使用される素材であってよい。例えば、表面加工が施されたもの、特殊な編み方により形成されたもの等であってもよい。
【0013】
裏地とは、裏地付白衣を着用した際に内側に位置する布地を意味する。裏地の色は、有彩色であっても、無彩色であってもよい。
【0014】
裏地は、好ましくは、マンセル表色系(JIS Z8721)による明度が3.5以下の色を有する。裏地の色が有彩色である場合、その色相は、マンセル表色系(JIS Z8721)の色相環の10.0Rと2.5Yとに挟まれる領域であって5Bを含む領域に属していてよい。
【0015】
あるいは、裏地は、表地と重ねられた場合に光の透過性に関して特定の機能を示すものであってよい。
【0016】
例えば、表地、裏地、無地の下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光の色と、表地、裏地および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光の色との間の色差が、特定の基準値以下であるような裏地を使用することができる。基準値は好ましくは0.2である。ここで、色差の算出のために使用される表地および肌色サンプルは同一ものとされる。肌色サンプルは色票または布地であってよい。このような裏地を使用すると、肌の色に対して下着の色が視認されるのを防ぐことが出来る。具体的には、好ましい裏地は、表地、裏地、無地の下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)とし、一方、表地、裏地および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)としたとき、下式1の関係を満たす。
【数1】

【0017】
また、表地、裏地、無地の第1下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光の色と、表地、裏地、第1下着とは異なる無地の第2下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光の色との間の色差が、特定の基準値以下であるような裏地を使用することができる。基準値は好ましくは0.2である。ここで、色差の算出のために使用される表地および肌色サンプルは同一ものとされる。好ましくは、第1下着の色と第2下着の色とは互いに異なる。このような裏地を使用すると、下着の複数の色から成る柄が視認されるのを防ぐことができる。具体的には、好ましい裏地は、表地、裏地、無地の第1下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)とし、一方、表地、裏地、第1下着とは異なる無地の第2下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)としたとき、下式2の関係を満たす。
【数2】

【0018】
裏地は、表地の裏面、すなわち着用した際に内側となる面の少なくとも一部に付される。好ましくは、下着および裏地付白衣を着用した場合に、表地のなかの下着と重なる領域に付される。例えば、裏地は、表地の胸部を含む領域および骨盤部を含む領域の少なくとも一方に付される。胸部とは、乳房並びに乳房と同じ高さに位置するわき腹および背中から成る人体の部位を意味する。胸部を含む領域に裏地を付す場合、ブラジャーといった乳房を覆う下着の透過を防止することが可能となる。骨盤部とは、陰部、臀部および腰骨から成る人体の部位を意味する。骨盤部を含む領域に裏地を付す場合、陰部および臀部を覆う下着の透過を防止することが可能となる。胸部を含む領域および骨盤部を含む領域の他に、肩を含む領域に裏地を付すことができる。肩を含む領域に裏地を付す場合、例えばブラジャーの肩紐の透過を防止することができる。一方、表地の布地が厚く作られる領域、裏地を付すのが製造上困難な領域、裏地を付すことが機能上避けられる領域等については、裏地を付さなくてもよい。例えば、前開きまたは後開きの裏地付白衣において、合せ目部分およびその付近は、布地が厚く作られているためまたは機能上の理由から、裏地を付さないことができる。
【0019】
裏地は、表地に対して一般的な方法によって付すことができる。例えば、表地に対し裏地を縫い付けることができる。あるいは、接着性の材料を用いて表地に対し裏地を貼り付けることができる。あるいは、ピン等を用いて表地に対し裏地を留めることができる。
【0020】
実施形態に係る裏地付白衣1により、内部に着用した下着の色が表地を介して透けて見えることが防止される。ここにおいて、透けて見えることの防止とは、下着の色自体の透過が防止されること、および下着と肌との色差が縮小される結果、下着を視認できなくなることのいずれかまたはその両方を意味する。下着の色が着用者の肌の色に近い場合だけでなく、下着の色と肌の色との色差が大きい場合であっても、下着の色の透過を防止することができる。また、下着が複数の色を有する場合、すなわち下着に柄の模様が施されている場合であっても、全ての色の透過を防止することができ、その結果、表地を介した下着の視認および下着の柄の視認を抑制する。裏地付白衣1による透過防止効果は、あらゆる人種の肌の色において得ることができる。
【0021】
図1および2に、実施形態に係る裏地付白衣の例を示す。
【0022】
図1は、第1の実施形態に係る裏地付白衣1を示す図である。図1は、裏地付白衣1の一部を裁断し、裏地側が手前となるように開いた状態を示している。具体的には、両袖を外した後、襟および肩の部分を裁断し且つ身頃の右側を裁断して開いた状態を示している。図1において、裏地付白衣1の前面に符号7を付し、背面に符号8を付す。
【0023】
図1に示される裏地付白衣1は、表地2と、表地2の一部に付された裏地3と、表地2の一部に付されたメッシュ生地4とを含む。この実施形態では、表地2の形状はワンピースである。表地2は、前面7の中央に合せ目5を有する。また、表地2は、袖を縫いつけるためのアームホール6を有する。背面8では、表地2の胸部を含む領域および骨盤部を含む領域に裏地3が縫い付けられている。具体的には、裏地3は、襟およびアームホール6を除いた腰の位置から上の領域、および裾から一定幅の部分を除いた腰の位置から下の領域に設けられている。一方、前面7では、背面8と同様に、胸部を含む領域および骨盤部を含む領域に裏地3が縫い付けられているものの、合せ目5およびその周囲においては裏地3が付されていない。これにより、白衣としての使い勝手と、裏地3による下着の透過防止効果との両立が図られている。表地の腰の位置には、メッシュ生地4が貼り付けられている。これにより、通気および放熱を促進し、裏地付白衣と体との間に汗に由来する湿気および熱がこもることを抑制している。
【0024】
図2は、第2の実施形態に係る裏地付白衣1を示す図である。図2は、裏地付白衣1の一部を裁断し、裏地側が手前となるように開いた状態を示している。具体的には、両袖を外した後、襟および肩の部分を裁断して開いた状態を示している。第2の実施形態に係る裏地付白衣1において、表地3の形状はジャケットであるため、前面は合せ目5によって分離する。したがって、図2は、裁断した部分および合せ目5にて開いた状態が示される。図2において、裏地付白衣1の背面に符号8を付し、左前面に符号9を付し、右前面に符号10を付す。
【0025】
図2に示される裏地付白衣1は、表地2と、表地2の一部に付された裏地3とを含む。この実施形態では、表地3の形状は上衣であり、具体的にはジャケットである。表地1は、袖を縫いつけるためのアームホール6を有する。背面8では、表地2の胸部を含む領域に裏地3が縫い付けられている。具体的には、裏地3は、襟を除いた腰の位置から上の領域に設けられている。一方、左前面9および右前面10では、背面8と同様に、胸部を含む領域に裏地3が縫い付けられているものの、合せ目5およびその周囲においては裏地3が付されていない。これにより、白衣としての使い勝手と、裏地3による下着の透過防止効果との両立が図られている。
【0026】
(測定方法)
本発明の実施形態は、裏地の透過性を測定する方法に関する。この方法は、好ましくは、実施形態に係る裏地付白衣に使用する裏地を選定する場合に利用される。
【0027】
まず、第3の実施形態に係る裏地の透過性を測定する方法を説明する。第3の実施形態に係る方法では、対照サンプルを作製すること、試験サンプルを作製すること、対照サンプルに光を照射して反射光のCIELAB色空間の座標を定量すること、試験サンプルに光を照射して反射光のCIELAB色空間の座標を定量すること、およびそれらの定量結果に基づいて色差を算出することを含む。第3の実施形態に係る方法によれば、裏地付白衣を介して視認される下着の色と肌の色との間の色差を算出することができる。
【0028】
対照サンプルの作製は、肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルを順に重ねることで行われる。肌色サンプルとは、裏地付白衣の着用者の肌の色として想定される色を有するサンプルであり、例えば肌色色票が使用される。裏地サンプルとしては、測定の対象とする裏地と同一の布地が使用される。表地サンプルとしては、裏地付白衣における使用が想定される表地と同一の布地が使用される。
【0029】
試験サンプルの作製は、肌色サンプル、下着サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルを順に重ねることで行われる。試験サンプルにおける肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルは、それぞれ対照サンプルにおいて使用する肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルと同一のものを使用する。下着サンプルは、任意に選択した下着またはその一部が使用される。下着サンプルは、互いに色の異なる複数のものを使用することができる。下着の数に応じて、作製する試験サンプルを増やしてもよい。
【0030】
対照サンプルへの光の照射は、作製した対照サンプルに対し、表地サンプル側から光を照射することで行われる。光は、任意の光源から発せられるものを使用できるが、例えば、標準光源、特にD65光源を用いることができる。光照射後、その反射光のCIELAB色空間の座標を定量する。ここにおいて反射光とは、照射した光が、対照サンプルにおいて反射して生じる光である。反射光は、表地サンプルにおいて反射した光、裏地サンプルにおいて反射し表地サンプルを透過した光、および肌色サンプルにおいて反射し裏地サンプルおよび表地サンプルを透過した光が合成した光と考えられる。反射光のCIELAB色空間の座標L、aおよびbが測定される。ここにおいて、対照(Control)サンプルにおいて測定した座標をL、aおよびbと称する。光の照射および反射光の測定は、同一サンプルにおいて複数回行うことができる。複数回行う場合、同一サンプル上の測定部位は、全ての測定において同一とすることができ、または測定ごとに変更することができる。複数回測定した場合、それらの平均値をそのサンプルの測定結果とすることができる。光の照射から反射光の測定までの一連の操作は、任意の測定装置を使用して行うことができる。例えば、分光光度計を使用して行うことができる。
【0031】
試験サンプルへの光の照射およびその後の反射光の測定は、対照サンプルにおいて行う場合と同様に行うことができる。対照サンプルにおいて使用した測定条件は、試験サンプルの測定においてもそのまま使用される。試験(Test)サンプルでは、測定した座標をL、aおよびbと称する。試験サンプルが複数である場合、全て同一条件の下、光の照射および測定が行われ、試験サンプルごとに測定結果が求められる。
【0032】
定量結果に基づいて色差の算出が行われる。すなわち、対照サンプルおよび試験サンプルから得られた各座標の値を下式3に代入して、色差ΔEを算出する。なお、試験サンプルが複数である場合、それぞれの試験サンプルの定量結果と対照サンプルの定量結果との間で色差ΔEが算出される。
【数3】

【0033】
次に、第4の実施形態に係る裏地の透過性を測定する方法を説明する。第4の実施形態に係る方法では、第1試験サンプルを作製すること、第2試験サンプルを作製すること、第1試験サンプルに光を照射して反射光のCIELAB色空間の座標を定量すること、第2試験サンプルに光を照射して反射光のCIELAB色空間の座標を定量すること、およびそれらの定量結果に基づいて色差を算出することを含む。第4の実施形態に係る方法では、柄を有した下着を着用した場合を想定している。すなわち、裏地付白衣を介して視認される、柄を構成する各色の色差を算出することができる。
【0034】
第1試験サンプルの作製は、肌色サンプル、裏地サンプル、第1下着サンプルおよび表地サンプルを順に重ねることで行われる。肌色サンプルとは、裏地付白衣の着用者の肌の色として想定される色を有するサンプルであり、例えば肌色色票が使用される。裏地サンプルとしては、測定の対象とする裏地と同一の布地が使用される。第1下着サンプルは、任意に選択した下着またはその一部が使用される。表地サンプルとしては、裏地付白衣における使用が想定される表地と同一の布地が使用される。
【0035】
第2試験サンプルの作製は、肌色サンプル、第2下着サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルを順に重ねることで行われる。第2試験サンプルにおける肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルは、それぞれ第1試験サンプルにおいて使用する肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルと同一のものを使用する。一方、第2下着サンプルは、第1下着サンプルとは異なる下着またはその一部が使用される。例えば、第2下着サンプルとして、第1下着サンプルの色と異なる色を有する下着またはその一部が使用される。
【0036】
第1試験サンプルまたは第2試験サンプルへの光の照射および反射光の測定は、第3の実施形態における対照サンプルへの光の照射および反射光の測定と同様に行うことができる。なお、第1試験サンプルにおいて測定した座標をL、aおよびbと称し、第2試験サンプルにおいて測定した座標をL、aおよびbと称する。
【0037】
定量結果に基づいて色差の算出が行われる。すなわち、第1試験サンプルおよび第2試験サンプルから得られた各座標の値を下式4に代入して、色差ΔEを算出する。
【数4】

【0038】
第4の実施形態に係る裏地の透過性を測定する方法において、試験サンプルを更に増やすこともできる。例えば、第3試験サンプルおよび第4試験サンプルを更に作製することができる。この場合、これらに使用される第3下着サンプルおよび第4下着サンプルのそれぞれは、第1下着サンプルおよび第2下着サンプルとは異なるものとされる。また、第3下着サンプルおよび第4下着サンプルは互いに異なるものとされる。第3試験サンプルおよび第4試験サンプルは、第1試験サンプルおよび第2試験サンプルと同様に測定することができる。その後、各試験サンプルからの測定結果を任意に組合せて、種々の色差が算出される。測定した裏地が、3種以上の色の組合せから成る柄に対して透過防止性を発揮するか、または異なる色の組合せから成る複数の柄に対して透過防止性を発揮するかを検討することができる。
【0039】
第3の実施形態に係る方法または第4の実施形態に係る方法には、さらに、色差ΔEが所定の基準値以下であるか否かを判定することを含めることができる。裏地付白衣を介した下着の透過具合は、色差の値が小さいほど透過しにくくなる。したがって、容認可能な透過具合に基づいて、基準値を設定することができる。例えば、色差が1.0を超える場合、視感評価によって下着の透過を確認できるため、基準値は1.0とすることができる。好ましくは、基準値は、単色の下着の場合0.4とされ、柄模様を有する下着の場合0.6とされる。これらの基準値以下である場合、視感評価によると「透けない」という評価が得られる。さらに、基準値を0.2とすることができる。色差が0.2以下である場合、視感では下着を認識することができない。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
代表的な色を有する複数の下着を用いて、視感により透過の程度を評価した。下着が表地を介して透けて見える程度は、主に「肌」「下着」「裏地」および「表地」の組合せに影響を受けると考えられる。本実施例では、単一の「肌」、複数の「下着」、複数の「裏地」および単一の「表地」を組み合わせて、下着の透過を防止できる「裏地」を調べた。
【0041】
「肌」としてはマネキンを用いた。このマネキンの表面は、ベージュ色(マンセル値9YR8.5/2.5)を有していた。
【0042】
「下着」は、代表的な色または柄を有する市販の下着を使用した。下着は全て、ブラジャーおよびパンティーから成る上下セットのものとした。無地のものとしては、ブルー、ピンク、パープル、ブラック、ホワイト、レッド、イエロー、グリーンおよびオレンジの9種を使用した。柄を有するものとしては、ベージュ色地にピンク色の水玉から成る柄、白色および黒色から成るチェック並びに黄色および黒色から成る豹柄を有する3種を使用した。さらに、エメラルドグリーン色のレース生地の下着を使用した。なお、白色と黒色との組合せは、色差が最も大きな色の組合せであり、黄色と黒色との組合せは、それらが並んだ場合に人間にとって最も視認しやすい色の組合せである。
【0043】
「裏地」は、それぞれ、オフホワイト(1)、アイボリーホワイト(2)、ベビーピンク(161)、シェルピンク(11)、アイボリー(159)、クリーム(レモン)(32)、クリームベージュ(7)、イエロー(31)、キミドリ(94)、ライトベージュ(6)、ゴールド(210)、ピンク(23)およびクロ(BK)の色を有する計13種を使用した。全て、東レ製テトロン裏地シルウェーブを使用した。それぞれの色名に続く括弧内に表示される番号または「BK」との記載は商品の識別番号を意味する。
【0044】
「表地」は、白衣として一般的に使用される素材を使用した。すなわち、市販される一村産業株式会社製バーバリーを使用した。
【0045】
以上の材料を使用して、視感評価を行った。すなわち、マネキンに、下着を上下セットで装着し、さらに裏地を付した表地を装着した。自然光の下、表地から観察し、下着が透けて見えるか否かを評価した。評価は無地系の下着と柄系の下着とでそれぞれ異なる基準に基づいて行った。
【0046】
すなわち、無地系の下着の場合、下着の上下それぞれについて透けて見えるか否かの判断を行った。上下共に透けて見えない場合「○」とし、上が透けて見え、下が透けて見えない場合「○」とし、上が透けて見えず、下が透けて見える場合「△」とし、上下共に透けて見える場合「△」とした。
【0047】
一方、柄系の下着の場合、パンティーのみについて3段階で評価した。すなわち、透けて見えない場合「○」とし、やや透けて見える場合「△」とし、透けて見える場合「×」とした。なお、今回使用した柄系の下着では、ブラジャーとパンティーとで柄が十分に統一されていなかった。例えば、ブラジャーに柄が無い場合や、ブラジャーとパンティーとで柄が異なる場合が存在した。そのため、柄系の下着において、ブラジャーについての評価は行わなかった。
【0048】
測定結果を以下の表1にまとめる。表中、○、○、○および△の結果が得られた欄は網掛けで表示する。
【表1】

【0049】
裏地を使用しない場合、全ての下着において、△、△または×の結果を示し、見えやすい傾向があることがわかった。一方、クロの裏地を使用する場合、全ての下着において、○、○または○の結果が得られ、見えにくい傾向があることがわかった。また、ピンクおよびゴールドの裏地において、クロに次いで見えにくい傾向があることがわかった。
【0050】
[実施例2]
実施例1において調べた特定の組合せについて、機械測定に基づく評価を行った。
【0051】
「肌」としては、日本人の平均的な肌の色として、マンセル値5YR 6.5/4の色票を使用した。
【0052】
「下着」としては、それぞれピンク、グリーン、ブラックおよびホワイトの色を有する無地の4種類を使用した。
【0053】
「裏地」としては、クリームベージュ(7)、ライトベージュ(6)、ピンク(23)およびブラック(BK)を使用した。全て、東レ製テトロン裏地シルウェーブを使用した。
【0054】
「表地」は、白衣として一般的に使用される素材を使用した。すなわち、市販される一村産業株式会社製バーバリーを使用した。
【0055】
まず、対照サンプルを、色票、裏地および表地を順に重ねて作製した。裏地は4種存在するため、4つの対照サンプルを作製した。さらに、裏地を除いた対照サンプル、すなわち裏地と表地とを重ねた対照サンプルを1種作製した。対照サンプルは、裏地付白衣を介して透けて見える肌の色に対応する。
【0056】
一方、試験サンプルを、色票、下着、裏地および表地を順に重ねて作製した。下着は4種存在し、裏地は4種存在するため、これらの試験サンプルは計16種作製された。さらに、裏地を除いた試験サンプルを作製した。下着は4種存在するため、裏地を含まない試験サンプルは、計4種作製された。
【0057】
作製された、5種(4種+1種)の対照サンプルおよび20種(16種+4種)の試験サンプルについて、それぞれ表地側から光を照射して生じる反射光について、CIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を測定した。測定は、D65光源がセットされた日立製分光光度計C2000を用い、各サンプルの異なる2箇所について1度ずつ測定を行い、平均値を求めた。その結果を表2の「測定結果」の欄にまとめる。
【表2】

【0058】
なお、表2の「測定結果」の欄には、L、aおよびbの各値の他に、マンセル表色系における色相(H)、明度(V)および彩度(C)、並びにLch表色系の色相角(H)および彩度(C)が示される。
【0059】
さらに、表2の「色差対」の欄に、特定のサンプルを組合せたときの色差を示した。色差ΔEは、2つのサンプルからそれぞれ測定されたL、aおよびbの各値を以下の式3にあてはめて算出した。
【数5】

【0060】
サンプルの組合せは、対照サンプルとピンクの下着を含む試験サンプルとの組合せ、対照サンプルとグリーンの下着を含む試験サンプルとの組合せ、対照サンプルとブラックの下着を含む試験サンプルとの組合せ、およびブラックの下着を含む試験サンプルとホワイトの下着を含む試験サンプルとの組合せの計4種とした。裏地が無い場合および裏地がある場合のそれぞれについてこの4つの組合せを算出したため、計20種の色差を得た。組合せの詳細は「色差組合」の欄に示される。なお、ブラックの下着を含む試験サンプルとホワイトの下着を含む試験サンプルとの組合せにより、ブラックとホワイトとから成る柄の透過性を評価することができる。
【0061】
次に、機械測定に基づく色差と、実施例1において行った視感評価との対応を検討した。以下の表3に対応関係をまとめた。表3において、例えば、裏地がクリームベージュであり下着がピンクである欄では、上段に視感評価の結果を記載し、下段に対照サンプルと試験サンプルとの間の色差を記載した。下着が「白黒チェック」である欄では、下段に、ホワイトの下着を含む試験サンプルとブラックの下着を含む試験サンプルとの間の色差を記載した。
【表3】

【0062】
表3から次のことが考察される。すなわち、下着が単色(ピンク、ブラックまたはグリーン)である場合、機械測定に基づく色差が0.4以下のときに「透けない」という視感評価が得られ、機械測定に基づく色差が0.5以上のときに「やや透ける」という視感評価が得られる。一方、下着に柄(白黒チェック)がある場合、機械測定に基づく色差が0.6以下のときに「透けない」という視感評価が得られ、1.2以上のときに「やや透ける」という視感評価が得られる。なお、色差が0.6超および1.2未満の場合は、表3の結果からは結論を得ることができない。なお、単色の場合と柄の場合とで、色差と視感評価との対応関係に差が出たのは、視感評価において用いた白黒チェックの模様がこまかかったことが原因の1つと考えられる。
【0063】
[実施例3]
Practical Color Co−ordinate System(PCCS)に基づいて、全色域から系統的に裏地の色を選定し、視感評価を行った。
【0064】
PCCSは、色相(ヒュー、Hue)および色調(トーン、Tone)の2つの属性から構成され、小分類、中分類および大分類と色域全体を段階的に分類できるシステムを有するヒュー・トーン・システムである。このシステムにより分類された個々の色域は系統色名により表すことができる。
【0065】
裏地の色の選定は、色相の選定およびそれぞれの色相ごとのトーンの選定に基づいて行った。PCCSは24色相で構成されているが、本実施例では、基本5色相を構成する赤(Red)、黄色(Yellow)、緑(Green)、青(Blue)および紫(Purple)、並びに常用色相のオレンジ(Orange)の計6色を選定した。トーンは、大分類のトーンを採用し、それぞれの色域の中から代表色を選定した。大分類とは、図3(a)に示されるように、Pure Tone、Moderate Tone、Tint ToneおよびShade Toneの4つに分ける分類である。6つの色相のそれぞれにおいて、トーンの異なる4つの色を選定した。すなわち、計24色を選定した。さらに、無彩色として、White、Light Gray、Gray、Dark GrayおよびBlackの5色を選定した。無彩色の5色は、色相をNeutralとして表す。以上の29色を以下の表4にまとめる。
【表4】

【0066】
表4中、「サンプル」の欄には、使用した布地の詳細を示す。すなわち、数字のみが表記されたものおよび「BK」と表記された素材は、東レ製テトロン裏地シルウェーブの商品であり、「サンプル」欄の表記は商品の認識番号を意味する。一方、「C」および数字から成る表記が付された素材は、日本色彩研究所作製のカラーサンプルChromacosmos707を見本として染織により作製した視感複製であることを意味する。数字は、カラーサンプル中の数字に対応する。また、「視感マンセル値」の欄には、布地サンプルをJIS標準色票(JIS Z8721)と視感比較して特定した、各布地サンプルの色のマンセル値を意味する。
【0067】
下着は、それぞれWhite(白)、Yellow(黄色)またはBlack(黒)の色を有する無地の3種と、WhiteとBlackとから成る柄またはYellowとBlackとから成る柄を有する2種とを使用した。
【0068】
以上のように選定した裏地および下着を利用して、視感評価を行った。方法としては、実施例1と同様に行った。すなわち、マネキンに下着を装着し、さらに裏地を付した表地を装着した。自然光の下、表地から観察し、下着が透けて見えるか否かを評価した。評価は以下の6段階の基準に基づいて行った。
◎ :全く見えない
○ :一瞥では見えないが、詳細に観察すると観察条件によって見えることがある
△○:一瞥では見えないが、詳細に観察すると薄く見える
△ :薄く見えるが、気になる程度ではない
×△:薄く見え、やや気になる
× :はっきり見える。
【0069】
視感評価の結果を以下の表5にまとめる。なお、「下着」の欄において、上段に「skin」と記載された欄は、肌の色に対して下着の色が見える程度を評価しており、上段に「Black」と記載された欄は、黒と白との柄または黒と黄色との柄が見える程度を評価している。
【表5】

【0070】
[実施例4]
実施例3にて視感評価したサンプルについて、測定装置を用いて色値を測定した。さらに、測定した色値を用いて、特定のサンプル間の色差を求め、色差と視感評価とを対比した。
【0071】
まず、実施例2と同様に、対照サンプルおよび試験サンプルを作製した。本実施例では、裏地として実施例3にて選定した29種を使用し、下着として実施例3にて使用したWhite(白)、Yellow(黄色)およびBlack(黒)の無地の3種を使用した。これらの裏地および下着を使用して、肌色色票、下着サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルが順に重なった87種の試験サンプルを作製した。また、下着サンプルを除いた29種の対照サンプルを作製した。したがって、計116種のサンプルを作製した。
【0072】
測定は、D65光源がセットされた日立製分光光度計C2000を用いて行った。全ての試験サンプルについて、それぞれ表地側から光を照射して生じる反射光について、CIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を測定した。各サンプルの異なる2箇所について1度ずつ測定を行い、平均値を求めた。結果を表6−1から表6−4にまとめる。
【表6−1】

【0073】
【表6−2】

【0074】
【表6−3】

【0075】
【表6−4】

【0076】
測定結果に基づいて、特定の組合せにおける色さを算出した。算出した色差を表7−1から表7−4にまとめる。色差ΔEは、2つの測定サンプルから得られたL、aおよびbの各値を以下の式4に代入することで算出した。表中、「下着無基準」の欄には、下着が無い場合の色値に対する、下着がある場合の各色値の色差が示される。これは、肌の色に対して下着の色が見える場合を想定している。「下着黒基準」の欄には、黒の下着がある場合の色値に対する、白または黄色の下着がある場合の各色値の色差が示される。これは、黒と白との柄および黒と黄色との柄が見える場合を想定している。「下着白基準」の欄には、白の下着がある場合の色値に対する、黄色の下着がある場合の各色値の色差が示される。これは、白と黄色との柄が見える場合を想定している。
【数6】

【0077】
【表7−1】

【0078】
【表7−2】

【0079】
【表7−3】

【0080】
【表7−4】

【0081】
次に、得られた色差と、実施例3において行った視感評価との対応を検討した。対応関係を以下の表8−1および表8−2にまとめた。これらの表から、色差が0.2以下の場合、視感評価で「◎」となる傾向があることがわかる。
【表8−1】

【0082】
【表8−2】

【0083】
[実施例5]
実施例3の結果に基づいて、裏地の色相ごとに、トーンと視感評価との関係を検討した。
【0084】
(Red系)
色相がRed系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0085】
結果を図3にまとめる。図3(a)には、PCCSにおけるトーン大分類の概要が示される。図3(c)には、Value(明度)−Chroma(彩度)平面が示される。太線は、Pure Tone、Moderate Tone、Tint ToneおよびShade Toneの4種のトーンの境界を意味する。黒丸により示された4つの点が視感評価を行った裏地を意味する。それぞれの裏地の色のValue−Chroma平面上の位置が把握できる。図3(b)には、トーンと視感評価との対応が示される。すなわち、そのトーンに属する裏地の視感評価の結果が、トーンごとに示されている。
【0086】
図3(b)の結果から、ピンクおよび鮮やかな赤は透ける傾向があることがわかる。また、Red系の色相の場合、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ダルレッド、ディープレッド、ダークレッド、グレイッシュレッド、ダークグレイッシュレッド、暗い赤、深い赤、にぶい赤、濃い赤、暗い灰みの赤、灰みの赤、ワインレッドが挙げられる。
【0087】
(Orange系)
色相がOrange系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0088】
結果を図4にまとめる。図4(a)から(c)の意味は、図3(a)から(c)の意味と同様である。
【0089】
図4(b)の結果から、ベージュ、明るいオレンジおよび鮮やかなオレンジは透ける傾向があることがわかる。また、Orange系の色相の場合、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。なお、Orange系色相のシェードトーンはブラウン系となる。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ディープオレンジ、ブラウン、グレイッシュブラウン、ディープブラウン、ダークブラウン、ダークグレイッシュブラウン、深いオレンジ、茶色、暗い茶色、灰みの茶色、暗い灰みの茶色、焦げ茶色が挙げられる。
【0090】
(Yellow系)
色相がYellow系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0091】
結果を図5にまとめる。図5(a)から(c)の意味は、図3(a)から(c)の意味と同様である。
【0092】
図5(b)の結果から、明るい黄色、薄い黄色および鮮やかな黄色は透ける傾向があることがわかる。また、Yellow系の色相の場合、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ディープイエロー、ダークイエロー、ダークオリーブ、グレイッシュオリーブ、ダークグレイッシュオリーブ、暗い黄色、深い黄色、オリーブ色、カーキー色、暗いオリーブ、灰みのオリーブおよび暗い灰みのオリーブが挙げられる。
【0093】
(Green系)
色相がGreen系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0094】
結果を図6にまとめる。図6(a)から(c)の意味は、図3(a)から(c)の意味と同様である。
【0095】
図6(b)の結果から、明るい緑、薄い緑および鮮やかな黄色は透ける傾向があることがわかる。また、Green系の色相の場合、ピュアトーン、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ビビッドグリーン、ストロンググリーン、ダルグリーン、ダークグリーン、グレイッシュグリーン、ダークグレイッシュグリーン、鮮やかな緑、強い緑、深い緑、暗い緑、灰みの緑、暗い灰みの緑およびオリーブグリーンが挙げられる。
【0096】
(Blue系)
色相がBlue系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0097】
結果を図7にまとめる。図7(a)から(c)の意味は、図3(a)から(c)の意味と同様である。
【0098】
図7(b)の結果から、明るい青および薄い青は透ける傾向があることがわかる。また、Blue系の色相の場合、ピュアトーン、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ビビッドブルー、ストロングブルー、ダークブルー、グレイッシュブルー、ダークグレイッシュブルー、鮮やかな青、強い青、深い青、暗い青、灰みの青、暗い灰みの青、紺色および藍色が挙げられる。
【0099】
(Pueple系)
色相がBlue系である4種の裏地について、トーン大分類上にプロットした。プロットされた裏地の評価結果から、各トーンの透過防止性を評価した。
【0100】
結果を図8にまとめる。図8(a)から(c)の意味は、図3(a)から(c)の意味と同様である。
【0101】
図8(b)の結果から、明るい紫および薄い紫は透ける傾向があることがわかる。また、Pueple系の色相の場合、ピュアトーン、モデレートトーンおよびシェードトーンは透けないと結論される。これらのトーンに含まれる色名を例示すると、ビビッドパープル、ストロングパープル、ダルパープル、ダークパープル、グレイッシュパープル、ダークグレイッシュパープル、鮮やかな紫、強い紫、深い紫、暗い紫、灰みの紫および暗い灰みの紫が挙げられる。
【0102】
(Nuetral系)
無彩色である5種の裏地について、明度と透過防止性との関係を評価した。
【0103】
結果を図9にまとめる、図9(a)には、5種の裏地の分類の概要が示される。図9(b)には、Value(明度)−Chroma(彩度)平面が示される。なお、無彩色は理論上彩度が0である。図9(b)には、明度の分類と視感評価との対応が示される。すなわち、その明度の分類に属する裏地の視感評価の結果が、明度の分類ごとに示されている。
【0104】
図9(b)の結果から、白および明るいグレイは透ける傾向があることがわかる。また、無彩色の場合、中間のグレイ、暗いグレイおよび黒は透けないと結論される。これらに含まれる色名を例示すると、グレイ、ミドルグレイ、灰色、ダークグレイ、暗い灰色、ブラック、黒および墨色が挙げられる。
【0105】
[実施例6]
実施例3にて視感評価した裏地に関して、Hue(色相)−Value(明度)平面にプロットし、視感評価と平面上の座標との関連性を検討した。
【0106】
実施例3にて使用した29種の裏地を、それぞれの色のマンセル表色系(JIS Z8721)による色相および明度の値に基づいて、Hue(色相)−Value(明度)平面にプロットした。このとき、視感評価で全ての下着に対して「◎」または「○」を示し且つ色差が0.2以下であった裏地については白抜きの丸を表示し、それ以外の裏地については黒丸で表示した。また、29種の裏地に加え、青緑(BG)系の色を有する4種の裏地について、実施例3と同様に視感評価を行い、同様にプロットした。
【0107】
その結果を図10に示す。図10に示される平面では、縦軸をValueとし、横軸をHueとしている。横軸では、マンセル表色系における10種の色相を、色相環の順番通りに配置している。すなわち、左端から、赤(R)、黄赤(YR)、黄(Y)、黄緑(GY)、緑(G)、青緑(BG)、青(B)、紫青(PB)、紫(P)および赤紫(RP)が順に配列されている。また、無彩色の5種についても、Value−Hue平面の横にプロットした。
【0108】
図10から、明度と透過防止効果との間に相関があることがわかった。すなわち、全ての色相において、明度が低い場合に、透過防止効果が得られることがわかった。図10には、透過を防止できる明度と防止できない明度との間の境界として予想される線を示す。また、色相によって透過防止効果が得られる明度が異なることがわかった。例えば、黄色(Y)の色相では明度6と8との間に境界があるのに対し、赤(R)の色相では明度3.5と4との間に境界があった。無彩色を含む全ての色において透過防止効果が得られるのは明度4が未満である場合であり、特に明度が3.5以下である場合であることがわかった。
【0109】
[実施例7]
「肌」の色が変わった場合の、視感評価への影響を検討した。具体的には、実施例3における特定のサンプルについて、「肌」の色を変更して同様に視感評価を行った。
【0110】
「肌」の色として、黒人の肌および東南アジア人の肌を想定して、それぞれ東レ製テトロン裏地シルウェーブの49および53を選定した。これらの布地をマネキン全体に貼り付けて使用した。選定に際して、日本色彩学会編、「カラーインライフ」、朝倉書店、2006年における、棟方明博氏執筆「2.3 肌の色・化粧の色」の記載(79−81頁)を参考にした。比較対照として、実施例3にて用いたマネキンの本来の色を使用した。
【0111】
裏地は、色相ごとに1色の裏地を選んだ。下着は、それぞれ黒、白および黄色の無地の3種、並びにグレーと黒とのストライプ模様の下着、白と黒とのストライプ模様の下着および黄色と黒とのストライプの下着の3種を使用した。
【0112】
評価は、実施例3と同様に視感評価にて行った。結果を以下の表9に示す。
【表9】

【0113】
表9から、日本人の肌の色において効果が得られた裏地では、異なる肌の色の場合も同様に効果が得られることがわかる。すなわち、肌の色が変化は、実施形態に係る裏地付白衣の効果に影響を及ぼさないと結論される。
【符号の説明】
【0114】
1…裏地付白衣、2…表地、3…裏地、4…メッシュ生地、5…合せ目、6…アームホール、7…前面、8…背面、9…左前面、10…右前面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色または有彩色の表地と、
前記表地の少なくとも一部に付された、マンセル表色系(JIS Z8721)による明度が3.5以下の有彩色または無彩色の裏地と
を含む裏地付白衣。
【請求項2】
前記裏地の色が有彩色であり、前記裏地の色の色相は、マンセル表色系(JIS Z8721)の色相環の10.0Rと2.5Yとに挟まれる領域であって5Bを含む領域に属す請求項1に記載の裏地付白衣。
【請求項3】
白色または有彩色の表地と、
前記表地の少なくとも一部に付された有彩色または無彩色の裏地であって、前記表地、前記裏地、無地の下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、前記表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)とし、前記表地、前記裏地および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、前記表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)としたとき、下式1の関係を満たす裏地と
【数1】

を含む裏地付白衣。
【請求項4】
白色または有彩色の表地と、
前記表地の少なくとも一部に付された有彩色または無彩色の裏地であって、前記表地、前記裏地、無地の第1下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、前記表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)とし、前記表地、前記裏地、前記第1下着とは異なる無地の第2下着および肌色サンプルを順に重ねたサンプルに対して、前記表地側から光を照射して生じる反射光のCIELAB色空間の座標を(L,a,b)としたとき、下式2の関係を満たす裏地と
【数2】

を含む裏地付白衣。
【請求項5】
前記表地の色が白色である請求項1から4の何れか1項に記載の裏地付白衣。
【請求項6】
前記裏地は、前記表地の胸部を含む領域および骨盤部を含む領域の少なくとも一方に付された請求項1から5の何れか1項に記載の裏地付白衣。
【請求項7】
前記表地の形状がワンピースである請求項1から6の何れか1項に記載の裏地付白衣。
【請求項8】
前記表地の形状が上衣である請求項1から6の何れか1項に記載の裏地付白衣。
【請求項9】
肌色サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルを順に重ねて対照サンプルを作製すること、
前記肌色サンプルと同一の肌色サンプル、下着サンプル、前記裏地サンプルと同一の裏地サンプルおよび前記表地サンプルと同一の表地サンプルを順に重ねて試験サンプルを作製すること、
前記対照サンプルの前記表地サンプルに光を照射し、その反射光のCIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を定量すること、
前記試験サンプルの前記表地サンプルに光を照射し、その反射光のCIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を定量すること、および
前記対照サンプルおよび前記試験サンプルから得られた各座標の値を下式3に代入して、色差ΔEを算出すること、
【数3】

を含む、裏地の透過性を測定する方法。
【請求項10】
肌色サンプル、第1下着サンプル、裏地サンプルおよび表地サンプルを順に重ねて第1試験サンプルを作製すること、
前記肌色サンプルと同一の肌色サンプル、前記第1下着サンプルとは異なる第2下着サンプル、前記裏地サンプルと同一の裏地サンプルおよび前記表地サンプルと同一の表地サンプルを順に重ねて第2試験サンプルを作製すること、
前記第1試験サンプルの前記表地サンプルに光を照射し、その反射光のCIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を定量すること、
前記第2試験サンプルの前記表地サンプルに光を照射し、その反射光のCIELAB色空間の座標L、aおよびbの各値を定量すること、および
前記第1試験サンプルおよび前記第2試験サンプルから得られた各座標の値を下式4に代入して、色差ΔEを算出すること、
【数4】

を含む、裏地の透過性を測定する方法。
【請求項11】
前記色差ΔEが基準値以下であるか否かを判定することをさらに含む請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準値が0.2である請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−246589(P2012−246589A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120711(P2011−120711)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(500143232)シーユーピー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】