説明

裏込め注入方法、並びに、トンネル構築システム及びトンネル構築方法

【課題】裏込め注入材の原料費を節減できるとともに、建設汚泥として処分する掘削土の量を削減できる裏込め注入方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る裏込め注入方法は、土圧式シールド掘進機15によって掘削された掘削孔の壁面と、掘削孔内に設置されたセグメントSとの間の空間に、土圧式シールド掘進機15から排出される掘削土に含まれる粘性土を配合した注入材Uを充填することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏込め注入方法、並びに、トンネル構築システム及びトンネル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘進中のシールド掘進機の後方には、掘削された掘削孔の壁面とセグメントとの間に、テールボイドと呼ばれる隙間が生じる。このテールボイドは、地山の緩みや沈下の原因となるため、シールド掘進機の通過後、なるべく速やかに埋める必要がある。テールボイドを埋める作業は、一般に裏込め注入工と呼ばれる。また、テールボイドに注入される材料は、一般に注入材又は裏込め注入材などと呼ばれる。注入材は、材料分離を起こさない、注入後の体積変化が少ないなどの性能が要求される(非特許文献1の第71〜73頁を参照)。
【0003】
従来、注入材として、セメントなどの固化材、鉱物系助材及びグルコン酸ナトリウムなどの安定材(遅延材)が配合されたものが使用されている。また、最近は、固化材を含有するA液と、珪酸ソーダなどの塑強調整材を含有するB液とを混合して用いる混合型の注入材も使用されている。
【非特許文献1】シールド工法入門編集委員会、「シールド工法入門」、第3刷、社団法人地盤工学会、平成8年6月10日、p.71−73
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、テールボイドを充填する注入材は、上記のような性能が要求されるため、これを調製するに際しては、固化材、鉱物系助材、安定材及び塑強調整材などは全て市販のものを使用することが一般的である。しかし、これらの材料をすべて市販品でまかなうとなると、コストが増大するという問題がある。
【0005】
他方、土圧式シールド掘進機によって掘削を行う場合、当該掘進機からは掘削土が排出され、これを建設汚泥として処分するにもコストが発生する。したがって、建設汚泥として処分する掘削土の量を削減することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、裏込め注入材の原料費を節減できるとともに、建設汚泥として処分する掘削土の量を削減できる裏込め注入方法、並びに、トンネル構築システム及びトンネル構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る裏込め注入方法は、土圧式シールド掘進機によって掘削された掘削孔の壁面と、掘削孔内に設置されたセグメントの外面との間の空間に、土圧式シールド掘進機から排出される掘削土に含まれる粘性土を配合した注入材を注入することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る裏込め注入方法によれば、土圧式シールド掘進機からの掘削土に含まれる粘性土を注入材に配合することで、全て市販の材料を用いて注入材を調製する場合と比較し、注入材の原料費を節減できる。また、注入材の原料の一部として粘性土を使用することで、少なくとも粘性土の配合量に相等する量の建設汚泥を削減できる。
【0009】
本発明に係る裏込め注入方法は、掘削土から塊状の固結粘性土を分離回収する分級工程を備えたものであってもよい。掘削土中に粘性土が塊状の固結粘性土として含まれているような場合は、掘削土を篩などによって分級することで、掘削土から粘性土を容易に回収できる。
【0010】
分級によって掘削土から固結粘性土が回収される場合、本発明に係る裏込め注入方法は、この固結粘性土を粉砕する粉砕工程と、粉砕された粘性土とセメントとを混合する混合工程とを更に備えることが好ましい。粉砕された粘性土にセメントを配合して混合すると、セメントの造粒効果によって粒状の粘性土を得やすくなる。粒状の粘性土を注入材の調製に用いることにより、注入材の品質の均一化が図られる。
【0011】
本発明に係るトンネル構築システムは、地中を掘進して掘削孔を形成するとともに、掘削孔内にセグメントを配置する土圧式シールド掘進機と、土圧式シールド掘進機から排出される掘削土から粘性土を分離回収する分級手段と、掘削孔の壁面と掘削孔内に設置されたセグメントの外面との間の空間に、回収された粘性土を配合した注入材を注入する裏込め注入手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るトンネル構築システムによれば、シールドトンネルの掘削と同時に、本発明に係る上記裏込め注入方法を実施することができる。このことにより、裏込め注入材の原料費を節減できるとともに、建設汚泥として処分する掘削土の量を削減できる
【0013】
本発明に係るトンネル構築システムにおける分級手段は、掘削土から塊状の固結粘性土を分離回収する篩であってもよい。掘削土中に粘性土が塊状の固結粘性土として含まれているような場合は、分級手段として篩を採用することで、掘削土から粘性土を容易に回収できる。
【0014】
篩による分級によって掘削土から固結粘性土が得られる場合、本発明に係るトンネル構築システムは、この固結粘性土を粉砕する粉砕手段と、粉砕された粘性土とセメントとを混合する混合手段とを更に備えることが好ましい。粉砕された粘性土にセメントを配合して混合すると、セメントの造粒効果によって粒状の粘性土を得やすくなる。粒状の粘性土を注入材の調製に用いることにより、注入材の品質の均一化が図られる。
【0015】
また、本発明に係るトンネル構築システムは、分級手段によって粘性土の少なくとも一部が除去され、粘性土の含有量が低減された残りの掘削土の一部を、既設のセグメント内に搬送する搬送手段を更に備えることが好ましい。残りの掘削土の一部を既設のセグメント内に搬送することで、セグメント内に略平坦な底面などを敷設するインバート施工に掘削土を有効利用できる。その結果、建設汚泥として処分する掘削土の量をより一層削減できる。
【0016】
本発明に係るトンネル構築方法は、土圧式シールド掘進機が掘進して掘削孔を形成するとともに、掘削孔内にセグメントを配置する掘進工程と、土圧式シールド掘進機から排出される掘削土から粘性土を分離回収する分級工程と、掘削孔の壁面と掘削孔内に配置されたセグメントの外面との間の空間に、分離回収された粘性土を配合した注入材を注入する裏込め注入工程と、分級工程における処理によって粘性土の少なくとも一部が除去され、粘性土の含有量が低減された残りの掘削土の一部を、既設のセグメント内に搬送する搬送工程と、当該残りの掘削土の一部を敷詰め、既設のセグメント内に略平坦な底面を形成する底面敷設工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るトンネル構築方法によれば、シールドトンネルの掘削と同時に、本発明に係る上記裏込め注入方法を実施することができるとともに、既設のセグメント内に略平坦な底面を形成できる。本発明に係るトンネル構築方法においては、既設のセグメント内に略平坦な底面などを敷設するインバート施工に、粘性土が分離回収された後の残りの掘削土の一部を利用するため、建設汚泥として処分する掘削土の量をより一層削減できる。また、粘性土の含有量がされた当該残りの掘削土は、粘性土を分離回収前の掘削土と比較し、締め固めやすい点において、セグメント内における底面敷設用の土質材料として好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、裏込め注入材の原料費を節減できるとともに、建設汚泥として処分する掘削土の量を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(トンネル構築システム)
図1は、本実施形態に係るトンネル構築システム100が備える土圧式のシールド掘進機15を示す側断面図である。図2は、シールド掘進機15の後端部を拡大して示す側断面図である。
【0021】
図1に示すように、シールド掘進機15は外筒部1を備える。外筒部1の前端開口部の前方にはカッタヘッド2が設けられている。更に、外筒部1の前端部よりやや後方位置には仕切り板3が設けられている。
【0022】
カッタヘッド2は、その正面に多数のカッタビット2aを有している。カッタヘッド2は、モータ4によって回転させられる回転軸4aを介して仕切り板3に取り付けられている。回転軸4aが回転することによりカッタヘッド2が回転する。カッタヘッド2の回転によってカッタビット2aが地山を削り、掘削が行われる。
【0023】
仕切り板3は、外筒部1の前方開口部を塞ぐようにして配設され、外筒部1の先端部及びカッタヘッド2と共にカッタチャンバ5を形成する。土圧式のシールド掘進機15にあっては、掘進に伴って生じた掘削土をカッタチャンバ5内に充満させ、地山の土圧や地下水の水圧と略等しくなるようにカッタチャンバ5内の圧力を調整する。このことによって、外筒部1内に土砂や地下水が浸入することを阻止している。
【0024】
仕切り板3には添加剤注入管3aの先端が接続されており、この添加剤注入管3aを通じてカッタチャンバ5内の掘削土に各種の添加剤が添加される。また、仕切り板3の下方位置にはスクリューコンベア8の基端8aが接続されている。スクリューコンベア8は、基端8aから掘削土を取り込み、カッタチャンバ5内の掘削土を排出する。基端8aから取り込まれた掘削土は、ケーシング8b内を上方に移動し、先端8cからベルトコンベア9上に排出される。
【0025】
スクリューコンベア8の先端8cから排出された掘削土は、ベルトコンベア9によって後続台車に搬送される(図3参照)。後述の通り、後続台車における処理を経ることで、掘削土から分離回収された粘性土を配合した裏込め注入材が調製され、これがテールボイドに注入される。
【0026】
外筒部1の後部には、シールドジャッキ12が設けられている。シールドジャッキ12は、シールドジャッキロッド12a及びシールドジャッキシリンダ12bを備える。シールドジャッキロッド12aの先端は、組み立てられたセグメントSを押圧する。シールドジャッキロッド12aでセグメントSを押圧することにより、セグメントSに反力をとってシールド掘進機15を前進させる。
【0027】
外筒部1の後端部には、テールシール20が設けられている。テールシール20は、シールド掘進機15の後端部において、セグメントSとシールド掘進機15との間を止水している。テールシール20は、図2に示すように、1段目テールシール20aと、2段目テールシール20bと、3段目テールシール20cとを備えている。このうち、3段目テールシール20cが外筒部1の内側の最後端部に設けられており、外筒部1の内側におけるその前方に2段目テールシール20bが設けられ、外筒部1の内側における更にその前方に1段目テールシール20aが設けられている。後方に組み立てたセグメントSと外筒部1の内側とをテールシール20によって塞ぐことにより、外筒部1内への土砂や地下水の侵入を防止している。なお、本実施形態では、テールシール20は3段とされているが、テールシールの段数は3段でなく、1段、2段、あるいは4段以上である態様とすることもできる。
【0028】
セグメントSは、その内面から外面に向けて貫通する貫通孔S1を有しており、図2に示すように、この貫通孔S1を通じて、裏込め注入材UをセグメントSの外面と地山(掘削孔の壁面)との間の空間に注入できるようになっている。
【0029】
次に、図3〜6を参照しながら、本実施形態に係るトンネル構築システム100が備える分級手段、粉砕手段、混合手段及び裏込め注入手段について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係るトンネル構築システム100の好適な形態を示す模式断面図であり、すなわち、上記の分級手段や粉砕手段などを搭載した後続台車C1〜C5がトンネル30内におけるシールド掘進機15の後方に配置された状態を示す図である。図3に示すように、組み立てられたセグメントSで構成されるトンネル30内はインバート施工が施され、略平坦な底面30aが形成されている。第1の後続台車C1は、シールド掘進機15と連結部材(図示せず)で連結されている。これにより、シールド掘進機15の掘進に伴い、第1〜第5の後続台車は底面30aに設けられたレール上を前方に移動する。
【0031】
第1の後続台車C1は、ベルトコンベア9によって搬送された掘削土の一部から粘性土を分離回収するための分級機及びインバート施工用の土質材料を調製するための攪拌機などを備える。図4は、第1の後続台車C1に搭載するのに好適な装置を図示したものである。図4に示す分級機32は、グリズリーバーと呼ばれる簡易篩(分級手段)32aを有する。掘削土中に粘性土が塊状の固結粘性土M1として含まれているような場合は、簡易篩32aを使用することで、掘削土から固結粘性土M1を容易に分離回収できる。掘削土から分離された固結粘性土M1は、シュート32b及びベルトコンベア(図示せず)を介して第2の後続台車C2へと搬送される。
【0032】
他方、簡易篩32aによって固結粘性土M1が取り除かれ、粘性土の含有量が低減化された掘削土は、以下の処理を経ることでインバート施工用の土質材料M2となる。すなわち、簡易篩32aにおいて下方に落下した掘削土は、セメントフィーダ33から供給されるセメントが添加された後、攪拌機34によって改質処理が施されて土質材料M2となる。この土質材料M2は、スクリューコンベア35を通じてベルトコンベア(搬送手段)36の基端側まで搬送される。ベルトコンベア36は、トンネル30の先端方向に延びており、インバート施工が施されていない領域又はインバート施工中の領域に土質材料M2を搬送できるようになっている(図3参照)。
【0033】
第2の後続台車C2は、第1の後続台車C1からの固結粘性土M1を粉砕するための粉砕機などを備える。図5は、第2の後続台車C2に搭載するのに好適な装置を図示したものである。図5に示す破砕機42は、セメントフィーダ43から供給されるセメントと固結粘性土M1とを混合する回転ホッパ42aと、セメントと粘性土とを混和するとともに、固結粘性土M1を粉砕する解砕軸42b及びロータリハンマ42cとによって構成される。なお、第2の後続台車C2に搭載される上記装置は、固結粘性土M1の粉砕手段としての役割を果たすとともに、粘性土とセメントとの混合手段としての役割を果たすものである。
【0034】
第2の後続台車C2が備える破砕機42における処理を経ることで、粒状の粘性土を含む粘性土材料M3を得ることができる。この粘性土材料M3はベルトコンベア45を介して第3の後続台車C3へと搬送される。
【0035】
図6に示すように、第3の後続台車C3は、第2の後続台車C2からベルトコンベア45を通じて搬送された粘性土材料M3を貯留するホッパ52を備える。粘性土材料M3を一定量貯留しておくことで、例えば、シールド掘進機15が粘性土の含有率が低い層に進入し、掘削土から分離回収される粘性土の量が少なくなっても、一定期間は安定的に裏込め注入材を調製できるという利点がある。
【0036】
第4の後続台車C4は、第3の後続台車C3から搬送された粘性土材料M3を水と混合するミキサ62と、ミキサ62における処理を経て得られた粘性土含有液を貯留する貯留槽64とを備える。
【0037】
第5の後続台車C5は、裏込め注入材Uを調製する注入材調製槽72を備える。注入材調製槽72は、第4の後続台車C4の貯留槽64から配管L65を通じて移送された粘性土含有液を収容する。注入材調製槽72の粘性土含有液に固化材、助材及び安定材を配合することで、裏込め注入材UのA液が調製される。裏込め注入工の直前に塑強調整材を含有するB液をA液に添加することにより、最終的に裏込め注入材Uが得られる。
【0038】
第5の後続台車C5は、裏込め注入材Uを圧送するための裏込め注入設備(裏込め注入手段)75を更に備える。裏込め注入設備75は、移送ポンプ76と、これに接続されたホース77と、ホース77の先端に設けられたノズル78とを有する。ホース77は組み立て直後のセグメントSの位置にまで延びている(図3参照)。ノズル78は、セグメントSに設けられた貫通孔S1に差し込むことができるようになっている。ノズル78を貫通孔S1に差し込んだ状態で、移送ポンプ76を起動することで、テールボイドに裏込め注入材Uが注入される(図2参照)。
【0039】
(裏込め注入方法及びトンネル構築システム方法)
本実施形態に係るトンネル構築システム100によれば、シールド掘進機15による掘削孔の形成後、速やかに本発明に係る裏込め注入方法を実施できる。トンネル構築システム100によって実施される裏込め注入方法は、セグメントSの外面と地山との間の空間に掘削土から分離回収した粘性土が配合された裏込め注入材UをセグメントSの貫通孔S1を通じて注入する。なお、セグメントSの貫通孔S1から裏込め注入材を注入する方法は、一般に即時注入と呼ばれる。
【0040】
本実施形態に裏込め注入方法は、まず、掘削土から固結粘性土M1を分級機32の簡易篩32aを用いて分離回収する(分級工程)。次いで、この分級工程を経て得られた固結粘性土M1を破砕機42によって粉砕するとともに、セメントフィーダ43から供給されるセメントと粉砕された粘性土とを混合する(粉砕工程及び混合工程)。
【0041】
セメントフィーダ43から供給するセメントは、100質量部の固結粘性土M1に対して、2.5〜3.0質量部であることが好ましく、2.6〜2.8質量部であることが好ましい。上記範囲内の量のセメントを配合することで、セメントによる造粒効果が期待でき、粒状の粘性土を得やすくなる。なお、粒状の粘性土を予め調製し、これを裏込め注入材の調製に用いることにより、裏込め注入材の品質の均一化が図られるという利点がある。
【0042】
上記工程を経て得られた粘性土材料M3を使用し、第5の後続台車C5において裏込め注入材Uを最終的に調製する(注入材調製工程)。裏込め注入設備75が備えるノズル78をセグメントSの貫通孔S1に差し込んだ後、移送ポンプ76を起動してテールボイドに裏込め注入材Uを注入する(注入工程)。
【0043】
本実施形態に係るトンネル構築方法は、上記の裏込め注入方法が備える工程に加え、シールド掘進機15によって掘削孔を形成する掘進工程と、インバート施工用の土質材料M2をベルトコンベア36で既設のセグメントS内に搬送する搬送工程と、土質材料M2を敷詰め、転圧ローラなどを用いて既設のセグメントS内に略平坦な底面30aを形成する底面敷設工程とを更に備えたものである(図3参照)。
【0044】
本実施形態に係るトンネル構築システム100、並びに、これによる裏込め注入方法及びトンネル構築方法によれば、以下のような効果が奏される。すなわち、テールボイドに注入する裏込め注入材Uの原料の一部として、掘削土に含まれる固結粘性土M1を使用するため、同じ体積の注入材を市販の材料で調製する場合と比較し、注入材の原料費を節減できる。また、粘性土の配合量に相等する量の建設汚泥を削減できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、粘性土の含有量が低減化された土質材料M2を、ベルトコンベア36を介してインバート施工が施されていない領域又はインバート施工中の領域に搬送できる。底面30aを敷設するインバート施工に掘削土を原料とする土質材料M2を使用することで、建設汚泥として処分する掘削土の量をより一層削減できる。なお、土質材料M2は、シールド掘進機15から排出されたそのままの状態の掘削土と比較し、粘性土が低減化されているため、締め固めやすく、底面30aを敷設するための土質材料として好適である。
【0046】
更に、本実施形態によれば、掘削土から粘性土を分離回収し、これを用いて裏込め注入材Uを調製するという一連の工程を、掘削土を地上に搬出することなく、トンネル30内の後続台車にて行うことができる。その結果、分級工程及び注入材調製工程から注入工程までのサイクルを十分に短縮できるため、裏込め注入材Uの性能の低下が十分に抑制され、所望の性能を有する裏込め注入材Uをテールボイドに注入できる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、裏込め注入方法の種類として、裏込め注入材UをセグメントSの貫通孔S1からテールボイドに注入する方法(いわゆる即時注入)を例示したが、これの代わりに、裏込め注入材Uを外筒部1の後端部からテールボイドに注入する方法(いわゆる同時注入)を採用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、掘削土中に粘性土が固結粘性土M1として含まれ、簡易篩32aを使用して掘削土から粘性土を容易に分離回収する場合を例示したが、発生する掘削土中の粘性土が塊状に固結していない場合は、従来公知の分級方法を用いて掘削土から粘性土を分離すればよい。
【0049】
更に、上記実施形態においては、掘削土の処理を行う後続台車を5台備えたトンネル構築システム100を例示したが、後続台車の台数はトンネルの内径や掘削土の処理量に応じて適宜変更してもよい。
【0050】
<裏込め注入材の評価試験>
掘削土から分離回収した粘性土を用いて調製した注入材と、粘性土を用いずに調製した注入材とをそれぞれ準備し、各注入材の評価試験を行った。
【0051】
(実験例1)
表1に示す配合の裏込め注入材を調製した。なお、表1に記載の粘性土は、図4に示す分級機32と同様の構成の装置を用いて掘削土から固結粘性土を分離回収し、これを図5に示す破砕機42と同様の構成の装置を用いて処理したものである。また、表1に示す値は、本実験例で調製した裏込め注入材1m当たりの各原料の配合量を意味する。
【表1】

【0052】
(比較例1)
表2に示す配合の裏込め注入材を調製した。なお、表2に示す値は、本比較例で調製した裏込め注入材1m当たりの各原料の配合量を意味する。
【表2】

【0053】
<評価試験>
(1)Pロート流下時間
Pロート流下時間は、A液を被測定試料とし、土木学会基準JSCE−F521−1994「プレパックコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(Pロート法)」に準拠して測定した値である。
(2)密度
密度は、A液とB液とを混合した直後の裏込め注入材を被測定試料とするものである。
(3)ブリーディング率
ブリーディング率は、土木学会基準JSCE−F522「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋法)」に準拠して測定した値である。
(4)ゲルタイム
ゲルタイムは、内容積1.5Lのビーカー内において、1LのA液と所定量のB液とをハンドミキサーを用いて素早く混合し、混合直後からビーカーを傾けても流れ出さなくなるまでの時間を意味する。
(5)一軸圧縮強度
一軸圧縮強度は、A液とB液とを混合してから1時間後及び28日後の裏込め注入材を被測定試料とし、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した値である。
【表3】

【0054】
表1に示すように、実験例1の裏込め注入材は、1m当たり495kgの粘性土を含有する。粘性土材料M3の密度を1.7t/mとすると、実験例1の裏込め注入材1m当たり0.29mの粘性土が配合されている。この注入材を裏込め注入工において使用することで、粘性土を使用しない比較例1の注入材を使用する場合と比較し、上記配合量に相等する量の建設汚泥を削減できる。これに加え、粘性土を使用することで、表1及び表2に示す通り、裏込め注入材を調製するに際して一般に購入する原料(固化材、助材、安定材、塑強調整材)の使用量をいずれも節減することができる。
【0055】
また、表3に示す通り、粘性土を使用しない比較例1の注入材の評価結果と比較しても、実験例1の裏込め注入材は十分な性能を具備していることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るトンネル構築システムが備えるシールド掘進機の好適な形態を示す側断面図である。
【図2】図1に示すシールド掘進機の後端部を拡大して示す側断面図である。
【図3】本発明に係るトンネル構築システムの好適な形態を示す模式断面図である。
【図4】後続台車C1に搭載される装置の好適な形態を示す斜視図である。
【図5】後続台車C2に搭載される装置の好適な形態を示す斜視図である。
【図6】後続台車C3,C4,C5の好適な構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
15…土圧式シールド掘進機、30a…底面、32a…簡易篩(分級手段)、36…ベルトコンベア(搬送手段)、42…破砕機(粉砕手段、混合手段)、75…裏込め注入設備(裏込め注入手段)、100…トンネル構築システム、M1…固結粘性土、U…裏込め注入材、S…セグメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土圧式シールド掘進機によって掘削された掘削孔の壁面と、前記掘削孔内に設置されたセグメントの外面との間の空間に、前記土圧式シールド掘進機から排出される掘削土に含まれる粘性土を配合した注入材を注入することを特徴とする裏込め注入方法。
【請求項2】
前記掘削土から塊状の固結粘性土を分離回収する分級工程を備えることを特徴とする、請求項1に記載の裏込め注入方法。
【請求項3】
前記固結粘性土を粉砕する粉砕工程と、粉砕された粘性土とセメントとを混合する混合工程とを更に備えることを特徴とする、請求項2に記載の裏込め注入方法。
【請求項4】
地中を掘進して掘削孔を形成するとともに、前記掘削孔内にセグメントを配置する土圧式シールド掘進機と、
前記土圧式シールド掘進機から排出される掘削土から粘性土を分離回収する分級手段と、
前記掘削孔の壁面と、前記掘削孔内に設置されたセグメントの外面との間の空間に、前記粘性土を配合した注入材を注入する裏込め注入手段と、
を備えることを特徴とするトンネル構築システム。
【請求項5】
前記分級手段は、前記掘削土から塊状の固結粘性土を分離回収する篩であることを特徴とする、請求項4に記載のトンネル構築システム。
【請求項6】
前記固結粘性土を粉砕する粉砕手段と、粉砕された粘性土とセメントとを混合する混合手段とを更に備えることを特徴とする、請求項5に記載のトンネル構築システム。
【請求項7】
前記分級手段によって粘性土の少なくとも一部が除去され、粘性土の含有量が低減された残りの掘削土の一部を、既設のセグメント内に搬送する搬送手段を更に備えることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項記載のトンネル構築システム。
【請求項8】
土圧式シールド掘進機が掘進して掘削孔を形成するとともに、前記掘削孔内にセグメントを配置する掘進工程と、
前記土圧式シールド掘進機から排出される掘削土から粘性土を分離回収する分級工程と、
前記掘削孔の壁面と、前記掘削孔内に配置されたセグメントの外面との間の空間に、前記粘性土を配合した注入材を注入する裏込め注入工程と、
前記分級工程における処理によって粘性土の少なくとも一部が除去され、粘性土の含有量が低減された残りの掘削土の一部を、既設のセグメント内に搬送する搬送工程と、
前記残りの掘削土の一部を敷詰め、前記既設のセグメント内に略平坦な底面を形成する底面敷設工程と、
を備えることを特徴とするトンネル構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−185466(P2009−185466A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24248(P2008−24248)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】