説明

補体系タンパク質の高アフィニティー核酸リガンド

【課題】補体系タンパク質に対する高アフィニティー核酸リガンドを同定及び調製するための方法を提供する。
【解決手段】補体系タンパク質C1q、C3及びC5に対する高アフィニティー核酸リガンドを同定及び調製するための方法であり、SELEX法により同定されたC1q、C3及びC5に対する特定のRNAリガンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
補体系タンパク質に対する高アフィニティー核酸リガンドを同定し、調製するための方法が本明細書に記載される。このような核酸リガンドを同定するために本明細書において利用される方法は、Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment の頭文字をとってSELEXTMと呼ばれる。補体系タンパク質Clq,C3及びC5に対する高アフィニティー核酸リガンドを同定し、調製するための方法が本明細書に記載される。この発明は、Clq,C3及びC5の高アフィニティー核酸リガンドを含む。Clq,C3及びC5のRNAリガンドも開示される。補体系を阻害及び/又は活性化する核酸リガンドも開示される。本発明のオリゴヌクレオチドは医薬又は診断剤として役立つ。
【背景技術】
【0002】
補体系は、病原体の細胞外型を攻撃するための統制されたカスケードシステムにおいて一緒に機能する一組の少くとも20の血漿及び膜タンパク質を含む(Janeway ら(1994) Immunobiology : The Immune System in Health and Disease. Current Biology Ltd. San Francisco, pp. 8 : 35-8 : 55 ; Morgan (1995) Crit. Rev. in Clin Lab. Sci. 32 (3) : 265-298) 。2つの別個の酵素活性化カスケード、古典的経路及び別の経路、並びに膜攻撃経路として知られる非酵素的経路がある。
【0003】
古典的経路は、通常、外来粒子に結合した抗体により誘発される。それは、いくつかの成分、C1,C4,C2,C3及びC5(経路中の順番に従い列記)を含む。補体系の古典的経路の始まりは、免疫及び非免疫アクティベーターの両方による最初の補体成分(C1)の結合及び活性化の後におこる(Cooper (1985) Adv. Immunol. 37 : 151) 。C1は、成分Clq,Clr及びClsのカルシウム依存性複合体を含み、Clq成分の結合を介して活性化される。Clqは6つの同一のサブユニットを有し、各々のサブユニットは3つの鎖(A,B及びC鎖)を含む、各々の鎖はコラーゲン様テールに接続した球状ヘッド領域を有する。抗原−抗体複合体によるClqの結合及び活性化はClqヘッドグループ領域を介しておこる。タンパク質、細胞及び核酸を含む多数の非抗体Clqアクティベーター(Reidら(1993) The Natural Immune System : Humoral Factors. E. Sim. ed. IRL Press, Oxford, p. 151) はコラーゲン様ストーク領域上の別個の部位を介して結合し、活性化する。
【0004】
非抗体Clqタンパク質アクティベーターは、C−反応性タンパク質(CRP)(Jiang ら(1991) J. Immunol. 146 : 2324) 及び血清アミロイドタンパク質(SAP) (Briston ら(1986) Mol. Immunol. 23 : 1045)を含み;これらは各々リン脂質又は炭水化物への結合により凝集した時にClqを活性化するであろう。モノマーCRP又はSAPはClqを活性化しない。Clqは、アルツハイマー病に見られるプラークの成分である(Jiang ら(1994) J. Immunol. 152 : 5050 ; Eikelenboom and Stam (1982) Acta Neuropathol (Berl) 57 : 239 : Eikelenboom ら(1989) Virchows Arch. [B] 56 : 259 : Rogersら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 : 10016 : Dietzschold ら(1995) J. Neurol. Sci. 130 : 11) 凝集したアミロイドペプチド(Schultz ら(1994) Neurosci. Lett. 175 : 99 ; Snyder ら(1994) Exp. Neurol. 128 : 136) への結合を介しても活性化される。Clq活性化は、アルツハイマー病に関連する組織損傷も悪化させ得る。これらのアクティベーターは、イムノグロブリンアクティベーターが結合するヘッドグループ領域から離れたそのコラーゲン様領域上でClqに結合する。Clqコラーゲン様領域に結合する他のタンパク質は、コラーゲン(Menzelら(1981) Biochim. Biophys. Acta 670: 265) 、フィブロネクチン(Reidら(1984) Acta Pathol. Microbiol. Immunol. Scand. Sect. C92 (Suppl. 284) : 11)、ラミニン(Bohnsackら(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA82 : 3824) 、フィブリノーゲン及びフィブリン(Entwistle ら(1988) Biochem. 27 : 507), HIV rsgp41 (Stoiber ら(1995) Mol. Immunol. 32 : 371) 、アクチン(Nishiokaら(1982) Biochem. Biophys. Res. Communm. 108 : 1307) 及びタバコグリコプロテイン(Koetheら(1995) J. Immunol. 155 : 826)がある。
【0005】
Clqは、アニオン性炭水化物(Hughes-Jonesら(1978) Immunology 34 : 459)例えばコポリサッカライド(Almedaら(1983) J. Biol. Chem. 258 : 785) 、フカン(Blondin et al. (1994) Mol. Immunol. 31: 247) 、プロテオグンカン(Silvestri ら(1981) J. Biol. Chem. 256 : 7383)、並びに脂質、例えばリポポリサッカライド(LPS) (Zohairら(1989) Biochem. J. 257 : 865 ; Stoiber ら(1994) Eur. J. Immunol. 24 : 294)に結合し、それらによっても活性化され得る。両方のDNA (Schravendijk 及びDwek (1982) Mol. Immunol. 19 : 1179 ; Rosenberg ら(1988) J. Rheumatol 15 : 1091 ; Uwatokoら(1990) J. Immunol. 144 : 3484) 及びRNA (Acton et al. (1993) J. Biol. Chem. 268 : 3530) もClqに結合し、活性化することができる。Clqを活性化する細胞内成分には、細胞及び亜細胞膜(Linder (1981) J. Immunol. 126 : 648 : Pinckardら(1973) J. Immunol. 110 : 1376 ; Storrs ら(1981) J. Biol. Chem. 256 : 10924 ; Giclas ら(1979) J. Immunol. 122 : 146 ; Storrsら(1983) J. Immunol. 131 : 416)、中間フィラメント(Linder et al. (1979) Nature 278 : 176)及びアクチン(Nishiokaら(1982) Biochem. Biophys. Res. Commun. 108 : 1307)がある。これらの相互作用全てが細菌(又はウィルス)感染に対する保護のため、又は抗体の欠如下での組織損害に対する応答として(Liら(1994) J. Immunol. 152 : 2995) 古典的経路を補充するであろう。
【0006】
CRP (Jiangら(1991) J. Immunol. 146 : 2324), SAP (Yingら(1993) J. Immunol. 150 : 169)、アミロイドペプチド(Newman (1994) Curr. Biol. 4 : 462)及びDNA (Jiangら(1992) J. Biol. Chem. 267 : 25597) を含む非抗体アクティベーターのための部位は、Clq A鎖のアミノ末端の残基14〜26に局在化している。この配列を含む合成ペプチドは結合及び活性化の両方を有効に阻害する。ペプチド14〜26はいくつかの塩基性残基を含み、ヘパリン結合モチーフの1つに適合する(Yabkowitz ら(1989) J. Biol. Chem. 264: 10888 ; Cardin ら(1989) Arteriosclerosis 9 : 21)。そのペプチドは、コラーゲン・テールを有するアセチルコリンエステラーゼ内のペプチド145〜156とも高度に相同性であり;この部位はヘパリン−スルフェート基底膜結合に関連している(Deprezら(1995) J. Biol. Chem. 270 : 11043) 。残基76〜92の第2のClq A鎖部位もより弱い結合に関連し得;この部位は球状ヘッド領域及びコラーゲン様テールの連結部にある。
【0007】
別の経路として知られる第2の酵素活性化カスケードは、補体系活性化及び増幅のための迅速な抗体と独立した経路である。その別の経路はいくつかの成分、C3、因子及び因子Dを含む。別の経路の活性化はC3のタンパク質分解開裂型であるC3bが細菌のような活性化表面に結合する時におこる。次に因子BがC3bに結合し、そして因子Dにより開裂されて活性化酵素Baを生成する。次に酵素Baはより多くのC3をC3bに開裂し、その活性化表面上のC3b−Ba複合体を更に析出させる。第2のC3bが析出してC3b−C3b−Ba複合体を形成した時、その酵素は、次にC5を開裂して末端経路の活性化を誘発する。
【0008】
膜攻撃経路としても知られる非酵素的末端経路は、成分C5,C6,C7,C8及びC9を含む。この膜攻撃経路の活性化は、C5成分が古典的又は別の経路により酵素的に開裂されて小さなC5aポリペプチド(9kDa )及び大きなC5bフラグメント(200kDa )を作り出す時におこる。C5aポリペプチドは白血球上に元来、ある7つの膜貫通Gタンパク質連結レセプターに結合し、肝細胞(Havilandら(1995) J. Immunol. 154 : 1861) 及びニューロン(Gasqueら(1997) Am. J. Pathol. 150 : 31)を含む種々の組織上で発現されることが知られている。C5a分子はヒト補体系の最初の走化性成分であり、白血球走化性、平滑筋収縮、細胞内シグナル伝達経路の活性化、好中球−内皮接着(Mulliganら(1997) J. Immunol. 158 : 1857) 、サイトカイン及び脂質遊離及び酸化体形成を含む種々の生物応答を誘発し得る。大きな方のC5bフラグメントは逐次的により後の成分に結合してC5b−9膜攻撃複合体(MAC)を形成する。C5b−9MACは赤血球を直接溶解し、より大量に、白血球を溶解し、筋肉、上皮及び内皮細胞のような組織に損傷を与える(Stahl ら(1997) Circ. Res. 76 : 575)。半溶解量において、MACは接着分子の上昇制御を刺激し、細胞内カルシウムは増加し、そしてサイトカインが遊離する(Ward (1996) Am. J. Pathol. 149 : 1079)。更に、C5b−9MACは、細胞溶解を引きおこすことなく内皮細胞及び血小板のような細胞を刺激することができる。C5a及びC5b−9MACの非溶解効果は時折、極めて小さい。
【0009】
補体系は細菌及びウィルス感染に対する防御において並びにおそらく腫瘍に対する免疫サーベイランスにおいて重要な役割を有する。これは、補体成分に欠損があるヒトにおいて最も明らかに証明される。早期補体(C1,C4,C2又はC3)を欠損している個体は再発性の感染を患うが、後期補体(C5〜C9)に欠損がある個体はニッセリア(nisseria)感染に対して感受性である。補体古典的経路は抗体により、CRP又はSAPの結合により、又はLPSを介する直接の活性化により細菌上で活性化される。補体の別の経路はC3の細胞コートへの結合を介して活性化される。補体は、抗体を介してウィルスにより活性化され、ウィルスに感染した細胞上でも活性化され得る。なぜならこれらは外来物として認識されるからである。同様に、形質転換された細胞は。外来物として認識され得、補体系により溶解されるか、又は免疫クリアランスのための標的とされ得る。
【0010】
補体系の活性化は、治療目的のために用いることができ、そして用いられている。次に、腫瘍細胞に対して作られた抗体は補体系を活性化し腫瘍拒絶を引きおこすのに用いられている。補体系は、不要なリンパ球を除去するためにポリクローナル又はモノクローナル抗体と一緒に用いられている。例えば、抗リンパ球グルブリン又はモノクローナル抗T細胞抗体は、さもなければ拒絶を媒介するであろうリンパ球を除去するために器官移植の前に用いられる。
【0011】
補体系は健康のメンテナンスにおいて重要な役割を有しているが、それは病気を引きおこし又はそれに関与し得る。補体系は多数の腎臓、リウマチ学、神経学、皮膚科学、血液学、血管/肺、アレルギー、感染、生体適合性/ショック及び他の病気又は状態に関与している(Morgan (1995) Crit. Rev. in Clin Lab. Sci. 32 (3) : 265-298 : Matis 及びRollins (1995) Nature Madicine 1 (8) : 839-842) 。補体系は必ずしもその病状の唯一の原因ではないが、病因に関与するいくつかの因子の1つであり得る。
【0012】
補体系を生体内で阻害するいくつかの医薬が開発されているが、多くは毒性を引きおこすか又は弱いインヒビターである(Morgan (1995) Crit. Rev. in Clin Lab. Sci. 32 (3) : 265-298)。ヘパリン、K76COOH及びナファムスタット(nafamstat)メシレートは動物研究において有効であることが示されている(Morgan (1995) Crit. Rev. in Clin Lab. Sci. 32 (3) : 265-298)。補体系の天然のインヒビターの組換え型が開発され、考慮中であり、これらは、膜調節タンパク質補体レセプター1(CR1)、ディケイ加速因子(DAF)、膜補因子(MCP)及びCD59を含む。
【0013】
C5は、補体系インヒビターの開発のための注目すべき標的である。なぜなら古典的及び別の経路は補体C5に収束するからである(Matis 及びRollins (1995) Nature Medicine 1 (8) : 839-842) 。更に、C5開裂の阻害は白血球及び組織、例えば内皮細胞へのC5a及びC5b効果の両方をブロックし(Ward (1996) Am. J. Pathol. 149 : 1079)、これによりC5阻害は種々の病気及び状態、例えば肺の炎症(Mulliganら(1998) J. Clin. Invest. 98 : 503)、体外補体活性化(Rinderら(1995) Rinderら(1995) J. Clin. Invest : 1564) 又は抗体媒介性補体活性化(Biesecker ら(1989) J. Immunol. 142 : 2654) において治療的利益を有し得る。Matis 及びRollins ((1995) Nature Medicine 1 (8) : 839-842)は、抗炎症生物医薬としてC5特異的モノクローナル抗体を開発した。C5a及びMACは、両方とも、ヒトの病気に関連した急性及び慢性炎症に関連しており、それらの病状における役割は動物モデルにおいて確認されている。C5aは補体−及び好中球依存性肺血管傷害のために要求され(Ward (1997) J. Lab. Clin. Med. 129 : 400 ; Mulligan ら(1998) J. Clin. Invest. 98 : 503)、ショック及び火傷における好中球及び血小板活性化と関連する(Schmidら(1997) Shock 8 : 119 ) MACは、急性自己免疫重症筋無力症における筋肉傷害(Biescker及びGomez (1989) J. Immunol. 142: 2654)、移植における器官拒絶(Baldwin ら(1995) Transplantation 59 : 797 ; Brauer ら(1995) Transplantation 59 : 288 ; Takahashiら(1997) Immunol. Res. 16 : 273) 及び自己免疫系球体腎炎における腎傷害(Biesecker (1981) J. Exp. Med. 39 : 1979 ; Nangaku (1997) Kidney Int. 52 : 1570) を媒介する。C5a及びMACの両方は急性心筋虚血(Homeister 及びLucchesi (1994) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 34 : 17) 、急性(Bednarら(1997) J. Neurosurg. 86 : 139) 及び慢性CNS傷害(Morgan (1997) Exp. Clin. Immunogenet. 14 : 19)、体外循環の間の白血球活性化(Sun ら(1995) Nucleic Acids Res. 23 : 2909 ; Spycher及びNydegger (1995) Infushionsther. Transfusionsmed. 22 : 36) に、並びに関節炎及び狼瘡を含む自己免疫病に関連する組織傷害に関連する。これにより、C5の阻害開裂は、補体系の2つの潜在的損傷活性化の形成を防ぐ。C5a遊離の阻害は主要補体系走化及び血管作動活性を除去し、C5b形成の阻害は細胞溶解C5b−9MACのアセンブリーをブロックする。更に、C5の阻害は、完全な重要な補体系防御及びクリアランスメカニズム、例えばC3及びClq食細胞活性、免疫複合体のクリアランス及び先天的な免疫応答を残しながら補体系による傷害を防ぐ(Carrol (1998) Amm. Rev. Immunol. 16 : 545)。
【0014】
C3は、それは両方の経路に共通しているので、補体系インヒビターの開発のための注目すべき標的である。天然のインヒビターの組換え型を用いるC3の阻害(Kalli ら(1994) Springer Semin. Immunopathol. 15: 417) は細胞媒介性組織傷害も防ぐことができ(Mulliganら(1992) J. Immunol. 148 : 1479) これは、心筋梗塞(Weisman ら(1990) Science 249 : 146)及び肝臓虚血/再灌流(Chavez-Cartayaら(1995) Transplantation 59: 1047)のような病気において治療的利益を有することが示されている。C3の制御は補体系のほとんどの生物活性を限定する。DAF,MCP,CRI及び因子Hを含むほとんどの天然のインヒビターはC3を標的とする。
【0015】
SELEXTM 標的分子の高度に特異的な結合を伴う核酸分子の試験管内進化のための方法が開発されている。この方法、SELEX法と呼ばれるSystematic Evolution of Ligands by Exponentiol enrichment は、現在、放棄された、“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment ”とのタイトルの1990年6月11日に出願された米国特許通し番号07/536,428号;“Nucleic Acid Ligands”とのタイトルの1991年6月10日に出願された米国特許出願通し番号07/714,131号、現在米国特許第5,475,096号;“Method for Identifying Nucleic Acid Ligands ”とのタイトルの1992年8月17日に出願された米国特許出願通し番号07/931,473号、現在の米国特許第5,270,163号(WO91/19813も参照のこと)に記載される。これら各々はその全体において引用により組み込まれる。SELEX特許出願として本明細書に集合的に言及されるこれらの出願の各々はいずれの要求される標的分子に対する核酸リガンドを作るための根本的に新規な方法を記載する。
【0016】
SELEX法は、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択、並びに同じ一般的選択スキームを用いる結合、分画及び増幅の段階的くり返しにより結合アフィニティー及び選択の本質的にいずれの要求される基準も達成することに関する。好ましくはランダム配列のセグメントを含む、核酸の混合物から出発して、SELEX法は、その混合物を標的に結合のために好ましい条件下で接触させ、標的分子に特異的に結合したこれらの核酸から未結合の核酸を分画し、その核酸−標的複合体を解離させ、核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して核酸のリガンドの豊富な混合物を作り出し、次に標的分子に対する高い特異的の高アフィニティーの核酸リガンドを作り出すために要求されるのと同じ程度のサイクルを介して結合、分画、解離及び増幅のステップを再びくり返すことを含む。
【0017】
基本的なSELEX法は、いくつかの特定の目的を達成するために改良されている。例えば、現在、放棄された“Method for Selecting Nucleic Acids on Basis of Structure”とのタイトルの1992年10月14日に出願された米国特許出願通し番号07/960,093号は、ベントDNAのような特定の構造的特徴を有する核酸分子を選択するためのゲル電気泳動と合わせたSELEX法の使用を記載する。現在、放棄された“Photoselection of Nucleic Acid Ligands”とのタイトルの1993年9月17日に出願された米国特許出願通し番号08/123,935号(米国特許第5,763,177号も参照のこと)は、標的分子に結合し及び/又はそれに光架橋し及び/又はそれを光不活性化することができる光反応性基を含む核酸リガンドを選択するためのSELEXベースの方法を記載する。現在、放棄された“High-Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffeine”とのタイトルの1993年10月7日に出願された米国特許出願通し番号08/134,028号(米国特許第5,580,737号も参照のこと)は、Counter−SELEXと呼ばれる、密接に関連する分子間を識別することができる高度に特異的な核酸リガンドを同定するための方法を記載する。現在放棄された“Systemic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment : Solution SELEX”とのタイトルの1993年10月25日に出願された米国特許出願通し番号08/143,564号(米国特許第5,567,588号も参照のこと)及び“Flow Cell SELEX ”とのタイトルの1997年1月31日に出願された米国特許出願通し番号08/792,075号、現在の米国特許第5,861,254号は、標的分子について高い及び低いアフィニティーを有するオリゴヌクレオチド間を極めて有効に分画するSELEXベースの方法を記載する。“Nucleic Acid Ligands to HIV-RT及びHIV-1 Rev ”とのタイトルの1992年10月21日に出願された米国特許出願通し番号07/964,624号、現在、米国特許第5,496,938号は、SELEX法を行った後に改良された核酸リガンドを得るための方法を記載する。“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Errichment : Chemi-SELEX ”とのタイトルの1995年3月8日に出願された米国特許出願通し番号08/400,440号は、リガンドをその標的に共有結合させるための方法を記載する。
【0018】
SELEX法は、リガンドに生体内安定性の改良又はデリバリー特性の改良のような改良された特徴を与える改良されたヌクレオチドを含む高アフィニティー核酸リガンドの同定を含む。このような改変の例には、リバース及び/又はホスフェート及び/又は塩基位置での化学的置換がある。改良されたヌクレオチドを含むSELEXで同定された核酸リガンドは、ピリミジンの5−及び2′−位で化学的に改変されたヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドを記載する現在、放棄された、“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Moditied Nucleotides”とのタイトルの1993年9月8日に出願された米国特許出願通し番号08/117,991(米国特許第5,660,985号も参照のこと)に記載される。米国特許出願通し番号08/134,028号、現在米国特許第5,580,737号、前掲は、2′−アミノ(2′−NH2 )、2′−フルオロ(2′−F)、及び/又は2′−O−メチル(2′−OMe)で改変された1又は複数のヌクレオチドを含む高度に特異的な核酸リガンドを記載する。現在、放棄された“Novel Method of Preparation of Known and Novel 2′Moditied Nucleosides by Intramotecular Nucleophilic Displacement”とのタイトルの1994年6月22日に出願された米国特許出願通し番号08/264,029号は、種々の2′−改変ピリミジンを含むオリゴヌクレオチドを記載する。
【0019】
SELEX法は、“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment : Chimeric SELEX”とのタイトルの1994年8月2日に出願された米国特許出願通し番号08/284,063号、現在米国特許第5,637,459号、及び“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment : Blended SELEX ”とのタイトルの1994年4月28日に出願された米国特許出願通し番号08/234,997号、現在米国特許第5,683,867号に各々記載されるように、所定のオリゴヌクレオチドを、他の所定のオリゴヌクレオチド及び非オリゴヌクレオチド機能単位と組み合わせることを含む。これらの出願は、他の分子の要求される特性と共に、オリゴヌクレオチドの広範囲の形状及び他の特性、並びに効率的な増幅及び複製特性の組合せを許容する。基本的SELEX法の改変を記載する上述の特許出願の各々はそれらの全体において本明細書に引用により組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、補体系タンパク質及び相同タンパク質に対する核酸リガンドを同定及び製造する方法並びにこれにより同定され及び製造された核酸リガンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、補体系タンパク質及び相同タンパク質に対する核酸リガンドを同定及び製造する方法並びにこれにより同定され及び製造された核酸リガンドを含む。相同性タンパク質とは、80%又はそれ超のアミノ酸同一性の程度を意味する。典型例は、Clq,C3及びC5に対する核酸リガンドを同定及び製造する方法並びにこれにより製造された核酸リガンドである。Clq,C3及びC5に特異的に結合することができる核酸リガンド配列を供する。特に、Clq,C3及びC5に特異的に結合することができるRNA配列を供する。表2〜6,8,10及び12〜13並びに図5A〜B(配列番号:5〜155及び160〜196)に示されるRNAリガンド配列が特に本発明に含まれる。補体系のタンパク質の機能を阻害する核酸リガンドも本発明に含まれる。特に、Clq,C3及びC5の機能を阻害するRNAリガンドが本発明に含まれる。補体系を阻害及び/又は活性化する核酸リガンドも含まれる。
【0022】
更に、補体系タンパク質に対する核酸リガンド及び核酸リガンド配列を同定する方法であって、(a)核酸の候補混合物を調製し、(b)その核酸の候補混合物を補体系タンパク質に接触させ、(c)その補体系タンパク質に対するアフィニティーに基づいてその候補混合物のメンバー間を分画し、そして(d)その所定の分子を増幅して、補体系タンパク質への結合について比較的高いアフィニティーを有する核酸配列について豊富な核酸の混合物を作り出すことを含む方法が本発明に含まれる。
【0023】
Clq,C3及びC5に対する核酸リガンド及び核酸リガンド配列を同定する方法であって、(a)核酸の候補混合物を調製し、(b)核酸の候補混合物をClq,C3及びC5に接触させ(c)Clq,C3又はC5に対するアフィニティーに基づいて候補混合物のメンバー間を分画し、そして(d)所定の分子を増幅してClq,C3又はC5への結合について比較的高いアフィニティーを有する核酸配列が豊富な核酸の混合物を作り出すことを含む方法も包含する。
【0024】
より詳しくは、本発明は、上述の方法に従って同定されたClq,C3及びC5に対するRNAリガンド、例えばClqに対するRNAリガンド、例えば表2(配列番号:5〜20)及び表6(配列番号:84〜155)に示すリガンド、C3に対するRNAリガンド、例えば表3(配列番号:21〜46)に示す配列、並びにC5に対するRNAリガンド、例えば表4(配列番号:47〜74)、表5(配列番号:76〜83)、表8(配列番号:75,160〜162)、表10(配列番号:163〜189)、表12(配列番号:190〜192)、表13(配列番号:194〜196)及び図5A〜B(配列番号:160及び193)に示す配列を含む。所定のリガンドのいずれかに実質的に相同であり、かつClq,C3又はC5に結合する実質的に同じ能力を有し、Clq,C3又はC5の機能を阻害するClq,C3及びC5に対するRNAリガンドを含む。本明細書に供されるリガンドと実質的に同じ構造形態を有し、かつClq,C3又はC5と実質的に同じ能力を有しClq,C3又はC5の機能を阻害するClq,C3及びC5に対する核酸リガンドが更に本発明に含まれる。
【0025】
本発明は、本明細書において同定されるRNAリガンドに基づく改変ヌクレオチド配列及びその混合物も含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ヒトC5に対する2′−F RNAリガンドC12(配列番号:59)、A6(配列番号:48)、K7(配列番号:50)、C9(配列番号:58)、E5c(配列番号:47)及びF8(配列番号:49)を抗体でコートしたヒト赤血球及び全ヒト血清とインキュベートしたインキュベーションアッセイの結果を示す。結果は、光字密度対リガンドの濃度(nM)として供する。
【図2】クローンC6(配列番号:51)の濃度の関数としてのC5a生成の割合1%)を示す。
【図3】図3Aは、アルカリ加水分解又はT1 ヌクレアーゼでの消化後の5′−キナーゼ標識化クローンC6(配列番号:51)のシーケンシングゲルを示す。3′−配列(5′−末端標識化)をアルカリ加水分解ラダーでアラインする。左側はT1 ラダーで右側はC5の5×及び1×濃度で選択したRNAである。塩基の除去が結合を排除する境界を矢印で示す。アスタリスクはT1 に対して超高感度であるGを示す。図3Bは、アルカリ加水分解又はT1 ヌクレアーゼでの消化後の3′−pCp−連結化クローンC6のシーケンシングゲルを示す。5′配列(3′−末端標識化)はアルカリ加水分解ラダーでアラインする。T1 及びタンパク質レーン、境界及び超高感度Gヌクレオチドは図3Aについて記載されるのと同じである。
【図4】2′−O−メチルインターフェレンスアッセイの結果を示す。2′−OHプリンを2′−O−メチルで置換することができる位置は、結合インターフェレンスから決定した。直線的曲線適合で(タンパク質により選択されたバンドの強度)/(タンパク質により選択されなかったオリゴヌクレオチドについてのバンド強度)の比をプロットする(白ぬき円)。混合した2′−OH:2′−OMeヌクレオチドについての同じ比をもつプロットする(黒ぬき円)。
【図5A】別の塩基と一緒に、クローンC6(配列番号:51)の38mer トランケート(配列番号:160)の予想される構造を示す。
【図5B】クローンC6(配列番号:51)の38mer トランケート(配列番号:193)の2′−O−メチル置換パターンを示す。2′−OMe置換を行うことができる位置をボールドで示す。2′−OHでなければならない位置を下線で示す。
【図6】2′−OMe置換のない(配列番号:194;白ぬき円)、位置20に2′−OMe置換のある(配列番号:195;黒ぬり三角)並びに位置2,7,8,13,14,15,20,21,22,26,27,28,36及び38に2′−OMe置換のある(配列番号:196;黒ぬり円)クローンYL−13(配列番号:175)の38mer トランケートについての核酸リガンドの濃度(μm)に対する溶血の割合(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願は、SELEXとして知られる方法に全般的に同定された補体系タンパク質に対する核酸リガンドを記載する。上述の通り、SELEX技術は、全体が引用により本明細書に組み込まれるSELEX特許出願に詳細に記載される。本発明を記述するために用いる特定の用語を以下に定義する。
【0028】
本明細書に用いる“核酸リガンド”は、標的に対して要求される作用を有する非天然核酸である。要求される作用には、これらに限らないが、標的への結合、標的の触媒的変化、標的又は標的の機能的活性を改変/変化する様式での標的との反応、自殺インヒビターとしての標的への共有結合、並びに標的と他の分子との間反応の容易化がある。好ましい実施形態において、要求される作用は標的分子への特異的結合であり、ここでその標的分子はワトソン/クリック塩基対又は三本鎖ヘリックス結合に主に依存するメカニズムを介して核酸リガンドに結合するポリヌクレオチド以外の三次元化学構造であり、ここでその核酸リガンドは標的分子に結合する周知の生理的機能を有する核酸ではない。核酸リガンドには、核酸の候補混合物から同定された核酸があり、ここでその核酸リガンドは、候補混合物を標的と混合し、ここでその候補混合物に対して標的に対する増加されたアフィニティーを有する核酸を候補混合物の残りから分画することができ;b)その増加されたアフィニティーの核酸を候補混合物の残りから分画し;そしてc)増加したアフィニティーの核酸を増幅してリガンドの豊富な核酸、混合物を作り出すことを含む方法による所定の標的のリガンドである。
【0029】
“候補混合物”は、要求されるリガンドをそこが選択する異なる配列の核酸の混合物である。候補混合物のソースは、天然の核酸又はそのフラグメント、化学的に合成された核酸、酵素的に合成された核酸又は先の技術の組合せにより作られた核酸からのものであってよい。好ましい実施形態において、各々の核酸は、増幅過程を容易にするためにランダム領域の周囲の固定された配列を有する。
【0030】
“核酸”は、DNA、RNA、一本鎖又は二本鎖並びにそれらのいずれかの化学的改変物を意味する。改変には、これらに限らないが、更なる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、及びフラクショナリティーを核酸リガンド塩基に又は全体としての核酸リガンドに与える別の化学基を供するものがある。このような改変には、これらに限らないが、2′−位糖の改変、5−位ピリミジンの改変、8−位プリンの改変、環外アミンの改変、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ又は5−イオドーウラシルの置換、骨格改変、メチル化、異常な塩基対の組合せ、例えばイソベース、イソシチジン及びイソグアニジン等がある。改変は、キャッピングのような3′及び5′改変も含み得る。
【0031】
“SELEXTM”法は、要求される様式で標的と相互作用する。例えばタンパク質に結合する核酸リガンドの選択の、これらの選択された核酸の増幅との組合せに関する。選択/増幅ステップの反復サイクルは、極めて多数の核酸を含むプールからの標的と最も強く相互作用する1つの又は少数の核酸の選択を許容する。選択/増幅手順のサイクルは、選択された目的が達成されるまで続けられる。本発明においてSELEX法は、Clq,C3及びC5に対する核酸リガンドを得るために用いられる。SELEX法は、SELEX特許出願に記載される。
【0032】
“標的”は、リガンドが要求される関心のいずれかの化合物又は分子を意味する。標的にこれらに限らないが、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ポリサッカライド、グリコプロテイン、ホルモン、レセプター、抗原、抗体、ウィルス、基質、代謝物、遷移状態アナログ、補因子、インヒビター、薬剤、染料、栄養素、成長因子等であり得る。この適用において、標的は、補体系タンパク質、好ましくはClq,C3及びC5である。
【0033】
“補体系タンパク質”は、これらに限らないが、Cl,Clq,Clr,Cls,C2,C3,C3a,C3b,C4,C4a,C5,C5a,C5b,C6,C7,C8,C9、因子B(B)、因子D(D)、因子H(H)及びそれらのレセプター、並びに他の可溶性及び膜インヒビター/調節タンパク質を含む、補体系のいずれかのタンパク質又は成分を意味する。
【0034】
“補体系”は、病原体又は感染もしくは形質転換された細胞の細胞外型を攻撃するために統制されたカスケードシステムにおいて、並びに免疫反応物又は細胞デブリスのクリアランスにおいて一緒に機能する一組の血漿及び膜タンパク質である。補体系は、特定の病原体上で自発的に又は病原体への抗体結合により活性化することができる。病原体は摂取及び破壊のために(オプソニン処理された)補体系タンパク質でコートされる。病原体は、直接、溶解され殺され得る。同様のメカニズムは、感染した、形質転換された、又は損傷した細胞を標的にする。補体系は、免疫及び細胞デブリスのクリアランスにも寄与する。
【0035】
SELEX法は、現在、放棄された“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment ”とのタイトルの1990年6月11日に出願された米国特許出願通し番号07/536,428;“Nucleic Acid Ligands”とのタイトルの1991年6月10日に出願された米国特許出願通し番号07/714,131、現在、米国特許第5,475,096号;“Methods for Indenifyins Nucleic Acid Ligands”とのタイトルの1992年8月17日に出願された米国特許出願通し番号07/931,473号、現在米国特許第5,270,163号(WO91/19813も参照のこと)に記載される。これらの出願は、各々引用により本明細書に組み込まれ、SELEX特許出願と集合的に呼ぶ。
【0036】
その最も基本的な形態において、SELEX法は、以下の一連のステップにより定義することができる: 1)異なる配列の核酸の候補配列を調製する。その候補混合物は、一般に、混合配列の領域(即ち候補混合物の各々は同じ位置に同じ配列を含む)及びランダム配列の領域を含む。その固定された配列領域は、(a)以下に記載の増幅ステップを補助するため、(b)標的に結合することが知られている配列に擬態させるため、又は(c)候補混合物中の核酸の所定の構造的配置の濃度を増加させるために選択される。ランダム配列は、全体的にランダムであっても(即ちいずれの位置での塩基を見い出す確率も4分の1である)、又は部分的にのみランダムであっても(例えばいずれかの位置で塩基を見い出す確率は、0〜100%のいずれかのレベルで選択することができる)。
【0037】
2)候補混合物を、選択された標的に、標的と候補混合物との間の結合のためにも好ましい条件下で接触させる。これらの環境下で、標的と候補混合物との間の相互作用は、標的とその標的のために最も強いアフィニティーを有する核酸との間の核酸−標的対を形成するとして考えることができる。
3)標的について最も高いアフィニティーを有する核酸を標的に対して小さいアフィニティーの核酸から分画する。最も高いアフィニティーの核酸に相当する極めて小数の配列(及びおそらく唯一の分子の核酸)のみが候補混合物中に存在するので、候補混合物中の有意な量の核酸(約5〜50%)が分画の間、保存されるように分画基準を設定することが一般に要求される。
【0038】
4)次に、標的に対して相対的に高いアフィニティーを有するとして分画の間に選択された核酸を増幅して、標的に対して相対的に高いアフィニティーを有する核酸が豊富な新しい候補混合物を作り出す。
5)上述の分画及び増幅ステップをくり返すことにより、新しく形成された候補混合物は、次第に弱く結合する配列が少くない、標的に対する核酸のアフィニティーの平均の程度は一般に増加するであろう。最高では、SELEX法は、標的分子に対して最も高いアフィニティーを有するもとの候補混合物から、これらの核酸を示す1又は小数の特有の核酸を含む候補混合物を作り出すであろう。
【0039】
SELEX特許出願は、かなり詳細にこの方法を記述し、詳述する。この方法に用いることができる標的;候補混合物内の核酸を分画するための方法;及び富化された候補混合物を作り出すための分画された核酸を増幅するための方法が含まれる。SELEX特許出願は、タンパク質が核酸結合タンパク質である、及びそうでない両方のタンパク質標的を含む、得られるリガンドからいくつかの標的種までも記述する。
【0040】
SELEX法は、選択された核酸リガンドを、“Nucleic Acid Ligand Complexes ”とのタイトルの1995年3月4日に出願された米国特許出願第08/434,465号、現在、米国特許第5,859,228号に記載されるように、診断又は治療用複合体において脂溶性又は非免疫学的高分子量化合物と組み合わせることを更に含む。診断用又は治療用複合体におけるジアシルグリセロール又はジアルキルグリセロールのような脂溶性化合物と会合するVEGF核酸リガンドは、“Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) Nucleic Acid Ligand Complexes ”とのタイトルの1996年10月25日に出願された米国特許出願通し番号08/739,109に記載される。グリセロール脂質のような脂溶性化合物、又はポリアルキレングリコールのような非免疫学的高分子量化合物と会合するVEGF核酸リガンドは、更に、“Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) Nucleic Acid Ligand Complexes ”とのタイトルの1997年7月21日に出願された米国特許出願通し番号08/897,351号に記載される。非免疫学的高分子量化合物又は脂溶性化合物と会合するVEGF核酸リガンドは、更に、“Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) Nucleic Acid Ligand Complexes ”とのタイトルの1997年10月17日に出願されたPCT/US97/18994にも記載される。基本的なSELEX法の改変を記述する上述の特許出願の各々はその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0041】
本発明の特定の実施形態は、非免疫原性高分子量化合物又は脂溶性化合物に共有結合した補体系タンパク質に対する1又は複数の核酸リガンドを含む複合体を供する。本明細書に用いる複合体は、補体系タンパク質の核酸リガンドの、非免疫原性高分子量化合物への共有結合により形成された分子を記述する。非免疫原性高分子量化合物は、典型的には免疫原性応答を形成しない、約100Da〜1,000,000Da、より好ましくは約1000Da〜500,000Da、最も好ましくは約1000Da〜200,000Daの化合物である。本発明の目的のため、免疫原性応答は、生物に抗体タンパク質を作らせるものである。本発明の1つの好ましい実施形態において非免疫原性高分子化合物はポリアルキレングリコールである。最も好ましい実施形態において、ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコール(PEG)である。より好ましくは、PEGは約10〜80Kの分子量を有する。最も好ましくは、PEGは約20〜45Kの分子量を有する。本発明の特定の実施形態において、非免疫原性高分子量化合物は核酸リガンドでもあり得る。
【0042】
本発明の別の実施形態は、補体系タンパク質に対する核酸リガンド及び脂溶性化合物から構成される複合体に関する。脂溶性化合物は、脂質、及び/又は脂溶性成分から実質的に構成される構造を含む、低い誘電率の他の材料又は相と会合し又はそれに分画される特性を有する化合物である。脂溶性化合物には、脂質及び脂質(及び/又は低誘電率の他の材料又は相)と会合する特性を有する非脂質含有化合物がある。コレステロール、リン脂質、及びグリセロール脂質、例えばジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール及びグリセロールアミド脂質は脂溶性化合物の更なる例である。好ましい実施形態において、脂溶性化合物はグリセロール脂質である。
【0043】
非免疫原性高分子量化合物又は脂溶性化合物は、補体系タンパク質に対する核酸リガンドの種々の位置に、例えば塩基上の環外アミノ基、ピリミジンヌクレオチドの5′−位、プリンヌクレオチドの8−位、ホスフェートのヒドロキシル基、又は補体系タンパク質に対する核酸リガンドの5′又は3′末端のヒドロキシル基又は他の基に共有結合することができる。脂溶性化合物がグリセロール脂質であり、又は非免疫原性高分子量化合物がポリアルキレングリコール又はポリエチレングリコールである実施形態において、好ましくは、非免疫原性高分子量化合物はそのホスフェート基の5′又は3′ヒドロキシルに結合する。最も好ましい実施形態において脂溶性化合物又は非免疫原性高分子量化合物は核酸リガンドのホスフェート基の5′ヒドロキシルに結合する。非免疫原性高分子量化合物又は脂溶性化合物の、補体系タンパク質の核酸リガンドへの結合は、直接、又はリンカー又はスペーサーを利用して、行うことができる。
【0044】
リンカーは、共有結合又は非共有結合相互作用を介して2又はそれ超の分子を接続する分子であり、1又は複数の分子の機能的特性を保護する様式で分子の空間的分離を許容し得る。リンカーは、スペーサーと呼ぶこともできる。
【0045】
補体系タンパク質に対する核酸リガンド及び非免疫原性高分子量化合物又は脂溶性化合物は、脂質構成物と更に会合させることができる。脂質構成物は、脂質が水性懸濁液に適合することが知られている種々の異なる構造的配置を含む、脂質、リン脂質、又はそれらの誘導体を含む構造である。これらの構造は、これらに限らないが、脂質二層ベシクル、ミセル、リポソーム、エマルション、脂質リボン又はシートを含み、医薬として許容されることが知られている種々の薬剤及び成分と複合化することができる。好ましい実施形態において、脂質構成物はリポソームである。好ましいリポソームはユニラメラであり、200nm未満の相対的サイズを有する。脂質構成物中の一般的な付加成分には、とりわけ、コレステロール及びα−トコフェロールがある。脂質構成物は、単独で又はいずれかの組合せで用いることができ、それは、当業者が特定の適用のために要求される特徴を供することを認めるであろう。更に、脂質構成物及びリポソーム形成の技術的態様は当該技術分野で公知であり、その分野で一般に実施される方法のいずれも本発明のために用いることができる。
【0046】
本明細書に記載される方法及びこの方法により同定される核酸リガンドは、治療及び診断の両方の目的のために役立つ。治療的使用には、ヒト患者の病気又は医学的状態、特に補体系の活性化により引きおこされる病気又は状態の治療又は予防がある。補体系は病状の唯一の原因である必要はないが、その各々が病因に関与するいくつかの因子の1つであり得る。このように病気又は状態には、これらに限らないが、腎臓病、例えばループス腎炎及び膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、膜性腎炎、IgAニューロパシー;リウマチ学的病気、例えば慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス(SLE)、ベーチェット症候群、若年性関節リウマチ、シェーグレン症候群及び全身性硬化症;神経学的病気、例えば重症筋無力症、多発性硬化症;脳狼瘡、ギラン・バレー症候群及びアルツハイマー病;皮膚科学的病気、例えば天疱瘡/類天疱瘡、植物毒素反応、脈管炎及び火傷;血液学的病気、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、酸性化血清溶解テスト陽性の遺伝性赤芽球性多核性(HEMPAS)及び特発性血小板性紫斑症(ITP);生物適合性/ショック疾患、例えばバイパス後症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、カテーテル反応、過敏症、移植拒絶、子癇前症、血液透析及び血小板ストレージ;脈管/肺疾患、例えばアテローム性動脈硬化、心筋梗塞、発作及び再灌流傷害;アレルギー、例えば過敏症、ぜんそく及び皮膚反応;感染、例えば敗血症性ショック、ウィルス感染及び細菌感染;並びに他の状態、例えばアテローム、腸の炎症、甲状腺炎、不妊症、発作性夜間血色素尿症(PNH)及び溶血性貧血を含む。
【0047】
補体系は、異なる構成物を標的にすることにより活性化カスケードにおいていくつかの点で阻害することができる。Clqの阻害は、抗体又は非抗体メカニズムによりその開始をブロックするであろう。抗体は、SLE、重症筋無力症及び関節炎を含む多くの症病気においてClqを活性化する。非抗体補体系活性化は、アルツハイマー病、心筋梗塞及び敗血症性ショックを含む多くの病気においておこる。Clqのブロックは、これらの病気において補体が媒介する組織損傷を防ぎ得る。
【0048】
補体は、C3段階で直接、抗体の欠如下でも活性化され得る。細菌、ウィルス粒子又は損傷した細胞を含む活性化表面は、Clqを要求しない補体系活性化を誘発し得る。C3のインヒビターは、補体系活性化及びこれらの状態での損傷を防ぎ得る。
【0049】
他の例において、C5の阻害が最も役立つ。Clq又はC3による補体系の活性化は両方ともC5の活性化を導き、これによりC5の阻害はいずれかの経路による補体系媒介損傷を防ぐ。しかしながら、Clq及びC3は微生物に対する通常の防御において及び免疫成分及び損傷した組織のクリアランスにおいて重要であるが、C5はこの機能についてほとんど重要でない。それゆえ、C5は、短期間又は長期間、阻害することができ、補体系の保護的役割は傷つけられないであろうが、Clq又はC3の長期の阻害は要求されない。最後に、C5フラグメントC5a及びC5bは、直接、不要な補体系活性化に関連する組織傷害及び病気の大部分を引きおこす。それゆえ、C5の阻害は治療的利益を得る最も直接的方法である。
【0050】
他の例において、補体系の活性化はヒト患者の病気又は医学的状態の治療又は予防において要求される。例えば、補体系の活性化は細菌又はウィルス感染及び悪性腫瘍の治療に要求される。更に、移植前のT細胞上での補体系の活性化は、拒絶を媒介するT細胞を排除することにより器官又は組織の拒絶を防ぎ得る。
【0051】
更に、細胞表面標的に結合する核酸リガンドは、それらに補体系を活性化する能力を与えることにより、より有効になり得る。次に、核酸結合は、例えば膜攻撃複合体溶解及びオプソニン化を介する細胞クリアランスにより、標的機能を阻害し、細胞を除去する。核酸リガンドは古典的な又は別の経路を介して補体系を活性化することができる。Clq核酸リガンドは、細胞表面成分を標的とする他の構造にコンジュゲートすることができる。例えば、Clq核酸リガンドは、細胞標的に対する抗体、サイトカイン、成長因子又は細胞レセプターに対するリガンドにコンジュゲートすることができる。これは、Clq核酸リガンドが標的の細胞表面上で多量化し、補体系を活性化してそれにより細胞を殺すのを許容するであろう。
【0052】
原型の古典的経路のアクティベーターは免疫凝集物であり、それは、Clq成分上の球状ヘッドグループへの結合を介して補体系を活性化する。一般に、2又はそれ超のFcドメインのClqへの結合が要求され;5量体IgMは特に有効なアクティベーターである。対照的に、核酸リガンドはClqコラーゲン様テール領域上の別個の部位への結合を介して活性化することができる。この部位は、C−反応性タンパク質、血清アミロイドタンパク質、エンドトキシン、アミロイドペプチド1−40及びミトコンドリア膜を含む種々の他の非抗体アクティベーターにも結合する。イムノグロブリンに関して、これらの非抗体アクティベーターは、活性化するために多量体化することが必要である。
【0053】
Clqのコラーゲン様領域上の部位に結合する核酸リガンドも、凝集した時にアクティベーターになり得る。このような補体系活性化凝集物は、それが細胞表面上に形成されたなら、例えば腫瘍特異的抗原(TSA)又は白血球抗原に結合したなら、溶解し得る。核酸リガンドが媒介する活性化の程度は、核酸リガンド凝集(即ち核酸リガンド−Clq相互作用の多量化)の程度と共に増加する。補体系が媒介する殺害は、核酸リガンドが活性でないモノマーとして循環するなら特に特異的であるが、それらが標的の細胞表面上で多量体化した時に、アクティベーターになる。
【0054】
いずれの補体系活性化についても、程度及び特異性は、標的となる細胞上に析出したC3の量により決定される。析出したC3は、C5を開裂し膜攻撃複合体形成を開始する酵素コンバターゼを形成する。C3は食細胞消化を標的とするための古典的な血清オプソニンでもある。原型の別の経路のアクティベーターは、細菌及びイースト細胞壁、フコイジン及びSepharose、又はグリコプロテイン、例えばエンドトキシン又は糖衣を含む反復炭水化物単位である。核酸リガンドは、細胞表面上のC3成分を凝集させることにより別の経路を活性化し得る。C3を細胞上におくことは因子B結合及び別の経路C3コンベルターゼ形成を促進する。C3への核酸リガンドの結合は、インヒビターHの結合をブロックし、C3bディケイを防ぐ。これは、C3コンバターゼ形成及び別の経路の活性化も増加させるであろう。C3に対する核酸リガンドはこの活性を有し得る。なぜならヘパリンは活性化C3に結合し、別の経路活性化を促進し得るからである。核酸リガンドのC3への結合は膜関連インヒビターCR1,CR2,MCP及びDAFのC3への結合をブロックし、C3bコンベルターゼディケイを防ぎ、別の経路の活性化を刺激する。この別の経路のメカニズムは、細胞殺害及び溶解におけるClq依存性活性化と同程度、効率的であり得る。
【0055】
核酸リガンド媒介補体系細胞殺害は、いくつかの方法で、例えばa)腫瘍細胞の直接の殺害;b)標的の微生物又は感染した細胞の溶解;及びc)リンパ球又はリンパ球サブセットの排除により、用いることができる。核酸リガンドは、これらの目的のために現在、用いられる抗体に置きかわり得る。
【0056】
診断的利用は、生体内又は試験管診断適用の両方を含み得る。一般に、SELEX法及び特に本明細書に教示され、クレームされるSELEX法の特定の適用は、特に診断的適用のために適している。SELEX法は、高アフィニティーで及び驚くべき特異性で標的に結合することができる核酸リガンドを同定する。もちろん、これらの特徴は、当業者が診断用リガンドにおいて見い出すであろう要求される特性である。
【0057】
本発明の核酸リガンドは、当業者が用いるいくつかの技術に従って診断目的のために慣用的に適合させることができる。診断剤は、使用者が特定の場所又は濃度で所定の標的の存在を同定するのを許容し得ることだけを必要とする。同様に、標的と結合対を形成する能力は診断目的のための陽性シグナルを誘発するのに十分であり得る。当業者は、このようなリガンドの存在を追跡するために、標的タグを組み込むために当該技術分野で周知の手順によりいずれの核酸リガンドも適合させることができよう。このようなタグは、いくつかの診断手順に用いることができる。本明細書に記載されるClq,C3及びC5に対する核酸リガンドは、Clq,C3又はC5タンパク質の同定のために、特に用いることができる。
【0058】
SELEX法は、標的分子の高アフィニティーリガンドを供する。これは、核酸調査の分野で前例のないまれなことである。本発明は、そのSELEX法を、補体系活性化の古典的経路の最初の成分(C1)の一部である特定の標的Clqに、古典的及び別の経路の両方の一部である特定の標的C3に、及び末端経路の一部である特定の標的C5に適用する。以下の実施例セクションにおいて、Clq,C3及びC5に対する核酸リガンドを単離及び同定するために用いる実験パラメーターが記載される。
【0059】
医薬として用いるために要求される核酸を製造するために、核酸リガンドは(1)標的上で要求される効果を達成することができる様式で標的に結合し;(2)要求される効果を得るために出来る限り小さく;(3)出来る限り安定で;及び(4)選択された標的に対して特異的なリガンドであることが好ましい。ほとんどの場合において、核酸リガンドは標的に対して最も高い可能なアフィニティーを有することが好ましい。
【0060】
これらに限らないが、小さな分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、及びポリペプチドを含む医薬剤は、要求されない様式で補体系を活性化し得る。補体系タンパク質に対する核酸リガンドは、医薬剤が補体系を活性化する不要な副作用を誘発することなく投与され、治療に有効な量を達成するように、補体系を一般的に阻害することにより予防剤として用いることができよう。
【0061】
同時係属の同じ譲渡人の米国特許出願通し番号07/964,624号(1992年10月21日出願)、現在、米国出願第5,496,938号( '938特許)においては、SELEXを行った後に改良された核酸リガンドを得るための方法が記載される。“Nucleic Acid Ligands to HIV-RT及びHIV-1 Rev ”とのタイトルの '938特許は、特に、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明において、SELEX実験は、30又は50のランダムを位置(30N又は50N)を含む縮重ライブラリーからClq,C3及びC5について特異的な高アフィニティーのRNAを同定するために、行った。本発明は、実施例2及び6に記載される方法により同定した表2(配列番号:5〜20)及び表6(配列番号:84〜155)に示すClqに対する特定のRNAリガンド、実施例3に記載される方法により同定された、表3(配列番号:21〜46)に示すC31に対する特定のRNAリガンド、並びに実施例4,9,10及び11に記載される方法により同定された、表4(配列番号:47〜74)、表5(配列番号:76〜83)、表8(配列番号:75,160〜162)、表10(配列番号:163〜189)、表12(配列番号:190〜192)、表13(配列番号:194〜196)及び図5A〜B(配列番号:160及び193)に示すC5に対する特定のRNAリガンドを含む。本発明は、更に、Clq,C3及びC5の機能を阻害するClq,C3及びC5に対するRNAリガンドを含む。本発明により包含されるリガンドの範囲は、SELEX法により同定された、修飾された及び修飾されないClq,C3及びC5の全ての核酸リガンドを含む。より詳しくは、本発明は、表2〜6,8,10及び12〜13並びに図5A〜B(配列番号:5〜155及び160〜196)に示すリガンドに実質的に相同である核酸配列を含む。実質的に相同とは、70%超、より好ましくは80%超、更により好ましくは90%、95%又は99%超の一次配列相同性の程度を意味する。本明細書に記載される相同性のパーセンテージは、アラインメントを補助するために10ヌクレオチドの長さ中に1のギャップを導入することができる時に比較した配列中の同一のヌクレオチド残基でアラインする2つの配列のうちの小さい方において見い出されるヌクレオチドのパーセンテージとして計算される。表2(配列番号:5〜20)及び表6(配列番号:84〜155)に示すClqのリガンドの配列相同性の報告は、ほとんど又は全く一次相同性がない配列が、Clqに結合する実質的に同じ能力を有し得ることを示す。同様に、表3(配列番号:21〜46)に示すC3のリガンドの配列相同性の報告は、ほとんど又は全く一次相同性がない配列が、C3に結合する実質的に同じ能力を有し得ることを示す。同様に、表4(配列番号:47〜74)、表5(配列番号:76〜83)、表8(配列番号:75,160〜161)、表10(配列番号:163〜189)、表12(配列番号:190〜192)、表13(配列番号:194〜196)及び図5A〜B(配列番号:160及び193)に示すC5のリガンドの配列相同性の報告は、ほとんど又は全く一次相同性がない配列が、C5に結合する実質的に同じ能力を有し得ることを示す。これらの理由のため、本発明は、表2(配列番号:5〜20)及び表6(配列番号:84〜155)に示す核酸リガンドと実質的に同じ構造及びClqに結合する能力を有する核酸リガンド、表3(配列番号:21〜46)に示す核酸リガンドと実質的に同じ構造及びC3に結合する能力を有する核酸リガンド並びに表4(配列番号:47〜74)、表5(配列番号:76〜83)、表8(配列番号:75,160〜162)、表10(配列番号:163〜189)、表12(配列番号:190〜192)、表13(配列番号:194〜196)及び図5A〜B(配列番号:160及び193)に示す核酸リガンドと実質的に同じ構造及びC5に結合する能力を有する核酸リガンドも含む。Clq,C3又はC5に結合する実質的に同じ能力とは、そのアフィニティーが本明細書に記載されるリガンドのアフィニティーの1又は2オーダーの倍率以内であることを意味する。本明細書に特に記載される配列と実質的に相同である所定の配列がClq,C3又はC5に結合する実質的に同じ能力を有するか否かを決定することは当業者に公知である。
【0063】
本発明は、実質的に同じ仮定される構造又は構造モチーフを有する核酸リガンドも含む。実質的に同じ構造又は構造モチーフは、Zukepfoldプログラム(Zucker (1989) Science 244 : 48-52 ) を用いて配列アラインメントにより仮定することができる。当該技術分野で知られているように、二次構造及び構造モチーフを予測するために他のコンピュータープログラムを用いることができる。溶液中の又は結合構造としての核酸リガンドの実質的に同じ構造又は構造モチーフも、当該技術分野で知られているであろうように、NMR又は他の技術を用いて仮定することができる。
【0064】
核酸の治療、予防及び生体内診断での使用において出くわす1つの潜在的な問題は、ホスホジエステル型のオリゴヌクレオチドが、要求される効果が顕在化する前にエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼのような細胞内及び細胞外酵素により体液中で迅速に分解され得ることである。核酸リガンドの特定の化学的改変を行って核酸リガンドの生体内安定性を増加させ又は核酸リガンドのデリバリーを媒介することができる。例えば、全体が引用により本明細書に組み込まれる、現在、放棄された、“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containins Modified Nucleotides”とのタイトルの1993年9月8日に出願された米国特許出願通し番号08/117,991号(米国出願第5,660,985も参照のこと)及び“Nucleic Acid Ligand Compliexes”とのタイトルの1995年3月4日に出願された米国特許出願通し番号08/434,465号を参照のこと。本発明に考慮される核酸リガンドの改変は、これらに限らないが、付加的な電荷、極性、疎水性、水素結合、静電相互作用、及びフラクショナリティーを核酸リガンド塩基又は核酸リガンド全体に組み込む別の化学基を供するものを含む。このような改変は、これらに限らないが、2′−位糖の改変、5−位ピリミジンの改変、8−位プリンの改変、環外アミンでの改変、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ又は5−イオドーウラシルの置換、骨格の改変、ホスホロチオエート又はアルキルホスフェートの改変、メチル化、異常な塩基対の組合せ、例えばイソベースイソシチジン及びイソグアニジン等を含む。改変は、キャッピングのような3′及び5′改変も含み得る。
【0065】
核酸リガンドがSELEX法により得られる場合、改変は、SELEX前又は後の改変であり得る。SELEX前改変は、それらのSELEX標的についての特異性及び改良された生体内安定性の両方を有する核酸リガンドを作り出す。2′−OH核酸リガンドに行うSELEX後改変は核酸リガンドの結合能力に逆に作用することなく生体内安定性を改善する。本発明の核酸リガンドの好ましい改変は、5′及び3′ホスホロチオエートキャッピング及び/又は3′端の3′−3′逆ホスホジエステル結合である。1つの好ましい実施形態において、核酸リガンドの好ましい改変は、3′端における3′−3′逆ホスホジエステル結合である。ヌクレオチドのいくつか又は全ての更なる2′−フルオロ(2′−F)及び/又は2′−アミノ(2′−NH2 )及び/又は2′−O−メチル(2′−OMe)改変が好ましい。2′−NH2 改変され2′−F改変されてSELEX法に組み込まれた核酸リガンドが本明細書に記載される。SELEX後改変において2′−OMeプリンを含むよう改変されたSELEX法由来の2′−F改変核酸リガンドが更に本明細書に記載される。
【0066】
他の改変は当業者に知られている。このような改変は、SELEX後(先に同定された非改変リガンドの改変)に、SELEX法への組込みにより行うことができる。
上述の通り、Clq,C3及びC5に選択的に結合する能力のため、本明細書に記載されるClq,C3及びC5に対する核酸リガンドは医薬として役立つ。それゆえ、本発明は、補体系タンパク質又は相同性タンパク質に結合することができる核酸リガンドの投与により補体系が媒介する疾患を治療するための方法も含む。特定の病気又は状態、例えばアルツハイマー病又は心筋梗塞はコラーゲン様領域を介してClqを活性化する。アルツハイマー病において、β−アミロイドはClqを活性化する。中間フィラメント、ミトコンドリア膜又はアクチンのような心筋梗塞の間にさらされた心筋中の構造はClqを活性化する。C3又はC5に対する核酸リガンドは、補体系が抗体もしくは非抗体メカニズムによりClqを介して、又は別の経路を介してClqと独立して活性化されるか否かにかかわらず、アルツハイマー病又は心筋梗塞における補体系活性化も阻害し得る。これにより、本発明の核酸リガンドは、アルツハイマー病又は心筋梗塞を治療するのに役立ち得る。
【0067】
核酸リガンドの治療用組成物は、注入により非経口的に投与することができる。但し、他の有効な投与形態、例えば動脈内注入、吸入ミスト、経口活性製剤、経皮イオン導入又は坐剤も想像される。1つの好ましい担体は、生理食塩水であるが、他の医薬として許容される担体も用いることができると考えられる。1つの好ましい実施形態において、担体及び核酸リガンドは生理学的に適合するゆっくり放出する製剤(徐放性製剤)を構成すると考えられる。このような担体中の主な溶媒は天然で水性又は非水性であり得る。更に、担体は、pH、オスモル濃度、粘度、透明さ、色、滅菌性、溶解の比率、又は製剤のにおいを改良し又は維持するための他の薬理的に許容される賦形剤を含み得る。同様に、担体は、リガンドの安定性、溶解の比率、遊離又は吸収を改良し又は維持するための他の薬理的に許容される賦形剤を含み得る。このような賦形剤は、単位投与又は多重投与形態における非経口的投与のための投与量を調剤するために通常及び慣用的に用いられる物質である。
【0068】
治療用組成物が調剤された後、それは、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体又は脱水もしくは凍結乾燥粉末として滅菌容器内に保存することができる。このような製剤は、直ちに用いる形態で又は投与直前に再構成を要求する形態で保存することができる。全身デリバリーのための核酸リガンドを含む製剤を投与する様式は、皮下、筋内、静脈内、鼻内又は膣もしくは直腸坐剤を介してであり得る。
【0069】
以下の例は、本発明を説明し、詳述するために供され、本発明を限定することを意図しない。これらの例は、Clq,C3及びC5に対する高アフィニティーRNAリガンドを同定するためのSELEX法の使用を記述する。実施例は、実施例2,3,4及び6に用いる種々の材料及び実験手順を記載する。実施例2は、Clqに対する2′−NH2 RNAリガンドの生成を記載する。実施例3は、補体系タンパク質C3の2′−F核酸リガンドの生体を記載する。実施例4は、補体系タンパク質C5の2′−F核酸リガンドの生成を記載する。実施例5は、Clqリガンドを介しての補体系の活性化を記載する。実施例6は、Clqに対する2′−F RNAの形成を記載する。実施例7は、C5に対する2′−F RNAリガンドについての血液溶解性阻害のためのアッセイを記載する。実施例8は、ヒトC5に対する核酸リガンド(クローンC6)によるC5a放出の阻害についてのアッセイを記載する。実施例9は、ヒトC5に対する核酸リガンドについての最小結合配列を決定するために行った境界実験を記載する。実施例10は、テンプレートにおけるランダム配列としてクローンC6の42mer トランケート配列を用いて、核酸リガンドアフィニティーを改良するために行ったBiased SELEX実験を記載する。実施例11は、インターフェレンスアッセイにおいてヒトC5核酸リガンドにおける2′−OMeプリン置換の結果を記載する。実施例12は、ヒトC5に対する核酸リガンドの38mer ・トランケートの構造を記載する。実施例13は、ヒトC5に対する2′−OMeプリン置換化核酸リガンドの血液溶解アッセイを記載する。
【実施例】
【0070】
実施例1.実験手順 この例は、Clqに対する2′−NH2 及び2′−F RNAリガンド並びにC3及びC5に対する2′−Fリガンドの同定のための実施例2,3,4及び6に従い、それに組み込まれる一般的な手順を供する。
【0071】
A.生化学品 Clq,C3,C5及びC4欠失モルモット血清は、Quidel(San Diego, CA ) から得た。ウシ血清アルブミン(BSA)、ウサギ抗BSA,CRP,SAP及びアミロイドペプチド1〜40及び1〜42は、Sigma(St. Louis, MO ) から得た。ヌクレオチドGTP,ATP、及びデオキシヌクレオチドは、Pharmacia(Uppsala, Sweden ) から得た。TaqポリメラーゼはPerkin−Elmer(Normalk, CT ) から得た。改変ヌクレオチド2′−NH2 −CTP及び2′−NH2 −UTP、並びに2′−F−CTP及び2′−F−UTPはJellinekら(1995) Riochem. 34 : 11363 に記載されるように調製した。トリ逆転写酵素はLife Science (St. Petersburg. FL) から、T7 RNAポリメラーゼはUSB(Cleveland, OH )から得た。ニトロセルロースフィルターはMillipore(Bedford, MA )から得た。全ての化学物質は利用できる最も高いグレードであった。
【0072】
B.RNA SELEX法 SELEX法はSELEX特許出願(Jellinekら(1995) Biochem. 34 : 11363 : Jellinekら(1994) Biochem. 33 : 10450 も参照のこと)に詳細に記載されている。要約すると、DNAテンプレートを、T7プロモーターを含む5′−固定化領域、次にランダム配列の30N又は50Nストレッチ、及び次に3′−固定化領域で合成した(表1;配列番号:1及び156)。初回のSELEX法のために、1nモル(約1014ユニーク配列)のRNA(表1;配列番号:2及び157)を、混合GTP/ATP及び2′−NH2 −CTP(UTP又は2′−F−CTP/UTPヌクレオチドを用いて、α−〔32P〕−ATPを加えて、T7ポリメラーゼ(Milliganら(1987) Nucleic Acids Res. 12 : 785 ) により試験管内で転写した。SELEX法のこの及び次の回のために、RNAを、7M尿素、10mM Tris−Borate,2mM EDTA,pH8.3ランニング緩衝液で8%アクリルアミドゲルでの電気泳動により精製した。オートラジオグラフィーの後、標識された改変RNA転写物を含むバンドを切り出し、−70℃に凍結し、次に400μLの100mM NaCl,2mM EDTAを加え、そのゲルをつぶして、そのスラリーを2cmのガラス−ウール(Rnase-free-Alltech Associate, Deerfield, IL )及び2つのニトロセルロースフィルターを介して回転させた。そのRNAを、115容量の6.6M NH2 OAc,pH7.7+2容量のエタノールを加えることにより沈殿させた。そのペレットを80%エタノールで2回、洗い、乾燥させた。その乾燥RNAペレットを、1mM MgCl2 を含むリン酸緩衝塩類溶液(MgPBS)(Sambrookら(1988) Molecular Cloning. A laboratory Marual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY )に溶かした。
【0073】
SELEX法の各々の回について、RNAをClq,C3又はC5と、MgPBS中で、10分、37℃でインキュベートした。次にそのサンプルを43mmニトロセルロースフィルターを介してろ過し、そのフィルターを10mLのMgPBSで洗った。いくつかの回について、その希釈したRNAを一晩、ニトロセルロースフィルターと共に予め浸漬し、バックグラウンドを減少させた。各々のサンプルについて結合Kdを測定するために、RNA及びClq,C3又はC5の両方の(結合を測定するために適切な範囲にあるよう選択した)より少い量で、ほとんどの回について平行して4つのサンプルを走らせた。更に、各々の回において、バックグラウンドを決定するために、RNAのサンプルをタンパク質なしでろ過した。
【0074】
フィルターを空気乾燥させ、ストリップにスライスし、そして次に60分、37℃で、400μLの1%SDS,0.5mg/mLプロティナーゼK(Boehringer Mannheim, Indianapolis IN) 、1.5mM DTT,10mM EDTA,0.1M Tirs.pH7.5で、40μgのtRNA担体を加えて抽出した。RNA水溶液をフェノール、フェノール/クロロホルム(1:1)、及びクロロホルムで抽出し、次に上述の通りNH4 OAc/EtOHを加えた後に沈殿させた。RNAを1時間〜一晩、50μLの容量で逆転写させた。そのDNAを、特定のプライマー(表1;配列番号:3〜4)で、500μLの容量で12〜14サイクルでPCR増幅し、次にフェノール/クロロホルム抽出し、NaOAc/EtoH沈殿させた。そのDNAペレットをH2 Oにとり、アリコートを、SELEX法の次の回のためにT7転写した。
【0075】
C.クローニング 12回目及び14回目からのDNAを、クローニングを容易にするために連結部位も含むプライマーで増幅した。そのDNAをpUC9ベクターにクローン化し、そしてコロニーと、一晩の成長及びプラスミドmini−preps(PERFECTprep, 5′-3′, Boulder, CO )について採取した。精製したプラスミドを(上述のように)もとの5′及び3′プライマーでPCR増幅し、産物をアガロースゲル電気泳動(Sambrookら(1989) Molecular Clonibng. A laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) により分析したDNAを、α−〔32P〕−ATPでT7転写して結合分析のために放射能標識RNAを調製し、阻害研究のために放射能標識なしでRNAを調製した。
【0076】
D.シーケンシング PERFECTprepキットを用いて精製したプラスミドを、ABI dRhoclamine Terminator cyclingキット(Perkin−Elmer)で配列決定した。サンプルを、ABI Prism 377DNA Sequencerで配列決定した。
【0077】
E.結合アッセイ 個々のクローン化DNAをα−〔32P〕−ATPでT7転写し、全長の〔32P〕−2′−NH2 −RNA又は2′−F−RNAを(上述の通り)ゲルで精製した。RNAを30μLサンプル(<10pM)当り約5,000cpm で懸濁し、アリコートを37℃で10分、MgPBS中種々の濃度のClq,C3又はC5インキュベートした。次に、サンプルをニトロセルロースを介してろ過し、そのフィルターを緩衝液で洗い、赤外線ランプ下で乾燥させ、シンチレーション液(Ecoscint A, National Diagnosis, Atlanta, GA )を加えてカウントした。RNAのバックグラウンドサンプルを平行して走らせた。Clqに結合するリガンドの阻害を測定するために、RNA核酸リガンド+Clq+インヒビター(例えばA−鎖残基14〜26部位、SAP、β−アミロイドペプチド(RP)を37℃で10分、インキュベートし、次にろ過した。フィルターを洗ってカウントした。
【0078】
Clqに結合するRNAリガンドを、Clqヘッドグループへのリガンドの結合をブロックするであろう免疫−複合体の存在下でも測定した。免疫複合体(IL)は、620μgのBSAを、等量で、1mLのウサギ抗−BSA(Sigrna, St. Louis. MO )+1%最終濃度まで加えたPEG8000と混合し、次にサンプルを4℃で一晩、インキュベートした。そのICを、10分、12,000rpm でのマイクロフェーゲーションによりペレット化し、PBSで5回、洗い、そして1mLのMgPBSに懸濁した。Clq−免疫複合体(Clq−IC)に結合するClq RNAクローンの測定のため、20μLの精製〔32P〕−RNA+20μLのICをMgPBS+1% Triton中10-11 〜10-7Mの種々の濃度で20μLのClqと混合した。サンプルを30分、室温でインキュベートし、遠心し、そしてそのペレット及び上清をカウントした。
【0079】
F.溶血アッセイ 補体系消費を記載(Gaither ら(1974) J. Immunol. 113 : 574 ) されるように、C4溶血アッセイにより測定した。全てのサンプルを希釈し、アッセイを、カルシウム、マグネシウム及び1%ゼラチンを含むベロナール緩衝塩類溶液(GVB++−補体系緩衝液)で行った。β−アミロイドペプチドによるC4消費の測定のために、ペプチドを、250μg/mLで、全ヒト血清の118希釈まで加え、次に37℃で60分、インキュベートした。次にそのサンプルをC4溶血活性のアッセイのために希釈した。Clq 2′−NH2 −RNAクローンによるβ−アミロイドペプチドが媒介する補体消費の阻害のアッセイのために、Clq RNA核酸リガンドを最初のβ−アミロイドペプチド−全ヒト血清インキュベーション混合物中でインキュベートし、次に上述の通りC4の量をアッセイした。
【0080】
C5核酸リガンドによる補体系阻害を、ヒト血清及び抗体をコートしたヒツジ赤血球を用いて測定した。赤血球は、新しいヒト血清の1:40希釈物と、及びC5リガンドの連続希釈物と、37℃で30分、インキュベートした。血清及びリガンドの希釈物は、補体緩衝液(先の段落を参照のこと)中に作った。インキュベーションの後、サンプルを、EDTAを含む4℃緩衝液で希釈して反応を停止させ、ヘモグロビン遊離量を412nmの光学密度から定量した。
【0081】
実施例2.Clqに対する2′−NH2 RNAリガンド A.RNA SELEX 2.3μMのKdでニトロセルロースフィルターアッセイによりClqに結合したランダム50N 7−2′−NH2 RNAのプール。SELEX法の1回目について、Clq濃度は0.156〜1.25μMであり、RNA濃度は15μMであった。SELEX法の間、RNA濃度をClqの濃度より約10倍大きく維持し、それを136pMの最終回14Clq濃度で各々の回で減少させた。RNAのニトロセルロースフィルターへのバックグラウンド結合はSELEX法を通じて低く維持した。これは、部分的には、RNAがニトロセルロース膜に予め吸着したからである。プールRNAのClqへの結合は各々の回で改善した。進展した14回目のプール2′−NH2 RNAはKd=670pMでClqに結合し、3400倍の結合Kdの全体の改善を示した。
【0082】
次に、バルクRNAを配列決定及び結合の評価のためにクローン化した。0.1及び0.5mMのClqでの結合の比較により、個々のクローンを評価し、バックグラウンド上のClq結合のクローンを配列決定し、表2に示す(配列番号:5〜20)。ファミリー1は19の全配列のうちの12を含んだ。ファミリー2は3つの配列を含んだ。ファミリー3及びファミリー4の両方は2つの配列を含んだ。ファミリー1及び2の配列は、Gの豊富な領域を含み、両方とも、反復配列モチーフ:GGAG及びGGUGを有する。ファミリー1メンバーの同一性及び相同性はGが豊富な5′半分で最も大きい。Cの豊富な3′半分は配列相同性のある唯一の短いストレッチを有し、これらは大きなギャップ領域を含むことだけが示された。全てのファミリーからの配列は広大なワトソン−クリック塩基対を有するステムループ構造を供するようにホールディングすることができる。最も高いアフィニティーリガンドのための完全な結合曲線は、290pM〜3.9mMのKd範囲を作り出し;全部の4つの配列のファミリーにおいて高アフィニティーリガンドが見い出された。結合曲線の全ては単相性であった。最大の結合は、精製の間におこる種々の量の核酸変化のため、100%ではない。これは、通常、リガンドはタンパク質に結合し、抽出され、そして次に再び結合し得ることが知られており、100%に達する最大結合を供する(データは示さない)。
【0083】
B.競合 異なるファミリーからの2′−NH2 RNAリガンドは交差競合(cross−competition)により示されるように、Clq上の同じ又はオーバーラップする部位と相互作用する。この部位は証拠の2つの線により示されるように、コラーゲン様領域上に、A−鎖14〜26残基部位に又はその近くにある(Jiang ら (1994) J. Immunol. 152 :5050)。最初に、ICに結合した時のClqはまだリガンド#50(配列番号:12)に結合し;イムノグロブリンFcへの結合は、ベッドグループ領域をブロックするが、利用できるコラーゲン様テールを残し、このことは、SELEX法由来の核酸リガンドはテールに結合していることを示唆する。第2に、及びより直接的に、リガンド#50は、SAP,β−アミロイドペプチド及びCRPを含む、A鎖残基14〜26部位に結合することが知られているタンパク質と競合する。最後に、リガンド#50は、A鎖上の残基14〜26と同じアミノ酸配列を有するペプチドと競合する。この結果は、以下に記載されるように、溶血阻害についての結果により更に支持される。
【0084】
C.消費 SELEX法により得られた核酸のA鎖14〜26アミノ酸部位への結合は、Clqを活性化することができ、又はあるいは、SELEX由来核酸リガンドは、他の分子の結合を阻害し、Clq活性化を防ぐことができた。これは、2′−NH2 SELEX由来核酸リガンドとのインキュベーションの後、又は2′−NH2 核酸リガンドと一緒の周知のClqアクティベーターとのインキュベーションの後に血清中のC4消費を測定することによりテストした。血清中でインキュベートした時のSELEX由来核酸リガンドはC4を消費せず、これによりClqアクティベーターである。これらのリガンドはこの濃度で抗体をコートしたヒツジ赤血球の血清溶解を阻害もせず、それは、リガンドがClqヘッドグループ近くに結合したならおこるであろう(データは示さない)。そのリガンドは、別のClqアクティベーター、β−アミロイド1〜40ペプチドによるC4消費を阻害する。このペプチドは、A鎖14〜26残基部位での結合を介してClqを活性化することが知られており;それゆえこの阻害は、SELEX由来核酸リガンドがこのA鎖部位で結合することを確認する。ニトロセルロースアッセイによりClqに結合しなかったSELEX法からの対照リガンドは、β−アミロイド1〜40ペプチドClq活性化をブロックすることにおいても有効でなかった。
【0085】
実施例3.補体系タンパク質C3の2′−フルオロ核酸リガンド補体タンパク質C3に対するリガンドを作り出すために、所定の配列に隣接した連続ランダム配列の30ヌクレオチドを含む約1014のRNAのライブラリーを作った。この実験において、最初の候補混合物の30Nランダムヌクレオチドは2′−Fピリミジン塩基から構成された。選択及び増幅のラウンドを、当該分野で周知の技術を用いて実施例1に記載される通り行った。1回目において、30N7−2′−F−RNA及びC3を両方とも、3μMでインキュベートした。このラウンドで、わずかに検出できる結合が存在した。RNA及びC3濃縮物の両方はSELEX法の間、減少した。SELEX法由来の配列を表3(配列番号:21〜46)に示す。
【0086】
実施例4.補体系タンパク質C5の2′−フルオロ核酸リガンドヒト補体タンパク質C5に対するリガンドを作り出すために、所定の配列に隣接した連続ランダム配列の30ヌクレオチドを含む約1014RNAのライブラリーを作った。この実験において、最初の候補混合物の30Nランダムヌクレオチドは2′−Fピリミジン塩基から構成された。要約すると、DNAテンプレートを、T7プロモーターを含む5′−固定化領域、次にランダム配列の30Nストレッチ、及び次に3′−固定化領域(表1:配列番号:1)で合成した。選択及び増幅のラウンドは、当該分野で知られた技術を用いて、実施例1に記載される通り行った。SELEX実験の最初の回は、C5の選択されていないRNAへの結合が極めて低いので、2′−F RNA(7.5μM)及びタンパク質(3μM)の高い濃度で設定した。SELEX実験を、C5a−C5b開裂部位でのRNAの結合を促進するようにデザインした。RNA及びC5を、C5の限定されたトリプシン処理が単一部位での開裂を作り出し、C5a様活性を作り出すとの推論(Wetsel又はKolb (1983) J. Exp. Med 157 :2029)で、少量のトリプシンと一緒にインキュベートした。この開裂は、ランダムRNA結合のわずかな増加を導いた。C5a様ドメインの露出と構造的に関連したRNA結合の増強は、C5コンバターゼ部位近くに結合する核酸リガンドを進化させることができ、C5開裂を妨害し又は阻害することができた。SELEX実験は、核酸リガンド進化が最も高いアフィニティー勝者を選び出すであろうように、ネイティブ及び軽くトリプシン処理したタンパク質の両方に対して同時に行った。この手順で、多重タンパク質種に対する最も高いアフィニティー勝者が進化するであろうし、多重アプタマー(aptamer)及び特定のアプタマーが1回のSELEX実験から得られるであろう。
【0087】
SELEX法の各々の回について、緩衝液のみ又は0.3〜0.0001mg/mLのトリプシンを添加して約5倍過剰のRNAで別個のチューブで平行してその方法を行った。サンプルを37℃で45分、MgPBS中でインキュベートし、次にニトロセルロースを介してろ過した。そのフィルターを洗い、乾燥させてカウントし、抽出し、逆転写し、次にPCR増幅し、最後に混合GTPIATP及び2′−F−CTP/UTPヌクレオチド及び−〔32P〕−ATPを用いて試験管内でRNAにT7転写した。RNAを、7M尿素及びTris−Borate EDTA緩衝液(TBE)での8%アクリルアミドゲルでの電気泳動により精製した。RNAを単離し、NH4 OAc/エタノールで沈殿させ、次に1nm MgCl2 を含むリン酸緩衝塩類溶液(MgPBS)に溶かした。最も高い結合フィルターが先に運ばれた。各々のラウンドの終りに、(トリプシンあり又はなしの)タンパク質に結合したRNAの全てをプールした。各々のラウンドのタンパク質及びRNA濃度は、2.5nm及び10nmの最終濃度で各々減少した。トリプシンは、0.3〜0.0001μg/mLの濃度で加えた。バックグラウンド結合を各々のラウンドでモニターし、4ラウンド目に、バックグラウンドを減少させるためにSELEXラウンドの前に、転写されたRNAをニトロセルロースフィルターに一晩、予め浸漬した。
【0088】
ニトロセルロースアッセイによるネイティブC5へのRNAの結合に基づいて、ラウンド12のDNAをクローン化し、表4(配列番号:47〜74)に示すような配列を得た。配列を相同性及び機能に従ってグループ化した。グループI配列は高い相同性であり、単一のもとの配列からのPCR変異により生じ得る。グループI核酸リガンドの結合アフィニティーは極めて類似しており、これを表7に示す。グループII核酸リガンドは、一般に、グループI核酸リガンドと同様のアフィニティーで結合する。但し、いくつかの弱い結合物も存在する。グループII配列及び長さはグループI核酸リガンドより多様である。C5核酸リガンドは、Clq,C3、又は因子B,HもしくはDを含む他の補体成分に結合しない。
【0089】
各々のファミリーからの核酸リガンドを、ラット補体系活性の阻害についてもアッセイした(表5;配列番号:76〜83)。ファミリーI及びファミリーIII からの核酸リガンドはラット補体を、阻害したが、ファミリーIIからの核酸リガンドはそうでなかった。これらに限らないが、重症筋無力症、心筋梗塞、糸球体腎炎、ARDS、関節炎及び移植を含む、種々のラットの病気モデルで補体系活性化を阻害するために、阻害性核酸リガンドを用いることができる。
【0090】
実施例5.Clq核酸リガンドを介する補体系の活性化 オリゴヌクレオチドは古典的及び別の経路の両方を活性化することができる。特に、G−4組構造を形成することができ、かつClqコラーゲン様領域と相互作用することができるポリGオリゴヌクレオチドは、高分子量凝集物を形成することができ、それらは両方とも、Clq結合し、それを活性化する。ホスホジエステルオリゴヌクレオチドと比べて不特異的結合が増加したホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、特にポリG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは効率的な補体系アクティベーターでもある。溶液相補体のオリゴヌクレオチド活性化についての結果を以下に示す。ここでは、古典的(Class)経路活性化はELISA(Quidel, San Diego, CA )によるC4dフラグメントの遊離により測定し、そして別の(Altern.)経路の活性化は、Bb ELISA(Quidel, San Diego, CA )により測定した。これらの経路は別個であるが、両方の経路のオリゴヌクレオチド活性化がClq依存性であることを示唆する証拠がある。
【0091】
【表1】

【0092】
補体系活性化は、赤血球膜上でも始まり、溶血アッセイによりテストされる。2′−OHポリ−G及びホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを含む周知のアクティベーター、及び多量化Clq核酸リガンド及び小さな(例えば15mer )2′−Fポリ−Gオリゴヌクレオチドのような潜在的なアクティベーターをヒツジ赤血球上にコートし、次に血清補体による赤血球の溶解を測定する。オリゴヌクレオチド及び核酸リガンドを細胞上にコートする方法には、受動的吸収、化学的コンジュゲーション、ストレプトアビジン−ビオチンカップリング及び特定の核酸結合がある。新しいラット又はヒト血清での処理の後、補体成分の細胞上への析出、膜損傷及び溶解は、当業者に周知であろう標準的な方法により測定される。
【0093】
A.Clq核酸リガンドの凝集 Clq核酸リガンドを種々の長さの化学的架橋剤を用いて二量体化した。あるいは、核酸リガンド単量体をビオチニル化し、次にストレプトアビジンで多量体化した。これらの多量体の各々を補体活性化及び赤血球の溶解についてテストした。
【0094】
Clq核酸リガンドへのポリG配列の付加は、更なる結合能を供し、オリゴヌクレオチドが補体系を活性化する能力を増加させた。更に、個々のClq核酸リガンド上の短いポリG配列は、相互作用してより高次の構造を形成することができ、それは、Clq核酸リガンドを多量体化して活性化を引きおこすよう機能する。
【0095】
B.赤血球及び白血球の溶解 赤血球溶解を促進する核酸リガンドを、白血球及び腫瘍細胞を含む有核細胞でテストする。有核細胞は、赤血球が欠如する補体耐性のメカニズムを有する。例えば、有核細胞は、抗原を隔離して、補体成分を含む膜ベシクルろ胞化し、赤血球と比べて高いレベルの補体インヒビターを発現し、最初の補体攻撃に基づく保護メカニズムを上昇制御することができる。高レベルの活性化は細胞殺害のために重要であるので、補体系成分析出の量及び膜損傷の程度についてアクティベーターが比較される。また、腫瘍細胞及びリンパ球の異なる型及びソースが、感受性か細胞型特異的であるか否かを決定するためにテストされる。
【0096】
核酸リガンドは、SELEX特許出願に記載されるように、本質的にいずれの標的についても作り出すことができる。L−セレクチンに対する核酸リガンドは形成されている(“High Affinity Nucleic Acid Ligands to Lectins ”とのタイトルの1995年6月7日に出願された米国特許出願通し番号08/479,724号、現在の米国特許5,780,228号(その全体は引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。レクチン媒介機能の多様性は、レクチンアンタゴニストについての広範囲の潜在的な治療標的を供する。例えば、哺乳動物セレクチンに対するアンタゴニスト、内在性炭水化物結合レクチンのファミリーは、種々の白血球が媒介する病状において治療的適用性を有し得る。そのレセプターに結合するセレクチンの阻害は、細胞接着ブロックし、結果として、炎症、凝血、移植拒絶、腫瘍転移、慢性関節リウマチ、再灌流傷害、発作、心筋梗塞、火傷、乾癬、多発性硬化症、細菌性敗血症、血液量減少性ショック及び外傷性ショック、急性肺傷害及びARDSを治療するのに役立ち得る。Clq核酸リガンドのL−セレクチン核酸リガンドへのカップリングは、標的での細胞殺害を促進することにより、L−セレクチン核酸リガンドをより効率的にする。Clq核酸リガンドはL−セレクチン核酸リガンドにカップリングされ、そのコンジュゲートは上述の通り白血球溶解についてテストされる。また、他の細胞表面標的に対する核酸リガンド、それら自体では補体を活性化しない全ての標的に対する抗体、サイトカイン、成長因子、又は細胞レセプターに対するリガンドは、Clq核酸リガンドにカップリングさせて、細胞殺害のために用いることができよう。
【0097】
C.補体活性化の生体内テスト 核酸リガンドが媒介する補体系活性化を、生体内核酸リガンド作用を評価するために動物においてテストした。赤血球及び/又はリンパ球を核酸リガンドでコートし、ラットに注入して生体内の細胞殺害及び溶解をテストする。核酸リガンドの活性化は、補体系を活性化しないMoAbにもつながっており、ここでその抗体はラット細胞抗原(例えばリンパ球抗原)に対するものである。次に、これらの細胞を核酸リガンド−抗体コンジュゲートでコートし、ラットに注入した。あるいは、核酸リガンド−抗体コンジュゲートをラットに直接、注入し、次に生体内白血球殺害を測定する。
【0098】
Clq核酸リガンドが非ヒトClqと交差反応することも可能であり、非ヒトClqは生体内アッセイのために用いることができよう。Clq核酸リガンドは、マウス、ラット及びウサギClqのような種に対してテストする。Clqは血清から精製し、Clq核酸リガンドとの交差反応をニトロセルロース結合アッセイによりテストする。あるいは、Clqは、血清に加えられた免疫複合体に結合し、次にその凝集物へのClq核酸リガンド結合をテストする。核酸リガンドが種特異的であるなら、ラット血清はIg−Sepharoseカラムでの連続的灌流によりラットClqを涸濁し、そしてその血清は当業者に周知の方法によりヒトClqで再構成される。これらの再構成された動物は、次に標的の補体系活性化及び細胞殺害についてClq核酸リガンドをテストするのに用いられる。
【0099】
実施例6.補体系タンパク質Clqの2′−フルオロRNAリガンドA.RNA SELEX ランダム30N7−2′−F RNAのプールは2.3μMのKdでニトロセルロースフィルターアッセイによりClqに結合した。SELEX法の1回目について、Clq濃度は0.156〜1.25μMであり、RNA濃度は15μMであった。SELEX法全体を通してRNA濃度はClqの濃度より約10倍高く維持し、それは136pMの最終日14Clq濃度に各々の回に減少させた。RNAのニトロセルロースフィルターへのバックグラウンド結合はSELEX法全体を通して低く維持した。それは、部分的には、RNAがニトロセルロースに予め吸着していたからである。プールRNAのClqへの結合は各々の回で改善した。進化したラウンド14のプール2′−F RNAは2mMのKdでClqに結合し、1〜3000倍の結合Kdの全体の改善があった。
【0100】
次にバルクRNAを配列決定及び結合の評価のためにクローン化した。0.1及び0.5mMのClqでの結合の比較を介して、個々のクローンを結合アフィニティーについてランク付けした。2′−F RNAリガンドの配列を表6(配列番号:89〜155)に示す。2′−F−RNA配列は、ファミリーに容易に分類されないが、これらの配列はGが豊富で類似しているが、実施例2に記載される2′−NH2 RNA配列と相同でない。
【0101】
実施例7.C5に対する2′−F RNAリガンドについての溶血阻害C5に対する2′−F RNA核酸リガンド(実施例4)を、抗体をコートしたヒツジ赤血球のヒト血清溶解のための標準的アッセイに希釈物を含めることにより、溶血阻害についてアッセイした。ヒツジ細胞を、核酸又は緩衝液を含む血清の1:40希釈物と混合し、37℃で30分、インキュベートした。冷EDTA緩衝液でクエンチングした後、サンプルを回転させ、上清をOD412nmで読みとった。グループは核酸リガンドは60〜100mMのKiで、1μMでほぼバックグラウンドに阻害した。結果を図1に示す。溶血阻害アッセイの結果は、C5に対する2′−F RNA核酸リガンドがC5上の特定の部位を標的にし、ここでそれらは補体C5コンバターゼとのC5の相互作用をブロックすることを示唆する。これらの結果は、2′−F RNA核酸リガンドが血清中で安定であることも確認した。
【0102】
実施例8.C5の遊離の阻害 C5の開裂を阻害する核酸リガンド−C5相互作用はC5b及びMACアセンブリーの形成を防ぐであろう。C5開裂の阻害はC5a遊離も阻害するはずであり、これは、クローンC6(配列番号:51)(実施例4)での以下の実験で示された。この実験のために、クローンC6の希釈物を、ザイモサンを加えたGVB++(カルシウム、マグネシウム及び1%ゼラチンを含むベロナール緩衝塩類溶液)中全ヒト血清とインキュベートした。次にサンプルをEDTA−緩衝液でクエンチングし、回転させ、上清をラジオイムノアッセイ(RIA)(Wagner及びHugli (1984) Anal. Biochem. 136 :75)によりC5aについてアッセイした。結果は、クローンC6は約100nMのKiでC5a遊離を阻害した(図5)が、対照ランダムプールRNAは阻害を与えない(データは示さない)ことを示した。このアッセイは、クローンC6の血清安定性も証明した。
【0103】
実施例9.クローンC6の境界 最小結合配列の決定のためにクローンC6(配列番号:51)(実施例4)を選択した。これは以下の2つの方法で行った。
1)クローンC6のC5への結合のために要求される最小RNA配列(5′及び3′境界)を、クローンC6を部分的に加水分解しそしてタンパク質結合を測定することにより決定した(Green ら (1995) Chem, Biol. 2 :683 )。要約すると、クローンC6を、(3′境界を決定するために)標識した5′−〔32P〕−キナーゼ又は(5′境界を決定するために)標識した3′−〔32P〕−pCpとして合成し、オリゴヌクレオチドを精製した。次に、そのオリゴヌクレオチドをアルカリ加水分解にかけた。それは、オリゴヌクレオチドを3′端からプリン塩基に開裂する。次に、部分的に加水分解したRNAをC5とインキュベートし、C5タンパク質に結合したRNAをニトロセルロースで分画し、そのタンパク質から溶出した。RNAラダーと一緒に、分画したRNAを8%アクリルアミド/7M尿素シーケンシングゲルにかけた。1つの更なる塩基の除去が結合を減少させ又は排除するであろう境界を、選択されたRNA(C5に結合したRNA)対非選択RNA(C5に結合しないRNA)の比較により決定した。
【0104】
標識したRNAを、(オリゴヌクレオチドを3′端からA残基に開裂する)T1 ヌクレアーゼで消化し、C5とインキュベートし、そして第2のラダーのために、上述の通り分画した。図3Aは5′−キナーゼ標識化RNAの消化の結果を示す。この図において、3′−配列(5′端標識化)はアルカリ加水分解ラダーとアラインされる。左側はT1 ラダーであり、右側は5×及び1×濃度のC5で選択したRNAである。塩基の除去が結合を排除する境界を矢印で示す。アスタリスクはT1 に対して超高感度であるGを示す。最小配列中の他のGヌクレオチドはT1 消化から保護される。図3Bは、3′−pCp−連結化RNAの結果を示す。この図において、5′−配列(3′末端標識)はアラニン加水分解ラダーとアラインする。T、及びタンパク質レーン、境界及び超感受性Gヌクレオチドは図3Aに記載される。
【0105】
2)第2の実験において上述の境界実験から得られた結果を用いて、C5に対する合成したトランケートされた核酸リガンドを作製した。34〜42ヌクレオチドのいくつかのトランケートを、クローンC6(配列番号:51)の両端の残基を除去することにより合成し、C5結合についてアッセイした(表8)。C5に結合した最も短いオリゴヌクレオチドは38mer (配列番号:160)であり、これは、境界ゲルを確認し、更なる核酸リガンド開発のための予備的構造を供する。最小38mer 配列において、30塩基はランダム領域起源であり、8塩基はクローンC6の5′固定化領域からのものであった。36mer (配列番号:161)を作り出すための38mer の5′及び3′末端の両方からの塩基の除去は結合を減少させた。34mer (配列番号:162)は結合しなかった。内部欠失のある他のトランケートされたオリゴヌクレオチドも結合しなかった。
【0106】
実施例10.Biased SELEX 核酸リガンドアフィニティーを改良するため及びその構造を更に規定するためにbiased SELEX法を行った。実施例9(表8)からの42mer トランケート(配列番号:75)をBiased SELEX実験のためのテンプレートとして用いた。新しいn8固定化領域に隣接した42Nランダム領域を含む合成テンプレート(表10;配列番号:163)を作製し、合成した(Oligos, Etc., CT)。ここでそのランダム領域は最初のSELEX実験からのクローンC6の42mer トランケートにかたよらせた。4つの余分な塩基が末端のヘリックスを伸長させたので、最小38mer 配列でなく42mer ランダム領域を選択した。いずれの理論にも結びつけるつもりはないが、本発明者らは、これらの4つの余分な塩基は結合のために本質的ではないが、核酸リガンド構造を選択することにおいて及び新しく選択された核酸リガンド構造における固定化領域の可能な使用を最小にすることにおいて、より長いヘリックスが要求されると考えられる。ランダム領域内の各々の塩基を、42mer 配列中の塩基に対応する塩基の0.67モル画分及び他の3つの塩基の各々の0.125モル画分を含むように合成した。Biased SELEX実験を、実施例1の標準的SELEX実験について記載される通り行った。PCR増幅は、表1(配列番号:158〜159)に示すプライマーを用いて行った。
【0107】
Biased SELEX実験は、クローンC6は既に溶血を阻害し、結合のためにトリプシン処理が要求されないので、ネイティブC5タンパク質で行った。出発RNAプールのC5への結合は極めて低かったので、タンパク質及びRNA濃度は最初のSELEX実験と同様に、各々2.6μM各々7.1μMで始めた。結合は、ラウンド3で迅速に改善した。RNA及びタンパク質濃縮物は、各々62.5pM及び31pMのラウンド9まで、最終濃度まで各々の次のラウンドで次第に減少させた。RNAプールのC5への結合は、SELEX実験からのRNAプールについて約100nMであることと比較して約5nMであった(表9)。プールのアフィニティーにおける改善のいくつかは低アフィニティーリガンド、サイズ変異及びバックグラウンド結合体の欠如から生じ、これらはこのより迅速なSELEX実験の間、評価できる濃度まで形成されなかった。
【0108】
8ラウンドのBiased SELEX方法の後のRNAプールは、最初のSELEX実験からのラウンド12のプールより20〜50倍、改善された。ランダムプールからの8ラウンドのBiased SELEX法からのプールへの全体の改善は105 倍を超えると評価される。Biased SELEX実験からの単離され、クローン化された配列を表10(配列番号:164〜189)に示す。表10に示す配列において、結合のために、要求される2つの塩基対ステムは最小38mer 配列から別個である。これらの塩基はそのステムを維持することを除いて選択圧力を示さない。もとのテンプレート配列に正確に適合する配列はない。
【0109】
Biased SELEX実験からのクローンをアッセイした。この代表的な結合アフィニティーを表11に示す。10〜20nMのKb で結合したほとんどのクローンはテンプレート(配列番号:163)より高いアフィニティーの結合リガンドである。クローンの1つ、YL−13(配列番号:175)は、Biased SELEX実験からの他のクローンより約5倍高いアフィニティーで、及びクローンC6(配列番号:51)より約10倍高いアフィニティーで結合した。Biased SELEX実験においてテンプレートのために用いた配列に正確に適合した核酸リガンド配列はなかった。いくかの塩基置換はこのBiased SELEX実験配列セットに特有であり、核酸リガンドアフィニティーの増加を説明し得る。
【0110】
実施例11.ヌクレアーゼ保護のための2′−O−メチル置換核酸リガンドを更に安定化するために、2′−OH−プリンヌクレオチドをヌクレアーゼ耐性2′−O−メチルヌクレオシドで置換できる位置を決定した。2′−O−メチルインターフェレンスについていくつかの位置を同時にテストするためのアッセイを、Green ら(1995) Chem. Biol. 2 :683 に記載される方法の後に用いた。
【0111】
2′−O−メチルインターフェレンスアッセイにおいて、Biased SELEX実験からの配列YL−13(配列番号:175)の38mer トランケートに基づくオリゴヌクレオチドの3つのセットを合成した。表12にM3010(配列番号:190)、M3020(配列番号:191)及びM3030(配列番号:192)として示すこれらの配列のセットを、表12にボールド下線で示すヌクレオチドの各々を2′−OH−ヌクレオチドとして50%及び2′−OMe−置換化ヌクレオチドとして50%、合成する様式で自動RNAシンセサイザーで合成した。これは、M3010,M3020及びM3030のセットの各々について25又は32の異なる配列の混合物を作り出した。
【0112】
部分的に置換した2′−OMeオリゴヌクレオチドを5′−〔32P〕−キナーゼで標識した。オリゴヌクレオチドを100nM及び10nMのC5で選択し、タンパク質への結合はバックグラウンドフィルター結合より10倍、大きかった。オリゴヌクレオチドをタンパク質から溶出し、アルカリ加水分解し、次に20%アクリルアミド/7M尿素/TBEシーケンシングゲルに走らせた。隣接トラック上に、C5で選択されないオリゴヌクレオチドを走らせた。バンドの強度をInstant Inagen(Packard, Meriden. CT)で定量化した。これらのオリゴヌクレオチドがアクリルアミドゲル上で分離した時、その混合OH・OMe位置は、全て2′−OH位置の50%強度までを示した。なぜなら2′−OMeは加水分解に対して耐性だからである。2′−Fピリミジンも耐性であり、ゲル上で示されない。
【0113】
各々の位置について、(タンパク質結合により選択されたバンドの強度)/(タンパク質に対して選択されなかったオリゴヌクレオチドについてのバンド強度)の比を計算した。これらの比をヌクレオチド位置に対してプロットし、直線適合を決定した(図4、白抜き円)。同じ計算を、混合2′−OH/2′−OMeオリゴヌクレオチドについて行い、これらの比を先に決定された曲線と比べた(図4、黒ぬり円)。2′−OMe置換が結合を妨害しない場合、その比は2′−OH比の標準偏差内であった。しかしながら、2′−OMe置換が結合を妨害した場合、2′−OHプリンについての結合選択はその比を増加させた。位置16及び32での2つのヌクレオチドが2′−OHヌクレオチドを要求すると決定された。別個に、残基g5は2′−OHを要求すると独立に決定され、残基G20は2′−OMe置換を許容すると決定され、そしてこれらをレーンを標準化するのに用いた。これらの結果を、2′−OMe置換化オリゴヌクレオチドの合成及びアッセイにより確認した。必須の2′−OH位置は、2つのバルジ(bulge)のうちの1つの中に、又は予想されるホールディング構造内のループの中にあり、このことは、これらの特徴がタンパク質相互作用に関連していることを示唆する。許容される2′−OMe位置を決定した後、置換化オリゴヌクレオチドを合成し、相対的結合アフィニティーを測定した。
【0114】
実施例12.ヒトC5核酸リガンド構造 別の塩基と一緒のクローンC6の38mer トランケートについての、トランケーション実験、ヌクレアーゼ感度、Biased SELEX実験からの塩基置換パターン、及び2′−OMe置換に基づく予想されるホールディング及び塩基対形成を図5Aに示す。その塩基配列は38mer トランケート(配列番号:199)である。括弧内は最初のSELEX実験からの変異体である。ブラケット内はBiased SELEX実験からの変異体である。小文字の塩基は最初のSELEX実験からの5′n7固定化領域由来である。大文字の塩基はもとのランダム領域由来である。
【0115】
ステム・ループ構造は、12〜14塩基対を有する:a)提唱される5′,3′−末端塩基対(c1〜a3及びU36〜G38);b)ステムループ塩基対(U11〜U14及びG24〜A27)はBiased SELEX法の間の共変の変化により支持され;及びc)全般に保存された中部ステム(g7〜C10及びG28〜C34)、不変であるU9〜A32及びBiased SELEX法の間、保存されたg8〜C33。u4→c4変化は結合を改善し、この変化はBiased SELEX実験からの全てのクローンにおいて見い出され、そしてG29,A29変異体はBiased SELEX実験からのクローンにおいてのみ見い出される。
【0116】
UUUバルジは全般に保存される。1つのもとの配列は結合が減少しない2つのU塩基を含み、1つの塩基の置換を有する2つの核酸リガンドはBiased SELEX実験の間に見い出された。UUU−バルジの後のC10−G28塩基対は保存される。この保存されたバルジ及びステムを有する領域はタンパク質相互作用の関連するようである。ステムループG15〜U23は、塩基19を除いて高度に保存される。
【0117】
2′−OMe置換パターンはこの構造と一致する(配列番号:193;図5B)。2′−OMe置換を行うことができる位置をボールドで示す。2′−OHでなければならない3′の位置を下線で示す。g5,G17及びA32における必須の2′−OHは、タンパク質結合のために要求される特有の3次元構造を形成し得るバルジ又はハープ領域内にある。2′−OMe置換について許容される位置は、標準的ヘリックス配列がよりもっともらしいステム領域内にある。
【0118】
実施例13.ヒトC5に対する2′−OMe−置換化核酸リガンドの溶血アッセイ溶血阻害への2′−OMe置換の効果を比較するために、Biased SELEX実験からのクローンYL−13に基づいて3つのオリゴヌクレオチドを合成した:(1)全てのヌクレオチドが2′−OHである38mer トランケートB2010(配列番号:194);(2)1つのヌクレオチド(位置20)が2′−OMe−Gである38mer (B2070;配列番号:195);及び(3)許容される位置(位置2,7,8,13,14,15,20,21,22,26,27,28,36及び38)の最大数を表13に示す通り2′−OMe−G及び2′−OMe−Aとして合成した38mer (M6040;配列番号:196)。これらは実施例7に記載されるように溶血アッセイにおいてアッセイした。結果を図6に示す。図6に示す通り、Kiは2′−O−Me置換の増加と共に減少した。Kd はわずかに優れていた(データは示さない)。この実験は、核酸リガンド安定性は2′−OMe置換に伴い増加すること、及び補体系の長期の生体内阻害は実行可能であることを示した。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
【表13】

【0131】
【表14】

【0132】
【表15】

【0133】
【表16】

【0134】
【表17】

【0135】
【表18】

【0136】
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C5に対する精製されかつ単離された非天然核酸リガンドであって、該リガンドが配列番号:75,160〜196からなる群から選択されるRNAリガンドであることを特徴とする核酸リガンド。
【請求項2】
前記リガンドが、配列番号:75,160〜196からなる群から選択されるリガンドと実質的に相同であり、かつ前記C5に結合するための実質的に同じ能力を有することを特徴とする請求項1記載の核酸リガンド。
【請求項3】
前記リガンドが、配列番号:75,160〜196からなる群から選択されるリガンドと実質的に同じ構造を有し、かつ前記C5に結合するための実質的に同じ能力を有することを特徴とする請求項1に記載の核酸リガンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187687(P2010−187687A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86118(P2010−86118)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【分割の表示】特願2000−531463(P2000−531463)の分割
【原出願日】平成11年2月5日(1999.2.5)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】