説明

補修材注入用ノズル及び補修材注入補修方法

【課題】熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができる補修材注入用ノズル及び補修材注入補修方法を提供する。
【解決手段】補修材注入用ノズル30は、本体部31と、補修材を外部に吐出する吐出部32とを具備する。本体部31は、補修材が装填されたカートリッジ容器の口金部に取り付けるための取着部311と、吐出部32を嵌着するための嵌着部312と、口金部の内側から押し出されてくる補修材を吐出部32に流通させる流通孔とを有する。吐出部32は、シリコンゴムで作製された略円筒形状のものである。この吐出部32は、本体部31の嵌着部312に嵌着されたときに本体部31の流通孔と連通する吐出孔321と、吐出部32の先端部側面の所定位置であって吐出孔321に対して互いに対称な位置に設けられた一対の突起部322,322とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート構造物の補修対象部位であるひび割れ等の狭小空隙に補修材を注入する補修作業を行う際に使用される補修材注入用ノズル及びその補修材注入用ノズルを用いた補修材注入補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、コンクリート構造物におけるひび割れ等の狭小空隙に対する補修工法として、様々な工法がある。例を挙げると、U(V)カット・シール工法、エポキシ樹脂接着剤による自動式低圧注入工法、ポリマーセメントモルタル被覆工法等である。
【0003】
これらの工法のうちいずれで補修を行うかは、対象コンクリートの挙動性、仕上げ材料の有無又は種類、補修材の強度等を考慮して、選定されているが、これらの補修工法に共通して補修跡が目立つという問題がある。その対策としてセメント系の補修材の擦り込みや、ケイ酸質系補修材の吹きつけ等、比較的補修跡の目立たない補修工法が多数見受けられるようになった。しかし、それらは表面処理、美観的な対策にとどまることが多く、狭小空隙内部への処理には及ばない事例が多い。
【0004】
ところで、近年、新たな補修工法として、ゴム製アタッチメントを有する補修材注入用カートリッジを用いて、所定の一液型エポキシ樹脂組成物を損傷部にVカットなしで注入する壁補修の注入工法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、補修材を充填させた充填筒部材のノズル取り付け部位に取り付けられる筒状ホルダーと、そのホルダーの先端部に嵌合取り付けられた高分子弾性体とを備える新たな注入ノズルが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前者の壁補修の注入工法又は後者の注入ノズルを用いた補修工法では、ゴム製アタッチメント又は高分子弾性体を狭小空隙に押し当て、補修材を流出させながら、補修材注入用カートリッジ又は注入ノズルを狭小空隙に沿って移動させて補修作業を行う。このため、補修跡は比較的目立たず一定深さまでの補修材を充填補修することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−161073号公報
【特許文献2】特開2000−220299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の壁補修の注入工法や注入ノズルを用いた補修工法では、作業者は補修作業中に補修材吐出口の位置を目で確認することができないので、補修材吐出口と狭小空隙との位置がずれてしまうことがある。かかる位置ずれが起こると、当然、当該狭小空隙の内部には十分な量の補修材が注入されず、作業者は当該狭小空隙に対して再度、補修作業を行わなければならない。したがって、特に熟練者でない者にとっては、補修材を狭小空隙に正確に注入するのは容易でなかった。
【0007】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができる補修材注入用ノズル及び補修材注入補修方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明は、補修材が装填されたカートリッジ容器に取り付けて使用される補修材注入用ノズルであって、本体部と、補修材を外部に吐出する吐出部とを具備し、本体部は、カートリッジ容器の口金部に取り付けるための取着部と、取着部と反対側に設けられた、吐出部を嵌着するための嵌着部と、口金部の内側から押し出されてくる補修材を吐出部に流通させる流通孔とを有し、吐出部は、ゴム状弾性体で作製された略筒状のものであり、本体部の嵌着部に嵌着されたときに本体部の流通孔と連通する吐出孔と、吐出部の先端部側面の所定位置であって吐出孔に対して互いに対称な位置に設けられた一対のガイド部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、吐出部の先端部側面の所定位置であって吐出孔に対して互いに対称な位置に一対のガイド部を設けたことにより、吐出孔は一対のガイド部を通る直線上にある。このため、一対のガイド部をひび割れ等の狭小空隙に沿って移動することによって補修材注入用ノズルを移動することにより、吐出孔の位置をその狭小空隙の位置に正確に合わせておくことができる。したがって、本発明の補修材注入用ノズルを用いることにより、熟練者でない者であっても補修材をひび割れ等の狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る補修材注入用ノズルにおいて、一対のガイド部が二組設けられ、且つ、一方の組の一対のガイド部を結ぶ直線と他方の組の一対のガイド部を結ぶ直線とが略直交するように二組の一対のガイド部が配置されていること望ましい。これにより、例えば、上下方向に沿って狭小空隙が生じているだけでなく、左右方向に沿っても狭小空隙が生じているような場合に、前者の狭小空隙に対する補修材の注入作業と後者の狭小空隙に対する補修材の注入作業とで、異なる一対のガイド部を利用して、吐出孔と狭小空隙との位置合わせを行うことができるので、作業を効率よく迅速に行うことができる。
【0011】
また、上記の目的を達成するための本発明は、補修対象部位である狭小空隙に補修材を注入する補修材注入補修方法において、上記の発明に係る補修材注入用ノズルをカートリッジ容器に取り付けた後、一対のガイド部を狭小空隙に合わせて吐出部の先端面を狭小空隙に押し当て、ガイド部を狭小空隙に沿って移動することによって補修材注入用ノズルを移動しながら補修材を狭小空隙に注入することを特徴とするものである。
【0012】
かかる補修材注入補修方法も、上記本発明の補修材注入用ノズルと同様の作用効果を奏する。すなわち、一対のガイド部を狭小空隙に沿って移動することによって補修材注入用ノズルを移動するので、吐出孔の位置を狭小空隙の位置に正確に合わせておくことができる。したがって、熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができ、作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補修材の注入作業中、吐出孔の位置をひび割れ等の狭小空隙の位置に正確に合わせておくことができるので、熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができ、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の一実施形態である補修材注入用ノズルが取り付けられたカートリッジ容器を装着したカートリッジガンの概略側面図である。
【図2】図2はその補修材注入用ノズル、カートリッジ容器及びカートリッジガンの概略側面図である。
【図3】図3は本実施形態の補修材注入用ノズルの概略斜視図である。
【図4】図4(a)はその補修材注入用ノズルの吐出部の概略正面図、図4(b)はその補修材注入用ノズルの吐出部の概略右側断面図、図4(c)はその補修材注入用ノズルの本体部の概略側部断面図、図4(d)はその補修材注入用ノズルの本体部の概略底面図である。
【図5】図5は補修材注入補修作業の様子を説明するための概略側面図である。
【図6】図6は補修材注入補修作業の様子を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
本実施形態の補修材注入用ノズルは、例えば、コンクリート構造物の補修対象部位であるひび割れ等の狭小空隙に補修材を注入する補修作業を行う際に使用されるものである。具体的に、本実施形態の補修材注入用ノズルは、カートリッジガンに装着されるカートリッジ容器に取り付けて使用される。
【0017】
図1は本発明の一実施形態である補修材注入用ノズルが取り付けられたカートリッジ容器を装着したカートリッジガンの概略側面図、図2はその補修材注入用ノズル、カートリッジ容器及びカートリッジガンの概略側面図である。
【0018】
カートリッジガン10は、図1及び図2に示すように、装着部11と、加圧レバー12と、加圧部(不図示)とを備えている。装着部11には、補修材が装填されたカートリッジ容器20が装着される。作業者が加圧レバー12を握ると、加圧部がカートリッジ容器20内の補修材に圧力を加えて補修材を押し出し、これにより、コンクリート構造物の補修対象部位である狭小空隙に補修材を注入することができる。本実施形態では、カートリッジガン10及びカートリッジ容器20として、市販のものを用いる。
【0019】
カートリッジ容器20は、補修材を装填するためのものである。カートリッジ容器20としては、各補修材メーカにより予め補修材が充填されて販売されているもの、若しくは、補修材が装填されないで販売されている空のものを用いることができる。ここで、空のカートリッジ容器20を用いる場合には、補修を行う際に、作業者が自ら所望の補修材をカートリッジ容器20内に装填する必要がある。
【0020】
一般に、市販のカートリッジ容器20は、図2に示すように、円筒状の容器本体21と、その底部に取り付けられる底蓋22と、その先端に設けられた口金部23とを備えている。容器本体21は、表面にアルミ箔が貼られた紙で作られている。空のカートリッジ容器20に補修材を装填する場合には、底蓋22を取り外して、底部から補修材を装填し、その後、再び底蓋22を底部に取り付ける。
【0021】
口金部23の表面には雄ネジが螺刻されている。通常、この口金部23には、そのカートリッジ容器20に付属する吐出ノズルが螺着される。しかしながら、本実施形態では、図1に示すように、口金部23には、かかる付属品である吐出ノズルに代えて、本発明の補修材注入用ノズル30が螺着される。ここで、市販のカートリッジ容器20では、口金部23の大きさや雄ネジのピッチ等は同じである。このため、補修材注入用ノズル30に口金部23の雄ネジに対応する雌ネジを螺刻しておくことにより、補修材注入用ノズル30は、市販されているいずれのカートリッジ容器20に対しても使用することができる。
【0022】
コンクリート構造物の補修対象部位を補修するための補修材としては、補修対象部位の性質等に応じてさまざまなものを用いることができる。例えば、セメントスラリー系補修材、ウレタン系補修材、アクリル系補修材、エポキシ樹脂接着材等を用いることができる。また、シーリング材又はコーキング材については、各補修材メーカにより予めカートリッジ容器20に充填されて販売されているものが多い。
【0023】
次に、本実施形態の補修材注入用ノズルについて説明する。図3は本実施形態の補修材注入用ノズルの概略斜視図、図4(a)はその補修材注入用ノズルの吐出部の概略正面図、図4(b)はその補修材注入用ノズルの吐出部の概略右側断面図、図4(c)はその補修材注入用ノズルの本体部の概略側部断面図、図4(d)はその補修材注入用ノズルの本体部の概略底面図である。
【0024】
本実施形態の補修材注入用ノズル30は、図3及び図4に示すように、本体部31と、補修材を外部に吐出する吐出部32とを備えている。本体部31はプラスチックで作製され、一方、吐出部32はシリコンゴムで作製されている。
【0025】
本体部31は、図4(c)及び(d)に示すように、取着部311と、嵌着部312と、流通孔313と、フランジ部314とを有する。取着部311は、本体部31をカートリッジ容器20の口金部23に取り付ける部分であり、本体部31の一方の端部に形成されている。この取着部311の内面には、カートリッジ容器20の口金部23の雄ネジに対応する雌ネジが螺刻されている。また、嵌着部312は、吐出部32を取り付ける部分であり、取着部311と反対側、すなわち、本体部31の他方の端部に形成されている。具体的に、この嵌着部312は、吐出部32の一部を嵌め込むことができるように、吐出部32の形状に対応する形状に形成されている。この嵌着部312に吐出部32の一部を嵌め込むことにより、吐出部32を本体部31に容易に取り付けることができる。ここで、本体部31の両方の端部はともに略円筒形状に形成され、本体部31の全体の形状は略テーパ状に形成されている。また、流通孔313は、口金部23の内側から押し出されてくる補修材を吐出部32に流通させるものであり、嵌着部312の略中央に形成されている。フランジ部314は、補修材注入用ノズル30を強固に且つ安定してカートリッジ容器20に取り付けるためのものであり、取着部311の端縁に鍔状に形成されている。また、フランジ部314は取着部311の端縁の強度の向上を図るためのものである。補修材注入用ノズル30をカートリッジ容器20の口金部23に螺着する際には、カートリッジ容器20の口金部23が設けられた端面にフランジ部314を当接させるようにして、螺着する。
【0026】
吐出部32は、略円筒形状に形成されたものであり、図4(a)及び(b)に示すように、補修材を吐出する吐出孔321と、一対のガイド部である突起部322,322とを有する。吐出孔321は、吐出部32の略中央に形成されている。吐出部32を本体部31の嵌着部312に嵌め込むと、吐出孔321と本体部31の流通孔313とは連通するようになる。
【0027】
一対の突起部322,322は、吐出部32の先端部側面の所定位置であって吐出孔321に対して互いに対称な位置に設けられている。すなわち、吐出孔321は一対の突起部322,322を結ぶ直線上に存在している。本実施形態では、各突起部322を略半円筒形状に形成している。かかる一対の突起部322,322は、補修対象部位である狭小空隙に補修材を注入する際に、吐出孔321が狭小空隙と対向する位置にあるように補修材注入用ノズル30の吐出部32の位置決めを行うためのガイドの役割を果たす。この一対の突起部322,322の使い方については後に詳述する。
【0028】
吐出部32の両端部のうち突起部322,322が設けられていない側の端部を本体部31の嵌着部312に嵌め込むことにより、図3に示すように、吐出部32は、突起部が形成された先端部が本体部31から突出した状態で、本体部31に取り付けられる。尚、本体部31、吐出部32のいずれも、金型を用いた成形法により製造される。
【0029】
次に、本実施形態の補修材注入用ノズル30を使用して行われる補修材注入補修作業の手順について説明する。
【0030】
まず、準備作業を行う。具体的に、カートリッジ容器20として予め補修材が充填されているものを使用する場合には、ドライバ等の工具を口金部23に挿入し、その工具でカートリッジ容器20内に取り付けられているフィルムを突き破る。その後、補修材注入用ノズル30の取着部311をカートリッジ容器20の口金部23に螺着することにより、補修材注入用ノズル30をカートリッジ容器20に取り付ける。
【0031】
一方、カートリッジ容器20として空のものを使用する場合には、まず、カートリッジ容器20から底蓋22を取り外し、所望の補修材をカートリッジ容器20の底から内部に流し込んで装填する。次に、底蓋22をカートリッジ容器20の底部に取り付ける。次に、ドライバ等の工具を口金部23に挿入し、その工具でカートリッジ容器20内に取り付けられているフィルムを突き破る。その後、補修材注入用ノズル30の取着部311をカートリッジ容器20の口金部23に螺着することにより、補修材注入用ノズル30をカートリッジ容器20に取り付ける。なお、補修材注入用ノズル30をカートリッジ容器20の口金部23に螺着する際には、補修材注入用ノズル30のフランジ部314がカートリッジ容器20の口金部23が設けられた端面に当接するように螺着する。これにより、補修材注入用ノズル30を強固に且つ安定してカートリッジ容器20に取り付けることができる。
【0032】
こうして補修材注入用ノズル30をカートリッジ容器20に取り付けた後、図1に示すように、そのカートリッジ容器20をカートリッジガン10に装着する。このとき、作業者は、カートリッジ容器20を回転させることにより、カートリッジガン10に対する一対の突起部322,322の位置を調整する。例えば、今回の補修対象部位である狭小空隙が壁面上で上下方向に生じている場合には、その狭小空隙の方向に合わせて、カートリッジガン10に対する一対の突起部322,322の位置も上下方向に沿って並んだ位置とする。尚、一対の突起部322,322の位置調整はいつでも行うことができる。以上で、準備作業が完了する。
【0033】
次に、作業者は、カートリッジガン10を用いて狭小空隙に対して補修材を注入する補修作業を行う。この補修作業は、一対の突起部322,322を狭小空隙に合わせて吐出部32の先端面を狭小空隙に押し当て、突起部322,322を狭小空隙に沿って移動することによって補修材注入用ノズル30を移動しながら補修材を狭小空隙に注入することにより行われる。以下では、この補修材注入の補修作業について詳しく説明する。図5は補修材注入補修作業の様子を説明するための概略側面図、図6は補修材注入補修作業の様子を説明するための概略平面図である。
【0034】
まず、作業者は、図6に示すように、一対の突起部322,322を狭小空隙に合わせて吐出部32の先端面を狭小空隙に押し当てる。そして、その状態のまま、カートリッジガン10の加圧レバー12を握ることにより補修材の注入を開始する。ここで、カートリッジガン10の加圧レバー12を握ると、加圧部がカートリッジ容器20の底蓋22をそのカートリッジ容器20の内部に押し込み、これにより、カートリッジ容器20内の補修材が口金部23、補修材注入用ノズル30の流通孔313及び吐出孔321を介して外部に押し出される。作業者は、補修材注入用ノズル30の吐出部32との境界における狭小空隙に補修材が滲出していることを確認しながら、図5及び図6に示すように、吐出部32の先端面を狭小空隙に押し当てた状態で、突起部322,322を狭小空隙に沿って移動することによって補修材注入用ノズル30を移動しながら、カートリッジガン10の加圧レバー12を握って補修材の注入作業を継続する。このように、シリコンゴム製の吐出部32の先端面を狭小空隙に押し当てて補修材の注入作業を行うことにより、その吐出部32が狭小空隙の周囲を密閉するので、吐出部32から吐出された補修材を狭小空隙において一定深さまで圧入することができる。また、本実施形態では、補修材注入用ノズル30にフランジ部314を形成したことにより、作業者が吐出部32の先端面を狭小空隙に押し当てても、補修材注入用ノズル30がぐらつくようなことはない。このため、作業者は注入作業を容易に且つ確実に行うことができる。
【0035】
補修材の注入作業の際、作業者は、常時、カートリッジガン10の加圧レバー12を握り続け、カートリッジ容器20内を加圧状態に保つようにすることが望ましい。これにより、補修材は間断なく補修材注入用ノズル30から吐出するので、補修材を狭小空隙にむらなく注入することができる。
【0036】
また、補修材の注入作業中、作業者は、一対の突起部322,322を見て、一対の突起部322,322が吐出部32との境界における狭小空隙上に位置するように吐出部32の位置を決め、図6に示すように、一対の突起部322,322を狭小空隙に合わせて補修材注入用ノズル30を移動させていく。吐出孔321は一対の突起部322,322を通る直線上にあるので、一対の突起部322,322を狭小空隙に合わせることにより、吐出孔321は狭小空隙と対向する位置にあることが保証され、補修材を狭小空隙に確実に圧入することができる。
【0037】
尚、例えば、狭小空隙が左右方向に生じている場合、作業者は、カートリッジガン10自体を横向きにして、一対の突起部322,322を狭小空隙に対向させて補修材の注入作業を行ってもよいが、カートリッジガン10上でカートリッジ容器20を90度回転させ、カートリッジガン10に対する一対の突起部322,322の位置を左右方向に沿って並んだ位置として、カートリッジガン10を横方向に移動しながら補修材の注入作業を行ってもよい。
【0038】
また、狭小空隙が深く、より深部へ補修材の注入を行う必要がある場合には、一度補修材を注入した箇所に対して繰り返し補修材の注入作業を行うようにすればよい。
【0039】
本実施形態の補修材注入用ノズルでは、吐出部の先端部側面の所定位置であって吐出孔に対して互いに対称な位置に一対の突起部を設けたことにより、吐出孔は一対の突起部を通る直線上にある。このため、作業者が、補修材の注入作業中、一対の突起部を狭小空隙に合わせて補修材注入用ノズルを移動することにより、吐出孔の位置を狭小空隙の位置に正確に合わせておくことができる。したがって、かかる補修材注入用ノズルを用いることにより、熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0040】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、上記の実施形態では、補修材注入用ノズルの吐出部をシリコンゴムで作製した場合について説明したが、一般に、吐出部の材質としては、天然ゴム等のゴム状の弾性体であるゴム状弾性体を用いることができる。
【0042】
また、上記の実施形態では、ガイド部として半円筒形状の突起部を形成した場合について説明したが、突起部の形状は直方体形状、半球形状、三角柱形状等であってもよい。また、ガイド部は、上述した突起部に限られるものではなく、例えば、吐出部の先端部に切り欠き部を形成したものであってもよいし、吐出部の先端部に直線や三角形や矢印等の目印を描いたものであってもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、補修材注入用ノズルの吐出部に一対のガイド部を設けた場合について説明したが、補修材注入用ノズルの吐出部には一対のガイド部を二組設けるようにしてもよい。この場合、一方の組の一対のガイド部を結ぶ直線と他方の組の一対のガイド部を結ぶ直線とが略直交するように二組の一対のガイド部を配置する。これにより、例えば、上下方向に沿って狭小空隙が生じているだけでなく、左右方向に沿っても狭小空隙が生じているような場合に、前者の狭小空隙に対する補修材の注入作業と後者の狭小空隙に対する補修材の注入作業とで、異なる一対のガイド部を利用して、吐出孔と狭小空隙との位置合わせを行うことができるので、作業を迅速に行うことができる。尚、一般には、補修材注入用ノズルの吐出部には一対のガイド部を複数組設けるようにしてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、補修対象部位がコンクリート構造物の狭小空隙である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、補修対象部位は、例えばモルタルやタイル等の壁面に生じたひび割れ等の狭小空隙であってもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、吐出部32を略円筒状に形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば吐出部全体の断面形状或いは吐出部の先端部の断面形状が菱形や四角形状になるように形成してもよい。この場合、対向する二つの辺又は頂部が一対のガイド部となる。更に、上記の実施形態では、フランジ部314を形成する場合について説明したが、フランジ部は省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、吐出部の先端部側面の所定位置であって吐出孔に対して互いに対称な位置に一対のガイド部を設けたことにより、吐出孔は一対のガイド部を通る直線上にある。このため、作業者が、補修材の注入作業中、一対のガイド部を狭小空隙に合わせて補修材注入用ノズルを移動することにより、吐出孔の位置を狭小空隙の位置に正確に合わせておくことができるので、熟練者でない者であっても補修材を狭小空隙に確実に且つ容易に注入することができ、作業性の向上を図ることができる。したがって、本発明に係る補修材注入用ノズル及び補修材注入補修方法は、例えばコンクリート構造物の補修対象部位であるひび割れ等の狭小空隙に補修材を注入する補修工法に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 カートリッジガン
11 装着部
12 加圧レバー
20 カートリッジ容器
21 容器本体
22 底蓋
23 口金部
30 補修材注入用ノズル
31 本体部
311 取着部
312 嵌着部
313 流通孔
314 フランジ部
32 吐出部
321 吐出孔
322 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修材が装填されたカートリッジ容器に取り付けて使用される補修材注入用ノズルであって、
本体部と、前記補修材を外部に吐出する吐出部とを具備し、
前記本体部は、前記カートリッジ容器の口金部に取り付けるための取着部と、前記取着部と反対側に設けられた、前記吐出部を嵌着するための嵌着部と、前記口金部の内側から押し出されてくる前記補修材を前記吐出部に流通させる流通孔とを有し、
前記吐出部は、ゴム状弾性体で作製された略筒状のものであり、前記本体部の前記嵌着部に嵌着されたときに前記本体部の前記流通孔と連通する吐出孔と、前記吐出部の先端部側面の所定位置であって前記吐出孔に対して互いに対称な位置に設けられた一対のガイド部とを有することを特徴とする補修材注入用ノズル。
【請求項2】
前記一対のガイド部が二組設けられ、且つ、一方の組の前記一対のガイド部を結ぶ直線と他方の組の前記一対のガイド部を結ぶ直線とが略直交するように二組の前記一対のガイド部が配置されていることを特徴とする請求項1記載の補修材注入用ノズル。
【請求項3】
補修対象部位である狭小空隙に補修材を注入する補修材注入補修方法において、
請求項1又は2記載の補修材注入用ノズルを前記カートリッジ容器に取り付けた後、前記一対のガイド部を前記狭小空隙に合わせて前記吐出部の先端面を前記狭小空隙に押し当て、前記ガイド部を前記狭小空隙に沿って移動することによって前記補修材注入用ノズルを移動しながら前記補修材を前記狭小空隙に注入することを特徴とする補修材注入補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−77563(P2012−77563A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225665(P2010−225665)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(510266239)株式会社西部旭建装 (1)
【Fターム(参考)】