説明

補助便座掛け

【課題】設置場所の自由度に優れ、それ故にトイレ室内という狭いスペースにおいて所望の場所に収納でき、収納動作が簡単な補助便座掛けを提供する。
【解決手段】本発明に係る補助便座掛け1は、基部3と、基部3に立設された支柱部5と、支柱部5から支柱部5に対して交差方向に延出して補助便座を保持するハンガー部7とを備えてなり、ハンガー部7は、補助便座の開口部周壁を支持することで補助便座を保持すると共に、ハンガー部7に補助便座を保持した状態で補助便座の下端が基部3に当接しない位置に配置されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児等が使用する補助便座を、使用しない保管時に掛ける補助便座掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
洋式便器には大人サイズの便座が設置されているが、大人サイズの便座では幼児の使用には不適である。そのため、幼児が洋式便器を使用できるようにするために大人サイズの便座に載置して使用する幼児用補助便座が知られている。
幼児用補助便座は幼児が用を足すときに使用するため、幼児の使用後は便座から取り外して保管する必要がある。しかし、補助便座は基本的には大人サイズの便座を小さくしたような形状であるため、トイレ内の壁に立て掛けておくとしても、不安定であり、また、補助便座は尿の付着などがあり汚れているため不用意に保管すると不潔である。
【0003】
そこで、幼児用便座を一時的に保管するために用いる用具として、例えば特許文献1に記載された子供用補助便座収納マットが提案されている。
特許文献1に記載された子供用補助便座収納マットは、洗濯可能な防水性に優れた材質の生地を利用したマットの上部に平布を取り付けて、平布の中央折り返し部分とマット上部中央に面ファスナーを取り付けたものである(特許文献1の請求項1参照)。
上記子供用補助便座収納マットを使用する際には、マットの上端部をペーパーホルダーのフタカバーに取り付けることでマットをペーパーホルダーに取り付ける。そして、平布を折り返して、折り返し部分に子供用補助便座を引掛けるようにして保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された子供用補助便座収納マットの場合、マット自体を例えばペーパーホルダー等に取り付ける必要があり、そのための工夫が必要となる。また、マットの取付位置としては、特許文献1に記載されているペーバーホルダーの他、トイレ壁面等しかなく、マットの取付位置に制限がある。そのため、マットを取り付けることができたとしても、そのマットに子供用補助便座を収納した際に、狭いトイレ室内では邪魔になるという問題もある。
また、特許文献1のものは洗濯可能な防水性の材質の生地を使用しているが、このことは洗濯することを前提としていることを意味しており、洗濯の手間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、設置場所の自由度に優れ、それ故にトイレ室内という狭いスペースにおいて所望の場所に収納でき、収納動作が簡単な補助便座掛けを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る補助便座掛けは、基部と、基部に立設された支柱部と、該支柱部から該支柱部に対して交差方向に延出して補助便座を保持するハンガー部とを備えてなり、
該ハンガー部に補助便座の開口部周壁を掛けた状態で補助便座の下端が前記基部に当接しない位置に前記ハンガー部が配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記支柱部は、前記基部の中心位置よりも片側に偏って立設されると共に、前記ハンガー部は前記基部の中心側に向かって延出していることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記ハンガー部は延出方向の先端部が上方に向けて屈曲していることを特徴とするものである。
【0010】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記ハンガー部における屈曲した先端部に滑り止め防止部材を設置したことを特徴とするものである。
【0011】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記基部、前記支柱部又は前記ハンガー部は金属製の線材を屈曲して形成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る補助便座掛けは、基部と、基部に立設された支柱部と、該支柱部から該支柱部に対して交差方向に延出して補助便座を保持するハンガー部とを備えてなり、該ハンガー部に補助便座の開口部周壁を掛けた状態で補助便座の下端が前記基部に当接しない位置に前記ハンガー部が配置されているので、補助便座をハンガー部に引掛けるだけでよく、簡単な動作で補助便座を保管でき、きわめて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの背面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの右側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの底面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの使用状態の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの使用状態の説明図であり、図7の使用状態を別の角度から見た状態を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る補助便座掛けの他の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る補助便座掛け1の構成を図面に基づいて説明する。
本実施の形態に係る補助便座掛け1は、基部3と、基部3に立設された支柱部5と、該支柱部5から該支柱部5と交差方向に延出したハンガー部7とを備えてなるものである。
各部の構造を詳細に説明する。
【0015】
<基部>
基部3は金属製の線材を屈曲して略矩形状に形成されており、前辺9と後辺11が短辺であり、両側辺13が長辺となっている。本明細書において、方向を示す用語として「前」とは、ハンガー部7が支柱部5から延出する延出方向をいい、「後」とはその逆方向をいう。
基部3の四隅近傍には滑り止めとしてのゴムチューブ15が設置されている(図1〜図6参照)。なお、ゴムチューブ15を設ける位置や数は図1〜図6に示したものに限定されず、例えば、図7〜図9に示すように、前辺9側に2個設けるようにしてもよい。
基部3における前辺9は前方に出っ張るように湾曲する湾曲部17を有している(図1〜図6参照)。前方に出っ張る湾曲部17を設けることで、補助便座50を保持した状態での安定度が増す。もっとも、湾曲部17を設けることは必須ではなく、例えば図7〜図9に示すように、前辺9に湾曲部17を設けないようにしてもよい。
基部3の両側辺13に跨るように門型の突出部19が設けられている。突出部19は補助便座50を保持したときに補助便座50の下端部に当接して補助便座50の下端部が前方に動くのを防止する。
基部3の奥行き、すなわち両側辺13の長さは、140mm〜160mmに設定されている。後辺11をトイレ室の壁に当接させたときに、前方に出っ張る長さをできるだけ短くすると共に補助便座を掛けたときに安定するようにするためである。
【0016】
なお、本実施の形態の基部3は線材で形成しているが、本発明の基部3は線材で形成するものに限定されるものではなく、棒材や面材で形成したものも含む。
また、本実施の形態の基部3は略矩形状に形成しているが、本発明の基部3の形状は矩形状に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、正方形、菱形などその他の形状であってもよい。
【0017】
<支柱部>
支柱部5は、基部3と同様に金属製の線材を屈曲して形成され、基部3に溶接にて接合されている。支柱部5は、基部3における後辺11側に偏った位置に立設されている。
支柱部5の形状をより具体的に説明する。支柱部5は、下端側が基部3に接合されて上方に延びる棒材からなり、その上端部が内側に屈曲して、さらにその端部が下方に屈曲している。そして、屈曲した先端部にハンガー部7が線材を屈曲して形成されている。ハンガー部7は支柱部5における下方に屈曲した先端部に形成されているので、支柱部5の上端部には、ハンガー部7よりも上方に延出する上端延出部21が形成されている。
【0018】
また、支柱部5の基部3に対する接合位置は、図4に示すように、基部3の後辺11から前方側に距離Sの位置に設定されている。床に補助便座掛け1を載置する際、基部3の後辺11を壁面に当接させたときに、距離Sが支柱部5と壁面との隙間となる。つまり、支柱部5の基部3に対する接合位置によって決まる距離Sは、基部3の後辺11を壁面に当接させて設置したときの支柱部5と壁面との隙間を規定する。この距離Sは、補助便座50を大人用便座に固定するために補助便座50の下面側に設けられるストッパ部材52(図8参照)の長さよりも長く設定されている。それによって、補助便座50をハンガー部7に保持させたときにストッパ部材52が壁面に当接するのを防止できる。
【0019】
支柱部5の下端部は基部3の側辺13の内側に接合されている。支柱部5を基部3の側辺13の内側に接合することで、別の補助便座掛け1の基部3における開口部を支柱部5に挿入することができ、複数の補助便座掛け1をスタッキングすることが可能になっている。それ故、補助便座掛け1を店舗などにおいて在庫品として保管する際に省スペースでの保管ができる。
【0020】
<ハンガー部>
ハンガー部7は、基部3及び支柱部5と同様に金属製の線材を屈曲して形成され、支柱部5と交差方向に支柱部5から延出して設けられている。ハンガー部7の具体的形状は、平面視で略U字状であり、前述したように支柱部5の先端部に形成されている。
本実施の形態のハンガー部7は、支柱部5に対してほぼ直角で、前方に向う方向、換言すれば基部3の中心側に向かう方向に延出している。
ハンガー部7の先端部は、斜め上方に向って屈曲されている(図1、図4参照)。ハンガー部7の先端部の横辺23には滑り止めとしての塩ビチューブ25が設置されている。
【0021】
ハンガー部7の支柱部5に対する設置位置は、ハンガー部7における前方に延びる辺部27と基部3との距離が180mm〜410mmになるような位置に設定されている。
上記の設置位置を180mm〜410mmに設定した理由を以下説明する。
現在市販されている補助便座に関し、図7に示すように、便座開口部51の後側(ハンドル53が設置されるのと反対側)の周壁と便座前端部との距離A、便座開口部51の前側(ハンドル53が設置される側)の周壁と補助便座後端部との距離Bを計測したところ、距離Aは230mm〜288mmであり、距離Bは263mm〜292mmである。補助便座の端部に掛環が設けられているものも市販されており、そのようなタイプのものでは掛環から他方の端部までの最大長さは400mmである。
なお、補助便座をハンガー部7に横向きに掛けることもでき、その場合、補助便座におけるハンガー部7に引掛ける周壁と該周壁に対向する便座側端部との距離C(図7参照)が問題になるが、市販の補助便座における距離Cを測定したところ、174mm〜202.5mmであった。
以上のように、現在市販されている補助便座をハンガー部7に引掛けることを想定すると、補助便座におけるハンガー部7に引掛けた部位と補助便座の下端との距離は、最も短い場合が174mmであり、最も長い場合が400mmとなる。
そこで、ハンガー部7の支柱部5に対する設置位置としては、上記の寸法に若干の余裕をみて、180mm〜410mmの範囲に設定することにした。ハンガー部7の支柱部5に対する設置位置を、使用する補助便座との関係で前記範囲内の適宜の位置に設定すればよい。
なお、市販されているどの補助便座を掛けても補助便座の下端が基部3に当接しないようにするには、ハンガー部7の支柱部5に対する設置位置を405mm以上に設定すればよい。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態の使用方法を説明する。
補助便座掛け1はトイレ室内に設置するのが通常である。その場合、基部3の後辺11を壁面に当接させて床面に載置する。その状態で、例えば図7、図8に示すように、補助便座50の後方部を上にして、補助便座50の開口部にハンガー部7を挿入して、ハンガー部7における前方に延びる辺部27に補助便座50の開口部後方側の壁面を載置する。このとき、図7、図8に示すように、補助便座50の前部に幼児が持つハンドル53が取り付けられているような場合は、補助便座50の前部の重量が重く、補助便座50をハンガー部7に保持させたときに前部が後方側に振れるが、図8に示すように、補助便座50の下部が支柱部5に当接して略垂直状態で保持される。他方、補助便座50の上部は前方に移動しようとするが、ハンガー部7の先端が斜め上方に向って屈曲しているので、屈曲部でその移動が阻止され、補助便座50は安定して保持される。
また、支柱部5の上端部には、ハンガー部7よりも上方に延出する上端延出部21を有しており、この上端延出部21は補助便座50が後方側に移動するのを阻止して補助便座50がハンガー部7から外れるのを防止する。
【0023】
図7、図8に示されるように、補助便座掛け1における補助便座50に対する当接部分は、ハンガー部7と支柱部5のごく狭い箇所のみであり、補助便座掛け1が補助便座50によって汚されることは極めて少なく、補助便座掛け1の掃除も容易である。
ハンガー部7は、基部3に対して後方寄り設置された支柱から前方方向に延出して設けられているので、ハンガー部7における補助便座50を保持する位置が平面視したときに基部3の中心近傍になる。そのため、補助便座50をハンガー部7に安定的に保持することができる。
【0024】
なお、図7、図8に示す補助便座50のように補助便座50の前部にハンドル53が付いているような場合には、前部が重いので、図7、図8に示すようにハンドル53が付いている前部を下にして保持することで、安定して保持できるので好ましい。
【0025】
補助便座50のハンドル53は、幼児が補助便座50を使い始めたときに幼児が安定して座ることができ補助具として取り付けているものである。幼児が補助便座50に馴れてきたときには、ハンドル53を外して、大人用便座と同様の状態に馴らすようにする。そのような場合には、例えば図9に示すように補助便座50の前部を上にして保持するようにしてもよい。
また、補助便座50の保持態様は図7〜図9に示したものに限られず、例えば補助便座50を横向きにして保持するようにしてもよい。
【0026】
補助便座50の長さが長いものの場合であって、図9に示すような保持方法をしたときには、保持状態で補助便座50の下部が前方に振れようとするが、その際には門型の突出部19が便座に当接してその動きを阻止する。
【0027】
以上のように、本実施の形態の補助便座掛け1によれば、補助便座50をトイレ室という狭い空間内の自由な箇所にしかも省スペースで収納することができる。
また、補助便座掛け1が金属製の線材で形成されているので、汚れ難く、仮に汚れたとしても掃除が簡単である。
さらに、本実施の形態の補助便座掛け1は、補助便座50をハンガー部7に引掛けるだけでよいので、簡単な動作でよく、きわめて便利である。
【符号の説明】
【0028】
1 補助便座掛け
3 基部
5 支柱部
7 ハンガー部
9 前辺
11 後辺
13 側辺
15 ゴムチューブ
17 湾曲部
19 突出部
21 上端延出部
23 横辺
25 塩ビチューブ
27 辺部
50 補助便座
51 便座開口部
52 ストッパ部材
53 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、基部に立設された支柱部と、該支柱部から該支柱部に対して交差方向に延出して補助便座を保持するハンガー部とを備えてなり、
該ハンガー部に補助便座の開口部周壁を掛けた状態で補助便座の下端が前記基部に当接しない位置に前記ハンガー部が配置されていることを特徴とする補助便座掛け。
【請求項2】
前記支柱部は、前記基部の中心位置よりも片側に偏って立設されると共に、前記ハンガー部は前記基部の中心側に向かって延出していることを特徴とする請求項1記載の補助便座掛け。
【請求項3】
前記ハンガー部は延出方向の先端部が上方に向けて屈曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助便座掛け。
【請求項4】
前記ハンガー部における屈曲した先端部に滑り止め防止部材を設置したことを特徴とする請求項3に記載の補助便座掛け。
【請求項5】
前記基部、前記支柱部又は前記ハンガー部は金属製の線材を屈曲して形成してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の補助便座掛け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−24211(P2012−24211A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164425(P2010−164425)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000107066)株式会社リッチェル (77)
【Fターム(参考)】