説明

補強されたパネル

補強されたパネル(1)は、複合材外板(2)と、外板に接着された複数の縦通材(3、4)と、一つ以上の歪みアクチュエータ(5)であり各々が一対の隣接した縦通材の間に位置する歪みアクチュエータ(5)と、を備える。荷重は、外板の平面でパネルに掛けられ、そして、圧縮荷重が予め定められたしきい値を上回るとき、局所歪みが歪みアクチュエータにより外板に掛けられる。これにより、外板が変形し、外板と縦通材の間の境界応力が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材外板と、該外板に接着された複数の縦通材と、を備える補強されたパネルに関する。本発明はまた、この補強されたパネルを変形させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の分野(例えば、重さ、耐久性と生涯コスト)のそれら(複合材)の高水準の性能にもかかわらず、複合材は主要構造物において広くは受け入れられていない。これは、大部分が損傷メカニズムの、そして、損傷を受けたときのそれら(複合材)の挙動の理解不足による。この広い知識及びノウハウの欠如はしばしば大きな構造物につながる。そして、それはすべての新しいデザイン手法を特徴づけている軽量哲学とは対照的なものである。
【0003】
座屈は、補強されたパネル設計で最も論争の的となる問題のうちの一つをいまだに意味する。複合材で成形されたパネルがいかなる損傷も無く座屈荷重よりも高い飛行機荷重を支持することができることはよく知られている。残念なことに、構造物損傷の破壊性と関連したそのような挙動をシミュレーションするテストが複雑で高価であるため、損傷メカニズムを残骸から割出すことが非常に困難になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「可変後退翼のためのsnap-through複合材の残留応力適合の応用」、第47回AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC 構造体・構造体動力学・材料会議(1)2006年5月4日、ニューポート、ロードアイランド
【非特許文献2】「形状変化圧電アクチュエータを持つ二安定複合材」、C.R.Bowen、A.I.T.Salo、R.Butler、E.Chan、H.A.Kim (Key Engineering Materials) 2007年 334-335巻 1109〜1112頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属性機体に関して、応力放出と再分配は、局所塑性変形によって本質的に提供される。そして、損傷は、外板が降伏するか、局所的又は全体的な補強材の座屈によって起こる。局所塑性化は複合物ではほとんど起こらないので、この応力放出の方法は通常、利用できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態は、
複合材外板と、
該外板に接着された複数の縦通材と、
一つ以上の歪みアクチュエータであり、各々が一対の隣接した縦通材の間に位置して、局所歪みを外板に掛けて外板の座屈を誘発するように構成された歪みアクチュエータと、
を備える、補強されたパネルを提供する。
【0007】
本発明の第2の形態は、複合外板と該外板に接着された複数の縦通材を備える補強されたパネルを変形させる方法を提供する。その方法は、外板の平面でパネルに荷重を掛けるステップと、荷重が予め定められたしきい値を上回るとき一つ以上の歪みアクチュエータにより一対の隣接した縦通材の間で局所歪みを外板に掛けるステップと、を備える。
【0008】
本発明は、金属構造物の局所塑性変形から生じるそれ(張力放出)に類似した張力放出が外板で早く座屈を誘発することによって複合材構造物において達成することができることを意識している。
【0009】
外板の平面に掛けられる荷重は、圧縮荷重、剪断荷重または2つの組合せであっても良い。
【0010】
1つの実施形態において、各々の歪みアクチュエータは、2つの安定した状態の間でその形状を変えることによって、局所歪みを掛ける。この場合、各々の歪みアクチュエータは、制御システムを必要とすることなく、自動的にその形状を変える。他の実施形態において、制御システムが提供され、外板の歪みをモニターし、モニターされた歪みが予め定められたしきい値を上回るとき、歪みアクチュエータを駆動する。歪みアクチュエータは、この場合たとえば圧電装置である。能動的な制御とモニタリングのための制御システムの使用は、作動荷重範囲を高めることができ、現下の構造体の外形、挙動と無欠陥性に関する情報を提供することができる。
【0011】
多数の専用の歪みゲージは、必要な入力を制御システムに送る。アクチュエータは要求検知入力を提供する。すなわち、各々のアクチュエータは、外板の歪みを感知して、制御システムによってモニターされる検知信号を発生するように構成される。各々のアクチュエータは制御システムへ検知信号を送ることができ、かつ共通の2方向制御ラインによって制御システムから駆動信号を受け取ることができるので、これは必要な制御ラインの数を減らす。縦通材と外板は、接着剤により、一体成形により、または、他のいかなる適切な結合方法によっても結合される。
【0012】
歪みアクチュエータは、外板に少なくとも部分的に埋められても良い。これは、外板に歪みアクチュエータを結合するための接着剤の必要性を取り除く。
【0013】
本書に記述される実施形態において、外板は、エポキシ樹脂をしみ込ませた複数の単軸のカーボンファイバーから成る複合材料から作られる。しかし、外板は、たとえばガラスファイバー補強金属ラミネート(GLARE)を含む、いかなる複合材料から作られても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照にしながら、これから記述される。
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態による補強されたパネルの平面図である。
【図2】図2は、図1において線AAに沿って切断された断面図である。
【図3】図3は、パネルの一部の拡大した断面図である。
【図4】図4は、アクチュエータの1台の拡大図である。
【図5】図5は、電子制御システムを表す。
【図6】図6は、部分的に組込まれたアクチュエータを表す。
【図7】図7は、完全に組込まれたアクチュエータを表す。
【図8】図8は、制御ラインを支持しているファイバーの断面図である。
【図9】図9は、多安定アクチュエータを採用した補強されたパネルの平面図である。
【図10】図10は、荷重に対する代表的境界変数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
補強されたパネル1の一部は、図1及び2に示される。パネルは、たとえば、航空機翼または胴体の外板を形成する。パネルは、複合材外板2と、外板に一体成形された複数の複合材縦通材3、4と、縦通材の間に位置する二次元配列の圧電歪みアクチュエータ5と、から成る。航空機翼の場合、縦通材は翼の根元からその先端に向かって、スパン方向に走る。
【0017】
図1はパネルの小さな部分だけを表す。そして、それは水平および垂直の両方向にさらに広がる。図2に示すように、各々の縦通材は、外板2から伸びるウェブ3a、4aと、外板2に接着された一対のフランジ3b、4bを備える。
【0018】
各々の歪みアクチュエータ5は、図3と4に示される接着材層5aによって、外板1に接着される。一対の電極10aと10bは、アクチュエータの上下の表面に接着される。各々の電極はそれぞれの制御ライン11a、11bに接続しており、制御ラインは、図5に示される制御システム13に至るケーブル12に一緒に束ねられる。
【0019】
制御システム13は、電極10a、10bの間で電圧を印加することによって、アクチュエータを駆動する。これにより、アクチュエータは圧電効果により電界に直角に伸長又は収縮する。電圧の符号により、アクチュエータが伸長するか又は収縮するかが決定される。
【0020】
歪みアクチュエータ5は又、荷重センサーの働きをする。パネルが変形するとき、これは歪みアクチュエータを伸長させるか収縮させ、次に、電極10a、10bの間で電圧を発生させる。この電圧は、制御システム13によってモニターされる検知信号を提供する。モニターされた電圧がメモリ14に記憶された予め定められたしきい値を上回るとき、制御システム13は駆動信号を発生させる。この駆動信号は、次にアクチュエータを伸長させるか収縮させる原因となる電極の間で、電圧を増減させる。アクチュエータからの検知信号とアクチュエータへの駆動信号が両方同じ制御ラインにより運ばれることに注意すべきである。アクチュエータの変形は、局所歪みを外板に掛け、これにより外板が縦通材の間で変形し、図1、2に示されるしわ6を作る。
【0021】
現在、大多数の航空宇宙用構造体に関して、座屈が設計限界荷重の下で許されないというのが必要条件である。図10は、荷重に対する代表的境界変数(例えば、外板と縦通材の間の境界における剪断荷重またはレーン外への変位)のグラフである。P0とP1の間の領域では、パネルの対向面の間で圧力差を掛けられることによってパネルは加圧される。そのような圧力差は、たとえば外板の一方側の加圧された燃料の存在により、使用中に存在する。点P1とP2の間の領域では、面内の圧縮荷重がパネルに掛けられる。点P2で、パネルは座屈する。このように、歪みアクチュエータ5が無い場合、P2は最大許容荷重を表し、構造体の大きさが、それに応じて実現する。
【0022】
予め加圧されたパネルが座屈荷重に達するとき、横断形状で重要な変化が起こらなければならない。実際、安定した段階において、変形を受けた外形(圧力による1本のしわだけによって表された)は、座屈後の状態において補強材の方向に沿って、一連のしわに変わる。これは飛移( snap-through )現象を通して起こるので、機械変数の突然の変更は安定した状態から不安定な状態への移行を特徴づける。図1は、そのような複数のしわ6のうちの3本を例示する。
【0023】
外部荷重が次第に掛かるならば、移行の直前直後の内部弾性エネルギーは同じでなければならない。弾性エネルギーの同一量が1本のしわだけに分配される又は、いくつかのしわに拡散される場合において、後者の場合に、各々のしわを特徴づけている面外変位の最大値は減少しなければならないので、各々の境界応力コンポーネントは比例して減少する、ということは直観的に理解される。これは、座屈がパネルと縦通材の間の境界で応力放出を誘発することを意味する。
【0024】
座屈荷重P2以下(たとえば座屈荷重P2の60%または80%)でしきい値をメモリ14にセットすることによって、アクチュエータ5は、更なる応力場をつくり、座屈荷重P2に達する前に外板を座屈させるように誘発する。この早い座屈は、相互接着された外板/補強材の境界で、続いて起こる応力放出を引き起こす。パネルはそれから安定後の状態で作動し、低減された境界応力はより高い荷重レベルにおいてそれらの限界値に達する。その結果、作動荷重能力は向上され、全体的な性能の顕著な向上と重量低減が達成される。図6は、アクチュエータ5が外板2の表面の凹部に部分的に埋められる別の装置を例示する。図7は、アクチュエータ5が外板2に完全に埋められている別の装置を例示する。
【0025】
外板2と縦通材3、4は各々、一連の複合材層から作られ、各々の層がエポキシ樹脂をしみ込ませた複数の単軸中空カーボンファイバーから成る。図6、7に示される部分的又は完全に埋められた配列体において、制御ライン11a、11bの一方または両方は、それぞれの炭素繊維の中空部中心に沿って走っても良い。これは図8に示され、図8はその中空部中心で制御ライン11bを含んでいる中空炭素繊維21の横断面である。導電性金属制御ライン11bと導電性のカーボンファイバー21の間の空間は、絶縁体の働きをする樹脂20が充填される。
【0026】
図9に示される本発明の他の実施形態において、圧電歪みアクチュエータ5は、2つ以上の安定した状態の間でそれらの形状を変えることによって局所歪みを外板に掛ける多安定アクチュエータ30に置換えられる。そのような構造体の例は、非対称的なラミネートである。いろいろな非対称的なラミネート構造体は、以下に記述される。
「可変後退翼のためのsnap-through複合材の残留応力適合の応用」、第47回AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC 構造体・構造体動力学・材料会議(1)2006年5月4日、ニューポート、ロードアイランド
「形状変化圧電アクチュエータを持つ二安定複合材」、C.R.Bowen、A.I.T.Salo、R.Butler、E.Chan、H.A.Kim (Key Enginneering Materials) 2007年 334-335号 1109〜1112頁
【0027】
その最も単純な例は、0度/90度の積層順序による四角いプレートである。高温で成形されたプレートは、冷却された後、力を受けると第2の円筒形へ簡単にスナップ(突然変形)されることができる円筒形を示す。
【0028】
この場合、電気制御システムまたはメモリは、必要でない。その代わりに、アクチュエータ30は固有の材料特性を持っており、この材料特性は、パネルの荷重が要求しきい値を上回るとき、それら(複数のアクチュエータ30)を安定した状態の間でスナップ(突然変形)させる。これが、外板がアクチュエータ30により掛けられる局所歪みにより早く座屈する原因になる。
【0029】
本発明が一つ以上の好ましい実施形態に関して上に記述されたが、いろいろな変形または修正が添付の請求項において定められた発明の範囲から逸脱することなくなされても良いことはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材外板と、
該外板に接着された複数の縦通材と、
一つ以上の歪みアクチュエータであり、各々が一対の隣接した前記縦通材の間に位置して、局所歪みを前記外板に掛けて前記外板の座屈を誘発するように構成された歪みアクチュエータと、
を備える、補強されたパネル。
【請求項2】
前記外板の歪みをモニターし、モニターされた歪みが予め定められたしきい値を上回るとき、前記歪みアクチュエータを駆動するように構成された制御システムを更に備える請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記歪みアクチュエータの各々が前記外板の歪みを感知して、制御システムによってモニターされる検知信号を発生するように構成された請求項2に記載のパネル。
【請求項4】
前記歪みアクチュエータの各々が制御システムに検知信号を送り、共通の2方向制御ラインによって前記制御システムから駆動信号を受け取る請求項3に記載のパネル。
【請求項5】
前記歪みアクチュエータの各々が2つの安定した状態の間で前記歪みアクチュエータの形状を変えることによって局所歪みを掛ける請求項1に記載のパネル。
【請求項6】
前記縦通材と前記外板が一体成形された請求項1から5のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項7】
前記歪みアクチュエータの各々が、接着材層によって外板に接着された請求項1から6のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項8】
前記歪みアクチュエータの各々が外板の中に少なくとも部分的に埋められた請求項1から7のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項9】
前記歪みアクチュエータの各々が圧電装置である請求項1から8のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項10】
前記外板が積層複合材料から形成された請求項1から9のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項11】
複合材外板と該外板に接着された複数の縦通材とを備える補強されたパネルを変形させる方法であって、
前記外板の平面でパネルに荷重を掛けるステップと、
荷重が予め定められたしきい値を上回るとき一つ以上の歪みアクチュエータにより一対の隣接した縦通材の間で局所歪みを外板に掛けるステップと、
を備える方法。
【請求項12】
前記外板の歪みをモニターするステップと、モニターされた歪みが予め定められたしきい値を上回るとき歪みアクチュエータを駆動するステップと、を更に備える請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−526725(P2010−526725A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507990(P2010−507990)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050294
【国際公開番号】WO2008/139214
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)