説明

補強板材

【課題】上部からの荷重に対して支持力が強堅であり、且つ強度が向上した補強板材を提供する。
【解決手段】建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材11であって、該補強板材11は、所定長さの床板12と、該床板12の中央部12a近傍に設けられる補強部13と、前記床板12の両端部に設けられる板状のリブ14と、該リブ14と前記補強部13とを挿通する棒状部材15と、該棒状部材15の少なくとも一端部に螺着するナット16と、前記床板12の両側部に設けられる側板17とから構成され、前記ナット16を締め付けて前記棒状部材15を緊張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の桁材等に架け渡して設置する補強板材に関するものであり、更に詳しくは、上部からの荷重に対して支持力が強堅であり、且つ強度が向上した補強板材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の補強板材としては、図12に示す構成のショベル機サポート装置が知られている。このサポート装置1は、断面H型の鉄鋼材で形成された所定長さの本体部2と、この本体部2の両端部2a、2aに溶接手段で固着した一対の支持板3、3と、両方の支持板3、3の間に挿通した2本の棒状部材4、4とから構成される。本体部2の両側部は側板6、6が設けられており、また、本体部2の上部には凸状の滑り止め7が複数設けられている。
【0003】
そして、棒状部材4の一端部をナット5で締め付けて緊張し、サポート装置1に張力を生じさせることにより、上部からの荷重に対して支持力を強化したのである(特許文献1参照)。
【0004】
このような構成のサポート装置1は、鉄筋コンクリート建物等の解体時に、梁材の間に架け渡して一対設置する。そして、両方のサポート装置1の上部に、作業機の左右のキャタピラをそれぞれ載せることで、サポート装置1が作業機の振動や重圧を支える役目を果たすのである。
【特許文献1】特開2002−371713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例のサポート装置1においては、横長の長尺形状であると共に、棒状部材4を緊張しているので、上部からの荷重が加わると、捩れた状態の歪みが生じるという欠点を有している。この場合は、荷重に対しての支持力が発揮できないので、実質的にはサポート装置1の使用は不可能である。
【0006】
また、サポート装置1に荷重が加わって下方に湾曲したときに、本体部2と棒状部材4とが接触することになる。この場合も上記の場合と同様に、上部からの荷重に対して充分な支持力が発揮できないので、実質的にはサポート装置1の使用は不可能である。
【0007】
更に、本体部2の両側部には側板6、6が設けられているので、本体部2の上に載ったキャタピラがサポート装置1から脱落しないという利点はある。しかしながら、移動領域が限られてしまうので、床面を自在に移動する作業には対応できない。従って、返って側板6、6が邪魔であるという欠点も有する。
【0008】
従って、従来例におけるサポート装置1においては、捩れて歪みが生じないようにすることと、本体部2と棒状部材4とが接触しないようにすることと、側板6が邪魔にならないようにすることとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決する具体的手段として本発明は、建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、該補強板材は、所定長さの床板と、該床板の中央部近傍に設けられる補強部と、前記床板の両端部に設けられる板状のリブと、該リブと前記補強部とを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張することを特徴とする補強板材を提供するものである。
【0010】
そして、前記補強部は、前記床板の下部に設けられる一対の板部と、該板部の下部に有する底板部とからなる構成としたものである。
【0011】
また、本発明は、建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、該補強板材は、所定長さの床板と、該床板に複数設けられる板状のリブと、該リブを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張することを特徴とする補強板材を提供するものである。
【0012】
そして、前記側板の少なくとも一方の端部は、係止部が設けられている構成を含むものであり、さらに、前記側板は、前記床板よりも所定高さ起立している構成を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る補強板材は、建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、該補強板材は、所定長さの床板と、該床板の中央部近傍に設けられる補強部と、前記床板の両端部に設けられる板状のリブと、該リブと前記補強部とを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張することによって、補強板材に張力が生じることとなり、上部からの荷重に対して支持力が強化される。
この場合、床板の中央部近傍に補強部を有することにより、上部から荷重が加わったときに下方に湾曲し難くなり、床板の形状が安定する。更には、従来例のものと異なり、床板と棒状部材とが接触しないので、荷重に対して充分な支持力が発揮できる。
そして、従来例のものと比較して荷重に対する支持力が向上するので、結果的に軽量化が可能であるという種々の優れた効果を奏する。
【0014】
そして、補強部は、前記床板の下部に設けられる一対の板部と、該板部の下部に有する底板部とからなることによって、この補強部の存在により、上部から荷重が加わっても、従来例のような歪みが生じることなく、荷重に対して充分な支持力が発揮できる。
更には、棒状部材は板部とリブとの間を挿通するので、従来例のものと比較して、棒状部材が短くなり、結果的に補強板材の長尺化が可能である。また、製造コストも低減できるという種々の優れた効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る補強板材は、建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、該補強板材は、所定長さの床板と、該床板に複数設けられる板状のリブと、該リブを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張することによって、補強板材に張力が生じることとなり、上部からの荷重に対して支持力が強化される。
この場合、板状のリブが複数存在するので、上部から荷重が加わっても、従来例のような歪みが生じない。従って、荷重に対して充分な支持力が常に発揮できる。
また、棒状部材はリブを挿通しているので、従来例のものと異なり、床板と棒状部材とが接触しない。つまり、荷重に対して充分な支持力が発揮できるという種々の優れた効果を奏する。
【0016】
そして、側板の少なくとも一方の端部は、係止部が設けられていることによって、例えば、ビルの解体時に、係止部を階上の梁に係止させて、他方の端部を階下に接地させれば、補強板材の上を渡って作業機が階下に降りることができるという優れた効果を奏する。
【0017】
更に、側板は、前記床板よりも所定高さ起立していることによって、上記のように、補強板材の上を渡って作業機が降りるときに、作業機のキャタピラが補強板材から脱落しないという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1から図3に示した第1実施例において、符号11は補強板材を示し、この補強板材11は、所定長さの床板12と、この床板12の中央部近傍に設けられる補強部13と、床板12の両端部に設けられるリブ14と、このリブ14と補強部13とを挿通する棒状部材15と、この棒状部材15の両端部に螺着するナット16と、床板12の両側部に設けられる側板17とから構成される。また、補強板材11は全体的に鉄鋼材で形成される。
【0019】
床板12は、所定の厚さを有すると共に、横長の長尺形状に形成されている。
【0020】
補強部13は、具体的には、床板12の下部に設けられる一対の板部18、18と、この板部18の下部に有する底板部19とからなる。一対の板部18、18は、床板12の中央部12aを中心にして対向状態に設けられている。そして、板部18の上部が床板12の下部に溶接手段で一体に設けられており、板部18の下部に床板19が一体に設けられている。
【0021】
リブ14は、矩形状で板状に形成されており、リブ14の上部が床板12の下部に溶接手段で一体に設けられている。
【0022】
棒状部材15は、具体的にはPC鋼棒であり、所定長さに形成されると共に、板部18とリブ14との間を挿通した状態で設けられている。また、棒状部材15の両方の端部にはナット16、16が螺着されている。なお、棒状部材15は、各図において1本設けられているが、必ずしもこれに限定されることはなく、複数本設けてもよいことは勿論である。
【0023】
側板17は、長尺上の板状に形成されており、両端のリブ14、14の間に渡って設けられていると共に、補強部13の側部に固着している。
【0024】
以上のように構成された補強板材11は、ナット16を締め付けて棒状部材15を緊張することで、補強板材11に張力が生じ、上部からの荷重に対して支持力が強化されるのである。また、床板12の中央部に補強部13を有するので、上部から荷重が加わったときに下方に湾曲し難く、床板の形状が安定すると共に、荷重に対して充分な支持力が発揮できる。そして、結果的に補強板材11の軽量化が可能になる。
【0025】
次に、図4及び図5に第2実施例を示す。この補強板材21は、所定長さの床板22と、この床板22に複数設けられるリブ23と、このリブ23を挿通する棒状部材24と、この棒状部材24の両端部に螺着するナット25と、床板22の両側部に設けられる側板26とから構成される。また、補強板材21は全体的に鉄鋼材で形成される。
【0026】
床板22は、所定の厚さを有すると共に、横長の長尺形状に形成されている。
【0027】
リブ23は、矩形状で板状に形成されており、リブ23の上部が床板22の下部に溶接手段で一体に設けられていると共に、床板22に対して所定の間隔を開けて複数箇所に設けられている。
【0028】
棒状部材24は、具体的にはPC鋼棒であり、所定長さに形成されると共に、複数のリブ23を挿通した状態で設けられている。また、棒状部材24の両方の端部にはナット25、25が螺着されている。なお、棒状部材24は、各図において1本設けられているが、必ずしもこれに限定されることはなく、複数本設けてもよいことは勿論である。
【0029】
側板26は、長尺上の板状に形成されており、複数のリブ23の間に渡って固着されている。
【0030】
以上のように構成された補強板材21は、ナット25を締め付けて棒状部材24を緊張することで、補強板材21に張力が生じ、上部からの荷重に対して支持力が強化されるのである。また、リブ23が複数存在するので、上部から荷重が加わっても、従来例のような歪みが生じない。つまり、荷重に対して充分な支持力が発揮できる。更に、棒状部材24はリブ23を挿通しているので、従来例と異なり、床板22と棒状部材24とが接触しない。つまり、荷重に対して充分な支持力が常に発揮できる。
【0031】
次に、図6に第3実施例を示す。この第3実施例において、前記第2実施例と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0032】
この補強板材27は、側板28の一方の端部28aに係止部29が設けられている。また、側板28は、所定高さ起立して上部28cが床板22よりも上に突出している。そして、床板22の上部には凸状の滑り止め28dが複数設けられている。
【0033】
係止部29は、図7に示すように、ビル40の解体時に、階上41の梁42に係止させる部位であり、他方の端部28bを階下43に接地させれば、補強板材27の上を渡って作業機44が階下43に降りることができる。
【0034】
また、作業機44が補強板材27の上を渡って階下43に降りるときに、上部28cが作業機44のキャタピラ45をガードするので、補強板材27から脱落しない。
【0035】
次に、以上のような構成の補強板11(21)が、上部からの荷重に対して支持力が強化される理由について説明する。まず、図8に示すように、板体30の上部から荷重Aが加わると、板体30の下部31では、矢印B方向に示すような引き裂かれる力が発生する。
【0036】
これに対して、図9に示すように、板体32の下部に棒状部材33を設け、その端部のナット34を締めると棒状部材33が緊張し、矢印Cに示すような圧縮反力が発生することとなる。従って、上部からの荷重Aに対して支持力が強化されるのである。
【0037】
次に、以上に説明した補強板材11(21)の使用方法の一例について説明する。まず、図10に示すように、鉄筋コンクリート建物35の解体時に、桁材36(又は梁材)の間に補強板材11(21)を架け渡して隣接した状態に設置して、所謂作業機のサポート装置として使用することができる。
【0038】
この場合は、作業機が補強板材11(21)の上を自在に移動できると共に、補強板材11(21)が作業機の振動や重圧を支える役目を果たして、荷重を桁材36に分散することができる。
【0039】
また、地下鉄工事、共同溝工事、下水溝工事、地下建築物工事等の際に、覆工板として使用することができる。つまり、図11に示すように、地下構造物37の上部に所定間隔ごとに桁材38を設け、その上に補強板材11(21)を架け渡して隣接した状態に設置する。さらにその上にアスファルト39を敷設する。アスファルト39の上を車両等が通行した場合は、補強板材11(21)が車両の重圧を支える役目を果たして、荷重を桁材38に分散する。
【0040】
その他にも、補強板材11(21)は、建築物の梁材、建築資材、あるいは型枠等、上部からの荷重を強堅に支持する建設資材として、種々な用途に応用して使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例に係る補強板材11の、側板17の一部を破断して示した正面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る補強板材11の底面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る補強板材11の側面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る補強板材21の、側板26の一部を破断して示した斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る補強板材21の、側板26の一部を破断して示した正面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る補強板材27の正面図である。
【図7】補強板材27の上を渡って作業機44が階下43に降りる状態の説明図である。
【図8】板体30の上部から荷重Aが加わった状態を示す説明図である。
【図9】棒状部材33が緊張して圧縮反力が発生する状態を示す説明図である。
【図10】補強板材11(21)を作業機のサポート装置として用いる状態を示す説明図である。
【図11】補強板材11(21)を覆工板として用いる状態を示す説明図である。
【図12】従来例に係るサポート装置1を分離して示した斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 サポート装置
2 本体部
2a 端部
3 支持板
4 棒状部材
5 ナット
6 側板
7 滑り止め
11 補強板材
12 床板
12a中央部
13 補強部
14 リブ
15 棒状部材
16 ナット
17 側板
18 板部
19 底板部
21 補強板材
22 床板
23 リブ
24 棒状部材
25 ナット
26 側板
27 補強板材
28 側板
28a、28b端部
28c上部
29 係止部
30 板体
31 下部
32 板体
33 棒状部材
34 ナット
35 鉄筋コンクリート建物
36 桁材
37 地下構造物
38 桁材
39 アスファルト
40 ビル
41 階上
42 梁
43 階下
44 作業機
45 キャタピラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、
該補強板材は、所定長さの床板と、該床板の中央部近傍に設けられる補強部と、前記床板の両端部に設けられる板状のリブと、該リブと前記補強部とを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、
前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張すること
を特徴とする補強板材。
【請求項2】
前記補強部は、前記床板の下部に設けられる一対の板部と、該板部の下部に有する底板部とからなることを特徴とする請求項1に記載の補強板材。
【請求項3】
建設物に設置して上部からの荷重を支持する補強板材であって、
該補強板材は、所定長さの床板と、該床板に複数設けられる板状のリブと、該リブを挿通する棒状部材と、該棒状部材の少なくとも一端部に螺着するナットと、前記床板の両側部に設けられる側板とから構成され、
前記ナットを締め付けて前記棒状部材を緊張すること
を特徴とする補強板材。
【請求項4】
前記側板の少なくとも一方の端部は、係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載の補強板材。
【請求項5】
前記側板は、前記床板よりも所定高さ起立していることを特徴とする請求項1又は3に記載の補強板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−179946(P2009−179946A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17319(P2008−17319)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(307043234)株式会社テクノ (3)
【Fターム(参考)】