説明

製氷機の貯留タンク

【課題】フロートスイッチの下方にスケールが堆積するのを防止し得る製氷機の貯留タンクを提供する。
【解決手段】タンク本体37には、水位規定壁102を越えた製氷水を排出するオーバーフロー部90と、フロートユニット58とが配設される。また、タンク本体37には、オーバーフロー部90とフロートユニット58との間に延在する仕切板88が配設される。仕切板88は、上端部が排出水位より上方に位置すると共に下端部がタンク本体37の底部60aから離間する部位を有する。更に、タンク本体37には、仕切板88の下端部とタンク本体37の底部60aとの間に画成された流通口98と、仕切板88および水位規定壁102の間に画成された流通路部110とが形成される。流通路部110は、タンク本体37における仕切板88よりフロートユニット58側の空間に較べて狭小な空間に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、氷を製造するに際して使用される水を貯留可能な製氷機の貯留タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、氷を連続的に製造する自動製氷機として、一対の製氷板の間に配設された蒸発管に供給される冷媒により各製氷板の製氷面を冷却して氷を製造する流下式の製氷機が知られている(例えば、特許文献1参照)。図7は、従来の流下式製氷機10の製氷部12および製氷水タンク(貯留タンク)14を概略的に示す説明図である。この流下式製氷機10は、一対の製氷板16,16と、図示しない冷凍系から導出する蒸発管18とから構成された製氷部12を備え、該製氷部12の下方に製氷水タンク14が配設されている。
【0003】
前記製氷水タンク14は、所定量の製氷水を貯留可能な収容部が内部画成され、該製氷水タンク14に配設された循環ポンプ20の吸込口20aが該タンク14の底部付近に臨んでいる。また、前記製氷水タンク14には、製氷水の水位に合わせて昇降するフロート22を備えたフロートスイッチ24が配設されている。そして、製氷運転時に製氷水タンク14内の製氷水が減少してフロート22が所定の下限水位まで下降すると、該下限水位をフロートスイッチ24が検知して、製氷運転を終了するよう設定される。
【0004】
また、前記製氷水タンク14には、オーバーフロー管26が配設されている。このオーバーフロー管26は、製氷水タンク14の底部から所定高さで立ち上がり上下方向に開放した筒状体で構成されている。そして、製氷水タンク14内の製氷水の水位がオーバーフロー管26を越えると、該オーバーフロー管26を介して製氷水が製氷水タンク14の外部へ排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、製氷水タンク14に貯留される製氷水はカルシウム等を含有しているため、長期間運転を続けると製氷水中のカルシウム等がスケールSとなって析出し、製氷水タンク14の底部に堆積することがある(図7の拡大図参照)。特に、スケールSがフロートスイッチ24の下方に堆積してしまうと、製氷運転で製氷水の水位が下限水位まで低下しても、スケールSがフロート22に干渉してフロート22が下限水位まで下降できなくなることがあった。その結果、フロートスイッチ24が下限水位を検知することができず、製氷運転が終了されなくなる不具合が生じる。また、下限水位まで下降したフロート22にスケールSが引っ掛かり、フロート22が上昇不能に陥ることもある。このような場合、給水により製氷水タンク14内の製氷水が増加しても、フロート22が下限水位に停止して、フロートスイッチ24が下限水位を検知し続ける状態となってしまう。
【0007】
そこで本願は、従来の製氷機の貯留タンクに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、フロートスイッチの下方にスケールが堆積するのを抑制し得る製氷機の貯留タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
底部および側壁部を有する箱状に形成され、氷の製造に際して用いられる水を貯留可能なタンク本体と、
前記タンク本体の底部から該タンク本体に設定された排出水位の高さまで立ち上がる水位規定壁を備え、該水位規定壁を越えた水をタンク本体外へ排出するオーバーフロー部と、
前記タンク本体における前記オーバーフロー部側に偏倚して配設され、タンク本体の底部付近に設定した下限水位にフロートが下降すると該下限水位を検知するフロートスイッチと、
前記オーバーフロー部とフロートスイッチとの間に延在するよう前記タンク本体の対向する側壁部間に亘って配設され、上端部が前記排出水位より上方に位置すると共に下端部がタンク本体の底部から離間する部位を有する仕切板と、
前記仕切板の下端部とタンク本体の底部との間に画成されて水が流通可能な流通口と、
前記仕切板および前記水位規定壁の間に形成され、前記流通口に連通して水が流通する流通路部とを備え、
前記流通路部は、前記タンク本体における前記仕切板よりフロートスイッチ側の空間に較べて狭小な空間に設定されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、タンク本体の側壁部間に亘って仕切板を配設すると共に、仕切板の下部とタンク本体の底部との間に流通口を画成し、更に、仕切板と水位規定壁との間に狭小な流通路部を形成した。従って、狭小な流通路部を水が流通する際の流速が大きくなって流通口から引き込まれる水の流速も大きくなり、タンク本体の底部付近を水が勢いよく流通することになる。このため、フロートスイッチの下方にスケールが堆積するのを好適に抑制して、フロートが下限水位まで到達し得なくなったり、フロートがスケールに引っ掛かって上昇不能に陥るといた事態が生じるのを抑制し得る。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記水位規定壁および仕切板は、タンク本体に一体的に形成されていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、水位規定壁および仕切板をタンク本体に一体的に形成したから、製造コストを低廉にすることができる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記仕切板または水位規定壁に、前記水位規定壁または仕切板との離間距離が増大して前記流通路部を拡開させる拡開部が形成されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、仕切板に流通路部を拡開させる拡開部を形成したから、拡開部を形成した部位での流通路部の流通量を多くすることができる。従って、タンク本体内の余剰水を確実に排出することができ、貯留タンクにおけるオーバーフロー部以外の部位から水が溢れ出るのを防止することができる。また、余剰水の排出量が少ないと、排出水位以上に水がタンク本体内に貯留される場合があるが、流通路部に拡開部を設けて排出量を多く確保することで、タンク本体内の水が排出水位以上に貯留されるのを防止し得る。更に、流通路部における拡開部以外の部位は狭小な空間だから、当該部位での水の流速は確保され、タンク本体の底部付近の水の流れは高速に維持される。
【0011】
請求項4に係る発明では、
前記フロートスイッチを挟んで仕切板とは反対側の前記タンク本体に、該タンク本体の対向する側壁部間に亘って波打ち防止板が配設され、
前記波打ち防止板は、下端部が前記タンク本体の底部から離間すると共に、該下端部および前記タンク本体の底部の離間距離より大きな離間距離で上端部が前記排出水位より下方に離間するよう設定したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、波打ち防止板の下端部がタンク本体の底部から離間すると共に、波打ち防止板の高さ寸法を低くしたので、水が波打ち防止板を通過する際に流速の変化が生じるのを抑制し得る。その結果、タンク本体の底部付近を水が勢いよく流れることができ、フロートスイッチの下方にスケールが堆積し難くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る製氷機の貯留タンクによれば、フロートスイッチの下方にスケールが堆積するのを抑制して、フロートスイッチに不具合が生ずるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例に係る流下式製氷機の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施例に係る製氷水タンクを示す分解斜視図である。
【図3】実施例に係る第2タンク部を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】変更例に係る波打ち防止板が配設された製氷水タンクの側断面図である。
【図7】従来例に係る流下式製氷機の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る製氷機の貯留タンクにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、本発明が対象とする製氷機の貯留タンクは、氷の製造に際して用いられる製氷水、除氷水等の水を貯留し得るものであれば、全ての貯留タンクが対象とされる。実施例では、製氷機の貯留タンクとして、流下式製氷機の製氷水タンクを例に説明する。なお実施例では、図2に示す矢印の方向から製氷水タンクを見た状態を基準として、「前」、「後」、「左」、「右」を指称する。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係る流下式製氷機30を製氷機筐体や冷凍機構等を省略して概略的に示した図である。流下式製氷機30は、一対の製氷板32,32から構成された製氷部34と、該製氷部34の下方に配設された製氷水タンク36とを備えている。前記製氷板32,32の間には冷凍機構から導出する蒸発管38が蛇行状に配設され、製氷運転に際して該蒸発管38に冷媒が循環供給されると共に、除氷運転に際して該蒸発管38にホットガスが循環供給されるようになっている。製氷部34の上部には、後述するポンプユニット(ポンプ)40から導出する製氷水供給管42が接続された散水手段44が配設され、製氷運転時に散水手段44に設けた製氷水噴射孔46を介して製氷水が製氷板32,32の表面に供給されるようになっている。散水手段44には、図示しない外部水道源から導出する除氷水供給管48が接続されており、該除氷水供給管48に給水弁50が配設されている。そして、除氷運転時に給水弁50が開放されて除氷水供給管48から散水手段44に常温の水(除氷水)が供給され、該散水手段44に設けた除氷水噴射孔52を介して製氷板32,32の裏面に除氷水が供給されるよう構成される。なお、除氷運転時に製氷部34に供給された除氷水は、製氷水タンク36に回収され、次回の製氷運転において製氷水として使用される。
【0016】
図2に示すように、前記製氷水タンク36は、平面視で略L字状に形成された底部56a,60aと、該底部56a,60aの周縁部から上方に立ち上がる側壁部54とが一体的に形成されたタンク本体37を基本構成とし、上方に開放する箱状に形成されている。タンク本体37は、前後方向に延在して所定量の製氷水を貯留可能な第1タンク部56と、該第1タンク部56の前端部から側方(右方)へ延在してポンプユニット40や後述するフロートユニット(フロートスイッチ)58等が配設される第2タンク部60とから構成される。図1に示すように、タンク本体37には、製氷水の水位として、第2タンク部60の底部(以下、第2底部60aと称する)から僅か上方に設定した下限水位が規定されており、製氷運転においてタンク本体37内の製氷水が下限水位まで減少すると製氷運転が終了されるようになっている。前記第1タンク部56は、前記製氷部34の下方に位置するよう配設され、該製氷部34に供給された製氷水や除氷水を第1タンク部56で受け止めて回収するよう構成される。第2タンク部60には、前記ポンプユニット40およびフロートユニット58を取り付けるための設置部材62が配設される。
【0017】
図2に示すように、前記ポンプユニット40は、ポンプモータ64と、該ポンプモータ64の下部から下方に延出する柱状のポンプ部66とから構成され、該ポンプモータ64およびポンプ部66の間に矩形状の取付板69が配設されている。ポンプ部66の下端部には、下方へ向けて開口する吸込口68(図1参照)と左方へ向けて開口する吐出口70とが夫々形成されている。前記吐出口70には、前記製氷水供給管42が接続され、吸込口68から吸入した製氷水は、吐出口70から吐き出され、製氷水供給管42を介して前記製氷部34に供給される。前記フロートユニット58は、スイッチ部72と、該スイッチ部72の下部に配設した略菱形のフランジ板74と、該フランジ板74から下方に延出する一対のスライド棒76,76と、該スライド棒76,76に沿って上下に移動可能なフロート78とを備えている。また、図1に示すように、前記スライド棒76,76の下端には、抜止め板80が配設され、該抜止め板80によりフロート78がスライド棒76,76から抜け落ちるのを防止している。
【0018】
前記設置部材62は、左方および下方に向けて開放する箱状に形成され、前記第2タンク部60の略全体を覆うように上側から配設される(図1参照)。図2に示すように、設置部材62の上面部には、矩形状の矩形設置孔82が開設され、該矩形設置孔82にポンプユニット40のポンプ部66が上側から挿通されるようになっている。矩形設置孔82の開口寸法は、取付板69の寸法より小さく設定されており、取付板69を設置部材62の上面部に上側から当接させて該取付板69をネジ止めすることで、ポンプユニット40が設置部材62に固定される。また、設置部材62の上面部における矩形設置孔82の右方には、円形状の円形設置孔84が開設され、該円形設置孔84に前記フロートユニット58のスイッチ部72が下側から挿通されるようになっている。そして、フランジ板74を前記設置部材62に設けた図示しないフックに嵌め込むことで、フロートユニット58が設置部材62に固定される。
【0019】
図1に示すように、設置部材62を第2タンク部60に配設した状態では、前記ポンプ部66およびフロート78が第2タンク部60の内部に左右に並んだ状態で収容される。そして、ポンプ部66の下端部が第2底部60aから僅かに上方に離間し、前記吸込口68が下限水位の下方に位置するようになっている。また、フロートユニット58については、前記抜止め板80が第2底部60aから僅かに上方へ離間するよう構成される。タンク本体37内に製氷水が貯留されると、前記フロート78が製氷水の水位に応じてスライド棒76,76を上下に移動するようになっている。そして、フロート78が下限水位まで下降すると、前記スイッチ部72が下限水位(製氷完了)を検知するよう設定されている。
【0020】
図1に示すように、前記第2底部60aは、前記第1タンク部56の底部(以下、第1底部56aと称する)より下方に位置しており、第1底部56aおよび第2底部60aは、左方から右方に向けて下方傾斜する傾斜部86により連結されている。図3に示すように、第2タンク部60には、前記フロートユニット58の右側を延在するよう仕切板88が一体的に形成され、この仕切板88により、第2タンク部60の内部の領域が、ポンプユニット40およびフロートユニット58が配設された領域と、後述するオーバーフロー部90側の領域とに区分けされている。前記仕切板88は、第2タンク部60の前側の側壁部54および後側の側壁部54(対向する側壁部)間に亘って配設され、仕切板88の上端部は、タンク本体37の側壁部54の上端部と略同一の高さに設定される。図3に示すように、前記仕切板88は、後方から前方に向けて右方へ傾斜すると共に第2タンク部60の後側の側壁部54に連接した第1仕切部92と、該第1仕切部92の右端部から右方へ延出する第2仕切部94と、該第2仕切部94の右端部および第2タンク部60の前側の側壁部54に連接する第3仕切部96とから構成されている。
【0021】
図4に示すように、第1仕切部92および第2仕切部94は、何れも下端部が第2底部60aに連接されている。一方、図5に示すように、前記第3仕切部96の下端部は、前記下限水位より下方であって、第2底部60aから僅かに上方へ離間しており、第3仕切部96の下端部および第2底部60aの間に左右に開口して製氷水が流通可能な流通口98が画成されている。すなわち、前記流通口98は、図4に示すように、第2底部60a側のフロートユニット58に近接した位置で開口しており、仕切板88より左側の領域の製氷水は、流通口98のみを介して仕切板88の右側の領域へ移動し得るようになっている。図3に示すように、前記第3仕切部96における前後の側縁部には、拡開部100,100が夫々形成されている。後側の拡開部100は、前方から後方に向けて左方へ傾斜し、また、前側の拡開部100は、後方から前方に向けて左方へ傾斜している。
【0022】
図3に示すように、前記第2タンク部60における右端部には、タンク本体37内の製氷水の上限水位(排出水位)を規定するオーバーフロー部90が形成されている。実施例のオーバーフロー部90は、第2底部60aから所定高さで立ち上がる水位規定壁102と、該水位規定壁102、前記第1および第2仕切部92,94、第2タンク部60の前後および右側の側壁部54,54,54が囲繞する領域に画成された排水受け部104とから構成される。水位規定壁102は、前後方向に延在する仕切壁基部106と、該仕切壁基部106の前後の側縁部から左方へ延出して前記仕切板88に連接する仕切壁端部108,108とから平面視でコ字状に形成されている。この水位規定壁102は、第2タンク部60に一体的に形成されている。図4に示すように、水位規定壁102の上端部は、前記仕切板88の上端部より下方に位置しており、該水位規定壁102の上端部が製氷水タンク36の排出水位を規定している。図3に示す如く、前記仕切壁基部106の前後の寸法は、前記第3仕切部96の前後の寸法と略同一に設定されており、水位規定壁102は、前記第3仕切部96を右側から囲繞するよう設けられている。また、前記流通口98の前後の開口寸法は、仕切壁基部106の前後の寸法より小さく設定されており、流通口98は、水位規定壁102がなす内側の空間(前後の仕切壁端部108,108の間)で開口している。
【0023】
ここで、図3に示すように、前記仕切壁基部106は、仕切板88の第3仕切部96と略平行に対向し、仕切板88および水位規定壁102により画成される前後方向に長尺な空間は、製氷水が流通可能な流通路部110とされる。図4に示すように、この流通路部110は、下部側で流通口98に連通しており、該流通口98を通過した製氷水が流通路部110を上昇するようになっている。そして、製氷水が水位規定壁102(すなわち、排出水位)を越えると、該水位規定壁102の外部(すなわち、仕切壁基部106の右方および後側の仕切壁端部108の後方)へ製氷水が排出されるようになっている。ここで、流通路部110における第3仕切部96と仕切壁基部106とがなす空間は、第2タンク部60における仕切板88より左方の空間に較べて極めて狭小な狭小領域110aとされる。この狭小領域110aでは、製氷水の流通量が小さくなって水圧が大きくなるため、狭小領域110aを流通する製氷水の流速が大きくなる。一方、仕切板88の前後の拡開部100,100は、仕切壁基部106との離間距離が次第に大きくなるよう傾斜しており、流通路部110における前後の拡開部100,100と仕切壁基部106とがなす空間は、狭小領域110aに較べて拡がった拡開領域110b,110bとされる。この拡開領域110b,110bでは、狭小領域110aに較べて製氷水を多く流通させることができ、流通路部110全体の製氷水の流通量が確保されている。
【0024】
前記排水受け部104は、前記水位規定壁102を越えた製氷水を一旦受け止めるよう構成される。図3に示すように、前記第2タンク部60の後側の側壁部54には、排水受け部104の内部で開口する排出孔104aが形成されており、排水受け部104で受け止められた製氷水は、排出孔104aを介してタンク本体37の外部へ排出されるようになっている。
【0025】
ここで、製氷運転に際して、製氷水の水位が下限水位付近まで低下すると、前記製氷部34から第1タンク部56に落下する製氷水によって製氷水の水面に波打ちが生ずることがある。製氷水が波打つことで、下限水位付近に到来したフロート78が上下に移動し、製氷水の水位が下限水位まで減少していないのにも拘わらずスイッチ部72が下限水位を検知してしまう虞がある。そこで、図3,図5に示すように、前記第2タンク部60には、フロートユニット58を挟んで仕切板88とは反対側に、第2タンク部60の前後に対向する側壁部54,54間に亘って波打ち防止板112が配設されている。図1に示すように、この波打ち防止板112は、フロート78が下限水位に位置したときに、該フロート78の左方に臨むようになっている。この波打ち防止板112は、前記第2タンク部60に一体的に形成されている。図4に示すように、波打ち防止板112の下端部は、前記下限水位の下方であって第2底部60aから離間するよう設定されており、該波打ち防止板112の下端部と第2底部60aとの間に製氷水が流通可能な下側通過領域112aが画成されている。また、波打ち防止板112の上端部は、前記排出水位より下方に位置し、波打ち防止板112の上端部の上側の領域は、製氷水が流通可能な上側通過領域112bとされる。図5に示すように、波打ち防止板112の上端部と排出水位との離間距離Lは、波打ち防止板112の下端部と第2底部60aとの離間距離Lより大きくなるよう設定され、上側通過領域112bの製氷水の流通量は、下側通過領域112aに較べて大きくなっている。更に、実施例では、波打ち防止板112の上端部と排出水位との離間距離Lは、波打ち防止板112の上下寸法に対し十分大きくなるよう設定されている。すなわち、波打ち防止板112の上下寸法は、製氷水の水面に生じた波打ちがフロート78に伝わらないよう該波打ちを解消し得る範囲であればよく、波打ち防止板112の上下に画成される通過領域112a,112bが大きくなるよう波打ち防止板112の上下寸法はなるべく小さな値に設定されている。
【0026】
ここで、図4の二点鎖線に示すように、波打ち防止板112の上端部を排出水位より高く設定して、製氷水が下側通過領域112aのみを流通し得る構成とした場合、狭小な下側通過領域112aを製氷水が通過する際に水圧が高まって製氷水の流速が大きくなる。そして、下側通過領域112aを通過すると水圧が一気に低下し、製氷水の流速が急激に小さくなるため、下側通過領域112aを通過した製氷水は上方へ拡散することになる(図4の2点鎖線で示す矢印参照)。その結果、第2底部60a付近の製氷水の流れが悪くなって、第2底部60aにスケールが堆積し易くなってしまう。そこで、実施例では、波打ち防止板112の上側を大きく開放させて上側通過領域112bを形成することで製氷水の十分な流通量を確保し、波打ち防止板112を通過する際に製氷水の流速が変化し難くなっている。
【0027】
(実施例の作用)
次に、前述のように構成された実施例の流下式製氷機30の製氷水タンク36の作用について説明する。
【0028】
ポンプユニット40およびフロートユニット58をタンク本体37に設置する際には、先ず始めに、ポンプユニット40およびフロートユニット58を設置部材62に取り付ける。そして、設置部材62を第2タンク部60に配設することで、ポンプユニット40およびフロートユニット58がタンク本体37に設置される。このとき、図1に示すように、ポンプ部66およびフロート78が第2タンク部60の内部に収容されて、波打ち防止板112を挟んで左右に並んだ状態となる。このように、ポンプユニット40およびフロートユニット58が取り付けられた設置部材62を第2タンク部60に配設するだけで、ポンプ部66およびフロート78が第2タンク部60の内部に適切な位置関係で収容されるから、製氷水タンク36の組付作業を極めて容易に行い得る。
【0029】
次に、製氷水タンク36に製氷水を給水する場合について説明する。実施例の流下式製氷機30では、製氷水タンク36への製氷水の給水は、除氷運転において実行されるようになっている。そこで、以下の説明では、製氷部34に既に氷が製造されているものとし、除氷運転中に製氷水が製氷水タンク36に貯留されていく場合について述べる。なお、除氷運転が開始される時点で、製氷水タンク36の製氷水の水位は、下限水位にあるものとする。除氷運転が開始されると、前記給水弁50が開放され、除氷水供給管48を介して除氷水が散水手段44に供給される。散水手段44に供給された除氷水は、除氷水噴射孔52を介して製氷板32,32の裏面に供給されて該製氷板32,32を加温する。製氷部34から落下した除氷水は、第1タンク部56で受け止められてタンク本体37内に製氷水として貯留される。第1タンク部56に受け止められ製氷水は、傾斜部86を介して第2タンク部60側へ案内され、該第2タンク部60に貯留される。
【0030】
図4に示すように、第2タンク部60に供給された製氷水は、第2タンク部60の内部を左方から右方へ移動して波打ち防止板112を通過し、更に流通口98を介して流通路部110を上昇し始める。そして、除氷運転の進行と共にタンク本体37内の製氷水の水位が上昇すると、フロート78がスライド棒76,76に沿って上昇し始める。後述するように、第2底部60aのフロートユニット58付近にスケールが堆積していないから、フロート78がスケールに引っ掛かって上昇不能に陥ることはない。そして、第2タンク部60に製氷水が更に供給され、流通路部110を上昇した製氷水が水位規定壁102を越えると、該製氷水は余剰水として排水受け部104に放出される。ここで、製氷水が波打ち防止板112を通過する際には、該波打ち防止板112の上下に設けた上側通過領域112bおよび下側通過領域112aを製氷水が流通するから、製氷水は流速が変化することなく波打ち防止板112を通過する。従って、波打ち防止板112を通過した後に製氷水が拡散するのが防止されて、第2底部60a付近を該底部60aに沿って製氷水がスムーズに流れるようになる。その結果、フロート78の下方にスケールが堆積するのを抑制することが可能となる。
【0031】
また、流通路部110では、狭小領域110aを流通する製氷水の流速が大きくなるから、製氷水が流通口98へ勢いよく流入する。従って、第2底部60aにおける流通口98付近(フロートユニット58付近)の製氷水の流速が大きくなって、フロート78の下方にスケールが堆積するのは確実に防止される。しかも、仕切板88に拡開部100,100を設けることで、流通路部110に拡開領域110b,110bを形成したから、流通路部110全体の製氷水の流量は確保される。従って、余剰な製氷水を確実にオーバーフロー部90から排出することができ、オーバーフロー部90以外の箇所から製氷水が漏れ出すのを防止し得る。また、流通路部110での製氷水の流通量が小さくなると、排出水位を越えた製氷水を全て排出し得なくなり、除氷運転が終了した時点でタンク本体37内に排出水位を越えて製氷水が貯留されることがある。このように、規定の貯留量を超えて製氷水が貯留されると、製氷運転で製造される氷のサイズが想定より大きくなり、除氷運転で完全に除氷し得なくなる問題(いわゆる多重製氷)が発生する虞がある。しかるに、実施例では、拡開部100,100を設けて流通路部110の流通量を多くしたから、タンク本体37内に製氷水が排出水位を越えて貯留されるのは防止され、多重製氷の発生を抑制することができる。
【0032】
ここで、流通路部110の拡開領域110b,110bにおいては、製氷水の流通量が多くなることから、拡開領域110b,110bを流通する製氷水の流速は狭小領域110aに較べて小さくなる。そのため、第2底部60aにおける拡開部100,100付近の製氷水の流速も若干低下することになる。そこで、実施例では、拡開部100,100の形成位置を、平面視の仕切板88においてフロート78に再近接する部位(図3の囲み線参照)を避けた位置に設定することで、フロート78の下方を流通する製氷水の流速が低下しないようになっている。
【0033】
また、実施例では、波打ち防止板112や仕切板88、オーバーフロー部90(水位規定壁102)をタンク本体37に一体的に形成したから、製氷水タンク36の製造コストを低廉にすることができる。しかも、これらの部材88,90,112をタンク本体37に一体的に形成することで、波打ち防止板112の配設位置や、仕切板88と水位規定壁102との相対的な位置関係が正確に規定されるから、第2タンク部60内で製氷水を適切に流通させることができ、効率的なスケールの排出を実現し得る。
【0034】
除氷運転が終了すると、タンク本体37内に排出水位の高さで製氷水が貯留される。製氷運転では、ポンプユニット40のポンプモータ64が駆動して、タンク本体37の製氷水が吸込口68を介して汲み上げられる。ポンプモータ64で汲み上げられた製氷水は、製氷水供給管42を介して散水手段44へ供給される。そして、散水手段44の製氷水噴射孔46から製氷板32,32の表面に製氷水が供給されて、該製氷板32,32の表面を製氷水が流下する。製氷部34へ供給された製氷水は、次第に製氷板32,32の表面上で氷結して氷が形成され始める。一方、氷結に至らなかった製氷水は、製氷部34から落下して第1タンク部56で受け止められ、製氷部34に循環供給される。製氷部34に氷が形成されることでタンク本体37内の製氷水が減少し、製氷水の水位に合わせてフロート78が下降する。
【0035】
製氷運転が進行して、製氷水の水位が下限水位付近まで下降すると、製氷水(未氷結水)の落下距離が大きくなって水面に落下した際の衝撃が大きくなり、製氷水の水面に波打ちが生ずる。しかるに、実施例の製氷水タンク36では、タンク本体37に波打ち防止板112を設けたから、該波打ち防止板112により製氷水の水面に生じた波打ちが波打ち防止板112によって解消される。従って、下限水位付近まで下降したフロート78に製氷水の波打ちが伝わることはなく、フロート78が振動してフロートユニット58に不具合が生ずるのを防止し得る。フロート78が下限水位に到達すると、スイッチ部72が下限水位(製氷完了)を検知して、製氷運転が終了される。前述のように、除氷運転中にフロート78の下方に位置する第2底部60a付近を製氷水が勢いよく流れたことで、該フロート78の下方にスケールが堆積するのは防止されるから、フロート78は、下限水位まで確実に下降することができる。その結果、製氷完了を正確に検知することができ、長時間に亘って製氷運転が継続することはない。
【0036】
(変更例)
(1)実施例では、波打ち防止板が前後方向に水平に延在する構成としたが、必ずしも波打ち防止板を水平に延在する構成とする必要はない。例えば、図6に示すように、波打ち防止板114を前方から後方(図6では右方から左方)に向けて上方に傾斜するよう延在させてもよい。この場合、波打ち防止板114の下端部の最も低い部位が下限水位以下に位置するよう設定され、該下端部とタンク本体37の底部(第2底部60a)との間に下側通過領域114aが画成される。また、波打ち防止板112の上端部の最も高い部位と排出水位との離間距離Lが、波打ち防止板112の下端部における最も低い部位と下限水位との離間距離Lより大きくなるよう設定される。そして、波打ち防止板112の上端部の上側に、下側通過領域114aより大きな上側通過領域114bが画成される。
(2)実施例の波打ち防止板は、上端部や下端部が直線状に延在する構成としたが、上端部や下端部が湾曲する構成とすることも可能である。更に、実施例の波打ち防止板は、前後に延在する構成としたが、例えば、波打ち防止板を前方から後方に向けて左右の何れか一方へ傾斜する構成としてもよい。
(3)実施例では、拡開部を仕切板に設けた場合を示したが、水位規定壁に拡開部を設けてもよい。例えば、仕切壁基部の前後の側縁部に拡開部を形成し、後側の拡開部を前方から後方に向けて右方に傾斜させると共に、前側の拡開部を後方から前方に向けて右方に傾斜させるようにしてもよい。
(4)実施例では、仕切板を第1〜第3仕切部から構成して平面視で屈曲する形状としたが、仕切板を平面視で前後に直線状に延在する構成としてもよい。また、実施例では、仕切板に前後2つの拡開部を設けた場合を示したが、拡開部を1つとしてもよい。更に、拡開部の形成位置は、平面視で仕切板においてフロートに最近接する部位(図3の囲み線参照)を除く部位であれば、第3仕切部の前後の側縁部以外の部位に設定してもよい。
(5)実施例では、仕切板をタンク本体の側壁部と同一高さに設定したが、仕切板の上端部が排出水位より高くなるよう設定すれば、必ずしも仕切板をタンク本体の側壁部と同一の高さに設定する必要はない。
(6)実施例では、貯留タンクとして第1タンク部および第2タンク部からL字状に構成されたタンク本体を採用したが、貯留タンクとしてはこれに限定されるものではなく、例えば、第1タンク部のみから構成された直方体状の貯留タンクを採用し、該第1タンク部に仕切板、水位規定壁、波打ち防止板等を設ければよい。
(7)実施例では、流下式製氷機の製氷水タンクを例に説明したが、本発明に係る製氷機の貯留タンクとしては、製氷に用いられる製氷水や除氷水等の水を貯留し得るものであれば、いかなる製氷機の貯留タンクであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
37 タンク本体,56a 第1底部(底部),58 フロートユニット(フロートスイッチ)
60a 第2底部(底部),78 フロート,88 仕切板,90 オーバーフロー部
98 流通口,100 拡開部,102 水位規定壁,110 流通路部
112,114 波打ち防止板,L,L 離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(56a,60a)および側壁部(54)を有する箱状に形成され、氷の製造に際して用いられる水を貯留可能なタンク本体(37)と、
前記タンク本体(37)の底部(56a,60a)から該タンク本体(37)に設定された排出水位の高さまで立ち上がる水位規定壁(102)を備え、該水位規定壁(102)を越えた水をタンク本体(37)外へ排出するオーバーフロー部(90)と、
前記タンク本体(37)における前記オーバーフロー部(90)側に偏倚して配設され、タンク本体(37)の底部(56a,60a)付近に設定した下限水位にフロート(78)が下降すると該下限水位を検知するフロートスイッチ(58)と、
前記オーバーフロー部(90)とフロートスイッチ(58)との間に延在するよう前記タンク本体(37)の対向する側壁部(54,54)間に亘って配設され、上端部が前記排出水位より上方に位置すると共に下端部がタンク本体(37)の底部(56a,60a)から離間する部位を有する仕切板(88)と、
前記仕切板(88)の下端部とタンク本体(37)の底部(56a,60a)との間に画成されて水が流通可能な流通口(98)と、
前記仕切板(88)および前記水位規定壁(102)の間に形成され、前記流通口(98)に連通して水が流通する流通路部(110)とを備え、
前記流通路部(110)は、前記タンク本体(37)における前記仕切板(88)よりフロートスイッチ(58)側の空間に較べて狭小な空間に設定されている
ことを特徴とする製氷機の貯留タンク。
【請求項2】
前記水位規定壁(102)および仕切板(88)は、タンク本体(37)に一体的に形成されている請求項1記載の製氷機の貯留タンク。
【請求項3】
前記仕切板(88)または水位規定壁(102)に、前記水位規定壁(102)または仕切板(88)との離間距離が増大して前記流通路部(110)を拡開させる拡開部(100,100)が形成されている請求項1または2記載の製氷機の貯留タンク。
【請求項4】
前記フロートスイッチ(58)を挟んで仕切板(88)とは反対側の前記タンク本体(37)に、該タンク本体(37)の対向する側壁部(54,54)間に亘って波打ち防止板(112)が配設され、
前記波打ち防止板(112,114)は、下端部が前記タンク本体(37)の底部(60a)から離間すると共に、該下端部および前記タンク本体(37)の底部(60a)の離間距離(L1)より大きな離間距離(L2)で上端部が前記排出水位より下方に離間するよう設定した請求項1〜3の何れか一項に記載の製氷機の貯留タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64518(P2013−64518A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202311(P2011−202311)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】