説明

製油所フィードストックによって発生する付着の評価方法

1又はそれ以上の精製工程における製油所フィードストックによって発生する付着であり、前記方法は(i)複数の製油所フィードストック、及び/又は1若しくは複数の製油所フィードストックの複数の留分を生成し、(ii)製油所内部に存在する冶金の代表的要素である複数の金属サンプルで構成されるアレイを生成し、(iii)複数の金属サンプルの各々と、1若しくはそれ以上の前記製油所フィードストック又は留分とを非静止条件下において接触させ、及び(iv)製油所フィードストック又はその留分の付着を判定することから構成される。金属サンプルが微細加工アレイの形状であること、また試験がハイスループット実験を用いて同時並行的に実施されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ハイスループット実験を用いて、精製工程における製油所フィードストックによって発生する付着の評価方法に関する。
【0002】
コンビナトリアル化学又はハイスループット化学は、創薬工程に画期的な変化をもたらしてきた(例えば、29 Acc.Chem.Res.1−170(1996);97 Chem.Rev.349−509(1997);S.Borman,Chem.Eng.News 43−62(Feb.24,1997);A.M.Thayer,Chem.Eng.News 57−64(Feb.12,1996);N.Terret,1 Drug Discovery Today 402(1996)を見よ)。近年、ハイスループット実験技術が数多く開発され、有用な特性を得るために触媒及び他の物質を合成し試験する能力が大幅に向上した。一般にこれらの技術は、装置及び手法の開発(実験を構想し並びに触媒及び物質の生成及び試験をオートメーション化するためのロボット及びコンピュータの用途の拡大を含む)に照準を合わせたものであり、これによって、比較的小規模のサンプルからでも迅速かつ再現可能な試験結果を得られるようになった。例えば、極めて多種類の物質及び物質特性のための生成試験装置(例えば米国特許第5,776,359号明細書に記載あり)、並びに、興味深い化学反応のための生成試験装置の開発(例えば米国特許第5,959,297号明細書、米国特許第6,063,633号明細書及び米国特許第6,306,658号明細書に記載あり)に多大な努力が投入されてきた。
【0003】
さらに、ハイスループット技術は、クロマトグラフィーなどの分離技術(例えば米国特許第6,866,786号明細書に記載あり)を含む多数の異なる分析技術に応用されてきた。また、原料の費用は、ライブラリー又はアレイの構想段階における一要素として参照されてきた。今日、出願人は、精製工程の冶金に対する製油所フィードストックの付着作用を評価する際に利用可能なハイスループット手法を開発した。典型的な製油所の場合、多数の異なる種類の製油所フィードストック(多数の異なる種類の原油など)が精製処理されている。また通常、製油所フィードストックは入手可能な原料のブレンドであり、そのため、フィードストックが精製工程全体に及ぼす作用(付着作用など)を予想することは極めて困難となっている。典型的には、従来の運用経験に基づいて数多くの推測がなされているが、こうした推測は、大凡の予想を提示することしかできないのが普通である。
【0004】
本発明は、製油所フィードストックによって発生する付着をハイスループット手法により評価する方法を提供する。
【0005】
したがって、本発明による1又はそれ以上の精製工程に製油所フィードストックがもたらす付着の評価方法が提供される。前記方法は以下の工程で構成される。
(i)複数の製油所フィードストック、及び/又は1若しくは複数の製油所フィードストックの複数の留分の提供。
(ii)製油所内部に存在する冶金を代表する複数の金属サンプルで構成されるアレイの提供。
(iii)複数の金属サンプルの各々と、1若しくはそれ以上の前記製油所フィードストック又は留分との非静止条件下における接触、及び
(iv)前記製油所フィードストック又はその留分の付着の判定。
【0006】
本発明は、製油所フィードストックが1又はそれ以上の精製工程における付着に及ぼす影響の評価方法を提供し、この方法により、製油所フィードストックを使用するに当たって生じる潜在的な工程課題を、使用前に、そして将来的には購入前に、評価することが可能となる。また本発明は、2箇所以上の製油所の中から選択することができる場合において、ある製油所フィードストックを精製処理するのに最も適した製油所を選択する際にも有用である。従来の試験方法とは異なり、本発明は、ハイスループット技術を用いることで、多数の異なる金属サンプルに照らして試験を実施することが可能となる。1フィードストックの複数のサンプルを、選択された1種類の金属サンプルに照らして試験することも可能であり、あるいは、複数のフィードストック及び/又は留分(例えば、関連するすべてのフィードストック及び/又は留分)を、選択された1種類の金属サンプルに照らして試験することも可能である。実際、多数のフィードストック及び/又は留分を、多数の金属サンプルに照らして試験し、それにより得られた大量のデータを、付着「分布図」を提供するために利用することもできる。作業フロー全体におけるスループットは重要であり、前記工程(a)における製油所フィードストック及び/又は留分の供給回数は週50回以上(例えば週250回以上、特に週2000回以上)が好ましく、また前記工程(d)における付着作用の判定回数は週250回以上(例えば週1250回以上、さらには週10000回以上)が好ましい。
【0007】
製油所フィードストックは、原油、合成原油、バイオコンポーネント、中間ストリーム(残さ油、軽油、減圧軽油、ナフサ又は分解ストックなど)、及び、前記原料の1若しくは複数のブレンド(例えば、1又はそれ以上の種類の原油のブレンド、又は1又はそれ以上の種類の原油と1又はそれ以上の種類の合成原油とのブレンドなど)を含む、適切ないかなる製油所フィードストックであってもよい。
【0008】
本発明の方法の工程(ii)においては、製油所に存在する冶金を代表する複数の金属サンプルが提供される。概して付着は、それほど金属依存的ではない。したがって、たとえさらに多くの種類の異なる金属サンプルが提供されても、製油所内部に存在する冶金を代表する複数の金属サンプルが様々な冶金を適切に構成することはなく、構成できたとしても金属1種類又は冶金2乃至3種類とごく僅かに留まる。また本発明の方法を(主に)用いることにより、製油所フィードストック又はその留分と接触する期間における工程条件の違い、及び/又は製油所フィードストックの留分の性状の違いがもたらす影響(以下にさらに詳細に記載する)について比較を行うことができる。
【0009】
典型的には、複数の金属サンプルは、10個以上(例えば20個以上又は50個以上)の金属サンプルで構成される。本発明の方法は、金属サンプルの微細加工アレイを用いて実施することができる。
【0010】
金属サンプルは、特定の1製油所に存在する冶金を代表することもあり、又は、2若しくはそれ以上の製油所に存在する多数の相異なる冶金を代表することもある。他の冶金を代表する金属サンプルが存在することもあるが、典型的には、製油所に存在する金属の大半は、他の1又はそれ以上の製油所で既に存在している各種冶金を代表することになるであろう。
【0011】
金属サンプルの全て又は一部は、表面コーティング処理がフィードストックと適合するか否かを判定できるようにするため、付着を軽減させると考えられている表面コーティング処理が施されていることもある。典型的な表面コーティング材には、セラミック及びある種のポリマー[テフロン(登録商標)など]が含まれる。
【0012】
本発明の方法の工程(iii)においては、複数の金属サンプルがそれぞれ、製油所フィードストック又はその留分と接触する。
【0013】
各金属サンプルの付着を同時に判定できるようにするため、複数の金属サンプルがそれぞれ、製油所フィードストック又はその留分と本質的に同時並列的に(逐次直列的ではなく)接触するのが好ましい。
【0014】
製油所フィードストック又はその留分と複数の金属サンプルのそれぞれとの接触には、単一のストリーム(すなわち製油所フィードストック又はその1留分)の複数の金属サンプルとの接触が含まれることもあり、又は、複数の留分(それぞれ別個の1金属サンプルと接触する)の生成を目的とした1製油所フィードストックの処理が含まれることもある。したがって、各製油所フィードストックは、そのままの状態で使用することも可能であり、又は、複数の金属サンプルとの接触前に、製油所フィードストックの単一の留分若しくは製油所フィードストックの複数の留分を生成するように処理することも可能である。
【0015】
本明細書において用いられる「処理」は、製油所フィードストックの物理的及び/又は化学的処理で構成される。物理的処理は、1ストリームを分割して該ストリームと同一の化学的及び物理的性状を有する2又はそれ以上の部分要素へと分割する工程で構成されることもある。例えば、製油所フィードストックを分断して、元のフィードストックと同一の化学的及び物理的性状を有する複数の部分要素を生成することも可能である。これ以上の処理を行わない場合、これらの部分要素は留分として使用することができる。あるいは、これらの部分要素にさらに処理を加えて留分を生成することもできる。また「処理」には、例えば製油所フィードストック又は製油所フィードストックの2若しくはそれ以上の部分要素を、1又はそれ以上の他の製油所フィードストックのサンプルとブレンドし、又は蒸留若しくは他の処理を行い、それにより、1又はそれ以上の留分の沸点範囲を元の製油所フィードストックよりも狭めることも含まれる。
【0016】
これらの及び他の処理について、以下にさらに詳述する。
【0017】
製油所フィードストック又は生成された製油所フィードストックの留分は、精製工程において、同等の冶金と典型的に接触する精製ストリームを代表するものでなければならない。「代表する」とは、精製工程へと向かう典型的な精製ストリームと少なくとも何らかのかたちで類似する化学的及び/又は物理的性状を有していることを意味する。例えば、製油所における同等の工程へと向かうフィードストリームの典型的な沸点範囲と同じ沸点範囲を有する1又はそれ以上の留分が生成されることもある。
【0018】
ある特定の生成工程へと向かうフィードストリームの化学的及び物理的性状は、ある特定の製油所構造に依存するが、典型的な性状については、例えば、Robert A Meyers編、McGraw−Hill出版のHandbook of Petroleum Refining Processes(2nd Edition)に記載されている。
【0019】
例えば、製油所においては、原油蒸留カラムの加熱部分にある冶金は、製油所フィードストック全体に典型的に暴露される。それゆえ本発明においては、金属サンプルは、製油所フィードストックそれ自体(又はその分離により得られる留分)、又は、蒸留などの処理を施すことなく製油所フィードストックと他の1若しくはそれ以上の製油所フィードストックとをブレンドすることで得られる留分と接触することができる。これに対して、原油蒸留装置を通過した後であって、1精製工程における特定の工程装置を通過する前の配管及び加熱装置内に存在する冶金は、沸点範囲の狭められた前記製油所フィードストックの留分のみに暴露されるのが典型であり、それゆえ本発明においては、製油所フィードストックは、適切な金属サンプルと接触させるためにこのような代表的留分を生成することを目的として処理される。もう1つの例として、蒸留前に予熱された原油を通す熱交換器において、該熱交換器の片側は原油フィードストックに暴露され、他の側は、蒸留から得られる留分(例えば蒸留留分、残さ留分)に暴露される。このため、本発明においては、製油所フィードストックは、そのままの状態で使用することもでき、及び/又は、該熱交換器仕様の適切な金属サンプルと接触させる代表的留分を生成する目的で処理を施すこともできる。
【0020】
製油所における付着がとりわけ問題となるのは、(i)製油所フィードストックそれ自体(すなわち、原油、合成原油、バイオコンポーネント、又はこれらのブレンド)、(ii)原油蒸留装置(CDU)から得られる残さ留分又は該残さ留分と他の残さ留分若しくは製油所フィードストックとのブレンド、及び(iii)粘度低下処理後の留分(残さ留分の粘度低下処理後に得られる)の場合である。そのため、本発明の方法においては、製油所フィードストック又はその留分は、これらのストリームのいずれか1つを代表するものであることが好ましい。
【0021】
本発明の方法における前記精製工程に典型的にみられるフィードストリームを代表する留分を得る目的で、いかなる適切な物理的又は化学的処理方法も用いることができる。例えば、マイクロ蒸留カラム又はマイクロ精留塔における処理を用いることで、要求される沸点範囲を有する留分を得ることができる。また、このような処理によって、例えば、残さ留分を代表する一留分を原油蒸留装置から得ることができる。
【0022】
他の物理的及び化学的処理技術としては、溶媒抽出、膜処理、吸収処理、及び適切な化学反応などがある。複数の技術を組み合わせることが必要となることもあり、例えば、原油蒸留(その後、粘度低下処理が続く)に代わってマイクロ蒸留(その後、非触媒分解工程が続く)を用いた場合でも、従来型の粘度低下留分を代表する留分を生成することができる。
【0023】
処理に製油所フィードストックの分割が含まれる場合、該分割は、いかなる適切な手段によっても達成することができる。例えば、分割は、複数の部分要素を提供する1又はそれ以上の自動注入器を用いることによって、バッチモードでの実施が可能となる。あるいは、一連のマイクロフロー制御装置又はマイクロバルブを用いることができ、その内部においては各部分要素ごとにフローが概ね連続的に行われるが、該バルブ又は制御装置を用いてフローを開始、停止させ及びフローに任意の変化を与えることができる。またあるいは、フローを各部分要素ごとに個別に遮断又は変化できない場合であっても複数の部分要素全てに対して均一なフロー配分を提供できる複数のバッフル又は他のフロー制御手段(厚板におけるオリフィス孔など)を用いることもできる。
【0024】
沸点範囲を狭められた留分を希望する場合の実施例においては、製油所フィードストック又はそれから得られる部分要素を加熱機器の上に配置することができ、この加熱はサンプルの温度を上昇させるためになされる。希望する沸点範囲内で沸騰する留分を回収する方法として、例えば、適切なバルブを用いて希望する沸点範囲の留分を回収し、その後冷却して該留分を凝結させるという方法がある。加熱機器としては、加熱マイクロオシレーター(米国特許第5,661,233号明細書に記載)を使用することができる。
【0025】
沸点範囲を狭められた留分を希望する場合のもう1つの実施例においては、製油所フィードストック又はその部分要素は、少なくとも3つの区画で構成される閉鎖経路の中に置くことができる。ここで各区画は、液体サンプルは通過できないが気体サンプルは通過できるバルブ又は他の適切な障壁によって分離される。こうして、ある部分要素をある経路の第1区画に置き、第1区画を希望する沸点範囲の上限にまで加熱し(例えば加熱レーザーを用いた局部加熱によって)、第2区画を周囲温度(又はそれより低い温度)で維持することにより、希望する沸点範囲上限を下回る沸点を有するすべての物質が気化し、第1区画から第2区画へと移行し、そこで該物質が凝縮する。
【0026】
その後、第2区画を希望する沸点範囲の下限にまで加熱し(例えば加熱レーザーを用いた局部加熱によって)、第3区画を周囲温度(又はそれより低い温度)で維持することにより、希望する沸点範囲下限を下回るすべての物質が気化し、第2区画から第3区画へと移行し、希望する沸点範囲を有する留分が第2区画に残ることになる。
【0027】
あるいは、第2区画は、この工程を通じて常に沸点範囲下限に維持しておき、これにより、希望する沸点範囲を上回る沸点範囲を有する物質を第1区画に残し、希望する沸点範囲内の沸点範囲を有する物質を第2区画に残し、希望する沸点範囲を下回る沸点範囲を有する物質を第3区画に残すことも可能である。
【0028】
この実施例に記載の複数の経路(それぞれ少なくとも3つの区画を有する)は、国際公開第01/87485号パンフレット又は国際公開第2004/58406号パンフレットに記載のスピニングディスク型分離装置に搭載させることができ、これにより、複数の留分が同時並列的に生成可能となる。
【0029】
さらに別の実施例においては、複数の金属サンプルのうちの一つを構成するさらに別の区画を、スピニングディスク上の各経路ごとに搭載させることもでき、また、各金属サンプルと1製油所フィードストックの留分との接触も該スピニングディスク上で実施することができる。
【0030】
複数の金属サンプルの各々と製油所フィードストック又はその留分との接触は、同等の冶金が製油所内において露出される条件を代表する条件の下で行われることが好ましい。代表する条件のうち特に好ましいものとしては、温度、流量及び乱流条件などが挙げられる。ある実施例においては、これらの条件は、製油所における条件(同一の温度、流量及び乱流など)と同等のものである。別の実施例においては、同等の冶金が製油所内において露出される条件よりもさらに厳しい条件(より高い温度、より低い流量など)を導入することで、付着率を改善し、各種フィードストックに関する試験結果をより迅速に得られるよう図ることができる。
【0031】
接触時間も一つの条件変数であり、付着はこの接触の時間によって評価することができる。また、接触の条件は時間の経過とともに変化することがあり、又は、製油所フィードストックの複数の留分が生成される場合には、複数の留分のうちの別の一つを複数の金属サンプルの別の一つと接触させて、様々な温度及び他の稼働条件を評価できるようにするため、この接触の条件が変化することもある。
【0032】
接触時間の経過とともに、又は、複数の留分の別の一つと複数の金属サンプルの別の一つとを接触させるために変化し得る他の条件変数には、製油所フィードストック又は製油所フィードストックの部分要素と1又はそれ以上の他の製油所フィードストックとをブレンドすることにより生じる製油所フィードストックの留分の沸点範囲の変化並びにブレンド比率及び組成の変化が、必要に応じて含まれており、これにより、潜在的な問題を工程管理によって緩和するためにとるべき選択肢に関する情報を得ることができる。
【0033】
複数の金属サンプルの各々と製油所フィードストック又はその留分との接触は、非静止条件、すなわち同等の冶金が製油所内において露出される条件を典型的に代表する様々な条件、の下で行われる。例えば、該工程は、製油所フィードストック又はその留分を、せん断(液体中における金属サンプルの運動(例えば回転))又は乱流、又は可変的な温度若しくは圧力条件の下で、金属サンプルの表面に継続的に流すことによって行うことができる。したがって可変条件としては、温度、流量、せん断、浸液、凝結及び/又は乱流などが挙げられる。典型的には、試験結果は、流量、せん断、温度、圧力、フィードストック及び/又は留分の関数としての付着率として表される。
【0034】
様々な温度及び他の稼働条件(製油所フィードストック留分の沸点範囲の変化も必要に応じて含まれる)が評価でき、これにより、工程管理を通じて潜在的な問題を軽減するためにとるべき選択肢に関する情報が得られることになる。
【0035】
各金属サンプルは、希望するいかなる形状で提供することも可能である。サンプルの形状は、該サンプルに対するフローの特性(例えば乱流)を変化させる可能性もある。例えば、1本のらせん形によじられた金属フィルムを用いて、乱流の付着に対する影響を精査することができる。微細加工技術を用いて製造されたサンプルに対して多種多様な形状を直ちに提供することが可能である。
【0036】
工程(iv)において、前記フィードストックの金属表面に対する付着が判定される。これは、視覚分析、偏光解析、若しくは適切な分析技術を用いた表面分析など適切な手法によって、又は金属サンプル上の大量集積の測定によって行うことができる。
【0037】
本発明の好ましい一実施例においては、金属サンプルは、初期研磨の形状(例:研磨ペッグ)をとっており、各製油所フィードストック又は留分は、様々な温度に抵抗加熱された多数の相異なる金属サンプルの表面を(単一のストリームとして)流れる。一定時間、フィードストックを流した後、金属サンプルの研磨表面は、光学的方法(例えば偏光解析)又は物理的方法(例えば微細測定)によって精査され、サンプル表面に付着物がどの程度堆積したかが判定される。
【0038】
本発明の好ましいもう一つの実施例においては、金属サンプルは、無視できない程度の抵抗性を有する形状(例:ワイヤー、薄板又はメッシュ)である。これらのサンプルの利点は、抵抗性及びその抵抗性の変化が直ちに測定できる点にある。それゆえ、金属サンプルのいかなる付着も、サンプルの抵抗性の変化によって測定されることになる。これらのサンプルのもう一つの利点は、サンプル自体を加熱できる点及びサンプル自体の温度を抵抗加熱によって正確に制御可能な点にある。
【0039】
さらにもう一つの実施例においては、加熱された金属サンプルとの接触前及び接触後におけるフィードストック又はその留分の温度が測定されるため、金属サンプルによる流体の加熱の度合いが明らかになる。金属サンプルに付着物があると、加熱できる度合いは減少する。加熱された金属サンプルの表面を流れるフィードストックの量の変化によるデルタ温度の変化は、付着の度合いを表示する。
【0040】
本発明の最も好ましい方法は、製油所フィードストック又はその1若しくはそれ以上の留分を抵抗加熱された金属ワイヤー又はメッシュの複数のサンプルの表面に流して、抵抗の変化又は流体のデルタ温度の変化を計測し、前記金属サンプルへの付着率を判定する時間まで含む工程で構成される。
【0041】
フィードストック及び/又は留分の付着作用の判定方法としてどのような方法を選択した場合であっても、各金属サンプルについての判定は同時並列的に(すなわち各分析が同時に実施される)又は逐次直列的(例えば短時間連続分析を用いて)に実施することができる。
【0042】
本発明の好ましい実施例においては、製油所フィードストック及び/又はその1若しくはそれ以上に含まれる留分のアスファルテン又はワックスの安定性を測定することができる。
【0043】
原油のアスファルテン安定性の測定方法は概して公知であり、例えば、IP 143(BSI 2000:Part 143)“原油及び石油製品中のアスファルテン(ヘプタン不溶性)の判定”又は米国試験・材料協会ASTM D6560−00“原油及び石油製品中のアスファルテン(ヘプタン不溶性)の判定のための標準的試験方法”に記載されている。
【0044】
アスファルテンの安定性の別の測定方法(2又はそれ以上の炭化水素液のブレンド)については、国際公開第2004/061450号パンフレットに記載されている。
【0045】
本発明によるアスファルテン安定性試験において、製油所フィードストック又はその1若しくはそれ以上の留分のサンプルは、量及び組成のそれぞれ異なる複数の溶媒(例:n−ヘプタン、トルエン、又は両者の混合物)と混合され、それぞれについて振動混合が行われる。アスファルテンの安定性は、軟凝集の発現によって判定される。
【0046】
溶媒添加及び振動混合は、例えばロボット・ワークステーションを用いて、自動的に実現されるのが好ましい。混合物は、適切な一連のウェル(例:マイクロタイタープレート)に出現することがある。
【0047】
溶媒添加に伴う軟凝集の発現は、適切な技術によって判定することができるが、この判定もやはり、例えば各混合液について分光技術(赤外線など)を応用し、放射線の伝送の変化を測定するなどして、自動的に行われるようにするのが好ましい。
【0048】
本発明の方法を用いることにより、ある特定の製油所フィードストックの1精製工程中の各種工程における付着の問題の見通しを直ちに評価できる。必要であれば、例えば、慎重な工程制御、及び/又は、精製工程においてとりわけ必要とされる場合に添加可能な付着阻害物質の添加といった付着緩和方法を用いることもできる。本発明を用いて、様々な化学処理法(例えば様々な添加剤又は調剤)の効果を試験することができ、これによって、ある特定の付着物混合液に最もふさわしい処理方法を同定することができる。したがって、金属サンプルとの接触前に該付着阻害物質を製油所フィードストック又はその留分に添加することにより、付着阻害物質の適合性を評価することが可能である。このようにして、多数の相異なる潜在的な付着阻害物質を、フィードストックの多様なブレンドに照らして評価することができ、これによってブレンドと処理の最適化が可能となる。さらに、特定の表面処理でコーティングされた金属サンプルを提供することにより、このような処理の付着軽減能力を判定することができる。
【0049】
また本発明の方法は、他のフィードストックとともに評価される1つのフィードストックのブレンドにも応用でき、それゆえ、本発明の方法を用いることで、精製工程の様々な部分における、ブレンド後のフィードストックの付着軽減効果を評価することもできる。
【0050】
本発明の方法は、今後生成される多数の相異なる製油所フィードストックについて、繰り返し適用可能である。
【0051】
評価の対象となる各種製油所フィードストックは、個別(独立)のフィードストックであることもあるし、又は、2若しくはそれ以上の他の製油所フィードストックの(例えばそれぞれ異なった配合比率による)ブレンドであることもある。
【0052】
あるいは、各フィードストック又はその留分を、前記のように、製油所内に存在する冶金を代表する複数の金属サンプルに供給することにより、今後生成される多数の相異なる製油所フィードストックを同時に評価することも可能である。
【0053】
本発明の好ましい実施例においては、前記工程(iv)記載の製油所フィードストック又はその留分の(金属サンプル上への)付着の判定がなされれば、適切な精製工程モデルを適用して製油所フィードストックによる影響を判定することができる。適切な製油所モデルは当業者に知られており、また、例えば、(フィードストック及び製品の評価のための)リニアプログラムモデル、(個々の工程装置の最適化及び製油所全体の最適化などのための)工程最適化モデル、及び/又は(製油所フィードストックの精製による影響を評価するための)リスクベースモデルが、製油所モデルに含まれることもあり得る。
【0054】
本発明の方法から、製油所フィードストック又はその留分の付着に関する大量のデータが発生することになる。他の実施例においては、このデータを用いて、工程モデルを開発、更新、整備及び/又は検証することができる。例えば、工程モデルの構築を可能にするパイロット・プラント・パラメーター研究から発生するデータよりもさらに広いパラメーター集合を網羅する大量のデータが直ちに発生することもあり、またさらに発生するデータを利用して、工程モデルの(例えば、より広いパラメーター空間のための)継続的な更新及び改良を提供することもできる。
【0055】
モデリング又は他の実験的設計技術を用いることで、1又はそれ以上の製油所フィードストックの一連の可変的な工程条件を発生させることが可能となる。このフィードストックによって発生する付着物を評価し、それを踏まえて1又はそれ以上の工程モデルの開発、更新又は検証を行うことが望まれる。また、本発明の方法は、とりわけ工程の評価に用いることができ、これによって工程モデルに必要なデータを引き出すこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又はそれ以上の精製工程における製油所フィードストックによって発生する付着の評価方法であり、前記方法は、
(i)複数の製油所フィードストック、及び/又は1若しくはそれ以上の製油所フィードストックの複数の留分を生成し、
(ii)製油所内部に存在する冶金を代表する複数の金属サンプルで構成されるアレイを生成し、
(iii)複数の金属サンプルの各々と、1若しくはそれ以上の前記製油所フィードストック又は留分とを非静止条件下において接触させ、及び
(iv)前記製油所フィードストック又はその留分の付着を判定することから構成される方法。
【請求項2】
評価の対象となる製油所フィードストックが原油、合成原油、バイオコンポーネント、中間ストリーム、又は1若しくはそれ以上のこれらの原料のブレンドであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の金属サンプルが少なくとも20個の金属サンプルで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属サンプルが微細加工アレイの形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
付着を軽減すると考えられている表面コーティング処理を金属サンプルの全て又は一部に施すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(iii)において、各金属サンプルが製油所フィードストック又は留分と本質的に同時並列的に接触することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
評価の対象となる製油所フィードストックが、その一留分、又はその複数の留分を生成するために処理され、かつ、各留分が複数の金属サンプルと接触することを特徴とする前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
処理が1又はそれ以上の分離、マイクロ蒸留カラム又はマイクロ精留塔における処理、溶剤抽出、膜処理、吸収処理、又は適切な化学反応で構成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各製油所フィードストック又はその留分が、(i)製油所フィードストックそれ自体、(ii)原油蒸留装置(CDU)から得られる残さ留分又は該残さ留分と他の残さ留分若しくは製油所フィードストックとのブレンド、又は(iii)粘度低下処理後の留分、を代表することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複数の金属サンプルの各々と製油所フィードストック又はその1留分との接触を、同等の冶金が製油所内で暴露される典型的な温度、流量、乱流条件の下で行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
視覚分析、偏光解析、若しくは適切な分析技術を用いた表面分析、又は、金属サンプル上の大量集積の計測によって、付着を判定することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
金属サンプルが、ワイヤー、薄板又はメッシュのような、無視できない程度の抵抗性を有する形状であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
金属サンプルへの付着を、該金属サンプルの抵抗性の変化によって測定することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
加熱された金属サンプルとの接触前及び接触後におけるフィードストック又はその留分の温度を測定し、それにより、該金属サンプルによって流体がどの程度加熱されるかを判定することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
製油所フィードストック及び/又はその留分に含まれるアスファルテン又はワックスの安定性を測定することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−524572(P2008−524572A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546170(P2007−546170)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004798
【国際公開番号】WO2006/064212
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED