説明

製紙用フェルトおよびその製造方法

【課題】フェルトの圧縮(つぶれ)、汚れ等による加圧時の通水性の低下を防止する製紙用フェルトとその製造方法を提供する。
【解決手段】製織布4を少なくとも1層以上有する基布にバット繊維3が積層されて絡合一体化される製紙用フェルト100であって、製織布の一層の製紙面側又は走行面側のバット繊維との境界もしくは製織布内には、空隙を有した樹脂層2が形成されており、樹脂層は、第1緯糸および第1経糸の一方もしくは両方に織り込まれ、第1経糸5および第1緯糸6を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が少なくとも一部に配された第2経糸8および第2緯糸の一方もしくは両方が、低融点樹脂の融点温度よりも高く、高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却されることで形成され、空隙17は、第2経糸および第2緯糸の一方もしくは両方に沿って硬化した低融点樹脂との間に形成される構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルトに関し、詳しくは製紙用フェルトおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙用フェルトは、製品となる湿紙と面で当接することで湿紙の水分を搾水し、湿紙を搬送する。したがって、製品の表面性にかかる品質を維持するために、湿紙と当接する面は搾水性、平滑性、シート剥離性、圧力均一性等の特性を一定に維持する必要がある。また、製紙用フェルトに要求される性能として、なじみの向上、バット繊維の脱毛防止、汚染物質による汚れの防止なども重要とされている。これらの性能を満足させるために、製紙用フェルトにおける技術として、樹脂加工を施したフェルト(例えば、特許文献1〜2)、バット繊維に溶融繊維を用いて溶融させたフェルト(例えば、特許文献3)、基布とバット繊維以外の樹脂シートを配置し溶融させたフェルト、糸に溶融糸を用いて溶融させたフェルト(例えば、特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−511582号公報
【特許文献2】特許第3488403号公報
【特許文献3】特許第3184927号公報
【特許文献4】特表2008−507635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術の問題点としては、フェルトに樹脂加工を施したり、使用している繊維や糸やシートを単に溶融させた構造的な原因により、加圧時の通水性が低下するため、汚染物質が樹脂層に詰まり、汚れを蓄積させ、搾水性が低下して製品の品質に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような発明者の知見に基づき案出されたものであり、その主な目的は、フェルトの圧縮(つぶれ)、汚れ等による加圧時の通水性の低下を防止する製紙用フェルトとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための本発明は、製織布を少なくとも1層以上有する基布と、該製織布の製紙面側および走行面側の一方の面もしくは両面にバット繊維が積層されて絡合一体化される製紙用フェルトにかかる発明である。ここで、前記製織布の前記製紙面側又は前記走行面側の前記バット繊維との境界もしくは前記製織布内には、空隙(間隙)を有した樹脂層が形成されている。前記樹脂層は、前記製織布の前記製紙面側又は前記走行面側の前記バット繊維が積層される側に製織される第1緯糸および第1経糸の一方もしくは両方に織り込まれ、前記第1経糸および前記第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が少なくとも一部に配された第2経糸および第2緯糸の一方もしくは両方が、前記低融点樹脂の融点温度よりも高く、前記高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却されることで、前記低融点樹脂が溶融、硬化して形成され、前記空隙は、前記第2経糸および前記第2緯糸の一方もしくは両方に沿って硬化した前記低融点樹脂との間に形成される構成としている。なお、この空隙は、第2緯糸が織り込まれて樹脂層を形成した場合には、織り込まれた位置を維持しつつ、第2緯糸が溶融して硬化することで、所々に緯方向に細長い網目状となり、第2経糸が織り込まれて樹脂層を形成した場合には、織り込まれた位置を維持しつつ、第2経糸が溶融して硬化することで、所々に経方向に細長い網目状となり、第2緯糸および前記第2経糸が織り込まれた場合は、細かい網目状となる。
【0007】
前記構成によれば、製織布の第1経糸および第1緯糸に少なくとも繊維の一部が溶融する第2経糸および第2緯糸の一方もしくは両方を織り込むことで、加圧時の通水性を確保するように基布層のバット繊維層との境界もしくは前記基布内に空隙(間隙)を有した樹脂層を形成させることができる。すなわち、樹脂層は第1緯糸および第1経糸の一方もしくは両方の周辺に形成されるため、空隙(間隙)を有する樹脂層を形成することができる。ここで、第2経糸および第2緯糸は基布層のバット繊維層に近い部分である基布の表面もしくは裏面に製織された製織布の第1緯糸もしくは第1経糸に織り込むことが好適である。また、基布が多層に形成されており、バット繊維層が基布の両面に積層される場合には、基布の表面側および裏面側の製織布の両面に第2経糸および第2緯糸を織り込むことで、基布層の表裏面に樹脂層を形成することができる。
【0008】
さらに前記構成によれば、バット繊維と基布との境界に樹脂層を形成することができることからバット繊維の一部を付着させて脱毛を抑制することができる。また、樹脂が溶融、硬化するときには、基布の第1経糸および第1緯糸の配置に影響されるため、樹脂はフェルト内部で網目状の細かく長い空隙(間隙)を有した状態で固まることで、空隙(間隙)を有した構造体となり、圧縮され難くするとともに、使用中の物性変化を抑えることができる。
【0009】
前記第2経糸または前記第2緯糸は、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸を適用することができる。また、前記第2経糸または第2緯糸は、前記第1経糸または第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が鞘部に配され、前記高融点樹脂が芯部に配された芯鞘型複合繊維とすることもできる。さらに、前記第2経糸または第2緯糸は、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸とすることもできる。
【0010】
前記構成によれば、マルチ糸、紡績糸、芯鞘型複合繊維または撚り糸は断面を扁平化して、糸1本が複数本に分散した状態になるため織り込みやすく、これらの糸を使用することで、樹脂層を表面から見ると、経又は緯方向に細い樹脂の無い網目状の空隙(間隙)を形成し易くなるため、目詰まり汚れなどの発生の防止効果を向上させることができる。またフェルト裏面側に使用した場合には、目詰まり汚れなどの発生の防止効果だけでなく、前記のように脱毛を抑制することにより裏面摩耗の抑制にもなる。
【0011】
なお本発明の一側面によれば、バット繊維を積層する基布の表面もしくは裏面が、第1経糸および/または第1緯糸、と第2緯糸(第2経糸)とで形成されている場合にも適用できる。ここで、樹脂層は、前記基布に織り込まれ、前記第1経糸(第1緯糸)を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が鞘部に配され、前記高融点樹脂が芯部に配された芯鞘型複合繊維、または、前記第1経糸(第1緯糸)を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸からなる第2緯糸(第2経糸)が、前記低融点樹脂の融点温度よりも高く、前記高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却されることで、前記低融点樹脂が溶融、硬化して形成される構成としている。なお、かかる構成において、前記第1経糸および/または第1緯糸、と第2緯糸(第2経糸)とで形成されている基布の上層または下層に、高融点樹脂の経緯糸で形成される基布を積層しても良い。
【0012】
前記構成によれば、基布の製織布を形成する第1経糸(第1緯糸)に鞘部が溶融する芯鞘型複合繊維が用いられた第2緯糸(第2経糸)を織り込むことで、加圧時の通水性を確保するように基布層とバット繊維層との境界に空隙(間隙)を有する樹脂層を形成させることができる。また、芯鞘型複合繊維の場合には、第2緯糸(第2経糸)の芯部は溶融せずに残り、基布には経糸と緯糸とが絡合された状態となるため一定の強度を確保できる。なお、前記基布の上層または下層に、高融点樹脂の経緯糸で形成される基布を1層追加すれば、さらに強度確保できる。同様に、芯鞘型複合繊維の替わりに、第1経糸(第1緯糸)を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸から形成された第2緯糸(第2経糸)を適用することもできる。特に、第2経糸を織り込んで、樹脂層を形成させて経方向に細長い間隙を形成した場合、フェルト内の水分の流動性を高めると考えられ、より高い搾水性を得られることから、経長の空隙(間隙)を形成するよう構成することが好ましい。
【0013】
前記構成において、前記第1経糸(第1緯糸)と前記第2緯糸(第2経糸)との交錯点は、前記第2緯糸(第2経糸)が3本以上の所定本数の前記第1経糸(第1緯糸)を跨いで、前記バット繊維側に表出する部分が前記基布側よりも多くなるように設けられていることが好適である。
【0014】
前記構成によれば、溶融する第2緯糸または第2経糸の大部分を予め基布の表面に露出させることで、樹脂層を基布の表面に露出させるように形成することができる。
【0015】
前記構成において、融点が100〜150℃である低融点樹脂を適用することができる。また、低融点樹脂には、ナイロンもしくはポリウレタンを適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、基布の表(裏)面もしくは基布内に低溶融樹脂からなる糸を製織し、樹脂を溶融、硬化させて空隙を有する樹脂層を基布の前記バット繊維との境界もしくは基布内に形成することで、従来の樹脂加工フェルトなどと比べ、樹脂層に(細長く)多くの空隙(間隙)を有し、樹脂層の厚みも薄く形成できるため、従来の樹脂加工による特性を維持しつつ、加圧時の通水性低下を防止する製紙用フェルトとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】図1の樹脂層の模式的な平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの製織パターンの模式的な断面図であり、第1経糸と第1緯糸とから製織された基布に第2経糸が織り込まれた状況を示す断面図である。
【図4】図3と異なる製織パターンの模式的な断面図であり、第1経糸と第1緯糸とから製織された基布に第2経糸が織り込まれた状況を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一製織パターンを示す模式的な断面図であり、表層が第1緯糸のみからなる基布に第2経糸が織り込まれた状況を示す断面図である。
【図6】図5と異なる製織パターンの模式的な断面図であり、表層が第1緯糸のみからなる基布に第2経糸が織り込まれた状況を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一製織パターンを示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一製織パターンを示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの樹脂層を正面から見た図面代用写真である。
【図10】図9に示した製紙用フェルトの樹脂層と反対側の裏面を見た図面代用写真である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの実施例と従来技術にかかる基布の表面に樹脂加工がされた製紙用フェルトの比較例とについて実施したシミュレータプレス試験の結果を示すチャートと、実施例および比較例の物性の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図3等を参照すると、フェルト100は、基布層1に表層となるバット繊維3及び裏層となるバット繊維層13をニードリングにより積層一体化してなる複層構造をなしており、基布層1とバット繊維3との間には樹脂層2が形成されている。基布1のバット繊維3に近い部分である製織布4は、第1経糸5と第1緯糸6と第2経糸8(図3参照)とで製織され、第2経糸8の溶融により、樹脂の一部がバット層3側に含浸された状態となった第1経糸5と第1緯糸6とで構成された製織布である。ここで、図1のように製織布4の下層には、適宜別の基布20を追加・積層することが可能である。基布20としては、製織布,経糸又は緯糸のみの不織布などが使用され、基布20に使用される経糸及び緯糸には第2経糸8のような樹脂層を形成させるための低融点糸は使用しない。なお、図1において樹脂層2(8)としているのは、上記のように第2経糸8の溶融・硬化によって樹脂層2が形成されていることを表している。
【0020】
ここで、図1では、製織布4の下層に別の基布20を追加・積層しているが、製織布4の上層に別の基布20を追加・積層しても良い。但し、この場合には、図3の基布構造は上下が逆の構造となり、第2経糸8が下側面に多く露出した構造となる。よって、この場合の樹脂層2は、裏層のバット繊維層13と製織布4との間に形成されることとなる。
【0021】
さらに、別の基布20を、製織布4の上下層に追加・積層することもできる。この場合、樹脂層2は製織布4と上下層どちらかの別の基布20との間に形成されることとなる。別の基布20には、織機でモノフィラメント糸や、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸などを織った布を適用できるが、これに限定されず、多層の布、不織布等も適用することができる。
【0022】
なお、製織布4(基布20)の製織パターンは特に限定されず、経1重緯2重織や経2重緯1重織の2重織構造、経1重緯1重織の1重織構造、経2重緯2重織の3重織以上の構造や、経2重緯2重織の3重織構造以上の上層(製紙面)側又は下層(走行面)側に低融点樹脂からなる第2経糸、第2緯糸を織り込む構成とすることもできる。
【0023】
樹脂層2は第1経糸5と同方向に延在した複数の樹脂帯7から構成されている。図2と図3を参照すると、樹脂帯7には第1緯糸6に織り込まれた第2経糸8がその位置を維持しつつ溶融して硬化することで所々に経方向に細長い網目状の空隙(間隙)17が形成されている。そして、樹脂層2は、樹脂帯7と空隙(間隙)17とが協働することで、空隙を有した樹脂の層として図1に示すように面全体を覆っている。空隙17については、第2経糸8間の間隔による空隙と、第2経糸8を構成する糸の間隔による空隙とで形成される。なお、樹脂帯2は樹脂が溶融、硬化して形成されるため、溶融した樹脂の一部はバット繊維3および製織布4にも浸透して硬化する。すなわち、樹脂層2は、バット繊維3と製織布4との間に独立して配設される層ではなく、両者の境界に形成される層となっている。
【0024】
このように、本実施形態は、製織布4とバット繊維3との境界に樹脂帯7と空隙17とからなる樹脂層2を形成させることで、フェルト樹脂加工の利点を損なわずに加圧時の通水性を確保することができる。さらにこの構成によれば、樹脂が一旦溶融して、その後硬化する樹脂帯7があるために一部の繊維を樹脂に付着させてバット繊維3の脱毛を抑制することができ、特に走行面側に樹脂層2を設けたときに有効となる。また、フェルト内部において、樹脂が網目状の空隙17を有した状態で固まった樹脂層2を形成することで、樹脂層2は空隙を有した構造体となり、圧縮され難くなるとともに、使用中の物性変化も抑えることができる。
【0025】
なお、第2緯糸が織り込まれて、樹脂層2を形成した場合には、織り込まれた第2緯糸の位置を維持しつつ、第2緯糸が溶融して硬化することで、所々に緯方向に細長い網目状の空隙17と樹脂帯7を有した樹脂層2を形成させることができる。同様に、第2緯糸および第2経糸が織り込まれた場合は、細かい網目状の空隙17と樹脂帯7を有した樹脂層2を形成することができる。なお、樹脂層2は図1の製織布4と、この製織布4に隣接する基布20との間にも形成することができ、加圧時の通水性を維持しつつ、樹脂加工が施されたフェルトの利点を活かすように適宜樹脂層2を設定することができる。
【0026】
次に図3〜図6を参照すると、本実施形態は、種々の製織布4の製織パターンに対して図2に示す樹脂層2を形成することができる。図3,4は、第1経糸5と第1緯糸6とで製織されている製織布4にさらに第2経糸8を第1緯糸6に織り込んだパターンを示している。ここで、第1経糸5および第1緯糸6は高融点樹脂から形成されており、第2経糸8は高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂から形成されている。なお、図3,4については、図1に示した製織布4の下層に配された基布20は省略し、基布1のバット繊維層に近い部分である製織布4のみを示しているが、適宜基布20を追加することが可能である。また前記したように、製織布4は、基布1の表面、裏面(製紙面側、走行面側)のいずれにも適用できるものであり、基布20を上下に配置した中層に適用することもできる。
【0027】
低融点樹脂には、例えば、融点が100〜150℃である低融点樹脂であるナイロンもしくはポリウレタンを適用することができる。第2経糸8は、低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸を適用することができる。ここで、低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸の繊度は500〜1800dtexとすることが好適である。また、低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸を形成する1本のフィラメントの繊度は3〜90dtexとすることが好適である。
【0028】
この構成によれば、低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸を適用し、糸の繊度およびフィラメントの繊度を所定範囲内とすることで、低融点の糸を扁平化させやすく、糸そのものが空隙を作る状態で溶融する(図2参照)。そして、細かい空隙が開いた状態に溶融分散させやすくする。かかる構成は、加圧時に通水性が確保されるように基布層とバット層の間に樹脂層を形成させられるため目詰まり汚れなどの発生も防止することができる。また、フェルト裏面側に樹脂層を形成すれば、裏面摩耗の抑制としても利用できる。高融点樹脂には、低融点樹脂の融点温度よりも高い樹脂を適用することができ、樹脂の種類は特に限定されない。
【0029】
図3は、本実施形態にかかる製紙用フェルトの製織パターンの模式的な断面図であり、第1経糸と第1緯糸とから製織された基布に第2経糸が織り込まれた状況を示す断面図である。なお、図3〜8において、(a)は経断面および(b)は緯断面の模式的な断面を示している。
【0030】
図3(a)を参照すると、経断面において、製織布4における第1経糸5と第1緯糸6との交錯点は、第1経糸5が3本の第1緯糸6を潜って、バット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも少なくなるように設けられている(1/3組織)。さらに、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点は、第2経糸8が7本の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けられている。
【0031】
図3(b)を参照すると、緯断面においても、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点は、第2経糸8が7本の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けられている。第2経糸8は断面を扁平状としているため細かい間隙が開いた状態に樹脂を溶融させやすく、空隙17と樹脂帯7(図2参照)とからなる通水性の低下を防止できる空隙を有する樹脂層2を容易に形成することができる。
【0032】
その後、図1に示すように製織布4の製紙面側にバット繊維3が積層され、フェルト100は低融点樹脂の融点温度よりも高く、高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱される。低融点樹脂からなる第2経糸8は溶融し、その後の冷却を経て溶融した樹脂が硬化する。
【0033】
溶融・硬化した樹脂は第1緯糸6のバット繊維3側に樹脂層2を形成する。樹脂層2は図1,2に示すように製織布4とバット繊維3との境界に樹脂帯7と空隙17とからなるように形成される。このように本実施形態は、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点を第2経糸8が3本以上の所定本数の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けることで、第1緯糸6のバット繊維3側に樹脂層2を形成することができる。なお、図では構成を見やすくするためにバット繊維3と製織布4との間に独立して配設された層として表しているが、実際に樹脂はバット繊維3と製織布4にも浸透(例えば、製織布4に含浸された樹脂の一部)して硬化しているため、樹脂2は両者の境界に形成される層となっている。
【0034】
図4は、図3における製織布4の第1経糸5と第1緯糸6との製織パターンを変えたものである。図4(a)を参照すると、製織布4は、1/3組織と3/1組織とを複合した組織、あるいは3/1経2重組織の様な基布としている。また、図4(a),(b)に示すように、第2経糸8が7本の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けられている。
【0035】
かかる構成によって図4の構成も図3と同様に、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点を第2経糸8が3本以上の所定本数の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けることで、第1緯糸6のバット繊維3側に樹脂層2を形成することができる。
【0036】
ここで、図3の製織パターン(1/3組織)では、樹脂が面方向に一様に分散するように溶融し、基布を3/1組織とした場合に比べて、より均一に樹脂が面上に広がった樹脂層2を形成することができる。このように、図3の1/3組織の製織パターンへ第2経糸8を織り込む構成は、製織布4から基布の奥へ樹脂が浸透しにくくなるとともに、薄くかつ一様な樹脂層2を形成させることができ、3/1組織と比べてより好適な構成となる。なおこの組織構成は、たとえば1/4,1/5〜組織とした場合においても、樹脂を面方向に一様に分散するように溶融するため、より均一な厚みを有する面状の樹脂層2を形成することができる。
【0037】
この製織布4に織り込まれる第2経糸8の本数又は繊度によって樹脂の量をコントロールすることもできる。このように本実施形態は、製織のパターン等を適宜選択することで、製織布4とバット繊維3との境界に樹脂層を形成させることができる。
【0038】
次に、図5,6を参照すると、製織布4が第1緯糸6と第2経糸8とで形成されている基布1を示しており、第2経糸8を完全に溶融させた後には、製織布4は第1緯糸6のみで構成されている構造となる。図5では製織布4の下層側に経糸15のみの基布20が配置されており、図6では製織布4の下に経糸15と緯糸16で形成される基布20が配置されている。図5(a),図6(a)を参照すると、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点は、第2経糸8が7本の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が基布1側よりも多くなるように設けられている。
【0039】
図5(b),図6(b)を参照すると、緯断面においても、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点は、第2経糸8が7本の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下層側よりも多くなるように設けられている。第2経糸8は断面を扁平状としているため細かい間隙が開いた状態に樹脂を溶融させやすく、空隙を有する樹脂層2を容易に形成することができる。
【0040】
その後、バット繊維3が積層され、フェルト100は低融点樹脂の融点温度よりも高く、高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱される。低融点樹脂からなる第2経糸8は溶融し、その後の冷却を経て溶融した樹脂が硬化する。なお、図5では省略しているが、経糸15のみの基布20の下層には高融点樹脂の経緯糸で形成される基布を適用することができる。
【0041】
図5,6のパターンにおいても、図3,4と同様に、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点を第2経糸8が3本以上の所定本数の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4の下側よりも多くなるように設けることで、第1緯糸6のバット繊維3側に樹脂層2を形成することができる。この製織パターンにおける樹脂層2は、図3の製織パターン(1/3組織)と同様に、樹脂が面方向に一様に分散するように溶融し、均一に樹脂が面上に広がった樹脂層2を形成することができる。このように、本構成は、1/3組織の製織パターンへ第2経糸8を織り込む構成と同様に、製織布4から基布の奥へ樹脂が浸透しにくくなるとともに、薄くかつ一様な樹脂層2を形成させることができる。
【0042】
ここで、図5で説明した製織パターンにおいて第2経糸8の替わりに芯鞘型複合繊維を適用することもできる。芯鞘型複合繊維は、融点の異なる2種類の樹脂が芯部と鞘部に適用されている。鞘部の低融点樹脂は芯部の高融点樹脂と比べ低い融点とされているため、表層を芯部の融点よりも低く、鞘部の融点よりも高い温度環境に置くことで、芯部を維持したまま、鞘部を溶融させることができる。例えば、芯部には高融点(200℃以上)ポリアミド合成繊維を、鞘部には低融点(100℃〜150℃)樹脂であるナイロンもしくはポリウレタンを適用することができる。
【0043】
かかる構成においても、図3,4と同様に、第1緯糸6と第2経糸8との交錯点を第2経糸8が3本以上の所定本数の第1緯糸6を跨いで、第2経糸8のバット繊維3側に表出する部分が製織布4側よりも多くなるように設けることで、第1緯糸6のバット繊維3側に樹脂層2を形成することができる。なお、この場合、溶融後の製織布4は、第1緯糸6のみとはならず、第2経糸8の芯鞘複合繊維の芯部糸と第2緯糸6とで構成された構造となる。
【0044】
さらに、芯鞘型複合繊維の替わりに、第1緯糸6を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸から形成された第2経糸を適用することもできる。この撚り糸は芯鞘型複合繊維と同様な作用を奏することができる。さらにこの構成は、芯鞘複合繊維と、高融点樹脂糸の撚り糸とすることもでき、撚り糸に適用される樹脂材料は適宜選定することができる。
【0045】
撚り糸を使用する場合、低融点フィラメントのマルチ糸の撚り数は1インチ当たり0〜5回であることが好適であり、実際に樹脂層を形成する樹脂量が20g〜130gとなるようにすることが好適である。かかる構成は、低融点の糸を扁平化させやすく、溶融分散させやすくするため、加圧時の通水性が確保されるように基布層とバット層との境界に樹脂層を形成させることができる。なお、この場合、溶融後の製織布4は、第1緯糸6のみとはならず、第2経糸8の高融点樹脂糸と第2緯糸6とで構成された構造となる。
【0046】
前記した図3〜6では、第1緯糸6に第2経糸8もしくは芯鞘型複合繊維を絡合する構成を説明した。しかしながら、本発明は、製織布4が第1経糸と第2緯糸とが絡合されている場合には、第1緯糸6に第2経糸8もしくは芯鞘型複合繊維を、第1経糸5に第2緯糸もしくは芯鞘型複合繊維を絡合する構成とすることもできる。
【0047】
さらに、本発明は、製織布4を、第1経糸5に第2緯糸もしくは芯鞘型複合繊維を絡合する構成とすることもできる。このように本発明は、製紙用フェルトもしくは製紙用ベルトに要求される経緯方向の強度、平面性、脱水性、汚れ防止性、脱毛防止性等に応じて、低融点樹脂の糸を絡合する基布の表層部4の製織パターンを適宜選定することができる。
【0048】
次に図7,8を参照すると、本実施形態は、基布内に樹脂層2を形成することができる。なお、図7,8では省略しているが、積層された製織布4と基布20の上下には、さらなる基布20を積層することができる。
【0049】
図7(a)を参照すると、上側の基布20は、第1経糸5と第1緯糸6とを3/1組織とし、下側の製織布4は、第1緯糸6と第2経糸8とを7/1組織としている。
【0050】
かかる製織を行った後に、フェルトは、低融点樹脂の融点温度よりも高く、高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱される。低融点樹脂からなる第2経糸8は溶融し、その後の冷却を経て溶融した樹脂が硬化する。溶融・硬化した樹脂は、製織布4と基布20との間に樹脂層2を形成する。
【0051】
かかる構成は、基布層1の内部に樹脂層2を形成することで、基布層1としての空隙量を維持しつつ、汚れを防止することができる。
【0052】
図8は、図7が製織布4を下層に配置し、製織布4の製紙面側に樹脂層を形成させる構造であるのに対し、製織布4を上層に配置し、製織布4の走行面側に樹脂層を形成させる構造である。図8(a)を参照すると、上側の製織布4は、第1緯糸6と第2経糸8とを1/7組織とし、下側の基布20は、第1経糸5と第1緯糸6とを1/3組織としている。溶融・硬化した樹脂は、製織布4と基布20との間に樹脂層2を形成する。
【0053】
このように図7,8にかかる構成においても、基布層1の内部に樹脂層2を形成することで、基布1としての空隙量を維持しつつ、汚れを防止することができる。
【0054】
図7,8で例示した製織布4や基布20の製織パターンは、これらの例示に限定されず、基布20を配設する箇所(製紙面側や走行面側)、強度要求、汚染物質による汚れの防止要求等を鑑み適宜選択的に適用することができる。
【0055】
図9は、本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの樹脂層を正面から見た図面代用写真である。図9を参照すると、樹脂層2の正面には筋状の樹脂帯7と所々に経方向に細長い網目状の空隙17が形成され、図2に示す態様となっている。一方、同じ製紙用フェルトを裏面から見た図面代用写真である図10を参照すると、樹脂が溶融して裏面まで浸透した形跡はなく、製織布4に樹脂層2を形成できることが分かる。
【0056】
次に、本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの実施例と未加工の製紙用フェルトの参考例との搾水性能の変化について説明する。一般的に、製紙工程では、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートがある。プレスパートにおける湿紙の搾水性能を予測するために搾水性能予測シミュレータを適用することができる。図11は、本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの実施例と未加工の製紙用フェルトの参考例について実施したシミュレータ試験の結果を示すチャートと、実施例および参考例の物性の比較である。
【0057】
図11のチャートでは、縦軸には単位時間あたりの搾水された水量を、横軸にはプレス回数を示している。ここで、実線は実施例であり、破線は参考例である。
【0058】
チャートを参照すると、プレス回数が少ない初期では、実施例と参考例の搾水性能は変わらない。しかしながら、プレス回数が増大するにつれて、実施例の搾水性能は低下しないが、参考例の搾水性能は低下している。特にプレス回数が100,000回を超えると、実施例と参考例との差は顕著になり、搾水性能に有意な差を生じている。このように本発明が適用された実施例は、加圧時の搾水性能の低下を防止するという優れた作用効果を奏する。
【0059】
続いて、図11の実施例と参考例の物性比較を参照すると、プレスされていないときの(0MPa)の厚み(mm)、4.9MPaでプレスされたときの厚み(mm)、通気度(cm/s/cm)、水平方向の加圧通水度(cm/s/cm)、目付(g/m)、密度(g/cm)、プレスされていないときの(0MPa)の空隙量(cm/m)について、シミュレータ試験の前後での変化量は変わらない。
【0060】
ここで、垂直方向の加圧通水度(cm/s/cm)については、参考例ではプレス前(P前)の36.46cm/s/cmからプレス後(P後)には32.47cm/s/cmになっており、プレス前後で10%(3.99cm/s/cm)の低下が見られる。一方、実施例ではプレス前(P前)の41.32cm/s/cmからプレス後(P後)には38.82cm/s/cmになっており、プレス前後で6%(2.5cm/s/cm)の低下であった。このように、実施例は参考例と比べて垂直方向の加圧通水度の低下が少ない。このことは、図11のチャートで示したプレス前後での搾水性能変化の傾向と同様となっている。
【0061】
上記のように本発明が適用された実施例は、参考例と比べて使用初期から終期までの垂直方向の加圧通水度の低下が少ない一方、その他の物性については参考例と同等であった。このように実施例は、加圧時の通水性の低下を防止するとともに、樹脂層がフェルト内部で網目状の細かく長い間隙を有した状態で固まることで、空隙を有した構造体となり、圧縮され難くすることで、使用中の物性変化を抑えるという優れた作用効果を奏する。以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明は、明細書および図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる製紙用フェルトは、紙の表面性を向上させることができる効果を有し、基布層の表面又は表裏両面にバット繊維層が一体化された製紙用フェルト、特に抄紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトなどとして有用である。また、本発明は半通気性の製紙用搬送ベルトとしても適用でき、製紙工程における湿紙の搬送用として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 基布層
2 樹脂層
3 バット繊維
4 製織布
5 第1経糸
6 第1緯糸
7 樹脂帯
8 第2経糸
17 空隙(間隙)
20 基布
100 製紙用フェルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製織布を少なくとも1層以上有する基布と、該基布の製紙面側および走行面側の一方の面もしくは両面にバット繊維が積層されて絡合一体化される製紙用フェルトであって、
前記製織布の1層の製紙面側又は走行面側には、空隙を有した樹脂層が形成されており、
前記樹脂層は、前記製織布の製紙面側又は走行面側に製織される第1緯糸および第1経糸の一方もしくは両方に織り込まれ、前記第1経糸および前記第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が少なくとも一部に配された第2経糸および第2緯糸の一方もしくは両方が、前記低融点樹脂の融点温度よりも高く、前記高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却されることで、前記低融点樹脂が溶融、硬化して形成され、
前記空隙は、前記第2経糸および前記第2緯糸の一方もしくは両方に沿って硬化した前記低融点樹脂間に形成されることを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項2】
前記空隙は、
前記第2緯糸が織り込まれて前記樹脂層2を形成した場合には、織り込まれた位置を維持しつつ、前記第2緯糸が溶融して硬化することで、所々に緯方向に細長い網目状となり、
前記第2経糸が織り込まれて前記樹脂層2を形成した場合には、織り込まれた位置を維持しつつ、前記第2経糸が溶融して硬化することで、所々に経方向に細長い網目状となり、
前記第2緯糸および前記第2経糸が織り込まれた場合は、細かい網目状となることを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項3】
前記第2経糸または前記第2緯糸は、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸、または、前記第1経糸または第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が鞘部に配され、前記高融点樹脂が芯部に配された芯鞘型複合繊維、または、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸であることを特徴とする請求項1または2に記載の製紙用フェルト。
【請求項4】
前記第1経糸と前記第2緯糸との交錯点は、前記第2緯糸が3本以上の所定本数の前記第1経糸を跨いで、前記バット繊維側に表出する部分が前記基布側よりも多くなるように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項5】
前記第1緯糸と前記第2経糸との交錯点は、前記第2経糸が3本以上の所定本数の前記第1緯糸を跨いで、前記第2経糸の前記バット繊維側に表出する部分が前記基布側よりも多くなるように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項6】
前記低融点樹脂の融点は、100〜150℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
【請求項7】
前記低融点樹脂は、ナイロンもしくはポリウレタンであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
【請求項8】
製織布を少なくとも1層以上有する基布と、該基布の製紙面側および走行面側の一方の面もしくは両面にバット繊維が積層されて絡合一体化される製紙用フェルトの製造方法であって、
前記製織布の1層の製紙面側又は走行面側は、第1経糸および/または第1緯糸と第2緯糸とで形成されており、
前記第2緯糸は、前記第1経糸および/または第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が少なくとも一部に配されており、
前記バット繊維が積層された後に、前記低融点樹脂の融点温度よりも高く、前記高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却され、
前記空隙は、前記第2緯糸に沿って冷却されて硬化した前記低融点樹脂との間に形成されることを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
【請求項9】
製織布を少なくとも1層以上有する基布と、該基布の製紙面側および走行面側の一方の面もしくは両面にバット繊維が積層されて絡合一体化される製紙用フェルトの製造方法であって、
前記製織布の1層の製紙面側又は走行面側は、第1経糸および/または第1緯糸と第2経糸とで形成されており、
前記第2経糸は、前記第1経糸および/または第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が少なくとも一部に配されており、
前記バット繊維が積層された後に、前記低融点樹脂の融点温度よりも高く、前記高融点樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱、冷却され、
前記空隙は、前記第2経糸に沿って冷却されて硬化した前記低融点樹脂との間に形成されることを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
【請求項10】
前記第2経糸または前記第2緯糸は、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸、または、前記第1経糸または第1緯糸を形成する高融点樹脂の融点温度よりも低い融点温度の低融点樹脂が鞘部に配され、前記高融点樹脂が芯部に配された芯鞘型複合繊維、または、前記低融点樹脂が用いられた低融点フィラメントのマルチ糸もしくは紡績糸と前記高融点樹脂が用いられた糸との撚り糸であることを特徴とする請求項7または8に記載の製紙用フェルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219902(P2011−219902A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92749(P2010−92749)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】