説明

製紙用フェルト及びその製造方法

【課題】基布層の製紙面側の表面の平滑性を高めて、紙の表面性を向上させると共に、製造が容易になるようにする。
【解決手段】複層構造をなす基布層1を有し、走行面3側に、丈方向及び幅方向にそれぞれ延在する経糸12及び緯糸13を互いに絡合させた下基布11が配置され、製紙面5側に、下基布とは別に製織されて、第1の方向及び第2の方向にそれぞれ延在する第1方向糸43及び第2方向糸44を互いに絡合させた上基布42が配置され、この上基布が、第1方向糸が第2方向糸に比べて製紙面側を通る割合を高くした組織で、且つ第1方向糸が第2方向糸に比べて太い糸材で高密度に配された第1方向糸主体の構造をなすものとする。特に少なくとも第1方向糸が、その延在方向が丈方向及び幅方向に対して斜めになるように配されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層構造をなす基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙用フェルトにおいては、基布層に所要の厚さのバット繊維層が積層一体化されているが、基布層の表面の凹凸が顕著であると、プレスロールによる加圧時の圧力状態が不均一になることが原因で、紙にマーク(圧力斑)が現れて紙の表面性を低下させる。例えば加圧時に経糸に沿って圧力が高い部分が発生すると、紙に経糸方向の筋状マークが現れ、逆に加圧時に緯糸に沿って圧力が高い部分が発生すると、緯糸方向の筋状マークが現れる。
【0003】
このマークによる紙の表面性の低下を避けるには、基布層の製紙面側の表面を凹凸が少なく平滑なものとすれば良く、具体的には基布層を細い糸材を用いて緻密に織り上げれば良いが、基布層全体を細い糸材による緻密な組織構造とすると、製織が面倒になる上に、基布層に要求される搾水性に影響を及ぼす通気度や空隙率などの特性が損なわれる不都合が生じる。
【0004】
そこで、細い糸材を用いて密に織り上げた基布と、太い糸材を用いて粗に織り上げた基布とを重ね合わせて、密に織り上げた基布を製紙面側に配したラミネート構造が広く採用されている(例えば特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開2000−256984号公報
【特許文献2】特開2005−200819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、前記のラミネート構造の基布層では、紙の表面性を向上させるためには、製紙面側に配置される上基布の糸をできるだけ細くして糸密度を上げれば良いが、この場合、製織に要する時間が長くなるため、生産性が低下するという問題が生じることから、糸密度を上げるには限界がある。
【0006】
これに対して、走行面側に配置される下基布の特徴に応じて、経糸方向及び緯糸方向の筋状マークが低減するように、上基布の織り構造を工夫する手法が考えられる。例えば下基布が緯糸が主張する織り構造で緯糸方向の筋状マークが強く現れる場合には、上基布に経糸が主張する織り構造を採用することで、緯糸方向の筋状マークを低減することができる。
【0007】
しかしながら、このような手法では、例えば緯糸方向の筋状マークを低減するために、上基布に経糸が主張する織り構造を採用すると、緯糸方向の筋状マークが低減しても、上基布に起因する経糸方向の筋状マークが残る場合があり、紙の表面性向上の要望を十分に満足することができない。
【0008】
本発明は、このような発明者の知見に基づき案出されたものであり、その主な目的は、紙の表面性を向上させることができ、しかも製造が容易になるように構成された製紙用フェルト及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、複層構造をなす基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルトにおいて、前記基布層における走行面側に、丈方向及び幅方向にそれぞれ延在する経糸及び緯糸を互いに絡合させた下基布が配置され、前記基布層における製紙面側に、前記下基布とは別に製織されて、第1の方向及び第2の方向にそれぞれ延在する第1方向糸及び第2方向糸を互いに絡合させた上基布が配置され、この上基布が、前記第1方向糸が前記第2方向糸に比べて製紙面側を通る割合を高くした組織で、且つ前記第1方向糸が前記第2方向糸に比べて太い糸材で高密度に配された第1方向糸主体の構造をなすものとした。
【0010】
これによると、上基布において第2方向糸が主張しない、すなわち上基布が、1方向に延在する糸のみが下基布の表面に沿って密に配列された構造と類似したものとなり、上基布が全体として薄く平坦な状態となるため、基布層の製紙面側の表面の平滑性が向上し、紙の表面性を向上させることができる。しかも、細い糸材を用いて糸密度を上げる必要がないため、製造が容易である。
【0011】
この場合、上基布は、薄く平坦な状態となるため、この上基布を重ねたことによる空隙量の増大はあまりなく、下基布により適切な空隙量が確保される。
【0012】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項2に示すとおり、少なくとも前記第1方向糸が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配された構成とすることができる。
【0013】
これによると、下基布では、丈方向及び幅方向に経糸及び緯糸がそれぞれ延在するのに対して、上基布では、丈方向及び幅方向に対して斜めになるように第1方向糸が延在し、下基布と上基布とで糸が平行にならないため、一方の糸間に他方の糸が嵌り込むことが抑制されて、基布層が潰れ難い特性となる。このため、適切な空隙量を長期間に渡って維持することができ、さらに基布層の製紙面側の表面の平滑性が向上するため、紙の表面性を向上させると共に、表面性の低下を抑えることができる。
【0014】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項3に示すとおり、前記上基布の第1方向糸の延在方向と丈方向及び幅方向の各々とのなす角度がそれぞれ10度以上である構成とすることができる。
【0015】
これによると、下基布の糸間に上基布の糸が嵌り込むことにより潰れ易くなる不都合を確実に避けることができる。第1方向糸の丈方向及び幅方向に対する角度が10度未満であると、下基布の糸間に上基布の糸が嵌り込むため、潰れ易くなる不都合が生じる。
【0016】
なお、主体とならない第2方向糸も、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配された構成とすれば良いが、この第2方向糸は第1方向糸より細い糸材で低密度に配されていることから、第2方向糸が下基布の糸間に嵌り込むことによる潰れはあまり問題とならないため、丈方向及び幅方向に対して平行または直交するように配することも可能である。
【0017】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項4に示すとおり、前記上基布が、織機で製織された原反織布を必要に応じて切断して得られた有端の織布片を、前記第1方向糸及び第2方向糸となる経糸及び緯糸を丈方向及び幅方向に対して斜めにした状態で、丈方向に複数並べてなる構成とすることができる。
【0018】
これによると、第1方向糸及び第2方向糸が丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配された基布を簡単に製作することができる。また、織布片の元になる原反織布は、幅寸法の小さなもので済むため、製織も容易になる。
【0019】
なお、強度を高めるために、丈方向に複数並べた織布片を相互に接合するようにすると良く、この場合、織布片の接合は、ミシンなどによる縫合や、超音波溶着機などによる溶着などにより行えば良い。
【0020】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項5に示すとおり、前記上基布が、織機で製織された原反織布を、前記第2方向糸となる糸を丈方向に延在させたまま、前記第1方向糸となる糸が幅方向に対して斜めに延在するように歪めて形成される構成とすることができる。
【0021】
これによると、第1方向糸のみが丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配された基布を簡単に製作することができる。ここで、原反織布は、第2方向糸が粗に織り上げられているため、第1方向糸が斜めになるように歪ませる作業を容易に行うことができる。
【0022】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項6に示すとおり、前記第2方向糸が、第1方向糸との交差部分で扁平化するように、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を複数本集合させた集合糸材からなる構成とすることができる。
【0023】
これによると、第2方向糸に絡み合う第1方向糸の屈曲が緩和されるため、上基布がより薄く平坦な状態になり、紙の表面性をより一層向上させることができる。ここで、集合糸材が扁平化する、すなわち集合糸材を構成する糸が第1方向糸に沿って横方向に広がる状態になるようにするには、糸相互の絡み合いによる拘束力が比較的弱いものとすることが必要である。
【0024】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項7に示すとおり、前記第2方向糸が、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りで且つ複数本のフィラメントを1度に撚り合わせた片撚りの撚り糸からなる構成とすることができる。
【0025】
これによると、甘撚りの撚り糸であるため、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱く、容易に扁平化するようになる。さらに、片撚りの撚り糸であるため、諸撚り(双糸)のように上撚りと下撚りで撚りが2重にかかった撚り糸に比較して、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱いため、扁平化が容易になる。
【0026】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項8に示すとおり、前記第2方向糸が、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りの撚り糸からなり、その撚り糸の撚り数を10回/m〜150回/mとした構成とすることができる。
【0027】
撚り数が150回/mより多いと、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が強過ぎるため、扁平化し難くなり、他方、撚り数が10回/mより少ないと、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱過ぎる、あるいはなくなるため、使用中に揉まれることでフィラメントが抜け出す現象、いわゆる糸抜けが発生する可能性があり、特に第2方向糸の屈曲が少ないと糸抜けが発生し易くなることから、望ましくない。
【0028】
なお、第2方向糸は、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸が好適であるが、この他に、多数のフィラメントを束ねただけの撚りのないマルチフィラメント糸(引き揃え糸)や、ステープルを紡いで得られる紡績糸なども可能である。
【0029】
また、主体となる第1方向糸にも、ある程度扁平化する糸材を用いると良く、具体的には、クリンプの付いた1本のフィラメントからなるモノフィラメント糸、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸、モノフィラメント糸とこれより小径のフィラメントを複数集合させたマルチフィラメント糸との撚り糸、モノフィラメント糸とこれより小径のステープルを紡いで得られる紡績糸との撚り糸などが好適である。これによると、第1方向糸が過度に扁平化することが抑制されると共に、適度なクッション性が得られる。
【0030】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項9に示すとおり、前記第2方向糸が、加熱処理により軟化・溶融する熱可塑性の糸材からなる構成とすることができる。
【0031】
これによると、第2方向糸に絡み合う第1方向糸の屈曲が緩和されるため、上基布がより薄く平坦な状態になり、紙の表面性をより一層向上させることができる。
【0032】
なお、フェルトの製作においては、基布層にバット繊維層を一体化するニードリング工程の前に、基布層の形態を安定化させる熱セットが行われ、この熱セットを第2方向糸を軟化・溶融させる加熱処理として、ここでの温度条件で軟化・溶融する熱可塑性合成樹脂材料を採用すると良い。
【0033】
また、本発明においては、請求項10に示すとおり、複層構造をなす基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルトにおいて、前記基布層における走行面側に、丈方向及び幅方向にそれぞれ延在する経糸及び緯糸を互いに絡合させた基布が配置され、前記基布層における製紙面側に、1方向に延在する糸のみを前記走行面側の基布の表面に沿って配列してなる糸層が配置され、前記1方向の糸が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配されたものとした。
【0034】
これによると、製紙面側の糸層が全体として薄い平坦なシート状となるため、基布層の製紙面側の表面の平滑性が向上し、紙の表面性を向上させることができる。
【0035】
そして、走行面側の基布では、丈方向及び幅方向に経糸及び緯糸がそれぞれ延在するのに対して、製紙面側の糸層では、丈方向及び幅方向に対して斜めになるように糸が延在し、基布と糸層とで糸が平行にならないため、一方の糸間に他方の糸が嵌り込むことが抑制されて、潰れ難い特性となる。このため、適切な空隙量を長期間に渡って維持することができ、さらに基布層の製紙面側の表面の平滑性が向上して、紙の表面性を向上させると共に、表面性の低下を抑えることができる。
【0036】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項11に示すとおり、前記糸層を構成する1方向に延在する糸の延在方向と丈方向及び幅方向の各々とのなす角度がそれぞれ10度以上である構成とすることができる。
【0037】
これによると、基布の糸間に糸層の糸が嵌り込むことにより潰れ易くなる不都合を確実に避けることができる。糸層の糸の丈方向及び幅方向に対する角度が10度未満であると、基布の糸間に糸層の糸が嵌り込むため、潰れ易くなる不都合が生じる。
【0038】
また、本発明においては、前記製紙用フェルトの製造方法として、請求項12に示すとおり、経糸及び緯糸のいずれか一方に所定の液体に溶解可能な溶解性の糸材を用いて製織された織布を、前記走行面側の基布に重ね合わせて、ニードリングによりバット繊維層を一体化した後に、前記溶解性の糸材を前記液体中に溶出させて除去して、1方向に延在する糸のみの前記糸層を形成する構成とすることができる。
【0039】
これによると、1方向に延在する糸のみの糸層を簡単に形成することができる。
【0040】
この場合、溶解性の糸材は、取り扱い易さの観点から水溶性高分子材料からなるものが好適であり、ニードリング工程の後に行われる洗浄工程で水溶性の糸材を洗浄水中に溶出させて除去するようにすると良い。また、溶解性の糸材は、有機溶剤に溶解可能な高分子材料からなるものも可能であり、有機溶剤には、フェルトの構成材料(ポリアミドや羊毛など)に対して化学的に安定で脆化などの悪影響を与えないものを採用する。
【発明の効果】
【0041】
このように本発明によれば、製紙面の基布あるいは糸層が全体として薄く平坦な状態となるため、基布層の製紙面側の表面の平滑性が向上し、紙の表面性を向上させることができる。しかも、細い糸材を用いて糸密度を上げる必要がないため、製造が容易である。特に、第1方向糸を丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配することにより、基布層が潰れ難い特性となるため、適切な空隙量を長期間に渡って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、本発明によるフェルトの一例を示す模式的な断面図である。このフェルトは、基布層1にバット繊維層2をニードリングにより積層一体化してなるものであり、基布層1は、走行面3側の下基布11と製紙面5側の上基布15とが重なり合う複層構造をなしている。
【0044】
走行面3側の下基布11は、厚さ方向に重ねて配置された丈方向に延在する2本の経糸12に幅方向に延在する緯糸13を絡合させた経2重構造をなしている。製紙面5側の上基布15は、下基布11とは別に製織され、丈方向に延在する経糸16に幅方向に延在する緯糸17を絡合させた経緯1重構造をなしている。
【0045】
下基布11の経糸12及び緯糸13には、モノフィラメント糸や、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸などを用いれば良い。
【0046】
なお、図1の例では、下基布11を経2重構造としたが、後述するように経緯1重構造など、種々の組織構造が可能である。
【0047】
図2は、図1に示した下基布と上基布との組織構造の組合せの一例を示している。上基布15は、経糸16及び緯糸17の一方の糸(第1方向糸)が他方の糸(第2方向糸)に比べて表面側を通る割合を高くした組織で、且つ第1方向糸が第2方向糸に比べて太い糸材で高密度に配された第1方向糸主体の構造をなしている。
【0048】
図2に示すように、上基布15は、下基布11が経糸12及び緯糸13のいずれが主張する織り構造であるかに応じて、経糸方向及び緯糸方向の筋状マークが低減するように、経糸主体の組織構造と緯糸主体の組織構造とのいずれかが選択される。
【0049】
すなわち、下基布11が緯糸13が主張する織り構造で緯糸方向の筋状マークが強く現れる場合には、上基布15に経糸16が主張する織り構造を採用することで、緯糸方向の筋状マークを低減することができる。またこれとは逆に、下基布11が経糸12が主張する織り構造で経糸方向の筋状マークが強く現れる場合には、上基布15に緯糸17が主張する織り構造を採用することで、経糸方向の筋状マークを低減することができる。
【0050】
ここでは、経糸主体の組織構造の一例として5/1崩し織り、すなわち緯糸17が5本の経糸16の下側(走行面側)を通った後に1本の経糸16の上側(製紙面側)を通る組織構造をあげており、この組織構造では、経糸(主体となる第1方向糸)16が緯糸(主体とならない第2方向糸)17に比べて表面側を通る割合が高くなっている。また、経糸16の密度(込み数)が高く、緯糸17の密度が低くなっている。
【0051】
また、緯糸主体の組織構造の一例として1/2崩し織り、すなわち緯糸17が1本の経糸16の下側(走行面側)を通った後に2本の経糸16の上側(製紙面側)を通る組織構造をあげており、この組織構造では、緯糸(主体となる第1方向糸)17が経糸(主体とならない第2方向糸)16に比べて表面側を通る割合が高くなっている。また、緯糸17の密度が高く、経糸16の密度が低くなっている。
【0052】
下基布11が、(A)に示すように2/2斜織り及び2/2崩し織りでは、経糸12及び緯糸13のいずれも主張しないため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織り、及び緯糸主体の1/2崩し織りのいずれでも良い。また、下基布11が、(B)に示すように3/1崩し織り、及び(D)に示すように5/1崩し織りでは、経糸12が主張する組織構造となるため、上基布15は、緯糸主体の1/2崩し織りが好適である。一方、下基布11が、(C)に示すように1/3崩し織り、及び(E)に示すように1/5崩し織りでは、緯糸13が主張する組織構造となるため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織りが好適である。
【0053】
また、下基布11が、(F)に示すように経1.5重織り、及び(G)に示すように緯1.5重織りでは、経糸12及び緯糸13のいずれも主張しないため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織り、及び緯糸主体の1/2崩し織りのいずれでも良い。なお、経1.5重織り及び緯1.5重織りには、この他に種々あるが、いずれでも経糸12及び緯糸13のいずれも主張しないため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織り、及び緯糸主体の1/2崩し織りのいずれでも良い。
【0054】
また、下基布11が、(H)に示すように経2重織りでは、経糸12が主張する組織構造となるため、上基布15は、緯糸主体の1/2崩し織りが好適である。一方、下基布11が、(I)に示すように緯2重織りでは、緯糸13が主張する組織構造となるため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織りが好適である。なお、経2重織り及び緯2重織りには、この他に種々あるが、いずれの経2重織りでも、経糸12が主張する組織構造となるため、上基布15は、緯糸主体の1/2崩し織りが好適であり、またいずれの緯2重織りでも、緯糸13が主張する組織構造となるため、上基布15は、経糸主体の5/1崩し織りが好適である。
【0055】
図3は、図1に示した上基布に用いられる糸の太さ及び込み数(密度)の一例を示している。上基布15の経糸16及び緯糸17は、いずれが主体となるかに応じて、糸の太さ、及び込み数(密度)を、図3に示すように設定すると良い。
【0056】
経糸16及び緯糸17のうち、主体となる第1方向糸は、太い糸材からなり、高い密度(込み数)で織り込まれる。一方、主体とならない第2方向糸は、細い糸材からなり、低い密度(込み数)で織り込まれる。
【0057】
また、主体とならない第2方向糸には、モノフィラメント糸を用いることも可能であるが、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を複数本集合させた集合糸材を用いると良く、これにより第2方向糸が第1方向糸との交差部分で扁平化する、すなわち集合糸材を構成する糸が第1方向糸に沿って横方向に広がる状態になり、その第2方向糸に絡み合う第1方向糸の屈曲を緩和することができる。これによると、上基布15が薄く平坦な状態になり、紙の表面性をより一層向上させることができる。
【0058】
ここで、集合糸材が扁平化するようにするには、糸相互の絡み合いによる拘束力が比較的弱いものとすることが必要であり、具体的には、多数のフィラメントを束ねただけの撚りのないマルチフィラメント糸(引き揃え糸)、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りの撚り糸、ステープルを紡いで得られる紡績糸などが好適である。
【0059】
図3に示す例では、第2方向糸に、(I)6〜50dのフィラメントからなる800d以下のマルチフィラメント糸(引き揃え糸または撚り糸)、(II)φ0.25mm以下のモノフィラメント糸、(III)800d以下の紡績糸、(IV)800d以下の水溶性の糸、例えばPVA(ポリビニルアルコール)で形成された糸が用いられている。
【0060】
特に、第2方向糸は、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りの撚り糸からなるものとすると良く、これによると、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱く、容易に扁平化するようになる。さらに第2方向糸は、複数本のフィラメントを1度に撚り合わせた片撚り糸からなるものとすると良く、これによると、諸撚り(双糸)のように上撚りと下撚りで撚りが2重にかかった撚り糸に比較して、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱いため、扁平化が容易になる。
【0061】
また、第2方向糸となる撚り糸の撚り数を10回/m〜150回/mとすると良い。撚り数が150回/mより多いと、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が強過ぎるため、扁平化し難くなり、他方、撚り数が10回/mより少ないと、フィラメント相互の絡み合いによる拘束力が弱過ぎる、あるいはなくなるため、使用中に揉まれることでフィラメントが抜け出す現象、いわゆる糸抜けが発生する可能性があり、特に第2方向糸の屈曲が少ないと糸抜けが発生し易くなることから、望ましくない。
【0062】
以上のように、上基布15を、第1方向糸(経糸16及び緯糸17のいずれ一方)が第2方向糸(経糸16及び緯糸17のいずれ他方)に比べて製紙面側を通る割合を高くした組織で、且つ第1方向糸が第2方向糸に比べて太い糸材で高密度に配された第1方向糸主体の構造とすると、第2方向糸が主張しない、すなわち上基布15が、1方向に延在する糸(第1方向糸)のみが下基布11の表面に沿って密に配列された構造と類似したものとなり、上基布15が全体として薄く平坦な状態となるため、基布層1の製紙面5側の表面の平滑性が向上し、紙の表面性を向上させることができる。
【0063】
なお、上基布15は、薄く平坦な状態となるため、この上基布15を重ねたことによる空隙量の増大はあまりなく、下基布11により適切な空隙量が確保される。
【0064】
一方、第1方向糸には、モノフィラメント糸を用いることも可能であるが、第2方向糸17と同様に、集合糸材を用いてある程度扁平化するようにすると良く、具体的には、クリンプの付いた1本のフィラメントからなるモノフィラメント糸、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸、モノフィラメント糸とこれより小径のフィラメントを複数集合させたマルチフィラメント糸との撚り糸、モノフィラメント糸とこれより小径のステープルを紡いで得られる紡績糸との撚り糸などが好適である。これによると、第1方向糸が過度に扁平化することが抑制されると共に、適度なクッション性が得られる。
【0065】
図3に示す例では、第1方向糸に、(A)φ0.15mmのフィラメントを3本撚り合わせた撚り糸、(B)φ0.15mmのフィラメントを2本撚り合わせた撚り糸を3本撚り合わせたの撚り糸、(C)φ0.20mmのフィラメントを2本撚り合わせた撚り糸、(D)φ0.20mmのフィラメントを3本撚り合わせた撚り糸、(E)φ0.20mmのフィラメントを2本撚り合わせた撚り糸を2本撚り合わせたの撚り糸、(F)6〜50dのフィラメントを撚り合わせた1500d以下の撚り糸、1500d以下の紡績糸(G)が用いられている。
【0066】
また、主体とならない第2方向糸に、熱可塑性の糸材を用いるようにしても良い。このようにすると、加熱処理により軟化・溶融して、その第2方向糸に絡み合う第1方向糸の屈曲を緩和することができ、これにより上基布15が薄く平坦な状態になり、紙の表面性をより一層向上させることができる。
【0067】
なお、製紙用フェルトの製作においては、基布層1にバット繊維層2を一体化するニードリング工程の前に、基布層1の形態を安定化させる熱セットが行われ、この熱セットを第2方向糸を軟化・溶融させる加熱処理として、ここでの温度条件で軟化・溶融する熱可塑性合成樹脂材料を採用すると良い。
【0068】
図4は、本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図であり、丈方向及び幅方向に切断した断面を示している。図5は、図4に示した上基布及び下基布を示す模式的な平面図であり、(A)に上基布を、(B)に下基布をそれぞれ示す。
【0069】
図1に示した例では、基布層1を構成する上基布15において、経糸16及び緯糸17がそれぞれ丈方向及び幅方向に延在していたのに対して、図4に示す例では、基布層41を構成する上基布42において、第1方向糸43及び第2方向糸44が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在する、すなわち丈方向及び幅方向に対して平行または直交しないように配されている。下基布11は、図1の例と同様である。
【0070】
このようにすると、下基布11では、丈方向及び幅方向に経糸12及び緯糸13がそれぞれ延在するのに対して、上基布42では、丈方向及び幅方向に対して斜めになるように第1方向糸43及び第2方向糸44が延在し、下基布11と上基布42とで糸が平行にならないため、一方の糸間に他方の糸が嵌り込むことが抑制されて、潰れ難い特性となる。このため、適切な空隙量を長期間に渡って維持することができ、さらに基布層41の製紙面5側の表面の平滑性が向上するため、紙の表面性を向上させると共に、表面性の低下を抑えることができる。
【0071】
なお、この構成においても、上基布42及び下基布11の組織構造、上基布42の第1方向糸43及び第2方向糸44の太さ及び込み数(密度)を、図2・図3に示した条件にしたがって設定すると良い。
【0072】
図6は、図4に示した上基布の別の例を示す模式的な平面図である。ここでは、主体となる第1方向糸43の延在方向と幅方向とのなす角度β1が、図2の例での角度β1より小さくなっている。このように第1方向糸43の幅方向に対する角度β1を小さくしても良いが、潰れ難い特性を得る上で、主体となる第1方向糸43の丈方向及び幅方向に対する角度α1・β1を、10度以上とすると良い。角度α1・β1が10度未満であると、下基布11の経糸12及び緯糸13に上基布42の第1方向糸43が影響を受ける、すなわち下基布11の経糸12相互の間隙あるいは緯糸13相互の間隙に上基布42の第1方向糸43が嵌り込むため、潰れ易くなる不都合が生じる。
【0073】
一方、主体とならない第2方向糸44の丈方向及び幅方向に対する角度α2・β2も、10度以上とすると良い。なおここでは、第1方向糸43と第2方向糸44とが直交することから、第1方向糸43の角度α1・β1に応じて第2方向糸44の角度α2・β2が自ずと定まる。
【0074】
図7は、図4・図5に示した上基布の製作の要領を示す模式図である。ここでは、上基布42が、有端の織布片71を丈方向に複数並べて形成される。織布片71は、織機72で製織された原反織布73を切断して得られ、第1方向糸43及び第2方向糸44となる緯糸75及び経糸74が丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように織布片71を斜めに傾けた状態で順次配置し、耳部が丈方向に一直線状になるように余分な部分を切除する。
【0075】
このようにすると、第1方向糸43及び第2方向糸44糸が丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配された基布42を簡単に得ることができる。また、織布片71の元になる原反織布73は、幅寸法の小さなもので済むため、製織も容易になる。
【0076】
なお、強度を高めるために、丈方向に複数並べた織布片71を相互に接合するようにすると良く、この場合、織布片71の接合は、ミシンなどによる縫合や、超音波溶着機などによる溶着、接着剤による接着などにより行えば良い。
【0077】
図8は、本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図であり、丈方向及び幅方向に切断した断面を示している。図9は、図8に示した上基布を示す模式的な平面図であり、(A)に完成状態を、(B)に製作の要領をそれぞれ示している。
【0078】
図8・図9(A)に示すように、基布層81では、製紙面5側の上基布82において、主体となる第1方向糸83のみが、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配されており、主体とならない第2方向糸84は、丈方向に延在するように配されている。
【0079】
この構成では、第2方向糸84が丈方向に延在するため、この第2方向糸84が下基布11の経糸12相互の間隙に嵌り込むことで潰れ易くなることが懸念されるが、この第2方向糸84は第1方向糸83より細い糸材で低密度に配されていることから、第2方向糸84が下基布11の経糸12相互の間隙に嵌り込むことによる潰れはあまり問題とならない。
【0080】
上基布82は、図9(B)に示すように、第2方向糸84を織機上で経糸92とし、第1方向糸83を織機上で緯糸(打込糸)93として製織された原反織布91を、経糸92(第2方向糸84)を丈方向に延在させたまま、緯糸93(第1方向糸83)の延在方向が幅方向に対して斜めになるように歪めることで簡単に得ることができる。ここで、原反織布91は、経糸92(第2方向糸84)が粗に配されているため、緯糸93(第1方向糸83)が斜めになるように歪ませる作業を容易に行うことができる。
【0081】
なお、この構成においても、上基布82及び下基布11の組織構造、上基布82の第1方向糸83及び第2方向糸84の太さ及び込み数(密度)を、図2・図3に示した条件にしたがって設定すると良い。
【0082】
図10は、本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図であり、丈方向及び幅方向に切断した断面を示している。図11は、図10に示した走行面側の糸層及び製紙面側の基布を示す模式的な平面図であり、(A)に走行面側の糸層を、(B)に製紙面側の基布をそれぞれ示す。
【0083】
ここでは、前記の例と同様に、基布層101が複層構造をなしているが、前記の例と異なり、製紙面5側に、1方向に延在する糸102のみを製紙面側の基布11の表面に沿って配列してなる糸層103が配置され、その1方向の糸102が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配されている。
【0084】
なお、糸層103の糸102には、モノフィラメント糸や、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸などを用いれば良い。
【0085】
この構成では、糸層103が全体として薄い平坦なシート状となるため、基布層101の製紙面5側の表面の平滑性が向上し、紙の表面性を向上させることができる。
【0086】
そして、基布11では、丈方向及び幅方向に経糸12・13及び緯糸13がそれぞれ延在するのに対して、糸層103では、丈方向及び幅方向に対して斜めになるように糸102が延在し、基布11と糸層103とで糸が平行にならないため、一方の糸間に他方の糸が嵌り込むことが抑制されて、基布層101が潰れ難い特性となる。このため、適切な空隙量を長期間に渡って維持することができ、さらに基布層101の製紙面5側の表面の平滑性が向上して、紙の表面性を向上させると共に、表面性の低下を抑えることができる。
【0087】
この場合、糸層103の糸102の丈方向及び幅方向に対する角度α・βは、10度以上とすると良い。角度が10度未満であると、基布11の経糸12及び緯糸13に糸層103の糸102が影響を受ける、すなわち基布11の経糸12相互の間隙あるいは緯糸13相互の間隙に糸層103の糸102が嵌り込むため、潰れ易くなる不都合が生じる。
【0088】
ところで、1方向に延在する糸102のみの糸層103は、接着剤による接着や超音波溶着機などによる溶着などにより糸102の適所を基布11に固定しながら形成するため、製造に手間を要する。
【0089】
一方、図4・図5及び図8・図9に示した例で、主体とならない第2方向糸44・84に水溶性高分子材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール)などからなる水溶性の糸材を用い、洗浄工程で第2方向糸44・84を洗浄水中に溶出させて除去するようにすると、図10・図11に示したものと同様のものを得ることができる。
【0090】
水溶性の第2方向糸44・84を除去する洗浄工程はニードリング工程の後に行えば良い。すなわち、経糸及び緯糸のいずれか一方に水溶性の糸材を用いて製織された織布を、製紙面側の基布11に重ね合わせて、ニードリングによりバット繊維層2を一体化した後に、洗浄により水溶性の糸材を洗浄水中に溶出させて除去することにより、1方向に延在する糸のみの糸層103が形成され、製造途中で糸層103が織布の状態となるため、製造が容易になる。
【0091】
水溶性の糸材を形成する水溶性高分子材料には、常温の水で溶解するものも可能であるが、40℃〜70℃に加温した水で溶解するものを採用することが望ましく、これにより通常作業中に水溶性の糸材が溶解することを回避することができ、取り扱いが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明にかかる製紙用フェルトは、紙の表面性を向上させることができる効果を有し、複層構造をなす基布層の表面又は表裏両面にバット繊維層が一体化された製紙用フェルト、特に抄紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明によるフェルトの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】図1に示した下基布と上基布との組織構造の組合せの一例を示す図である。
【図3】図1に示した上基布に用いられる糸の太さ及び込み数(密度)の一例を示す図である。
【図4】本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4に示した上基布及び下基布を示す模式的な平面図である。
【図6】図4に示した上基布の別の例を示す模式的な平面図である。
【図7】図4・図5に示した上基布の製作の要領を示す模式図である。
【図8】本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図である。
【図9】図8に示した上基布を示す模式的な平面図である。
【図10】本発明によるフェルトの別の例を示す模式的な斜視図である。
【図11】図10に示した走行面側の糸層及び製紙面側の基布を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 基布層
2 バット繊維層
3 走行面
5 製紙面
11 下基布、12 経糸、13 緯糸
15 上基布、16 経糸(第1方向糸または第2方向糸)、17 緯糸(第1方向糸または第2方向糸)
41 基布層
42 基布、43 第1方向糸、44 第2方向糸
71 織布片
72 織機
73 原反織布、74 経糸、75 緯糸
81 基布層
82 基布、83 第1方向糸、84 第2方向糸
91 原反織布
101 基布層
102 糸
103 糸層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層構造をなす基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルトであって、
前記基布層における走行面側に、丈方向及び幅方向にそれぞれ延在する経糸及び緯糸を互いに絡合させた下基布が配置され、
前記基布層における製紙面側に、前記下基布とは別に製織されて、第1の方向及び第2の方向にそれぞれ延在する第1方向糸及び第2方向糸を互いに絡合させた上基布が配置され、この上基布が、前記第1方向糸が前記第2方向糸に比べて製紙面側を通る割合を高くした組織で、且つ前記第1方向糸が前記第2方向糸に比べて太い糸材で高密度に配された第1方向糸主体の構造をなすことを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項2】
少なくとも前記第1方向糸が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項3】
前記上基布の第1方向糸の延在方向と丈方向及び幅方向の各々とのなす角度がそれぞれ10度以上であることを特徴とする請求項2に記載の製紙用フェルト。
【請求項4】
前記上基布が、織機で製織された原反織布を必要に応じて切断して得られた有端の織布片を、前記第1方向糸及び第2方向糸となる経糸及び緯糸を丈方向及び幅方向に対して斜めにした状態で、丈方向に複数並べてなることを特徴とする請求項2若しくは請求項3に記載の製紙用フェルト。
【請求項5】
前記上基布が、織機で製織された原反織布を、前記第2方向糸となる糸を丈方向に延在させたまま、前記第1方向糸となる糸が幅方向に対して斜めに延在するように歪めて形成されることを特徴とする請求項2若しくは請求項3に記載の製紙用フェルト。
【請求項6】
前記第2方向糸が、第1方向糸との交差部分で扁平化するように、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を複数本集合させた集合糸材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項7】
前記第2方向糸が、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りで且つ複数本のフィラメントを1度に撚り合わせた片撚りの撚り糸からなることを特徴とする請求項6に記載の製紙用フェルト。
【請求項8】
前記第2方向糸が、複数本のフィラメントを弱く撚り合わせた甘撚りの撚り糸からなり、その撚り糸の撚り数を10回/m〜150回/mとしたことを特徴とする請求項6に記載の製紙用フェルト。
【請求項9】
前記第2方向糸が、加熱処理により軟化・溶融する熱可塑性の糸材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項10】
複層構造をなす基布層にバット繊維層が一体化された製紙用フェルトであって、
前記基布層における走行面側に、丈方向及び幅方向にそれぞれ延在する経糸及び緯糸を互いに絡合させた基布が配置され、
前記基布層における製紙面側に、1方向に延在する糸のみを前記走行面側の基布の表面に沿って配列してなる糸層が配置され、前記1方向の糸が、丈方向及び幅方向に対して斜めに延在するように配されたことを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項11】
前記糸層を構成する1方向に延在する糸の延在方向と丈方向及び幅方向の各々とのなす角度がそれぞれ10度以上であることを特徴とする請求項10に記載の製紙用フェルト。
【請求項12】
請求項10に記載の製紙用フェルトの製造方法であって、
経糸及び緯糸のいずれか一方に所定の液体に溶解可能な溶解性の糸材を用いて製織された織布を、前記走行面側の基布に重ね合わせて、ニードリングによりバット繊維層を一体化した後に、前記溶解性の糸材を前記液体中に溶出させて除去して、1方向に延在する糸のみの前記糸層を形成することを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−31396(P2010−31396A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191742(P2008−191742)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】