説明

製網機用舟型

【課題】文銭の回転時における舟型の円形開口部の内周面底部の摩耗を防止することができる製網機用舟型を提供する。
【解決手段】合成樹脂製の舟型本体1の中央部に円形開口部11が形成される。円形開口部11内に文銭2が回転可能に収納され、文銭2に巻装されたよこ糸3が舟型本体1の先端部のガイド孔16を通して引き出される構造の舟型である。円形開口部11の内周面の底部に、高耐摩耗板5が取着される。円形開口部11内に収納された文銭2が高耐摩耗板5上を回転するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製網機で使用される製網機用舟型に関し、特に舟型内に収納される文銭の回転による摩耗を防止することができる製網機用舟型に関する。
【背景技術】
【0002】
網を製網する製網機では、支持フレーム上に多数の舟型が立てた状態で並設され、これらの舟型内によこ糸を巻装した文銭(スプール)が装着され、製網動作に伴い、これらの舟型内の文銭からよこ糸が引き出され、製網が行われる。このような従来の舟型は下記特許文献1などで提案されている。
【0003】
製網機の舟型は、中央に大径の円形開口部を有し、その円形開口部に円盤状の文銭を回転自在に収納し、文銭から引き出されたよこ糸を、先端部のガイド孔から送出するように構成される。製網機では、その編網機構で編網を行い、目合い形成のためによこ糸を引き出すと、文銭は、舟型の円形開口部内で、よこ糸の引き出し力を受けて、回転しながらよこ糸を送出するが、文銭が舟型内で回転する際、円形開口部の内周底面を文銭の外周縁部で擦るように回転する。
【特許文献1】実開平3−55895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の舟型は軽量化などを目的として、通常、合成樹脂により成形され、よこ糸を巻装する文銭は、通常、SPCCなどの鋼板により円盤状に形成される。文銭は、舟型内の円形開口部内に収納され、立てた状態で製網機の支持フレーム上に載置された舟型内で、回転しながら、内部に巻装したよこ糸を送出する。
【0005】
このとき、上記のように、文銭はその外周縁部を舟型の円形開口部の内周底面に擦りつけながら回転するために、合成樹脂製の舟型の場合、その円形開口部の内周底面が、文銭との摩擦により非常に摩耗しやすいという課題があった。さらに、舟型の円形開口部の内周底面が摩耗すると、そこに保持される文銭の回転抵抗が増して、よこ糸の円滑な引き出し動作が阻害される不具合が生じていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、文銭の回転時における舟型の円形開口部の内周面底部の摩耗を防止することができる製網機用舟型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の製網機用舟型は、合成樹脂製の舟型本体の中央部に円形開口部が形成され、該円形開口部内に文銭が回転可能に収納され、該文銭に巻装されたよこ糸が該舟型本体の先端部のガイド孔を通して引き出される製網機用舟型において、該円形開口部の内周面の底部に、耐摩耗性の高い高耐摩耗板が取着され、該円形開口部内に収納された該文銭が該高耐摩耗板上を回転するように構成したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、文銭は、舟型内の円形開口部内に収納され、立てた状態で製網機の支持フレーム上に載置された舟型内で、回転しながら、内部に巻装したよこ糸を送出する際、円形開口部の内周面の底部の高耐摩耗板上を回転するため、合成樹脂製の舟型本体であっても、円形開口部の内周面の底部が文銭との摩擦により摩耗することはなく、その部分の摩耗を防止することができる。
【0009】
ここで、高耐摩耗板は、舟型本体の内周面の底部の円弧状部分に沿った円弧状に形成され、合成樹脂製の舟型本体が型成形される際、インサートとして高耐摩耗板を成形型内に挿入し、高耐摩耗板を含む舟型本体を成形することができる。高耐摩耗板として、ステンレスなどの金属板やセラミックス板を使用することができる。この発明によれば、舟型本体の内周面の底部に高耐摩耗板を、底部の円弧状部分に沿って、少ない工数で良好に取着することができる。
【0010】
また、合成樹脂製の舟型本体の成形時に、内周面の底部にその高耐摩耗板の形状に対応した凹部を形成し、成形後に、高耐摩耗板をその凹部内に嵌め込むこともできる。この発明によれば、舟型本体の内周面の底部に高耐摩耗板を、底部の円弧状部分に沿って、簡便に取着することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の製網機用舟型によれば、文銭は、舟型の円形開口部の内周面の底部における高耐摩耗板上を回転するため、文銭の回転時における舟型の円形開口部の内周面の底部の摩耗を防止することができる。またこれにより、よこ糸の引き出し時における文銭の回転を円滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は製網機用舟型の正面図を示し、図2はその平面図を、図3はそのIII-III断面図を示している。この製網機用舟型の舟型本体1は、合成樹脂により、図1に示すような正面形状に、一体成形される。合成樹脂としては、強度の高い例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を使用することができる。舟型本体1の中央部には、円形開口部11が大きな面積割合で形成されており、この円形開口部11内に、文銭(スプール、ボビン)2が回転自在に収納される。
【0013】
円形開口部11の内周面の正面視で左側に、開口凹部18が円形開口部11を延設する形態で形成され、この開口凹部18には、押え支持部6が文銭2を支持するために、配設される。
【0014】
押え支持部6は板ばね6aを介して弾性的に文銭2の縁部を押えるように取り付けられ、板ばね6aは円周面に沿ってその元部が舟型本体1にインサート部品として一体的に形成されている。文銭2の円周凹部に進入可能な凸部6bが内側に突設され、文銭2を装着する際、押え支持部6を指で開くように操作するために、取手6cが押え支持部6に設けられている。
【0015】
さらに、円形開口部11の内周面の底部12には、高耐摩耗板5が取着されている。この高耐摩耗板5は、例えば、帯状のステンレス板を円形開口部11の円周面の曲率に合わせた円弧状に曲げて形成され、円形開口部11の底部内周面に沿って固定されている。舟型本体1を合成樹脂により型成形する場合、予め所定の大きさと円弧状に曲げ形状に形成された高耐摩耗板5を、インサートとして、金型の所定位置に配置し、型成形時に、インサート成形を行なうことにより、円形開口部11の内周面の底部12の位置に、取着することができる。
【0016】
なお、高耐摩耗板5は、舟型本体1の型成形時にインサート成形して取着するほか、舟型本体1の型成形時に、その円形開口部11の内周面の底部12に高耐摩耗板5のための薄い板状の凹部を予め形成しておき、型成形後に、その凹部に高耐摩耗板5を嵌着或いは接着することもできる。この場合、高耐摩耗板5の縁部に複数の爪を突設しておき、その爪を舟型本体1の内周面の底部12の凹部内の所定位置に設けた孔に嵌め込み、これにより高耐摩耗板5を嵌着する。また、高耐摩耗板5にはステンレス板のほか、セラミックス板を使用することができる。
【0017】
図3、図5に示すように、文銭2が収納される円形開口部11の内周面の底部12には、高耐摩耗板5が露出して取着され、その内側に収納される文銭2の外周縁部が、高耐摩耗板5上に接して回転することとなる。また、円形開口部11の内周面の底部12には、図3、図5に示す如く、背面側に高さの低い立上り壁部12aが形成され、文銭2を押え支持部と協働して、回転自在に保持するようになっている。また、円形開口部11の円周面の上部背面側にも、文銭2を支持するために、高さの低い立上り壁部19が形成されている。
【0018】
一方、舟型本体1の先端部17には、よこ糸3を送出するためのガイド孔16が形成され、その元部側にさらにガイド孔15とガイド孔14が形成され、ガイド孔14とガイド孔15の間に、竪穴13が形成されている。この竪穴13には、よこ糸3を掛けるための重り4が配設され、よこ糸3に重り4を掛けて、よこ糸3に適度な張力をかけるようになっている。
【0019】
つまり、文銭2から引き出されたよこ糸3は、図4に示すように、先ず、ガイド孔14を通り、重り4を掛けた状態で、ガイド孔15を通り、さらに先端部17のガイド孔16を通して送出されるように、製網機用舟型は構成されている。
【0020】
文銭2は、SPCCなどの薄い鋼板をプレス加工して円盤型のボビン状に形成され、内側の円環状空間内によこ糸3が巻装される。文銭2の外径と厚さは、図4に示すように、舟型本体1の円形開口部11内に、回転自在に収納保持されるように、舟型本体1の形状と大きさに対応して設定されている。
【0021】
このように構成された製網機用舟型は、その舟型本体1内に、よこ糸3を巻装した文銭2が収納され、図示しない製網機の支持フレーム上に、多数の舟型が立てた状態で並設される。文銭2から引き出したよこ糸3は、製網機の編網位置に導出され、編網機構による目合い形成の動作に応じて、文銭2から引き出される。
【0022】
舟型本体1内の文銭2は、よこ糸3が引き出される際、その引き出し力により回転するが、このとき、文銭2は、収納されている舟型本体1の円形開口部11の内周面の底部12の高耐摩耗板5上で、文銭2の外周縁部がその金属面を滑りながら回転することとなる。つまり、このとき、ステンレス板などの耐摩耗性の優れた高耐摩耗板5上を鋼板製の文銭2の外周縁部が滑りながら回転するため、接触部分の摩擦抵抗は非常に少なく、高耐摩耗板5を含む舟型本体1に摩耗は殆ど生じない。
【0023】
このように、文銭2は、製網機の編網機構が目合い形成のために必要なよこ糸を引き出す際、そのよこ糸3の引き出しに応じて回転するが、文銭2の外周縁部が高耐摩耗板5上で滑るように回転するため、摩擦抵抗は小さく、よこ糸3の引き出し荷重は増大せず、且つ舟型本体1にも文銭2の回転に伴う摩耗は生じず、良好に製網を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す製網機用舟型の正面図である。
【図2】同舟型の平面図である。
【図3】図1の拡大III-III断面図である。
【図4】舟型本体内に文銭を収納した状態の、正面に沿った断面図である。
【図5】図4の拡大V-V断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 舟型本体
2 文銭
3 よこ糸
5 高耐摩耗板
11 円形開口部
12 内周面の底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の舟型本体の中央部に円形開口部が形成され、該円形開口部内に文銭が回転可能に収納され、該文銭に巻装されたよこ糸が該舟型本体の先端部のガイド孔を通して引き出される製網機用舟型において、
該円形開口部の内周面の底部に、耐摩耗性の高い高耐摩耗板が取着され、該円形開口部内に収納された該文銭が該高耐摩耗板上を回転するように構成したことを特徴とする製網機用舟型。
【請求項2】
前記高耐摩耗板は前記舟型本体の内周面の底部の円弧状部分に沿った円弧状に形成され、合成樹脂製の該舟型本体が型成形される際、インサートとして該高耐摩耗板が成形型内に挿入され、該高耐摩耗板を含む該舟型本体が成形されることを特徴とする請求項1記載の製網機用舟型。
【請求項3】
前記高耐摩耗板は前記舟型本体の内周面の底部の円弧状部分に沿った円弧状に形成され、合成樹脂製の前記舟型本体の成形時に、内周面の底部に該高耐摩耗板の形状に対応した凹部が形成され、成形後に該高耐摩耗板が該凹部内に嵌着されることを特徴とする請求項1記載の製網機用舟型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−263801(P2009−263801A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111558(P2008−111558)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(591001499)東洋工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】