説明

製菓用トッピング

【課題】 本発明は、トッピング素材を油脂によりコーティングするのではなく30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士を接着させて2次粒子を形成することによって、製菓用トッピングに優れた耐湿性を賦与するのみならず、深みがあり、かつ、経時的に変色しにくい色調を有し、使用時に粉舞いしにくく、流動性に優れダマになりにくいハンドリング性の良さを兼ね備えた多機能性製菓用トッピングを提供する。
【解決手段】 本発明の製菓用トッピングは、30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士が接着して2次粒子を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿性を有するのみならず、深みがあり、かつ経時的に変色しにくい色調を持ち、使用時に粉舞いしにくく、流動性に優れダマになりにくいハンドリング性の良さを兼ね備えた、製菓用トッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキ、ティラミス、ゼリー、生クリームなどの菓子類、パンやドーナツなどに、主に製品の表面を飾る目的でココア、粉末茶、きな粉や上新粉などの穀物粉、砂糖やぶどう糖、乳糖などの糖類及びその粉末、塩等のトッピング素材が広く使用されているが、このトッピング素材には、とりわけ、水分の多い素材たとえばティラミス、生チョコレート、ケーキなどにトッピングした場合、耐湿性に優れた、いわゆる「泣かない」性質が要求される。この特性に特化した特許としては、特許文献1〜3があり、類似のコンセプトとして、耐油脂性に優れたトッピングに関する特許としては特許文献4がある。これらは、共通して、ショ糖脂肪酸エステルを製菓用トッピング素材にコーチングすることを特徴としている。製菓用トッピングの一種としてポピュラーであるココアについても、かかる技術を基にした製品がすでに販売されているが、形体や性状は通常のココアパウダーと変わらない、即ち、色調は通常のココアパウダー以上の深みはなく、経時的にブルーミングを起こして白っぽく変色する可能性もある。また、形体はココアパウダー同様、パウダーであるため、ダマになりやすく、使用時に粉舞いしやすいなどの欠点までもカバーするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2629596号
【特許文献2】特許第3950705号
【特許文献3】特許第4091774号
【特許文献4】特許第3633609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既知の方法とは全く異なる手段によって、即ちトッピング素材を油脂によりコーティングするのではなく30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士を接着させて2次粒子を形成することによって、製菓用トッピングに優れた耐湿性を賦与するのみならず、深みがあり、かつ、経時的に変色しにくい色調を有し、使用時に粉舞いしにくく、流動性に優れダマになりにくいハンドリング性の良さを兼ね備えた多機能性製菓用トッピングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の製菓用トッピングは、請求項1に記載の通り、30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士が接着して2次粒子を形成していることを特徴とする。
請求項2に記載の製菓用トッピングは、30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士及び1次粒子とステアリン酸カルシウムとが接着して2次粒子を形成していることを特徴とする。
請求項3に記載の製菓用トッピングは、請求項1又は2に記載の製菓用トッピングにおいて、前記油脂が極度硬化油であることを特徴とする。
請求項4に記載の製菓用トッピングは、請求項1〜3の何れか1項に記載の製菓用トッピングにおいて、前記1次粒子がココアパウダー、抹茶、きな粉及び粉糖のうちの何れかであることを特徴とする。
また、本発明の製菓用トッピングの製造方法は、請求項5に記載の通り、30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士が接着した製菓用トッピングの製造方法であって、前記油脂と前記1次粒子とを混合した後、この混合物を前記油脂の融点以上の温度で加温・混合することにより前記油脂を介して前記1次粒子同士を接着させて2次粒子を形成することを特徴とする。
請求項6に記載の製菓用トッピングの製造方法は、請求項5に記載の製菓用トッピングの製造方法において、前記油脂が極度硬化油であることを特徴とする。
請求項7に記載の製菓用トッピングの製造方法は、請求項5又は6に記載の製菓用トッピングの製造方法において、前記混合物を前記油脂の融点以上の温度で加温・混合した後、前記混合物にステアリン酸カルシウムを混合することを特徴とする。
請求項8に記載の製菓用トッピングの製造方法は、請求項5〜7の何れか1項に記載の製菓用トッピングの製造方法において、前記1次粒子がココアパウダー、抹茶、きな粉及び粉糖のうちの何れかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士を接着させることにより、製菓用トッピングに優れた耐湿性を賦与することができる。更に、ステアリン酸カルシウムを添加することにより、より一層耐湿性を向上させるとともに、流動性に優れダマになりにくい製菓用トッピングとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
製菓用トッピングに耐湿性を賦与するためには、トッピング素材の表面を油脂で均質にコーチングするとよいようにも思われる。しかし単にトッピング素材に油脂を混ぜただけでは、トッピング素材の表面積があまりに大きいため、均質にコーチングできず、べとつきや、ダマの発生も起こる。そこで本発明では、例えば、極度硬化油のような30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の、高融点で粉砕しやすい油脂を予め粉砕してトッピングの1次粒子と粉体混合した後、油脂の融点以上で撹拌混合することで、粉砕された油脂を融解させて1次粒子と結合させるようにした。本発明では、油脂が1次粒子同士の結着剤となるので、微細な1次粒子の顆粒が形成される。その際、油脂はトッピング粒子間の間隙を埋めるので、トッピングの色は深みを増し、外観的な付加価値を高めることができる。高融点の油脂を添加することによって製品の耐熱性は向上し、ココアにあっては常温下での温度変化によって起こりうるブルーミングを防止することができ、経時的に安定な色調を維持できる。更に、この手法によって得られる顆粒は十分な耐湿性を有している。
【0008】
トッピング素材としてはココア、抹茶、きな粉や上新粉などの穀物粉、砂糖やぶどう糖、乳糖などの糖類及びその粉末、塩等が挙げられる。本発明に用いる1次粒子とはこれらのトッピング素材の平均粒子径が250ミクロン以下の粉末状のものであって、油脂により1次粒子が他の1次粒子又はステアリン酸カルシウムと結合する前段階のものを指し、例えば、砂糖の場合は粉糖等を指し粗粒状のものは含まず、また、塩の場合は粉末状の塩を指し粗粒状のものは含まい。また、2次粒子とは平均粒子径が1次粒子の2〜5倍であって、1次粒子が油脂により結合して顆粒化したものを指す。例えば、1次粒子であって平均粒子径が100ミクロンのココア、抹茶、きな粉、粉糖を造粒して顆粒化した場合、その平均粒子径は200〜500ミクロンとなる。
【0009】
低融点の油脂を使用して2次粒子を形成するとトッピングした製品において液状油の存在が吸湿を促進させるために十分な耐湿性を発揮できないだけでなく、接着力の優れた2次粒子が形成できないため、流動性やダマになりにくさといった多機能性も賦与できない。本発明では30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上、好ましくは40℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上である油脂を使用する。使用する油脂は30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上であれば特に種類は関係なく、例えば極度硬化油、高度硬化油等を使用できるが、極度硬化油は心臓疾患のリスクが懸念されているトランス脂肪酸が含まれていないため、極度硬化油を用いる方が好ましい。
また、前記油脂の使用量は、1次粒子100重量部に対して2〜35重量部であり、好ましくは4〜25重量部である。油脂の添加量の上限を超えると風味の低下をもたらし、下限未満では十分な耐湿性が得られず、十分な顆粒も形成できないからである。
かかる添加量は、要求される機能性だけでなく、風味、色調、コストなど、総合的な商品設計に立って選択される。
【0010】
ステアリン酸カルシウムは1次粒子と油脂粉末の混合時に同時に添加しても良いし、顆粒形成後に添加しても良いが、顆粒形成後に添加した方が耐湿性がより高まるので好ましい。1次粒子と油脂粉末の混合時に同時に添加した場合にはステアリン酸カルシウムは顆粒の一部として顆粒内部に取り込まれてしまうのに対し、顆粒形成後に添加した場合は顆粒表面の露出部分に油脂を介してステアリン酸カルシウムが付着するため、1次粒子表面の露出部分に重点的にステアリン酸カルシウムを分布させることができるからである。
また、予め融解させた油脂を1次粒子に添加混合しても良いが、高融点の油脂を使用する場合には油脂が固結しやすく、均質分散性に難があるので作業性の点で粉砕した油脂を混合する方法より劣る。
【0011】
ステアリン酸カルシウムの添加は製菓用トッピングの耐湿性を強化するとともに、2次粒子間の付着を妨げ、さらさらとした流動性の賦与にも貢献する。その使用量は1次粒子100重量部に対して0.3〜6重量部である必要があり、0.5〜3重量部が好ましい。
ステアリン酸カルシウム添加量の上限を超えると必要とされる機能の過剰な賦与になり経済的にも好ましくない一方、下限未満では目的とする多機能性が得られないからである。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の製菓用トッピングの実施例を比較例とともに説明する。
まず、1次粒子としてココアを用いた場合の例を説明する。
【0013】
(実施例1)
150ミクロンの篩を通して調整した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油13gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用ココアトッピングとした。
【0014】
(実施例2)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油13g、ステアリン酸カルシウム1.5gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用ココアトッピングとした。
【0015】
(実施例3)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油13gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。そののち、ステアリン酸カルシウム1.5gを混合して製菓用ココアトッピングとした。
【0016】
(実施例4)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油4gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用ココアトッピングとした。
【0017】
(実施例5)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油4g、ステアリン酸カルシウム1.5gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用ココアトッピングとした。
【0018】
(比較例1)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100gをブレード式ミキサーに入れ、サラダ油13gを徐々に添加しながら高速撹拌して製菓用ココアトッピングとした。
【0019】
(比較例2)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移し、サラダ油13gを徐々に添加しながら高速撹拌して製菓用ココアトッピングとした。
【0020】
(比較例3)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移し高速撹拌して製菓用ココアトッピングとした。
【0021】
(比較例4)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)をコントロールとして選択した。
【0022】
(試験例1)
重量比でゼラチン3、砂糖40、水60のゼリーを調製し20gずつプラスティックカップに分注した。表面積は約14cmである。実施例及び比較例の調製品を各々0.5g均質にトッピングし、25℃に24時間放置して耐湿性を比較した。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示すとおり、ココアパウダーのみの比較例4と比較して実施例1〜5は十分な耐湿性を有しており、極度硬化油の効果は明確である。一方、比較例1及び2に見られるように、低融点油脂(ここではサラダ油)では全く耐湿性に寄与しない。更に、比較例3で判るように、ステアリン酸カルシウム単独では耐湿性を賦与することはできない。これらの結果から、耐湿性には、高融点油脂の存在が不可欠であることが明らかである。
【0025】
(試験例2)
水を入れた直径1.5cmの試験管に実施例及び比較例の調整品を浮かせ、室内に静置して、濡れて沈下する様子を目視で比較した。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
表2で見られるとおり、耐湿性に関しては、試験例1と全く一致した結果を示していた。
【0028】
(試験例3)
アルミ箔を光沢面を上にしてステンレス板に貼り付けた。円錐台形のプラスティックカップに実施例及び比較例の調整品をすりきりで計り採り(=20ml)板上の端にそっと倒置して移したのち、板の試料側をジャッキの台上に掛けた。ジャッキをゆっくりと上昇させ、試料が滑り落ちたときの台の角度を目安にして、流動性(さらさら感)を目視で比較した。その結果を試料滑落角度とともに表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
表3から極度硬化油13gを混合した実施例1〜5の流動性が比較例1〜4よりも優れており、その中でもステアリン酸カルシウムを添加した実施例2及び3が特に優れていることが判る。
【0031】
(試験例4)
実施例及び比較例の調整品をポリ袋に入れて振り、ダマの形成状態を目視で比較した。併せて、調整品を茶漉しで篩って嵩比重測定用容器にとり、嵩比重(タッピングなし)を測定した。調整品のダマ形成の状態を表4にまとめた。参考のために嵩比重も併記する。
【0032】
【表4】

【0033】
表4に示すとおり、顆粒化されることで嵩比重は増すとともにダマになりにくくなるが、ステアリン酸カルシウムを併用すると、よりダマになりにくくなることが判る。
【0034】
次に、1次粒子として抹茶を用いた場合の例を説明する。
【0035】
(実施例6)
目開き150ミクロンの篩を通して調整した抹茶100g、微粉砕したパーム極度硬化油15gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用抹茶トッピングとした。
【0036】
(実施例7)
実施例6と同様に調製した抹茶100g、微粉砕したパーム極度硬化油15gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。そののち、ステアリン酸カルシウム2gを混合して製菓用抹茶トッピングとした。
【0037】
(実施例8)
実施例6と同様に調製した抹茶100g、微粉砕したパーム極度硬化油4gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用抹茶トッピングとした。
【0038】
(実施例9)
実施例6と同様に調製した抹茶100g、微粉砕したパーム極度硬化油4g、ステアリン酸カルシウム1.5gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用抹茶トッピングとした。
【0039】
(比較例5)
実施例6と同様に調製した抹茶100gをブレード式ミキサーに入れ、サラダ油15gを徐々に添加しながら高速撹拌して製菓用抹茶トッピングとした。
【0040】
(比較例6)
実施例6と同様に調製した抹茶100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移しサラダ油15gを徐々に添加しながら高速撹拌して室温まで冷却し製菓用抹茶トッピングとした。
【0041】
(比較例7)
実施例6と同様に調製した抹茶100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移し高速撹拌して製菓用抹茶トッピングとした。
【0042】
(比較例8)
実施例6と同様に調製した抹茶100gをコントロールとして選択した。
【0043】
(試験例5)
重量比でゼラチン3、砂糖40、水60のゼリーを調製し20gずつプラスティックカップに分注した。表面積は約14cmである。実施例及び比較例の調製品を各々0.2g均質にトッピングし、25℃に24時間放置して耐湿性を比較した。その結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表5に示すとおり、抹茶のみの比較例8と比較して実施例6〜9は十分な耐湿性を有しており、極度硬化油の効果は明確である。一方、比較例5及び6に見られるように、低融点油脂(ここではサラダ油)では全く耐湿性に寄与しないばかりか、逆にぬれを促進する。更に比較例7から判るように、ステアリン酸カルシウム単独では耐湿性を賦与することはできない。これらの結果から、耐湿性には、高融点油脂の存在が不可欠であることが明らかである。
【0046】
(試験例6)
アルミ箔を光沢面を上にしてステンレス板に貼り付けた。円錐台形のプラスティックカップに実施例及び比較例の調整品をすりきりで計り採り(=20ml)板上の端にそっと倒置して移したのち、板の試料側をジャッキの台上に掛けた。ジャッキをゆっくりと上昇させ、試料が滑り落ちたときの台の角度を目安にして、流動性(さらさら感)を目視で比較した。その結果を試料滑落角度とともに表6に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
表6の実施例6と実施例7を比較すると、ステアリン酸カルシウムを添加することで耐湿性の向上だけでなく流動性も良くなることが判る。
【0049】
(試験例7)
実施例及び比較例の調整品をポリ袋に入れて振り、ダマの形成状態を目視で比較した。併せて、調整品を茶漉しで篩って嵩比重測定用容器にとり、嵩比重(タッピングなし)を測定した。調整品のダマ形成の状態を表4にまとめた。参考のために嵩比重も併記する。
【0050】
【表7】

【0051】
表7に示すとおり、実施例6及び7は極度硬化油により顆粒化されたことで嵩比重が増すとともにダマになりにくくなっているが、その中でもステアリン酸カルシウムを併用した実施例7がよりダマになりにくくなっていることが判る。
【0052】
次に、1次粒子としてきな粉を用いた場合の例を説明する。
【0053】
(実施例10)
目開き150ミクロンの篩を通して調整したきな粉100g、微粉砕したパーム極度硬化油20gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用きな粉トッピングとした。
【0054】
(実施例11)
実施例10と同様に調製したきな粉100g、微粉砕したパーム極度硬化油20gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。そののち、ステアリン酸カルシウム2gを混合して製菓用きな粉トッピングとした。
【0055】
(実施例12)
実施例10と同様に調製したきな粉100g、微粉砕したパーム極度硬化油4gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用きな粉トッピングとした。
【0056】
(実施例13)
実施例10と同様に調製したきな粉100g、微粉砕したパーム極度硬化油4g、ステアリン酸カルシウム1.5gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用きな粉トッピングとした。
【0057】
(比較例9)
実施例10と同様に調製したきな粉100gをブレード式ミキサーに入れ、サラダ油20gを徐々に添加しながら高速撹拌・混合して製菓用きな粉トッピングとした。
【0058】
(比較例10)
実施例10と同様に調製したきな粉100g、ステアリン酸カルシウム2gをブレード式ミキサーに移しサラダ油20gを徐々に添加しながら高速撹拌して製菓用きな粉トッピングとした。
【0059】
(比較例11)
実施例10と同様に調製したきな粉100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移し高速撹拌して製菓用きな粉トッピングとした。
【0060】
(比較例12)
実施例10と同様に調製したきな粉100gをコントロールとして選択した。
【0061】
(試験例8)
重量比でゼラチン3、砂糖40、水60のゼリーを調製し20gずつプラスティックカップに分注した。表面積は約14cmである。試験例及び比較例の調製品を各々0.3g均質にトッピングし、25℃に24時間放置して耐湿性を比較した。その結果を表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
表8に示すとおり、きな粉のみの比較例12と比較して実施例10〜13は十分な耐湿性を有しており、極度硬化油の効果は明確である。一方、比較例9及び10に見られるように、低融点油脂(ここではサラダ油)では全く耐湿性に寄与しないばかりか、逆にぬれを促進する。更に、比較例11で判るように、ステアリン酸カルシウム単独では耐湿性を賦与することはできない。これらの結果から、耐湿性には、高融点油脂の存在が不可欠であることが明らかである。
【0064】
(試験例9)
アルミ箔を光沢面を上にしてステンレス板に貼り付けた。円錐台形のプラスティックカップに実施例及び比較例の調整品をすりきりで計り採り(=20ml)板上の端にそっと倒置して移したのち、板の試料側をジャッキの台上に掛けた。ジャッキをゆっくりと上昇させ、試料が滑り落ちたときの台の角度を目安にして、流動性(さらさら感)を目視で比較した。その結果を試料滑落角度とともに表9に示す。
【0065】
【表9】

【0066】
表9から実施例10及び11の流動性が優れていることが判る。更に実施例10と実施例11の比較から、ステアリン酸カルシウムを添加すると若干ではあるが流動性も良くなることが判る。
【0067】
(試験例10)
実施例及び比較例の調整品をポリ袋に入れて振り、ダマの形成状態を目視で比較した。併せて、調整品を茶漉しで篩って嵩比重測定用容器にとり、嵩比重(タッピングなし)を測定した。調整品のダマ形成の状態を表4にまとめた。参考のために嵩比重も併記する。
【0068】
【表10】

【0069】
表10に示すとおり、実施例10〜13は極度硬化油により顆粒化されることで嵩比重が増すとともにダマになりにくくなっていることが判る。
【0070】
次に、1次粒子として粉糖を用いた場合の例を説明する。
【0071】
(実施例14)
細粒グラニュー糖(「ホワイトファインシュガー」三井製糖)をミルで粉砕し目開き150ミクロンの篩を通して調製した粉糖100g、微粉砕したパーム極度硬化油15gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用粉糖トッピングとした。
【0072】
(実施例15)
実施例14と同様に調製した粉糖100g、微粉砕したパーム極度硬化油15gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。そののち、ステアリン酸カルシウム2gを混合して製菓用粉糖トッピングとした。
【0073】
(実施例16)
実施例14と同様に調製した粉糖100g、微粉砕したパーム極度硬化油4gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用粉糖トッピングとした。
【0074】
(実施例17)
実施例14と同様に調製した粉糖100g、微粉砕したパーム極度硬化油4g、ステアリン酸カルシウム1.5gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却し製菓用粉糖トッピングとした。
【0075】
(比較例13)
実施例14と同様に調製した粉糖100gをふた付き容器に計り採り、振盪混合した後、ブレード式ミキサーに移し、サラダ油15gを徐々に添加しながら高速撹拌・混合して製菓用粉糖トッピングとした。
【0076】
(比較例14)
実施例14と同様に調製した粉糖100g、ステアリン酸カルシウム2gをブレード式ミキサーに移しサラダ油15gを徐々に添加しながら高速撹拌・混合して製菓用粉糖トッピングとした。
【0077】
(比較例15)
実施例14と同様に調製した粉糖100g、ステアリン酸カルシウム1.5gをブレード式ミキサーに移し高速撹拌して製菓用粉糖トッピングとした。
【0078】
(比較例16)
実施例14と同様に調製した粉糖をコントロールとして選択した。
【0079】
(試験例11)
重量比でゼラチン3、砂糖40、水60のゼリーを調製し20gずつプラスティックカップに分注した。表面積は約14cmである。実施例及び比較例の調製品を各々0.3g均質にトッピングし、25℃に24時間放置して耐湿性を比較した。その結果を表11に示す。
【0080】
【表11】

【0081】
表11に示すとおり、粉糖のみの比較例16と比較して実施例14〜17は十分な耐湿性を有しており、極度硬化油の効果は明確である。一方、比較例13及び14に見られるように、低融点油脂(ここではサラダ油)では全く耐湿性に寄与しない。更に、比較例15で判るように、ステアリン酸カルシウム単独では耐湿性を賦与することはできない。これらの結果から、耐湿性には、高融点油脂の存在が不可欠であることが明らかである。
【0082】
(試験例12)
アルミ箔を光沢面を上にしてステンレス板に貼り付けた。円錐台形のプラスティックカップに実施例及び比較例の調整品をすりきりで計り採り(=20ml)板上の端にそっと倒置して移したのち、板の試料側をジャッキの台上に掛けた。ジャッキをゆっくりと上昇させ、試料が滑り落ちたときの台の角度を目安にして、流動性(さらさら感)を目視で比較した。その結果を試料滑落角度とともに表12に示す。
【0083】
【表12】

【0084】
表12から実施例14及び15の流動性が優れていることが判る。更に実施例14と実施例15の比較から、ステアリン酸カルシウムを添加すると若干ではあるが流動性も良くなることが判る。
【0085】
(試験例13)
実施例及び比較例の調整品をポリ袋に入れて振り、ダマの形成状態を目視で比較した。併せて、調整品を茶漉しで篩って嵩比重測定用容器にとり、嵩比重(タッピングなし)を測定した。調整品のダマ形成の状態を表4にまとめた。参考のために嵩比重も併記する。
【0086】
【表13】

【0087】
表13に示すとおり、実施例14〜17は極度硬化油により顆粒化されることで嵩比重が増すとともにダマになりにくくなっていることが判る。
【0088】
(試験例14)
次に、実施例及び比較例の調製品各1.5gを水20gを入れたプラカップに浮かせ、屈折糖度計で水中糖度を経時的に測定した。調整品中の砂糖が全量溶出したときの糖度(理論値)に対する割合で溶出率を求めた結果を表14に示す。
【0089】
【表14】

【0090】
表14に示すとおり、実施例14〜17は比較例13〜16と比べて溶出率が低く、極度硬化油の効果は明白である。更にステアリン酸カルシウムを添加した実施例15の方が、ステアリン酸カルシウムを添加していない実施例14よりも溶出率が低いことから、ステアリン酸カルシウムが耐湿性に寄与していることが判る。
【0091】
(試験例15)
更に、ステアリン酸カルシウムの添加の有無及びステアリン酸カルシウムを添加するタイミングの違いが製菓用トッピングの耐湿性に与える影響について試験を行った。
【0092】
(実施例18)
細粒グラニュー糖(「ホワイトファインシュガー」三井製糖)をミルで粉砕し目開き150ミクロンの篩を通して調製した粉糖30gと、微粉砕したパーム極度硬化油3gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用粉糖トッピングとした。
【0093】
(実施例19)
実施例18と同様に調製した粉糖30gと、微粉砕したパーム極度硬化油3gと、ステアリン酸カルシウム0.3gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用粉糖トッピングとした。
【0094】
(実施例20)
実施例18と同様に調製した粉糖30gと、微粉砕したパーム極度硬化油3gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒したのち、これにステアリン酸カルシウム0.3gを添加混合した。
【0095】
実施例18〜20の砂糖各1.5gを20gの水を入れたプラカップに浮かせ、経時的に溶出する砂糖量を屈折糖度計で調べた結果を表15に示す。サンプル1.5g中の砂糖量は、それぞれ実施例18が1.36g、実施例19及び20が1.35gであり、それらが全量20gの水に溶けたときの濃度(=Bx)は実施例18〜20全て6.8%となる。それぞれの実測値(Bx)と、それを6.8で除算して溶出率(%)とした結果を表15に示す。
【0096】
【表15】

【0097】
時間の経過に伴い徐々に砂糖が溶出しているものの、24時間経過してもなおトッピングは水面に残っており、溶出率も最大で34%に留まっていた。
結果としては、ステアリン酸カルシウムを添加していないものが溶出率が最も高くなっており、顆粒形成後にステアリン酸カルシウムを添加したものが最も溶出率が低くなった。
このことから、ステアリン酸カルシウムも耐湿性に貢献していることが明らかであり、更に顆粒形成後にステアリン酸カルシウムを添加するのが最も耐湿性に効果的であることが明らかとなった。
【0098】
(試験例16)
次に、粉舞試験装置を用いて、粉舞いの様子を調べた。
粉舞試験装置は、床上27cmに吹き出し口中心がくるように、ヘヤードライヤーを仰角20°にセットし、吹き出し口から水平方向11.5cm、垂直方向13cmに開口部下端中心がくるようにホッパーを設置したものである。ホッパーは開口部内径3cmφ、高さ22cm、上端投入部16cmφの筒型であり、ホッパーには茶こしが入れてある。
ドライヤー吹き出し口前方10cmの位置から24cm×32cmの浅いアルミトレー3枚を直列に並べた(手前より、トレーa、トレーb、トレーc)。ドライヤーで冷風を送りつつ、試料適量を徐々に投下し茶こし越しに冷風に接触させた。各トレーに捕集された試料を投入量に対する割合で求めた。トレーより遠方に飛ばされた軽量物は、トレー捕集全量と投入量との差で求めた。その結果を表16で示す。
【0099】
【表16】

【0100】
より重く飛散しにくい成分はトレーaに、より軽く飛散しやすい成分は飛散ロス区に集まる。すなわち、飛散ロスが多いほど粉舞いしやすいことを意味する。表16で明白な通り、いずれの試料についても顆粒化による粉舞い改善の効果が確認できた。
【0101】
(試験例17)
更に、顆粒化する際に加える油脂の量の増減により、顆粒の色の深みが変化することに関し、試験を行った。
【0102】
(実施例21)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油10gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用ココアトッピングとした。
【0103】
(実施例22)
実施例1と同様に調製した低脂肪ココアパウダー(脂肪含有率11%)100g、微粉砕した菜種極度硬化油20gをふた付き耐熱容器に計り採り、振盪混合した後、品温が70℃になるまで加熱した。それをブレード式ミキサーに移し高速撹拌・造粒した。室温まで冷却して製菓用ココアトッピングとした。
【0104】
実施例1、6、10、21、22及び比較例4,8,12,16の調整品の色調を、「新彩色辞典 カラーデータ集」(ジーイー企画センター 著)に則って調べた。その結果を表17にまとめた。
【0105】
【表17】

【0106】
表17から判るように、いずれの調製品も元の1次粒子に比べて色が濃くなり、深みが増した。とりわけココアは濃く深みのある色調が好まれるが、油脂量を調節することで好みの色調を得ることができることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上の試験例で明らかな通り、1次粒子と高融点油脂とを構成成分とする微細顆粒状トッピングは、耐湿性に優れ、深みがあり変色しにくい色調を備え、粉舞いしにくくなり、更にステアリン酸カルシウムを添加すれば流動性に優れダマになりにくいハンドリングの良さを兼ね備えた製菓用トッピングとなるため、従来にない多機能性を有しており、製菓業界への貢献度大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士が接着して2次粒子を形成していることを特徴とする製菓用トッピング。
【請求項2】
30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士及び1次粒子とステアリン酸カルシウムとが接着して2次粒子を形成していることを特徴とする製菓用トッピング。
【請求項3】
前記油脂が極度硬化油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製菓用トッピング。
【請求項4】
前記1次粒子がココアパウダー、抹茶、きな粉及び粉糖のうちの何れかであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の製菓用トッピング。
【請求項5】
30℃における固体脂含有率(SFC)が80%以上の油脂を介して1次粒子同士が接着した製菓用トッピングの製造方法であって、前記油脂と前記1次粒子とを混合した後、この混合物を前記油脂の融点以上の温度で加温・混合することにより前記油脂を介して前記1次粒子同士を接着させて2次粒子を形成することを特徴とする製菓用トッピングの製造方法。
【請求項6】
前記油脂が極度硬化油であることを特徴とする請求項5に記載の製菓用トッピングの製造方法。
【請求項7】
前記混合物を前記油脂の融点以上の温度で加温・混合した後、前記混合物にステアリン酸カルシウムを混合することを特徴とする請求項5又は6に記載の製菓用トッピングの製造方法。
【請求項8】
前記1次粒子がココアパウダー、抹茶、きな粉及び粉糖のうちの何れかであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の製菓用トッピングの製造方法。