説明

製鋼スラグの鉄分回収方法およびスラグのリサイクル方法および装置

【目的】 本発明は、製鋼スラグの鉄分を回収してリサイクルする方法に関し、密閉した圧力容器内での散水によるスラグ急冷プロセスを利用して、製鋼スラグの鉄分を低コストで効率的にリサイクルすることを目的とする。
【構成】 溶融製鋼スラグをスラグパン上で固化させ、これを機械的に破砕した高温粗破砕スラグを密閉圧力容器内で上方から冷却水を散水し発生した水蒸気により、圧力容器内を3.50≧P0.6×T0.4≧1.48, (P≦15,T≦1)の水蒸気圧力P と処理時間T の関係に維持して、急冷と水和によるスラグ膨張とにより更に破砕して細粒スラグとし、その細粒部分はそのまま粗粒部分は簡易的に再度機械的に破砕した後、磁力選鉱して鉄分を粗精鉱として回収し、必要に応じて磨鉱+磁力選鉱のサイクルを付加した後、製銑または製鋼用の原料としてリサイクルするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製鋼スラグの鉄分を回収し鉄分または脱C滓スラグを製銑・製鋼工程にリサイクルする方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、製鋼スラグ処理においては、(1)溶融スラグを固化する固化工程、(2)固化したスラグを100℃程度まで冷却する冷却工程、(3)磁力選鉱に適した粒度に破砕する細粒化工程、(4)磁力選鉱による鉄分(鉄含有量大)/スラグ分(鉄含有量小)の分別工程、および(5)スラグ分をヤードエージングによる安定化工程と鉄分を製銑または製鋼用原料として再使用するリサイクル工程が行われている。
【0003】例えば、従来の典型的な製鋼スラグ処理においては、上記各工程は具体的には以下のように行われる。
【0004】(1)固化工程まずスラグを土場または鉄板上に放流し、土場の場合で1〜2日間、鉄板上では数十分間放冷して固化させ、形成された一体の固形塊を上方からスラグポット、重機等で打撃して粒径数百mm程度に破砕する(一次破砕)。
【0005】(2)冷却工程一次破砕塊に散水し例えば1時間程度で300℃程度まで冷却(一次冷却)した後、例えば積載容量30t程度の排滓台車上に排出し、この台車上で再度散水して通常は十数分程度で100℃程度まで冷却(二次冷却)し、次に台車から水冷ピット内に排出して通常は数時間から数十時間放置(ピット冷却)する。ピット水冷後、乾燥および放冷のためヤードに移送し貯鉱する。
【0006】ここで、スラグ塊は内部に地鉄が分散して含有されており、路盤材等に適した製品スラグ組成を得ると共に鉄分を有効に回収し製銑・製鋼工程にリサイクルするために、両者を分別する必要がある。そのためには、スラグ塊を破砕して両者を機械的に分離した後、磁力選鉱を行うことにより、磁力に反応する鉄分と反応しない純然たるスラグ部分とを分別する。ここで、破砕後のスラグ塊中にも地鉄は残留しており、スラグ分と鉄分との分別をより確実に行うためには、破砕による細粒化をより促進する必要がある。
【0007】(3)細粒化工程上記のヤード貯鉱で十分に乾燥および冷却された一次破砕塊は、打刻機(「ペッカー」等と通称される)により大きなスラグ塊と鉄塊とを分離した状態にして、篩分別器(「グリズリー」等と通称される)にかけ、塊寸法をある程度以下に抑えてから、ロッドミル等の適当な破砕機により適度な粒度まで破砕する(二次破砕)。ヤード貯鉱からこの二次破砕までの処理に、通常は丸一昼夜(24時間)程度を要する。
【0008】(4)分別工程二次破砕した後、磁力選鉱により鉄分とスラグ分とに分別する。その後、鉄分については通常は更に乾式あるいは湿式の磨鉱を行い、スラグ分については粒度を揃え、鉄分については磨鉱後の磁力選鉱と組み合わせて鉄分品位を向上させる。磨鉱および磁力選鉱には通常は60分程度を要する。
【0009】
(5)鉄分リサイクル工程/スラグ分エージング工程鉄分は製銑または製鋼用の原料として再使用し、一方、スラグ分はエージングヤードに移して保管し、水和反応を進行させて安定化させた後、路盤材等の各用途に供する。通常、このエージング期間として12カ月〜36カ月を要する。このように、スラグ処理は非常に多くの工程と多大な時間とを要する上、各処理工程に膨大な設備および敷地を必要とするという生産効率およびコスト上の問題があるばかりでなく、固化から一次冷却(300℃程度)までの高温期間には熱間作業を強いられ、その後の破砕、移送、磁力選鉱の各段階では多量の粉塵発生下での作業になり、労働環境の観点からも問題があった。
【0010】これに対して、本出願人らは特開昭55−110703号公報(特公昭58−55093)において、特に上記(2)の冷却時間の短縮および作業環境の改善および(5)のエージング期間の短縮のために、工程(1)で得られた一次破砕塊を密閉容器内で散水し、発生する高圧水蒸気と高温雰囲気を利用してスラグの冷却と水和反応促進とを行う方法を提案した。
【0011】しかしこの方法では、例え長時間の処理をしても水和反応促進効果が少ない上、破砕効果は全く得られないため、上記問題を解消する効果はあまり得られなかった。また、特公昭52−44721号公報には、500℃以上の顕熱を有する転炉滓を水を加えた高圧容器内の投入して密閉し、転炉滓顕熱により水を高圧蒸気にとして、高圧蒸気中で3〜15時間の処理を行う方法が開示されている。
【0012】しかしこの方法は、蒸気雰囲気中で処理するためスラグの冷却に長時間を要し、冷却速度が遅いため熱衝撃によるスラグ破砕効果が得られないという欠点があった。そこで更に本出願人は特願平4−97699において、上記密閉容器内での散水速度および水蒸気圧力と処理時間との関係を限定することにより、単に冷却水との接触による水和反応を誘起するだけでなく、急冷をより有効に利用して破砕効果をも誘起し、破砕の促進により水和反応をも更に促進する方法を提案した。この方法によれば、高圧下での水和反応と破砕および冷却とが連鎖反応的に進行する相乗効果により、上記固化後の(2)冷却工程および(3)細粒化工程が、密閉した容器内で合計数十分程度で完了するので、設備費が極めて低減できる上、生産性および労働環境が飛躍的に向上する。
【0013】従来、製鋼スラグの鉄分を製銑・製鋼工程にリサイクルするには、上記(1)〜(5)のようにスラグ冷却、破砕、磁力選鉱、および磨鉱による鉄分品位向上に多数の工程を要していた。これは、鉄分品位が低いままリサイクルすると、結果的にリサイクル先にスラグを大量投入することになって、溶銑・溶鋼への復燐・復硫が発生するからであり、その対策として脱燐剤・脱硫剤の投入が必要になり、そのために原材料コストが上昇してしまうからである。
【0014】しかし、上記鉄分品位向上のための処理には個々の工程のための設備と処理費用が大きなコスト負担になっており、低コストで復燐・復硫を防止できるリサイクル技術の開発が要望されていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のスラグ急冷プロセスを利用して、製鋼スラグから鉄分を低コストで効率的に回収し、製銑または製鋼工程にリサイクルするための方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の製鋼スラグの鉄分回収方法は、下記の工程 [1]〜[7]:[1] 溶融状態の製鋼スラグをスラグパン上又は土場に放流して固化させる固化工程、[2] 上記固化したスラグまたは排滓鍋内で固化したスラグを機械的な打撃により粗破砕して高温の粗破砕スラグを得る粗破砕工程、[3] 上記粗破砕スラグを、上部が開放された中子容器内に充填して圧力容器内に装入し、該圧力容器を密閉した後、上記スラグに上方から冷却水を散水し、冷却水と高温スラグとの接触により発生した水蒸気により、該圧力容器内を下記式
【0017】(1):3.50≧P0.6 ×T0.4 ≧1.48 …(1)
P≦15,T≦1但し、P:水蒸気圧力(kg/cm2 )、T:処理時間(hr)
で規定される範囲内の水蒸気圧力(P)と処理時間(T)の関係に維持して、冷却水による急冷と水和によるスラグ膨張とにより上記粗破砕スラグを更に破砕し、下記磁力選鉱に適した粒度および温度の細粒スラグを得る細粒化冷却工程、[4] 上記細粒スラグを篩分別して比較的細粒の大部分と比較的粗粒の一部分とに分離する工程、[5] 上記比較的粗粒の部分を再度機械的に破砕して上記比較的細粒の大部分と同等の粒度とする工程、[6] 上記再度機械的に破砕した部分と上記比較的細粒の大部分とを合わせてあるいは別個に磁力選鉱して、鉄分品位40〜80%の粗精鉱を回収する磁力選鉱工程、および[7] 上記粗精鉱を製銑または製鋼用の原料として、又は脱C滓スラグを製銑または製鋼用の副原料として使用するリサイクル工程を含むことを特徴とする。
【0018】上記本発明の方法を行うための製鋼スラグの鉄分回収装置は、下記の手段 [1]〜[7]:[1] 溶融状態の製鋼スラグをスラグパン上に放流して固化させるための固化手段、[2] 上記固化したスラグを機械的な打撃により粗破砕して高温の粗破砕スラグとする粗破砕手段、[3] 上記粗破砕スラグを充填するための上部開放型中子容器と、該中子容器を収容できる密閉可能な圧力容器と、該圧力容器内上方に配置された冷却水散水ノズルとを備え、密閉された該圧力容器内で上記スラグに上方から冷却水を散水し、冷却水と高温スラグとの接触により発生した水蒸気により、該圧力容器内を下記式(1):3.50≧P0.6 ×T0.4 ≧1.48 …(1)
P≦15,T≦1但し、P:水蒸気圧力(kg/cm2 )、T:処理時間(hr)
で規定される範囲内の水蒸気圧力(P)と処理時間(T)の関係に維持して、冷却水による急冷と水和によるスラグ膨張とにより上記粗破砕スラグを更に破砕し、下記磁力選鉱に適した粒度の細粒スラグとするための密閉容器式スラグ急水冷破砕手段、[4] 上記細粒スラグを比較的細粒の大部分と比較的粗粒の一部分とに分離するための篩式分別手段、[5] 上記比較的粗粒の部分を上記比較的細粒の大部分と同等の粒度まで破砕するための機械的破砕手段、[6] 上記再度機械的に破砕した部分と上記比較的細粒の大部分とを合わせてあるいは別個に磁力選鉱して、鉄分品位40〜80%の粗精鉱と脱C滓スラグを回収するための磁力選鉱手段、および[7] 上記粗精鉱を製銑または製鋼用の原料として使用するリサイクルライン手段を含むことを特徴とする。
【0019】
【作用】本発明においては、圧力容器内で散水し、急冷による熱衝撃および水和反応による膨張によって粗破砕スラグを細粒化し、得られた細粒スラグを直接磁力選鉱し、これを製銑または製鋼工程に直接リサイクルするので、コンパクトな処理装置で十分足りるため広大な敷地を必要とせず、密閉した容器内で処理するため作業環境中へ粉塵や高熱を放出することがなく、高温からの冷却(従来工程(2))と細粒化(従来工程(3))とを同時に且つ短時間で行うことができ、次の磁力選鉱により鉄分を回収して製銑・製鋼工程に効率良くリサイクルすることができる。
【0020】加えて、密閉圧力容器内の急水冷破砕により得られた細粒スラグの一部を成す比較的粗粒の部分を他の大部分を成す比較的細粒の部分と分離し、これを再度機械的に破砕することにより後者と同等の粒度とすることにより、次に行う磁力選鉱においてより高品位の鉄分を回収することができる。通常、本発明で行う密閉圧力容器内急水冷により得られる細粒スラグは重量でほぼ90%以上が直径100mm以下の比較的細粒であり、残る10%程度以下が直径100mmを若干超える程度の比較的粗粒である。本発明においては、比較的粗粒である後者を篩分別により分離し再度機械的に破砕することにより、磁力選鉱工程に供給されるスラグ粒度を一定粒径以下の細粒(典型的には100mm程度以下)に限定し、磁力選鉱により得られる鉄分をより高品位にすると共に、スラグ搬送設備を簡易で安価な設備にする。
【0021】上記の機械的破砕処理は、急水冷によりかなり細粒化されたスラグをしかもそのごく一部を処理すればよいので、小規模で簡易的なロッドミル等で十分に対応できる。本発明の望ましい態様においては、前記[1] 固化工程において溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 脱PS滓、(b) 転炉滓、(c) 予備処理銑を用いた製鋼工程からの転炉滓(脱C滓)、および(d) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用い、前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を前記[7] リサイクル工程において製銑用原料として使用する。
【0022】また、本発明の別の望ましい態様においては、前記[1] 固化工程における溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 転炉滓、(b) 脱C滓、および(c) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用い、前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を前記[7]リサイクル工程において製鋼用原料として使用する。前記[1] 固化工程における溶融状態のスラグとして脱C滓を用い、前記[6] 磁力選鉱工程で得られた脱C滓を前記[7] リサイクル工程において高炉、焼結に製銑用原料として、脱Si処理前・脱Si処理中、空の溶銑運搬容器に投入後受銑、脱PS処理前あるいは処理中に製鋼用原料として使用する。
【0023】上記望ましい3態様によれば、スラグ含有による製銑または製鋼工程の負担を最小限にすることができ、歩留り向上、溶銑Mn向上、フラックス消費量の低減を図ることができる。本発明の方法において通常は、[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を乾式または湿式の磨鉱処理により鉄分品位を向上させた後に、[7] リサイクル工程に供する。
【0024】図1に、本発明による高温製鋼スラグ処理工程(同図(A))を従来方法の工程(同図(B))と対比して示す。粗精鉱のリサイクルは下記(A)〜(E)のいずれの態様で行ってもよい。
(A)製銑用の焼結装置または直接高炉に投入する。
(B)空の溶銑運搬容器に投入した後、受銑する。
【0025】(C)受銑後の銑鉄運搬容器内に脱Si処理前または脱Si処理中に上方から投入する。
(D)受銑後の銑鉄運搬容器内に脱PS処理前または脱PS処理中に上方から投入する。
(E)製鋼炉内にまたは溶銑鍋内に精錬処理前または精錬処理中に投入する。
【0026】また、細粒化工程[3] すなわち密閉容器内でのスラグ急冷処理は、■散水により粗破砕スラグを中子容器内に水没させる方式で行ってもよく、または■水没させずに散水速度を5〜30ton/hrm2 として下方へ排水する方式で行ってもよい。いずれの方式の場合でも、散水による急冷処理開始時の前記粗破砕スラグの温度が200℃以上であり且つ(1)の条件を満たす操業範囲内であれば、有効な細粒化効果が得られる。その際、所定処理時間(T0)で前記処理を完了するのに要する下限の水蒸気圧力(P0)を前記式(1)から予め求めておき、処理中に圧力容器内の水蒸気圧力がこの下限値以下になったら、冷却水とは別に圧力容器に水蒸気を供給することができる。また、高温の粗破砕スラグを中子容器内に高さ0.5〜4mとなるように充填することにより、中子容器内での冷却水の偏流を防止してスラグ急冷を均一に行うことができる。
【0027】製鋼スラグ中には遊離CaOが存在し、水と反応して下記式に示す水和反応を起こす。
CaO+H2 O=Ca(OH)2右辺の反応生成物Ca(OH)2 は左辺のCaOよりも密度が低いため、この水和反応により膨張が起こる。したがってスラグを路盤材等の用途に供するには、この水和反応を十分に進行させ安定化する必要がある。
【0028】本発明においては水蒸気圧力(P)と処理時間(T)の関係を式(1)の範囲に限定したことにより、スラグの自己破砕を誘起し、それが水和反応を更に促進する。すなわち、自己破砕によりスラグ中の遊離CaOとH2 Oとの接触面積が広がり、水和反応に関与する両者の絶対量が増加し、結局スラグ全体としての水和反応の進行が促進される。
【0029】上記水和反応は発熱反応でもあるので、冷却により平衡は上記式の右辺寄りすなわち水和進行側に移行するが、スラグ温度が低くなり過ぎると反応速度自体は遅くなる。本発明において水蒸気を高圧に保持することは、高圧による反応速度向上だけでなく、飽和水蒸気温度の維持により水和反応に最適なスラグ温度を維持するという作用もある。
【0030】粗破砕スラグを中子容器内に水没させる場合には散水速度は特に限定する必要はなく、式(1)の範囲の水蒸気圧力とスラグの水没状態が維持できる範囲であればよい。水没させず、粗破砕スラグ充填層下方から排水する場合には、散水速度を5〜30ton/hrm2 の範囲にするのが望ましい。散水速度を5ton/hrm2 以上とすることにより、中子容器内の粗破砕スラグ充填層中に均一に冷却水をかけることができる。しかし、散水速度を30ton/hrm2 より大きくしても、上記の均一散水効果はそれ以上向上せず、却って圧力容器内の水蒸気温度を低下させてしまう。
【0031】圧力容器内部で発生する水蒸気だけでは規定範囲の水蒸気圧力を維持できなくなった場合には、冷却水の供給とは別に外部から水蒸気を補給して規定範囲内の圧力を維持することができる。以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
【実施例】図2を参照して本発明の方法によるスラグ処理工程の一例を説明する。
■ 例えば転炉等の製鋼炉から排出された高温の溶融スラグを、バケット1に入れてクレーン2により搬送し、例えば鉄板製のスラグパン3上に放流する。放流される高温スラグを同図中に参照符号4で示す。
【0033】■ 放流されたスラグ4が固化した後、例えばバケット1を降下させて固化スラグ4を打撃し、粗破砕を行う。
■ 得られた粗破砕スラグを適当な上部開放型中子容器に充填して密閉容器式のタンク5内に装入し、タンク5内で上方からの散水により(1)式の圧力・時間条件範囲内で急冷・破砕を行い、細粒スラグを得る。
【0034】■ 得られた細粒スラグをグリズリー等の篩分別器6により比較的粗粒の部分と比較的細粒の部分とに分離する。
■ 上記分離された比較的粗粒の部分を重機、乾式ロッドミル等の機械的破砕装置7により再度破砕し、上記比較的細粒の部分と同等の粒度にする。
■ 上記比較的細粒の部分とこれと同等粒度にまで再破砕された部分とを、一緒にあるいは別個に、磁力選鉱機8にかけて鉄分/非鉄分を分離する。
【0035】■ 得られた鉄分を前記(A)〜(E)の態様でリサイクルする。
■ 溶融スラグとして脱C滓を使用した場合、得られたスラグ(非鉄分)を前記(A)〜(D)の態様でリサイクルする。
上記磁力選鉱工程■で得られた鉄分(粗精鉱)を、例えば乾式ロッドミルにより磨鉱後、再度磁力選鉱を行うことにより、鉄分品位を高めてから、上記リサイクル工程■を行うことが望ましい。この〔磨鉱−磁力選鉱〕サイクルを適宜繰り返すことにより、鉄分品位を所望レベルにまで高めることができる。
【0036】図3に、細粒化工程■を行うための処理装置の一例を示す。固化した粗破砕スラグ11を内部に収容する中子容器12は、上部が開放され底部12Aが目皿になっている容器である。中子容器12を内部に収容する圧力容器13は、上部の密閉蓋13Aを開放して中子容器12の搬入・搬出を行い、処理実行時にはこれを閉鎖することにより外部に対して圧力容器13を密閉した状態にする。また、圧力容器と中子容器間には、シール材29によってシールされており、蒸気発生によって生じる圧力容器内の差圧は、中子容器内を下方に通過する蒸気により均一化される構造となっており、また同時に、蒸気、冷却水を下方に押し込む力として作用し、スラグ充填層内の偏流が防止される。圧力容器13の上部にはこの密閉扉13Aを介して冷却水28の供給を受ける注水ノズル4が下方に向かって開口している。また圧力容器13の側面上部には補助加圧用水蒸気の供給口15が設けてある。更に、圧力容器13の下部側面には余剰水蒸気の排出口16が、底部には余剰水の排出口17がそれぞれ設けてある。
【0037】また、粗破砕スラグ11を内部に収容した中子容器12は、適当なクレーン等の搬出入手段(図示せず)により、圧力容器13へ搬入し圧力容器13から搬出される。圧力容器13内の水蒸気圧力(P)は、圧力容器の側面上部に取り付けた圧力計18によって検知される。
【0038】このようにして検知された水蒸気圧力と所定処理時間との関係が式(1)を満たすように、圧力過剰時は圧力調整弁19が作動し、圧力不足時は補助加圧用水蒸気供給用の流量調整弁20がマニュアルまたは自動で作動する。注水ノズル14への冷却水は、給水タンク21からポンプ22を経て流量調整弁23を介して供給される。
【0039】余剰の水蒸気(排蒸気)は排出口16からドレーンタンク24に導かれ、規定水蒸気圧力および処理時間の関係を満たすように初期設定された圧力調整弁19を経て蒸気放散塔25から外部環境中へ排出される。補助加圧用水蒸気は、適当な工場配管26等から圧力調整弁27を介し流量調整弁20を通って圧力容器13内に必要に応じ供給される。
【0040】図3の装置を用いて工程■のスラグ冷却および細粒化処理を行う典型的な手順は下記の通りである。固化・粗破砕(一次破砕)後の高温製鋼スラグ11を中子容器12内に例えば高さ1mに充填する。本発明の処理は、固化した高温スラグの温度が200℃以上であれば効果が得られる。スラグ充填高さは0.5〜4mとなるようにすると、散水期間中のスラグ内を通過する冷却水が偏流なく均一に流下し冷却を均一に行う上で有利である。密閉蓋13Aを開放して、上記スラグが充填された中子容器12を圧力容器13内に装入する。密閉蓋13Aを閉じて圧力容器13内を密閉状態にした後、ポンプ22と流量調整弁23を作動させて給水タンク21から注水ノズル14へ冷却水28を供給し、圧力容器13内の中子容器12に充填されたスラグ11に上方から散水する。注入された冷却水は高温スラグと接触してスラグを冷却すると共に水蒸気となり圧力容器13内を高圧化する。中子容器内の水は底部目皿12Aを通して圧力容器3の底部に流れ落ち、余剰水排水口17から排出される。
【0041】圧力容器13内の圧力は、圧力計18で検知され、圧力過剰時は圧力調整弁19の作動により、圧力不足時は補助加圧用水蒸気の流量調整弁20の作動(マニュアルまたは自動)により規定範囲内になるように調整される。例えば、所定処理時間(T0)で処理を完了するのに要する下限の水蒸気圧力(P0)を式(1)から予め求めておき、処理中に圧力容器内の水蒸気圧力がこの下限値以下になったら、補助加圧用水蒸気を供給する。
【0042】以下に、上記手順および装置により製鋼スラグをリサイクルさせた具体例を説明する。
【0043】〔実施例1〕本発明に従って表1の組成の各製鋼スラグを固化、粗破砕、細粒化(圧力容器内急水冷)、分別(磁力選鉱)、必要な磨鉱および磁力選鉱を行い、それぞれ製銑または製鋼工程にリサイクルさせた。
【0044】
【表1】


【0045】〔実施例2〕本発明に従って表2の各態様でリサイクルを行った結果、同表中に示したように歩留向上、溶銑Mn向上およびフラックス低減効果が得られた。溶銑・溶鋼への復燐・復硫は従来法に比べ大幅に低減し無視可能なレベルとなった。
【0046】
【表2】


【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、密閉タンク内で散水により行うスラグ急冷プロセスを利用して、高熱・粉塵作業を著しく簡省略した工程によりスラグ処理が可能となり、鉄分回収・スラグ中有価成分回収を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高温製鋼スラグ処理の典型的手順を従来の方法と対比して示すフローチャートである。
【図2】本発明の高温製鋼スラグ処理工程の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の方法に用いるスラグ急冷装置を示す配置図である。
【符号の説明】
1…バケット
2…クレーン
3…スラグパン
4…高温スラグ4
5…密閉容器式のタンク
6…篩分別器(グリズリー等)
7…機械的破砕装置(乾式ロッドミル等)
8…磁力選鉱装置
11…固化した高温の製鋼スラグ
12…中子容器(上部が開放された底付き容器)
13…圧力容器
13A…圧力容器13上部の密閉蓋
14…注水ノズル
15…補助加圧用水蒸気の供給口
16…余剰水蒸気の排出口
17…余剰水分の排出口
18…圧力計
19…圧力調整弁
20…補助加圧用水蒸気供給用の流量調整弁
21…給水タンク
22…ポンプ
23…流量調整弁
24…ドレーンタンク
25…蒸気放散塔
26…工場配管
27…圧力調整弁
28…冷却水
29…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の工程 [1]〜[7]:[1] 溶融状態の製鋼スラグをスラグパン上又は土場に放流して固化させる固化工程、[2] 上記固化したスラグ又は排滓鍋内で固化したスラグを機械的な打撃により粗破砕して高温の粗破砕スラグを得る粗破砕工程、[3] 上記粗破砕スラグを、上部が開放された中子容器内に充填して圧力容器内に装入し、該圧力容器を密閉した後、上記スラグに上方から冷却水を散水し、冷却水と高温スラグとの接触により発生した水蒸気により、該圧力容器内を下記式(1):3.50≧P0.6 ×T0.4 ≧1.48 …(1)
P≦15,T≦1但し、P:水蒸気圧力(kg/cm2 )、T:処理時間(hr)
で規定される範囲内の水蒸気圧力(P)と処理時間(T)の関係に維持して、冷却水による急冷と水和によるスラグ膨張とにより上記粗破砕スラグを更に破砕し、下記磁力選鉱に適した粒度の細粒スラグを得る細粒化工程、[4] 上記細粒スラグを篩分別して比較的細粒の大部分と比較的粗粒の一部分とに分離する工程、[5] 上記比較的粗粒の部分を再度機械的に破砕して上記比較的細粒の大部分と同等の粒度とする工程、[6] 上記再度機械的に破砕した部分と上記比較的細粒の大部分とを合わせてあるいは別個に磁力選鉱して、鉄分品位40〜80%の粗精鉱を回収する磁力選鉱工程、および[7] 上記粗精鉱を製銑または製鋼用の原料として使用するリサイクル工程を含むことを特徴とする製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項2】 前記工程[3] で得られる細粒スラグは重量で約90%以上が粒度100mm以下であり、粒度100mmを超える残部約10%以下の部分を上記工程[5] で再度機械的に破砕することを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項3】 前記[1] 固化工程において溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 脱PS滓、(b) 転炉滓、(c) 予備処理溶銑を用いた製鋼工程からの転炉滓(脱C滓)および(d) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用い、前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を前記[7] リサイクル工程において製銑用原料として使用することを特徴とする請求項1または2記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項4】 前記[1] 固化工程における溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 転炉滓、(b) 脱C滓、および(c) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用い、前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を前記[7] リサイクル工程において製鋼用原料として使用することを特徴とする請求項1または2記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項5】 前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を乾式または湿式の磨鉱処理により鉄分品位を向上させた後に、前記[7] リサイクル工程を行うことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項6】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製銑用の焼結装置または直接高炉に投入することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項7】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、該粗精鉱を受銑前の空の溶銑運搬容器に投入した後、該容器に受銑することを特徴とする請求項1、2および4のいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項8】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、受銑後の銑鉄運搬容器内に脱Si処理前または脱Si処理中に上方から投入することを特徴とする請求項1、2および4のいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項9】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、受銑後の銑鉄運搬容器内に脱PS処理前または脱PS処理中に上方から投入することを特徴とする請求項1、2および4のいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項10】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、製鋼炉内にまたは溶銑鍋内に精錬処理前または精錬処理中に投入することを特徴とする請求項1、2または4記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項11】 前記[3] 細粒化工程において、前記散水により粗破砕スラグを前記中子容器内に水没させるか、または水没させずに散水速度を5〜30ton/hrm2 として下方へ排水することを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項12】 前記散水による急冷処理開始時の前記粗破砕スラグの温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項13】 前記[3] 細粒化工程において、所定処理時間(T0)で前記処理を完了するのに要する下限の水蒸気圧力(P0)を前記式(1)から予め求めておき、前記処理中に前記圧力容器内の水蒸気圧力がこの下限値以下になったら、前記冷却水とは別に前記圧力容器に水蒸気を供給することを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項14】 前記高温の粗破砕スラグを中子容器内に高さ0.5〜4mとなるように充填することを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の製鋼スラグの鉄分回収方法。
【請求項15】 請求項1記載の前記[6] 磁力選鉱工程において回収された脱C滓スラグを製銑又は製鋼用副原料としてリサイクルすることを特徴とするスラグのリサイクル方法。
【請求項16】 前記[1] 固化工程において溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 脱PS滓、(b) 転炉滓、(c) 予備処理溶銑を用いた製鋼工程からの転炉滓(脱C滓)および(d) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用いることを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項17】 前記[1] 固化工程における溶融状態の製鋼スラグとして、(a) 転炉滓、(b) 脱C滓、および(c) 取鍋滓(造塊滓)のうちの1種以上を用いることを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項18】 前記[6] 磁力選鉱工程で得られた粗精鉱を乾式または湿式の磨鉱処理により鉄分品位を向上させた後に、前記[7] リサイクル工程を行うことを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項19】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製銑用の焼結装置または直接高炉に投入することを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項20】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、該粗精鉱を受銑前の空の溶銑運搬容器に投入した後、該容器に受銑することを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項21】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、受銑後の銑鉄運搬容器内に脱Si処理前または脱Si処理中に上方から投入することを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項22】 前記[7] リサイクル工程において、前記粗精鉱を製鋼用原料として使用するために、受銑後の銑鉄運搬容器内に脱PS処理前または脱PS処理中に上方から投入することを特徴とする請求項15記載のスラグのリサイクル方法。
【請求項23】 下記の手段 [1]〜[7]:[1] 溶融状態の製鋼スラグをスラグパン上に放流して固化させるための固化手段、[2] 上記固化したスラグを機械的な打撃により粗破砕して高温の粗破砕スラグとする粗破砕手段、[3] 上記粗破砕スラグを充填するための上部開放型中子容器と、該中子容器を収容できる密閉可能な圧力容器と、該圧力容器内上方に配置された冷却水散水ノズルとを備え、密閉された該圧力容器内で上記スラグに上方から冷却水を散水し、冷却水と高温スラグとの接触により発生した水蒸気により、該圧力容器内を下記式(1):3.50≧P0.6 ×T0.4 ≧1.48 …(1)
P≦15,T≦1但し、P:水蒸気圧力(kg/cm2 )、T:処理時間(hr)
で規定される範囲内の水蒸気圧力(P)と処理時間(T)の関係に維持して、冷却水による急冷と水和によるスラグ膨張とにより上記粗破砕スラグを更に破砕し、下記磁力選鉱に適した粒度の細粒スラグとするための密閉容器式スラグ急水冷破砕手段、[4] 上記細粒スラグを比較的細粒の大部分と比較的粗粒の一部分とに分離するための篩式分別手段、[5] 上記比較的粗粒の部分を上記比較的細粒の大部分と同等の粒度まで破砕するための機械的破砕手段、[6] 上記再度機械的に破砕した部分と上記比較的細粒の大部分とを合わせてあるいは別個に磁力選鉱して、鉄分品位40〜80%の粗精鉱を回収するための磁力選鉱手段、および[7] 上記粗精鉱を製銑または製鋼用の原料として使用するリサイクルライン手段を含むことを特徴とする製鋼スラグの鉄分回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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