説明

製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置

【課題】シールド装置によって、連結軸の両端部を外部に露出する対流部の壁部に形成された貫通孔を密閉するとともに、このシールド装置の取り換え作業を簡易に行う。
【解決手段】製錬炉2から排出される製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管7が取り付けられた連結軸6の両端部を外部に露出する対流部5の貫通孔13を密閉するシールド装置8は、連結軸6の外部より打撃される被打撃部19の外径よりも大きなロッドベース15cの外径よりもさらに大きな内径を有し、連結軸6を覆うように配置され、一端22bが貫通孔13の周囲の対流部5の壁部9に全周溶接されたベローズ22と、ベローズ22の他端22cが全周溶接されるとともに、ロッドベース15cにロッドベース15cの外周で全周溶接されたベローズ押え23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製錬炉から排出される製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管が取り付けられた連結軸の両端部を外部に露出する対流部の壁部に設けられた貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部とを遮断する製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化精鉱を原料とする非鉄金属製錬(以下、単に製錬炉ともいう。)において、製錬炉から排出される製錬排ガスには、高濃度の亜硫酸ガス及び煙灰が含まれている。更に、製錬排ガスは、高温であるため、集塵工程や硫酸製造工程の前に、非鉄金属製錬炉廃熱回収ボイラー(以下、単に廃熱回収ボイラーともいう。)によって製錬排ガスの廃熱を回収することが一般的に行われている。
【0003】
上述したような廃熱回収ボイラーとしては、特許文献1のようなものがある。特許文献1の廃熱回収ボイラーは、放射部と対流部とで構成されており、製錬炉から排出された製錬排ガスが煙道を介して放射部に流入され、次いで、対流部に流入される。そして、廃熱回収ボイラーは、対流部に流入された製錬排ガスが対流部の内部に設けられた連結軸と一体に取り付けられた廃熱回収管と接触され、この廃熱回収管の内部を流通する水と熱交換が行われることで、製錬排ガスの廃熱を回収する。
【0004】
一方、製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管は、廃熱回収ボイラーの内部にあるため、製錬排ガスに含まれる煙灰が付着しやすい。煙灰が廃熱回収管に付着すると、廃熱回収の効率が低下するとともに、製錬排ガスの通過を妨げ、対流部から排出される製錬排ガスの温度や圧力の上昇を招くおそれがある。このため、付着した煙灰の除去や煙灰の付着を抑制することが、従来から行われている。
【0005】
付着した煙灰の除去及び抑制する装置としては、例えば、打撃により煙灰を廃熱回収管から払い落す打撃部を有する煙灰除去装置がある。煙灰除去装置は、両端部が対流部の壁部に設けられた貫通孔から外部に露出され、廃熱回収管が一体に取り付けられた連結軸の端部を打撃部によって外部より打撃することで、連結軸を介して廃熱回収管に振動を与えて、煙灰が廃熱回収管に付着成長する前に落すようにしている。
【0006】
しかしながら、連結軸は、対流部の壁部に設けられた貫通孔から外部に露出する構造のため、対流部の内部と外部との遮断が問題となる。廃熱回収ボイラーの内部は、負圧であり、遮断ができていない場合には、製錬排ガス中に含まれる亜硫酸ガスが外気で冷やされ、硫酸が生成される。これにより、廃熱回収管は、著しく腐食してしまう。したがって、貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部とを遮断することが重要である。
【0007】
そこで、図7に示すように、金属製のベローズ100を用いて、貫通孔101を密閉し、廃熱回収ボイラーの内部と外部とを遮断している。ベローズ100は、一端が貫通孔101の周囲の対流部の壁部102の内壁102aに全周溶接され、他端が連結軸103の軸本体103aの両端部に設けられたロッド部103bの外周に全周溶接された筒状のシールド板104に全周溶接されている。すなわち、廃熱回収ボイラーの内部と外部は、ベローズ100及びシールド板104によって遮断されている。換言すると、貫通孔101は、ベローズ100及びシールド板104によって密閉されている。
【0008】
連結軸103の先端には、煙灰除去装置により打撃される被打撃部105が設けられている。この被打撃部105は、ロッド部103bより大きな外径を有する。したがって、例えば、メンテナンス時においてベローズ100を交換するときには、シールド板104の基端まで切断器の刃が入らない。よって、図7中の一点鎖線L3,L4に示すように、シールド板104の途中を切断せざるを得ない。
【0009】
この場合、図8に示すように、ベローズ100の他端とロッド部103bの外周には、シールド板104a,104bが残ってしまう。このため、新しいベローズ100を取り付けるときには、取り換える前のベローズ100に残ったシールド板104aの長さ分、切断したシールド板104の長さを補充する必要がある。更に、切断したシールド板104は、ロッド部103bに残ったシールド板104bに合わせて取り付ける必要がある。したがって、ベローズ100を取り換えるときにシールド板104等の貫通孔101を密閉するシールド装置の構成部材を切断するような構造では、加工や溶接工程が増え、取り換え作業に時間がかかってしまう。
【0010】
以上のことから、非鉄金属製錬炉廃熱回収ボイラーにおいて、シールド装置によって、連結軸の両端部を外部に露出する対流部の壁部に形成された貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部を遮断するとともに、シールド装置の取り換え作業を簡易にすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−47378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、シールド装置によって、連結軸の両端部を外部に露出する対流部の壁部に形成された貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部を遮断するとともに、シールド装置の取り換え作業を簡易に行うことができる製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために本発明に係る製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置は、製錬炉から排出された製錬排ガスが流入される対流部と、対流部の内部に設けられるとともに、対流部の内部に設けられた製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管が取り付けられ、対流部の壁部に形成された貫通孔から両端部が外部に露出する連結軸と、貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部とを遮断するシールド装置とを備える製錬炉廃熱回収ボイラーに用いられる。
【0014】
そして、連結軸は、軸本体と、軸本体の端部に設けられ、外周に、軸本体の外径よりも大きな外径を有するフランジ状のロッドベースが設けられたロッド部と、ロッド部の先端部に設けられ、ロッド部の外周の外径よりも大きくロッドベースよりも小さな外径を有し、対流部の外部より打撃される被打撃部とを有する。
【0015】
そして、本発明に係る製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置は、ロッドベースの外径よりも大きな内径を有し、連結軸を覆うように配置され、一端が貫通孔の周囲の対流部の壁部に全周溶接されたベローズと、ベローズの他端が全周溶接されるとともに、ロッドベースにロッドベースの外周で全周溶接されたベローズ押えとを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置は、ベローズが、連結軸を覆うように配置され、一端が貫通孔の周囲の対流部の壁部に全周溶接され、他端がベローズ押えに全周溶接されており、ベローズの他端と全周溶接されたベローズ押えが、ロッドベースとロッドベースの外周で全周溶接されている。
【0017】
したがって、本発明の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置によれば、ベローズ及びベローズ押えによって、廃熱回収管が取り付けられた連結軸の両端部を外部に露出する対流部の壁部に設けられた貫通孔を密閉し、対流部の内部と外部とを遮断することができる。
【0018】
更に、本発明の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置によれば、ロッドベースが連結軸の被打撃部の外径より大きな外径を有し、ベローズ押えがこのようなロッドベースとロッドベースの外周で全周溶接されているので、連結軸の端部に被打撃部があっても、ロッド部上にベローズ押えを残すことなく、ベローズ押えとロッドベースとの接合箇所に切断器の刃を当てて切断することができ、容易に取り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用されたシールド装置を備える非鉄金属製錬炉廃熱回収ボイラーの概略を示した側面図である。
【図2】廃熱回収管の概略を示した正面図である。
【図3】貫通孔及び本発明が適用されたシールド装置の概略を示した断面図である。
【図4】煙灰除去機構及び連結軸の被打撃部を示し、打撃前の状態の概略を示した側面図である。
【図5】煙灰除去機構及び連結軸の被打撃部を示し、打撃したときの状態の概略を示した側面図である。
【図6】貫通孔及び本発明が適用されたシールド装置の変形例の概略を示した断面図である。
【図7】従来のシールド装置の概略を示した側面図である。
【図8】従来のシールド装置の取り換え作業時の状態の概略を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明が適用されたシールド装置を備える製錬炉廃熱回収ボイラー1(以下、単に廃熱回収ボイラー1ともいう。)は、硫化精鉱を原料とする自熔炉や転炉等の非鉄金属製錬炉2(以下、単に製錬炉2ともいう。)から排出された高濃度の亜硫酸ガス及び煙灰が含まれた高温の製錬排ガスの廃熱を回収する。
【0022】
具体的に、廃熱回収ボイラー1は、図1乃至図3に示すように、製錬炉2から排出された製錬排ガスが煙道3を介して流入される放射部4と、放射部4から製錬排ガスが流入される対流部5と、対流部5の内部に設けられるとともに、対流部5の壁部9に形成された貫通孔13から両端部が外部に露出する連結軸6と、対流部5の内部に設けられるとともに、連結軸6に取り付けられ、対流部5に流入された製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管7と、対流部5の壁部9の貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断するシールド装置8とを備える。
【0023】
以上のような構成を有する廃熱回収ボイラー1は、図1に示すように、製錬炉2から排出された製錬排ガスが煙道3を介して放射部4に流入され、次いで、対流部5に流入される。そして、廃熱回収ボイラー1は、対流部5に流入された製錬排ガスが対流部5の内部に設けられた廃熱回収管7と接触し、この廃熱回収管7と熱交換が行われることで、製錬排ガスの廃熱を回収する。なお、廃熱回収ボイラー1は、硫化精鉱以外の非鉄金属を原料とする非鉄金属製錬炉や、金属製錬炉から排出された製錬排ガスの排熱を回収するようなものでもよい。
【0024】
図1に示すように、製錬排ガスが流入される放射部4及び対流部5は、それぞれ密閉した空間部を有し、内部で連続した空間部となっている。このような放射部4及び対流部5の壁部9は、それぞれ、製錬排ガスの流入方向の前面壁部9a及び背面壁部9b、製錬排ガスの流入方向と直交する水平方向の左側面壁部9c及び右側面壁部9d、鉛直方向の天井壁部9e及び底面壁部9fとからなる。更に、図3に示すように、壁部9は、それぞれ、内壁10aと、外壁10bと、内壁10a及び外壁10b間に設けられた保温材からなる保温材層10cと、内壁10a上に設けられ、製錬排ガスの廃熱を回収するメンブレンウォール11とで構成されている。メンブレンウォール11は、例えば、内部に水が流通する複数の水管が配列され、隣接する水管を溶接して一体に設けたパネル状の水管壁であり、内壁10a上全体に亘って設けられている。このようなメンブレンウォール11は、製錬排ガスと接触することで、内部を流通する水と製錬排ガスとの熱交換が行われ、製錬排ガスの廃熱を回収する。具体的に、メンブレンウォール11は、放射部4において、製錬炉2から排出された800℃〜850℃程度の製錬排ガスを、500℃〜600℃程度となるように冷却する。
【0025】
更に、図3に示すように、対流部5の内部には、対流部5の天井壁部9eに設けられた吊り金具12によって、連結軸6が支持されている。吊り金具12によって支持された連結軸6は、図1に示すように、製錬排ガスの流入方向に直交し且つ水平となるように対流部5の内部に設けられており、製錬排ガスの流入方向に所定の間隔を有して複数個設けられている。具体的には、連結軸6は、対流部5の内部に20〜30個程度設けられている。更に、各連結軸6は、図3に示すように、対流部5の左側面壁部9c及び右側面壁部9dにそれぞれ形成された貫通孔13,13から両端部が対流部5の外部に露出されている。
【0026】
このように対流部5の内部に設けられた連結軸6は、図2及び図3に示すように、軸本体14と、軸本体14の両端部14a,14aに一体に設けられたロッド部15,15とで構成されている。
【0027】
軸本体14は、図3に示すように、断面略矩形状に設けられた中央部14bの両側に、断面略矩形状の中央部14bの対角線の長さと略同じ又はやや大きな外径を有する断面略円形状の軸フランジ14c,14cが一体に設けられてなる。このような軸本体14は、対流部5の左側面壁部9c及び右側面壁部9dにそれぞれ形成された貫通孔13,13から両端部14a,14aが対流部5の外部に露出する程度の長さを有している。なお、軸本体14は、断面略円形状又は断面多角形状に設けるようにしてもよい。
【0028】
軸本体14の端部14aに一体に設けられたロッド部15は、軸フランジ14cの外径よりもやや小さな外径を有する断面略円形状の軸である。断面略円形状のロッド部15の外周には、軸フランジ14cと当接する基端部15aから先端部15b側の所定の位置に、軸本体14の外径よりもやや大きな外径を有する断面略円形のフランジ状に形成されたロッドベース15cが設けられている。ロッドベース15cには、後述するシールド装置8が取り付けられる。このような構成を有するロッド部15は、軸本体14の両端部14a,14aが貫通孔13,13から外部に露出した状態で吊り金具12によって支持された後に、軸本体14の端部14aと全周溶接されることで、軸本体14と一体に設けられる。
【0029】
更に、軸本体14には、図2に示すように、製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管7が懸垂して取り付けられている。
【0030】
軸本体14に懸垂して取り付けられた廃熱回収管7は、例えば、内部に水が流通する水管であり、図2に示すように、製錬排ガスの流入方向に直交するように、対流部5の左側面壁部9c及び右側面壁部9d間に亘り、上下方向にジグザグに蛇行したミアンダ状に設けられている。ミアンダ状に設けられた廃熱回収管7は、上部側が連結軸6に一体に取り付けられ、連結軸6にすだれ状に懸垂して設けられている。更に、ミアンダ状に設けられた廃熱回収管7は、一端7a及び他端7bが例えば当該廃熱回収ボイラーの上部に設けられた図示しないポンプ等の循環装置に接続されており、この循環装置により一端7aから内部に水が供給され他端7bから排出されて、内部に水が流通される。このような廃熱回収管7は、対流部5に流入された製錬排ガスと接触することで、内部を流通する水と製錬排ガスとの熱交換が行われ、製錬排ガスの廃熱を回収する。具体的に、廃熱回収管7は、対流部5において、対流部5の壁部9に設けられたメンブレンウォール11とともに、放射部4から流入された500℃〜600℃程度の製錬排ガスを、300℃程度となるように冷却する。
【0031】
ここで、図2に示すように、廃熱回収管7は、対流部5の内部にあるため、製錬排ガスに含まれる煙灰が付着しやすい。煙灰が廃熱回収管7に付着すると、廃熱回収の効率が低下するとともに、製錬排ガスの通過を妨げ、対流部5から排出される製錬排ガスの温度や圧力の上昇を招くおそれがある。このため、図4及び図5に示すように、廃熱回収ボイラー1は、打撃により煙灰を廃熱回収管7から除去する煙灰除去機構16を更に備えている。
【0032】
例えば、煙灰除去機構16は、図4に示すように、圧搾空気がシリンダー内に供給されると打撃治具17aを内部から外部に突出させて打撃を行う打撃装置17が、フレーム18に一体に取り付けられてなる。このような煙灰除去機構16は、打撃治具17aの軸心と連結軸6の軸心とを一致させて、連結軸6の両端部又は一方の端部に設置される。そして、煙灰除去機構16は、図5に示すように、図示しない制御部により制御されて所定の間隔又は時間に、更には作業者の操作によって、打撃装置17により連結軸6に打撃を行い、連結軸6を介して廃熱回収管7に振動を与え、廃熱回収管7に付着した煙灰を落として除去する。そして、煙灰除去機構16は、シリンダー内に設けられた図示しないバネ等の弾性体によって、図4に示すように、打撃治具17aが内部に収納される。
【0033】
更に、このような煙灰除去機構16に打撃される連結軸6には、図4及び図5に示すように、打撃治具17aと当接する被打撃部19が更に設けられている。具体的に、被打撃部19は、各ロッド部15の先端部15bに設けられている。ロッド部15の先端部15bに設けられた被打撃部19は、打撃治具17aと当接する被打撃部材20と、被打撃部材20とロッド部15の先端部15bとの接触を防止する緩衝部材21とを有する。
【0034】
被打撃部材20は、打撃治具17aと当接する断面略円形状の被打撃フランジ20aに、被打撃フランジ20aの外径より小さな外径を有する断面略円形状の被打撃本体20bが一体に設けられてなる。被打撃本体20bは、ロッド部15の先端部15bに形成されたガイド孔15dに挿入されており、被打撃部材20をロッド部15の先端部15bに対して近接又は離間するように移動可能とする。更に、被打撃本体20bには、図示しないストッパ部が設けられており、このストッパ部によってガイド孔15dから抜け止めされている。
【0035】
被打撃部材20とロッド部15の先端部15bとの接触を防止する緩衝部材21は、例えば皿バネであり、被打撃本体20bの外周に複数個設けられるとともに、被打撃フランジ20aとロッド部15の先端部15bとの間に設けられている。更に、緩衝部材21は、ロッド部15の外周の外径よりも大きく、ロッドベース15cの外周よりも小さな外径を有する。このような緩衝部材21は、打撃装置17により被打撃フランジ20aが打撃されると、被打撃部材20がロッド部15の先端部15bに近接するのを規制して、被打撃部材20とロッド部15の先端部15bとの接触を防止し、打撃力だけをロッド部15に伝達する。
【0036】
なお、ロッド部15の外周には、打撃装置17による打撃に対して、ロッド部15自体の機械的強度、ロッド部15と軸本体14の端部14aとの溶接強度の向上を図るために、リブ15eを設けるようにしてもよい。
【0037】
更に、図3に示すように、対流部5に形成された貫通孔13の周囲には、貫通孔13を密閉するシールド装置8が設けられている。貫通孔13を密閉するシールド装置8は、可撓性や伸縮性を有し、連結軸6を覆うように配置されたベローズ22と、ベローズ22を連結軸6に取り付けるベローズ押え23とを有する。
【0038】
可撓性や伸縮性を有するベローズ22は、機械的特性と製錬排ガスの防食性に優れた金属材料からなり、凸部と凹部とが連続して軸方向に形成された断面略波形のベローズ本体22aの両端部に、ベローズフランジ22b,22cが一体に設けられてなる。このようなベローズ22は、例えば、作業者が容易に手で曲げることができるとともに、連結軸6の熱膨張による伸縮率を考慮した可撓性や伸縮性を有するように、凸部の数、板厚、凸部の高さ等が設けられている。具体的に、ベローズ22は、凸部の数を5山とし、厚さは0.5mmで2層、材質が製錬排ガスの腐食性を考慮してSUS316としている。更に、ベローズ22の内径及びベローズフランジ22b,22cの内径は、ロッドベース15cの外径よりも大きく設けられている。このようなベローズ22は、連結軸6を覆うように配置された後に、一端側のベローズフランジ22bが貫通孔13の周囲の対流部5の内壁10aに全周溶接され、他端側のベローズフランジ22cがベローズ押え23の一端面23cに全周溶接される。
【0039】
ベローズ22を連結軸6に取り付けるベローズ押え23は、2分割された第1の分割体23aと第2の分割体23bとで構成されており、第1の分割体23aと第2の分割体23bとを突き合わせて組み合わせたときに、略リング状となるように設けられている。略リング状となるように設けられた第1及び第2の分割体23a,23bは、外径がベローズ22の他端側のベローズフランジ22cと略同じ大きさに設けられ、内径がロッド部15の外径と略同じ大きさ又はやや大きく、更にはロッドベース15cの外径より小さく設けられている。このようなベローズ押え23は、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cとロッドベース15cとの間に挟み込まれて配置されている。そして、ベローズ押え23の一端面23cは、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cと全周溶接され、他端面23dは、連結軸6のロッドベース15cとロッドベース15cの外周で全周溶接されている。なお、ベローズ押え23は、2分割されることに限定されるものではなく、3分割以上に分割されているようなものでもよい。
【0040】
以上のような構成を有するシールド装置8は、ベローズ22の一端側のベローズフランジ22bと貫通孔13の周囲の対流部5の内壁10aとが全周溶接され、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cとベローズ押え23の一端面23cとが全周溶接され、ベローズ押え23の他端面23dと連結軸6のロッドベース15cとがロッドベース15cの外周で全周溶接されている。これにより、シールド装置8は、貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断する。したがって、廃熱回収ボイラー1は、密閉構造となる。更に、シールド装置8は、ベローズ22が可撓性や伸縮性を有するので、連結軸6の熱膨張による伸縮や煙灰除去機構16による振動等が発生しても、連結軸6に追従して変形することができ、確実に貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断することができる。
【0041】
なお、シールド装置8は、更に、ベローズ22及びベローズ押え23を覆う外装板24を有するようにしてもよい。外装板24は、例えば、対流部5の貫通孔13の周囲の外壁10bに取り付けられ、ベローズ22及びベローズ押え23を覆うことで、ベローズ22及びベローズ押え23を傷、汚れ、衝撃等から保護する。更に、ベローズ22の内周と連結軸6の外周との間の空間部25に、断熱材からなる断熱材層を設けるようにしてもよい。このような断熱材層は、連結軸6の外周を断熱し、シールド装置8の熱影響を緩和させるとともに、ベローズ22の内部の凹部に煙灰が付着し、腐食して破れることを防止する。
【0042】
次に、上述したシールド装置8の取り付け方法を説明する。
【0043】
図3に示すように、先ず、連結軸6の対流部5の貫通孔13から露出した箇所にベローズ22を通して、ベローズ22を連結軸6で覆うように配置する。次いで、連結軸6を覆うように配置されたベローズ22の一端側のベローズフランジ22bを、貫通孔13の周囲の対流部5の内壁10aに密着させて、全周溶接する。次いで、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cに、連結軸6の半径方向から第1の分割体23aと第2の分割体23bとを突き合わせて略リング状としたベローズ押え23を押し当てて、ベローズ押え23を、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cとロッドベース15cとで挟み込むように配置する。次いで、ベローズ押え23の他端面23dを、ロッドベース15cとロッドベース15cの外周で全周溶接する。次いで、ベローズ押え23の一端面23cに、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cを全周溶接する。次いで、他端側のベローズフランジ22cとベローズ押え23との溶接箇所と、ロッドベース15cとベローズ押え23との溶接箇所との間の第1の分割体23aと第2の分割体23bとの突合面を溶接し、突当面の隙間を埋める。すなわち、ロッドベース15cの外周よりも半径方向の外側の突合面を溶接し、突当面の隙間を埋める。次いで、ベローズ22及びベローズ押え23を覆うように、外装板24を取り付ける。以上のようにして、シールド装置8は、取り付けられる。なお、ベローズ押え23の他端面23dとロッドベース15cとを溶接した後に、ベローズ押え23のロッドベース15cの外周よりも半径方向の外側の突合面を溶接して突当面の隙間を埋め、次いで、ベローズ押え23の一端面23cに、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cを全周溶接するようにしてもよい。
【0044】
以上のように取り付けられたシールド装置8は、ベローズ22の一端側のベローズフランジ22bが貫通孔13の周囲の対流部5の内壁10aに全周溶接され、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cがベローズ押え23の一端面23cに全周溶接され、ベローズ押え23の他端面23dが連結軸6のロッドベース15cとロッドベース15cの外周で全周溶接されている。これにより、シールド装置8は、貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断することができる。
【0045】
次に、シールド装置8の取り外し方法を説明する。
【0046】
先ず、図3に示すような対流部5の外壁10bに取り付けられた外装板24を取り外す。次いで、ベローズ押え23の他端面23d及びロッドベース15cの溶接箇所と、ベローズ押え23とを、図3中の一点鎖線L1に示すような、ロッドベース15cの外径よりも大きく、ベローズ22及びベローズフランジ22cの内径よりも小さな位置で切断する。次いで、ベローズ22の一端側のベローズフランジ22b及び対流部5の内壁10aの貫通孔13の周囲の溶接箇所を切断する。次いで、ベローズ22を連結軸6から取り外す。
【0047】
このとき、ロッドベース15cの外径は、緩衝部材21の外径よりも大きいので、緩衝部材21があっても上記切断位置L1に切断器の刃を当てることができる。更に、ベローズ押え23は、複数個の分割体からなり、ロッドベース15cにロッドベース15cの外周で溶接され、ロッド部15の外周及びロッドベース15cの外周より半径方向の内側では溶接されていない。したがって、ベローズ押え23のロッド部15の外周に残された部位は、第1の分割体23aと第2の分割体23bとを分割することで、ロッド部15の外周から取り外すことができる。
【0048】
よって、ベローズ22、ベローズフランジ22b,22c及びロッドベース15cを切断することなく、更に、ロッド部15にベローズ押え23を残すことなく、ベローズ22を取り外すことができる。なお、次いで、上述したように、新たなベローズ22を取り付けることで、ベローズ22の取り換えを行うことができる。
【0049】
なお、ベローズ22を取り付けるときに、第1の分割体23aと第2の分割体23bとの突合面を全て溶接し、ベローズ22を取り換えるときには、切断位置L1で切断後に、ベローズ押え23のロッド部15の外周に残された部位の溶接箇所を切断し、ロッド部15の外周から取り外すようにしてもよい。
【0050】
以上のように本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8は、ベローズ22が、連結軸6を覆うように配置され、一端側のベローズフランジ22bが貫通孔13の周囲の対流部5の内壁10aに全周溶接され、他端側のベローズフランジ22cがベローズ押え23の一端面23cに全周溶接されている。更に、ベローズ22の他端側のベローズフランジ22cと全周溶接されたベローズ押え23が、ロッドベース15cとロッドベース15cの外周で全周溶接されている。したがって、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8によれば、ベローズ22及びベローズ押え23によって、廃熱回収管7が取り付けられた連結軸6の両端部を外部に露出する対流部5の内壁10aに設けられた貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断することができる。
【0051】
更に、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8は、ロッドベース15cが緩衝部材21の外径より大きな外径を有し、ベローズ22及びベローズフランジ22b,22cがこのようなロッドベース15cの外径よりもさらに大きな内径を有する。したがって、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8によれば、図3中の一点鎖線L1に示すような、ロッドベース15cの外径よりも大きく、ベローズ22の内径よりも小さな位置で、ベローズ押え23の他端面23d及びロッドベース15cの溶接箇所と、ベローズ押え23とを切断し、ベローズ22、ベローズフランジ22c及びロッドベース15cを切断することなく、ベローズ22を取り外すことができ、容易にベローズ22の取り換えを行うことができる。
【0052】
更に、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8は、ベローズ押え23が、複数個の分割体からなり、ロッドベース15cにロッドベース15cの外周で溶接され、ロッド部15の外周及びロッドベース15cの外周より半径方向の内側では溶接されていない。したがって、ベローズ押え23のロッド部15の外周に残された部位は、第1の分割体23aと第2の分割体23bとを分割することで、ロッド部15の外周から取り外すことができる。よって、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8によれば、ロッド部15にベローズ押え23を残すことなく、ベローズ22を取り外すことができ、容易にベローズ22の取り換えを行うことができる。
【0053】
なお、図6に示すように、ベローズ押え23の内径をロッドベース15cの外径と略同じ大きさに設け、ベローズ押え23をロッドベース15cの外周に配置し、該ロッドベース15cとロッドベース15cの外周で全周溶接するようにしてもよい。このような構成を有する本発明に係る廃熱回収ボイラー30のシールド装置8は、上述した本発明の廃熱回収ボイラー1のシールド装置8と同様に、煙灰除去機構16により廃熱回収管7に付着した煙灰を除去することができるとともに、ベローズ22及びベローズ押え23によって、貫通孔13を密閉し、対流部5の内部と外部とを遮断することができる。
【0054】
更に、本発明に係る廃熱回収ボイラー30のシールド装置8は、図6中の一点鎖線L2に示すように、ロッドベース15cの外周に沿って、ベローズ押え23及びロッドベース15cの溶接箇所を切断することで、本発明に係る廃熱回収ボイラー1のシールド装置8と同様に、ベローズ22、ベローズフランジ22c、ロッドベース15cを切断することなく、ベローズ22を取り外すことができることに加え、ベローズ押え23を切断することなく、ベローズ22を取り外すことができ、容易にベローズ22の取り換えを行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 非鉄金属製錬炉廃熱回収ボイラー、2 非鉄金属製錬炉、3 煙道、4 放射部、5 対流部、6 連結軸、7 廃熱回収管、7a 一端、7b 他端、8 シールド装置、9 壁部、9a 前面壁部、9b 背面壁部、9c 左側面壁部、9d 右側面壁部、9e 天井壁部、9f 底面壁部、10a 内壁、10b 外壁、10c 保温材層、11 メンブレンウォール、12 吊り金具、13 貫通孔、14 軸本体、14a 端部、14b 中央部、14c 軸フランジ、15 ロッド部、15a 基端部、15b 先端部、15c ロッドベース、15d ガイド孔、15e リブ、15f 基端面、16 煙灰除去機構、17 打撃装置、17a 打撃治具、18 フレーム、19 被打撃部、20 被打撃部材、20a 被打撃フランジ、20b 被打撃本体、21 緩衝部材、22 ベローズ、22a ベローズ本体、22b ベローズフランジ、22c ベローズフランジ、23 ベローズ押え、23a 第1の分割体、23b 第2の分割体、23c 一端面、23d 他端面、24 外装板、25 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬炉から排出された製錬排ガスが流入される対流部と、
上記対流部の内部に設けられるとともに、該対流部の内部に設けられた上記製錬排ガスの廃熱を回収する廃熱回収管が取り付けられ、該対流部の壁部に形成された貫通孔から両端部が外部に露出する連結軸と、
上記貫通孔を密閉し、上記対流部の内部と外部とを遮断するシールド装置とを備える製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置において、
上記連結軸は、軸本体と、該軸本体の端部に設けられ、外周に、該軸本体の外径よりも大きな外径を有するフランジ状のロッドベースが設けられたロッド部と、該ロッド部の先端部に設けられ、該ロッド部の外周の外径よりも大きく該ロッドベースよりも小さな外径を有し、上記対流部の外部より打撃される被打撃部とを有し、
上記シールド装置は、
上記ロッドベースの外径よりも大きな内径を有し、上記連結軸を覆うように配置され、一端が上記貫通孔の周囲の上記対流部の壁部に全周溶接されたベローズと、
上記ベローズの他端が全周溶接されるとともに、上記ロッドベースに該ロッドベースの外周で全周溶接されたベローズ押えとを備える製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置。
【請求項2】
上記ベローズ押えは、複数個に分割された分割体を組み合わせることで略リング状をなすように設けられており、上記ベローズの他端と上記ロッドベースとの間に挟み込まれて配置され、該ロッドベースに該ロッドベースの外周で全周溶接されている請求項1記載の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置。
【請求項3】
上記ベローズ押えは、上記ロッドベースの外周に配置され、該ロッドベースに該ロッドベースの外周で全周溶接されている請求項1記載の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置。
【請求項4】
上記被打撃部は、外部より打撃される被打撃部材と、該被打撃部材と上記ロッド部の先端部との接触を防止する緩衝部材とを有し、
上記緩衝部材は、上記ロッド部の外周の外径よりも大きく、上記ロッドベースの外周よりも小さな外径を有する請求項1乃至3のうちいずれか1記載の製錬炉廃熱回収ボイラーのシールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117725(P2012−117725A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266884(P2010−266884)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)