説明

複写帳票およびその製造方法

【課題】電子ペンで記入した情報を収集できる複写帳票を簡易に製造する。
【解決手段】複写帳票1の大きさの異なる1枚目帳票11、2枚目帳票12に印刷用紙の図柄を別々に印刷する。次に、各帳票11,12を重ねて接着剤等で綴じ合わせる。さらに、複写帳票1の綴じ部側から枚葉印刷機にフィードさせて複写帳票1の各帳票の表出面に対して、電子ペンで読み取ることができるインキでドットパターンを印刷する。これにより、表出しない面にはコード化パターンが印刷されない複写帳票を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットパターンが形成された複写帳票およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、申込書等を提出する場合、所定の印刷が施された申込用紙に申込者が筆記具で必要事項を記入して提出していた。
このような分野に対して、近年、便利な入力システムが提供されている。
これは、スウェーデンの「Anoto社」が開発した入力システムで、「アノトペン」と呼ばれる電子ペンと、電子ペン読取り専用ドットパターン(以下、電子ペン読取り用ドットパターン、または、単に、ドットパターンともいう)が印刷された電子ペン書き込み用専用用紙(以下、電子ペン記載用紙という)によって記載された情報をその場で電子化情報として通信端末に送信するシステムである。
電子ペンは、記載者が電子ペン記載用紙の上に文字などを記載すると、ペンの移動に伴って電子ペンの撮像部が電子ペン記載用紙上に印刷されたドットパターンを読み取り、記載した文字などの入力情報を電子情報として記憶する。
電子ペンが記憶した入力情報は、電子ペンに内蔵された通信部により、電子ペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話などの通信端末に送信される。
電子ペンを使用する前述の入力システムでは、電子ペンがキーボードの役割を果たすのであるが、記載者は従来どおりの感覚で申し込み等を行うことができる。
【0003】
前述の「Anoto社」の入力システムでは、ドットパターンが印刷された電子ペン記載用紙が使用されるが、前述のドットパターンは、分野別に割り当てられて使用される。
また、このシステムでは入力情報の入力を、電子ペンによる微細なドットパターン読み取りによって行われるために、ドットパターンの印刷品質、印刷される基材の選定が厳密に行われる。
【0004】
電子ペン用複写帳票を製造する場合、通常、複写帳票の各枚目ごとにドットパターンを
印字して丁合する。そのため、丁合の前にドットパターンが指定どおり印刷されているか
確認を行う必要があり、製造に手間がかかっていた。このような手間を軽減するために、
1枚の電子ペン用帳票にバーコード印刷部及びバーコード加工部を設けることで、複数の
電子ペン用帳票から構成される電子ペン用複写帳票に記入された記入情報のデータ処理を
効率的に行う「電子ペン用複写帳票」が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−316795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複写帳票の各枚を丁合する際に、各枚のドットパターンを照合するといった手間を不要とする複写帳票、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の複写帳票の製造方法は、複写帳票の大きさの異なる各帳票を電子ペンで読み取れないインキにより印刷する第1ステップと、各帳票を綴じ合わせる第2ステップと、綴じ合わされた複写帳票の各帳票の表出面に対して、電子ペンで読み取ることができるインキでコード化パターンを印刷する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
また、前記第2ステップにおいて、複写帳票の各帳票を一端で揃え、下位の帳票が上位の帳票より長めになるように階段状に重ね合わせて綴じ合わせることを特徴とする。
さらに、第3ステップにおいては、複写帳票の綴じ部側から印刷機にフィードさせて、コード化パターンを印刷することを特徴とする。
また、本発明の複写帳票は、大きさの異なる各帳票が重ね合わせて綴じ合わされており、綴じ合わされた状態での各帳票の表出面に対して、電子ペンで読み取ることができるインキでコード化パターンが印刷されているが、表出しない面には、コード化パターンが印刷されていないことを特徴とする。
さらに、本発明の複写帳票は、各帳票が一端で揃えられ、下位の帳票が上位の帳票より長めになるように階段状に重ね合わせて綴じ合わされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複写帳票の製造方法によれば、綴じ合わされた複写帳票の各帳票の表出面に対して、コード化パターンを印刷するため、製造の際の各帳票のコード化パターンの照合や位置合わせの手間が不要となる。これにより、表出しない面にはコード化パターンが印刷されない本発明に係る複写帳票を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態の電子ペン用複写帳票の一例について説明するための図である。
【図2】図1のA−A線断面の一例について説明するための図である。
【図3】本実施の形態の電子ペンを使用した記載情報の収集方法の一例について説明するための図である。
【図4】電子ペンの一例について説明するための図である。
【図5】電子ペン読み取り専用のドットパターンについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本実施の形態の電子ペンを使用した記載情報の収集方法について説明する。
図1は、本実施の形態で使用される複写帳票の一例について説明するための図、図2は、図1のA−A線断面の一例について説明するための図、図3は、本実施の形態の電子ペンを使用した記載情報の収集方法について説明するための図、図4は、電子ペンの一例について説明するための図、図5は、電子ペン読取り専用ドットパターンについて説明するための図、である。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態で使用される複写帳票の一例について説明する。
図1に示す複写帳票の例は、2枚で構成された複写帳票の例であるが、2枚に限定されるものではない。
しかしながら、複写枚数が多くなると重ねられた紙の段差により、下の帳票ほど帳票上に形成されたドットパターンが不鮮明になるために、複写帳票は2〜4パート程度で構成されることが好ましい。
本実施の形態の電子ペン用複写帳票1は、申込帳票の例で、「顧客控」になっている1枚目の帳票11、「会社控」になっている2枚目の帳票12が図の左側の一端で揃えられ、綴じ部3で綴じ合わされている。
【0012】
下位の帳票である2枚目の帳票12は、上位の帳票である1枚目の帳票11より長めに、階段状に配置された複写帳票であって、それぞれの帳票には、情報が記載される側の表出面にのみ、電子ペン読取り用のドットパターン(図示せず)が赤外線を吸収する材料、例えば、印刷インキやプリンタのトナー等によって形成されている。
1枚目の帳票11、2枚目の帳票12の表出面には、前述のドットパターン以外に、罫線や、デザイン、文字などの情報が印刷されている。図示しないが、2枚目の帳票の表出していない部分には、1枚目に記載された情報が複写で表示されるために、1枚目のデザインと同様な罫線や、文字などの情報が赤外線を吸収しない材料、例えば、印刷インキやトナー等によって印刷されている。
【0013】
図2を参照して、図1のA−A線断面の一例について説明する。
本実施の形態の電子ペン用複写帳票は、1枚目の帳票11、2枚目の帳票12が図の左側の一端で揃えられ、綴じ部3で綴じ合わされている。
下位の帳票である2枚目の帳票12は、上位の帳票である1枚目の帳票11より長めに設計されている。それぞれの帳票には、情報が記載される側の表出面にのみ、電子ペン読取り用のドットパターン2が形成されている。
2枚目の帳票12の表面には、前述のドットパターン2以外に、罫線や、デザイン、文字などの通常印刷4が施されている。図示しないが、1枚目の帳票11の表面にも、前述のドットパターン2以外に、罫線や、デザイン、文字などの通常印刷が施されている。
【0014】
1枚目の帳票11は、複写帳票の上紙で、ノーカーボン紙であればトップ紙が使用される。また、2枚目の帳票12は下紙で、ノーカーボン紙であればボトム紙が使用される。
トップ紙の上面は、普通紙の表面になっていて、筆記具によって情報が記載できるようになっている。また、トップ紙の下面(裏面)は、発色剤形成面111になっていて、記載された筆記具の筆圧によってカプセルが破壊され、発色剤が染み出すようになっている。
2枚目の帳票12の上面は、発色面になっていて、破壊されて滲み出した発色剤によって発色する顕色剤形成面121になっている。
【0015】
複写方式にはノーカーボン紙を使用する方式以外に複写用紙を使用し、プリントカーボンによって複写する複写方式があり、1枚目の紙の裏面にワックス系のインキを形成し複写させることができ、上述のノーカーボン紙を使用する場合と同様、電子ペン読取り用のドットパターン及びその他の印刷を施して電子ペン用複写帳票として使用する。
前述のノーカーボン紙及び複写紙の選択にあたって(図でわかるように複写枚数が多くなるほど段差が大きくなる。)、ドットパターンを鮮明に印刷するために薄い紙を選択する。
【0016】
図2を参照して複写帳票の作製手順の一例について説明する。
先ず、図1に示す複写帳票1の1枚目帳票11、2枚目帳票12に印刷用の図柄を別々に印刷し巻き取る。
帳票にノーカーボン紙を使用する場合はそのまま、複写用紙を使用する場合は図示しないが1枚目帳票11の裏側に複写用のカーボンを印刷し、1枚目帳票11と2枚目帳票12を重ね合わせ接着剤などで綴じ合わせ複写帳票1を作製する。
印刷によってドットパターンを形成する場合は、枚葉印刷機のフィーダーに、前記丁合された複写帳票を綴じ部側からフィードするように積載し、複写帳票の情報記載面の表出面に電子ペン読取り用のドットパターンを赤外線吸収インキによって印刷する。
また、プリンタを使用してドットパターンを形成する場合は、枚葉印刷機のフィーダーに、前記綴じ合わされた複写帳票を綴じ部側からフィードするように積載し、複写帳票の情報記載面の表出面に電子ペン読取り用のドットパターン2を赤外線を吸収するトナーによって形成する。
【0017】
ここで、電子ペンと、電子ペン読取り専用ドットパターンを使用する「Anoto社」のシステムについて説明する。
電子ペンは、通常の筆記部と、ドットパターンを読み取るための撮像部と、ドットパターン情報を送受信するための送受信部(以下、通信部という)等を搭載している。
例えば、記載者が情報記載欄に文字などを記載すると、ペンの移動に伴って電子ペンに内蔵された撮像部が、ドットパターンによって表示された座標情報を読み取り、接続された通信端末(又は、直接情報収集端末)に読み取った座標情報を通信部から送信する。
通信端末は、受信した前記座標情報をネットワークに接続された電子ペンシステム管理サーバに送信する。
電子ペンシステム管理サーバは、受信した座標情報をテキストデータに変換し、利用者側のサーバや、前記通信端末に返信する。
通信端末内に電子ペンシステム管理サーバ機能が内蔵されている前述の情報収集端末のような場合は、前記座標情報はテキストデータに変換される。
【0018】
図4を参照して、電子ペンについて説明する。
電子ペン5は、インクカートリッジ58を伴った筆記部56、ドットパターンを読み取るデジタルカメラによる撮像部55、デジタルカメラで読み取られた筆記情報(ドットパターンの座標情報)を記憶する記憶部53、携帯通信端末に座標情報を送信する通信部52、これらの機能を制御する制御部54、電子ペン用の圧力センサ57、図示しないが電源部で構成され、これらを電子ペン5の筐体51の内部に搭載している。
電子ペン5は、電子ペン記載用紙に印刷されたドットパターンを撮像部55で読み取って記憶部53で記憶し、図示しないが、電子ペンのユニークな識別情報などと共に通信部52から接続された通信端末に送信する。
電子ペンの通信部52は、USB(Universal Serial Bus)、Bluetooth(The Bluetooth SIG、Inc.の登録商標)何れにも対応できるようになっている。
また、電子ペン5の筐体51に組み込まれた筆記部56は、単なる筆記具として使用することもできるようになっている。
【0019】
筆記部56は、筆記情報を可視状態で記載部に残す役割の他に、デジタルカメラによる撮像部55と、ドットパターン印刷面との距離を一定にする役割を担っている。
筆記部56が電子ペン筐体51に装着されたときに、インクカートリッジ58側の先端が、電子ペンの筐体51に取り付けられた電子ペン用の圧力センサ57に接触するようになっている。
この圧力センサ57は、情報の記載が開始されることを制御部54に伝える機能と、筆圧の強弱を認識する機能を備えている。
また、インクカートリッジ58の残量を確認する場合、または、インクを充填する場合は、例えば、筆記部56を電子ペン筐体51の先端から引き抜いてインクの残量確認、または、インクの充填を行う。
【0020】
図1と、図5を参照して、電子ペン読取り専用ドットパターンについて説明する。
図5は、図1に示すB部の一部200を拡大したものである。
図5に示す縦横の仮想線は、説明し易くするために記載しており、実際には印刷されていない。
電子ペン読取り専用ドットパターン2の各ドットは、0.3mm間隔で形成された直角に交わる縦横の仮想線の交点近傍に、それぞれ異なる4方向の何れかに配置され、形成されている。「Anoto社」のシステムでは、36個のドット(約4mm2 の内側に印刷されたドット群)を1単位情報として扱っている。
【0021】
電子ペンで、電子ペン記載用紙上に文字等を記載すると、ペン先がどの位置をなぞっているか、その近傍に印刷されたドットパターンの座標情報を読み取って、ペン先が移動した単位情報の軌跡を電子ペンの記憶部に記憶するようになっている。
電子ペン記載用紙の所定部を電子ペンでマークをすると、電子ペン記載用紙に記載した前記座標情報を電子ペンから通信端末に送信するようになっている。
「Anoto社」のシステムでは、一つの利用分野で同一のドットパターンが利用されないように管理されている。
【0022】
次に、前述の電子ペンシステム管理サーバ(図示せず)について説明する。
電子ペンシステム管理サーバは、多くの場合、PLSサーバと、ASHサーバに分けられて使用される。
通信端末から送信された座標情報は、まず、PLS(Paper Look−up Service)と呼ばれる電子ペンシステム管理サーバに送信される。
PLSサーバは、受信したドットパターンの座標情報から、使用されているアプリケーションを割り出して、そのアプリケーション支援を行うASH(ApplicationService Handler)サーバのURL(Uniform Resource Locator)と座標情報を通信端末に送信する。電子ペンシステム管理サーバ機
能は、通信端末内に組み込まれて使用されることもある。
【0023】
次に、前述の通信端末(図示せず)について説明する。
通信端末は、例えば、キーボードなどの入力手段、インターネットに接続されて入力情報を送受信する送受信手段、ディスプレイなどの表示手段、入力情報や読み込んだ情報を保存する保存手段とを有する携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)、パーソナルコンピュータのような装置である。
通信端末は、前述のように、電子ペンから送信された情報を電子ペンシステム管理サーバに送信し、テキストデータなどに変換された情報として受信し利用する。
【0024】
通信端末の変わりに前述の情報収集端末を使用する場合がある。情報収集端末には、前述の管理サーバ機能が搭載されているため、電子ペンで読み取られたドットパターン情報は直接テキスト情報に変換される。
【0025】
図3を参照して、本実施の形態の電子ペンを使用した記載情報の収集方法の一例について説明する。
まず、複写帳票1の1枚目、2枚目に別々に図柄印刷を行い(S1)1枚目と2枚目を綴じ合わせ、複写帳票1を作製する。
印刷機やプリンタを使用して複写帳票の表出面にドットパターンを形成する(S2)。
【0026】
S1、S2で作製された複写帳票1に電子ペン5を使用し、複写情報を記載する(S3)。
記載された複写情報は、情報収集端末6に収集される(S4)。
付記情報を記載する(S5)。記載された付記情報は、情報収集端末6に収集される(S6)。
情報収集端末6は、S4、S6で収集した複写情報と付記情報を編集する(S7)。
前述のS3とS5は、記載者、記載された時刻、記載場所は同じでも、異なっていても複写帳票に形成されたドットパターンが関連付けてくれるために情報収集端末6はその編集機能によって収集情報を一元化することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 複写帳票
2 ドットパターン
3 綴じ部
4 印刷部(赤外線非吸収インキ)
5 電子ペン
11 1枚目帳票
12 2枚目帳票
51 筐体
52 通信部
53 記憶部
54 制御部
55 撮像部
56 筆記部
57 圧力センサ
58 インクカートリッジ
111 発色剤形成面
121 顕色剤形成面
200 図1のB部拡大図



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写帳票の大きさの異なる各帳票を電子ペンで読み取れないインキにより印刷する第1ステップと、
各帳票を綴じ合わせる第2ステップと、
綴じ合わされた複写帳票の各帳票の表出面に対して、電子ペンで読み取ることができるインキでコード化パターンを印刷する第3ステップと
を含むことを特徴とする複写帳票の製造方法。
【請求項2】
第2ステップにおいて、複写帳票の各帳票を一端で揃え、下位の帳票が上位の帳票より長めになるように階段状に重ね合わせて綴じ合わせることを特徴とする請求項1に記載の複写帳票の製造方法。
【請求項3】
第3ステップにおいては、複写帳票の綴じ部側から印刷機にフィードさせて、コード化パターンを印刷することを特徴とする請求項1又は2に記載の複写帳票の製造方法。
【請求項4】
大きさの異なる各帳票が重ね合わせて綴じ合わされており、
綴じ合わされた状態での各帳票の表出面に対して、電子ペンで読み取ることができるインキでコード化パターンが印刷されているが、表出しない面には、コード化パターンが印刷されていない
ことを特徴とする複写帳票。
【請求項5】
各帳票が一端で揃えられ、下位の帳票が上位の帳票より長めになるように階段状に重ね合わせて綴じ合わされていることを特徴とする請求項4に記載の複写帳票。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−41590(P2013−41590A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205194(P2012−205194)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2008−295314(P2008−295314)の分割
【原出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】