説明

複合するガス状化学物質を選択的に濃縮し検出する装置及び方法

【課題】簡単な構成でアルデヒド類を高精度で分析でき、装置の小型化に貢献する。
【解決手段】アルデヒド類と揮発性有機化合物とが混合した混合試料ガスが流れる流路を有し、前記流路内の混合試料ガスから前記アルデヒド類を抽出して分析するガスクロマトグラフ装置であって、前記流路に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段と、前記第1捕集手段の下流側となるように前記流路に組み込まれ且つ前記第1捕集手段を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段と、前記第2捕集手段に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段と、前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類と揮発性有機化合物とが混合した混合試料ガスが流れる流路を有し、前記流路内の混合試料ガスから前記アルデヒド類を抽出して分析するガスクロマトグラフ装置及びその分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、大気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサなどの検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1に示す濃縮分析装置は、冷却した第1濃縮管に試料ガスを流通させて不純物成分を一次濃縮し、該濃縮した一次濃縮ガスを第2濃縮管に流通させて不純物成分を二次濃縮し、該濃縮した二次濃縮ガスをプレカラムに流通させて二次濃縮ガス中の不純物成分を予備分離し、該予備分離した予備分離ガスをメインカラムに流通させて不純物成分を単成分に分離し、該単成分に分離した不純物成分を分析器に導入して分析している。
【特許文献1】特開2004−354332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シックハウスの原因物質として疑われる種々の物質の中で、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ホルムアルデヒドは、住宅、公共工事等の品確保法、自動車車室内濃度の自主規制の動き等により、簡便迅速な測定方法が求められている。そして、対象ガスの濃度が非常に低いことから、吸着剤への捕集・濃縮が行われることが一般的である。一方、芳香族とアルデヒド類は、物性の違いから、利用する吸着剤や分析方法が異なる場合があり、同時に若しくは同じ装置で迅速に計測することが困難であることが知られている。
【0005】
VOCとホルムアルデヒドが混合した混合試料ガス中のホルムアルデヒド濃度を測定する場合の試料採取法としては、DNPH誘導体固相吸着が知られており、DNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)が入った捕集管にホルムアルデヒドを吸着させることが知られており、DNPH誘導体化された化合物は液体クロマトグラフ装置等で分離分析される。そのため、装置構成が複雑であることから、ラボラトリー等でしか分析することができない。
【0006】
また、混合試料ガスの簡易的な分析装置としては、図8に示すように、DNPHが充填された第1捕集管110と、ブランクの第2捕集管120とを並列に試料ガスが流れる流路100に組み込み、その下流側の流路100にセンサ130を組み込んでいる。そして、センサ130は、第1捕集管110を通過したホルムアルデヒド以外の捕集されなかったガスを測定した出力Aと、第2捕集管120を通過した試料ガスとを測定した出力Bを出力し、出力Bから出力Aを減算することで(出力B−出力A)、ホルムアルデヒドを分析していた。しかしながら、第1捕集管110に充填されたDNPHはホルムアルデヒド以外も捕集してしまうため、上述した方法ではラボラトリー以外の場所で正確にホルムアルデヒドを分析することができなかった。
【0007】
さらに、上述した特許文献1に示す濃縮分析装置は、構成は単純なために装置の小型化を図るという点では望ましいが、不純物であるアルシンを濃縮するアルミナ系吸着剤等が上流側の濃縮管に充填され、その下流側の濃縮管にポーラスポリマービーズ等が充填されているため、ホルムアルデヒドを分析することができないという問題がある。なお、このような問題はアルデヒド類の全般に生じる問題である。
【0008】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、簡単な構成でアルデヒド類を高精度で分析でき且つ装置の小型化に貢献することができるガスクロマトグラフ装置及びその分析方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のガスクロマトグラフ装置は、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含む混合試料ガスが流れる流路を有し、前記流路内の混合試料ガスから前記アルデヒド類を抽出して分析するガスクロマトグラフ装置であって、前記流路に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段と、前記第1捕集手段の下流側となるように前記流路に組み込まれ且つ前記第1捕集手段を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段と、前記第2捕集手段に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段と、前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記第1捕集手段と前記第2捕集手段の間から分岐する分岐流路と、前記第1捕集手段からの気体の進入を防止し且つ前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を前記分岐流路に流通させる切り替え手段と、を有し、前記アルデヒド類分析手段が、前記分岐流路に組み込まれて前記アルデヒド類を分析する手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記第1捕集手段に捕集した揮発性有機化合物の脱離を促すように前記第1捕集手段を加熱する第1加熱手段と、前記第1捕集手段から脱離した揮発性有機化合物を分析する揮発性有機化合物分析手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のガスクロマトグラフ装置の分析方法は、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含む混合試料ガスが流れる流路と、前記流路に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段と、前記第1捕集手段の下流側となるように前記流路に組み込まれ且つ前記第1捕集手段を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段と、前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段と、前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段と、を有するガスクロマトグラフ装置の分析方法において、前記第2捕集手段に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように、前記第2捕集手段を前記第2加熱手段で加熱する脱離工程と、前記加熱によって第2捕集手段から脱離したアルデヒド類をアルデヒド類分析手段で分析する分析工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1,4に記載した本発明によれば、混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくともアルデヒド類を捕集しない第1捕集剤と、アルデヒド類を捕集する第2捕集剤とを選定し、且つ、第1捕集剤を充填した第1捕集手段と第2捕集剤を充填した第2捕集手段を混合試料ガスの流れ方向に対して順に直列接続するようにしたことから、第2捕集手段でアルデヒド類のみを捕集することが可能となり、それを第2加熱手段で加熱して脱離させてアルデヒド類を分析できるため、簡単な構成でアルデヒド類のみを高精度に分析することができる。また、第1捕集手段と第2捕集手段とを直列接続するだけなので、装置の小型化に貢献することができるため、ラボラトリー以外の測定現場等で正確にアルデヒド類を分析することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1捕集手段と前記第2捕集手段の間から分岐する分岐流路に第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を流通させて分析するようにしたことから、第1捕集手段から各種気体が流れ込むことを防止できるため、アルデヒド類の測定精度をより一層向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、第1捕集手段で捕集した揮発性有機化合物の脱離を加熱により促し、その脱離した揮発性有機化合物を分析するようにしたことから、アルデヒド類とは別に揮発性有機化合物を分析することができるため、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを選択的に且つ簡便に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ(GC)装置及びその分析方法の一実施形態について、図1の図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、アルデヒド類のうちのホルムアルデヒドに着目して説明する。
【0017】
図1において、ガスクロマトグラフ装置10は、アルデヒド類と揮発性有機化合物とが混合した混合試料ガスが流れる流路2を有し、前記流路内の混合試料ガスから前記アルデヒド類を抽出して分析するガスクロマトグラフ装置10であって、前記流路2に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段3と、前記第1捕集手段3の下流側となるように前記流路2に組み込まれ且つ前記第1捕集手段3を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段4と、前記第2捕集手段4に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段5と、前記第2捕集手段4から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段6aと、を有している。
【0018】
また、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含む混合試料ガスが流れる流路2と、前記流路2に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段3と、前記第1捕集手段3の下流側となるように前記流路2に組み込まれ且つ前記第1捕集手段3を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段4と、前記第2捕集手段4を加熱する第2加熱手段5と、前記第2捕集手段4から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段6aと、を有するガスクロマトグラフ装置10の分析方法において、前記第2捕集手段4に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように、前記第2捕集手段4を前記第2加熱手段5で加熱する脱離工程と、前記加熱によって第2捕集手段4から脱離したアルデヒド類をアルデヒド類分析手段6aで分析する分析工程と、を有している。
【0019】
上述した第2捕集剤を検討する過程で、一般に広く使用されている2種類の捕集剤のTenax TAとモレキュラシーブ13Xのアルデヒド類であるホルムアルデヒドの吸着能力を実験した結果、表1に示す結果を得ることができた。この実験は、捕集管にホルムアルデヒドを含む試料ガスを通過させ、捕集されずにキャリーオーバーしたホルムアルデヒドを後段に接続したDNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)カートリッジに吸着させ、この吸着量をDNPH−HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により定量したものである。そして、これによって得られたDNPHカートリッジの回収率(出口濃度/入口濃度)を算出した結果を表1に示している。なお、モレキュラシーブ13Xの回収率が0となっているが、これはHPLCにより不検出であったことを示している。
【0020】
【表1】

【0021】
上述した回収率は、数値が低いほど捕集剤のホルムアルデヒドの捕集能力が高いことを意味している。即ち、表1に示すように、モレキュラシーブ13Xはホルムアルデヒドの捕集能力が極めて高く、逆に、Tenax TAはホルムアルデヒドをほとんど吸着しないことが分かった。また、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等は従来よりTenax TAを用いて捕集されることが一般的であり、上記2種類の捕集剤を連結することで、一方ではホルムアルデヒド、他方ではトルエン、キシレン、エチルベンゼン等を同時に且つ選択的に捕集することが可能であることを究明できた。
【0022】
よって、第2捕集手段4の第2捕集剤にモレキュラシーブ13X等を用いることで、ホルムアルデヒドを第2捕集手段4に捕集することができる。そして、その上流に位置する第1捕集手段3の第1捕集剤に、揮発性有機化合物(以下、VOCともいう)を捕集するTenax TA等を充填することで、第1捕集手段3を通過した混合試料ガスはVOCが取り除かれた第1試料ガスとなるため、第2捕集手段4は導入した第1試料ガスからホルムアルデヒドを捕集することができる。
【0023】
また、ホルムアルデヒドを捕集した第2捕集手段4は、第2加熱手段5によって加熱されて当該ホルムアルデヒドの脱離が促される。そして、第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドは、各種ガスセンサが適宜用いられるアルデヒド類分析手段6aによって分析される。
【0024】
このようなガスクロマトグラフ装置10によれば、混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくともアルデヒド類を捕集しない第1捕集剤と、アルデヒド類を捕集する第2捕集剤とを選定し、且つ、第1捕集剤を充填した第1捕集手段3と第2捕集剤を充填した第2捕集手段4を混合試料ガスの流れ方向に対して順に直列接続するようにしたことから、第2捕集手段4でアルデヒド類のみを捕集することが可能となり、それを第2加熱手段5で加熱して脱離させてアルデヒド類を分析できるため、簡単な構成でアルデヒド類のみを高精度に分析することができる。また、第1捕集手段3と第2捕集手段4とを直列接続するだけなので、装置の小型化に貢献することができるため、ラボラトリー以外の測定現場等で正確にアルデヒド類を分析することができる。また、アルデヒド類を捕集する第2捕集剤としては、モレキュラシーブ13Xの他には、Chromosorb105、Porapak T等が挙げられる。
【0025】
次に、図1に示すように、ガスクロマトグラフ(GC)装置10は、上述した構成に加え、第1加熱手段7と、揮発性有機化合物分析手段6bと、を有して構成している。
【0026】
第1加熱手段7は、第1捕集手段3に捕集したVOCの脱離を促すように、電気的に接続された制御手段(図示せず)等の制御によって第1捕集手段3を加熱する。そして、第1捕集手段3から脱離したVOCは、各種ガスセンサが適宜用いられる揮発性有機化合物分析手段6bによって分析される。
【0027】
このようなGC装置10によれば、第1捕集手段3で捕集した揮発性有機化合物の脱離を第1加熱手段7による加熱により促し、その脱離した揮発性有機化合物を分析するようにしたことから、アルデヒド類とは別に揮発性有機化合物を分析することができるため、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを選択的に且つ簡便に分析することができる。
【実施例】
【0028】
次に、上述したGC装置10の実施例を、図2乃至図7の図面を参照して以下に説明する。なお、混合試料ガスは、アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含むものであれば、他の種類のガスを含んでいても差し支えない。
【0029】
図2において、GC装置10は、流路2と、第1捕集手段3と、第2捕集手段4と、第2温度調整手段5と、分析手段6と、第1温度調整手段7と、気体流通手段8と、を有している。そして、流路2には、第1捕集手段3と第2捕集手段4と気体流通手段8とが混合試料ガスの流れ方向R1に向かって順次直列に組み込まれている。
【0030】
さらに、GC装置10は、三方弁V1,V2,V3と、第1分岐流路2aと、第2分岐流路2bと、を有している。
【0031】
三方弁V1は、第1捕集手段3と第2捕集手段4との間の流路2に組み込まれ、後述する制御手段62の制御によって切り替えられる。三方弁V1は、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには第1捕集手段3、ポートcには第2捕集手段4、ポートbには第1分岐流路2aがそれぞれ接続されている。三方弁V1は、混合試料ガスの導入に応じて、第1捕集手段3と第2捕集手段4とを接続し(a−c接続)、第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドの流通に応じて、第1捕集手段3からの各種気体の進入を防止し且つ第2捕集手段4と第1分岐流路2aとを接続する(b−c接続)。
【0032】
三方弁V2は、三方弁V1と検出手段61との間の第1分岐流路2aに組み込まれ、制御手段62の制御によって切り替えられる。三方弁V2は、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには第2分岐流路2b、ポートbには第1分岐流路2aを介して第1三方弁V1、ポートcには第1分岐流路2aを介して検出手段61がそれぞれ接続されている。三方弁V2は、第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドの流通に応じて、第2捕集手段4と三方弁V1を介して検出手段61とを接続し(b−c接続)、第1捕集手段3から脱離したVOCの流通に応じて、第1捕集手段3と検出手段61とを接続する(a−c接続)。
【0033】
三方弁V3は、第1捕集手段3と三方弁V2との間の流路2に組み込まれ、制御手段62の制御によって切り替えられる。三方弁V3は、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには流路2の導入口10a、ポートbには第2分岐流路2bを介して三方弁V2、ポートcには流路2を介して第1捕集手段3がそれぞれ接続されている。三方弁V3は、第1捕集手段3から脱離したVOCの流通に応じて、第1捕集手段3と三方弁V2を介して検出手段61とを接続し(b−c接続)、導入口10aからの混合試料ガス等の流通に応じて、導入口10aと第1捕集手段3とを接続する(a−c接続)。
【0034】
このように三方弁V1は、第1捕集手段3からの気体の進入を防止し且つ第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドを切り替えにより第1分岐流路2aに流通させることから、請求項中の切り替え手段に相当している。また、第1分岐流路2aは、第1捕集手段3と第2捕集手段4の間の流路2から分岐していることから、請求項中の分岐流路に相当している。第2分岐流路2bは、導入口10aと第1捕集手段3との間の流路2から分岐して第1分岐流路2aとをバイパスする流路となっている。なお、三方弁V1(b−c接続)のときに三方弁V3(a−c接続)としてホルムアルデヒドを検出手段61に流し、また、三方弁V1(a−c接続)のときに三方弁V3(b−c接続)としてVOCを検出手段61に流すことで、三方弁V2を構成からなくすこともできる。
【0035】
第1捕集手段3は、中空状部材3aと、該中空状部材3aに充填された第1捕集材3bと、を有して構成している。
【0036】
中空状部材3aは、中空円柱状等に硬質ガラス製、ステンレス製等の熱伝導性部材によって形成さている。中空状部材3aは、任意の端部から内部に混合試料ガス、キャリアガス等を導入し、脱離した第1試料ガス等を排出する構造となっている。
【0037】
第1捕集剤3bは、上述したようにVOCを捕集し且つホルムアルデヒドを捕集しないTenax TA等が用いられる。この第1捕集剤3bは、低温状態時に中空状部材3a内を流れる混合試料ガス中の少なくともVOCを吸着して捕集する。そして、捕集したVOCを気化温度以上とする高温状態に加熱されることで脱離する。
【0038】
第2捕集手段4は、中空状部材4aと、該中空状部材4aに充填された第2捕集材4bと、を有して構成している。
【0039】
中空状部材4aは、中空円柱状等に硬質ガラス製、ステンレス製等の熱伝導性部材によって形成さている。中空状部材4aは、任意の端部から内部に第1試料ガス、キャリアガス等を導入し、脱離したホルムアルデヒド等を排出する構造となっている。
【0040】
第2捕集材4bは、上述したようにホルムアルデヒドを捕集するモレキュラシーブ13X等が用いられる。この第2捕集剤4bは、低温状態時に中空状部材4a内を流れる第1試料ガス中のホルムアルデヒドのみを吸着して捕集する。そして、捕集したホルムアルデヒドを気化温度以上とする高温状態に加熱されることで脱離する。
【0041】
第2温度調整手段5は、上述した図1に示す請求項中の第2加熱手段に相当し、第2捕集手段4の中空状部材4aの外周面に沿って設けられ、公知であるクーラー等の冷却装置及びヒータ等の加熱装置が用いられる。そして、冷却装置及び加熱装置は制御手段62の制御によって冷却、加熱が切り換えられる。第2温度調整手段5は、上記中空状部材4aを冷却又は加熱することで、上述した第2捕集剤4bの冷却又は加熱を促す。よって、第2温度調整手段5は、前記第2捕集手段4に捕集したホルムアルデヒドの脱離を促すように第2捕集手段4を加熱することができる。
【0042】
分析手段6は、検出手段61と、制御手段62とを有して構成している。そして、本実施例では、上述した図1中のアルデヒド類分析手段6a及び揮発性有機化合物分析手段6bとして分析手段6を機能させる場合について説明する。
【0043】
検出手段61は、図示しないが、カラムとガスセンサとを有している。カラムは、公知であるガスクロマトグラフの分離カラム等が用いられる。前記カラムは、ヒータによって加熱されることで、第1分岐流路2aから導入された気体をその種類(測定対象成分)により時間軸上(所定の測定期間)で分離して送出する。なお、第2捕集手段からホルムアルデヒドのみを流通させる場合等は、上記カラムを構成から削除することもできる。
【0044】
前記ガスセンサは、接触燃焼式ガスセンサ、吸着燃焼式ガスセンサ等が用いられ、例えば感応素子部と感応素子部の抵抗差に基づいて、ガス濃度を示すセンサ信号を制御手段62に出力する。
【0045】
制御手段62は、公知であるマイクロプロセッサーユニット(MPU)等のコンピュータが用いられる。制御手段62は、第2温度調整手段5と検出手段61と第1温度調整手段7と気体流通手段8と三方弁V1,V2,V3と電気的に接続され、内蔵メモリ等に記憶している各種プログラムを実行することで各々の制御を行う。制御手段62は、前記ガスセンサからのセンサ出力を所定のサンプリング間隔で取得し、それらのセンサ出力に基づいて混合試料ガス中のホルムアルデヒドやVOCの濃度等を分析する。
【0046】
第1温度調整手段7は、上述した図1に示す請求項中の第1加熱手段に相当し、第1捕集手段3の中空状部材3aの外周面に沿って設けられ、公知であるクーラー等の冷却装置及びヒータ等の加熱装置が用いられる。そして、冷却装置及び加熱装置は制御手段62の制御によって冷却、加熱が切り換えられる。第1温度調整手段7は、上記中空状部材3aを冷却又は加熱することで、上述した第1捕集剤3bの冷却又は加熱を促す。よって、第1温度調整手段7は、前記第1捕集手段3に捕集したVOCの脱離を促すように第1捕集手段3を加熱することができる。
【0047】
なお、上述した第1温度調整手段7及び第2温度調整手段5は、上述した低温を常温以上とする場合は、上記冷却装置を構成から排除することもできるが、上記冷却装置を用いることで、第1捕集材3bと第2捕集材4bを迅速に冷却することができるため、より短時間で分析を行うことができる。
【0048】
気体流通手段8は、図示しないが、バッファとポンプとを有して構成している。前記バッファは、前記ポンプによる流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、前記バッファを配設することで流動量が安定するため、前記検出手段61による検出精度を高めることができる。また、前記ポンプの流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、前記バッファを省略してもよい。そして、前記ポンプは、制御手段62の制御によってポンプ吸入口から吸入したガスをポンプ排出口から排出することで、流路2の流れ方向とは逆方向への流れを流路2内、第2捕集手段4内等に生じさせる。
【0049】
次に、ガスクロマトグラフ(GC)装置10の制御手段62の制御によって行う本発明に係る動作(作用)の一例を、図3及び図4の概図面を参照して説明する。なお、図4では、構成を簡単化するために制御手段62の記載を省略している。
【0050】
GC装置10は、電源投入により起動されると、ステップS1において、三方弁V1,V3を共にポートa−c間に接続し、第1温度調整手段7及び第2温度調整手段5によって第1捕集手段7及び第2捕集手段を冷却することで、第1捕集手段3及び第2捕集手段4を低温状態にする(図4参照)。
【0051】
ステップS2において、導入口10aから導入した混合試料ガスを、第1捕集手段3、第2捕集手段4の順に混合試料ガスが流れ方向R1に向かって流れるように気体流通手段8によって流路2内を流通させることで、第1捕集手段3がVOCを捕集し、この第1捕集手段3を通過した第1試料ガス(VOC抽出済み)からホルムアルデヒドを第2捕集手段4が捕集する。
【0052】
なお、第2捕集剤4bによるホルムアルデヒドの捕集量は、第1試料ガスの流速と期間により決定され、流動量が多いほど捕集量も多くなるため、所定の期間は第2捕集剤4bの捕集量等に基づいて、第2捕集剤4bが破過しないように設定される。また、第1捕集剤3bも同様に、それぞれが破過しないように、流速、期間と各捕集剤の充填量を決定する。
【0053】
ステップS3(脱離工程)において、気体流通手段8を停止し、第2捕集手段4がホルムアルデヒドの脱離を促す高温となるように温度調整手段5によって加熱し、続いて流路2内の気体の流れを流れ方向R1から逆方向R2に逆転するように気体流通手段8によって切り替え、三方弁V1,V2を共にポートb−c間に切り替ることで、三方弁V1,V2を通して第1分岐流路2aの検出手段61に、第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドを導入する(図5参照)。
【0054】
ステップS4(分析工程)において、検出手段61は前記カラムによってホルムアルデヒドを抽出し、前記ガスセンサはガス濃度を示すセンサ信号を制御手段62に出力し、制御手段62がそのセンサ出力を所定のサンプリング間隔で取得し、それらのセンサ出力に基づいてホルムアルデヒドの濃度等を分析する。
【0055】
ステップS5において、第2捕集手段4からのホルムアルデヒドの脱離終了、分析終了等に応じて、第1捕集手段3がVOCの脱離を促す高温となるように温度調整手段7によって加熱し、気体流通手段8が逆方向R2に向かって気体を流している状態で、三方弁V1,V2を共にポートa−c間に切り替え、三方弁V3をポートb−c間に切り替えることで、三方弁V1,V2,V3及び第2分岐流路2bを通して第1分岐流路2aの検出手段61に、第1捕集手段3から脱離したVOCを導入する(図6参照)。
【0056】
ステップS6において、検出手段61は前記カラムによってVOCを分離し、前記ガスセンサはガス濃度を示すセンサ信号を制御手段62に出力し、制御手段62がそのセンサ出力を所定のサンプリング間隔で取得し、それらのセンサ出力に基づいてVOCの濃度等を分析する。
【0057】
ステップS7において、第1温度調整手段7及び第2温度調整手段5の加熱状態(ガスが捕集材から脱離し易い状態)を維持し、一定時間にわたって気体流通手段8からガスを流路2内に送り、第1捕集手段3及び第2捕集手段4の内部をクリーニングする(図7参照)。なお、活性炭等のフィルタを気体流通手段8の吸気口に取り付けることで、より確実なクリーニングを行うことができる。そして、クリーニングが終了すると、ステップS1に戻って、一連の処理を繰り返す。
【0058】
以上説明した本発明のGC装置10によれば、混合試料ガスからVOCを捕集し且つ少なくともホルムアルデヒドを捕集しない第1捕集剤3bと、ホルムアルデヒドを捕集する第2捕集剤4bとを選定し、その第1捕集剤3bを充填した第1捕集手段3と第2捕集剤4bを充填した第2捕集手段4を混合試料ガスの流れ方向R1に対して順に直列接続するようにしたことから、第2捕集手段4でホルムアルデヒドのみを捕集することが可能となり、それを温度調整手段5で加熱して脱離させてホルムアルデヒドを分析手段6によって分析できるため、簡単な構成でホルムアルデヒドのみを高精度に分析することができる。また、第1捕集手段3と第2捕集手段4とを直列接続するだけなので、装置の小型化に貢献することができるため、ラボラトリー以外の測定現場等で正確にホルムアルデヒドを分析することができる。
【0059】
また、第1捕集手段3と第2捕集手段4との流路2の間から分岐する分岐流路2aに第2捕集手段4から脱離したホルムアルデヒドを流通させて分析手段6によって分析するようにしたことから、第1捕集手段3から各種気体が流れ込むことを防止できるため、ホルムアルデヒドの測定精度をより一層向上させることができる。
【0060】
さらに、第1捕集手段3で捕集したVOCの脱離を温度調整手段7の加熱により促し、その脱離したVOCを分析するようにしたことから、ホルムアルデヒドとは別にVOCを分析することができるため、ホルムアルデヒドとVOCとを選択的に且つ簡便に分析することができる。
【0061】
なお、上述した本実施例では、ホルムアルデヒドとVOCの双方を別個に分析する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、ホルムアルデヒドのみを分析することもできる。その場合は、図3に示すフローチャート中のステップS5,6を削除することで対応することができる。
【0062】
また、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のガスクロマトグラフ装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】本発明のガスクロマトグラフ装置の実施例を示す構成図である。
【図3】図2のガスクロマトグラフ装置が行う動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2のガスクロマトグラフ装置の捕集に係る概略構成を示すブロック図である。
【図5】図2のガスクロマトグラフ装置におけるホルムアルデヒドの脱離、分析に係る概略構成を示すブロック図である。
【図6】図2のガスクロマトグラフ装置におけるVOCの脱離、分析に係る概略構成を示すブロック図である。
【図7】図2のガスクロマトグラフ装置におけるクリーニングに係る概略構成を示すブロック図である。
【図8】従来の混合試料ガスの簡易的な分析装置の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
2 流路
2a 分岐流路(第1分岐流路)
3 第1捕集手段
4 第2捕集手段
5 第2加熱手段(第2温度調整手段)
6 分析手段
7 第1加熱手段(第2温度調整手段)
8 気体流通手段
10 ガスクロマトグラフ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含む混合試料ガスが流れる流路を有し、前記流路内の混合試料ガスから前記アルデヒド類を抽出して分析するガスクロマトグラフ装置であって、
前記流路に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段と、
前記第1捕集手段の下流側となるように前記流路に組み込まれ且つ前記第1捕集手段を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段と、
前記第2捕集手段に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段と、
前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段と、
を有することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記第1捕集手段と前記第2捕集手段の間から分岐する分岐流路と、
前記第1捕集手段からの気体の進入を防止し且つ前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を前記分岐流路に流通させる切り替え手段と、
を有し、
前記アルデヒド類分析手段が、前記分岐流路に組み込まれて前記アルデヒド類を分析する手段であることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記第1捕集手段に捕集した揮発性有機化合物の脱離を促すように前記第1捕集手段を加熱する第1加熱手段と、
前記第1捕集手段から脱離した揮発性有機化合物を分析する揮発性有機化合物分析手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
アルデヒド類と揮発性有機化合物とを含む混合試料ガスが流れる流路と、前記流路に組み込まれて前記混合試料ガスから揮発性有機化合物を捕集し且つ少なくとも前記アルデヒド類を捕集しない第1捕集剤を充填した第1捕集手段と、前記第1捕集手段の下流側となるように前記流路に組み込まれ且つ前記第1捕集手段を通過した第1試料ガスから前記アルデヒド類を捕集する第2捕集剤を充填した第2捕集手段と、前記第2捕集手段を加熱する第2加熱手段と、前記第2捕集手段から脱離したアルデヒド類を分析するアルデヒド類分析手段と、を有するガスクロマトグラフ装置の分析方法において、
前記第2捕集手段に捕集したアルデヒド類の脱離を促すように、前記第2捕集手段を前記第2加熱手段で加熱する脱離工程と、
前記加熱によって第2捕集手段から脱離したアルデヒド類をアルデヒド類分析手段で分析する分析工程と、
を有することを特徴とするガスクロマトグラフ装置の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236539(P2009−236539A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80066(P2008−80066)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)