説明

複合シート

【目的】 ピンホールのない、耐水性、耐薬品性、表面平滑性に優れた合成樹脂被覆板を容易に製造することができる合成樹脂被覆板用の複合シートの提供を目的とする。
【構成】 不織布、接着性ポリオレフィン層、高密度ポリエチレン層からなる複合シートであり、高密度ポリエチレン層は密度0.940〜0.970g/cm3 、メルトフローレートが2〜30g/10分であり、接着性ポリオレフィン層の膜厚は0.020〜0.200mm、高密度ポリエチレン層の膜厚は0.005〜0.200mmである合成樹脂被覆板用複合シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築・構築用部材、家具等に用いられる合成樹脂被覆板に使用される耐水性、耐薬品性、耐腐食性、表面平滑性に優れた複合シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より木材、木質合板、パーティクルボード、ファイバーボード、レジンボード等を基板とし、その表面に耐水性、耐薬品性、耐腐食性及び表面性に優れた合成樹脂被覆を形成する方法として、塗料の塗布、接着剤によるフィルム貼合せ等が行われている。しかし、これらの方法では接着剤を塗布するための工程が複雑で、設備費、加工費も高くなり、しかも接着剤中の溶剤や廃液による公害の発生、作業環境の悪化、接着性の不足、ピンホールの発生等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ピンホールのない、耐水性、耐薬品性、表面平滑性に優れた合成樹脂被覆板を容易に製造することができる合成樹脂被覆板用の複合シートの提供を課題とする。特に、合成樹脂被覆合板製造時に、合板製造と同時に合成樹脂被覆板が製造可能となる複合シートの提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題は、不織布、接着性ポリオレフィン層、高密度ポリエチレン層からなる複合シートであり、高密度ポリエチレン層は密度0.940〜0.970g/cm3 、メルトフローレートが2〜30g/10分であり、接着性ポリオレフィン層の膜厚は0.020〜0.200mm、高密度ポリエチレン層の膜厚は0.005〜0.200mmであり、溶融共押出法で製造された合成樹脂被覆板用複合シートにより解決される。
【0005】以下、本発明につき、詳細に説明する。本発明に用いられる不織布は、接着性ポリオレフィンとの接着性が良好であり、かつ、合板接着用の接着剤との接着も良好であることが必要とされる。これらの接着は、不織布中に接着性ポリオレフィンや合板接着用の接着剤がくい込むいわゆるアンカー効果もあるが、ヒドロキシ基、エステル基、アミド基のような極性基をもつものが接着力が強く、望ましい。これらの条件を満足する材料として、ポリエステル、セルロース、セルローズアセテート、ポリアミド等があげられるが、特にセルロースが望ましい。
【0006】次に、本発明に用いられる接着性ポリオレフィンとしては、各種のものがあるが、通常はカルボン酸基(酢酸基、アクリル酸基、メタクリル酸基、フマル酸基、イタコン酸基など)、カルボン酸金属塩基(ナトリウム塩、カルシウムウ塩、マグネシウム塩、亜鉛塩など)、カルボン酸エステル基(メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ビニルエステル基など)、酸無水物基(無水マレイン酸基など)およびエポキシ基から選ばれた少なくとも一種の官能基を有するポリオレフィンである。
【0007】ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体さらにはこれらに少量のジエンを含む共重合体などをあげることができる。
【0008】このような接着性ポリオレフィンの具体例としては、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/フマル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸亜鉛共重合体、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸ナトリウム共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル/メタクリル酸/メタクリル酸亜鉛共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸マグネシウム共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、アクリル酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン共重合体、アクリル酸グラフトエチレン/プロピレン共重合体、フマル酸グラフトエチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン−イタコン酸共重合体、エチレン/プロピレン−エンドビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−無水ジカルボン酸共重合体、エチレン/プロピレン−メタクリル酸グラフトグリシジル共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン共重合体、フマル酸グラフトエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン/ノルボルナジエン共重合体およびアクリル酸グラフトエチレン/酢酸ビニル共重合体などであり、これらの変性ポリオレフィンを単独で使用してもよく、また二種以上を併用することも可能である。
【0009】また、本発明で用いられる接着性ポリオレフィンの重合度は特に制限はないが、通常メルトインデックスが0.01〜100g/10分の範囲内にあるものを任意に選択できる。
【0010】これら接着性ポリオレフィンの中でも特に、ポリエチレンを酸無水物により変性した密度0.940〜0.970g/cm3 のグラフト重合体が望ましく、0.945〜0.965g/cm3 が特に好適である。密度が0.940g/cm3 未満では得られる複合シートの耐熱性が不十分で、基板への複合シートの貼合時に気泡が発生し好ましくない。
【0011】本発明に用いられる高密度ポリエチレンは、長鎖分岐を持たない中低圧法高密度ポリエチレンである。密度が0.940g/cm3 未満では得られる複合シートの耐熱性が不十分で、基板への複合シートの貼合時に気泡が発生し好ましくない。密度は0.940〜0.970g/cm3 が必要であり、0.945〜0.965g/cm3 が好適である。密度が0.970g/cm3 を超えるものは製造困難である。メルトフローレート(以下MFRと略称する)は、2〜30g/10分が必要であり、3〜25g/10分が好適である。MFRが2g/10分未満の場合は溶融粘度が高く押出成形性が悪く、MFRが30g/10分を超える場合は、溶融膜のネックインが大きく、品質良好な複合シートが得にくい。この高密度ポリエチレンには、一般に使用されている酸素、熱及び紫外線に対する安定剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、加工性改良樹脂のほか、透明化剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、剥離性付与剤のごとき添加物を配合してもよい。
【0012】本発明の複合シートを製造するためには溶融共押出法が使用される。溶融共押出法によりラミネートするには、一般的な共押出機及びラミネーターが使用でき、たとえば50〜300m/分で供給される不織布の片面に、2種2層共押出ラミネート成形機を用いて、接着性ポリオレフィンと高密度ポリエチレンとを接着性ポリオレフィンからなる層が不織布の表面と接合するように溶融共押出し、クーリングロールとプレッシャーロールとの間で圧着接合し、ロール状に巻取る方法があげられる。
【0013】共押出ラミネート物の製造装置として、前記一般的に用いられる2種2層共押出ラミネート成形機を用いた場合、接着性ポリオレフィンからなる層と高密度ポリエチレンからなる層の接合方法は、ダイ前、ダイ内、ダイ外のいずれの方法を用いることもできるが、とりわけダイ前接合方法が共押出ラミネート物の製造および共押出ラミネート装置の価格面からも好適である。
【0014】2層ラミネート溶融膜の温度は、ダイ直下において一般に230〜330℃であり、とりわけ250〜320℃が好ましい。
【0015】本発明では、2層ラミネート溶融膜の接着性ポリオレフィン層と高密度ポリエチレン層の各々の溶融膜の温度は同一である必要はなく、積極的に温度差をつけてもかまわない。すなわち、接着性ポリオレフィン層と不織布との接着強度を高めるために、接着性ポリオレフィン層の温度を高密度ポリエチレン層の温度より高くする等の方法を必要に応じてとってもよい。
【0016】さらに、本発明においては、ダイから吐出された2層ラミネート溶融膜が不織布と接するまでのエアーギャップ間において、2層ラミネート溶融膜の接着性ポリオレフィン層表面にオゾンガスを吹付けて、接着性ポリオレフィン層と不織布との接着強度を増大させる方法、不織布の接着性ポリオレフィン層との接着表面に、アンカーコート処理、コロナ放電処理、フレーム処理などの前処理を施し、不織布と接着性ポリオレフィン層との接着強度を増大させるなどの方法を必要に応じてとってもよい。
【0017】2層ラミネート溶融膜と不織布との接合には、鏡面ロールをクーリングロールとして使用して行われる。これによって、高密度ポリエチレン層の表面平滑性や表面光沢が良好な共押出ラミネート物が得られる。特に建築・構築用部材として用いられる場合、例えばコンクリート等との剥離性が要求される場合は平滑性が必要であり、家具として用いられる場合は表面光沢が必要とされるので、表面光沢や表面平滑性は重要な物性である。
【0018】本発明の複合シート中の2層ラミネート膜中の高密度ポリエチレン層の膜厚は、0.005〜0.200mmであり、とりわけ0.010〜0.100mmが好適である。膜厚が0.005mm未満では溶融膜の延展性が難しくなるばかりでなく、共押出ラミネート物の平滑性、耐ピンホール性が悪くなるので好ましくない。また、膜厚が0.200mmを超えると、使用する基材の厚みによっても異なるが、共押出ラミネート物のカールが大きくなるばかりでなく、経済性が低下し好ましくない。
【0019】また、接着性ポリオレフィン層の膜厚は0.020〜0.200mmであり、とりわけ0.030〜0.100mmが好適である。膜厚が0.020mm未満では接着性が不十分であり、0.200mmを超えるとカール性が大きくなり、経済性も低下するため好ましくない。
【0020】本発明で得られる複合シートは特に合成樹脂被覆合板製造に好適に使用される。すなわち、合板製造時に接着剤を介して積層された木板をプレス成形するときに本発明で得られる複合シートを同時にプレス成形すると、一回のプレス成形で、合板が製造されると同時に複合シートが合板に接着され、合成樹脂被覆板が製造できる。
【0021】木板と複合シートの間に使用される接着剤は合板の成形条件で接着機能をもてばよく、特に限定されないが、例えば、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂やポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂が使用でき、特にメラミン−ユリア樹脂、メラミン−フェノール樹脂が好都合である。
【0022】
【実施例】以下、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例及び比較例中の気泡、接着性、ピンホールは以下の要領で評価した。
(1)気泡:合成樹脂被覆合板製造時のプレス解除後の製品につき目視により観察した。サンプル90cm×1.8m中に発泡がないものを○、1個でもあるものを×とした。
(2)接着性:合成樹脂被覆合板製造後、2.5cm×30cmのサンプルを切り出し、この中から10cm幅の一部につき、高密度ポリエチレン層と接着性ポリオレフィン層の間を剥離させ、引張試験機にて、さらに剥離させるのに必要な力を測定した。
(3)ピンホール:気泡観察時に同時に観察した。サンプル90cm×1.8m中に発泡がないものを○、1個でもあるものを×とした。
【0023】実施例1セルロース製不織布(旭化成工業(株)製「ベンリーゼ」WP402)上に、接着性ポリオレフィンとして、密度0.955g/cm3 、メルトフローレート18g/10分、無水マレイン酸含量0.3重量%の接着性ポリエチレン、密度0.952g/cm3 、メルトフローレート6.0g/10分の高密度ポリエチレンを共押出ラミネート成形し、複合シートを得た。
【0024】樹脂温度は320℃、ラミネート成形速度は45m/分で成形し、高密度ポリエチレン層の厚みは0.015mm、接着性ポリエチレン層の厚さは0.085mmであった。成形時のネックインは55cmと良好であった。
【0025】木板にメラミン−ユリア樹脂接着剤を150g/m2 で塗布し、複合シートの不織布面が接着剤面と接触するようにして、室温にて15分間プレス後、加熱プレス機上に設置し、120℃で4分間加圧して高密度ポリエチレン被覆木質合板を得た。加熱プレス時の発泡もなく、ピンホールの発生もみられなかった。得られた高密度ポリエチレン被覆木質合板を乾燥後及び温水に3日間浸漬した後の接着強度を測定したところ、各々剥離不能(1.0kg/10mm以上)であり、温水浸漬後も良好であった。
【0026】実施例2高密度ポリエチレン層の厚さを0.070mm、接着性ポリオレフィン層の厚さを0.030mmとした以外は実施例1と同じ条件で高密度ポリエチレン被覆木質合板を得た。結果は表1に示すように良好であった。
【0027】比較例1不織布なしの高密度ポリエチレン層0.050mm、接着性ポリエチレン層0.050mmの2層フィルムを用いてポリエチレン被覆木質合板を実施例1と同じ条件で作成したが、接着強度は0.1kg/10mm以下と低かった。
【0028】比較例2実施例1において接着性ポリエチレンを用いず、高密度ポリエチレン層0.100mmのポリエチレン被覆木質合板の接着強度は温水浸漬後0.2kg/10mmと低かった。
【0029】比較例3実施例1で用いたセルロース製不織布に密度0.955g/cm3 、メルトフローレート18g/10分、無水マレイン酸含量0.3重量%の接着性ポリエチレン層を0.07mm厚さでラミネート成形した上に、密度0.952g/cm3、メルトフローレート6.0g/10分の高密度ポリエチレン層を0.07mm厚さでラミネート成形して複合シートを得た。このシートを用い、実施例1と同様に高密度ポリエチレン被覆木質合板を作成したが、加熱プレス時に気泡が発生し、温水浸漬後の接着強度も低かった。
【0030】比較例4高密度ポリエチレン層の厚さを0.040mm、接着性ポリオレフィン層の厚さを0.010mmとした以外は実施例1と同様の操作で複合シートを得た。接着強度も低く、ピンホールの発生も見られた。
【0031】
【表1】


【0032】
【発明の効果】合成樹脂被覆板用に好適な、耐水性、耐薬品性、耐腐食性、表面平滑性に優れ、合成樹脂被覆板製造時に気泡、ピンホールの発生がなく、接着強度に優れた複合シートが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 不織布、接着性ポリオレフィン層、高密度ポリエチレン層からなる複合シートであり、高密度ポリエチレン層は密度0.940〜0.970g/cm3 、メルトフローレートが2〜30g/10分であり、接着性ポリオレフィン層の膜厚は0.020〜0.200mm、高密度ポリエチレン層の膜厚は0.005〜0.200mmであり、溶融共押出法で製造された合成樹脂被覆板用複合シート。