説明

複合ジッパー及びジッパー袋

【課題】密閉性を保ちつつ破損の発生を抑制することができる複合ジッパー及びこれを備えるジッパー袋を提供する。
【解決手段】複合ジッパーは、凸型レール20と凹型レール30とを有する密閉ジッパー18と、補助ジッパー19とを備える。凹型レール30は先端が相互に近づくように曲げられた爪部31cが形成されている。凸型レール20は、突起21の先端22tから中程の方向に見て幅が徐々に広がった後に急に狭くなることで、凹型レール30に嵌合されたときに爪部31cに掛かる顎部22jが形成されている。密閉ジッパー18は、補助ジッパー19に隣接する側の方が反対側よりも爪部31cと顎部22jとの係合力が小さく形成されている。ジッパー袋は、袋本体12、13と、複合ジッパーとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合ジッパー及びジッパー袋に関し、特に密閉性を保ちつつ破損の発生を抑制する複合ジッパー及びジッパー袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存等に好適に用いられる袋体として、合成樹脂で形成された袋の開口部にジッパーを設け、開口を繰り返し開閉可能に構成したジッパー袋がある。ジッパー袋に食品を入れて保存する際には、密閉性を確保したいという要請がある。ジッパー袋は、ジッパーのかみ合わせを誤ると開口が閉じられないことになるところ、ジッパーの長手方向に延びるかみ合い得る2つの対向するリブ異形材及び溝異形材の少なくとも一方の異形材の、対向する異形材と接触してかみ合い得る長手方向に延びる部分が、その長さに沿って構造上不連続でありかつそこで2つの異形材がかみ合ったときに対向するジッパー異形材と実質的に組み合わされないが互いに接触しているジッパーを採用することで、ジッパーを閉じるときに振動又は動揺感を有することとして、音及び感触の両方でジッパーが閉じたことを確認することができるジッパー袋がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−58811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のジッパー袋は、ジッパーが閉じたことを音及び感触の両方で確認できるため、ジッパーを閉めたつもりが実際には閉められていないという事態を回避することができる反面、不連続構造の部分が密閉性に劣るおそれがある。密閉性を担保するために、不連続構造を有するジッパーとは別に、密閉性の高いジッパーを並行して設けることが考えられる。しかしながら、密閉性の高いジッパーは、対向する異形材の係合を強固にして容易に開かないように構成されていることが多く、ジッパー袋の両端を摘んで開けようとすると、ジッパーが開く前にジッパー周辺の袋が破損してしまうことがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、密閉性を保ちつつ破損の発生を抑制することができる複合ジッパー及びこれを備えるジッパー袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る複合ジッパーは、例えば図1及び図2に示すように、合成樹脂で形成され、閉じたときに密閉する密閉ジッパー18と;密閉ジッパー18に対して所定の間隔Dを空けて密閉ジッパー18に沿って設けられ、合成樹脂で形成された補助ジッパー19とを備え;密閉ジッパー18が、密閉ジッパー18が延びる方向Eに直交する密閉ジッパー直交断面(例えば図2(A)参照)において突起21として現れる凸型レール20と、密閉ジッパー直交断面において突起21の先端部22を包む溝30gが形成される溝形成部材31として現れる凹型レール30とを有し;凹型レール30は、密閉ジッパー直交断面における溝形成部材31の開口31hに隣接する先端が相互に近づくように曲げられた爪部31cが形成され;凸型レール20は、密閉ジッパー直交断面における突起21の先端22tから中程の方向に見て幅が徐々に広がった後に急に狭くなることで、凹型レール30に嵌合されたときに爪部31cに掛かる顎部22jが形成され;爪部31cと顎部22jとが掛かっているときの爪部31cと顎部22jとの係合力が、密閉ジッパー直交断面において、補助ジッパー19に隣接する側の方が、補助ジッパー19の反対側よりも、小さく形成されている。
【0007】
このように構成すると、密閉ジッパーが、補助ジッパーに隣接する側から開けるときに要する力が比較的小さくなるので損傷を抑制することができ、補助ジッパーの反対側から開けるときに要する力が比較的大きくなるので密閉性が保たれる。さらに、密閉ジッパーに沿って補助ジッパーが設けられているので、補助ジッパーに隣接する側から密閉ジッパーを開く力が意図せずに加わることを防ぐことができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る複合ジッパーは、例えば図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係る複合ジッパーにおいて、補助ジッパー19が、補助ジッパー19が延びる方向Eに直交する補助ジッパー直交断面において突出した突出部41が形成された突出レール40と、補助ジッパー直交断面において突出部41を挟む挟持部51が形成された挟持レール50とを有し;突出レール40及び挟持レール50の少なくとも一方に、補助ジッパー19が延びる方向Eに窪み41dが断続的に形成されている。
【0009】
このように構成すると、補助ジッパーが、密閉ジッパーの損傷防止と密閉性の補助を果たすと同時に複合ジッパーを閉めた感触を指で察知することができる機能を持つ。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る複合ジッパーは、例えば図2に示すように、上記本発明の第2の態様に係る複合ジッパーにおいて、突出レール40が、補助ジッパー直交断面において、密閉ジッパー18に近い内側突部42と、密閉ジッパー18から遠い外側突部43とを含んで構成され;挟持レール50が、補助ジッパー19を閉じたときに、補助ジッパー直交断面において、内側突部42に対して密閉ジッパー18に近い側から接する内側添え部52と、外側突部43に対して密閉ジッパー18から遠い側から接する外側添え部53とを含んで構成されている。
【0011】
このように構成すると、複合ジッパーの嵌合を安定させることができ、嵌合ミスを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る複合ジッパーは、例えば図2に示すように、上記本発明の第3の態様に係る複合ジッパーにおいて、突出レール40が、内側突部42及び外側突部43の先端が互いに離れる方向に曲げられた拡散部42j、43jが形成され;挟持レール50が、内側添え部52及び外側添え部53の先端が互いに近づく方向に曲げられることにより拡散部42j、43jと係合する近接部52c、53cが形成され;内側突部42と内側添え部52との係合力が、外側突部43と外側添え部53との係合力よりも大きく形成されている。
【0013】
このように構成すると、密閉ジッパーの側から補助ジッパーが開いてしまうことを抑制することができ、密閉性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係るジッパー袋は、例えば図1に示すように、物体を出し入れ可能な開口10hが形成された袋本体11と;上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る複合ジッパー15とを備え;密閉ジッパー18よりも補助ジッパー19が袋本体11の開口10hの側に設けられている。
【0015】
このように構成すると、複合ジッパー周辺の損傷を抑制しつつ密閉性が保たれるジッパー袋となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、密閉ジッパーが、補助ジッパーに隣接する側から開けるときに要する力が比較的小さくなるので損傷を抑制することができ、補助ジッパーの反対側から開けるときに要する力が比較的大きくなるので密閉性が保たれ、さらに、密閉ジッパーに沿って補助ジッパーが設けられているので、補助ジッパーに隣接する側から密閉ジッパーを開く力が意図せずに加わることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るジッパー袋の斜視図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態に係るジッパー袋の部分断面図、(B)は本発明の実施の形態に係る複合ジッパーを構成する凸型レール及び突出レールの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係る複合ジッパー15及びジッパー袋10を説明する。図1は、ジッパー袋10の斜視図である。図2(A)はジッパー袋10の部分断面図、図2(B)は複合ジッパー15を構成する凸型レール20及び突出レール40の部分平面図である。ジッパー袋10は、袋本体11と、複合ジッパー15とを備えている。
【0020】
袋本体11は、合成樹脂で形成された1枚の長方形状のシートを、長手方向の中央で折り返し、対向するシートの、折り返し辺10tに直交する2つの側辺10sで溶着することによって袋状に形成されている。この折り返したシートの、一方が袋表面12(一方の面)となり、残った方が袋裏面13(他方の面)となる。袋本体11を形成する合成樹脂には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂成形体を用いることができ、これらを用いることで気密性を備えることができる。袋本体11は、折り返し辺10tの反対側が、開口10hとなっている。袋本体11には、開口10hを横断するように、換言すれば開口10hを周回するように、複合ジッパー15が開口10hの付近に設けられている。
【0021】
複合ジッパー15は、スライダーがなく、人の手で着脱する線ファスナーである。複合ジッパー15は、密閉ジッパー18と、補助ジッパーとしてのクリックジッパー19とを備えている。密閉ジッパー18とクリックジッパー19とは、平行に延びるように袋本体11に設けられており、密閉ジッパー18が折り返し辺10t側に、クリックジッパー19が開口10h側に、配置されている。密閉ジッパー18及びクリックジッパー19は、共に可撓性のある合成樹脂で形成されている。密閉ジッパー18は、凸型レール20と、凹型レール30とを有している。クリックジッパー19は、突出レール40と、挟持レール50とを有している。凸型レール20及び突出レール40は、袋表面12に取り付けられている。凹型レール30及び挟持レール50は、袋裏面13に取り付けられている。本実施の形態では、凸型レール20及び突出レール40は、半透明の材質で形成されていると共に青色に着色されており、凹型レール30及び挟持レール50は、黄色に着色されている。
【0022】
図2(A)の部分断面図は、密閉ジッパー18が延びる方向に直交する断面、すなわち密閉ジッパー直交断面を示している。本実施の形態では、クリックジッパー19は密閉ジッパー18と平行に延びているので、クリックジッパー19が延びる方向は密閉ジッパー18が延びる方向と同じになり、密閉ジッパー直交断面はクリックジッパー直交断面(補助ジッパー直交断面)をも表していることになる。以下、密閉ジッパー18が延びる方向及びクリックジッパー19が延びる方向を単にジッパー延方向Eといい、密閉ジッパー直交断面及びクリックジッパー直交断面を単にジッパー直交断面ということとする。なお、以下のジッパー直交断面における説明においては、便宜上、袋表面12及び袋裏面13を上下に配置したときの高さH方向における袋表面12側を下(あるいは下方)、袋裏面13側を上(あるいは上方)といい、幅W方向における折り返し辺10t(図1参照)側を内側(内部側)、開口10h側(端部側)を外側ということとする。
【0023】
まず、ジッパー直交断面における密閉ジッパー18の構成を説明する。ジッパー直交断面において、凸型レール20は、先端部としての傘部22と、柄部23とを有し、キノコ状の輪郭を呈する突起21として現れている。柄部23は、概ね同じ幅で上下に延びており、一端が袋表面12に固着している。傘部22は、柄部23の上端に接続されている。傘部22は、上端22tから下方に向かって徐々に広がり、下面は柄部23に向かってやや上り勾配が形成されている。傘部22の底面の柄部23に接続するまでの部分に、顎部22jが形成されている。顎部22jは、外側(クリックジッパー19側)の顎部22jAが、内側(クリックジッパー19とは反対側)の顎部22jBよりも、張り出しが小さく形成されている。本実施の形態では、突起21の高さが概ね0.1〜0.5mmであり、傘部22の高さは概ね突起21の高さの半分程度に形成されている。
【0024】
凹型レール30は、ジッパー直交断面において、溝30gが形成される溝形成部材としてのU字部材31として現れている。溝30gは、凸型レール20の突起21の傘部22を受け入れることができるように形成されている。U字部材31は、図2(A)ではU字溝状の部材が逆さまの状態で配設されているため、突起21を受け入れるためのU字開口31hが下端に形成されている。U字部材31は、U字開口31hと対向する端部が、袋裏面13に固着している。U字開口31hの両脇に位置するU字部材31の下端は、相互に近づくように曲げられることにより、爪部31cが形成されている。U字部材31は、溝30gに対して突起21を所定の力で出し入れする際に弾性変形する弾性率を持つ材料で形成されている。爪部31cは、突起21の傘部22が溝30gに収容されたときに、顎部22jと係合するように構成されている。本実施の形態では、両端の爪部31cは、同じ大きさ(長さ)に形成されている。U字部材31の高さは、突起21の高さと同程度に形成されている。
【0025】
次に、ジッパー直交断面におけるクリックジッパー19の構成を説明する。クリックジッパー19は、密閉ジッパー18に対して外側に所定の間隔を空けて設けられている。所定の間隔に相当する密閉ジッパー18とクリックジッパー19との距離Dは、生産性の観点、及び複合ジッパー15を閉じるときに親指と人差し指とで挟んで密閉ジッパー18及びクリックジッパー19を同時に閉じることができるようにする観点から、好ましくは3〜10mm、より好ましくは4〜8mmとするとよく、本実施の形態では6mmとしている。
【0026】
突出レール40は、ジッパー直交断面において、袋表面12から上方へ突出する突出部41が形成されている。突出部41は、本実施の形態では、内側に設けられた内側突部42と、外側に設けられた外側突部43とを有している。内側突部42と外側突部43とは、幅W方向に離れている。内側突部42の上端は、内側に曲げられることにより、内側顎部42jが形成されている。外側突部43の上端は、外側に曲げられることにより、外側顎部43jが形成されている。内側顎部42j及び外側顎部43jは、互いに離れる方向に延びており、拡散部を構成する。本実施の形態では、内側顎部42jが外側顎部43jよりも張り出しが大きく形成されている。内側突部42の上端には、内側窪み42dが形成されている。外側突部43の上端には、外側窪み43dが形成されている。内側窪み42d及び外側窪み43dを総称して、窪み41dということとする。窪み41dの構成の詳細は後述する。突出部41は、窪み41dが形成されている側とは反対側の端部で、袋表面12に固着している。突出部41の高さは、突起21の高さと同程度に形成されている。
【0027】
挟持レール50は、ジッパー直交断面において、クリックジッパー19を閉じたときに突出部41を挟む挟持部51が形成されている。挟持部51は、袋裏面13から下方へ延びている。挟持部51は、本実施の形態では、内側に設けられた内側添え部52と、外側に設けられた外側添え部53とを有している。内側添え部52及び外側添え部53は、突出部41が挟持部51に嵌ったときに、内側添え部52が内側から内側突部42に接し、外側添え部53が外側から外側突部43に接するように、内側突部42と外側突部43との間隔よりも広い間隔を持って幅W方向に離れている。内側添え部52の下端は、外側に曲げられることにより、内側爪部52cが形成されている。外側添え部53の下端は、内側に曲げられることにより、外側爪部53cが形成されている。内側爪部52c及び外側爪部53cは、互いに近づく方向に延びており、近接部を構成する。内側爪部52c及び外側爪部53cは、突出部41を挟持部51に嵌めるときに、内側爪部52cは内側突部42に接触し、外側爪部53cは外側突部43に接触するように形成されている。本実施の形態では、内側爪部52cが外側爪部53cよりも張り出しが大きく形成されている。挟持部51は、内側爪部52c及び外側爪部53cが形成されている側とは反対側の端部で、袋裏面13に固着している。挟持部51の高さは、突出部41の高さと同程度に形成されている。
【0028】
次に図2(B)を主に参照し、図2(A)及び図1も適宜参照して、ジッパー延方向Eにおける突出レール40の構成を説明する。ジッパー延方向Eにおいて、突出レール40には、窪み41dが断続的に形成されている。窪み41dは、突出レール40の上端から下方に向かって形成されている(図2(A)参照)。窪み41dの深さ(高さH方向の距離)は、突出部41の上端から内側顎部42j及び外側顎部43jまでの距離の、概ね1/3〜2/3程度で、本実施の形態では1/2になっている。窪み41dの長さである窪み長さ41dL(ジッパー延方向Eの距離)は、適宜決定することができるが、複合ジッパー15を閉じたときの突出レール40と挟持レール50との係合力を維持する観点から、1mm以下とするとよく、0.3〜0.9mmがより好ましく、本実施の形態では0.7mmとなっている。また、本実施の形態では、ジッパー延方向Eにおいて、窪み41dが、内側窪み42d及び外側窪み43dが同期して、等間隔で形成されている。隣接する窪み41dの間の距離は、ジッパー15を閉じたときの指が察知する感触を小刻みにする観点からは、窪み長さ41dLの1倍〜3倍程度とするのが好ましい(1.5倍や2倍を含む)。本実施の形態では2.5mmとなっている。また、本実施の形態では、突出レール40以外の凸型レール20、凹型レール30、挟持レール50は、突出レール40における窪み41dのような不連続構造が形成されておらず、円滑に形成されている。凸型レール20及び凹型レール30が円滑に形成されていることで、密閉ジッパー18は、閉じたときに水を通さない程度に密着するように構成されている。
【0029】
上述のように構成されたジッパー袋10において、複合ジッパー15を閉める際は、最初に複合ジッパー15の端(袋本体11の一方の側辺10s付近)で凸型レール20と凹型レール30及び突出レール40と挟持レール50とをそれぞれ指先で挟み込むように摘んで嵌合させ、次いで、指先を摘んだままジッパー延方向Eに摺動させる。これにより、指先の動きに沿って、凸型レール20と凹型レール30及び突出レール40と挟持レール50とが順次嵌合することとなる。このとき、突出レール40に窪み41dが所定の間隔で形成されているので、指先を摺動させたときにプチプチという感覚(微小な振動)が指先に伝わり、複合ジッパー15が閉じられていることを実感することができる。仮に、突出レール40と挟持レール50とが嵌合していないときは、このプチプチ感を実感することができない。プチプチ感は、その有無を感じられれば足りるため、本実施の形態では窪み41dの深さを比較的浅く形成している。突出レール40と挟持レール50とが嵌合すると、これらに平行に配置された凸型レール20と凹型レール30とも嵌合することとなる。また、複合ジッパー15は、凸型レール20及び突出レール40が青色の半透明に、凹型レール30及び挟持レール50が黄色に形成されているので、嵌合したときに、凹型レール30及び挟持レール50の黄色が凸型レール20及び突出レール40の青色に映り込んで、凸型レール20及び突出レール40が緑色に見える。この色の変化によって、複合ジッパー15が閉じたことが視覚でも把握することができることとなり、指先のプチプチ感と併せて、複合ジッパー15が閉じたことを2つの感覚で確認することができる。
【0030】
突出レール40に窪み41dが形成されていることで、閉じられたクリックジッパー19に隙間が形成されることになるが、クリックジッパー19の内側に密閉ジッパー18が設けられているため、複合ジッパー15全体としては密閉性を確保することができ、袋本体11に液体状のものを入れることにも適している。また、ジッパー袋10は、密閉ジッパー18が、外側の顎部22jAよりも内側の顎部22jBの方が張り出しが大きいため、密閉ジッパー18の係合力(開きにくさ)は、外側よりも内側の方が大きい。加えて、クリックジッパー19は、内側顎部42jが外側顎部43jよりも張り出しが大きく、内側爪部52cが外側爪部53cよりも張り出しが大きく形成されているので、密閉ジッパー18の側からクリックジッパー19が開いてしまうことを抑制することができ、密閉性を向上させることができる。この点を考慮することによっても、ジッパー袋10は、袋本体11に液体状のものを入れても、優れた密閉性を発揮して漏れにくい。
【0031】
他方、ジッパー袋10において複合ジッパー15を開ける際は、開口10h側の袋表面12及び袋裏面13の端部をそれぞれ摘み、各端部を互いに離間させる方向に動かすことで、まず、クリックジッパー19の係合が外れ、次いで密閉ジッパー18の係合が外れることとなる。このとき、密閉ジッパー18の外側の顎部22jAの方が内側の顎部22jBよりも張り出しが小さいため、外側から開けるときは内側から開くときよりも小さな力で開けることができる。仮に、密閉ジッパー18の外側の係合力が大きすぎる場合は、開ける際に大きな力が必要となり、密閉ジッパー18が開くよりも先に袋本体11(特に密閉ジッパー18の接続部まわりの袋本体11)が破損することも起こりうる。ジッパー袋10では、密閉ジッパー18の外側の方が内側よりも顎部22jの張り出しが小さく係合力が小さいので、上述のように密閉性を保ちながら、開けるときの袋本体11の損傷を抑制することができる。さらに、ジッパー袋10は、密閉ジッパー18の外側にクリックジッパー19が設けられているので、密閉ジッパー18の外側の係合力を比較的小さく構成しても、密閉ジッパー18が外側から意図せずに開いてしまうことを防ぐことができる。密閉ジッパー18が外側から意図せずに開いてしまうことをより確実に防止するためには、クリックジッパー19の外側の係合力を、密閉ジッパー18の外側の係合力よりも大きくするとよい。このように構成することで、仮にクリックジッパー19まわりの袋本体11が破損してしまった場合でも、密閉ジッパー18まわりの袋本体11の破損は免れるので、密閉性を維持することができる。係合力は、係合する2つの部材の接触する距離(長さ)によって調節することができ、接触距離が長いと係合力が大きく、短いと係合力が小さくなる。また、ジッパー袋10は、クリックジッパー19が、密閉ジッパー18が外側から意図せずに開いてしまうことを防ぐ機能と、複合ジッパー15が適切に閉じたことを指で察知する機能とを兼ねるので、この両者の機能を持つジッパーを別々に設ける必要がなく、有効容量の減少を抑制することができる。
【0032】
上述のように構成されたジッパー袋10を製造するには、まず、袋本体11並びに密閉ジッパー18及びクリックジッパー19の原料である合成樹脂原料を押出機に投入して溶融する。押出機の吐出部には、サーキュラーダイ及びジッパー用ダイが設けられている。溶融した合成樹脂原料は、サーキュラーダイにより、袋本体11となる合成樹脂シートが円筒状で押し出される(シート押出成形工程)。さらに、溶融した合成樹脂原料は、ジッパー用ダイにより、複合ジッパー15となる合成樹脂材であるジッパー樹脂が、着色されたうえで押し出され、円筒状で押し出された合成樹脂シートに、その長手方向に沿って接合される(ジッパー接合工程)。合成樹脂シートにジッパー樹脂が接合されたら、突出レール40となる部分のジッパー樹脂に窪み形成ローラーを押し当てて、突出部41に相当する部分に窪み41dを断続的に形成する(窪み形成工程)。窪み形成ローラーは、円筒状の側面に、窪み41dに対応する突起が形成されたローラーである。ジッパー樹脂が接合された合成樹脂シートは、窪み形成ローラーの下流側に設けられたピンチローラーにより上向きに引っ張られながら円筒が押しつぶされる(ピンチ工程)。
【0033】
ピンチローラーでピンチされた(引っ張られながら円筒がつぶされた)合成樹脂シートは、歪みが取り除かれ、ピンチローラーの下流側で、フラット状に折り畳まれた状態で、ジッパー樹脂より外側で、円筒状の長手方向に沿った切断が行われる(切断工程)。さらに、ジッパー袋10の大きさに溶断され、シールされる(溶断シール工程)。ここで溶断される間隔は、ジッパー袋10の両側辺10s(図1参照)の間隔である。また、溶断されたジッパー袋10の両側辺10sに対応する部分は、溶断に伴う熱溶着によりシールされる。これらの切断工程及び溶断シール工程により、開口10hが形成され、ジッパー袋10となる。両側辺10sがシールされたジッパー袋10は、その下流側の工程で、両側辺10sのシール部分及び複合ジッパー15部分のチェックが行われたうえで、出荷用に梱包される。なお、切断工程と溶断シール工程とは、同時に行われてもよく、溶断シール工程が切断工程よりも先に行われてもよい。
【0034】
以上の説明では、凸型レール20を構成する突起21の外側の顎部22jAが内側の顎部22jよりも張り出しが小さく形成されていることで、凹型レール30との係合力は外側の方が小さくなるように構成されていることとしたが、この構成に代えて、又はこの構成と共に、凹型レール30の爪部31cを内側よりも外側の方を小さく形成することにより、凸型レール20と凹型レール30との係合力が内側よりも外側の方が小さくなるように構成されていてもよい。
【0035】
以上の説明では、突出レール40が、ジッパー直交断面において内側突部42及び外側突部43の2つの突部を有しているとしたが、1つの突部で構成されていてもよい。このとき、内側突部42と外側突部43とを近づけて接触させて一体にした輪郭に形成されることとするとよい。
【0036】
以上の説明では、内側顎部42jが外側顎部43jよりも張り出しが大きく形成されていると共に、内側爪部52cが外側爪部53cよりも張り出しが大きく形成されていることとしたが、内側顎部42j及び外側顎部43jの双方の張り出しが同じ大きさに形成され、及び/又は、内側爪部52c及び外側爪部53cの双方の張り出しが同じ大きさに形成されていてもよい。
【0037】
以上の説明では、内側突部42及び外側突部43の両方に窪み41dが形成されているとしたが、どちらか一方に形成されることとしてもよい。また、突出部41に窪み41dが断続的に形成されているとしたが、挟持部51に窪みが形成されていてもよい。このとき、窪みは、内側添え部52及び外側添え部53の両方に形成されることとしてもよく、どちらか一方に形成されることとしてもよい。
【0038】
以上の説明では、凸型レール20及び突出レール40が袋表面12に、凹型レール30及び挟持レール50が袋裏面13に、それぞれ固着していることとしたが、凸型レール20と挟持レール50とが袋表面12に固着すると共に、凹型レール30と突出レール40とが袋裏面13に固着することとしてもよい。
【0039】
以上の説明では、凸型レール20及び突出レール40が半透明であり、凹型レール30及び挟持レール50は半透明ではないとしたが、凸型レール20及び凹型レール30のどちらか一方並びに突出レール40及び挟持レール50のどちらか一方、すなわち嵌合するレールのうちの一方が半透明ではなく他方が半透明であることとしてもよく、これら4つのレール20、30、40、50のすべてが半透明であってもよい。また、凸型レール20及び突出レール40が青色で凹型レール30及び挟持レール50が黄色であるとしたが、凸型レール20及び凹型レール30の色、及び/又は、突出レール40及び挟持レール50の色を相互に入れ替えてもよく、あるいは、それぞれ又はどちらか一方を異なる色としてもよい(青色及び黄色以外の色の組み合わせでもよい)。つまり、互いに嵌合するレールが嵌合したときとしないときとで色の違いが視認できる色の組み合わせを適宜選択してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 ジッパー袋
10h 開口
11 袋本体
15 複合ジッパー
18 密閉ジッパー
19 クリックジッパー
20 凸型レール
21 突起
22 傘部
22j 顎部
22t 先端
30 凹型レール
30g 溝
31 U字部材
31c 爪部
31h U字開口
40 突出レール
41 突出部
41d 窪み
42 内側突部
42j 内側顎部
43 外側突部
43j 外側顎部
50 挟持レール
51 挟持部
52 内側添え部
52c 内側爪部
53 外側添え部
53c 外側爪部
E ジッパー延方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で形成され、閉じたときに密閉する密閉ジッパーと;
前記密閉ジッパーに対して所定の間隔を空けて前記密閉ジッパーに沿って設けられ、合成樹脂で形成された補助ジッパーとを備え;
前記密閉ジッパーが、前記密閉ジッパーが延びる方向に直交する密閉ジッパー直交断面において突起として現れる凸型レールと、前記密閉ジッパーを閉じたときに前記密閉ジッパー直交断面において前記突起の先端部を包む溝が形成される溝形成部材として現れる凹型レールとを有し;
前記凹型レールは、前記密閉ジッパー直交断面における前記溝形成部材の開口に隣接する先端が相互に近づくように曲げられた爪部が形成され;
前記凸型レールは、前記密閉ジッパー直交断面における前記突起の先端から中程の方向に見て幅が徐々に広がった後に急に狭くなることで、前記凹型レールに嵌合されたときに前記爪部に掛かる顎部が形成され;
前記爪部と前記顎部とが掛かっているときの前記爪部と前記顎部との係合力が、前記密閉ジッパー直交断面において、前記補助ジッパーに隣接する側の方が、前記補助ジッパーの反対側よりも、小さく形成された;
複合ジッパー。
【請求項2】
前記補助ジッパーが、前記補助ジッパーが延びる方向に直交する補助ジッパー直交断面において突出した突出部が形成された突出レールと、前記補助ジッパー直交断面において前記突出部を挟む挟持部が形成された挟持レールとを有し;
前記突出レール及び前記挟持レールの少なくとも一方に、前記補助ジッパーが延びる方向に窪みが断続的に形成された;
請求項1に記載の複合ジッパー。
【請求項3】
前記突出レールが、前記補助ジッパー直交断面において、前記密閉ジッパーに近い内側突部と、前記密閉ジッパーから遠い外側突部とを含んで構成され;
前記挟持レールが、前記補助ジッパーを閉じたときに、前記補助ジッパー直交断面において、前記内側突部に対して前記密閉ジッパーに近い側から接する内側添え部と、前記外側突部に対して前記密閉ジッパーから遠い側から接する外側添え部とを含んで構成された;
請求項2に記載の複合ジッパー。
【請求項4】
前記突出レールが、前記内側突部及び前記外側突部の先端が互いに離れる方向に曲げられた拡散部が形成され;
前記挟持レールが、前記内側添え部及び前記外側添え部の先端が互いに近づく方向に曲げられることにより前記拡散部と係合する近接部が形成され;
前記内側突部と前記内側添え部との係合力が、前記外側突部と前記外側添え部との係合力よりも大きく形成された;
請求項3に記載の複合ジッパー。
【請求項5】
物体を出し入れ可能な開口が形成された袋本体と;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合ジッパーとを備え;
前記密閉ジッパーよりも前記補助ジッパーが前記袋本体の前記開口の側に設けられた;
ジッパー袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56678(P2013−56678A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195357(P2011−195357)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】