説明

複合ナノ粒子及び複合ナノ粒子の製造方法

【課題】 粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子からなる複合ナノ粒子を効率良く製造することができる複合ナノ粒子の製造方法及び複合ナノ粒子の提供。
【解決手段】 扇状樹状分岐分子に、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包させて複合ナノ粒子を形成する複合ナノ粒子形成工程を含むことを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法である。該染料分子と、扇状樹状分岐分子とを化学結合させる態様、該染料分子と、扇状樹状分岐分子とを静電的相互作用により結合させる態様、該染料分子をファンデルワールス力により扇状分岐分子内に内包させる態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子からなる複合ナノ粒子を効率良く製造することができる複合ナノ粒子の製造方法及び複合ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、無機化合物、有機化合物等からなる、500nm以下の大きさの粒子を意味し、化粧品、芳香・消臭剤、調味料、インクジェット材料、記録材料、触媒などへの応用が期待されている材料である。例えば、ナノ粒子の大きな比表面積を利用して、少量で活性の高い触媒への応用が期待されている。また、ナノ粒子の有する大きな光波長を利用したり、ナノ粒子が導体の平均自由工程及び磁性体の磁区より小さい粒子サイズであることを利用して、バルクと異なる量子効果等の機能の発現が期待されている。
【0003】
前記ナノ粒子の機能の発現には、粒径制御及び組成の制御が重要であり、特に、量子効果の発現にはシャープな粒径及び組成の制御が必須である。また、実用化にはナノ粒子を安定に製造する方法が求められている。更に、実際の材料化にはナノ粒子の安定化、分散化、粒子の膜化、バルク化及びハンドリング、等の課題がある。また、形態・界面を制御した中でナノ粒子を安定に製造する方法が求められている。
【0004】
前記ナノ粒子の調製方法としては、例えば、蒸発凝集法、気相反応法を含む気相法、化学沈殿法、溶媒蒸発法を含む液相法などが挙げられる。これらの方法の詳細については、非特許文献1〜4などに記載されている。
【0005】
しかし、前記ナノ粒子の調製方法では、シャープな粒径及び組成の制御が充分ではない。また、粒子の組成を任意に調節することが困難である。即ち、表面の組成のみに依存する触媒機能の発現を期待する粒子においても、粒子全体を表面と同じ組成とする必要がある。
【0006】
一方、樹状分岐ポリマーは、その金属配位数が分子間で完全に均一であり、樹状分岐ポリマー分子毎に配位した金属を固体化してナノ粒子を調製すれば、シャープな粒径及び組成の制御が期待できる。また、内部に金属配位能を有する樹状分岐ポリマーを利用したナノサイズの金属クラスターについては、特許文献1、非特許文献5〜6などに記載されている。
【0007】
しかし、樹状分岐ポリマーを用いた粒子の調製方法では、金属の配位数より多い数の金属原子を含む粒子を制御して調製できないという応用上重大な問題がある。即ち、樹状分岐ポリマーの金属の配位数は実質5000個未満であり、金属原子を5000個以上含有する粒子サイズ5.0nm以上の粒子を調製することは困難である。
【0008】
このため、前記樹状分岐ポリマーの金属の配位数を増やして粒子サイズを大きくするには樹状分岐ポリマーの世代数を増やす必要がある。しかし、樹状分岐ポリマーの世代数を増やすには反応ステップを増やさなければならず、合成が格段に困難となる。また、樹状分岐ポリマーの世代数を増やすことにより樹状分岐ポリマー分子の表面における原子の密度が増加し、分子構造上の限界がある。更に、粒子表面に内部と組成の異なる機能性が付与されたコアシェル構造を有するナノ粒子を調製することによって粒子の機能化、粒子の安定性向上などを図ることは困難であった。
【0009】
【特許文献1】特表2001−508484号公報
【非特許文献1】小山正明;「ニューセラミックス」、第8巻、第79頁(1990年)
【非特許文献2】菊川伸行;「セラミックス」、第34巻、第110頁(1999年)
【非特許文献3】鈴木久男;「セラミックス」、第34巻、第76頁(1999年)
【非特許文献4】小泉光恵ら編集「ナノマテリアルの最新技術」(シーエムシー発行)
【非特許文献5】D.A.Tomalia et al;J.Am.Chem.Soc.,120巻、第7355頁(1998年)
【非特許文献6】R.M.Crooks et al;Acc.Chem.Res.,34巻、第181頁(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子からなり、粒子サイズ及び組成が制御された実質的に単分散の複合ナノ粒子を効率良く製造する方法及び複合ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 扇状樹状分岐分子に、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包させて複合ナノ粒子を形成する複合ナノ粒子形成工程を含むことを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法である。
<2> 扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを同時に混合する前記<1>に記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<3> 扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを略等量で混合する前記<1>から<2>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<4> 扇状樹状分岐分子を含む液、及び粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液を加熱しながら混合する前記<1>から<3>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<5> 染料分子と、扇状樹状分岐分子とを化学結合させる前記<1>から<4>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<6> 染料分子と、扇状樹状分岐分子とを静電的相互作用により結合させる前記<1>から<5>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<7> 染料分子をファンデルワールス力により扇状分岐分子内に内包させる前記<1>から<5>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<8> 染料分子が、水溶性染料、油溶性染料、ジアゾニウム化合物、ロイコ色素、及び蛍光物質から選択される少なくとも1種である前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<9> 粒子前駆体と、錯体形成可能なサイト及び静電引力により粒子前駆体が結合可能なサイトの少なくともいずれかを有する扇状樹状分岐分子とを反応させる前記<1>から<4>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<10> 粒子前駆体が、金属イオンである前記<1>から<4>及び<9>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<11> 金属イオンが、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素及び6B族元素から選ばれる少なくとも1種である前記<10>に記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<12> 粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子のサイトが、フォーカルサイトである前記<1>から<11>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<13> 扇状樹状分岐分子が、デンドロンである前記<1>から<12>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<14> 扇状樹状分岐分子が、ベンゼン環を含む前記<1>から<13>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<15> 扇状樹状分岐分子の世代数が、第1世代以上である前記<1>から<14>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法である。
<16> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法で製造されることを特徴とする複合ナノ粒子である。
<17> 複合ナノ粒子の大きさが0.1nm〜500nmである前記<16>に記載の複合ナノ粒子である。
<18> 扇状樹状分岐分子と染料分子とが静電的相互作用により結合してなり、インクジェット記録用着色剤として用いられる前記<16>から<17>のいずれかに記載の複合ナノ粒子である。
<19> 染料分子が扇状樹状分岐分子にファンデルワールス力により内包されてなり、感熱記録材料として用いられる前記<16>から<17>のいずれかに記載の複合ナノ粒子である。
<20> 粒子表面に粒子を介して扇状樹状分岐分子が存在する複合ナノ粒子である前記<16>から<19>のいずれかに記載の複合ナノ粒子である。
【0012】
本発明の複合ナノ粒子の製造方法は、扇状樹状分岐分子に、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包させて複合ナノ粒子を形成する複合ナノ粒子形成工程を含む。その結果、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子からなり、粒子サイズ及び組成が制御された実質的に単分散の複合ナノ粒子を効率良く製造することができる。
【0013】
本発明の複合ナノ粒子は、本発明の複合ナノ粒子の製造方法により製造され、インクジェット記録用着色剤、感熱記録材料として好適であり、粒子サイズ及び組成を任意に調節可能な単分散のナノ粒子が得られ、金属、半導体結晶粒子、金属カルコゲナイド、金属ハロゲン化合物のナノ粒子を利用するあらゆる応用分野で利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子からなり、粒子サイズ及び組成が制御された実質的に単分散の複合ナノ粒子を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(複合ナノ粒子の製造方法)
本発明の複合ナノ粒子の製造方法は、複合ナノ粒子形成工程を含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0016】
<複合ナノ粒子形成工程>
前記複合ナノ粒子形成工程は、扇状樹状分岐分子に、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包させて複合ナノ粒子を形成する工程である。
ここで、前記結合の種類としては、化学結合、静電的相互作用による結合などが挙げられ、該化学結合としては、配位結合、イオン結合、共有結合、などが挙げられる。
【0017】
前記複合ナノ粒子形成工程としては、(1)染料分子と、扇状樹状分岐分子とを化学結合させる態様、(2)染料分子と、扇状樹状分岐分子とを静電的相互作用により結合させる態様、(3)染料分子をファンデルワールス力により扇状樹状分岐分子内に内包させる態様、(4)粒子前駆体が金属イオンであり、該金属イオンと、錯体形成可能なサイト及び静電引力により金属イオンが結合可能なサイトのいずれかを有する扇状樹状分岐分子とを反応させる態様のいずれかが好適である。
【0018】
−扇状樹状分岐分子−
前記扇状樹状分岐分子とは、フォーカルサイト(フォーカルポイントということもある)の数が一定であり、好ましくは単分散であり、フォーカルサイトに分岐のない置換基を残しながら他は規則的に逐次分岐された扇状の樹状分岐分子を意味する。
【0019】
前記扇状樹状分岐分子としては、樹状分岐構造を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、デンドロンが特に好適である。前記扇状樹状分岐分子の世代数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、第1世代〜第10世代が好ましい。
【0020】
前記扇状樹状分岐分子としては、具体的には、以下のデンドロン(1)から(4)に示すものが好適に用いられ、更に、これらの中でも、粒径が均一で、かつ小さい、単分散状態の複合ナノ粒子を製造するためには、フォーカルサイトにメルカプト基を有する扇状樹状分岐分子、即ち、前記デンドロン(1)及び(3)のデンドロンが好ましい。この場合には、1個の前記粒子前駆体を、複数のフォーカルサイトのメルカプト基が捕捉するため、得られる複合ナノ粒子は逆ミセルとなり、樹脂等に対する分散性にも優れる。更に、自己集積性により容易に配列化することができ、シャープな粒度分布となる。
【0021】
−デンドロン(1)−
【化1】

【0022】
−デンドロン(2)−
【化2】

【0023】
−デンドロン(3)−
【化3】

【0024】
−デンドロン(4)−
【化4】

【0025】
前記扇状樹状分岐分子を合成する方法としては、例えば、前記デンドロン(1)を合成する場合には、3,5−ビス〔3,5−ビス(ベンジロキシ)ベンジロキシ〕ベンジルブロミドと、チオウレアと、極性溶剤とを混合攪拌し、更に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、希塩酸等でpHを2〜3に調整した後、酢酸エチルで抽出する方法などが挙げられる。
なお、前記デンドロンは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0026】
前記扇状樹状分岐分子におけるフォーカルサイトの位置としては、前記扇状樹状分岐分子の分岐鎖中に存在していてもよい。
前記フォーカルサイトとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記粒子前駆体を結合可能な官能基及び粒子前駆体を静電的に相互作用可能な官能基のいずれかが好ましい。
前記粒子前駆体を結合可能な官能基における結合の種類としては、配位結合、化学結合、イオン結合、共有結合、などが挙げられる。
前記粒子前駆体が金属イオンである場合において、該金属イオンを配位結合可能な官能基としては、例えば、NH、RNH、N、HO、OH、O−2、ROH、RO、RO、MeCOO、CO−2、NO、F、PhNH、CN、N、NO、SO−2、Br、H、R、C、C、CN、RNC、CO,SCN、RP、(RO)P、RAs、RS、RSH、RS、S−2、I、などが挙げられる。
前記粒子前駆体が金属イオンである場合において、該金属イオンを静電的に相互作用可能な官能基としては、例えば、4級アンモニウム塩、COO、PO3−、SO2−等が挙げられる。
【0027】
前記扇状樹状分岐分子にはフォーカルサイト以外の、前記粒子前駆体と相互作用する部位を有しないのが好ましい。即ち、前記デンドロン(1)〜(4)のように内部に粒子前駆体のフォーカルサイトを有し、表面には前記粒子前駆体と相互作用する部位を有しないものについてはそのままでも支障はないが、前記フォーカルサイト以外にも多数の前記粒子前駆体と相互作用する部位を有するものは、前記フォーカルサイト以外の粒子前駆体と相互作用する部位に対して、相互作用能力(粒子前駆体が金属イオンの場合には、配位能力)の小さい置換基を導入して、前記フォーカルサイト以外の粒子前駆体と相互作用する部位を有さなくすることが好ましい。即ち、扇状樹状分岐分子におけるフォーカルサイトと、粒子前駆体との相互作用力の方が、該扇状樹状分岐分子における該フォーカルサイト以外の部位と、粒子前駆体との相互作用力よりも大きいことが好ましい。また、前記相互作用能力の小さい置換基は扇状樹状分岐分子の表面領域より大きいものが好ましい。例えば、扇状樹状分岐分子の分岐の先端を水素原子を含むアミノ基とし、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルスルホン、フェニルビニルスルホン、等と反応させて、相互作用力の小さい置換基を導入する。
前記配位能力の小さい置換基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、置換又は無置換のアルキル基、などが挙げられる。
【0028】
なお、前記扇状樹状分岐分子の表面にフェニル基、ベンジル基のようなベンゼン環を有する硬い置換基を導入した場合には、扇状樹状分岐分子及び粒子含有扇状樹状分岐分子の耐熱性、剛直性、及び光捕集能が高くなり、このような性能を必要とする用途に好適に用いることができる。
【0029】
<粒子前駆体>
前記粒子前駆体としては、例えば、金属イオン、半導体結晶の前駆体、等が挙げられる。
前記金属イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素及び6B族元素から選ばれるものが好ましい。これらの中でも、Ti、Fe、Co、Ni、Zr、Mo、Ru、Rh、Ag、Cd、Sn、Ir、Pt、Au、Pb、Biなどが好適であり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用して使用してもよい。
【0030】
前記粒子前駆体の添加量としては、前記扇状樹状分岐分子が分子鎖中にフォーカルサイトを有する場合には、添加する粒子前駆体の数が、前記扇状樹状分岐分子のフォーカルサイトの数以下であることが好ましい。これにより、扇状樹状分岐分子に捕捉されていない過剰の粒子前駆体を除去する操作なしに、効率よく粒子を形成することができる。
また、添加する粒子前駆体の数が、前記扇状樹状分岐分子のフォーカルサイトの数を超えるときには、扇状樹状分岐分子のフォーカルサイトに捕捉されていない過剰の粒子前駆体を取り除いた後、該フォーカルサイトに捕捉された前記粒子前駆体を粒子に変換することが好ましい。この場合には、前記フォーカルサイト分の粒子からなる種粒子を形成させることができ、粒子サイズ及び組成の実質的に均一な粒子を形成することができる点で好ましい。なお、添加する粒子前駆体の数が、前記扇状樹状分岐分子のフォーカルサイトの数と等量の場合にも粒子サイズ及び組成の実質的に均一な粒子を形成することができる点で好ましい。
【0031】
前記扇状樹状分岐分子のフォーカルサイトのすべてに粒子前駆体を捕捉させる手段としては、扇状樹状分岐分子が分岐中にフォーカルサイトを有する場合には、(1)扇状樹状分岐分子におけるフォーカルサイトと等量の粒子前駆体を添加する方法、(2)扇状樹状分岐分子におけるフォーカルサイトより過剰の粒子前駆体を加え、過剰の粒子前駆体を除去(例えば、透析)する方法、などが挙げられる。
【0032】
なお、前記粒子前駆体1個を、前記フォーカルサイト1個が捕捉する態様だけでなく、前記粒子前駆体1個を、2個以上の前記フォーカルサイトが捕捉する態様であってもよい。
【0033】
<染料分子>
前記染料分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性染料、油溶性染料、ジアゾニウム化合物、ロイコ色素、及び蛍光物質から選択される少なくとも1種が好適である。
【0034】
前記水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示した化合物に限定されるものではない。
【0035】
〔C.I.アシッドイエロー〕
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246
〔C.I.アシッドオレンジ〕
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168
〔C.I.アシッドレッド〕
1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415
〔C.I.アシッドバイオレット〕
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126
〔C.I.アシッドブルー〕
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350
〔C.I.アシッドグリーン〕
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109
〔C.I.アシッドブラウン〕
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413
〔C.I.アシッドブラック〕
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222
〔C.I.ダイレクトイエロー〕
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118
〔C.I.ダイレクトレッド〕
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕
9、35、51、66、94、95
〔C.I.ダイレクトブルー〕
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291
〔C.I.ダイレクトグリーン〕
26、28、59、80、85
〔C.I.ダイレクトブラウン〕
44、106、115、195、209、210、222、223
〔C.I.ダイレクトブラック〕
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169
〔C.I.ベイシックイエロー〕
1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91
〔C.I.ベイシックオレンジ〕
2、21、22
〔C.I.ベイシックレッド〕
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109
〔C.I.ベイシックバイオレット〕
1、3、7、10、11、15、16、21、27、39
〔C.I.ベイシックブルー〕
1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151
〔C.I.ベイシックグリーン〕
1、4
〔C.I.ベイシックブラウン〕

〔C.I.リアクティブイエロー〕
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176
〔C.I.リアクティブオレンジ〕
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107
〔C.I.リアクティブレッド〕
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235
〔C.I.リアクティブバイオレット〕
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38
〔C.I.リアクティブブルー〕
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236
〔C.I.リアクティブグリーン〕
8、12、15、19、21
〔C.I.リアクティブブラウン〕
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46
〔C.I.リアクティブブラック〕
5、8、13、14、31、34、39
【0036】
前記油溶性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アントラキノン系、ナフトキノン系、スチリル系、インドアニリン系、アゾ系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、ポルフィリン系、アザポルフィリン系、フタロシアニン系等の染料が挙げられる。
【0037】
前記油溶性染料のうち、イエロー系染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のメチン染料;ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のキノン系染料等が挙げられ、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料、等を挙げることができる。
【0038】
マゼンタ系染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料等のメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料等のカルボニウム染料;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のキノン系染料;ジオキサジン染料等の縮合多環系染料、等を挙げることができる。
【0039】
シアン系染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インドアニリン染料、インドフェノール染料、あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料等のポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料等のカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料、等を挙げることができる。
【0040】
−ジアゾニウム化合物−
前記ジアゾニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、前記ジアゾニウム塩とは、一般式:ArN[ただし、式中Arは、アリール基を表す。Xは、酸アニオンを表す。]で表わされる化合物を意味する。
【0041】
前記ジアゾニウム塩は、フェノール化合物或いは活性メチレンを有する化合物と反応し、所謂染料を形成する。更に、光(一般的には紫外線)照射により分解し、脱窒素してその活性を失うものである。
前記ジアゾニウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−オクトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−クロルベンゼンチオジアゾニウム、3−(2−オクチルオキシエトキシ)−4−モロホリノベンゼンジアゾニウム、4−N,N−ジヘキシルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−N−ヘキシル−N−トリルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウムの塩、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記ジアゾニウム塩の酸アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、1,5−ナフタレンスルホネート、パーフルオロアルキルカルボネート、パーフルオロアルキルスルフォネート、塩化亜鉛、塩化錫等の酸アニオンを用いることができる。これらの中でも、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート及び1,5−ナフタレンスルホネートの酸アニオンが、水溶性が低く、有機溶剤に可溶であるので好適である。
【0043】
−ロイコ色素−
前記ロイコ色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオラン化合物、アザフタリド化合物が好適であり、具体的には、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、などが挙げられる。
【0044】
−蛍光物質−
前記蛍光物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素、などが挙げられる。
【0045】
<機能性分子>
前記機能性分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性蛋白質、水溶性蛋白質のフラグメント、抗体、抗原、ペプチド、基質、酵素、糖質などが挙げられる。
【0046】
前記複合ナノ粒子形成方法としては、(1)染料分子と、樹状分岐分子とを静電的相互作用により結合させる態様では、例えば、スルホン酸基を有する水溶性染料分子をアミノ基又はアミン部位を有するデンドロン水溶液に添加することにより、デンドロン内に染料が静電的相互作用により結合した複合ナノ粒子を形成することができる。
(2)染料分子をファンデルワールス力により樹状分岐分子内に内包させる態様では、例えば、染料を含む溶液と、デンドロンを含む溶液を調製し、これら溶液を混合させることによりデンドロン内に染料が包接された複合ナノ粒子を形成することができる。
【0047】
ここで、前記ナノ複合粒子形成工程において、扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを混合する場合には、両液を同時に滴下し、混合することが、粒径分布の小さい均一な複合ナノ粒子を形成する観点から好適である。この場合、前記扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを略等量で混合することが好ましい。また、前記扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液を加熱しながら混合することが好ましく、加熱温度は、通常15〜90℃である。
前記両液を入れ、滴下する容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリンジ、シリンジとチューブとの組み合わせ、Y字状のマイクロチューブ、マイクロリアクター、などが挙げられる。
前記両液の送液は、手動、シリンジポンプ、その他の手段、などが挙げられ、前記両液を連続及び間欠の少なくともいずれかの方法で送液することが好ましく、間欠で送液する場合には、混合効率が向上するので特に好ましい。
【0048】
ここで、扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液との混合方法の一例について具体的に説明する。例えば、図1に示すように、扇状樹状分岐分子を含む液をシリンジAに入れ、染料を含む液をシリンジBに入れ、両シリンジを同時に押し出し、ビーカー中に同時に一定のスピードで滴下し、撹拌する。前記送液は、手動、シリンジポンプ、などで行うことができ、滴下速度は、通常0.05〜10ml/minである。なお、図1において、シリンジの先端にチューブを取り付け、該チューブを加熱するようにしても構わない。
【0049】
また、図2に示すように、Y字状の流路に組み立てたチューブを用い、扇状樹状分岐分子を含む液をA方向から、染料を含む液をB方向から、送液し、ビーカー中に同時に一定のスピードで滴下し、撹拌する。前記送液は、手動、シリンジポンプ、などで行うことができる。A、B方向からの送液は連続及び間欠のいずれであってもよく、A方向と、B方向とを間欠で送液することで、扇状樹状分岐分子を含む液と、染料を含む液とを効率よく均一に混合することができる。
なお、図2のY字状の流路は、チューブ以外にも、金属、ガラス、シリコン等の基板上に流路を形成したものであってもよい。Y字状の流路におけるA、Bの混合部〜Cまでを加熱しても構わない。加熱温度は、通常15〜90℃が好ましい。滴下速度は、通常0.05〜10ml/minが好ましい。
【0050】
(複合ナノ粒子)
本発明の複合ナノ粒子は、本発明の複合ナノ粒子の製造方法により製造される。
本発明の複合ナノ粒子は、粒子サイズが一定であり、かつ粒子間の組成が実質的に均一である単分散粒子であり、粒子の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜500nmが好ましく、0.3nm〜100nmがより好ましく、0.3nm〜10nmが更に好ましい。なお、粒子の大きさは、粒子の形状が球状である場合には直径を意味し、棒状の場合には長辺を意味する。また、粒子の粒度分布が0〜200nmまで狭くすることができる。
【0051】
本発明の複合ナノ粒子は、粒子表面に粒子を介して扇状樹状分岐分子が存在する複合ナノ粒子であってもよい。
前記粒子としては、例えば、無機粒子、有機粒子、などが挙げられ、これらの中でも、無機粒子が好ましい。
前記無機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属、半導体結晶粒子、金属カルコゲナイド、金属ハロゲン化合物等が挙げられ、具体的には、金、白金、鉄、金又は白金との合金、銀ハライドなどが挙げられる
【0052】
前記白金合金としては、例えば、白金とSc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素及びアクチノイド系列の元素から選ばれる1種又は2種以上との合金が好適である。
【0053】
前記半導体結晶粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C、Si、Ge、Sn等の周期律表14族元素の単体;P(黒リン)等の周期律表15族元素の単体;Se、Te等の周期律表16族元素の単体;SiC等の複数の周期律表14族元素からなる化合物;SnO、Sn(II)Sn(IV)S、SnS、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期律表14族元素と周期律表16族元素との化合物;BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の周期律表13族元素と周期律表15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);Al、AlSe、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の周期律表13族元素と周期律表16族元素との化合物;TlCl、TlBr、TlI等の周期律表13族元素と周期律表17族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の周期律表12族元素と周期律表16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体);、As、AsSe、AsTe、Sb、SbSe、SbTe、Bi、BiSe、BiTe等の周期律表15族元素と周期律表16族元素との化合物;CuO、CuSe等の周期律表11族元素と周期律表16族元素との化合物;CuCl、CuBr、CuI、AgCl、AgBr等の周期律表11族元素と周期律表17族元素との化合物;NiO等の周期律表10族元素と周期律表16族元素との化合物;CoO、CoS等の周期律表9族元素と周期律表16族元素との化合物;Fe34等の酸化鉄類、FeS等の周期律表8族元素と周期律表16族元素との化合物;MnO等の周期律表7族元素と周期律表16族元素との化合物;MoS、WO等の周期律表6族元素と周期律表16族元素との化合物;VO、VO、Ta等の周期律表5族元素と周期律表16族元素との化合物;TiO、Ti、Ti、Ti等の酸化チタン類(結晶型はルチル型、ルチル/アナターゼの混晶型、アナターゼ型のいずれでもよい);ZrO等の周期律表4族元素と周期律表16族元素との化合物;MgS、MgSe等の周期律表2族元素と周期律表16族元素との化合物;CdCr、CdCrSe、CuCr、HgCrSe等のカルコゲンスピネル類;BaTiO等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF1515、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のような半導体クラスターも挙げられる。
【0054】
これらの中でも、SnO、SnS、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期律表14族元素と周期律表16族元素との化合物;GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体;Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の周期律表13族元素と周期律表16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体;As、As、AsSe、AsTe、Sb、Sb、SbSe、SbTe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等の周期律表15族元素と周期律表16族元素との化合物;Fe等の酸化鉄類、FeS等の周期律表8族元素と周期律表16族元素との化合物;酸化チタン類、ZrO等の周期律表4族元素と周期律表16族元素との化合物;MgS、MgSe等の周期律表2族元素と周期律表16族元素との化合物等が、実用的な観点から好ましい。
【0055】
更に、高い屈折率を有し、環境汚染性、生物への安全性の観点からは、SnO、GaN、GaP、In、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、CdO、CdS、酸化チタン類、ZrO、MgSが好ましく、SnO、In、ZnO、ZnS、酸化チタン類、ZrOがより好ましく、ZnO、酸化チタン類が特に好ましい。
【0056】
また、発光能の観点からは、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体が好ましく、ZnSe、CdS、CdSeがより好ましい。
【0057】
なお、前記半導体化合物には必要に応じてドープ剤を含んでいてもよい。前記ドープ剤としては、例えば、Al、Mn、Cu、Zn、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等が挙げられる。
【0058】
本発明の複合ナノ粒子は、扇状樹状分岐分子と染料分子とが静電的相互作用により結合してなり、インクジェット記録用着色剤として好適に用いられる。
また、本発明の複合ナノ粒子は、染料分子が扇状樹状分岐分子にファンデルワールス力により内包されてなり、感熱記録材料として好適に用いられる。
更に、本発明の複合ナノ粒子は、幅広い応用分野で利用することができ、特に、単分散粒子により性能の向上が期待できる分野で有効である。例えば、高密度記憶材料、触媒、燃料電池、ハロゲン化銀塩感光材料、電子写真、防眩膜、導光板などの光学フイルムの素材、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
−フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロンの調製−
3,5−Bis〔3,5−bis(benzyloxy)benzyloxy〕benzyl Bromide 1.61g(2.0mmol)、チオウレア0.18g(2.4mmol)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)10mlを混合し、室温で一晩攪拌して反応混合物を得た。得られた反応混合物に10質量%水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加し、室温で1時間攪拌を行った。次いで、該攪拌溶液を、希塩酸を用いてpHが2〜3になるように調整し、酢酸エチルにより抽出を行った。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムにより乾燥し、溶媒を留去して、下記式で示されるフォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン1.38gを油状物として得た(収率92%)。
なお、前記フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロンは、重クロロホルムを溶媒としてH−NMRスペクトルを測定して同定した。
【0061】
【化5】

【0062】
−複合ナノ粒子の調製−
前記フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン2.5mg(7.4mmol)を酢酸エチル5mlに溶解させた溶液に、HAuCl20.0mg(58.8mmol)をイオン交換水5mlに溶解させた溶液を添加し、室温で5分間攪拌した。この溶液に、NaBH 22.8mg(600mmol)をイオン交換水5mlに溶解させた溶液を均一に添加し、室温で5分間撹拌することにより、デンドロンが配位した金複合ナノ粒子を得た。
得られた金複合ナノ粒子を透過電子顕微鏡(TEM)観察した結果、金ナノ粒子間にデンドロン2分子に相当するスペースが認められた。このことから、金ナノ粒子がデンドロン分子により被覆されていることが確認できた。
【0063】
(実施例2)
−複合ナノ粒子の調製−
実施例1で合成したフォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン2.5mg(7.4mmol)を酢酸エチル5mlに溶解させた溶液に、Cd(NO 14.0mg(58.8mmol)をイオン交換水5mlに溶解させた溶液を添加し、室温で1時間撹拌した後、NaS 10mg(120mmol)を5mlのイオン交換水に溶解した溶液を添加し、室温で24時間撹拌した。その後、酢酸エチル相を乾固することにより、デンドロン分子により被覆されたCdS複合ナノ粒子が得られた。
得られた複合ナノ粒子を透過電子顕微鏡(TEM)観察した結果、CdSナノ粒子間にデンドロン2分子に相当するスペースが認められた。このことから、CdSナノ粒子がデンドロン分子により被覆されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の複合ナノ粒子の製造方法により得られる複合ナノ粒子は、粒子サイズが一定であり、かつ粒子間の組成が実質的に均一である単分散状態の粒子であるため、インクジェット記録用着色剤、感熱記録材料として好適に用いられる。更に、複合ナノ粒子を利用するあらゆる応用分野で利用することができ、特に、単分散粒子により性能の向上が期待できる分野で有効である。例えば、高密度記憶材料、触媒、燃料電池、ハロゲン化銀塩感光材料、電子写真、防眩膜、導光板などの光学フイルムの素材、等の用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、デンドロンを含む液と染料を含む液を同時に添加する方法の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、デンドロンを含む液と染料を含む液を同時に添加する方法の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇状樹状分岐分子に、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包させて複合ナノ粒子を形成する複合ナノ粒子形成工程を含むことを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを同時に混合する請求項1に記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
扇状樹状分岐分子を含む液と、粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液とを略等量で混合する請求項1から2のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
扇状樹状分岐分子を含む液、及び粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を含む液を加熱しながら混合する請求項1から3のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
染料分子と、扇状樹状分岐分子とを化学結合させる請求項1から4のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
染料分子と、扇状樹状分岐分子とを静電的相互作用により結合させる請求項1から5のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
染料分子をファンデルワールス力により扇状分岐分子内に内包させる請求項1から5のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
染料分子が、水溶性染料、油溶性染料、ジアゾニウム化合物、ロイコ色素、及び蛍光物質から選択される少なくとも1種である請求項1から7のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
粒子前駆体と、錯体形成可能なサイト及び静電引力により粒子前駆体が結合可能なサイトの少なくともいずれかを有する扇状樹状分岐分子とを反応させる請求項1から4のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
粒子前駆体が、金属イオンである請求項1から4及び9のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
金属イオンが、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素及び6B族元素から選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
粒子前駆体、染料分子、及び機能性分子から選択される少なくとも1種を結合乃至は内包する扇状樹状分岐分子のサイトが、フォーカルサイトである請求項1から11のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
扇状樹状分岐分子が、デンドロンである請求項1から12のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
扇状樹状分岐分子が、ベンゼン環を含む請求項1から13のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
扇状樹状分岐分子の世代数が、第1世代以上である請求項1から14のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の複合ナノ粒子の製造方法で製造されることを特徴とする複合ナノ粒子。
【請求項17】
複合ナノ粒子の大きさが0.1nm〜500nmである請求項16に記載の複合ナノ粒子。
【請求項18】
扇状樹状分岐分子と染料分子とが静電的相互作用により結合してなり、インクジェット記録用着色剤として用いられる請求項16から17のいずれかに記載の複合ナノ粒子。
【請求項19】
染料分子が扇状樹状分岐分子にファンデルワールス力により内包されてなり、感熱記録材料として用いられる請求項16から17のいずれかに記載の複合ナノ粒子。
【請求項20】
粒子表面に粒子を介して扇状樹状分岐分子が存在する複合ナノ粒子である請求項16から19のいずれかに記載の複合ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−68713(P2006−68713A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258889(P2004−258889)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】